昭和60(う)332 大麻取締法違反、関税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和60年6月21日 東京高等裁判所
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本件は、被告人A、B、Cがフィリピンから大麻を密輸入した事案に関する控訴審である。主要な争点は、原判決における大麻の重量認定が事実誤認であるか、及び量刑が不当であるかという点であった。控訴人らは、密輸入された大麻の一部が大麻取締法の規制対象外である成熟した茎を含むため、原判決に誤りがあると主張したが、裁判所は、関係証拠に基づき、原判示の大麻には成熟した茎が含まれていないと認定し、事実誤認はないと判断した。また、量刑については、密輸入の量や手口の巧妙さ、被告人の役割を考慮し、原判決の量刑が重すぎるとは言えないとした。最終的に、控訴は棄却され、未決勾留日数が各本刑に算入されることが決定された。

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判決文本文2,910 文字)

主文 本件各控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中、被告人Aに対しては九〇日を、被告人B、同Cに対しては各一〇〇日を、それぞれ原判決の各本刑に算入する。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人Aの弁護人石川恵美子名義、被告人Bの弁護人瀬古宜春名義、被告人Cの弁護人関根幸三、同岡部光平連名の各控訴趣意書記載のとおりであるから、これらを引用する。 被告人Bの弁護人瀬古宜春の控訴趣意第一(事実誤認の主張)について<要旨>所論は、原判決は二回にわたつて密輸入された大麻の重量を第一回目(原判示第一事実)については大麻草</要旨>約七・二キログラム、第二回目(原判示第二事実)については大麻草約二四・二八七キログラムと認定しているが、右重量は大麻取締法の規制対象とされていない成熟した茎部分を含んだものであつて、規制対象となる大麻草はこれよりも少ないから、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるというのである。 そこで、記録を調査して検討すると、関係証拠によれば、原判示第二の密輸入にかかる大麻草は、長さ一五センチメートルないし二〇センチメートル位の大麻草の花穂部分を乾燥させた物であつて、大麻草の小枝にあたる細い茎の部分を含んでおり、これを含んだ総重量が約二四・二八七キログラムであること、原判示第一の密輸入にかかる大麻草も原判示第二のものとほば同様のものであつて、その総重量が約七・二キログラムであること及びこれらの中には前記寸法以上に長い茎や太い茎の部分は含まれていないことが認められる。 ところで、大麻取締法にいう大麻とは、大麻草及びその製品であつて、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)を除いたものである(同法一条本文、ただし書)が、大麻草の成熟した茎が規制対象から除外さ ところで、大麻取締法にいう大麻とは、大麻草及びその製品であつて、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)を除いたものである(同法一条本文、ただし書)が、大麻草の成熟した茎が規制対象から除外される趣旨は、繊維製品としての麻の製造・流通・使用を同法の規制外に置くためであつて、右のような立法趣旨から考えると、同法一条ただし書にいう「大麻草の成熟した茎」とは、繊維製品としての麻を得るのに適した状態に達した茎の部分が大麻草から分離されてそれに適する形状になつたものをいうものと解すべきである。そうすると、前記認定のとおり、花穂のついた小枝は含まれているものの、原判示第一、第二の本件大麻草には右ただし書にいう大麻草の成熟した茎を含んでいないことが明らかであるから、原判決には所論のような事実誤認はない。論旨は理由がない。 被告人Aの弁護人の控訴趣意、被告人Bの弁護人の控訴趣意第二及び被告人Cの弁護人の控訴趣意(いずれも量刑不当の主張)について所論は、いずれも、原判決の量刑は重過ぎて不当であるというのである。 そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果を参酌して検討すると、本件は、被告人A、同B、同Cが、D、E(後記(2)については、更にF)と共謀のうえ、フイリピン共和国から、(1)大麻草約七・二キログラムを密輸入し、(2)さらに、大麻草約二四・二八七キログラムを密輸入した(ただし、関税法違反の点は未遂)という事案であつて、密輸入した大麻の量が極めて大量であること、その犯行の態様も、a港のコンテナーヤードに勤務し通関業務に関係していた被告人CとEが保税地域から税関検査場に貨物を運搬する途中で大麻を抜き取るという通関手続の盲点をついた大胆かつ巧妙な犯行であること、被告人Aは、フイリピンにおける大麻の仕入れ等の役割を担当し、第一回目の密輸 とEが保税地域から税関検査場に貨物を運搬する途中で大麻を抜き取るという通関手続の盲点をついた大胆かつ巧妙な犯行であること、被告人Aは、フイリピンにおける大麻の仕入れ等の役割を担当し、第一回目の密輸入による自己の分け前を売却して約三四〇万円の利益をあげ、第二回目の密輸入では一〇〇〇万円を越える多額の利益を目論んでいたものであること、被告人Cは、G株式会社からHのa港コンテナーヤードに出向し通関等の業務に携わつていたものであるところ、本件の密輸入の方法は同被告人が考え出し、かつ、Eとともに大麻の抜取りの実行を担当したものであつて、日常通関業務に携わつている者がその職務上の知識と信頼関係を利用して本件のような犯行を敢行したことは強い非難に値すること、同被告人は、第一回目の密輸入の際には分け前として大麻草約一・二キログラムを受け取り、第二回目の密輸入が成功すれば報酬として現金三〇〇万円を受け取る予定であつたこと、被告人Bは、大麻の仕入れ等の役割を担当した被告人Aと大麻を抜取る役割を担当した被告人Cらとの連絡をする役割を担当し、第一回目の密輸入の際には分け前として大麻草約一・六キログラムを受け取り(ただし、うち一五〇グラム位をDに渡している。)、第二回目の密輸入が成功すれば大麻草約一・二五キログラムと現金四〇〇万円を受け取る予定であつたことなどを考え合わせると、被告人A、同B、同Cの刑責は重大である。 したがつて、第二回目の密輸入にかかる大麻草約二四・二八七キログラムについては、幸いa港で押収されたため現実に国内に流通するには至らなかつたこと、被告人B、同Cについては、第一回目の密輸入の分け前の大麻草を自己使用しただけで他に売り捌いていないこと、被告人Aには賭博、電波法違反罪による罰金前科が三回、被告人Bには賭博罪による罰金前科が一回あるだけ B、同Cについては、第一回目の密輸入の分け前の大麻草を自己使用しただけで他に売り捌いていないこと、被告人Aには賭博、電波法違反罪による罰金前科が三回、被告人Bには賭博罪による罰金前科が一回あるだけで、被告人Cにはこれまで前科はないこと、被告人らが反省の態度を示していることなど、被告人らに有利な諸事情を十分考慮しても、被告人Aを懲役五年六月に、被告人Bを懲役四年に、被告人Cを懲役四年六月に各処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるとはいえない。 なお、各所論は共犯者D(懲役三年)との刑の権衡をいうが、右Dは、被告人B同様、大麻の仕入れ等の役割を担当した被告人Aと大麻を抜取る役割を担当した被告人Cらとの連絡をする役割を担当したものであるところ、所論のようにDが本件犯行の主謀者又は中心人物であるとは認められず、同人の本件犯行における役割、本件によつて取得し又は取得する筈であつた分け前等を考え合わせると、被告人A、同B、同Cに対する各量刑が右Dの刑と著しく権衡を失するものとはいえない。 論旨はいずれも理由がない。 よつて、刑訴法三九六条により本件各控訴を棄却し、刑法二一条により、当審における未決勾留日数中、被告人Aに対しては九〇日を、被告人B、同Cに対しては各一〇〇日を、原判決の各本刑に算入することとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官海老原震一裁判官森岡茂裁判官小田健司)

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