平成31(行コ)46 過誤納金返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和元年7月17日 東京高等裁判所
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本件は、控訴人が相続した農地に係る相続税の納税猶予について、税務署長が納税猶予の期限が確定したと通知したことに対し、控訴人がその納付義務がないと主張し、過誤納金の返還を求めた事案である。主要な争点は、控訴人が農業経営を廃止したかどうか、及び納税猶予の期限が確定した事実の有無である。裁判所は、控訴人の主張を認めず、農地における生産物の販売は本件法人に帰属し、控訴人の請求は理由がないと判断した。判決は控訴を棄却し、控訴費用は控訴人の負担とする結論に至った。

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判決文本文5,931 文字)

令和元年7月17日判決言渡平成31年(行コ)第46号過誤納金返還請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(行ウ)第518号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,3億2591万2500円並びにこれに対する平成29年2月19日から同年12月31日まで年1.7パーセントの割合による金員,平成30年1月1日から同年12月31日まで年1.6パーセントの割合による金員及び平成31年1月1日から支払済みまで年7.3パーセント又は租税特別措置法93条2項に規定する特例基準割合(ただし,当該特例基準割合に0.1パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)のいずれか低い割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要 1 控訴人は,Aの相続(以下「本件相続」という。)によって取得した農地に係る相続税について,B税務署長(以下「税務署長」という。)により租税特別措置法(平成10年法律第23号による改正前のもの。以下「措置法」という。)70条の6第1項に定める納税猶予(以下「農地等納税猶予」という。)を受けていたところ,税務署長は,控訴人が上記農地に係る農業経営を廃止したことが認められるとして,控訴人に対し,上記納税猶予の期限が確定する事実が生じた旨を通知した。 本件は,控訴人が,上記納税猶予に係る相続税及び利子税(以下「本件相続税等」という。)を納付した上で,上記納税猶予の期限が確定する事実は生じていないから本件相続税等の納付義務はないと主張して,国税通則法 は,控訴人が,上記納税猶予に係る相続税及び利子税(以下「本件相続税等」という。)を納付した上で,上記納税猶予の期限が確定する事実は生じていないから本件相続税等の納付義務はないと主張して,国税通則法56条1項に基づき,本件相続税等相当額の還付を求めるとともに,同法58条1項に基づき,同額に対する本件相続税等の納付があった日の翌日である平成29年1月19日から起算して1月を経過する日である同年2月19日から支払済みまで租税特別措置法95条,93条2項所定の割合(平成29年は年1.7パーセント,平成30年は年1.6パーセント)を乗じて計算した還付加算金の支払を求める事案である。 原審が,控訴人の請求を棄却したため,控訴人がこれを不服として本件控訴をした。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,次の3のとおり当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から3まで(別紙2-1,2-2,2-3,3-1,3-2及び3-3を含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決4頁16行目の「本件農地と併せて以下」を「以下,「αの土地」といい,本件農地と併せて」と改める。)。 3 当審における控訴人の主張⑴ 生産物の販売状況,生産物の売上の帰属状況について生産者がC青果を通じて農作物を出荷・販売する場合には,出荷者登録がされるが,生産者自らが「出荷者」として販売する直接取引の場合には生産者の氏名及び出荷者番号が登録され,生産者が農協の正組合員であり,出荷団体である農協の支店を出荷者として登録し農協を介して生産物を共同で販売する間接取引の場合には,通常,出荷者となる農協の支店の出荷者番号と当該生産者が所属農協に開設している口座番号を組み合わせた出 団体である農協の支店を出荷者として登録し農協を介して生産物を共同で販売する間接取引の場合には,通常,出荷者となる農協の支店の出荷者番号と当該生産者が所属農協に開設している口座番号を組み合わせた出荷者番号が用いられている。