本件は、株式会社ウイル・コーポレーションが特許権を有する印刷物に関して、大日本印刷株式会社に対して特許権侵害の差止め及び損害賠償を求めた事件である。原告は、被告が製造・譲渡した製品が特許権に基づく技術的範囲に属すると主張し、特許権侵害を理由に1億4540万円の損害賠償を請求した。主要な争点は、被告製品が原告の特許権に抵触するかどうかであり、裁判所は被告製品が特許権の技術的範囲に含まれないと判断した。結果として、原告の請求は棄却され、訴訟費用は原告が負担することとなった。
平成28年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第3167号特許権侵害行為差止等請求事件(以下「A事件」という。)平成26年(ワ)第31922号損害賠償請求事件(以下「B事件」という。)口頭弁論終結日平成28年6月10日判決A及びB事件原告株式会社ウイル・コーポレーション同訴訟代理人弁護士生田哲郎同高橋隆二同佐野辰巳同中所昌司B事件原告訴訟代理人弁護士名越秀夫同森本 晋A及びB事件被告大日本印刷株式会社同訴訟代理人弁護士櫻井彰人同訴訟代理人弁理士金山 聡同藤枡裕実 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 A事件(1) 被告は,別紙物件目録(原告主張分)1ないし4に記載の製品を製造,譲渡してはならない。 (2) 被告は,原告に対し,1億4540万円及びうち1億3140万円に対す る平成25年3月1日から,うち1400万円に対する同年6月12日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 仮執行宣言 2 B事件(1) 被告は,原告に対し,1億7382万9040円及びこれに対する平成26年12月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,名称を「印刷物」とする特許権を有する原告が,被告は別紙物件目録 に対する平成26年12月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,名称を「印刷物」とする特許権を有する原告が,被告は別紙物件目録(原告主張分)1ないし8の製品(以下,同目録1ないし8の番号に従って「被告製品1」ないし「被告製品8」といい,併せて「被告各製品」という。)を製造,譲渡しているところ,これらは上記特許権に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,次のとおり求めた事案である。 (1) A事件において,上記特許権に基づいて被告製品1ないし4の製造及び譲渡の差止め,及び被告製品1ないし4による特許権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として,損害額合計1億7785万7155円の一部請求として1億4540万円及びうち1億3140万円に対する平成25年3月1日(A事件の訴状送達の日の翌日)から,うち1400万円に対する同年6月12日(訴え変更申立書の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(2) B事件において,被告製品5ないし8による特許権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として,損害額合計1億7382万9040円及びこれに対する平成26年12月7日(B事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実。なお,以下,A事件で提出された書証を「甲 A」「乙A」,B事件で提出された書証を「甲B」「乙B」と表記する。)(1) 当事者ア原告は,平成24年5月1日に株式会社ウイルコホールディングス(旧商号は「株式会社ウイルコ」)から新設分割によって設立され,情 で提出された書証を「甲B」「乙B」と表記する。)(1) 当事者ア原告は,平成24年5月1日に株式会社ウイルコホールディングス(旧商号は「株式会社ウイルコ」)から新設分割によって設立され,情報・印刷事業に属する特許権その他の権利義務を承継した,印刷業等を営む株式会社である。 イ被告は,印刷業等を営む株式会社である。 (2) 原告の有する特許権ア原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)。 発明の名称印刷物特許番号第4310416号出願日平成16年2月24日登録日平成21年5月22日イ本件特許の特許請求の範囲,明細書及び図面の内容は,別紙特許公報(甲A2,甲B2)記載のとおりである(ただし,後記(4)記載の訂正の主張がされる前のもの。以下,上記明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。 ウ本件特許の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲における請求項の数は3であるが,そのうち請求項1の記載は,別紙特許公報の特許請求の範囲【請求項1】記載のとおりである(以下,同請求項記載の発明を「本件発明」という。)。 (3) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い,「構成要件A」などという。)A 左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であって, B 中央面部(1)は,所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するもの(4)が印刷されていること,C 左側面部(2)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,D 右側面部(3)の裏面は,当該分離して使 左側面部(2)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,D 右側面部(3)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること,E 当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が,前記中央面部(1)の裏面及び当該分離して使用するもの(4)に貼着していることF 当該分離して使用するもの(4)の周囲に切り込みが入っていること,G からなることを特徴とする印刷物。 (4) 本件訂正原告は,平成27年9月24日の弁論準備手続期日において,本件特許については訂正が時期的に可能になり次第,以下の訂正を行う予定である旨の主張を行った(以下,上記主張に係る訂正を「本件訂正」といい,本件訂正後の本件発明を「本件訂正発明」という。)。 ア特許請求の範囲請求項1(本件発明)に「印刷物」とあるのを,全て「レスポンス用葉書付き広告印刷物に訂正する(以下「訂正事項1」という。)。 イ特許請求の範囲請求項1(本件発明)に「分離して使用するもの(4)」とあるのを,全て「レスポンス用葉書」に訂正する(以下「訂正事項2」という。)。 ウ特許請求の範囲請求項1(本件発明)に「当該分離して使用するもの(4)の周囲に切り込みが入っていること,」とあるのを,「当該中央 面部(1)の当該レスポンス用葉書の周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っていること,」に訂正する(以下「訂正事項3」という。)。 エ特許請求の範囲請求項1(本件発明)に「当該左側面部(2)の裏面と当該右側面部(3)の表面とは重ならないこと,当該左側面部(2)の表面と当該右側面部(3)の (以下「訂正事項3」という。)。 エ特許請求の範囲請求項1(本件発明)に「当該左側面部(2)の裏面と当該右側面部(3)の表面とは重ならないこと,当該左側面部(2)の表面と当該右側面部(3)の裏面とは重ならないこと,」という要件を追加する訂正をする(以下「訂正事項4」という。)。 オ特許請求の範囲請求項2及び請求項3を削除する(以下「訂正事項5」という。)。 カ明細書を,別紙訂正明細書(以下「本件訂正明細書」という。)のとおり訂正する(以下「訂正事項6」という。)(5) 本件訂正発明の内容本件訂正発明の内容は,次のとおりである(下線部が訂正箇所)。 「 左側面部と中央面部と右側面部とからなる,レスポンス用葉書付き広告印刷物であって,中央面部(1)は,所定の箇所に所定の大きさのレスポンス用葉書が印刷されていること,左側面部(2)の裏面は,当該レスポンス用葉書の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,右側面部(3)の裏面は,当該レスポンス用葉書の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること,当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が,前記中央面部(1)の裏面及び当該レスポンス用葉書に貼着していること当該中央面部(1)の当該レスポンス用葉書の周囲に一周にわたって連 続した切り込みが入っていること,当該左側面部(2)の裏面と当該右側面部(3)の表面とは重ならないこと,当該左側面部(2)の表面と当該右側面部(3)の裏面とは重ならないこと,からなることを特徴とするレスポンス用葉書付き広告印刷物。」(6) 本件訂正発明の構成要件の分説本件訂正発明を構 当該左側面部(2)の表面と当該右側面部(3)の裏面とは重ならないこと,からなることを特徴とするレスポンス用葉書付き広告印刷物。」(6) 本件訂正発明の構成要件の分説本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記載に従い,「構成要件A'」などという。)。 A’左側面部と中央面部と右側面部とからなる,レスポンス用葉書付き広告印刷物であって,B’中央面部(1)は,所定の箇所に所定の大きさのレスポンス用葉書が印刷されていること,C’左側面部(2)の裏面は,当該レスポンス用葉書の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,D’右側面部(3)の裏面は,当該レスポンス用葉書の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること,E’当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が,前記中央面部(1)の裏面及び当該レスポンス用葉書に貼着していることF’当該中央面部(1)の当該レスポンス用葉書の周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っていること,G’当該左側面部(2)の裏面と当該右側面部(3)の表面とは重ならないこと,H’当該左側面部(2)の表面と当該右側面部(3)の裏面とは重ならない こと,I’からなることを特徴とするレスポンス用葉書付き広告印刷物。 (7) 被告の行為被告は,業として,被告各製品の製造及び譲渡を行っている(ただし,後述のとおり,被告各製品の構成の一部については当事者間に争いがある。)。 (8) 被告各製品における本件発明の構成要件充足性被告各製品は本件発明の構成要件A,B,F,Gを充足する。 (9) 被告各製品における本件訂正発明の構成要件充足性 者間に争いがある。)。 (8) 被告各製品における本件発明の構成要件充足性被告各製品は本件発明の構成要件A,B,F,Gを充足する。 (9) 被告各製品における本件訂正発明の構成要件充足性被告各製品は本件訂正発明の構成要件A',B',F',G',H',I'を充足する。 (10) 本件発明に先立つ公知技術本件発明に先立つ公知技術が記載された刊行物として,以下の文献が存在する。 ア特開2002-113981号公報(公開日平成14年4月16日。 乙B1。以下「乙B1文献」といい,同公報に係る発明を「引用発明1」という。)イ特開2001-180154号公報(公開日平成13年7月3日。乙B2。以下「乙B2文献」といい,同公報に係る発明を「引用発明2」という。)ウ実用新案登録第3037602号公報(発行日平成9年5月20日。 乙B3。以下「乙B3文献」といい,同公報に係る発明を「引用発明3」という。)エ実用新案登録第3070251号公報(発行日平成12年7月28日。 乙B4。以下「乙B4文献」といい,同公報に係る発明を「引用発明4」という。)オ米国特許第6349829号明細書(特許日2002年〔平成14 年〕2月26日。乙B5。以下「乙B5文献」といい,同公報に係る発明を「引用発明5」という。)カ特開2002-96887号公報(公開日平成14年4月2日。乙B6。以下「乙B6文献」という。)キ米国特許出願公開第2002/0100797号明細書(公開日2002年〔平成14年〕8月1日。乙B7。以下「乙B7文献」という。)ク実用新案登録第2535324号公報(発行日平成9年5月14日。 乙B8。以下「乙B8文献」という。)ケ実願平2-66333号(実開平4-24387号)のマイクロフィル 文献」という。)ク実用新案登録第2535324号公報(発行日平成9年5月14日。 乙B8。以下「乙B8文献」という。)ケ実願平2-66333号(実開平4-24387号)のマイクロフィルム(公開日平成4年2月27日。乙B9。以下「乙B9文献」という。)コ実開平5-63875号公報(公開日平成5年8月24日。乙B32。 以下「乙B32文献」という。)サ特開平6-72071号公報(公開日平成6年3月15日。乙B33。 以下「乙B33文献」という。)シ特開平6-199075号公報(公開日平成6年7月19日。乙B40。以下「乙B40文献」という。)ス特開平11-48652号公報(公開日平成11年2月23日。乙B41。以下「乙B41文献」という。)セ特開2000-127661号公報(公開日平成12年5月9日。乙B42。以下「乙B42文献」という。) 3 争点(1) 被告各製品の構成(2) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するかア構成要件Cの充足性 イ構成要件Dの充足性ウ構成要件Eの充足性エ作用効果不奏功の抗弁オ均等侵害の成否(3) 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものかア乙B1文献による新規性欠如(無効理由1)イ乙B1文献を主引例とし乙B5文献と組み合わせることによる進歩性欠如(無効理由2-1)ウ乙B1文献を主引例とし,周知技術と組み合わせることによる進歩性欠如(無効理由2-2)エ乙B2文献を主引例とし,乙B8文献と組み合わせることによる進歩性欠如(無効理由3-1)オ乙B2文献を主引例とし,乙B8文献及び周知技術と組み合わせることによる進歩性欠如(無効理由3-2)カ乙B3文献を主引例とする進歩性欠如(無効理由4)キ乙 性欠如(無効理由3-1)オ乙B2文献を主引例とし,乙B8文献及び周知技術と組み合わせることによる進歩性欠如(無効理由3-2)カ乙B3文献を主引例とする進歩性欠如(無効理由4)キ乙B4文献を主引例とする進歩性欠如(無効理由5)ク乙B5文献を主引例とする進歩性欠如(無効理由6)ケ明確性要件違反(無効理由7)コサポート要件違反(無効理由8)(4) 本件訂正による対抗主張の成否ア原告は特許庁に対し適法に訂正請求等を行っているかイ本件訂正が訂正要件を充たしているかウ本件訂正により争点(3)の無効理由を解消することができるか(ア) 無効理由1の解消(イ) 無効理由2-1及び2-2の解消(ウ) 無効理由3-1及び3-2の解消 (エ) 無効理由4の解消(オ) 無効理由7の解消(カ) 無効理由8の解消エ被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するかオ新たな無効理由の存否(ア) 実施可能要件違反(イ) サポート要件違反(ウ) 構成要件G'及びH'並びにC'及びD'に関する明確性要件違反(エ) プロダクト・バイ・プロセス・クレームとしての明確性要件違反(5) 損害発生の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(被告各製品の構成)について〔原告の主張〕被告各製品の構成は,別紙物件目録(原告主張分)1ないし8記載のとおりである。 〔被告の主張〕否認する。被告各製品の構成は,別紙物件目録(被告主張分)1ないし8記載のとおりである(原告の主張する構成と異なる部分を下線で示した。)。 2 争点(2)ア(構成要件Cの充足性)について〔原告の主張〕構成要件Cの「分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部」とは,本件発明 告の主張する構成と異なる部分を下線で示した。)。 2 争点(2)ア(構成要件Cの充足性)について〔原告の主張〕構成要件Cの「分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部」とは,本件発明の作用効果,技術思想から解釈すると,「分離して使用するもの(4)の上方の領域,下方の領域,左方の領域」と解釈するのが自然である。 また,「上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分」は,「及び」の前後で分けて読み,「上部,下部,左側部の内側…に該当する部分」と「外側に該当する部分」とが併記されていると読むべきである。さらに,「上部,下 部,左側部の」とは,「上部」,「下部」又は「左側部」のいずれかを意味するのであって,全てを意味するのではない。 したがって,被告各製品は,構成要件Cを充足する。 〔被告の主張〕構成要件Cの「分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部」とは,「分離して使用するもの(4)と中央面部との境界における上部,下部,左側部」とみるべきである。また,「の内側及び外側」の文言は,その前の文章の「上部,下部,左側部」のそれぞれに掛かり,しかも「分離して使用するもの(4)」の内側及び外側を意味するから,「分離して使用するもの(4)…の内側及び外側」とは,分離して使用するもの(4)と中央面部との境界を挟んだ内側及び外側であり,「上部,下部,左側部」の各内側及び外側が互いに区別できるように,当該境界の内側近傍及び外側近傍を意味するものである。 しかるに,被告各製品には上記各部分のうち接着剤が全く塗布されていない部分があるから,被告各製品は構成要件Cを充足しない。 3 争点(2)イ(構成要件Dの充足性)について〔原告の主張〕構成要件Dの「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外 があるから,被告各製品は構成要件Cを充足しない。 3 争点(2)イ(構成要件Dの充足性)について〔原告の主張〕構成要件Dの「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分」についても,構成要件Cにおける原告の主張と同様の解釈をすべきであるから,被告各製品は構成要件Dを充足する。 〔被告の主張〕構成要件Cにおける被告の主張と同様の解釈をすべきであるから,被告各製品は構成要件Dを充足しない。 4 争点(2)ウ(構成要件Eの充足性)について〔原告の主張〕仮に,構成要件Eの「貼着している」を,被告の主張するとおり「構成要件C及びDに示された位置に塗布された粘着剤により貼着されること」と解した としても,被告各製品は構成要件C及びDを充足するので,構成要件Eも充足する。 〔被告の主張〕構成要件Eの「貼着している」は,構成要件C及びDに示された位置に塗布された粘着剤により貼着されることを意味しており,単に左側面部の裏面と右側面部の裏面が中央面部の裏面及び分離して使用するものに貼着していればよいわけではない。 したがって,被告各製品は,構成要件C及びDの位置に接着剤が塗布されていない以上,いずれも構成要件Eを充足しない。 5 争点(2)エ(作用効果不奏功の抗弁)について〔被告の主張〕本件発明の作用効果は,後から開かれた側面部に分離して使用するものが貼着したまま付いてくることによるレスポンス向上の期待がさらに多くなるということであり,このことは,本件明細書等の発明の効果の記載(段落【0012】)から明らかであるばかりか,従来技術の問題点及び課題の記載(段落【0004】~【0006】),課題を解決するための手段の記載(段落【0007】),実施態様に関する記載(段落【 載(段落【0012】)から明らかであるばかりか,従来技術の問題点及び課題の記載(段落【0004】~【0006】),課題を解決するための手段の記載(段落【0007】),実施態様に関する記載(段落【0017】~【0018】)及び図面(図3)からも裏付けられる。 これに対し,被告各製品は,いずれの製品も「分離して使用するもの」(葉書)は後から開かれる側面部に付いてこず,本件発明の作用効果を奏しない。 これは,被告各製品のいずれもが,左右側面部の裏面において,葉書(分離して使用するもの)の上部,下部,左右側部の外側に該当する部分に接着剤が塗布されておらず,また内側近傍に該当する部分にも塗布されていないところがあるからである。 したがって,被告各製品は本件発明の作用効果を奏しない。 〔原告の主張〕 本件発明は,広告などの印刷物に付いている葉書等を切り取ろうとする意思を持たずに,当該印刷物を開くと自動的に手にすることができ,それら葉書等を使用するものに対するアピール力が高く,例えば返信用葉書の場合には,すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなるという効果が生じるものである(本件明細書等の段落【0012】参照)。後から開いた右側面部又は左側面部の開封速度が極めて速い場合などには,葉書は側面部から剥がれてしまうことがあるが,この場合でも,葉書は自動的に分離され,レスポンス向上が期待できる。 したがって,本件発明の作用効果は,「分離して使用するものが付いてくる」場合に限定されないのであるから,被告各製品において葉書が付いてくるか否かにかかわらず,被告各製品は本件発明の作用効果を奏する(主位的主張)。 仮に,本件発明の作用効果が「分離して使用するものが付いてくる」場合に限定されるとしても,被告各製 て葉書が付いてくるか否かにかかわらず,被告各製品は本件発明の作用効果を奏する(主位的主張)。 仮に,本件発明の作用効果が「分離して使用するものが付いてくる」場合に限定されるとしても,被告各製品は,通常の方法で開けば葉書が付いてくるのであるから,本件発明の作用効果を奏する(予備的主張)。 6 争点(2)オ(均等侵害の成否)について〔原告の主張〕被告各製品は,仮に本件発明の構成要件C,Dの一方又は双方を文言上は充足せず,そのため構成要件Eも充足しないとしても,以下のとおり本件発明と均等であるため,本件発明の技術的範囲に属する。 (1) 本件発明と被告各製品の相違点仮に,構成要件C(ないしD)に係る「分離して使用するもの(4)の外側に該当する部分(5,6)」の技術的意義が「分離して使用するもの(4)の上部,下部,左(ないし右)側部の外側に該当する部分」であって,一過性の粘着剤が塗布される部分が上部,下部,左(ないし右)側部のそれぞれに対応して三か所必要と解されるとすると,被告各製品と本件発明との 文言上の相違点は以下のとおりとなる。 ア被告製品1左側面部においては,当該分離して使用するものの左側部の外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 イ被告製品2左側面部においては,当該分離して使用するものの上部,左側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 ウ被告製品3左側面部においては,当該分離して使用するも 面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 ウ被告製品3左側面部においては,当該分離して使用するものの左側部の外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの右側部の外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 エ被告製品4左側面部においては,当該分離して使用するものの上部,左側部の各外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 オ被告製品5左側面部においては,当該分離して使用するものの左側部の外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 カ被告製品6左側面部においては,当該分離して使用するものの左側部の外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 キ被告製品7左側面部においては,当該分離して使用するものの左側部の外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 ク被告製品8左側面部においては,当該分離して使用するものの上部,左側部の各外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず, 当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 ク被告製品8左側面部においては,当該分離して使用するものの上部,左側部の各外側に該当する部分に粘着剤が塗布されておらず,右側面部においては,当該分離して使用するものの上部,右側部の各外側に該当する部分には粘着剤は塗布されていない点で,本件発明と相違する。 (2) 第1要件(発明の本質的部分でないこと)について本件発明に対する従来技術としては,本件明細書等の段落【0002】及び【0003】には,左側面部及び右側面部が開く,いわゆる観音開き構造の広告用印刷物が「特許文献1」として挙げられていたが,「特許文献1」の発明には葉書が付いていなかった(同段落【0004】)。また,他の従来技術として,本件明細書等の段落【0002】ないし【0003】には,左側面部及び右側面部が開く広告用印刷物に葉書が付いている技術が「特許文献2」として挙げられていたが,「特許文献2」の発明では葉書を切り取らなければならないという手間が依然として残っていた(同段落【0004】)。 これらの先行技術と比較すると,本件発明は,観音開き形状の印刷物にお いて,中央面部内に分離して使用するものを設け,当該分離して使用するものが,左側面部及び右側面部の双方に重なっており,かつ,当該分離して使用するものと左側面部及び右側面部とが一過性の粘着剤によって付着されている構成を採用している。そして,当該構成によって,先に開いた側面部については,分離して使用するものとその側面部との粘着剤が離れるものの,後から開く側面部については,中央面部の分離して使用するものが粘着剤によって当該側面部に付いてきて,かつ,分離して使用するものが側面部の端部から飛び出していることにより,使用者が自動的にこれを手に 後から開く側面部については,中央面部の分離して使用するものが粘着剤によって当該側面部に付いてきて,かつ,分離して使用するものが側面部の端部から飛び出していることにより,使用者が自動的にこれを手にすることになる,又は,後から開く側面部を開いた時に,分離して使用するものが自動的に分離して,使用者がこれを自動的に手にすることになる。上記構成によって,使用者に対するアピール力が大きくなり,分離して使用するものが葉書の場合にはレスポンスの向上を得ることが,本件発明の課題の解決手段における特徴的原理である。このため,本件発明の課題の解決手段における特徴的原理において,分離して使用するものに該当する部分の外側に塗布された粘着剤の有無は関係しない。 したがって,本件発明と被告各製品の文言上の相違点,すなわち,分離して使用するもの(葉書)の外側に該当する部分における粘着剤の有無は,本件発明の本質的部分には当たらない。 (3) 第2要件(置換可能性)について上記5の〔原告の主張〕のとおり,本件発明の作用効果は,分離して使用するもの(葉書)が側面部に付いてくる場合に限定されていない。また,被告各製品においても,普通の速さかつ普通の態様で開封すれば,葉書が側面部に付いてくる。 したがって,被告各製品においても,「すぐに葉書を出してもらえるというレスポンスの向上」(本件明細書等の段落【0012】)という本件発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する。 (4) 第3要件(置換容易性)について粘着剤の配置は,当業者が,適宜,容易に変更し得る設計事項である。一般に,粘着剤の塗布は,紙のシート等をベルトコンベアーで流しながら,金属製等のローラーに,水玉模様等のゴムシート等を適宜の形状に切り取って貼り付けて,連続的に塗布す 易に変更し得る設計事項である。一般に,粘着剤の塗布は,紙のシート等をベルトコンベアーで流しながら,金属製等のローラーに,水玉模様等のゴムシート等を適宜の形状に切り取って貼り付けて,連続的に塗布するなどの方法によって行われる。そして,当該ゴムシート等は,製品ごとないしロットごとに,適宜形状を設計したり,交換したりするのが一般的である。このため,粘着剤の塗布位置(粘着剤の配置)は,製品ごとないしロットごとに容易に変更し得る設計事項である。