平成10(ワ)2175 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年1月23日 さいたま地方裁判所
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判決文本文6,204 文字)

主    文    1 原告らの請求をいずれも棄却する。    2 訴訟費用は原告らの負担とする。          事    実 第1 当事者の求めた裁判  1 請求の趣旨   (1) 被告A,同B,同C,同D,同E,同F,同G及び同Hは,埼玉商銀信用 組合に対し,各自11億6000万円及びこれに対する平成10年12月18日か ら支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。   (2) 被告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gは,埼玉商銀信用組合に 対し,(1)で支払を命じられた金員のほかに,各自11億3400万円及びこれに対 する平成10年12月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。   (3) 訴訟費用は被告らの負担とする。   (4) 仮執行宣言  2 請求の趣旨に対する答弁    主文と同旨(なお,被告C,同F及び同Gは,訴えの却下を求める本案前の 答弁をしている。) 第2 当事者の主張  1 請求の原因   (1) 当事者等    ア 埼玉商銀信用組合(以下「埼玉商銀」という。)は,中小企業等協同組 合法に基づいて設立された信用協同組合である。    イ 原告らは,いずれも後記(4)の手続をする6か月以上前から埼玉商銀の組 合員資格を有し,組合員名簿に記載されている者である。    ウ 被告A,同C,同D,同E,同Fは平成3年から同10年まで,被告G は同3年から同9年まで,それぞれ埼玉商銀の理事の地位にあり,被告Bは同4年 から同9年まで同組合の監事の地位にあり,被告Hは同元年以前から同組合の総務 部長の地位にあった。   (2) 埼玉商銀による不正融資    ア 埼玉商銀は,下記のとおり,金銭の貸付けを行った。 記        貸付先          貸付年月日      による不正融資    ア 埼玉商銀は,下記のとおり,金銭の貸付けを行った。 記        貸付先          貸付年月日     貸付金額     (ア) I           平成5年12月 7日 4億円                    同8年 1月17日 1億6000万円     (イ) J            同7年10月19日 2億4000万円     (ウ) K            同6年 9月 1日 3億8500万円     (エ) L            同6年 9月 1日 3億8500万円                    同7年 2月17日 1億2500万円                        同月22日   7000万円     (オ) M            同4年 7月14日 3億5000万円                    同8年 7月 1日 1億5000万円     (カ) N            同9年12月19日   4000万円    イ 上記アの(ア)ないし(エ)は,いずれもOへのう回融資のため貸付けであ り,貸付先の各会社は,いずれも実体がなく,当初から無資力であった。    ウ 上記アの(ウ)及び(エ)の各貸付金を担保するため,Oの所有する土地に根 抵当権が設定されていたが,埼玉商銀は,平成9年7月24日ころ,同根抵当権設 定登記の抹消登記に応じ,自らその担保権を喪失した。    エ 上記アの(オ)の貸付先であるMは,被告Aの甥が名目上の代表者であり, 同被告自身が実質的業務を行う会社であるが,同会社は何らの事業も行っておら ず,埼玉商銀に対する1100万円の預金債権以外に支払能力のない会社であり, 当初から回収不能となることが 目上の代表者であり, 同被告自身が実質的業務を行う会社であるが,同会社は何らの事業も行っておら ず,埼玉商銀に対する1100万円の預金債権以外に支払能力のない会社であり, 当初から回収不能となることが分かっていた。    オ 上記アの(カ)の貸付先であるNは,設立当初から常に損失を計上していた が,被告Aの娘の義父であるPが経営していることから,同貸付けは無担保で行わ れた。    カ 上記アの各貸付けは,(オ)について上記1100万円の預金債権との相殺 による回収がされたほか,いずれも回収不能となった。   (3) 被告らの責任    ア 審査会について      埼玉商銀においては,500万円以下の貸付けについては各店長が決裁 することができ,500万円を超える貸付けについては本部常勤役員及び理事会が 適当と認める理事をもって構成する審査会がその可否を決定することとされてい た。    イ Iに対する貸付け(前記(2)のアの(ア))について     (ア) 平成5年12月7日付け4億円の貸付けについて      a 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同Fは,実体のない う回融資であることを知りながら貸付けを承認した。      b 被告Eは,常任理事としてこれを見過ごした。      c 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。      d したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった4 億円を連帯して賠償すべき義務を負う。     (イ) 平成8年1月17日付け1億6000万円の貸付けについて      a 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同F,同Eは,実体 のないう回融資であることを知りながら貸付けを承認した。      b 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。      c したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回 同D,同F,同Eは,実体 のないう回融資であることを知りながら貸付けを承認した。      b 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。      c したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった1 億6000万円を連帯して賠償すべき義務を負う。    ウ Jに対する2億4000万円の貸付け(前記(2)のアの(イ))について     (ア) 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同F,同Eは,実体の ないう回融資であることを知りながら貸付けを承認した。     (イ) 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (ウ) したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった2億 4000万円を連帯して賠償すべき義務を負う。    エ Kに対する3億8500万円の貸付け(前記(2)のアの(ウ))について     (ア) 貸付けについて      a 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同Fは,実体のない う回融資であることを知りながら貸付けを承認した。      b 被告Eは,常任理事としてこれを見過ごした。      c 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (イ) 根抵当権設定登記の抹消登記に応じたこと(前記(2)のウ)について      a 審査会を構成した被告A,同C,同D,同E,同Hは,担保権を喪 失することを知りながらこれを承認した。      b 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (ウ) したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった3億 8500万円を連帯して賠償すべき義務を負う。    オ Lに対する3口,計5億8000万円の貸付け(前記(2)のアの(エ))に ついて     (ア) 貸付けについて      a 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同Fは,実体の 負う。    オ Lに対する3口,計5億8000万円の貸付け(前記(2)のアの(エ))に ついて     (ア) 貸付けについて      a 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同Fは,実体のない う回融資であることを知りながら貸付けを承認した。      b 被告Eは,常任理事としてこれを見過ごした。      c 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (イ) 根抵当権設定登記の抹消登記に応じたこと(前記(2)のウ)について      a 審査会を構成した被告A,同C,同D,同E,同Hは,担保権を喪 失することを知りながらこれを承認した。      b 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (ウ) したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった5億 8000万円を連帯して賠償すべき義務を負う。    カ Mに対する貸付け(前記(2)のアの(オ))について     (ア) 平成4年7月14日付け3億5000万円の貸付けについて      a 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同Fは,被告Aの親 族会社に対する担保不足の融資であることを知りながら貸付けを承認した。      b 被告Eは,常任理事としてこれを見過ごした。      c 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (イ) 平成8年7月1日付け1億5000万円の貸付けについて      a 審査会を構成した被告A,同C,同G,同D,同F,同Eは,被告 Aの親族会社に対する担保不足の融資であることを知りながら貸付けを承認した。      b 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (ウ) したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった4億 8900万円(=3億5000万円+1億5000万円-1100万円)を連帯し て賠償 ,監事として監査業務の履行を怠った。     (ウ) したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった4億 8900万円(=3億5000万円+1億5000万円-1100万円)を連帯し て賠償すべき義務を負う。    キ Nに対する4000万円の貸付け(前記(2)のアの(カ))について     (ア) 審査会を構成した被告A,同C,同D,同E,同Hは,被告Aの親族 会社に対する無担保の融資であることを知りながら貸付けを承認した。     (イ) 被告Bは,監事として監査業務の履行を怠った。     (ウ) したがって,上記被告らは,埼玉商銀に対し,回収不能となった40 00万円を連帯して賠償すべき義務を負う。 (4) 代表訴訟の前提手続     原告らは,平成10年11月4日,埼玉商銀に対し,書面をもって,被告 らの損害賠償責任を追及する訴えの提起を請求したが,埼玉商銀は,30日以内に 訴えを提起しなかった。   (5) よって,原告らは,中小企業等協同組合法42条,商法267条2項に基 づき,被告ら全員に対しては,各自11億6000万円の損害金(ただし,被告H に対する請求のうち10億0500万円を超える部分については,請求の根拠を主 張しない。)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成10年12月18日 から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を埼玉商銀に支払う ことを求め,被告Hを除くその余の被告らに対しては,更に各自11億3400万 円の損害金及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成10年12月18日か ら支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を埼玉商銀に支払うこ とを求める。  2 請求の原因に対する認否    埼玉商銀の被告らに対する損害賠償請求権の発生について,否認ないし争 う。  3 抗弁    埼玉商銀 年6分の割合による遅延損害金を埼玉商銀に支払うこ とを求める。  2 請求の原因に対する認否    埼玉商銀の被告らに対する損害賠償請求権の発生について,否認ないし争 う。  3 抗弁    埼玉商銀は,平成11年3月23日,被告らに対する損害賠償請求権を株式 会社整理回収銀行(以下「整理回収銀行」という。)に売り渡した(なお,被告 C,同F及び同Gは,本案前の答弁の理由として,債権譲渡により原告らの当事者 適格が失われたとも主張する。)。 理    由  1 債権譲渡について    丙第2号証(資産買取契約書)によると,埼玉商銀は,平成11年3月18 日,整理回収銀行(現在の株式会社整理回収機構)に対し,同組合が有する債務不 履行に基づく損害賠償請求権及び事務管理,不当利得,不法行為その他契約以外の 原因に基づいて同組合が有する権利(埼玉商銀の役職員,借り手その他の関係者に 対し責任追及する一切の権利を含む。既に権利が確定しているもののほか,その存 在の確認又は内容の特定が未了であるものを含む。)等を82億7978万018 1円で売り渡した(権利の移転日は,同月23日とされた。)ことが認められる。  2 訴求債権の譲渡と代表訴訟の帰趨について    本件訴訟は,埼玉商銀の組合員である原告らが,中小企業等協同組合法42 条,商法267条2項に基づき,埼玉商銀を代表して,埼玉商銀の役職員であった 被告らに対する損害賠償請求権を訴求する組合員代表訴訟であるが,上記認定事実 によれば,原告らが訴求する債権は,仮にあるとしても,いずれも同組合の役職員 であった被告らに対して責任を追及する権利として,上記資産買取契約の対象資産 に含まれるものであると認められるので,同組合は,当該債権を喪失したから,当 該債権を訴求する本件代表訴訟は,その前提を欠き, であった被告らに対して責任を追及する権利として,上記資産買取契約の対象資産 に含まれるものであると認められるので,同組合は,当該債権を喪失したから,当 該債権を訴求する本件代表訴訟は,その前提を欠き,理由のないことに帰し,これ を棄却すべきである(代表訴訟の係属中に信用協同組合が第三者に対してした訴求 債権の譲渡の効力を否定すべき法律上の根拠はない。なお,被告C,同F及び同G は,債権譲渡により 原告らの当事者適格が失われたとも主張するが,原告らは,代表訴訟の前提手続を 経た組合員であり〔甲第2号証の1,2及び弁論の全趣旨〕,埼玉商銀が被告らに 対する損害賠償請求権を有すると主張して本件代表訴訟を提起しているのであるか ら,原告らには当事者適格がある。)。  3 結論    よって,原告らの請求は,被告らの損害賠償責任の存否について判断するま でもなく,いずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟 法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。なお,原告らのQ に対する文書提出命令申立て(平成11年(モ)第732号)は,必要性がないから却 下する。       さいたま地方裁判所第2民事部           裁判長裁判官   渡邉 等              裁判官   村上正敏              裁判官   芹澤俊明

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