控訴人によるC青果との取引履歴については,①出荷者番 号「D」として登録され,札幌JA・E支店を通さずに行われたもの(直接取引の場合)と,②出荷者番号「F」として登録され,札幌JA・E支店を通して行われたもの(間接取引の場合)の二種類があるところ,控訴人は,父から農業を相続した後,札幌JA・E支店所属の出荷者番号(農協に開設している口座番号)出荷者番号「F」で間接取引を行ってきており,本件法人設立の前後で変わりはない。他方で,控訴人の祖父ないし父は,その生前,出荷者番号「D」として控訴人名義で直接取引に係る出荷者登録を行っており,控訴人は,父から農業を相続した後も,当該出荷者登録に基づいて直接取引を行うこともあった。本件法人は,札幌JAの正組合員の登録をしておらず,C青果との間で間接取引を行うことはできないものの,直接取引を行うことは可能であったが,直接取引をするための出荷者登録をしておらず,C青果と契約して農産物の販売を委託した事実は一切ない。 原判決は,「本件農地における生産物は,平成26年5月期以降本件法人が販売しており,その売上げは本件法人に帰属しているものと評価できる一方,原告は,遅くとも平成26年1月1日以降は,本件農地における生産物を販売していなかったものと認めるのが相当である」と判示するが,上記のとおり,C青果との直接取引及び間接取引の実態は,本件法人設立の前後で全く変化していないことからすれば,本件法人設立の前後を通じて,C青果に対する売上げを計上すべきは控訴人であり,本件法人の法人税申告 おり,C青果との直接取引及び間接取引の実態は,本件法人設立の前後で全く変化していないことからすれば,本件法人設立の前後を通じて,C青果に対する売上げを計上すべきは控訴人であり,本件法人の法人税申告書にC青果に対する売掛金が資産計上されているとしても,その計上自体が法律行為の裏付けのないものである。原判決は,誤りのある本件法人の法人税申告書を根拠に,私法上取引実態の変化がないところに売上げの帰属の変化を認定しているものであって,不合理である。 ⑵ 農地の使用状況について原判決は,控訴人が本件法人との間で,本件農地を含む土地について賃貸借契約を締結し,本件農地を本件法人に賃貸していたと認定しているが,控 訴人と本件法人との間で土地賃貸借契約書は存在せず,控訴人としては,賃貸借契約の目的に本件農地は含まれていなかったという認識であるし,原判決が挙げる証拠を見ても,地代の計算に関する資料に記載があるのは本件特例農地等(本件農地及びαの土地)のうち本件農地についてのみである(乙29の5枚目)ところ,本件農地とαの土地とは一体的に農地として利用されているものであるから,このような使用の実態からしても,地代の計算に本件農地のみが誤って含まれたものであると認められる。したがって,控訴人と本件法人との間の土地賃貸借契約には,本件特例農地等は含まれておらず,少なくともαの土地は,本件法人設立の前後を通じ,契約,地代の計算,各確定申告のいずれからも,また,実際の資金の流れからも,本件法人に賃貸されたという事実は認定することができない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次の2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」(以 の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次の2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」(以下,単に「第3」という。)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決17頁18行目の「いい難いい」を「いい難い」と,27頁5行目の「に対する」を「の」と,31頁10行目の「前提事実」を「認定事実」と,34頁20行目の「していること事実を」を「していると」とそれぞれ改め,35頁10行目の「から」から11行目の「する」までを削る。 2 当審における控訴人の主張に対する判断⑴ 控訴人は,第2の3⑴のとおり主張する。 しかしながら,控訴人は,個人企業を法人組織としたいわゆる法人成りとして,自身が発行済株式の全てを取得し,設立時に代表取締役に就任する形で本件法人を設立したものと認められることからすると,C青果との取引においては,控訴人から本件法人に取引の主体が変わったものの,出荷者番号 の変更や新たな出荷者番号の取得といった事務手続を行わずに従前の控訴人の出荷者番号や売買仕切金の振込口座を利用して取引を行っていたにすぎないとも考えられる(なお,控訴人の祖父や父が控訴人名義の出荷者登録でC青果と直接取引を行っていたとの控訴人の主張からすると,C青果においては取引相手方の名義についてさほど厳密に取り扱っていなかったこともうかがえる。)