このことは,被告製品1から8までにおいて,それぞれ粘着剤の配置が変更されていることからも明らかであろう。 したがって,粘着剤の配置を被告各製品のものに置き換えることは,被告各製品の製造等の時点において容易に想到できたことである。 (5) 第5要件(意識的除外に当たらないこと)について本件では,被告が引用する本件明細書等の段落【0014】の記載を考慮しても,被告各製品の構成を排除する旨の,積極的に否定する記載はなく,特許権者の外形的な行動において禁反言の法理に照らして許されないといわれるような理由はないのであるから,均等侵害の第5要件に反しない。 〔被告の主張〕(1) 本件発明と被告各製品の相違点被告各製品と本件発明との相違点は次のとおりであり,原告の主張する相違点の特定は誤りである。 ア被告製品1左側面部においては,葉書(分離して使用するもの)の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,左側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,右側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本 と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,右側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 イ被告製品2左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,上部の内側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,左側部の内側近傍には上半分に該当する位置にのみ接着剤が塗布されている点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,上部及び右側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 ウ被告製品3左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,左側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,右側部の内側近傍には上半分に該当する位置にのみ接着剤が塗布されている点で本件発明と相違する。 エ被告製品4左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,右側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 オ被告製品5 左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,左側部の内側近傍に該当 剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 オ被告製品5 左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,左側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 カ被告製品6左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,上部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 キ被告製品7左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,左側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,右側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 ク被告製品8左側面部においては,葉書の上部,下部,左側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されておらず,左側部の内側近傍に該当する位置にも接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 また,右側面部においては,葉書の上部,下部,右側部の外側近傍に該当する位置に接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 (2) 第1要件(発明の本質的部分でないこと)について本件発明は,従来技術において広告等の印刷物にチケット,クーポン券, 傍に該当する位置に接着剤が塗布されていない点で本件発明と相違する。 (2) 第1要件(発明の本質的部分でないこと)について本件発明は,従来技術において広告等の印刷物にチケット,クーポン券, 葉書等が付いていないとか,チケット等が付いていてもチケット等を切り取らなければならないといった問題点(本件明細書等の段落【0004】,【0005】)が存在したことから,「葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」(同段落【0006】)を目的(課題)とするものであり,当該課題(目的)を解決する手段として特許請求の範囲の構成を採用したのであるが,本件発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核的,特徴的部分は,「左側面部(2)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されている」(構成要件C)及び「右側面部(3)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されている」(構成要件D)である。 すなわち,左右側面部の裏面において,分離して使用するもの(4)の上部,下部,左右側部の内側の他に外側に該当する部分にも粘着剤が塗布されることにより,左右側面部に分離して使用するもの(4)と中央面部が密着して中央面部と各側面部が容易に剥がれることがなくなることから,後から開かれた側面部に分離して使用するものが付いてくることになり,当 ことにより,左右側面部に分離して使用するもの(4)と中央面部が密着して中央面部と各側面部が容易に剥がれることがなくなることから,後から開かれた側面部に分離して使用するものが付いてくることになり,当該印刷物の使用者が分離して使用するものを自動的に手にし,レスポンス向上の期待がさらに多くなるのである。 これに対し,被告各製品は,本件発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分のうち,左右側面部の裏面において葉書(分離して使用するもの)の上部,下部,左右側部の外側に該当する部分に接着剤は塗布されていないばかりか,内側に該当する部分のうちの一部にも接着剤が塗布されていない。 このように,被告各製品は,本件発明と異なる構成を採用することにより,葉書と中央面部の境界部分から開かれやすく,左右側面部と中央面部及び葉書が剥がされやすくするとの効果を奏しているのである。 したがって,被告各製品は本件発明と同一の効果を奏せず,本件発明特有の課題解決手段を基礎付ける構成を有しないことから,均等の第1要件(発明の本質的部分ではないこと)を充足しない。 (3) 第2要件(置換可能性)について上記5の〔被告の主張〕のとおり,本件発明の作用効果は,後から開かれた側面部に分離して使用するものが貼着したまま付いてくることにより,分離して使用するものを切り取ろうとする意思を持たずに自動的に手にすることができることになり,レスポンスの向上の期待がさらに多くなるというものである。 これに対し,被告各製品は,幅狭の側面部を先に開いた場合には後から開かれた幅広の側面部に,幅広の側面部を先に開いた場合には後から開かれた幅狭の側面部に,葉書(分離して使用するもの)は付いてこない。 したがって,被告各製品は本件発明と同一の効果を奏するものではなく,均等 広の側面部に,幅広の側面部を先に開いた場合には後から開かれた幅狭の側面部に,葉書(分離して使用するもの)は付いてこない。 したがって,被告各製品は本件発明と同一の効果を奏するものではなく,均等侵害の第2要件(置換可能性)を充足しない。 (4) 第3要件(置換容易性)について本件発明は,左又は右側面部の裏面において,分離して使用するもの(葉書)と中央面部の境界全体の内側近傍と外側近傍に粘着剤が塗布されている場合には,左右側面部を折り曲げて中央面部及び分離して使用するものに貼着すると,分離して使用するものと中央面部が側面部上で境界を挟んで密着することになり,中央面部と分離して使用するものとが一体化して後から開かれる側面部に付いてくるまで分離して使用するものが切り込み枠内で前後左右に動かず欠落することがない。しかし,左右側面部において分離して使用するものの外側近傍に該当する部分に粘着剤が塗布されていないと,左右 側面部を折り曲げて貼着しても左右側面部は分離して使用するものだけと貼着し中央面部とは貼着しなかったり,貼着位置が近傍から外側に離れていると,分離して使用するものの周囲に切り込みが入った場合に,側面部と中央面部に隙間ができて側面部が開かれやすくなり,その結果,側面部を開く過程で分離して使用するものが切り込み枠内で自由に動き,後から開かれる側面部に付いてこなくなるのである。 これに対し,被告各製品は,葉書と中央面部の境界部分から開かれやすく,左右側面部と中央面部及び葉書が剥がされやすくするために,いずれの製品でも,左右側面部の裏面において,葉書と中央面部の境界の外側近傍に該当する部分には接着剤を塗布せず,当該部分で左右側面部と中央面部が接着しないようにするとともに,葉書と中央面部の境界の上部,下部,左右側部の内 面部の裏面において,葉書と中央面部の境界の外側近傍に該当する部分には接着剤を塗布せず,当該部分で左右側面部と中央面部が接着しないようにするとともに,葉書と中央面部の境界の上部,下部,左右側部の内側近傍でも接着剤の塗布位置を特定しているのである。 したがって,被告各製品の左右側面部における接着剤の塗布位置は,当業者が容易に想到できるものではなく,被告各製品は均等侵害の第3要件(置換容易性)を充足しない。 (5) 第5要件(意識的除外に当たらないこと)について上記(2)のとおり,本件発明は,従来技術において広告等の印刷物にチケット,クーポン券,葉書等が付いていないとか,チケット等が付いていてもチケット等を切り取らなければならないといった問題点(本件明細書等の段落【0004】,【0005】)が存在したことから,「葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」(同段落【0006】)を目的(課題)とするものであり,当該課題(目的)を解決する手段として特許請求の範囲の構成を採用したのであ るが,本件発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核的,特徴的部分は,「左側面部(2)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されている」(構成要件C)及び「右側面部(3)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されている 過性の粘着剤が塗布されている」(構成要件C)及び「右側面部(3)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されている」(構成要件D)である。 また,本件明細書等の【発明を実施するための最良の形態】においても,上記構成を前提とした図1ないし3が示されるとともに,その説明(段落【0015】~【0018】)がされ,さらに,段落【0014】では,「なお,本図面では図示していないが,左側面部2の裏面の上部,下部,左側部,右側面部3の裏面の上部,下部,右側部,又は中央面部1の裏面の上部,下部にも一過性の粘着剤を塗布して良い。」と記載され,上記構成(構成要件C,D)中の「上部,下部,左側部の…外側に該当する部分」及び「上部,下部,右側部の…外側に該当する部分」が,左右側面部の裏面の上部,下部,左右側部と異なる位置であることが示されている。 このように,本件明細書等の上記記載に照らせば,原告(出願人)は,左右側面部の裏面において,分離して使用するもの(4)の内側と外側に該当する位置として広い範囲が存在することを想起した上で,「分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分」(構成要件C)及び「分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分」(構成要件D)という構成に限定する記載をし,同構成によりはじめて本件発明の課題(目的)を解決できるものとしたと認められる。 したがって,原告は,左右側面部において,分離して使用するものの「上部,下部,右(ないし左)側部の内側及び外側に該当する部分」の全ての部 分に一過性の粘着剤が塗布されている構成以外の構成を意識的に除外したものとみるのが相当であって,これら するものの「上部,下部,右(ないし左)側部の内側及び外側に該当する部分」の全ての部 分に一過性の粘着剤が塗布されている構成以外の構成を意識的に除外したものとみるのが相当であって,これらのいずれの部分にも一過性の接着剤が塗布されていない被告各製品は,均等侵害の第5要件(意識的除外に当たらないこと)を欠くことが明らかである。 7 争点(3)ア(無効理由1)について〔被告の主張〕以下のとおり,本件発明は,本件発明の出願日(平成16年2月24日)より前の平成14年4月16日に頒布された刊行物である乙B1文献に記載された引用発明1と同一の発明であって,新規性を欠くから,特許法29条1項3号により特許を受けることができず,本件特許は同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (1) 引用発明1の内容乙B1文献には,以下の発明が記載されている。 「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,情報記録体がシート状基材から打ち抜かれて分離可能に形成され,情報記録体が形成されたシート状基材の面とこれに重なる面には,情報記録体を被覆する領域に該当する部分に剥離可能な弱粘着性の粘着剤が塗布されており,当該粘着剤が塗布された面が,情報記録体が形成された面に貼着されたシート状基材。」(2) 本件発明と引用発明1との対比ア構成要件Aについて引用発明1は,巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であり,巻き折り又は観音開き折りは,左側面部と中央面部と右側面部からなるものである。 また,引用発明1のシート状基材には,宣伝広告等の印刷がされているから(乙B1文献の段落【0009】),引用発明1は印刷物である。 したがって,引用発明1は,「左側面部と中央面部と右側面部とから なる印 シート状基材には,宣伝広告等の印刷がされているから(乙B1文献の段落【0009】),引用発明1は印刷物である。 したがって,引用発明1は,「左側面部と中央面部と右側面部とから なる印刷物」である。 イ構成要件Bについて引用発明1においては,情報記録体がシート状基材から打ち抜かれ分離されており,この情報記録体は「分離して使用するもの」である。 次に,引用発明1においては,情報記録体が形成されたシート状基材の一方の面を別体の被覆材で被覆するのに代えて,シート状基材自体を巻き折り又は観音開き折りの状態としている。このうち観音開き折りの状態では,情報記録体が形成されたシート状基材の部分は観音開き折りの中央面部となり,情報記録体は中央面部に形成されていることとなる。 また,引用発明1のシート状基材は,葉書等の郵便物として郵送可能であり(乙B1文献の【請求項9】),情報記録体にはCDやカード類が含まれ(同【請求項8】),葉書とCDやカード類の大きさの関係から,引用発明1のシート状基材を観音開き折りとした場合,情報記録体が中央面部に形成されるのは明らかである。よって,乙B1文献には,引用発明1として,中央面部に情報記録体が形成されていることが記載されているに等しい。 また,情報記録体は,独立した通常のディスクやカード類と同様の使用方法で使用することができるものであり(乙B1文献の段落【0004】),印刷が施されたものであることは明らかである。 したがって,引用発明1においては,「中央面部は,所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するもの(情報記録体)が印刷されていること」となる。 ウ構成要件CないしEについて引用発明1においては,情報記録体が形成されたシート状基材の面とこれに重なる面が弱粘着性の粘着剤により 使用するもの(情報記録体)が印刷されていること」となる。 ウ構成要件CないしEについて引用発明1においては,情報記録体が形成されたシート状基材の面とこれに重なる面が弱粘着性の粘着剤により剥離可能に貼着されていることから(乙B1文献の段落【0007】,【0010】),情報記録体 が形成されたシート状基材の面に重なる面,すなわち,観音開き折りとした場合の左右側面には,情報記録体を被覆する領域に該当する部分に剥離可能な弱粘着性の粘着剤が塗布されている。 そして,「情報記録体を被覆する領域」とは,「被覆」の意味からすれば,少なくとも,情報記録体の表面全体を含み,さらに中央面部における情報記録体の外周縁を含む領域である。 よって,引用発明1においては,情報記録体に重なるシート状基材の左右側面部の裏面は,情報記録体(分離して使用するもの)の上部,下部,左右側部の内側及び外側に該当する部分に弱粘着性の粘着剤が塗布され,左右側面部の裏面が中央面部の裏面及び情報記録体(分離して使用するもの)に貼着していることが記載されているに等しい。 また,弱粘着性の粘着剤は,疑似接着するための手段であるから,本件発明の「一過性の粘着剤」である。 したがって,引用発明1においては,「左側面部の裏面は,当該分離して使用するもの(情報記録体)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され」,「右側面部の裏面は,当該分離して使用するもの(情報記録体)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され」,「左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が,前記中央面部の裏面及び当該分離して使用するもの(情報記録体)に貼着している」こととなる。 エ構成要件Fについて引用発明1においては,情報記 れ」,「左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が,前記中央面部の裏面及び当該分離して使用するもの(情報記録体)に貼着している」こととなる。 エ構成要件Fについて引用発明1においては,情報記録体が,シート状の基材から打ち抜かれて分離されていることから,「分離して使用するもの(情報記録体)の周囲に切り込みが入っている」こととなる。 オ構成要件Gについて上記アで述べたとおり,引用発明1は「印刷物」である。 (3) 小括以上のように,引用発明1は,本件発明の構成要件AないしGの全てを備えているから,本件発明と同一である。 そして,引用発明1は,その構造上,シート状基材から情報記録体を切り取ろうとする意思を持たずに,各側面部を剥がせば,後から開く側面部に情報記録体(分離して使用するもの)が付いてきて,情報記録体を自動的に手にするという作用効果を奏することは明らかであり,これは,本件発明の作用効果と同一である。 したがって,本件発明は新規性を欠く。 〔原告の主張〕(1) 引用発明1の内容乙B1文献には,同文献の図2に示されている二つ折りの場合を,巻き折りや観音開き折りの場合に変形した場合に,情報記録体をどの面に配置するのか,何ら開示されておらず,不明である。したがって,当業者は,巻き折りや観音開き折りの変形例を具体的に認識することができないのであるから,乙B1文献に開示された引用発明1の構成として,「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」かつ,情報記録体を有する構成を認定することはできない。 (2) 本件発明と引用発明1との対比ア構成要件Aについて上記(1)のように,乙B1文献に開示された引用発明1として,「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」という構成を認 (2) 本件発明と引用発明1との対比ア構成要件Aについて上記(1)のように,乙B1文献に開示された引用発明1として,「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」という構成を認定することはできない。 したがって,引用発明1は,左側面部と中央面部と右側面部の三つの面を有しておらず,乙B1文献の図2のように2面しか有していない。 すなわち,本件発明は左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物 であるのに対し,引用発明1は2面しか有しない。 イ構成要件Bについて仮に,引用発明1が「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」という構成を有すると解したとしても,「観音開き折り」とは左側面部と右側面部を中央面部側に折り畳み,さらに中央面部を二つ折りにして4重にする折り方をいうのであって,情報記録体は中央面部ではなく,左側面部又は右側面部に形成されることになる。 すなわち,本件発明では「中央面部」に分離して使用するものが印刷されているのに対し,引用発明1では「左側面部又は右側面部」に情報記録体が形成されている。 ウ構成要件CないしEについて仮に,引用発明1が「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」という構成を有し,かつ,観音開き折りの場合に情報記録体が中央面部に形成される場合があると解したとしても,情報記録体は,中央面部上の,左側面部又は右側面部のいずれか1面にのみ重なる位置に形成される。すなわち,本件発明では,左側面部及び右側面部の両方が,中央面部上の分離して使用するものに貼着されているのに対して,引用発明1では,左側面部又は右側面部のいずれか一方のみが,中央面部上の分離して使用するもの(情報記録体)に貼着している。 なお,乙B1文献の段落【0016】には,「受取人は れているのに対して,引用発明1では,左側面部又は右側面部のいずれか一方のみが,中央面部上の分離して使用するもの(情報記録体)に貼着している。 なお,乙B1文献の段落【0016】には,「受取人はCDの情報記録体1を剥離可能に疑似接着している下側のシート状基材5の疑似接着部分6から引き剥がし分離して取り出すことができる。」と記載されているように,乙B1文献では,使用者がCD等の分離して使用するものを直接「引き剥がし分離して取り出す」ことが想定されているのであって,本件発明のように,切り取ろうとする意思を持たずに,当該印刷物を開くと自動的に手にすることができるというような作用効果は全く想 定されていない。この点からも,乙B1文献に,情報記録体が左側面部と右側面部の両方に貼着している構成が開示されているとは,到底いえない。 8 争点(3)イ(無効理由2-1)について〔被告の主張〕仮に本件発明に乙B1文献に記載のない事項があるとしても,本件発明は,乙B1文献に記載された引用発明1を主引例とし,これに乙B5文献に記載された引用発明5を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明は進歩性を欠くから,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (1) 引用発明1の内容引用発明1の内容は,前記7の〔被告の主張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明1との対比仮に,乙B1文献には,中央面部に情報記録体が形成され,左右側面部が中央面部及び情報記録体に貼着することが記載されているに等しいといえないとした場合,本件発明と引用発明1とは,以下の2点で相違している。 ア本件発明は,中央 部に情報記録体が形成され,左右側面部が中央面部及び情報記録体に貼着することが記載されているに等しいといえないとした場合,本件発明と引用発明1とは,以下の2点で相違している。 ア本件発明は,中央面部に分離して使用するものが印刷されているのに対して,引用発明1では,分離して使用するもの(情報記録体)が印刷(形成)された面部が中央面部であるかが不明である点(以下「相違点a1」という。)イ本件発明は,左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方が,中央面部の裏面及び分離して使用するものに貼着しているのに対して,引用発明1では,分離して使用するもの(情報記録体)とそれが印刷(形成)された面部に重なって貼着される面部が左側面部と右側面部の両方である かが不明である点(以下「相違点a2」という。)(3) 相違点a1及びa2の容易想到性ア乙B5文献には,以下の引用発明5が記載されている。 「上部パネルと中間パネルと下部パネルからなるカード用組み立て式パッケージであって,中間パネルには,カード担体を介してカードが配置され,あるいは,これに代えて,パッケージ素材を打ち抜いてカードが形成され,下部パネルが,カードを覆うように下部パネルの下隅部の接着剤により中間パネルに接着され,上部パネルが,カード及び下部パネルを覆うように中間パネルに接着されたカード用組み立て式パッケージ。」イこの引用発明5には,シートの一面に,カード担体を介してあるいは打抜き(切り込み)により分離して使用するもの(カード)を形成して,巻き折りにして分離して使用するもの(カード)を保護しつつ移送し,受取人が分離して使用するもの(カード)をシートから取り外すことができるようにするという課題が内在する。 一方,引用発明1の情報記録体は,ICカード,各種プリペイ の(カード)を保護しつつ移送し,受取人が分離して使用するもの(カード)をシートから取り外すことができるようにするという課題が内在する。 一方,引用発明1の情報記録体は,ICカード,各種プリペイドカード,カード類を含み(乙B1文献の段落【0011】),引用発明1においても,引用発明5と同様の課題が内在する。 よって,引用発明1において,分離して使用するもの(カード)を保持して移送し,受取人が分離して使用するもの(カード)をシートから取り外せるようにするという課題を解決するために,巻き折りとしたシート状基材の一面に打抜きにより分離して使用するもの(カード)を形成するに際し,引用発明1と同一の課題を有し,巻き折りの印刷物であって,中央面部に分離して使用するもの(カード)を配置し,あるいは,中央面部を打ち抜いて分離して使用するもの(カード)を形成し,左右側面部が中央面部の裏面及び分離して使用するもの(カード)に重なる ようにした引用発明5の構成を採用する動機付けは十分にある。 そして,引用発明1のシート状基材を,引用発明5に示されたような巻き折り形態とすると,必然的に,左側面部の裏面及び右側面の裏面の両方が,中央面部の裏面及び分離して使用するもの(カード)に重なって貼着し,相違点a1,a2に係る構成となる。 したがって,引用発明1において,相違点a1,a2に係る構成をすることは,当業者が容易に想到できるものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明1の内容引用発明1の内容は,前記7の〔原告の主張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明1との対比本件発明と引用発明1とは,以下の2点で相違している。 ア本件発明は左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であるのに対し,引用発明1は2面 ある。 (2) 本件発明と引用発明1との対比本件発明と引用発明1とは,以下の2点で相違している。 ア本件発明は左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であるのに対し,引用発明1は2面しか有しない点(以下「相違点1-1」という。)。 イ本件発明では,中央面部に分離して使用するものが印刷されており,左側面部及び右側面部の両方が,中央面部上の分離して使用するものに貼着されているのに対して,引用発明1は,そのような構成を全く備えていない点(以下「相違点1-2」という。)。 (3) 相違点1-1及び1-2の容易想到性ア相違点1-1が容易想到ではないこと乙B1文献には,二つ折りまでの実施形態しか具体的には開示されていないので,引用発明1は,二つ折りの形態と認定すべきである。そして,当業者は,引用発明1を,左側面部と中央面部と右側面部との3面からなる形態に変形しようとしても,情報記録体をどの面上のどの位置に配置すればよいか不明であるから,そのような構成に容易に想到する ことはできないし,折り方のバリエーションとして観音開き折りに想到することも困難である。 したがって,当業者は,相違点1-1に容易に想到し得たとはいえない。 