昭和55(オ)469 土地所有権移転登記手続等

裁判年月日・裁判所
昭和57年6月17日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 仙台高等裁判所 秋田支部 昭和53(ネ)26
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本件は、農地の売買契約に関する訴訟で、上告人が売主に対して契約の履行を求めたが、売主が契約解除を主張したことが争われた。主要な争点は、上告人が契約の履行に着手したかどうかであり、原審は上告人の履行着手を認めず契約解除を有効とした。しかし、最高裁は、上告人が残代金の支払準備を整え、履行を催告していたことから、履行に着手したと認めるべきであると判断した。原判決は事実関係を確定せず、民法557条の解釈を誤ったため、破棄され、審理を仙台高等裁判所に差し戻すこととなった。

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判決文本文1,887 文字)

主文 原判決を破棄する。 本件を仙台高等裁判所秋田支部に差し戻す。 理由 上告代理人脇山淑子の上告理由第二について原判決は、上告人が本件農地の買主として売買契約を履行するために上告人所有の農地を売却して手附金を除いた残代金支払の準備を整え、再三にわたり売主である被上告人に対し履行を催告したから、上告人は民法五五七条一項にいう「契約の履行に着手」したものであつて、その後に被上告人がした手附倍戻しによる売買契約解除の意思表示は効力を生じない旨主張したのに対し、上告人は多額の預貯金を有し本件売買代金の支払に窮することはない旨自認していることに加えて、上告人所有農地の売買の経緯に照らすと、右売買は本件売買契約の履行のためにされたものとは認められないとしたうえ、上告人が本件売買代金の全額を現実に提供したなど特別の事情の認められない本件においては、被上告人の契約解除の意思表示前に上告人が契約の履行に着手したものとは解されないとして、上告人の右の主張を排斥し、本件農地の売買契約は解除されたものと判断して上告人の農地法上の許可申請手続、所有権移転登記手続等の請求を棄却している。 しかしながら、土地の買主が約定の履行期後売主に対してしばしば履行を求め、かつ、売主が履行すればいつでも支払えるよう約定残代金の準備をしていたときは、現実に残代金を提供しなくても、民法五五七条一項にいわゆる「契約の履行に着手」したものと認めるのが相当であることは、当裁判所の判例とするところであり(昭和三〇年(オ)第九九五号同三三年六月五日第一小法廷判決・民集一二巻九号一三五九頁)、この理は、農地の売買においても異なるところはないものというべきである。しかるところ、原審の適法に確定するところによれば、本件農地の売買契約- 六月五日第一小法廷判決・民集一二巻九号一三五九頁)、この理は、農地の売買においても異なるところはないものというべきである。しかるところ、原審の適法に確定するところによれば、本件農地の売買契約- 1 -は昭和五〇年一一月一八日に締結されたが、被上告人は、契約後ただちに農地法三条の許可申請手続をし、許可あり次第残代金の支払と引き換えに所有権移転登記手続及び引渡しをすることを約したにもかかわらず、右約束に反して許可申請手続をしなかつたというのであり、そのため上告人が被上告人に対する仮登記仮処分決定を得て昭和五一年七月二九日本件農地について条件付所有権移転の仮登記を経由したことは、当事者間に争いがなく、更に上告人が昭和五一年九月四日本訴を起こし、昭和五三年二月二一日第一審において勝訴の判決を得たことは本件記録によつて明らかであるから、被上告人がその後の本訴控訴審第一回期日(昭和五三年九月一三日)に手附倍戻しによる契約解除の意思表示をする前に上告人は被上告人に対し再三にわたつて本件売買契約の履行を催告していたものというべきところ、上告人の主張と原判決の認定するところによれば、上告人は当時その所有農地の売買によつて取得した代金を含めて多額の預貯金を有し本件売買代金の支払に窮することはなかつたというのであるから、更に審理をすれば、上告人が前記催告の間常に残代金の支払の準備をしており、農地法三条所定の許可がされて所有権移転登記手続をする運びになればいつでもその支払をすることのできる状態にあつたと認定される可能性があつたものといわなければならない。そして右のように認定されれば、上告人は被上告人の契約解除前すでに履行に着手したものと解すべきものであるから、原判決が右の点について事実関係を確定することなく上告人の主張を排斥したことは、履行の着手に関する ように認定されれば、上告人は被上告人の契約解除前すでに履行に着手したものと解すべきものであるから、原判決が右の点について事実関係を確定することなく上告人の主張を排斥したことは、履行の着手に関する民法五五七条一項の解釈を誤り、ひいて審理不尽の違法をおかしたものというべく、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。この点に関する論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件については更に審理を尽くさせるのが相当であるから、これを原審に差し戻すこととする。 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判- 2 -決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官谷口正孝裁判官団藤重光裁判官藤崎萬里裁判官本山亨裁判官中村治朗- 3 -

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