のであって,本件法人の設立前後で,C青果との直接取引及び間接取引における出荷者番号や振込口座が同一であり,本件法人設立後に本件法人が改めて出荷者登録を行わなかったとしても,そのことから直ちに本件法人設立後の本件農地の生産物についての販売を本件法人ではなく,控訴人が行っていたと認めることはでき であり,本件法人設立後に本件法人が改めて出荷者登録を行わなかったとしても,そのことから直ちに本件法人設立後の本件農地の生産物についての販売を本件法人ではなく,控訴人が行っていたと認めることはできない。そして,上記1のとおり訂正の上引用した原判決(第3の2⑴,⑵イ)が認定説示するとおり,本件法人は,平成26年5月期及び平成27年5月期の法人税申告書において農業収入を計上したり,にらの売上を売掛金に計上したりするなどし,また,平成26年8月以降とうきびやイモなどを販売して収入に計上するなどもし,平成27年5月期には野菜の出荷用段ボールを購入していたことも認められる一方,控訴人は,平成26年分所得税等確定申告書及び平成27年分所得税等確定申告書において,自らの職業を不動産賃貸業とした上で農業収入を計上していないことなどによれば,本件農地における生産物は,平成26年5月期以降,本件法人が販売しており,その売上げは,本件法人に帰属していたものと評価できる一方,控訴人は,遅くとも平成26年1月1日以降は,本件農地における生産物を販売していなかったと認めることが相当である(上記各確定申告書は,G税理士による代理申告がされているところ,従前の取扱いを引き続き行う場面における確定申告と異なり,本件法人を設立し控訴人の職業の記載や収入について取扱いを変更する内容を含む確定申告を行う際に,税理士がその確定申告書の内容を確認していないとは考え難く,上記各確定申告書に誤りがあったとは認め難いことも原判決が認定説示するとおりであ る。)。 よって,上記控訴人の主張を採用することはできない。 ⑵ 控訴人は,第2の3⑵のとおり主張する。 本件法人が控訴人に支払っていた土地の賃料の内訳を示した書類(乙29の5枚目)にαの土地についての記 控訴人の主張を採用することはできない。 ⑵ 控訴人は,第2の3⑵のとおり主張する。 本件法人が控訴人に支払っていた土地の賃料の内訳を示した書類(乙29の5枚目)にαの土地についての記載はないものの,本件農地(8830㎡)とαの土地(556㎡)とを比較すると,本件農地の方が相当に広い土地である(本件特例農地等のうち本件農地が占める面積の割合は94%以上である。)ことからすれば,控訴人が主張するように本件農地とαの土地が一体的に利用されているとしても,そのことをもって,本件法人が控訴人に支払っていた土地の賃料の内訳に関する上記書類の記載中に,本件農地が含まれていることが誤りであるということはできず(本件法人が控訴人に支払う土地の賃料は固定資産税評価額の2倍の金額を目安に定められたことが認められるところ(原判決第3の2⑵ア),乙第29号証によれば,賃料算定の基礎となった固定資産税評価額の中に本件農地のそれが含まれていることは明らかであり,その比率も比較的大きなものであることからして,これが誤りであるとは到底考えられない。),むしろαの土地が誤って欠落している可能性すら考えられないではない。また,αの土地について控訴人と本件法人との間で賃貸借契約が締結されていたと認められないとしても,上記1で訂正の上引用した原判決(第3の2⑴,⑵オ)が認定説示するとおり,本件法人の設立後,本件農地における経営の主体は控訴人から本件法人に移行したものとみるのが相当であり,本件農地の耕作は,控訴人が本件法人が営む農業に従事していたものというべきであること,控訴人が平成26年分以降の所得税等の確定申告において,職業を不動産賃貸業とし,農業収入を計上していないこと,平成26年以降,控訴人が農作物を販売したことや農業を営むと評価し得る程度に自家消費 と,控訴人が平成26年分以降の所得税等の確定申告において,職業を不動産賃貸業とし,農業収入を計上していないこと,平成26年以降,控訴人が農作物を販売したことや農業を営むと評価し得る程度に自家消費をしていると認めるに足りる証拠がないこと,本件特例農地等のうち本件農地が占める面積の割合は94%以上であること 等にも照らせば,遅くとも平成26年1月1日の時点においては,控訴人が本件特例農地等において事業として農業の経営をしているということはできず(控訴人がαの土地についてのみで事業として農業の経営をしているということもできない。),同時点において,農業相続人の事業としての農業経営を廃止したものと評価することができる。 よって,控訴人の上記主張を採用することはできない。 ⑶ 控訴人は,その他,原判決に事実誤認や証拠評価の誤りがある旨るる主張するが,いずれも原審での主張を繰り返すものであって,上記説示に照らして理由がなく,これを採用することはできない。 3 以上によれば,控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部 裁判長裁判官川神裕 裁判官武藤真紀子 裁判官中雄一朗

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