イ相違点1-2が容易想到ではないこと乙B5文献の図16ないし16Bの実施例(引用発明5)では,パッケージ素材を打ち抜いてカードが形成されていない。乙B5文献の打ち抜きに関する記載は,上記実施例とは別の実施例(二つ折りの実施例)である。仮に「カードは,ウェブ素材を打ち抜いてパッケージの開封後にウェブ素材から外されるようにもできる。」(乙B5公報の2の5頁)という技術を上記実施例に適用するとしても,当該抜き打ちは,連続的な打ち抜きではなく,ミシン目のような脱落しないような断続的な 後にウェブ素材から外されるようにもできる。」(乙B5公報の2の5頁)という技術を上記実施例に適用するとしても,当該抜き打ちは,連続的な打ち抜きではなく,ミシン目のような脱落しないような断続的な打ち抜きである。 また,本件発明においては,いわゆる巻き折り形態(下図)は含まれないし,さらに,乙B5文献の図16では,カードの表面には接着剤がなく,「分離して使用するものの…内側に該当する部分に一過性の貼着剤が塗布されていること(構成要件B,C)にはならない。 したがって,仮に当業者が引用発明5を引用発明1に組み合わせても,相違点1-2の構成には想到しない。 【巻き折り】 ウ本件発明の顕著な効果なお,引用発明5と引用発明1とは課題が共通せず,これを組み合わせる動機付けもない。また,引用発明1は乙B5文献に全く記載も示唆もされていない顕著な効果を有するものであって,この点からも,当業者は相違点1-1及び1-2に容易に想到し得たとはいえない。 9 争点(3)ウ(無効理由2-2)について〔被告の主張〕仮に本件発明に乙B1文献に記載のない事項があるとしても,本件発明は,乙B1文献に記載された引用発明1を主引例とし,これに周知技術を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明は進歩性を欠くから,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (1) 引用発明1の内容引用発明1の内容は,前記7の〔被告の主張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明1との対比本件発明と引用発明1との相違点は,前記8の〔被告の主張〕の(2)記載のとおり,相違点a1 明1の内容は,前記7の〔被告の主張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明1との対比本件発明と引用発明1との相違点は,前記8の〔被告の主張〕の(2)記載のとおり,相違点a1及びa2の2点である。 (3) 相違点a1及びa2の容易想到性 乙B5文献には,巻き折り形態のシートであって,シートの一面である中間パネル(中央面部)にカード担体を介して分離して使用するもの(カード)を配置し,あるいは,中間パネル(中央面部)を打ち抜いて分離して使用するもの(カード)を形成し,上部パネル(左側面部)と下部パネル(右側面部)の両方の裏面が中間パネル(中央面部)及び分離して使用するもの(カード)に重なるパッケージが記載されている。 また,乙B6文献の実施例1ないし3に記載されたコンパクトディスク用パッケージは,いずれも,固定板1-Aと一対の重合板1Bが折り重ねられた巻き折り又は観音折り形態であり,左側の重合板1B(左側面部)と右側の固定板1A(右側面部)が,中央の重合板1B(中央面部)とコンパクトディスクPに重ねるように折り重ねられ,第一種定形郵便物等として郵送したりするなど,各種頒布手段として利用できるようにしたものである。 さらに,乙B7文献には,第1パネル40(左側面部)と第2パネル42(中央面部)と第3パネル44(右側面部)からなる巻き折り形態のシートであって,第2パネル42にプリペイドクレジットカード24が配置され,第1パネル40と第3パネル44が,第2パネル42とプリペイドクレジットカード24に重なり,プリペイドクレジットカード24が第3パネル44に取外し可能に貼り付けられたギフトカード封筒が記載されている。 このように,巻き折り又は観音開き折り形態とし,シートの中央面部にCDやカード類を取り リペイドクレジットカード24が第3パネル44に取外し可能に貼り付けられたギフトカード封筒が記載されている。 このように,巻き折り又は観音開き折り形態とし,シートの中央面部にCDやカード類を取り外し可能に配置し,左右側面部が中央面部及びCD・カード類に重なるようにして移送できるようにし,受取人に渡すまでの間,CDやカード類を保護できるようにした構成は,本件特許の出願前から当業者に周知の技術というべきである。 そして,乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献には,シートの一面にCDやカード類を取り外し可能に配置し,巻き折り又は観音開き折りにしてCDやカード類を保護しつつ郵送できるようにし,受取人がCDやカード類を シートから取り外すことができるようにするという課題が内在する。一方,引用発明1の情報記録体はCDやカードを含むから(乙B1文献の段落【0011】),引用発明においてもこれと同様の課題が内在する。 よって,引用発明1において,乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献記載の周知技術を採用する動機付けは十分にあるところ,引用発明1のシート状基材を,上記周知技術に示されたような巻き折り又は観音折り形態とすると,必然的に,左側面部の裏面及び右側面の裏面の両方が,中央面部の裏面及び分離して使用するもの(CDやカード類等の情報記録体)に貼着し,相違点a1及びa2に係る構成となるのであり,これらの構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明1の内容引用発明1の内容は,前記7の〔原告の主張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明1との対比本件発明と引用発明1との相違点は,前記8の〔原告の主張〕の(2)記載のとおり,相違点1-1及び1-2の2点である。 ( 張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明1との対比本件発明と引用発明1との相違点は,前記8の〔原告の主張〕の(2)記載のとおり,相違点1-1及び1-2の2点である。 (3) 相違点1-1及び1-2の容易想到性ア相違点1-1が容易想到ではないこと乙B1文献には,二つ折りまでの実施形態しか具体的には開示されていないので,引用発明1は,二つ折りの形態と認定すべきである。そして,当業者は,引用発明1を,左側面部と中央面部と右側面部との3面からなる形態に変形しようとしても,情報記録体をどの面上のどの位置に配置すればよいか不明であるから,そのような構成に容易に想到することはできない。 また,乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献をみても,折り方の種々のバリエーションとして巻き折りやZ折りは開示されていても,観音 開き折りは開示されていない。このことは,折り方のバリエーションとして,観音開き折りに想到することが困難であったことの証左である。 したがって,当業者は,相違点1-1に容易に想到し得たとはいえない。 イ相違点1-2が容易想到ではないこと前記8の〔原告の主張〕の(3)イ記載のとおり,乙B5文献の打ち抜きに関する記載は,同明細書の図16ないし16Bの実施例(引用発明5)とは別の実施例であるし,ミシン目のような断続的な打ち抜きでもある。 また,乙B6文献の実施例1ないし3及び乙B7文献に記載の技術は,いずれも巻き折り形態である上,中央面部上ではなく側面部上にCD又はプリペイドクレジットカードが配置されているのであって,本件発明とは何ら関係がない。 そして,これらの文献から周知技術を認定することはできず,何らかの共通の技術が記載されているとしても周知であるとまではいえない上,仮 ドが配置されているのであって,本件発明とは何ら関係がない。 そして,これらの文献から周知技術を認定することはできず,何らかの共通の技術が記載されているとしても周知であるとまではいえない上,仮に何らかの周知技術が認められるとしても,これを引用発明1に組み合わせても相違点1-2の構成には想到しないし,組み合わせる動機付けもない。 ウ本件発明の顕著な効果なお,引用発明1は,上記各文献に全く記載も示唆もされていない顕著な効果を有するものであって,この点からも,当業者は相違点1-1及び1-2に容易に想到し得たとはいえない。 争点(3)エ(無効理由3-1)について〔被告の主張〕本件発明は,乙B2文献に記載された引用発明2を主引例とし,これに乙B8文献を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明は進歩性を欠くから,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (1) 引用発明2の内容乙B2文献には,以下の発明が記載されている。 「カード部1を備えた葉書本体2と,この葉書本体2に連続した表面シート3,及び裏面シート4により構成され,カード部1の周囲はトムソン加工された切断予定線11で囲まれ,細長のシートを『Z』の形状に折り曲げて,葉書本体2と表面シート3,及び葉書本体2と裏面シート4をそれぞれ剥離可能に圧着した葉書。」(2) 本件発明と引用発明2との対比本件発明と引用発明2は,以下の点で相違している。 ア本件発明においては,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着しているのに対して,引用発明2は,左側面部の一方の面が中央面部の一方の面に貼着し,右側面部の一方の で相違している。 ア本件発明においては,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着しているのに対して,引用発明2は,左側面部の一方の面が中央面部の一方の面に貼着し,右側面部の一方の面が中央面部の他方の面に貼着している点(以下「相違点b1」という。)。 イ本件発明の剥離可能な圧着手段が「一過性の粘着剤」であるのに対して,引用発明2の剥離可能な圧着手段はそのような限定がない点(以下「相違点b2」という。)。 (3) 相違点b1及びb2の容易想到性ア相違点b1乙B8文献には,用紙を三つ折り畳んで重なり合う面を疑似接着させたメールフォームであって,中央面部の異なる面に左側面部と右側面部が重なる「Z型(N型)の形態」のもの,中央面部の同一の面に左側面部と右側面部が重なる観音開き折り形態のもの等,各種三つ折り形態のメールフォームが記載されている。 一方,引用発明2も,乙B8文献と同様に用紙を三つ折り畳んで重なり合う面を疑似接着させたメールフォーム(葉書)であり,乙B8文献に示されたような観音開き折り形態とする動機付けも十分にある。よって,引用発明2において,Z型の折り形態を,乙B8文献に示されたような観音開き折り形態とすることは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎず,当業者が容易に想到できるものである。 そして,引用発明2において,乙B8文献に示されたような観音折り形態とすると,葉書本体とテレホンカードの大きさの関係から,必然的に,左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方がカード(分離して使用するもの)に重なって貼着され,相違点b1に係る構成となる。 したがって,引用発明2において相違点b1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 イ相違点b2乙B8文献のメー に重なって貼着され,相違点b1に係る構成となる。 したがって,引用発明2において相違点b1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 イ相違点b2乙B8文献のメールフォーム(葉書)は,基材の対向する面の弱粘着剤層同士をほぼ全面に加圧により粘着させるが,これは,弱粘着剤層が剥離可能な圧着手段であることを意味する。また,乙B8文献には,弱粘着剤層12を塗布して形成することが記載されている。 したがって,引用発明2の剥離可能な圧着手段を,一過性の粘着剤を塗布するものとして相違点b2に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 ウ本件発明の効果乙B2文献において,切断予定線11をより切り離し容易とし,剥離可能に圧着された葉書本体2と表面シート3,及び葉書本体2と裏面シート4を剥がすと,後から剥がす表面シート3又は裏面シート4にカード部1(分離して使用するもの)が付着し,必然的に,カード部1(分離して使用するもの)を切り取ろうとする意思を持たずに自動的に手に するという作用効果を奏することは,当業者が予測できる範囲である。 したがって,本件発明の効果は,引用発明2(乙B2文献)から当業者が予測できる範囲内のものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明2の内容乙B2文献に記載された切断予定線11は,本件発明のような連続した切り込みではなく,ミシン目のような断続的な切り込みである。したがって,引用発明2は,以下のように認定すべきである。 「カード部1を備えた葉書本体2と,この葉書本体2に連続した表面シート3,及び裏面シート4により構成され,カード部1の周囲はトムソン加工された断続的な切断予定線11で囲まれ,細長のシートを『Z』の形状に折り曲げて,葉書本体2と と,この葉書本体2に連続した表面シート3,及び裏面シート4により構成され,カード部1の周囲はトムソン加工された断続的な切断予定線11で囲まれ,細長のシートを『Z』の形状に折り曲げて,葉書本体2と表面シート3,及び葉書本体2と裏面シート4をそれぞれ剥離可能に圧着した葉書。」(2) 本件発明と引用発明2との対比本件発明と引用発明2は,以下の相違点を有する。 ア本件発明においては,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着しており,かつ,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が,分離して使用するものの同一面に貼着しており,かつ,左側面部の裏面は右側面部の表面に貼着しておらず,かつ,右側面部の裏面は左側面部の表面に貼着していないのに対して,引用発明2は,いわゆるZ折りであり,左側面部の一方の面が中央面部の一方の面に貼着し,右側面部の一方の面が中央面部の他方の面に貼着している点(以下「相違点2-1」という。)。 イ本件発明においては剥離可能な圧着手段が「一過性の粘着剤」であるのに対して,引用発明2の剥離可能な圧着手段は,そのような限定はない点(被告主張の相違点b2と同じ。以下「相違点2-2」という。)。 ウ本件発明においては分離して使用するものの周囲の切り込み(構成要件F)が,連続した切り込みであるのに対して,引用発明2のカード部の周囲の切断予定線は,断続的な切り込みである点(以下「相違点2-3」という。)。 (3) 相違点2-1及び2-3の容易想到性ア相違点2-1仮に引用発明2に乙B8公報の図12の実施形態を組み合わせるとしても,カード部1をどの面に配置するか(中央面部か,側面部か),仮に中央面部に配置するとしても中央面部のどの位置に配置するかは,何ら示唆がない。 また,乙B8文献の記載 施形態を組み合わせるとしても,カード部1をどの面に配置するか(中央面部か,側面部か),仮に中央面部に配置するとしても中央面部のどの位置に配置するかは,何ら示唆がない。 また,乙B8文献の記載のみから,観音折り形態へと変形することが設計事項であるとまでは認定できないし,仮に設計事項であったとしても,カード部1を有する引用発明2に適用する動機付けがあるとはいえない。 しかも,乙B8文献の図12は,典型的な観音折り形態ではないことなどからすると,引用発明2に同図12の形態を組み合わせることには阻害要因がある。 したがって,当業者は,相違点2-1について容易に想到し得たとはいえない。 イ相違点2-3相違点2-3については,乙B2文献,乙B8文献等には何ら記載も示唆もない。本件発明の顕著な効果等も考慮すると,当業者は相違点2-3について容易に想到し得たとはいえない。 11 争点(3)オ(無効理由3-2)について〔被告の主張〕本件発明は,乙B2文献に記載された引用発明2を主引例とし,これに乙B 8文献及び周知技術を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本件発明は進歩性を欠くから,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (1) 引用発明2の内容引用発明2の内容は,前記10の〔被告の主張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明2との対比本件発明と引用発明2との相違点は,前記10の〔被告の主張〕の(2)記載のとおり,相違点b1及びb2の2点である。 (3) 相違点b1及びb2の容易想到性ア相違点b1乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献は,いずれもシート 前記10の〔被告の主張〕の(2)記載のとおり,相違点b1及びb2の2点である。 (3) 相違点b1及びb2の容易想到性ア相違点b1乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献は,いずれもシートを三つ折りに折り畳んでCDやカード類を保持したパッケージ・封筒であり,シートの中央面部にCDやカード類を取り外し可能に配置し,左右側面部が中央面部及びCD・カード類に重なるようにして移送できるようにし,受取人に渡すまでの間,CDやカード類を保護できるようにした構成は,本件特許の出願前から当業者に周知の技術というべきである。 また,上記各文献には,シートの一面にCDやカード類を取り外し可能に配置し,三つ折りにしてCDやカード類を保護しつつ郵送できるようにし,受取人がCDやカード類をシートから容易に取り外して携帯できるようにするという課題が内在する。 そのため,引用発明2と上記各文献の周知技術の課題は共通し,引用発明2において葉書の形状や折り方は「Z」の形状に限定されないから,引用発明2に上記各文献の周知技術を適用する動機付けは十分にある。 一方,引用発明2において,中央面部の異なる面に左側面部と右側面部が重なるZ型の折り形態を,乙B8文献に示されたような中央面部の 同一の面に左側面部と右側面部が重なる観音開き折り形態とすることは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。 したがって,引用発明2において,Z型の折り形態を乙B8文献に示されたような観音折り形態とするのに際し,乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献の周知技術に示されたように,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面及びカード(分離して使用するもの)に重なるようにし,これらを貼着するようにして,相違点b1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到で ように,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面及びカード(分離して使用するもの)に重なるようにし,これらを貼着するようにして,相違点b1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 イ相違点b2前記10の〔被告の主張〕の(3)イ記載のとおり,当業者が容易に想到できる。 ウ本件発明の効果前記10の〔被告の主張〕の(3)ウ記載のとおり,本件発明の効果は,引用発明2(乙B2文献)から当業者が予測できる範囲内のものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明2の内容引用発明2の内容は,前記10の〔原告の主張〕の(1)記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明2との対比本件発明と引用発明2との相違点は,前記10の〔原告の主張〕の(2)記載のとおり,相違点2-1,2-2及び2-3である。 (3) 相違点2-1及び2-3の容易想到性ア相違点2-1前記10の〔原告の主張〕の(3)記載のとおり,そもそも引用発明2に乙B8文献を組み合わせることに動機付けはなく,むしろ阻害要因がある。 また,前記9の〔原告の主張〕の(3)記載のとおり,乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献から被告が主張する周知技術を認定することはでき ないし,上記各文献に記載の技術を引用発明2に組み合わせる動機付けはない上,上記各文献に記載の技術は巻き折り形態にすぎないので,これを引用発明2に組み合わせても相違点2-1の構成には想到しない。 したがって,当業者は,相違点2-1について容易に想到し得たとはいえない。 イ相違点2-3相違点2-3については,乙B2文献,乙B5文献,乙B6文献,乙B7文献,乙B8文献には何ら記載も示唆もない。本件発明の顕著な効果等も考慮すると,当業者は相違点2-3につ 。 イ相違点2-3相違点2-3については,乙B2文献,乙B5文献,乙B6文献,乙B7文献,乙B8文献には何ら記載も示唆もない。本件発明の顕著な効果等も考慮すると,当業者は相違点2-3について容易に想到し得たとはいえない。 12 争点(3)カ(無効理由4:乙B3文献を主引例とする進歩性欠如)について〔被告の主張〕本件発明は,乙B3文献に記載された引用発明3を主引例とし,これに乙B8文献及び乙B9文献を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本件発明は進歩性を欠くから,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号により特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1) 引用発明3の内容乙B3文献には,以下の発明が記載されている。 「宛先を有する葉書であって,トムソン加工された切り込みからなる切断予定線により囲まれた,かつ,表面に上記宛先を有するカード部を有する第1シートと,この第1シートの裏面に重なることが可能な裏面を有する第2シートと,上記第1シートの裏面を上記第2シートの裏面に剥離可能に接着する接着層とを備えて,上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが上記接着層で接着された接着状態と,上記接着状態から上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが剥離されて上記第1シートから上記カード部を上記切断 予定線で切り離すことができる剥離状態とを呈することができるようにした葉書。」(2) 本件発明と引用発明3との対比本件発明と引用発明3とは,以下の点で相違している。 ア本件発明は,左側面部と中央面部と右側面部からなり,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着する形態,すなわち,左側面部と右側面部の両方が中央面部に重なる折 の点で相違している。 ア本件発明は,左側面部と中央面部と右側面部からなり,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着する形態,すなわち,左側面部と右側面部の両方が中央面部に重なる折り形態であるのに対して,引用発明3は,一のシートが他の一のシートと重なる折り形態である点(以下「相違点c1」という。)。 イ本件発明は,中央面部に分離して使用するものが印刷され,左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方が,分離して使用するものに貼着しているのに対して,引用発明3は,一のシートが分離して使用するものと貼着している点(以下「相違点c2」という。)。 ウ本件発明の一過性の接着手段は,一過性の粘着剤を塗布するものであるのに対して,引用発明3の一過性の接着手段は,接着剤層である点(以下「相違点c3」という。)。 (3) 相違点c1,c2及びc3の容易想到性ア相違点c1及びc2乙B8文献の記載からすれば,用紙を折り畳んで重なり合う面を疑似接着させた葉書等のメールフォームにおいて,二つ折り形態とするか左右側面部が中央面部に重なる三つ折り形態のものとするかは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。そして,引用発明3は,用紙を二つに折り畳んで重なり合う面(第1シートと第2シート)を疑似接着させたメールフォーム(葉書)である。 また,乙B9文献には,左側面部(折返片11)と中央面部(ハガキ本体10)と右側面部(折返片12)からなり,左側面部(折返片1 1)と右側面部(折返片12)の両方が中央面部(ハガキ本体10)に重なる折り形態のハガキであって中央面部(ハガキ本体10)の表面に宛名を有する葉書(メールフォーム)が記載されている。 よって,引用発明3において,第1シートを第2シートに折り重ねる二つ折りの形態の る折り形態のハガキであって中央面部(ハガキ本体10)の表面に宛名を有する葉書(メールフォーム)が記載されている。 よって,引用発明3において,第1シートを第2シートに折り重ねる二つ折りの形態の葉書に代えて,乙B9文献に記載されたような左右側面部が中央面部に重なる三つ折り形態の葉書とするのは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎず,当業者が容易に想到できるものである。 そして,引用発明3の葉書の折り形態を乙B9文献のような折り形態の葉書とした場合,乙B9文献において宛名はハガキ本体10(中央面部)の表面15の印字されていることから,引用発明3の宛先を有するカード部(分離して使用するもの)は中央面部に設けられる。この場合,引用発明3のカード部(分離して使用するもの)は,テレフォンカードと大略同一の大きさであり,乙B9文献の折返片11,12(左右側面部)はハガキ本体10(中央面部)の略半分の幅を有するから,引用発明2のカード部(分離して使用するもの)は,必然的に左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方に貼着する。 したがって,引用発明3において相違点c1,c2に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 イ相違点c3乙B8文献には,メールフォーム(葉書)の疑似接着層となる弱粘着剤層12を塗布して形成することが記載されている。したがって,引用発明3の接着層を,一過性の粘着剤を塗布するものとして相違点c3に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 ウ本件発明の作用効果引用発明3において,切断予定線4の切り込みの割合を多くして,疑似接着された第1シート1と第2シート2とを剥がすと,カード部3 (分離して使用するもの)が疑似接着している第2シート2に付着し,必然的に,カ ,切断予定線4の切り込みの割合を多くして,疑似接着された第1シート1と第2シート2とを剥がすと,カード部3 (分離して使用するもの)が疑似接着している第2シート2に付着し,必然的に,カード部3(分離して使用するもの)を切り取ろうとする意思を持たずに自動的に手にするという作用効果を奏することは,当業者が予測できる範囲である。 したがって,本件発明の効果は,引用発明3から当業者が予測できる範囲内のものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明3の内容乙B3文献に記載された切断予定線は,本件発明のような連続した切り込みではなく,ミシン目のような間欠的な切り込みである。したがって,引用発明3は,以下のように認定すべきである。 「宛先を有する葉書であって,トムソン加工された,間欠的な切り込みからなる切断予定線により囲まれた,かつ,表面に上記宛先を有するカード部を有する第1シートと,この第1シートの裏面に重なることが可能な裏面を有する第2シートと,上記第1シートの裏面を上記第2シートの裏面に剥離可能に接着する接着層とを備えて,上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが上記接着層で接着された接着状態と,上記接着状態から上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが剥離されて上記第1シートから上記カード部を上記切断予定線で切り離すことができる剥離状態とを呈することができるようにした葉書。」(2) 本件発明と引用発明3との対比本件発明と引用発明3は,以下の相違点を有する。 ア被告の主張する相違点c1と同じ(以下「相違点3-1」という。)。 イ被告の主張する相違点c2と同じ(以下「相違点3-2」という。)。 ウ被告の主張する相違点c3と同じ(以下「相違点3-3」という。)。 エ本件発明の切り込みは連続した切り込みで いう。)。 イ被告の主張する相違点c2と同じ(以下「相違点3-2」という。)。 ウ被告の主張する相違点c3と同じ(以下「相違点3-3」という。)。 エ本件発明の切り込みは連続した切り込みであるのに対し,引用発明3 の切断予定線は間欠的な切り込みである点(以下「相違点3-4」という。)。 (3) 相違点3-1,3-2及び3-4の容易想到性ア相違点3-1及び3-2前記10の〔原告の主張〕の(3)記載のとおり,乙B8文献から,二つ折り形態を観音折り形態と変形することが設計事項であるとまでは認定できない。また,同記載のとおり,引用発明3は一般的な折畳み葉書ではなく,第1シートに切り取り可能なカード部3が設けられているから,仮に一般的な折畳み葉書においては観音折り形態と変形することが設計事項であったとしても,このようにカード部3を有する引用発明3に,これを適用する動機付けがあるとはいえない。 さらに,前記10の〔原告の主張〕の(3)記載のとおり,引用発明3には乙B8文献を組み合わせることについての阻害要因がある。仮に乙B8文献の図12の実施形態を組み合わせるとしても,その場合に,カード部1をどの面に配置するか(中央面部か,側面部か),仮に中央面部に配置するとしてもどの位置に配置するかは,何ら示唆はない。 そして,引用発明3に乙B8文献及び乙B9文献のような複数の文献を組み合わせる動機付けはない。また,本件発明は,乙B3文献,乙B8文献及び乙B9文献には記載も示唆もされていない顕著な効果を有する。 したがって,当業者は,相違点3-1及び3-2について容易に想到し得たとはいえない。 イ相違点3-4相違点3-4については,乙B3文献,乙B8文献及び乙B9文献には何ら記載も示唆もない。本件発明の顕著な 業者は,相違点3-1及び3-2について容易に想到し得たとはいえない。 イ相違点3-4相違点3-4については,乙B3文献,乙B8文献及び乙B9文献には何ら記載も示唆もない。本件発明の顕著な効果等も考慮すると,当業者は,相違点3-4について容易に想到し得たとはいえない。 13 争点(3)キ(無効理由5)について〔被告の主張〕本件発明は,乙B4文献に記載された引用発明4を主引例とし,これに乙B5文献に記載された引用発明5を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本件発明は進歩性を欠くから,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (1) 引用発明4の内容乙B4文献には,以下の発明が記載されている。 「用紙を折り畳み,その用紙の折畳み対向紙片どうしを疑似接着してなるとともに,上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し,その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に,これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなり,上記加工は,有価証券情報の印字部外周に極細のスリットを切り込み,そのスリットの深さは折畳み対向紙片をその厚み方向に貫通する深さとしたプリペイドカード付きシート。」(2) 本件発明と引用発明4との対比本件発明と引用発明4とは,以下の点で相違している。 ア本件発明は,左側面部と中央面部と右側面部からなり,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着していること,すなわち,左側面部と右側面部の両方が中央面部に重なって貼着しているのに対して,引用発明4は,折畳み対向紙片の一の紙片が他の一の紙片と重なって貼着している点(以下「相違点d 裏面に貼着していること,すなわち,左側面部と右側面部の両方が中央面部に重なって貼着しているのに対して,引用発明4は,折畳み対向紙片の一の紙片が他の一の紙片と重なって貼着している点(以下「相違点d1」という。)。 イ本件発明は,中央面部に分離して使用するものが印刷され,左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方が,分離して使用するものに重なって貼着しているのに対して,引用発明4は,一の紙片が分離して使用する ものに重なって貼着している点(以下「相違点d2」という。)。 (3) 相違点d1及びd2の容易想到性ア乙B5文献には,以下の発明(引用発明5)が記載されている。 「上部パネルと中間パネルと下部パネルからなるカード用組み立て式パッケージであって,中間パネルには,カード担体を介してカードが配置され,あるいは,これに代えて,パッケージ素材を打抜いてカードが形成され,下部パネルが,カードを覆うように下部パネルの下隅部の接着剤により中間パネルに接着され,上部パネルが,カード及び下部パネルを覆うように中間パネルに接着されたカード用組み立て式パッケージ。」イこの引用発明5には,折り畳んだシートの一部を打ち抜いてプリペイドカードとし,受取人がシートからプリペイドカードを抜き取るまでの間,プリペイドカードを保持できるようにするという課題が内在するところ,引用発明4もこれと同様の課題を内在する。 また,引用発明4においては,用紙をN型に三つに折り畳んだもの,三つ折り片開きとしたもの,V型に二つに折り畳んだもの等,種々の折り形態にして,折畳み対向紙片どうしを疑似接着させたプリペイドカード付きシートとすることができ,折り形態を変更する動機付けは十分にある。 そして,引用発明4のプリペイドカード付きシートの折り形態を引用発明 ,折畳み対向紙片どうしを疑似接着させたプリペイドカード付きシートとすることができ,折り形態を変更する動機付けは十分にある。 そして,引用発明4のプリペイドカード付きシートの折り形態を引用発明5のような折り形態に変更すると,必然的に左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部及びカード(分離して使用するもの)に貼着する。 したがって,引用発明4において,引用発明5に示されているように,中央面部にプリペイドカードを形成し,左右側面部が(プリペイド)カードに重なるようにして相違点d1,d2に係る構成を採用することは, 当業者が容易に想到できるものである。 ウ引用発明4においては,折畳み対向紙片に設けられたスリットにより,分離して使用するもの(プリペイドカード)が抜き取り可能となっていることから,疑似接着された折畳み対向紙片を剥がすと,分離して使用するものが疑似接着している折り畳み対向紙片に付着し,必然的に,分離して使用するものを切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にする作用効果を奏する。 したがって,本件発明の効果は,引用発明4から当業者が予測できる範囲内のものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明4の内容乙B4文献の図5のプリペイドカート付きシートS4は,二つ折りの形態である。したがって,引用発明4は,以下のように認定すべきである。 「用紙をV型に二つに折り畳み,その用紙の折畳み対向紙片どうしを疑似接着してなるとともに,上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し,その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に,これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなり,上記加工は,有価証券情報の印字部外周に極細のスリットを切り込み,そのスリットの深さは折畳 字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に,これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなり,上記加工は,有価証券情報の印字部外周に極細のスリットを切り込み,そのスリットの深さは折畳み対向紙片をその厚み方向に貫通する深さとしたプリペイドカード付きシート。」(2) 本件発明と引用発明4との対比本件発明と引用発明4は,以下の相違点を有する。 ア本件発明は,左側面部と中央面部と右側面部の3面からなる印刷物であるのに対して,引用発明4は,折畳み対向紙片2,4の2面からなる印刷物である点(以下「相違点4-1」という。)。 イ被告の主張する相違点d1と同じ(以下「相違点4-2」という。)。 ウ被告の主張する相違点d2と同じ(以下「相違点4-3」という。)。 (3) 相違点4-1,4-2及び4-3の容易想到性乙B5文献の図16ないし16Bの実施例では,パッケージ素材を打ち抜いてカードが形成されていない。仮に「カードは,ウェブ素材を打ち抜いてパッケージの開封後にウェブ素材から外されるようにもできる。」(乙B5文献の翻訳文5頁)という技術を上記実施例に適用するとしても,当該抜き打ちは,連続的な打ち抜きではなく,ミシン目のような脱落しないような断続的な打ち抜きである。 そして,本件発明においては,いわゆる巻き折り形態は含まれないし,さらに,乙B5文献の図16では,カードの表面には接着剤がなく,「分離して使用するものの…内側に該当する部分に一過性の貼着剤が塗布されていること」(構成要件B,C)にはならない。そうすると,仮に当業者が引用発明5を引用発明4に組み合わせても,相違点4-1,4-2及び4-3の構成には想到しない。 なお,引用発明5と引用発明4とは課題が共通せず,これを組み合わせる動機付けもない と,仮に当業者が引用発明5を引用発明4に組み合わせても,相違点4-1,4-2及び4-3の構成には想到しない。 なお,引用発明5と引用発明4とは課題が共通せず,これを組み合わせる動機付けもないし,また,本件発明は,乙B4文献及び乙B5文献には記載も示唆もされていない顕著な効果を有するのであって,これらの点からも,当業者は,上記各相違点について容易に想到し得たとはいえない。 14 争点(3)ク(無効理由6)について〔被告の主張〕本件発明は,乙B5文献に記載された引用発明5を主引例とし,これに乙B4文献に記載された引用発明4を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本件発明は進歩性を欠くから,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (1) 引用発明5の内容 引用発明5の内容は,前記13の〔被告の主張〕の(3)ア記載のとおりである。 (2) 本件発明と引用発明5との対比本件発明と引用発明5は,以下の点で相違している。 ア本件発明においては,左側面部の裏面は,当該分離して使用するものの上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分に接着剤が塗布され,右側面部の裏面は,当該分離して使用するものの上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分に接着剤が塗布されているのに対して,引用発明5においては,左側面部の裏面には,接着剤が塗布されず,右側面部の裏面は,当該分離して使用するものの外側に該当する部分に接着剤は塗布されているが,当該分離して使用するものの内側に該当する部分には,接着剤は塗布されていない点(以下「相違点e1」という)。 イ本件発明においては,左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面 接着剤は塗布されているが,当該分離して使用するものの内側に該当する部分には,接着剤は塗布されていない点(以下「相違点e1」という)。 イ本件発明においては,左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が当該分離して使用するものに貼着しているのに対して,引用発明5においては,左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が当該分離して使用するものに重なっているだけで,貼着まではしていない点(以下「相違点e2」という)。 ウ本件発明1の接着剤が「一過性の粘着剤」であるのに対して,引用発明5の接着剤が剥離可能な接着剤である点(以下「相違点e3」という)。 (3) 相違点e1,e2及びe3の容易想到性ア相違点e1及びe2引用発明4においては,折畳み対向紙片の裏面には,少なくともプリペイドカードの上部,下部,左側部,右側部の内側及び外側に該当する部分に接着剤が塗布され,折畳み対向紙片の裏面が,対向する折畳み対向紙片の裏面及びプリペイドカードに貼着している。 そして,引用発明4は,折り畳んだシートの一部を打ち抜いてプリペイドカードを分離可能に形成し,このプリペイドカードをシートに保持して,受取人がシートからプリペイドカードを抜き取れるようにしたものであり,引用発明4には,折り畳んだシートの一部を打ち抜いてプリペイドカードとし,受取人がシートからプリペイドカードを抜き取るまでの間,プリペイドカードを保持できるようにするという課題が内在する。 一方,引用発明5のカードに含まれるギフトカード及びテレフォンカードはプリペイドカードであり,引用発明5には引用発明4と同様の課題が内在する。 したがって,引用発明5において,引用発明4に示されているように,左側面部及び右側面部の裏面は,カード(分離して使用するもの)の上部,下部,左 引用発明5には引用発明4と同様の課題が内在する。 したがって,引用発明5において,引用発明4に示されているように,左側面部及び右側面部の裏面は,カード(分離して使用するもの)の上部,下部,左側部,右側部の内側及び外側に該当する部分に接着剤が塗布され,左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面がカード(分離して使用するもの)に貼着するようにして相違点e1,e2に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 イ相違点e3引用発明4において,用紙の折畳み対向紙片どうしが疑似接着させている「糊状のもの」は,引用発明1の「一過性の粘着剤」である。 そして,上記のように,引用発明5と引用発明4は,共に,シートを折り畳んで対向する面を接着させ,シートの一部を打ち抜いてプリペイドカードとして抜き取ることができるようにしたものであり,共通の課題を有する。 したがって,引用発明5において,剥離可能な接着剤を引用発明4の「糊状のもの」として相違点e3に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 ウ本件発明の効果引用発明4においては,折畳み対向紙片に設けられたスリットにより,分離して使用するもの(プリペイドカード)が抜き取り可能となっていることから,疑似接着された折畳み対向紙片を剥がすと,分離して使用するものが疑似接着している折畳み対向紙片に付着し,必然的に,分離して使用するものを切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にする作用効果を奏する。 したがって,本件発明の効果は,引用発明4(乙B4文献)から当業者が予測できる範囲内のものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明5の内容乙B5文献の図16ないし16Bの実施例では,パッケージ素材を打ち抜いてカード ,引用発明4(乙B4文献)から当業者が予測できる範囲内のものである。 〔原告の主張〕(1) 引用発明5の内容乙B5文献の図16ないし16Bの実施例では,パッケージ素材を打ち抜いてカードが形成されていない。したがって,引用発明5は次のように認定すべきである。 「上部パネルと中間パネルと下部パネルからなるカード用組み立て式パッケージであって,中間パネルには,カード担体を介してカードが配置され,あるいは,これに代えて,パッケージ素材を打ち抜いてカードが形成され,下部パネルが,カードを覆うように下部パネルの下隅部の接着剤により中間パネルに接着され,上部パネルが,カード及び下部パネルを覆うように中間パネルに接着されたカード用組み立て式パッケージ。」また,仮に「カードは,ウェブ素材を打ち抜いてパッケージの開封後にウェブ素材から外されるようにもできる。」(乙B5文献の翻訳文5頁)という技術を上記実施例に適用するとしても,当該抜き打ちは,連続的な打ち抜きではなく,ミシン目のように,脱落しない断続的な打ち抜きである。したがって,引用発明5は次のように認定すべきである。 「上部パネルと中間パネルと下部パネルからなるカード用組み立て式パッケ ージであって,中間パネルには,カード担体を介して配置されたカードに代えて,パッケージ素材を断続的に打ち抜いてカードが形成され,下部パネルが,カードを覆うように下部パネルの下隅部の接着剤により中間パネルに接着され,上部パネルが,カード及び下部パネルを覆うように中間パネルに接着されたカード用組み立て式パッケージ。」(2) 本件発明と引用発明5との対比本件発明と引用発明5とは,以下の五つの相違点を有する。 ア被告の主張する相違点e1と同じ(以下「相違点5-1」という。)。 イ被告の パッケージ。」(2) 本件発明と引用発明5との対比本件発明と引用発明5とは,以下の五つの相違点を有する。 ア被告の主張する相違点e1と同じ(以下「相違点5-1」という。)。 イ被告の主張する相違点e2と同じ(以下「相違点5-2」という。)。 ウ本件発明においては,中央面部内に分離して使用するものが印刷され,当該分離して使用するものの周囲に連続した切り込みが入っているのに対して,引用発明5においては,カード12が,中間パネルの上に,カード担体75aを介して配置されている点(以下「相違点5-3」という。)。 エ本件発明においては,右側面部と左側面部が重なっていないのに対して,引用発明5は,右側面部の上に,左側面部が重なって,いわゆる巻き折りとなっている点(以下「相違点5-4」という。)。 オ被告の主張する相違点e3と同じ(以下「相違点5-5」という。)。 (3) 相違点5-1,5-2,5-3及び5-4の容易想到性ア相違点5-1及び5-2前記13の〔原告の主張〕の(3)記載のとおり,引用発明4と引用発明5を組み合わせる動機付けは存在しない。 イ相違点5-3本件発明では,中央面部上の分離して使用するものが連続的に切り抜かれているので,後から開いた側面部に付いてくるのに対し,乙B5文献の変形例では,パッケージを開封して(側面部を開いて),その 「後」に,別途の行為を介して,ウェブ素材から外される。さらに,乙B5文献の図16ないし16Bの実施例において,この変形例を適用する場合には,ミシン目のような脱落しない断続的な打ち抜きになる。 したがって,当業者は,相違点5-3のうち本件発明の連続した切り込みには,容易に想到することはできない。 ウ相違点5-4いわゆる巻き折り形態の引用発明5を しない断続的な打ち抜きになる。 したがって,当業者は,相違点5-3のうち本件発明の連続した切り込みには,容易に想到することはできない。 ウ相違点5-4いわゆる巻き折り形態の引用発明5を,本件発明のように右側面部と左側面部が重ならない形態にすることには,何ら動機付けがない。むしろ,そのような形態にしてしまうと,カードを十分に見ることができるような窓片20を設けることが困難となってしまうのであって,阻害要因がある。 したがって,当業者は,相違点5-4を容易に想到し得たとはいえない。 争点(3)ケ(無効理由7)について〔被告の主張〕本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号所定の要件を充たしていないから,いわゆる明確性要件違反であって,同法123条1項4号により無効にされるべきものである。 (1) 本件特許の請求項1(本件発明)には,次の記載がある。 「左側面部(2)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること」(構成要件C)「右側面部(3)の裏面は,当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること」(構成要件D)(2) しかし,本件明細書等には「図1は本発明の印刷物を開いた状態を示す図 である。中央面部1はほぼ中央の場所に分離して使用するもの4が印刷されている。本図面ではこの分離して使用するもの4は四角形をしているが,丸でも三角形でも良く形状は問わない」(段落【0013】)と記載されているところ,分離して使用するものが三角形の場合,3辺しかなく,三角形をどのような向きに置いても,上部,下部,左側部及び右側部のうち でも三角形でも良く形状は問わない」(段落【0013】)と記載されているところ,分離して使用するものが三角形の場合,3辺しかなく,三角形をどのような向きに置いても,上部,下部,左側部及び右側部のうちの一つが欠落し,上部,下部,左側部及び右側部が区別できない。また,分離しているものの形状が例えば星形の場合,その,上部,下部,左側部及び右側部は区別できない。 よって,本件明細書等の上記記載を考慮しても,分離して使用するものの外形は特定できず,その形状によっては,その上部,下部,左側部,右側部が特定できない。 (3) また,上記(1)の記載のうち,「内側」とは「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)」のどの部分の内側をいうのか,「外側」とは「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)」のどの部分の外側いうのか,曖昧である。 さらに,「内側」とはどの範囲までの内側を指すのか,「外側」とはどの範囲までの外側を指すのかも,明確でない。 よって,本件明細書等の記載を考慮しても,「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)」がどの部分を指すのか曖昧であり,「内側」と「外側」がどこまでを指すのか明確でなく,その範囲が特定できない。 〔原告の主張〕本件発明の「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されている」の意義は,「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側に該当する部分」と「当該分離して使用するもの(4)の外側に該当する部分」の双 方の部分において,それらの部分の範囲内において粘着剤が塗布されていることをいうと解すべきであって,このことは,本件発明の技術思想から当業者が判断すれ の(4)の外側に該当する部分」の双 方の部分において,それらの部分の範囲内において粘着剤が塗布されていることをいうと解すべきであって,このことは,本件発明の技術思想から当業者が判断すれば自明である。すなわち,本件発明の技術思想からすると,「該当する部分」とは,粘着剤が塗布される領域の範囲を特定するものであって,該当する部分の全ての領域に粘着剤が塗布されることまでは必須とされない。 そして,本件明細書等の記載によれば,一過性の粘着剤を塗布する趣旨は,分離して使用するものを左側面部と右側面部の各裏面に貼着して保持することにあるから,分離して使用するものに対して粘着剤を貼着すべき領域は,その上部,下部,左側部で範囲が定められた領域のいずれかにおいて分離するまで保持できる範囲において貼着されていれば足りるといえる。 そうすると,本件発明の「内側に該当する部分」は左側面部のうち分離して使用するものに対応する部分の領域の内側を,「外側に該当する部分」はその領域の外側をいうことは明らかである。本件発明においては,分離して使用するものの形状について,厳密に上部,下部及び左側部が特定できない丸や三角形が許容されていることを考慮すれば,分離して使用するものの上部,下部,左側部のそれぞれに対応して粘着剤が塗布されるべきことが要求されているものではない。 したがって,当業者にとって本件発明は明確であり,特許法36条6項2号に違反しない。 16 争点(3)コ(無効理由8)について〔被告の主張〕本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号所定の要件を充たしていないから,いわゆるサポート要件違反であって,同法123条1項4号により無効にされるべきものである。 (1) 本件特許の請求項1(本件発明)には,前記15の〔被告の主 6項1号所定の要件を充たしていないから,いわゆるサポート要件違反であって,同法123条1項4号により無効にされるべきものである。 (1) 本件特許の請求項1(本件発明)には,前記15の〔被告の主張〕の(1)で引用した記載があるところ,これは,左右側面部の裏面において,一過性の 粘着剤が塗布される位置を,当該分離して使用するものの上部,下部,左(右)側部の内側及び外側に該当する部分のいずれかであればよいとするものである。 しかし,本件明細書等には,一過性の粘着剤を塗布する部分の具体例として,分離して使用するもの4と中央面部1の上部境界,下部境界,左側部(右側部)境界の各境界の内側近傍と外側近傍に接着剤を塗布したものしか記載されていない。 よって,特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広いことになる。 (2) この点につき,本件発明の課題は,「葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」であり,発明の効果としては,「印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることになる」である。 しかるに,被告側で行った実験によれば,左右側面部の裏面であって,分離して使用するものの上部,下部,左(右)側部の外側に該当する部分において,少なくとも,分離して使用するものの上部境界と左(右)側部境界から離れた位置に接着剤を塗布した場合や上部と左側部に接着剤を塗布しない場合は,後 上部,下部,左(右)側部の外側に該当する部分において,少なくとも,分離して使用するものの上部境界と左(右)側部境界から離れた位置に接着剤を塗布した場合や上部と左側部に接着剤を塗布しない場合は,後から開く側面部に分離して使用するものが付いてくるという本件発明の作用効果を奏さない。 (3) したがって,本件発明の明細書の発明の詳細な説明には,請求項1に記載された粘着剤の塗布範囲であれば所望の作用効果を奏すると当業者に認識できる程度に具体例を開示して記載されているとはいえない。 すなわち,本件発明は,明細書の発明の詳細な説明の記載からは,当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず,また,出願時の技術常識に照らしても,当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 〔原告の主張〕(1) まず,特許法36条6項1号は,発明の詳細な説明にあらゆる実施例を記載することまでは要求していない。 そして,本件明細書等では図1に係る実施例について説明がされているところ(段落【0013】以下),図1の実施例では,葉書の境界に相当する部分の周辺に粘着剤が塗布されている。特許法36条6項1号との関係では,本件明細書等の記載で十分である。 (2) この点,被告は,葉書が側面部に付いてこない場合がある旨主張する。 しかし,そもそも,本件発明の効果は,葉書が側面部に付いてくる場合に限定されない。本件発明は,広告などの印刷物に付いている葉書等を切り取ろうとする意思を持たずに,当該印刷物を開くと自動的に手にすることができ,それら葉書等を使用する者に対するアピール力が高く,例えば返信用葉書の場合には,すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなるという効果が生じる と自動的に手にすることができ,それら葉書等を使用する者に対するアピール力が高く,例えば返信用葉書の場合には,すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなるという効果が生じるものである(本件明細書等の段落【0012】)。分離して使用するものが自動的に外れれば,本件発明の効果は奏し得るところ,左側面部及び右側面部を非常に素早く開いたときなどには,葉書等が左側面部及び右側面部から剥がれることがあるが,この場合も,印刷物に付いている葉書等を切り取ろうとする意思を持たずに,当該印刷物を開くと自動的に手にすることができるという,同様の効果を生じさせる。 また,被告の実験は,粘着剤の塗布位置ではなく,単に実験者の開封方法の違いに基づくものにすぎず,何ら意味がない。 (3) したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする 発明が発明の詳細な説明に記載したものであるから,特許法36条6項1号に違反しない。 17 争点(4)ア(原告は特許庁に対し適法に訂正請求等を行っているか)について〔原告の主張〕知的財産高等裁判所平成26年9月17日判決は,「訂正の再抗弁の主張に際しても,原則として,実際に適法な訂正請求等を行っていることが必要と解される。…ただし,特許権者が訂正請求等を行おうとしても,それが法律上困難である場合には,公平の観点から,その事情を個別に考察して,訂正請求等の要否を決すべきである。」と判示している。 本件特許については,被告が請求した特許無効審判が特許庁に係属中であるため,原告は現時点では訂正審判の請求又は訂正の請求をすることができないのであって,訂正が時期的に可能になり次第,原告は本件訂正に係る訂正の手続(訂正審判の請求又は訂正の請求)を行う予定である。 したがっ は現時点では訂正審判の請求又は訂正の請求をすることができないのであって,訂正が時期的に可能になり次第,原告は本件訂正に係る訂正の手続(訂正審判の請求又は訂正の請求)を行う予定である。 したがって,本件では,公平の観点から,原告の訂正の再抗弁は認められるべきである。 〔被告の主張〕本件発明には無効理由のあることが明らかであったから,特許庁の無効審判において原告は訂正請求をすべきであった。しかるに,原告は漫然と訂正請求の機会を逸したのであって,このような原告には,公平の観点から「特許庁に対し適法に訂正請求等を行っていること」との要件を不要とする特段の事情があるとは認められない。 したがって,原告による訂正の再抗弁は許されない。 18 争点(4)イ(本件訂正が訂正要件を充たしているか)について〔原告の主張〕本件訂正はいずれも訂正要件を充たしているものであるが,このうち訂正事 項1ないし4について特許法126条5項との適合性を説明すると,以下のとおりとなる。 (1) 訂正事項1及び訂正事項2本件明細書等の段落【0012】には,「本発明は以上の構成を有するので,印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることになる。したがって,分離して使用するものに対する使用者のアピール力が高く,例えば葉書の場合には,すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなり,…という効果が生じるものである。」と記載されている。この記載に加え,段落【0001】,【0006】,【0009】,【0016】等,本件明細書等全体の記載を考慮すると,本件明細書等にレスポンス用葉書の構成が記載されていることは明らかである。 したがって,訂正事項1及び訂正 01】,【0006】,【0009】,【0016】等,本件明細書等全体の記載を考慮すると,本件明細書等にレスポンス用葉書の構成が記載されていることは明らかである。 したがって,訂正事項1及び訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法126条5項に適合する。 (2) 訂正事項3本件明細書等の段落【0006】,【0012】,【0017】及び図3には,左側面部を先に開いて,次いで右側面部を開いた場合には,分離して使用するもの(葉書)が中央面部から自動的に切り離され,右側面部に付いてくることが開示されている。すなわち,願書に添付した明細書の上記箇所には,葉書の周囲の切り込みが一周にわたって連続したものであることが記載されているに等しい。 さらに,本件明細書等の図4(「本発明の印刷物の裏面を示す図」)等においても,分離して使用するもの(葉書)の周囲は,破線等ではなく実線で描かれている。 したがって,訂正事項3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は 図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法126条5項に適合する。 (3) 訂正事項4本件明細書等の段落【0016】及び図2には,左側面部と右側面部を中央部に貼着した状態で,左側面部と右側面部とが重ならないことが開示されている。また,段落【0017】にも,左側面部と右側面部のいずれを先に開いてもよいこと,すなわち,それらが重なっていないことが開示されている。 したがって,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法126条5項に適合する。 〔被告の主張〕本件訂正は,以下のとおり,訂正の要件を充たしていない不適法なものである。 (1) 特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法126条5項に適合する。 〔被告の主張〕本件訂正は,以下のとおり,訂正の要件を充たしていない不適法なものである。 (1) 訂正事項1及び訂正事項2本件明細書等には,分離して使用するものの具体例として単に「葉書」と記載されているだけで,その葉書が「レスポンス用葉書」であることは記載されておらず,その葉書がレスポンス用に使用されるものであることを示す構成(例えば,葉書にレスポンス先の宛名等が記載されていること)も,記載ないし示唆はされていない。本件明細書等の発明の効果の欄には「レスポンス向上」と記載されているが(段落【0012】),この「レスポンス向上」は,本件発明の作用に基づく技術的効果ではなく,単なる商業的な利点にすぎず,レスポンス用葉書の構成を想起させるものではない。 したがって,訂正事項1及び訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,新規事項の追加に該当し,特許法126条5項に違反する。 (2) 訂正事項3本件明細書等には,分離して使用するものの周囲に形成された切り込みの 構成,すなわち,切り込み(スリット)がどの程度まで連続しているのか,具体的には,切り込みには繋ぎ部があるのか,繋ぎ部がある場合には切り込みと繋ぎ部はどのような割合であるのかについて,何ら記載されていない。 そして,本件明細書等には「図2は左側面部2の裏面と右側面部3の裏面を中央面部1の裏面及び分離して使用するもの4に貼着した状態を示す図である。貼着した後,分離して使用するもの4(例えば葉書等)の周囲をハーフカット装置を使用して半抜きする。すなわち,分離して使用するもの4の周囲のみに切り込みを入れる。 もの4に貼着した状態を示す図である。貼着した後,分離して使用するもの4(例えば葉書等)の周囲をハーフカット装置を使用して半抜きする。すなわち,分離して使用するもの4の周囲のみに切り込みを入れる。」(本件明細書等の段落【0016】)と記載されているところ,本件明細書等の図2に示すような状態(左側面部と右側面部の向き合う端部が少し離れた状態で左右側面部が中央面部及び分離して使用するものに重なっている状態)で,分離して使用するものの周囲をハーフカット装置を使用して半抜きすると,中央面部において左右側面部が重なっていない部分は半抜きされずに繋がった状態となるのであって,分離して使用するものの周囲には連続した切り込みが形成されない。 したがって,訂正事項3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,新規事項の追加に該当し,特許法126条5項に違反する。 (3) 訂正事項4本件明細書等には,左側面部と右側面部の重なり関係については何ら記載されていないことから,左側面部と右側面部が重なる場合と重ならない場合が区別して記載されておらず,左側面部と右側面部が重ならない場合が発明として記載されているわけではない。この点,原告は,本件明細書等の図2,段落【0016】及び【0017】には左側面部と右側面部とが重ならないことが開示されている旨主張しているが,誤りである。 したがって,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,新規事項の追加に 該当し,特許法126条5項に違反する。 19 争点(4)ウ(ア)(無効理由1の解消)について〔原告の主張〕乙B1文献では,分離して使用する「情報記録体」の例示として,CD,L 該当し,特許法126条5項に違反する。 19 争点(4)ウ(ア)(無効理由1の解消)について〔原告の主張〕乙B1文献では,分離して使用する「情報記録体」の例示として,CD,LD,DVD,ICカード等が例示されているにすぎず,これをレスポンス用葉書とすることについては何ら記載がない(乙B1の段落【0011】等)。また,乙B1文献では,印刷物全体(「シート状基材」)を葉書の大きさにして郵送することが想定されているものであり(同段落【0004】【0012】等),その一部として形成される分離して使用する「情報記録体」を葉書とする余地はない。さらに,情報記録体は,あくまで,シート状基材の情報記録体をシート状基材の受領者の手元に留め置かれるものであり,レスポンスを想定されていない。 したがって,本件訂正発明は,以下のとおり,訂正前の相違点1-1及び1-2に加え(ただし,明確化のため,下線部の表現を追加する。),下記(3)の相違点(以下「相違点1-3」という。)においても引用発明1と相違するから,特許法第29条1項3号の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (1) 本件訂正発明は,左側面部と中央面部と右側面部とからなり,左側面部の裏面と当該右側面部の表面とは重ならず,当該左側面部の表面と当該右側面部の裏面とは重ならない印刷物であるのに対し,引用発明1は,2面しか有しない点(相違点1-1)。 (2) 本件訂正発明では,中央面部に分離して使用するものが印刷されており,左側面部及び右側面部の両方が,中央面部上の分離して使用するものに貼着されているのに対して,引用発明1は,そのような構成を全く備えていない点(相違点1-2)。 (3) 本件訂正発明では分離して使用するものがレスポンス用葉書であるのに対 使用するものに貼着されているのに対して,引用発明1は,そのような構成を全く備えていない点(相違点1-2)。 (3) 本件訂正発明では分離して使用するものがレスポンス用葉書であるのに対 し,引用発明1では,分離して使用するものがCD,LD,DVD,ICカード等の情報記録体であり,レスポンス用葉書ではない点(相違点1-3)。 〔被告の主張〕(1) 本件訂正に係る訂正事項1ないし4の内容は,いずれも乙B1文献に記載されているのであって,これを踏まえると,乙B1文献には次の発明(以下「引用発明1'」という。)が記載されている(下線部は引用発明1と異なる部分)。 「観音開き折りの広告印刷物であるシート状基材であって,情報記録体がシート状基材から打ち抜かれて完全に分離されて形成され,情報記録体が形成されたシート状基材の面とこれに重なる面には,情報記録体を被覆する領域に該当する部分に剥離可能な弱粘着性の粘着剤が塗布されており,当該粘着剤が塗布された面が,情報記録体が形成された面に貼着されたシート状基材。」この引用発明1'は,本件訂正の訂正事項1及び2に係る「レスポンス用葉書」の部分を除いて,本件訂正発明の構成要件A'からI'の全てを備えている。 そして,本件訂正発明と引用発明1'とは,本件訂正発明では分離して使用するものがレスポンス用葉書であるのに対し,乙B1文献では分離して使用するものが情報記録体である点で形式的に相違しているが,乙B1文献には情報記録体の具体例としてレスポンス用葉書が記載されているに等しいから,引用発明1'は,本件訂正発明の構成要件を全て備えているということができる。 (2) この点に関して原告は,相違点1-1,相違点1-2及び相違点1-3が存在すると主張する。しかし,このうち相違点1-1及び相違 は,本件訂正発明の構成要件を全て備えているということができる。 (2) この点に関して原告は,相違点1-1,相違点1-2及び相違点1-3が存在すると主張する。しかし,このうち相違点1-1及び相違点1-2は存在しないし,相違点1-3についても,原告は乙B1文献には情報記録体の具体例として「各種プリペイドカード,カード類」(乙B1文献の段落【0 011】)が挙げられていることを見落としており,誤りである。 (3) したがって,本件訂正発明は,乙B1文献から新規性がなく,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。 争点(4)ウ(イ)(無効理由2-1及び2-2の解消)について〔原告の主張〕(1) 前記19の〔原告の主張〕記載のとおり,本件訂正発明は,引用発明1と相違点1-1,1-2及び1-3において相違するところ,これらはいずれも容易に想到し得たものではない。 したがって,本件訂正発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (2) この点に関して被告は,乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献に記載の周知技術を引用発明1'に適用することが容易である旨主張する。 しかし,本件訂正発明においては,印刷物に付いているレスポンス用葉書を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることができる構成にしたので,レスポンス率が飛躍的に高まるという顕著な効果を生じさせるものである。これに対して,乙B1文献並びに乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献には,このような特有の効果について,何ら記載も示唆もない。 したがって,相違点1-3ないし後出の相違点a3は,当業者が容易に想到し得たものではない。 〔被告の主張〕(1) 従前,本件訂正前 は,このような特有の効果について,何ら記載も示唆もない。 したがって,相違点1-3ないし後出の相違点a3は,当業者が容易に想到し得たものではない。 〔被告の主張〕(1) 従前,本件訂正前の本件発明と引用発明1は,形式的に相違点a1及びa2が認められると主張したが,乙B1文献には,中央面部に情報記録体が形成され,左右側面部の裏面が中央面部及び情報記録体に貼着されることが記載されているに等しく,実質的に相違点a1及びa2は生じない。したがって,本件訂正発明と引用発明1'との間にも,このような相違点a1及びa 2は生じない。 (2) 他方,前記19の〔被告の主張〕記載のとおり,乙B1文献には情報記録体の具体例として「レスポンス用葉書」が記載されているに等しいが,仮に「レスポンス用葉書」が記載されていないとすると,本件訂正発明は次の相違点(以下「相違点a3」という。)において乙B1文献の引用発明1'と相違することとなる。 「本件訂正発明では分離して使用するものがレスポンス用葉書であるのに対して,引用発明1'では分離して使用するものが各種プリペイドカード,カード類等の情報記録体である点。」しかし,乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献には,複数の紙片(面部)が折り重ねられて剥離可能に接着され,1の紙片(面部)に情報記録体である返信葉書(レスポンス用葉書)が分離可能に形成された郵送用シートが記載されており,このような郵送用シートは周知である。 そして,引用発明1'が解決しようとする課題は,情報記録体を封筒に入れる(封入する)手間を省くという点で,上記各文献の周知技術が解決しようとする課題と共通するのであり,引用発明1'に上記周知技術を適用する動機付けは十分にあるから,引用発明1'において,情報記録体の具体例で する)手間を省くという点で,上記各文献の周知技術が解決しようとする課題と共通するのであり,引用発明1'に上記周知技術を適用する動機付けは十分にあるから,引用発明1'において,情報記録体の具体例であるカードに,上記周知技術に示されているような分離して使用する情報記録体として適している返信用葉書(レスポンス用葉書)を適用して,相違点a3に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できたものである。 (3) したがって,本件訂正発明は,乙B1文献に記載された引用発明1'並びに乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献に記載された周知技術から,当業者が容易に発明することができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 21 争点(4)ウ(ウ)(無効理由3-1及び3-2の解消)について〔原告の主張〕 (1) 本件訂正発明は,本件訂正前の本件発明に関する相違点2-1,2-2及び2-3のほか,次の相違点(以下「相違点2-4」という。)において引用発明2と相違する。 「本件訂正発明では分離して使用するものがレスポンス用葉書であるのに対し,引用発明2では,分離して使用するものがカードであり,レスポンス用葉書ではない点。」この相違点2-4について,引用発明2では印刷物の全体が「葉書」であるから,その一部として形成される分離して使用する「カード部1」を葉書とする余地はない。また,被告が副引用例として挙げる乙B8文献に記載の発明も,その記載からすると,その折り畳んだ状態の全体が葉書サイズであって,分離して使用するものについての記載もない。さらに,乙B2文献に記載された「カード部1」と,本件訂正発明の「レスポンス用葉書」とは,その性質において,本質的に全く異なるものである。被告が周知技術が記載 して使用するものについての記載もない。さらに,乙B2文献に記載された「カード部1」と,本件訂正発明の「レスポンス用葉書」とは,その性質において,本質的に全く異なるものである。被告が周知技術が記載された証拠として挙げる乙B5文献,乙B6文献及び乙B7文献においても,相違点2-4に係る構成や,レスポンス用葉書に特有の効果については,何らの記載も示唆もない。 したがって,当業者にとって,相違点2-1,2-2及び2-3に加え,相違点2-4が容易想到であったともいえないから,本件訂正発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (2) この点につき被告は,後出の相違点b3に係る構成を採用することは当業者が容易に想到できると主張する。しかし,乙B2文献に記載の発明を広く解釈するとしても,「一般に葉書と認められるもの」(乙B2文献の段落【0049】)の範囲内に限定されるのであって,その全体があくまで葉書である以上,その内部に更にレスポンス用葉書を設けることはできず,少なくとも容易に想到できるものではない。 また,被告は,乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献に記載の周 知技術を後出の引用発明2'に適用することが容易である旨主張する。しかし,本件訂正発明においては,印刷物に付いているレスポンス用葉書を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることができる構成にしたので,レスポンス率が飛躍的に高まるという顕著な効果を生じさせるものである。これに対して,乙B2文献並びに乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献には,このような特有の効果について何ら記載も示唆もない。 したがって,相違点2-4ないし後出の相違点b3は,当業者が容易に想到し得たものではない。 〔被告の主張〕( 1文献及び乙B42文献には,このような特有の効果について何ら記載も示唆もない。 したがって,相違点2-4ないし後出の相違点b3は,当業者が容易に想到し得たものではない。 〔被告の主張〕(1) 乙B2文献に記載された発明には,郵便法上の葉書に限定されず,一般に葉書と認められる郵送用シートも含んでいるため,乙B2文献には次の発明(以下「引用発明2'」という。)が記載されている(下線部は引用発明2と異なる部分)。 「カード部1を備えた郵送用シート本体2と,このシート本体2に連続した表面シート3,及び裏面シート4により構成され,カード部1の周囲はトムソン加工された切断予定線11で囲まれ,細長のシートを「Z」の形状に折り曲げて,シート本体2と表面シート3,及びシート本体2と裏面シート4をそれぞれ剥離可能に圧着した郵送用シート。」(2) そして,本件訂正発明と引用発明2'は,従前の相違点b1及びb2に加え,以下の点で相違している。 ア本件訂正発明では分離して使用するカードがレスポンス用葉書であるのに対して,引用発明2'では分離して使用するカードがレスポンス用葉書に限定されていない点(以下「相違点b3」という。)。 イ本件訂正発明ではレスポンス用葉書の周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っているのに対して,引用発明2'ではカード部の周囲に一 周にわたってトムソン加工による切断予定線が入っている点(以下「相違点b4」という。)。 (3) 相違点b1及びb2が乙B8文献から容易想到であることは,既に述べたとおりである。 また,相違点b3及びb4は,本件訂正によって新たに生じたものであるが,以下のとおり,当業者が容易に想到し得るものである。 ア相違点b3引用発明2'の郵送用シートは,一般に葉書と認められるも また,相違点b3及びb4は,本件訂正によって新たに生じたものであるが,以下のとおり,当業者が容易に想到し得るものである。 ア相違点b3引用発明2'の郵送用シートは,一般に葉書と認められるものであればよいため,引用発明2'において,郵送用シート本体2を大きいサイズのものとし,シート本体2にそれより小さいサイズの葉書を分離可能に形成することもできる。 ところで,乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献には,複数の紙片(面部)が折り重ねられて剥離可能に接着され,1の紙片(面部)に返信葉書が分離可能に形成された郵送用シートが記載されており,このような郵送用シートは周知である。 そして,引用発明2'は,上記各文献の周知技術と同様に,複数の面部が折り重ねられて剥離可能に接着され,1の面部にカードが分離可能に形成された郵送用シートである。また,カードは種々の意味で使用されるが,少なくともカードに葉書ないし返信用葉書が含まれるのは技術常識である。 したがって,引用発明2'において,郵送用シート本体に分離可能に形成されたカードに,周知技術である上記各文献の返信用葉書(レスポンス用葉書)を適用して相違点b3にかかる構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 イ相違点b4引用発明2'では,分離して使用するカード部の周囲に一周にわたって トムソン加工による切断予定線が形成されるが,このトムソン加工は,刃を組み込んだ木型を使って,紙を複雑な形にカットしたり,ミシン目や折りスジを入れたり,凸凹を付けたりする加工のことである。 そして,トムソン加工によりどのようなパターンの切断予定線(切り込み)を形成するかは,その目的に応じて適宜選択される設計事項にすぎない。 したがって,引用発明2'において,トム ことである。 そして,トムソン加工によりどのようなパターンの切断予定線(切り込み)を形成するかは,その目的に応じて適宜選択される設計事項にすぎない。 したがって,引用発明2'において,トムソン加工による切断予定線として連続した切り込みを選択し,相違点b4にかかる構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 (4) 以上により,本件訂正発明は,乙B2文献に記載された引用発明2',乙B8文献に記載された事項並びに乙B40文献,乙B41文献及び乙B42文献に記載された周知技術から,当業者が容易に発明することができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 22 争点(4)ウ(エ)(無効理由4の解消)について〔原告の主張〕(1) 本件訂正発明は,本件訂正前の本件発明に関する相違点3-1,3-2,3-3及び3-4のほか,次の相違点において引用発明3と相違する。 ア本件訂正発明では分離して使用するものがレスポンス用葉書であるのに対し,引用発明3では,分離して使用するものがカード部であり,レスポンス用葉書ではない点(以下「相違点3-5」という。)。 イ本件訂正発明はその全体がレスポンス用葉書付き広告印刷物であるのに対し,引用発明3は,その全体が葉書である点(以下「相違点3-6」という。)。 (2) この相違点3-5及び3-6については,乙B3文献,乙B8文献及び乙B9文献には,何らの記載も示唆もない。すなわち,引用発明3では,印刷 物の全体が「葉書」であるから,その一部として形成される分離して使用する「カード部」を葉書とする余地はない。また,乙B3文献に記載された「カード部」と,本件訂正発明の「レスポンス用葉書」とは,その性質において,本質的に全く異なるものであ して形成される分離して使用する「カード部」を葉書とする余地はない。また,乙B3文献に記載された「カード部」と,本件訂正発明の「レスポンス用葉書」とは,その性質において,本質的に全く異なるものである。 したがって,当業者にとって,相違点3-1,3-2,3-3及び3-4に加え,相違点3-5及び3-6が容易想到であったともいえないから,本件訂正発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (3) この点に関して被告は,「引用発明3'の郵送用シートは,一般に葉書と認められるものであれば,郵便法上他の郵便物に分類されるようなものでもよい」と主張する。しかし,乙B3文献にはその旨の記載はないし,被告の主張するような態様は特殊な態様である。 また,被告は,乙B3文献の発明に乙B40文献の技術を適用することが容易である旨主張する。しかし,本件訂正発明においては,印刷物に付いているレスポンス用葉書を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることができる構成にしたので,レスポンス率が飛躍的に高まるという顕著な効果を生じさせるものである。乙B3文献及び乙B40文献にはこのような特有の効果について,何ら記載も示唆もない。 したがって,相違点3-5ないし後出の相違点c4は,当業者が容易に想到し得たものではない。 〔被告の主張〕(1) 乙B3文献に記載された発明には,乙B2文献の葉書と同様に,郵便法上の葉書だけでなく,一般に葉書と認められるものであれば,郵便法上他の郵便物に分類されるような宛先を有する郵送用シートも含んでいるといえる。 したがって,乙B3文献には次の発明(以下「引用発明3'」という。)が記載されている(下線部は引用発明3と異なる部分)。 「宛て先を有する郵送用シートで 送用シートも含んでいるといえる。 したがって,乙B3文献には次の発明(以下「引用発明3'」という。)が記載されている(下線部は引用発明3と異なる部分)。 「宛て先を有する郵送用シートであって,トムソン加工された切り込みからなる切断予定線により囲まれた,かつ,表面に上記宛て先を有するカード部を有する第1シートと,この第1シートの裏面に重なることが可能な裏面を有する第2シートと,上記第1シートの裏面を上記第2シートの裏面に剥離可能に接着する接着層とを備えて,上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが上記接着層で接着された接着状態と,上記接着状態から上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが剥離されて上記第1シートから上記カード部を上記切断予定線で切り離すことができる剥離状態とを呈することができるようにした郵送用シート。」(2) そして,本件訂正発明と引用発明3'は,以下の点で相違している(下線部は本件訂正前発明と引用発明3との相違点と異なる部分)。 ア本件訂正発明は,左側面部と中央面部と右側面部からなり,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着する形態,すなわち,左側面部と右側面部の両方が中央面部に重なる折り形態であり,左側面部と右側面部が重ならないのに対して,引用発明3'は,一のシートが他の一のシートと重なる折り形態である点(以下「相違点c1'」という。)。 イ本件訂正発明は,中央面部に分離して使用するもの(レスポンス用葉書)が印刷され,左側面部の裏面及び右側面の裏面の両方が,分離して使用するもの(レスポンス用葉書)に貼着しているのに対して,引用発明3'は,一のシートが分離して使用するもの(カード)と貼着している点(以下「相違点c2'」という。)。 ウ本件訂正発明の一過性の接着手段は,一過性の粘 ス用葉書)に貼着しているのに対して,引用発明3'は,一のシートが分離して使用するもの(カード)と貼着している点(以下「相違点c2'」という。)。 ウ本件訂正発明の一過性の接着手段は,一過性の粘着剤を塗布するものであるのに対して,引用発明3'の一過性の接着手段は,接着剤層である点(相違点c3と同じ)。 エ本件訂正発明では分離して使用するカードがレスポンス用葉書である のに対して,引用発明3'では分離して使用するカードがレスポンス用葉書に限定されていない点(以下「相違点c4」という。)。 オ本件訂正発明ではレスポンス用葉書の周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っているのに対して,引用発明3'ではカード部の周囲に一周にわたってトムソン加工された切り込みからなる切断予定線が入っている点(以下「相違点c5」という。)。 (3) 上記相違点のうち相違点c1'及びc2'は,本件訂正前の本件発明と引用発明3の相違点c1及びc2と実質的に同じである。そして,相違点c1,c2及びc3が乙B8文献及び乙B9文献から容易想到であることは,既に述べたとおりである。 他方,相違点c4及びc5は本件訂正によって新たに生じたものであるが,次のとおり,これらについても当業者が容易に想到し得るものである。 ア相違点c4引用発明3'の郵送用シートは,一般に葉書と認められるものであれば,郵便法上他の郵便物に分類されるようなものでもよいため,引用発明3'において,第1シートを大きいサイズのものとし,それより小さいサイズの葉書を第1シートに分離可能に形成することもできる。そうすると,乙B40文献には,複数の紙片(面部)が折り重ねられて剥離可能に接着され,1の紙片(面部)に返信用葉書が分離可能に形成された郵送用シートであって,返信用葉書には に形成することもできる。そうすると,乙B40文献には,複数の紙片(面部)が折り重ねられて剥離可能に接着され,1の紙片(面部)に返信用葉書が分離可能に形成された郵送用シートであって,返信用葉書には郵送用シートの宛て先が記載され,その宛て先を返信用葉書の返信情報とすることができる郵送用シートが記載されていることになる。 よって,乙B40文献には,郵送用シートの宛て先がそのまま返信用葉書(カード)の一部として使用することができ,郵送用シートの宛て先とは別に返信用葉書(カード)に住所や氏名を記載する必要がない郵送用シートを提供するという引用発明3'の課題(乙B3文献の段落【0 003】)が内在する。 そして,引用発明3'と乙B40文献のメールフォームは,複数の紙片(面部)が折り重ねられて剥離可能に接着され,1の紙片(面部)に宛て先を有するカードが分離可能に形成された郵送用シートである点で共通する。 したがって,引用発明3'において,宛て先を有するカード部に,乙B40文献の宛て先を有する返信用葉書(レスポンス用葉書)を適用して相違点c4に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 イ相違点c5引用発明3'では,分離して使用するカード部の周囲に一周にわたってトムソン加工された切り込みからなる切断予定線が形成されるが,このトムソン加工は,刃を組み込んだ木型を使って,紙を複雑な形にカットしたり,ミシン目や折りスジを入れたり,凸凹を付けたりする加工のことである。 そして,トムソン加工によりどのようなパターンの切断予定線(切り込み)を形成するかは,その目的に応じて適宜選択される設計事項にすぎない。 したがって,引用発明3'において,トムソン加工による切断予定線として連続した切り込みを選択し, ーンの切断予定線(切り込み)を形成するかは,その目的に応じて適宜選択される設計事項にすぎない。 したがって,引用発明3'において,トムソン加工による切断予定線として連続した切り込みを選択し,相違点c5にかかる構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。 (4) 以上により,本件訂正発明は,乙B3文献に記載された引用発明3'及び乙B8文献,乙B9文献及び乙B40文献に記載された事項から,当業者が容易に発明することができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 23 争点(4)ウ(オ)(無効理由7の解消)について 〔原告の主張〕本件訂正前の本件発明において特許法36条6項2号違反がないことは前記15における主張のとおりであるが,本件訂正により,本件訂正発明はより明確になった。 したがって,本件訂正後の本件特許の請求項1は,特許法36条6項2号に違反しない。 〔被告の主張〕本件訂正の訂正事項2により,「分離して使用するもの」が「レスポンス用葉書」に訂正された。しかし,本件訂正においては,明細書の記載も訂正され,本件訂正明細書の段落【0013】には,レスポンス用葉書の形状について「本図面ではこのレスポンス用葉書4は四角形をしているが,丸でも三角形でも良く形状は問わない。」と記載されている。 これより,本件訂正後の請求項1の「レスポンス用葉書」は,本件訂正前の「分離して使用するもの」と同様に,その外形が特定されず,「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)」が特定できていない。 したがって,本件訂正によっても,依然として本件特許の請求項1の記載は,特許を受けようとする発明が明確でなく,特許法36条6項2号に違反する。 24 争点 左側部(右側部)」が特定できていない。 したがって,本件訂正によっても,依然として本件特許の請求項1の記載は,特許を受けようとする発明が明確でなく,特許法36条6項2号に違反する。 24 争点(4)ウ(カ)(無効理由8の解消)について〔原告の主張〕訂正前の本件特発明が特許法36条6項1号違反ではないことについては,前記16で原告が主張したとおりであり,本件訂正発明も,同様に,特許法36条6項1号違反ではない。 従前の主張に補足するに,いわゆるサポート要件については,機械分野などにおいては,通常,構成と作用効果が密接に関連しており作用効果の予測性は高い。そして,このような作用効果の予測性が高い分野において,作用効果に着目してサポート要件を判断した場合,構成と作用効果との因果関係が容易に 認められる結果,特許請求の範囲に記載し得る範囲は広くなると解される。 本件訂正発明の広告印刷物の分野も,生物や化学の分野と比べると,当業者にとって「作用効果の予測性が高い分野」にあたる。すなわち,当業者は,本件明細書等の実施例に接することにより,明細書に記載された作用効果を生じるように,適宜,粘着剤の位置を設計することができる。 したがって,訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるから,特許法36条6項1項に違反しない。 〔被告の主張〕本件訂正においては,粘着剤の塗布範囲は何ら訂正されておらず,粘着剤の塗布範囲についての明細書の記載も何ら訂正されていない。 この点に関して原告は,本件訂正発明の広告印刷物の分野も,生物や化学の分野に比べると,当業者にとって「作用効果の予測性が高い分野」に当たる旨主張しているが,誤りである。すなわち,本件訂正明細書の記載が の点に関して原告は,本件訂正発明の広告印刷物の分野も,生物や化学の分野に比べると,当業者にとって「作用効果の予測性が高い分野」に当たる旨主張しているが,誤りである。すなわち,本件訂正明細書の記載がサポート要件違反であるのは,生物や化学の分野か広告印刷物の分野かに関係なく,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広く,明細書の発明の詳細な説明の記載からは,当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず,また,出願時の技術常識に照らしても,当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないからである。 また,原告は,当業者は適宜粘着剤の位置を設計することができる旨を主張しているが,どのようにして設計するのかは何ら示されていない。 したがって,本件訂正によっても,依然として本件特許の請求項1は,いわゆるサポート要件を満たさず,特許法36条6項1号に違反する。 争点(4)エ(被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕 前記2ないし4の〔原告の主張〕と同様に,被告各製品はいずれも構成要件C',D'及びE'を充足し,本件訂正発明の技術的範囲に属する。また,仮に相違点が存在するとしても,被告各製品については均等侵害が成立する。 〔被告の主張〕前記2ないし4の〔被告の主張〕と同様に,被告各製品は,構成要件C',D'及びE'を充足せず,本件訂正発明の作用効果を奏しないから,本件訂正発明の技術的範囲に属しない。 26 争点(4)オ(ア)(実施可能要件違反)について〔被告の主張〕本件訂正発明において,レスポンス用葉書の周囲に入っている切り込みは,「連続した切り込み」である(構成要件F')。 この構成 争点(4)オ(ア)(実施可能要件違反)について〔被告の主張〕本件訂正発明において,レスポンス用葉書の周囲に入っている切り込みは,「連続した切り込み」である(構成要件F')。 この構成要件F'の「切り込み」に関し,本件訂正明細書の発明の詳細な説明には,「図2は左側面部2の裏面と右側面部3の裏面を中央面部1の裏面及び分離して使用するもの4に貼着した状態を示す図である。貼着した後,分離して使用するもの4(例えば葉書等)の周囲をハーフカット装置を使用して半抜きする。すなわち,分離して使用するもの4の周囲のみに切り込みを入れる。」(本件訂正明細書の段落【0016】)と記載されている。 しかし,本件明細書等の図2に示すような,左側面部と右側面部の向き合う端部が離れている状態で中央面部の分離して使用するもの4の周囲をハーフカット装置により半抜きすると,中央面部のうち左右側面部と重ならない部分には切り込みが入らず,繋ぎ部となって残り,連続した切り込みが形成されない。 すなわち,明細書の発明の詳細な説明には,レスポンス用葉書の周囲にどのようにして連続した切り込みを入れるのか記載されていない。 これより,本件特許出願時の技術常識に基づいても,本件訂正明細書の発明の詳細な記載からは,連続した切り込みをどのようにして入れるのか当業者が理解できず,本件訂正発明を実施するためには,当業者に期待しうる程度を超 える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要がある。 したがって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく,本件特許は,いわゆる実施可能要件を満たさず,特許法36条4項1号に違反する。 〔原告の主張〕本件訂正発明の「当該中央面部(1)の当該レスポンス できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく,本件特許は,いわゆる実施可能要件を満たさず,特許法36条4項1号に違反する。 〔原告の主張〕本件訂正発明の「当該中央面部(1)の当該レスポンス用葉書の周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っていること」という構成を実現するために,左側面部と右側面部の向き合う端部の距離,紙の固さ(しなりやすさ),カット刃の条件(種類,速度等)等の,当業者が通常行う条件最適化を行えば,当業者は容易に当該構成を実現することができる。実際,被告各製品が,当該構成要件F'を充足することについては,当事者間で争いはない。 したがって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから,本件訂正発明は実施可能要件を満たし,特許法36条4項1号に違反しない。 27 争点(4)オ(イ)(サポート要件違反)について〔被告の主張〕(1) 本件訂正発明は,左側面部と右側面部が重ならない全ての態様を含んでいるが,本件訂正明細書には,本件明細書等の図2に示すような,左側面部と右側面部の向き合う端部が少し離れている態様しか記載されていない。 よって,特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広いことになる。 (2) この点につき,本件訂正発明の課題は「レスポンス用葉書を広告印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからずレスポンス用葉書を利用することが出来る印刷物を提供すること」であり,発明の効果は「印刷物に付いているレスポンス用葉書を切り取ろうとする意思 を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることに スポンス用葉書を利用することが出来る印刷物を提供すること」であり,発明の効果は「印刷物に付いているレスポンス用葉書を切り取ろうとする意思 を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることになる」である。 しかるに,発明の詳細な説明に記載された左側面部と右側面部が重ならない態様を超えて,左側面部と右側面部が重ならない態様のいずれかでよいとすると,例えば,左側面部と右側面部の向き合う端部が大きく離れて,左右側面部とレスポンス用葉書の貼着部分(面積)が狭くなった場合,後から開いた側面部にレスポンス用葉書が付いてこないのは明らかであり,本件訂正発明の課題を解決できず,また,本件訂正発明の作用効果を奏しないこととなり,当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはならない。 よって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明には,請求項1に記載された左側面部と右側面部が重ならない範囲であれば所望の作用効果を奏すると当業者に認識できる程度に具体例を開示して記載されているとはいえない。すなわち,本件訂正発明は,明細書の発明の詳細な説明の記載からは,当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず,また,出願時の技術常識に照らしても,当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 (3) したがって,本件訂正発明は,特許法36条6項1号違反となる。 〔原告の主張〕後から開いた側面部にレスポンス用葉書が付いてくるように,一過性の粘着剤の粘着強度を調整することは,当業者が当然なし得ることである。 また,確かに,本件訂正明細書の図面の図2においては,左側面部と右側面部の端部にわずかに距離が開いているように描かれているが,これは,本件訂正発明の構成を分かりやすく説 当然なし得ることである。 また,確かに,本件訂正明細書の図面の図2においては,左側面部と右側面部の端部にわずかに距離が開いているように描かれているが,これは,本件訂正発明の構成を分かりやすく説明するための図にすぎず,本件訂正明細書の記載を読めば,本件訂正発明が図2と同一の実施形態に限定されるものではないことは明らかである。 したがって,本件訂正発明は,特許法36条6項1号に違反しない 28 争点(4)オ(ウ)(明確性要件違反①:構成要件G'及びH'並びにC'及びD')について〔被告の主張〕本件訂正により構成要件G'及びH'が付加され,本件訂正発明は,左側面部と右側面部が重ならない態様に限定された。 しかし,左側面部と右側面部が重ならない態様には,左側面部と右側面部が向き合う端部が接している態様,該端部が少し離れている態様,該端部が大きく離れている態様とがあり,本件訂正発明がどの態様を含むのか明確でない。 また,左側面部と右側面部が向き合う端部が大きく離れている場合,構成要件C'の「当該レスポンス用葉書の上部,下部,左側部」及び構成要件D'の「当該レスポンス用葉書の上部,下部,右側部」がどこを指すのか不明となる。 さらに,左側面部と右側面部の向き合う端部がどの程度離れれば,後から開いた側面部にレスポンス用葉書が付いてこず,本件訂正発明の作用効果を奏さなくなるのか不明であり,結果的に本件訂正発明の範囲が不明確となる。 したがって,本件訂正発明は,特許を受けようとする発明が明確ではなく,特許法第36条6項2号に違反する。 〔原告の主張〕本件訂正で追加された構成要件G'及びH'は,これまでの被告の主張を受けて,訂正前の「左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物」がいわゆる巻き折りの形態を含まな 違反する。 〔原告の主張〕本件訂正で追加された構成要件G'及びH'は,これまでの被告の主張を受けて,訂正前の「左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物」がいわゆる巻き折りの形態を含まないことを明確化したものである。したがって,構成要件G'及びH'に不明確な点はない。 また,構成要件C'及びD'についても,当業者であれば技術常識により容易に理解することができるものである。そもそも,構成要件C'及びD'に関する明確性要件の被告の主張は,本件訂正前の特許発明についても主張し得たものであるので,実質的には訂正の再抗弁に対する反論ではなく,被告の無効の抗弁の主張であり,時機に後れている。 したがって,被告が主張する特許法36条6項2号違反の主張は成り立たない。 29 争点(4)オ(エ)(明確性要件違反②:プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)について〔被告の主張〕本件訂正発明のうち,構成要件B'の「レスポンス用葉書が印刷され」,構成要件C'及びD'の「一過性の粘着剤が塗布され」,構成要件E'の「当該レスポンス用葉書に貼着している」並びに構成要件F'の「切り込みが入っている」は,本件訂正明細書の段落【0013】ないし【0016】に記載された本件訂正発明である印刷物の方法の各工程を記載したものである。 特に,本件訂正発明は,構成要件C'及びD'において,一過性の粘着剤が塗布されるのを左側面部の裏面と右側面部の裏面に限定しているが,一過性の粘着剤を中央面部とレスポンス用葉書に塗布しても,物としては本件訂正発明と同一となり,本件訂正発明の技術的範囲及び発明の要旨が不明確となる。 したがって,本件訂正発明は,いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームであるというべきところ,出願時において当該物をその構造又は となり,本件訂正発明の技術的範囲及び発明の要旨が不明確となる。 したがって,本件訂正発明は,いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームであるというべきところ,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在しないことは明らかであるから,特許法36条6項2号に違反する。 〔原告の主張〕被告の指摘するクレームの文言は,本件訂正発明に係る物を構造又は特性により直接特定したものにすぎず,本件訂正発明は,いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームには当たらない。 また,仮に,本件訂正発明が最高裁判所平成27年6月5日第二小法廷判決にいうプロダクト・バイ・プロセス・クレームに当たるとしても,他に適切な表現もないのであるから,同判決にいう例外的な場合にあたる。 したがって,被告が主張する特許法36条6項2号違反の主張は成り立たな い。 争点(5)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕(1) A事件ア特許法102条1項による損害額被告の開示によれば,被告製品1ないし4の譲渡数量は,少なくとも,被告製品1が994万枚,被告製品2が3890万3850枚,被告製品3が3426万2700枚,被告製品4が1543万1000枚である(合計9853万7550枚。ただし,被告は後に被告製品2及び3の譲渡数量を訂正しており,原告もこれを争わない。)。 他方,原告も被告製品1ないし4と同様の構成の競合製品(以下「原告製品」という。)を製造し,被告と同一の顧客に対して販売しているところ,原告製品1枚当たりの限界利益の額は,別紙「原告製品の限界利益計算表」記載のとおり,1.602円である。なお,限界利益額は,売上金額から変動費計を差し引い 告と同一の顧客に対して販売しているところ,原告製品1枚当たりの限界利益の額は,別紙「原告製品の限界利益計算表」記載のとおり,1.602円である。なお,限界利益額は,売上金額から変動費計を差し引いて計算した。変動費計は,製造変動費と荷造運賃の合計額であり,製造変動費は,材料費,外注費及び直接経費の合計である。このうち材料費は,用紙代,インキ代,PS版代及び糊代の費用の合計である。また,直接経費は,動力費であり,ガス代と電気代の合計である。 そして,原告製品の生産は,①輪転機と加工機を直結して生産する方式(以下「インライン方式」という。)と,②輪転機で印刷しロール状に巻き戻した後,加工機による加工を行う方式(以下「オフライン式」という。)の2方式による。このうちインライン方式の加工機は2台あり,オフライン方式の加工機は1台あって,これら3台を合計すると,原告製品の生産能力は1か月7560万部あるから,被告の譲渡数量は原告の実施能力を超えない。 したがって,被告製品1ないし4の譲渡数量に,原告製品1枚当たりの利益を乗じた額は,1億5785万7155円となる。 (計算式)98,537,550枚×1.602円/枚=157,857,155円イ弁護士費用A事件の訴訟の難易度を考慮すれば,弁護士費用負担の損害は2000万円を下らない。 ウ合計したがって,原告は,上記ア及びイの合計1億7785万7155円の損害を受けたものであり,本訴ではこの一部請求として1億4540万円を請求する。 (2) B事件ア特許法102条1項による損害額被告製品5ないし8の譲渡数量は,少なくとも,各2463万枚である(合計9852万枚)。 他方,原告もこれらと同様の構成の原告製品を製造し,被告と同一の顧客に対して販売 2条1項による損害額被告製品5ないし8の譲渡数量は,少なくとも,各2463万枚である(合計9852万枚)。 他方,原告もこれらと同様の構成の原告製品を製造し,被告と同一の顧客に対して販売しているところ,原告製品1枚当たりの限界利益の額は,上記(1)アのとおり,1.602円である。 そして,上記(1)アのとおり,被告の譲渡数量は原告の実施能力を超えない。 したがって,被告製品5ないし8の譲渡数量に,原告製品1枚当たりの利益を乗じた額は,1億5782万9040円となる。 (計算式)98,520,000枚×1.602円/枚=157,829,040円イ弁護士費用B事件の訴訟の難易度を考慮すれば,弁護士費用負担の損害は1600万円を下らない。 ウ合計 したがって,原告は,上記ア及イの合計1億7382万9040円の損害賠償を請求する。 〔被告の主張〕(1) A事件開示した譲渡数量については,被告製品2を「3844万3850枚」,被告製品3を「3902万2700枚」へと訂正したので,これを参照されたい。 原告は原告製品が「被告各製品と同様の構成の競合製品」と主張するが,当該製品がいかなる構成か不明であり,これが競合製品かどうかは明らかでない。また,原告は限界利益を計算しているが,内容的に誤っていたり,本来控除すべき費用を控除していないため,この点に関しては否認ないし争う。 さらに,原告は,被告の譲渡数量を製造する実施能力があることを立証しておらず,原告の現有機では実施能力がないとみるのが相当である。しかも,被告各製品の顧客は1社だけであり,同社は,原告と被告の2社,年間総受注部数割合がほぼ同一となるように調整して発注しているものと認められるのであって,被告の譲渡数量のうち原告が製造販売 る。しかも,被告各製品の顧客は1社だけであり,同社は,原告と被告の2社,年間総受注部数割合がほぼ同一となるように調整して発注しているものと認められるのであって,被告の譲渡数量のうち原告が製造販売できた数量は50%以下となるはずである。 したがって,原告主張の損害額は否認する。 (2) B事件上記A事件に関する主張と同様に,否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の意義(1) 本件明細書等には,以下の記載がある。 【技術分野】・「本発明は,印刷物,特に中央面部に分離して使用するもの,たとえば葉書等が印刷され,かつその葉書等の周囲に切り込みが入っている印刷 物に関する。」(段落【0001】)【背景技術】・「従来,左側面部及び右側面部が開く広告用印刷物に関する技術がある(例えば,特許文献1参照。)。 又,左側面及び右側面が開く広告用印刷物に葉書が付いている技術がある(例えば,特許文献2参照。)。」(段落【0002】)【発明が解決しようとする課題】・「しかし,特許文献1には葉書が付いておらず,特許文献2は葉書が付いていて広告としての機能を効果的に発揮することが出来るが,なお,葉書を切り取らなければならないという手間が依然として残っていた。」(段落【0004】)・「又,広告等にチケット,クーポン券等が付いている場合があるがこれら等も広告から切り取らなければならないという問題点があった。」(段落【0005】)・「そこで,本発明は,葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用す 等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供することを目的とする。」(段落【0006】)【発明の効果】・「本発明は以上の構成を有するので,印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることになる。したがって,分離して使用するものに対する使用者のアピール力が高く,例えば葉書の場合には,すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなり,又チケ ット・クーポン券等の場合はそれらを利用してもらえるということが多くなる,という効果が生じるものである。」(段落【0012】)【発明を実施するための最良の形態】・「本発明の実施の形態の一例を図面にしたがって説明する。 図1は本発明の印刷物を開いた状態を示す図である。 中央面部1はほぼ中央の場所に分離して使用するもの4が印刷されている。本図面ではこの分離して使用するもの4は四角形をしているが,丸でも三角形でも良く形状は問わない。 印刷物が広告の場合には分離して使用するもの4以外の部分には広告の内容等が印刷されているものである。」(段落【0013】)・「左側面部2の裏面に当該分離して使用するもの4の裏面又は表面(都合により裏面でも表面でも良い。)の上部,下部,左側部の内側に該当する部分5,外側に該当する部分6に一過性の粘着剤が塗布されているので,左側面部2を中央面部1の方に折って重ねると,左側面部2は分離して使用するもの4及び中央面部1の左側に貼着される。 なお,本図面では図示していないが 部分6に一過性の粘着剤が塗布されているので,左側面部2を中央面部1の方に折って重ねると,左側面部2は分離して使用するもの4及び中央面部1の左側に貼着される。 なお,本図面では図示していないが,左側面部2の裏面の上部,下部,左側部,右側面部3の裏面の上部,下部,右側部,又は中央面部1の裏面の上部,下部にも一過性の粘着剤を塗布して良い。」(段落【0014】)・「右側面部3の裏面も同様に,当該分離して使用するもの4の裏面又は表面(都合により裏面でも表面でも良い。)の上部,下部,左側部の内側に該当する部分7,外側に該当する部分8に一過性の粘着剤が塗布されているので,右側面部3を中央面部1の方に折って重ねると,右側面部3は分離して使用するもの4及び中央面部1の右側に貼着される。」(段落【0015】) ・【図1】 ・「図2は左側面部2の裏面と右側面部3の裏面を中央面部1の裏面及び分離して使用するもの4に貼着した状態を示す図である。 貼着した後,分離して使用するもの4(例えば葉書等)の周囲をハーフカット装置を使用して半抜きする。すなわち,分離して使用するもの4の周囲のみに切り込みを入れる。 左側面部2の裏面と右側面部3の裏面の前記所定の箇所に一過性の粘着剤が塗布されているので,分離して使用するもの4の周囲に切り込みが入っても欠落したりすることがないものである。左,右に開く場合は,開く箇所を示した部分10,11より開けば容易に開くことが出来る。」(段落【0016】)・【図2】 ・「図3は左側面部2と右側面部3を開いた状態を示す図である。 本図面では左側面部2から開いたので,右側面部3の裏面に分離して使用するもの4が貼着したまま附い ・「図3は左側面部2と右側面部3を開いた状態を示す図である。 本図面では左側面部2から開いたので,右側面部3の裏面に分離して使用するもの4が貼着したまま附いており,左側面部2には分離して使用するもの4が附いていない状態を示している。右側面部3から開いた場合には左側面部2の裏面に分離して使用するもの4が貼着するのである。 分離して使用するもの4が中央面部1から切り離されたことにより,分離して使用するもの4があった部分は四角形の穴9になっている。」(段落【0017】)・「右側面部3の裏面に貼着している分離して使用するもの4は一過性の粘着剤で附いているだけなので簡単に剥がすことが出来るものであり,切り取ろうとする意思を必要としないものである。 したがって分離して使用するもの4の使用及び利用価値が非常に高まるものである。」(段落【0018】)・【図3】 (2) 前記第2,1(3)及び上記(1)の本件明細書等の記載によれば,本件発明は,葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからず上記分離して使用するものを利用することができる印刷物を提供することを目的とするものであり,この目的を達成するために,左側面部と中央面部と右側面部とからなり,中央面部は所定の箇所に所定の大きさの分離して使 用するものが印刷され,左側面部の裏面及び右側面部の裏面にそれぞれ一過性の粘着剤が塗布され,中央面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着していて,当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っているとの構成を採用するものであっ 面及び右側面部の裏面にそれぞれ一過性の粘着剤が塗布され,中央面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着していて,当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っているとの構成を採用するものであって,これにより,印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることになるなどの効果が生じる発明である,と認められる。 2 争点(3)ア(無効理由1)について事案に鑑み,まず,争点(3)アについて判断する。 (1) 乙B1文献の記載本件発明の特許出願日より前の平成14年4月16日に頒布された刊行物である乙B1文献には,次の記載がある。 【請求項1】・「シート状の基材に情報記録体が分離可能に形成されたことを特徴とする情報記録体を形成したシート状基材。」【請求項3】・「請求項1の情報記録体に連続した同体のシート状基材を折り返して剥離可能に貼着したことを特徴とする情報記録体を形成したシート状基材。」【請求項6】・「シート状基材と情報記録体が分離している請求項2乃至4に記載の情報記録体を形成したシート状基材。」【請求項8】・「情報記録体がCD,LD,DVD,ICカードの何れかである請求項1乃至7に記載の情報記録体を形成したシート状基材。」【請求項9】・「シート状の基材が葉書等の郵便物として郵送可能な請求項1乃至8に 記載の情報記録体を形成したシート状基材。」【産業上の利用分野】・「本発明はCD,LD,DVD等のディスクやICカード等の情報記録体に関する。詳しくはディスクやカード類がシート状基材に成形され,郵送等により受取人が受け取った後にディスクやカード類を分離して使用することにより情報を読み取ることができる情報記録体を形成したシ 録体に関する。詳しくはディスクやカード類がシート状基材に成形され,郵送等により受取人が受け取った後にディスクやカード類を分離して使用することにより情報を読み取ることができる情報記録体を形成したシート状基材に関する。」(段落【0001】)【発明が解決しようとする課題】・「封筒に封入して送る場合は封筒代の他に封入の手間がかかる。更に専用ケースを使用すればそのコストや小包にするための手間がかかる。本発明は封入や小包にする手間を省き,さらに専用ケース等により発生する余分なコストを削減することにより,低コストで手間や時間がかかることなく受取人に配達することが可能になる情報記録体を形成したシート状基材を提供することを目的としている。」(段落【0003】)【課題を解決するための手段】・「本発明は,例えばハガキ大のシート状基材の内側にディスクやカード類の形状が打ち抜かれたもので,受取人はディスクやカード類をシート状基材から分離して取り出すことにより,独立した通常のディスクやカード類と同様の使用方法で使用することができるものである。」(段落【0004】)・「シート状の基材にディスク等を形成して受取人に配達するには,例えばシート状基材とディスクの形状を複数の小さな繋ぎ部分を残して打ち抜き,受取人が繋ぎ部分を手で破断して分離できるようにしておけばよい。」(段落【0006】)・「シート状の基材の少なくとも一方の面をシート状基材や樹脂フィルム等の別の被覆材で剥離可能に被覆しておけば,ディスク等を完全に分離 しておいても情報記録体が被覆材に密着しているため不用意に脱落することはない。」(段落【0007】)・「また上記別体の被覆材以外にシート状の情報記録材自体通常の2倍寸で作成し,半分から折り返して2つ折りの状態で被覆材に代え 材に密着しているため不用意に脱落することはない。」(段落【0007】)・「また上記別体の被覆材以外にシート状の情報記録材自体通常の2倍寸で作成し,半分から折り返して2つ折りの状態で被覆材に代えることも可能である。当然2つ折り以上の3つ折り以上も可能で,その場合には巻き折りやZ折り,観音開き折り等の各種形態が採用できる。」(段落【0008】)・「さらに,例えば2つ折りした上に被覆材で被覆しても構わず,前記各種折り形態とミックスすることにより,より宣伝効果を高める構成にすることが可能である。なお,シート状基材の各表面には,宣伝広告や各種文言,プリンタ等で打ち出された個人情報等が印字・印刷されていても構わない。」(段落【0009】)・「シート状基材を2つ折りしたり別体の被覆材を重ね合わて密着させる方法として,弱粘着性の粘着剤による他に加熱・加圧により剥離可能に疑似接着することも可能である。」(段落【0010】)・「シート状の基材に形成される情報記録体としてはCD(コンパクトディスク),LD(光ディスク),DVD(デジタルビデオディスク),ICカード,各種プリペイドカード,カード類等が形成可能である。シート状基材の材質は,それら形成される情報記録体により決定すればよい。」(段落【0011】)【実施例】・「図2A及びBにおいて情報記録体を形成したシート状基材Sは図1のSの2倍のサイズを折り部3で2つ折りしたものである。この場合4,5の各シート状基材同士は疑似接着部分6で剥離可能に疑似接着されている。従って4側に形成されている情報記録体1は図1の場合のような繋ぎ部2がなくても,下側のシート状基材5に疑似接着しているため不 用意に脱落することはない。受取人はCDの情報記録体1を剥離可能に疑似接着している下側のシー 記録体1は図1の場合のような繋ぎ部2がなくても,下側のシート状基材5に疑似接着しているため不 用意に脱落することはない。受取人はCDの情報記録体1を剥離可能に疑似接着している下側のシート状基材5の疑似接着部分6から引き剥がし分離して取り出すことができる。」(段落【0016】)・【図2】 ・「図2の場合折り部3を介して連接したシート状基材4,5を2つ折りする構成を採用しているが,分離した別体のシート状基材4,5を疑似接着してもよい。その場合下側のシート状基材5を異なる材質の樹脂に代えてもよく,さらに疑似接着に代えて弱粘着性の粘着剤層を介して剥離可能に接着してもよい。また上記シート状基材5を情報記録体1とその周囲部分のみを覆うように小さ目に設定しても良く,同様に被覆材の場合でもシート状基材S全体を被覆する必要はなく,その大きさや形状に制限はない。」(段落【0018】)(2) 乙B1文献に記載された引用発明1ア上記(1)によれば,乙B1文献には以下の事項が記載されているものと 認められる。 ・シート状基材に情報記録体が分離可能に形成されていること(【請求項1】)・情報記録体に連続した同体のシート状基材を折り返して剥離可能に貼着したこと(【請求項3】)・情報記録体が形成されたシート状基材の一方の面を別体の被覆材で剥離可能に被覆して,情報記録体と被覆材を密着させること(段落【0007】)・シート状の情報記録材自体を半分から折り返して二つ折りの状態とすることで被覆材に代えることも可能であり,二つ折り以上の三つ折り以上も可能で,その場合には巻き折りやZ折り,観音開き折り等の各種形態が採用できること(段落【0008】)・シート状基材を二つ折りしたり別体 被覆材に代えることも可能であり,二つ折り以上の三つ折り以上も可能で,その場合には巻き折りやZ折り,観音開き折り等の各種形態が採用できること(段落【0008】)・シート状基材を二つ折りしたり別体の被覆材を重ね合わて密着させる方法は,弱粘着性の粘着剤による剥離可能な疑似接着であること(段落【0010】)・シート状基材と情報記録体は,打ち抜きによって分離していること(【請求項6】,段落【0006】及び【0007】)イしたがって,乙B1文献には,以下の引用発明1が記載されているということができる。 「巻き折り又は観音開き折りの三つ折りにされた印刷物であるシート状基材であって,該シート状基材の前記三つ折りされた各面のうち一面には,情報記録体が打ち抜かれて分離可能に形成され,前記情報記録体が形成されたシート状基材の前記一面と,該一面に折り返されて重なるシート状基材の他の面とが,弱粘着性の粘着剤により剥離可能に疑似接着されてなる, 印刷物であるシート状基材。」(3) 引用発明1と本件発明との同一性引用発明1は,以下に述べるとおり,本件発明と同一であると認めるのが相当である。 ア構成要件Aについて引用発明1は巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であり,巻き折り又は観音開き折りにしたシートは,左側面部と中央面部と右側面部からなるものである。 また,引用発明1のシート状基材には,宣伝広告等の印刷がされているから(乙B1文献の段落【0009】),引用発明1は印刷物である。 したがって,引用発明1は,「左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物」(構成要件A)に相当する。 イ構成要件Bについて(ア) 引用発明1においては,情報記録体がシート状基材から打ち抜かれ分離されており,この情報 「左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物」(構成要件A)に相当する。 イ構成要件Bについて(ア) 引用発明1においては,情報記録体がシート状基材から打ち抜かれ分離されており,この情報記録体は「分離して使用するもの」に相当する。 (イ) 引用発明1においては,情報記録体が形成されたシート状基材の一方の面を別体の被覆材で被覆するのに代えて,シート状基材自体を巻き折り又は観音開き折りの状態としている(乙B1文献の段落【0007】及び【0008】)。このうち観音開き折りの状態では,別体の被覆材で被覆するのに代えて,シート状基材自体を折り返した左右の側面部が,情報記録体が形成されたシート状基材を被覆することとなる。すなわち,情報記録体が形成されたシート状基材の部分は,観音開き折りの中央面部となり,情報記録体は中央面部に形成されていることとなる。 また,引用発明1のシート状基材は,葉書等の郵便物として郵送可能であり(同【請求項9】),情報記録体にはCDやカード類が含まれ(同【請求項8】),葉書とCDやカード類の大きさの関係から,引用 発明1のシート状基材を観音開き折りとした場合,情報記録体が中央面部に形成されることになる。 さらに,引用発明1のシート状基材を観音開き折りとした場合には,二つ折りにした場合と同様にシート状基材の大きさを通常の2倍寸で作成し,通常の大きさとなる中央面部に情報記録体を形成し,その左右の側面部で情報記録体を被覆することになる。 そもそも,乙B1文献の「ハガキ大のシート状基材の内側にディスクやカード類の形状が打ち抜かれ」(乙B1文献の段落【0004】)との記載や「低コスト」(同段落【0003】)との記載からすれば,引用発明1では情報記録体に対し折り畳み状態のシート状基材の大きさが無駄に大 ド類の形状が打ち抜かれ」(乙B1文献の段落【0004】)との記載や「低コスト」(同段落【0003】)との記載からすれば,引用発明1では情報記録体に対し折り畳み状態のシート状基材の大きさが無駄に大きくならないようにする動機付けが存在するところ,「観音開き折り」の場合,中央面部に情報記録体を配置する態様が最もシート状基材の大きさ(送付時外形)を小さくし得ることになる。 よって,乙B1文献には,引用発明1として,中央面部に情報記録体が形成されていることが記載されているに等しい。 (ウ) また,引用発明1にいう情報記録体とは,独立した通常のディスクやカード類と同様の使用方法で使用することができるものであり(乙B1文献の段落【0004】),印刷が施されたものであることは明らかである。 (エ) したがって,引用発明1においては,「中央面部は,所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するもの(情報記録体)が印刷されていること」(構成要件B)になる。 ウ構成要件CないしEについて(ア) 引用発明1においては,情報記録体が形成されたシート状基材の面とこれに重なる面が弱粘着性の粘着剤により剥離可能に貼着されていることから(乙B1文献の段落【0007】及び【0010】),情報記録 体が形成されたシート状基材の面に重なる面,すなわち,観音開き折りとした場合の左右側面部には,情報記録体と重なる面に剥離可能な弱粘着性の粘着剤が塗布されている。 そして,乙B1文献の段落【0016】には,「〔図2の〕4,5の各シート状基材同士は疑似接着部分6で剥離可能に疑似接着されている」から「4側に形成されている情報記録体1は図1の場合のような繋ぎ部2がなくても,下側のシート状基材5に疑似接着しているため不用意に脱落することはない」として,上下のシート 可能に疑似接着されている」から「4側に形成されている情報記録体1は図1の場合のような繋ぎ部2がなくても,下側のシート状基材5に疑似接着しているため不用意に脱落することはない」として,上下のシート状基材同士が疑似接着されるとともに,上側のシート基材に形成された情報記録体も下側のシート状基材に疑似接着することになり,情報記録体が不用意に脱落することがない旨記載されている。 さらに,乙B1文献の段落【0018】には,「シート状基材5を情報記録体1とその周囲部分のみを覆うように小さ目に設定」との記載がある。 これらの記載からは,「被覆材として機能するシート状基材」と「情報記録体を形成したシート基材」との弱粘着性の粘着剤による接着部分が,「情報記録体とその周囲部分」であることが明らかといえる。すなわち,仮に情報記録体に重なる部分にのみ粘着剤が塗布されているのであれば,被覆する側のシート状基材は情報記録体とのみ接着し,情報記録体が形成されたシート状基材とは接着しないから,両基材は折り返した状態で相互に貼着されない。この場合,シート状基材から完全に分離するように切り込みが施された情報記録体(段落【0007】にいう「ディスク等を完全に分離しておいても」)は,それが形成された側のシート状基材から被覆する側のシート状基材側に貼り付いて移行してしまうため,シート状基材を折り畳んだ状態を維持することができず,「シート状の基材の少なくとも一方の面をシート状基材…で剥離可能に 被覆」(段落【0007】)という前提と整合せず,葉書として郵送することができないなど作用効果も一部奏しない。また,「ディスク等を完全に分離しておいても情報記録体が被覆材に密着しているため不用意に脱落することはない。」(同)との効果を奏するのかについても,疑問を差し挟 できないなど作用効果も一部奏しない。また,「ディスク等を完全に分離しておいても情報記録体が被覆材に密着しているため不用意に脱落することはない。」(同)との効果を奏するのかについても,疑問を差し挟まざるを得ない。 以上によれば,引用発明1においてシート状基材を観音開き折りとする場合には,中央面部及びそれに形成された情報記録体に対し,左右面部において,情報記録体とその周囲のシート状基材部分とに対向する部分,すなわち情報記録体(分離して使用するもの)の上部,下部,左右側部の内側及び外側に該当する部分で粘着剤による貼着が施されるべきことは明らかということができる。 (イ) また,引用発明1にいう弱粘着性の粘着剤とは,疑似接着するための手段であるから,これは本件発明の「一過性の粘着剤」に相当する。 (ウ) したがって,引用発明1においては,「左側面部の裏面は,当該分離して使用するもの(情報記録体)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され」(構成要件C),「右側面部の裏面は,当該分離して使用するもの(情報記録体)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され」(構成要件D),「左側面部の裏面及び右側面部の裏面が,中央面部の裏面及び分離して使用するもの(情報記録体)に貼着している」(構成要件E)ことになる。 エ構成要件Fについて引用発明1においては,情報記録体がシート状の基材から打ち抜かれて分離されていることから,これは「分離して使用するもの(情報記録体)の周囲に切り込みが入っている」(構成要件F)に相当する。 オ構成要件Gについて 上記アのとおり,引用発明1は「印刷物」(構成要件G)に相当する。 カ小括以上のように,引用発明1は,本件発明の ている」(構成要件F)に相当する。 オ構成要件Gについて 上記アのとおり,引用発明1は「印刷物」(構成要件G)に相当する。 カ小括以上のように,引用発明1は,本件発明の構成要件AないしGの全てを備え,本件発明と同一である。 そして,引用発明1は,その構造上,シート状基材から情報記録体を切り取ろうとする意思を持たずに,各側面部を剥がせば,後から開く側面部に情報記録体(分離して使用するもの)が付いてきて,情報記録体を自動的に手にするという作用効果を奏することは明らかであり,これは,本件発明の作用効果と同一である。 したがって,本件発明は,乙B1文献に記載された引用発明1と同一であって,新規性を欠くものというべきである。 (4) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,以下のとおり主張する。 ア引用発明1の認定及び構成要件Aについて原告は,①乙B1文献には,図2に示されている二つ折りの場合を巻き折りや観音開き折りの場合に変形した場合に,情報記録体をどの面に配置するのか何ら開示されておらず,当業者は上記の変形例を具体的に認識することができないのであるから,「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」かつ,情報記録体を有する構成を認定することはできない,②したがって,引用発明1は上記図2のように2面しか有しておらず,左側面部と中央面部と右側面部の三つの面がないから,本件発明の構成要件Aと相違すると主張する。 しかし,前記(3)イ(ア)のとおり,観音開き折りの場合には情報記録体を中央面部に配置することが構造上明らかといえるから,上記①の主張は採用することができず,また,これを前提とした上記②の主張も採用することができない。 イ構成要件Bについて(ア) 原告は, 配置することが構造上明らかといえるから,上記①の主張は採用することができず,また,これを前提とした上記②の主張も採用することができない。 イ構成要件Bについて(ア) 原告は,仮に引用発明1が「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」という構成を有すると解したとしても,「観音開き折り」とは下図のとおり「左側面部と右側面部を中央面部側に折り畳み,さらに中央面部を二つ折りにして,4重にする折り方」をいうのであって,この場合,記録情報体は中央面部ではなく左側面部又は右側面部に形成されるから,本件発明の構成要件Bと相違するなどと主張する。 【原告の主張する「観音開き折り」】 【左側面部に情報記録体が形成された図】 (イ) しかし,この点に関しては,「観音開き折り」とは,下図のとおり「左の面k1と右の面k2が中央の面k3から両側に開くような3つ折り」をいうのであり,原告の主張する「観音開き折り」とは「観音折り」であって「観音開き折り」ではないと被告が主張するように,証拠(乙B8,乙B19ないし乙B23の2)によれば,各種文献には,被告の主張する形態の折り方をもって「観音開き折〔り〕」ないし「観音開き」と記載され,原告の主張する形態の折り方は「観音折り」と記載されていることが認められ,また,原告自身の提出する証拠(甲B20,甲B21)によっても,原告の主張する形態の折り方をもって「観音開き折り」と記載ものはなく,むしろいずれも「観音折り」と記載されていることが認められる。 【被告の主張する「観音開き折り」】 さらに,そもそも,「観音開き折り」の「観音開き」とは,「(観世音の像をおさめた厨子の造り方に基づく)左右の扉が中央から両側に開く 主張する「観音開き折り」】 さらに,そもそも,「観音開き折り」の「観音開き」とは,「(観世音の像をおさめた厨子の造り方に基づく)左右の扉が中央から両側に開くように造られた開き戸。」(広辞苑第6版646頁)を意味するのであって,原告の主張するような「さらに中央面部を2つ折りにして,4 重にする折り方」は,「観音開き」との語句本来の意味からも離れているというべきである。 (ウ) この点に関して原告は,乙B1文献には「当然2つ折り以上の3つ折り以上も可能で,その場合には巻き折りやZ折り,観音開き折り等の各種形態が採用できる。」(段落【0008】)と記載されているところ,「巻き折りやZ折り」と「観音開き折り」の間に「,」があるのは,「巻き折りやZ折り」が3つ折りの具体例であり,「観音開き折り」がそれよりさらに大きい4つ折りの例であることを示す趣旨であると主張する。 しかし,乙B1文献の上記記載部分には,ことさら「3つ折り」と「4つ折り」とを区別するような記載は見当たらず,上記「,」は単なる単語と単語の区切りにすぎないようにみえるのであって,原告の上記主張は採用することができない。 そして,他に「観音開き折り」が原告の主張する形態の折り方のみを指すことを端的に示す証拠も見当たらない以上,引用発明1にいう「観音開き折り」とは,被告の主張するとおり,左の面と右の面が中央の面から両側に開くような三つ折りをいうものと解するのが相当である。 (エ) したがって,原告の上記(ア)の主張は,その前提を欠き,採用することができない。 ウ構成要件CないしEについて(ア) 原告は,仮に引用発明1が「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」という構成を有し,かつ,観音開き折りの場合に情報 ,採用することができない。 ウ構成要件CないしEについて(ア) 原告は,仮に引用発明1が「巻き折り又は観音開き折りのシート状基材であって,」という構成を有し,かつ,観音開き折りの場合に情報記録体が中央面部に形成される場合があると解したとしても,情報記録体は,中央面部上の,左側面部又は右側面部のいずれか1面にのみ重なる位置に形成されるから(下図),本件発明(左側面部及び右側面部の両方が中央面部上の分離して使用するものに貼着されている。)と相違す る旨主張する。 【原告の主張する情報記録体の配置】 (イ) しかし,前記3イ(イ)のとおり,乙B1文献の「ハガキ大のシート状基材の内側にディスクやカード類の形状が打ち抜かれ」(乙B1文献の段落【0004】)との記載や「低コスト」(同段落【0003】)との記載からすれば,引用発明1では情報記録体に対し折畳み状態のシート状基材の大きさが無駄に大きくならないようにする動機付けが存在する。そして,観音開き折りにおいて,中央面部に相当程度の大きさを有する情報記録体を形成し,折った状態のものの幅を最も狭くするには,情報記録体を中央面部のシート状基材の中央付近に配置した上,当該シート状基材の幅をできる限り情報記録体の幅に近くする必要があるから,必然的に,折り返された左右側面部のいずれもが,中央面部に形成された情報記録体の上面に被覆することにならざるを得ないのであって,原告の主張する情報記録体の配置はこれに反し,にわかに採用することができない。 (ウ) この点に関して原告は,情報記録体を左右側面部の両方で被覆すると,加工精度の問題により,右側面部と左側面部のいずれにも被覆されない隙間が生じてしまい,「ディスク等の表面を保護する」(乙B1文献の段落【0007】)という効果が生 体を左右側面部の両方で被覆すると,加工精度の問題により,右側面部と左側面部のいずれにも被覆されない隙間が生じてしまい,「ディスク等の表面を保護する」(乙B1文献の段落【0007】)という効果が生じない部分が出たり,上記隙間部分が強度的に弱くなってしまうなどと主張する。 しかし,乙B1文献の段落【0007】には,「情報記録体の両面が被覆されているときは,…ディスク等の表面を保護することができ極めて有用である。」(同段落【0007】)と記載されており,これは情報記録体の両面が被覆されている場合に限った効果をいうものにすぎないのであって,観音開き折りの場合のように「一方の面をシート状基材や樹脂フィルム等の別の被覆材で剥離可能に被覆」(同段落【0007】)している場合には,当該効果が生じることは必須ではない。また,そもそも曲げ強度は主としてシート状基材の材質や厚み等により決まる設計事項であって,折り形態に直接左右されるものではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) 結論以上によれば,本件発明は引用発明1と同一であって,新規性を欠くから,特許法29条1項3号により特許を受けることができず,本件特許は同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 3 争点(3)カ(無効理由4)について事案に鑑み,次に,争点(3)カ(無効理由4)についても判断する。 (1) 乙B3文献の記載本件発明の特許出願日より前の平成9年5月20日に頒布された刊行物である乙B3文献には,次の記載がある。 【請求項1】・「宛て先(5,6)を有する葉書であって,切断予定線(4)により囲まれ,かつ,表面に上記宛て先を有するカード部(3)を有する第1シート(1)と,上記第1シートの裏面 記載がある。 【請求項1】・「宛て先(5,6)を有する葉書であって,切断予定線(4)により囲まれ,かつ,表面に上記宛て先を有するカード部(3)を有する第1シート(1)と,上記第1シートの裏面(1b)に重なることが可能な裏面(2b)を有する第2シート(2)と,上記第1シートの裏面を上記第2シートの裏面に剥離可能に接着する接着層(7)とを備えて,上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが上記接着層で接着された接着 状態と,上記接着状態から上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが剥離されて上記第1シートから上記カード部を上記切断予定線で切り離すことができる剥離状態とを呈することができるようにしたことを特徴とする葉書。」【請求項2】・「上記カード部は,テレフォンカードと大略同一の大きさであり,かつ,郵便番号記載欄のすぐ下に配置されている請求項1に記載の葉書。」【請求項3】・「上記切断予定線はトムソン加工された切り込みを有する請求項1又は2に記載の葉書。」【考案が解決しようとする課題】・「しかしながら,上記構造のものでは,葉書や封書の宛て先とは別個にカードに使用者の住所や氏名を印刷するか,又は,使用者側で住所や氏名をカードに記入する必要があり,煩雑なものであった。 従って,本考案の目的は,上記問題を解決することにあって,葉書の宛て先がそのままカードの一部として使用することができ,葉書の宛て先とは別にカードに住所や氏名を記載する必要がない葉書を提供することにある。」(段落【0003】)【考案の実施の形態】・「以下に,本考案にかかる実施形態を図1~図4に基づいて詳細に説明する。 本考案の第1実施形態にかかる葉書は,図1~4に示すように,住所部分5及び氏名部分6とを有する宛て先を有する葉書である ・「以下に,本考案にかかる実施形態を図1~図4に基づいて詳細に説明する。 本考案の第1実施形態にかかる葉書は,図1~4に示すように,住所部分5及び氏名部分6とを有する宛て先を有する葉書である。この葉書は,第1シート1と,第1シート1と大略同一形状の第2シート2と,上記第1シート1の裏面1bを上記第2シート2の裏面2bに剥離可能に接着する接着層7とを備えて構成している。 上記接着層7は,第1シート1の裏面1bと第2シート2の裏面2bとを接着するものであり,上記第1シート1の裏面1bに接着される第1接着層7aと上記第2シート2の裏面2bに接着されかつ上記第1接着層7aに接着可能な第2接着層7bとを備えている。上記第1シート1と第2シート2とが接着された状態では,上記第1接着層7aと上記第2接着層7bとが互いに疑似的に接着されている一方,上記第1シート1と第2シート2とを剥離するときには上記第1接着層7aと第2接着層7bとが互いに剥離し,一旦剥離した後は,再び接着不可能となるものである。上記第2シート2の1つの角は三角形状に切断された切欠2cを形成し,この部分のみ第2シート2と第1シート1が重ならずに第1シート1が露出して,第1シート1を第2シート2から剥離させやすくするようにしている。」(段落【0007】)・「上記第1シート1は,切断予定線4により矩形状に囲まれ,かつ,表面1aに上記宛て先5,6を有する大略矩形のカード部3を有している。 このカード部3は,テレフォンカードと大略同一の大きさであることが取り扱い上好ましいとともに,図1に示すように,郵便番号記載欄のすぐ下に配置されて,カード部3内に記載された宛て先が上記葉書の宛て先として使用するものである。上記カード部3は,イベント招待券,コンサートやJリーグや とともに,図1に示すように,郵便番号記載欄のすぐ下に配置されて,カード部3内に記載された宛て先が上記葉書の宛て先として使用するものである。上記カード部3は,イベント招待券,コンサートやJリーグやプロ野球等の入場券,抽選券,商品購入の際の割り引き券,優待券,景品引き換え券などや,各種施設などの会員証,登録者証,受講者証,各種管理カード等,種々の用途に使用することができるものである。また,カード部3は,一日乗車券や旅行の際のクーポン券として利用することができ,その利用の際の条件等については,カード部3の裏面側に記載する他,このカード部3の裏面側に記載せずに,第1シート1のカード部3以外の裏面1bや第2シート2の表裏面2a,2bに記載することもできる。」(段落【0008】) ・「上記切断予定線4は,上記第1シート1の表面1aから裏面1bの上記第1接着層7aまで形成された切り込みを間欠的に多数有して構成されており,手などで簡単に第1シート1から上記カード部3を切り離すことができるようにしている。よって,上記切断予定線4は,トムソン加工により切断容易に形成されることが好ましく,第1シート1と第2シート2とを剥離させたのち,第1シート1からカード部3のみを,何等切断道具を必要とすることなく,簡単にかつ確実に切り取ることができるものである。」(段落【0009】)・【図1】及び【図2】 ・【図4】 (2) 乙B3文献に記載された引用発明3上記(1)によれば,乙B3文献には,以下の引用発明3が記載されているということができる。 「宛て先を有する葉書であって,トムソン加工された切り込みからなる切断予定線により囲まれた,かつ,表面に上記宛て先を有するカード部を有する第1シートと,この第1シ されているということができる。 「宛て先を有する葉書であって,トムソン加工された切り込みからなる切断予定線により囲まれた,かつ,表面に上記宛て先を有するカード部を有する第1シートと,この第1シートの裏面に重なることが可能な裏面を有する第2シートと,上記第1シートの裏面を上記第2シートの裏面に剥離可能に接 着する接着層とを備えて,上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが上記接着層で接着された接着状態と,上記接着状態から上記第1シートの裏面と第2シートの裏面とが剥離されて上記第1シートから上記カード部を上記切断予定線で切り離すことができる剥離状態とを呈することができるようにした葉書。」(3) 本件発明と引用発明3との一致点及び相違点ア本件発明及び引用発明3第1シートと第2シートからなる引用発明3は,左側面部と中央面部と右側面部からなる本件発明と,複数のシート(面部)からなる印刷物である点で共通する。 そして,引用発明3においては,第1シートに,トムソン加工された切り込みからなる切断予定線により囲まれたカード部が設けられ,第1シートからカード部を切断予定線で切り離すことができる。当該カード部は「分離して使用するもの」であり,トムソン加工された切り込みからなる切断予定線は,分離して使用するものの周囲に入っている「切り込み」である。 次に,引用発明3においては,第1シートの裏面と第2シートの裏面とが接着剤層で接着され,第1シートの一部がカード部となっており,この接着剤層は,一旦剥離した後は再び接着不可能となるものである(乙B3文献の段落【0007】)。そうすると,引用発明3において,第2シートの裏面には,少なくともカード部(分離して使用するもの)の上部,下部,左側部,右側部の内側及び外側に該当する部分に である(乙B3文献の段落【0007】)。そうすると,引用発明3において,第2シートの裏面には,少なくともカード部(分離して使用するもの)の上部,下部,左側部,右側部の内側及び外側に該当する部分に接着剤層が形成され,第2シートの裏面が,第1シートの裏面及びカード部(分離して使用するもの)に貼着していることは明らかである。 また,引用発明3の接着層と本件発明の「一過性の粘着剤」とは,一過性の接着手段である点で共通する。 イ一致点以上によれば,本件発明1と引用発明3は,以下の点で一致する。 「複数のシート(面部)からなる印刷物であって,一のシート(面部)は,所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷されていること,分離して使用するものが形成された一のシートと重なるシートの裏面は,当該分離して使用するものの上部,下部,左側部,右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の接着手段が設けられていること,当該一のシートと重なるシートの裏面が,当該一のシートの裏面及び当該分離して使用するものに貼着していること,当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っていること,からなる印刷物。」ウ相違点そして,以上によれば,本件発明と引用発明3は,以下の点で相違しているというべきである。 (ア) 相違点c1本件発明は,左側面部と中央面部と右側面部からなり,左側面部の裏面及び右側面部の裏面が中央面部の裏面に貼着する形態,すなわち,左側面部と右側面部の両方が中央面部に重なる折り形態であるのに対して,引用発明3は,一のシートが他の一のシートと重なる折り形態である点。 (イ) 相違点c2本件発明は,中央面部に分離して使用するものが印刷され,左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方が,分離 ,引用発明3は,一のシートが他の一のシートと重なる折り形態である点。 (イ) 相違点c2本件発明は,中央面部に分離して使用するものが印刷され,左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方が,分離して使用するものに貼着しているのに対して,引用発明3は,一のシートが分離して使用するものと貼着している点。 (ウ) 相違点c3 本件発明の一過性の接着手段は,一過性の粘着剤を塗布するものであるのに対して,引用発明3の一過性の接着手段は,接着剤層である点。 エ原告の主張に対する判断この点に関して原告は,本件発明では中央面部上の分離して使用するものが「連続的」(実質的に連続的と評価できる場合を含む。)に切り抜かれているのに対し,引用発明3の切断予定線は「間欠的」な切り込みであるから,この点は相違点(相違点3-4)となる旨主張する。 しかし,本件発明の「切り込み」(構成要件F)には何の限定もなく,単に切り込みとしか記載されていないのであって,文言上「連続的」に切り抜かれたものには限定されない。 したがって,原告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 (4) 相違点c1及びc2相違点c3については,被告は「引用発明3の接着層を,一過性の粘着剤を塗布するものとして相違点c3に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものである。」と主張するところ,原告もこの点につき特段争っていない。 そこで,以下,相違点c1及びc2について判断する。 ア乙B8文献の記載本件発明の特許出願日より前の平成9年5月14日に頒布された刊行物である乙B8文献には,次の記載がある。 【請求項1】ないし【請求項3】・「基材の密着予定面のほぼ全面に加圧により粘着する弱粘着剤層を形成し,前記弱粘着剤層の表面 年5月14日に頒布された刊行物である乙B8文献には,次の記載がある。 【請求項1】ないし【請求項3】・「基材の密着予定面のほぼ全面に加圧により粘着する弱粘着剤層を形成し,前記弱粘着剤層の表面に印字層を形成し,前記基材を折り返してまたは積層して,対向する面の前記弱粘着剤層同士を密着して前記印字層を隠ぺいしたのちに,前記弱粘着剤層間から剥離する(3つ折の)メ ールフォーム・・・」【従来の技術】・「このため,メールフォームを2つ折りまたは3つ折りにしてはがきの大きさし〔判決注:原文ママ〕,その内側に秘密情報を記入し,そのメールフォームを密着させてはがきとして郵送し,受取人はそのメールフォーム間を剥離して開くことにより,秘密情報を読むことができるシークレットはがきが認可され,一部実施されている。 第15図,第16図は,シークレットはがきの従来例を示した図である。 シークレットはがき3は,メール用紙31,32が連設されており,中央部で2つ折りした形態であり,メール用紙31の外側に宛名情報33を印字し,メール用紙31,32の内側に秘密情報34を記入したものである。このメール用紙31,32の内側は,積層粘着シート35により,全面密着させてある。 この状態では,はがき料金で郵送でき,秘密情報34は第三者に読まれることはない。受取人は,積層粘着シート35の剥離部35cから剥離すれば,秘密情報34を毀損することなく,開封でき秘密情報34を読むことができる。 シークレットはがき4は,メール用紙41,42,43が連設され,3つ折りされる形態であり,メール用紙41の外側に宛名情報44を印字し,メール用紙42の内側とそれと対向するメール用紙43の面に秘密情報45を印字するので,1度の印字で宛名情報44と秘密情報45を印 つ折りされる形態であり,メール用紙41の外側に宛名情報44を印字し,メール用紙42の内側とそれと対向するメール用紙43の面に秘密情報45を印字するので,1度の印字で宛名情報44と秘密情報45を印字できる。メール用紙41,42間は完全接着させ,メール用紙42,43間は前述した積層粘着シートで再剥離可能に全面密着させる。」(2頁左欄38行~右欄13行) ・【第15A図】 ・【第16図】 【実施例】・「第1図~第5図は,本考案によるメールフォームの第1の実施例を示した図であって・・・メールフォーム1は,第1図に示すように,通常はがき(定形はがき)のほぼ3倍の大きさの用紙であり,破線で示した折曲予定線p,qから3つ折りして使用され」(3頁左欄27~34行)・「弱粘着剤層12を形成するときの粘着剤の塗布方式としては,比較的高速化が可能なコータによるコーティング等が使用できる。」(4頁左欄3~5行)・「こののち,メールフォーム1を折曲予定線p,qから折り曲げて,3 つ折りにして(第3A図),全面密着させる(第3B図,第5A図)。」(4頁左欄16~18行)・【第1図】 ・【第3A図】 ・【第5A図】 ・「第8の実施例のメールフォーム1G〔判決注:第12図〕は,基材11を両側から折り返して,中央部にスリット状の重なり合わない部分を残して,剥離の切っ掛けとする剥離開始部2bとしたものである。開封時には,剥離開始部2bの裏側を押すようにしながら,観音開きのようにして剥離することができる。なお,この実施例では,基材11の端部でスリット状の重なり合わない部分を形成したが,基材11の任意の位置,任意 ,剥離開始部2bの裏側を押すようにしながら,観音開きのようにして剥離することができる。なお,この実施例では,基材11の端部でスリット状の重なり合わない部分を形成したが,基材11の任意の位置,任意の方向にスリットを形成してもよい。」(4頁右欄32~39行) ・【第12図】 イ乙B9文献の記載本件発明の特許出願日より前の平成4年2月27日に頒布された刊行物である乙B9文献には,次の記載がある。 【実用新案登録請求の範囲第1項】・「少なくとも一面13に所定の印字・印刷がなされる第1紙面部10の両側方に第2,第3紙面部11,12が連続して折り返し可能に設けられ,該第2,第3紙面部11,12は折り返された両紙面部11,12によって上記第1紙面部10の一面13の略全面を覆う大きさに形成され,上記第1紙面部10と第2,第3紙面部11,12との重なり合う部分の略周縁には斜め方向の引っ張りによって剥離可能なホットメルト型接着剤2が帯状に塗布され,上記第2,第3紙面部11,12が上記第1紙面部10の一面13側に折り返されて剥離可能に貼着されていることを特徴とする印字・印刷物の構造。」【産業上の利用分野】・「この考案は,ダイレクトメール用ハガキ,名刺あるいは広告用ちらし等に適した新規な印字・印刷物の構造に関する。」(明細書2頁7~9行)【実施例】・「以下,本考案を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。 第1図ないし第5図は本考案の1実施例による印字・印刷物の構造を示す。図において,1はダイレクトメール用ハガキで,該ダイレクトメール用ハガキ1は普通ハガキと同寸法のハガキ本体(第1紙面部)10を有し,該ハガキ本体10の両側方には普通ハガキの略半分の幅を有する折返片( において,1はダイレクトメール用ハガキで,該ダイレクトメール用ハガキ1は普通ハガキと同寸法のハガキ本体(第1紙面部)10を有し,該ハガキ本体10の両側方には普通ハガキの略半分の幅を有する折返片(第2,第3紙面部)11,12が折り返し可能に連続して設けられ,該両折返片11,12は両者によってハガキ本体10の裏面(一面)13の略全面を覆うようになっている。 また,上記ハガキ本体10の上下縁,及び折返片11,12の外周縁には斜め方向の引っ張りによって剥離可能なホットメルト型接着剤層2が所定の幅で帯状に塗布され,該接着剤層2の内側全体には接着剤層2の剥離強度よりも弱くかつ剥離時に印字・印刷面を損傷しない強度で接着する第2のホットメルト型接着剤層が塗布され,上記折返片11,12はハガキ本体10の一面13側に折り返されて剥離可能に貼着される。 ここで接着剤は概ね15mm2当たり100~200g程度の斜め方向の引っ張りによって剥離するような接着強度に調整するのがよい。 さらに,上記折返片11,12の外側下端部には剥離時に爪等を引っ掛けて容易に剥離できるように切欠き14が形成されている。 次に第4図の行程図を用いてダイレクトメール用ハガキ1の作成方法について説明する。 本ハガキ1を作成する場合,まずハガキ本体10の上下縁,及び折返片11,12の外周縁に所定の幅でホットメルト型接着剤2を,その内側全面に第2のホットメルト型接着剤4を各々印刷塗布し(第4図の行程S1参照),次にハガキ本体10の表面15に宛名を,その裏面13に秘密送付すべき事項を印字・印刷し,さらに必要に応じて折返片11,12の表裏面にも印字・印刷を行う(第4図の行程S2参照)。」(同7頁3行~第8頁末行) ・【第1図】 ・【 ・印刷し,さらに必要に応じて折返片11,12の表裏面にも印字・印刷を行う(第4図の行程S2参照)。」(同7頁3行~第8頁末行) ・【第1図】 ・【第2図】 ・【第3図】 ウ検討(ア) 上記アによれば,乙B8文献には,用紙を折り畳んで重なり合う面を疑似接着させたメールフォームであって,二つ折り形態のもの(2頁左欄下5行~右欄1行,第15A,B図),N型の三つ折り形態のもの(2頁右欄6~13行,3頁左欄27~34行,4頁左欄16~18行,第16図,第1図~第5図),左右側面部が中央面部に重なる三つ折り形態のもの(4頁右欄32~39行,第12図)等,各種折り形態のメールフォームが記載されている。 そうすると,用紙を折り畳んで重なり合う面を疑似接着させた葉書等のメールフォームにおいて,二つ折り形態とするか左右側面部が中央面部に重なる三つ折り形態のものとするかは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎないということができる。 (イ) また,上記イによれば,乙B9文献には,ハガキ本体(第1紙面部)10の両側方に折返片(第2,第3紙面部)11,12が連続して折り返し可能に設けられ,折返片11,12がハガキ本体10の裏面13側に折り返されて剥離可能に貼着され,ハガキ本体10の表面15に宛名が印字されたダイレクトメール用ハガキ1が記載されている(実用新案登録請求の範囲第1項,明細書7頁3行~8頁末行)。すなわち,乙B9文献には,左側面部(折返片11)と中央面部(ハガキ本体10)と右側面部(折返片12)からなり,左側面部(折返片11)と右側面部(折返片12)の両方が中央面部(ハガキ本体10)に重なる折り形態の葉 文献には,左側面部(折返片11)と中央面部(ハガキ本体10)と右側面部(折返片12)からなり,左側面部(折返片11)と右側面部(折返片12)の両方が中央面部(ハガキ本体10)に重なる折り形態の葉書であって中央面部(ハガキ本体10)の表面に宛名を有する葉書(メールフォーム)が記載されているということができる。 したがって,用紙を二つに折り畳んで重なり合う面(第1シートと第 2シート)を疑似接着させたメールフォーム(葉書)である引用発明3において,第1シートを第2シートに折り重ねる二つ折りの形態の葉書に変えて,乙B9文献に記載されたような左右側面部が中央面部に重なる三つ折り形態の葉書とするのは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎず,当業者が容易に想到できるものである。 (ウ) そして,引用発明3の葉書の折り形態を乙B9文献のような折り形態の葉書とした場合,乙B9文献において宛名はハガキ本体10(中央面部)の表面15に印字されていることから,引用発明3の宛て先を有するカード部(分離して使用するもの)は中央面部に設けられる。この場合,引用発明3のカード部(分離して使用するもの)は,テレフォンカードと大略同一の大きさであり(乙B3文献の【請求項2】),乙B9文献の折返片11,12(左右側面部)はハガキ本体10(中央面部)の略半分の幅を有するから(乙B9文献の明細書7頁8~11行),引用発明3のカード部(分離して使用するもの)は,必然的に左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方に貼着する。 (エ) 以上によれば,引用発明3において,第1シートを第2シートに折り重ねる二つ折りの形態の葉書に変えて,左右側面部が中央面部に重なる三つ折り形態の葉書とし,宛て先を有するカード部(分離して使用するもの)を中央面部に設けて,左側面部の裏面 1シートを第2シートに折り重ねる二つ折りの形態の葉書に変えて,左右側面部が中央面部に重なる三つ折り形態の葉書とし,宛て先を有するカード部(分離して使用するもの)を中央面部に設けて,左側面部の裏面及び右側面部の裏面の両方が分離して使用するものに貼着するようにして,相違点c1,c2に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものであるというべきである。 エ原告の主張に対する判断(ア) この点に関して原告は,乙B8文献の記載から,一般的に二つ折り形態を観音折り形態と変形することが設計事項であるとまでは認定できないと主張する。 しかし,乙B8文献には,用紙を折り畳んで重なり合う面を疑似接着させたメールフォーム(はがき)において,Z折り,片観音折り,変形Z折り,観音開き折り等の種々の折り形態が自由に採択できることが記載されている。 したがって,乙B8文献の公開時期及び記載内容に照らせば,用紙を折り畳んで重なり合う面を疑似接着させた葉書等のメールフォームにおいて,自由に採択することができる折り形態の一つである観音開き折りを採択することは,設計事項にすぎないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) また,原告は,引用発明3は一般的な折畳み葉書ではなく,第1シートに切り取り可能なカード部3が設けられているから,仮に観音折り形態に変形することが設計事項であったとしても,このようにカード部3を有する引用発明3に,これを適用する動機付けがあるとはいえないと主張する。 しかし,引用発明3と乙B8文献は,一般的な折畳み葉書として技術分野が共通する。また,これらはいずれも用紙を折り畳んでさらに重なり合う面を疑似接着させたものであり,作用・機能が共通する。これに,印刷物の折畳み 発明3と乙B8文献は,一般的な折畳み葉書として技術分野が共通する。また,これらはいずれも用紙を折り畳んでさらに重なり合う面を疑似接着させたものであり,作用・機能が共通する。これに,印刷物の折畳み方として二つ折りも観音開き折りも周知といえること(前記2(4)イ参照)も併せ考慮すると,相違点c1,c2に係る構成を採用することは,当業者が容易に相当できるものというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 次に,原告は,①乙B8文献の図12によれば,左側面部と右側面部の間に「スリット状の重なり合わない部分」が残されるのであって,引用発明3に乙B8文献の図12の形態を組み合わせると,上記スリットの部分でカード部3が露出し,カードを破損や汚損から保護するという目的が達せられなくなってしまうから,当該組合せには阻害要因がある, ②乙B8文献には図12の実施形態の使用方法について「開封時には,剥離開始部2bの裏側を押すようにしながら,観音開きのようにして剥離することができる。」(乙B8文献4頁右欄35~37行)と記載されているところ,引用発明3に乙B8文献の図12の形態を組み合わせると,このような開き方をした場合にカードが押されてしまい,切断予定線から切断されてしまうという不都合が生じるから,阻害要因がある,③引用発明3に乙B8文献の図12の形態を組み合わせると,スリット線に沿った部分が強度的には一番弱くなり,郵送時にそのラインで折れやすくなるから,阻害要因があるなどと主張する(いずれも無効理由3-1及び3-2における主張を援用したもの。)。 しかし,上記①については,乙B8文献の図12における「スリット状の重なり合わない部分」は剥離のきっかけとなるものであり,その幅は「1㎜程度」(乙B8文献の -2における主張を援用したもの。)。 しかし,上記①については,乙B8文献の図12における「スリット状の重なり合わない部分」は剥離のきっかけとなるものであり,その幅は「1㎜程度」(乙B8文献の4頁左欄13~14行)の僅かなものでしかない。また,そもそも「カードを破損や汚損から保護するという目的」は,乙B3文献ではなく乙B2文献(無効理由3-1及び3-2)に記載があるにすぎない(乙B2文献の段落【0027】等)。なお,乙B3文献の段落【0006】には,カード部3として磁気記録カードも例示され,その場合は磁気記録部が葉書の表裏面に露出しないことで輸送中に磁気記録部が破損することを防止できる旨の記載もあるが,一例示にすぎず,カード部3が磁気記録カードに限られるとまではいえない。 上記②については,そもそも引用発明3の発明の課題に対応する効果は,「葉書の宛て先がそのままカードの一部として使用することができ,葉書の宛て先とは別にカードに住所や氏名を記載する必要がない葉書を提供することにある。」(乙B3文献の段落【0003】)から,カードの離脱は阻害要因とはならない。また,仮に切断予定線で切断された としても,カード部3は左右側面部に疑似接着されているから,何ら不都合は生じない。 上記③については,引用発明2ではシート(葉書)の曲げ強度は問題としておらず,またそもそも曲げ強度は主としてシート状基材の材質や厚み等により決まる設計事項であって,折り形態に直接左右されるものではない。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (エ) さらに,原告は,仮に引用発明3に乙B8文献の図12の実施形態を組み合わせるとしても,その場合にカード部3をどの面に配置するか(中央面部か側面部か)は何ら乙B8文献に示唆等 とができない。 (エ) さらに,原告は,仮に引用発明3に乙B8文献の図12の実施形態を組み合わせるとしても,その場合にカード部3をどの面に配置するか(中央面部か側面部か)は何ら乙B8文献に示唆等がないし,仮に中央面部に配置するとしても中央面部のどの位置に配置するか示唆はないなどとして,相違点c2の構成には想到し得ないと主張する。 しかし,前記ウ(ウ)において説示したとおり,引用発明3は葉書に限定されており,そのカード部3はテレフォンカードと大略同一の大きさであって(乙B3文献の【請求項2】),その大小関係からすると,引用発明3の葉書を乙B8文献の図12の実施形態(観音開き折りのメールフォーム)とした場合,物理的に中央面部にしかカードを配置することができず,乙B8文献には中央面部にカード部を配置することが示唆されているといえる。そして,この場合,上記大小関係からすると,カード部を中央面部のどの位置に配置しても,左右側面部とカード部が重なり,カード部を中央面部のどの位置に配置するのかは問題とならない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (オ) 最後に,原告は,引用発明3に乙B8文献のみならず乙B9文献という複数の文献を組み合わせるような動機付けはないと主張する。 しかし,引用発明3と乙B8文献及び乙B9文献は,一般的な折畳み葉書として技術分野が共通する上,用紙を折り畳んでさらに重なり合う 面を疑似接着させたものであり,少なくとも作用・機能が共通する。そして,引用発明3は葉書の宛先がそのままカード部として使用できるようしたものであるところ,乙B8文献及び乙B9文献のメールフォーム(葉書)にも宛先が設けられている。これに,上記(イ)で説示したところも併せれば,相違点c1,c2に係る構成を採用するこ 使用できるようしたものであるところ,乙B8文献及び乙B9文献のメールフォーム(葉書)にも宛先が設けられている。これに,上記(イ)で説示したところも併せれば,相違点c1,c2に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到できるものというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) 結論以上によれば,本件発明は,乙B3文献に記載された引用発明3を主引例とし,これに乙B8文献及び乙B9文献を組み合わせれば,当業者が容易に発明できたものであって,進歩性を欠く。 よって,本件発明は特許法29条2項により特許を受けることができず,本件特許は同法123条1項2号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 4 争点(3)コ(無効理由8)について事案に鑑み,さらに,争点(3)コ(無効理由8)について判断する。 (1) 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。 したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明に おける課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべき 業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明に おける課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。 (2) これを本件についてみると,原告の主張によれば,本件発明の構成要件C及びDの「上部,下部,左(右)側部」とは「上部,下部又は左(右)側部」を意味するのであり,左右側面部の裏面において一過性の粘着剤が塗布される位置を,当該分離して使用するものの上部,下部又は左(右)側部の内側のいずれか及び上部,下部又は左(右)側部の外側に該当する部分のいずれかであればよいというのである。 これに対し,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄には,一過性の粘着剤を塗布する部分の具体例として,分離して使用するもの4と中央面部1の上部境界,下部境界,左側部(右側部)境界の各境界の内側近傍と外側近傍に接着剤を塗布したものしか記載されていない。そのため,特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広い。 しかるに,このように,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄を超えて,一過性の粘着剤が塗布される位置を原告の上記主張のとおりでよいとすると,このうちどの部分に粘着剤を塗布すれば「葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」(本件明細書等の段落【0006】)という本件発明の課題を解決することができ,また「印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取ろうと するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」(本件明細書等の段落【0006】)という本件発明の課題を解決することができ,また「印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることになる。」(同段落【0012】)の作用効果を奏することになるのか,必ずしも明らかとはいえない(乙B11及び乙B12も参照)。 したがって,当業者において,本件発明の課題解決手段や,発明を理解するための技術的事項が,発明の詳細な説明に記載されているものとはいい難い。 (3) 以上によれば,本件発明は特許法36条6項1号に規定するサポート要件を充たしていないから,本件特許は同法123条1項4号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 5 争点(4)ウ(ア)(無効理由1の解消)について前記2ないし4において説示したとおり,本件特許には無効理由1(乙B1文献による新規性欠如),無効理由4(乙B3文献を主引例とする進歩性欠如)及び無効理由8(サポート要件違反)による特許法104条の3の各抗弁が存するものと認められる。 ところで,原告は,訂正事項1ないし6からなる本件訂正を主張し,もって訂正の再抗弁を主張しているところ,特許法104条の3の抗弁に対する訂正の再抗弁が成立するためには,①特許庁に対し適法な訂正審判の請求又は訂正の請求を行っていること,②当該訂正が訂正要件を充たしていること,③当該訂正によって被告が主張している無効理由が解消されること,④被告各製品が訂正後の特許発明の技術的範囲に属すること,以上の各要件を全て充たしている必要があるというべきである。 本件において,被告は上記①ないし④の要件の全てを争っているところ,事案に鑑み,上記③の要件について 特許発明の技術的範囲に属すること,以上の各要件を全て充たしている必要があるというべきである。 本件において,被告は上記①ないし④の要件の全てを争っているところ,事案に鑑み,上記③の要件について検討する。 (1) 乙B1文献に記載された発明ア前記2(2)においては,本件訂正前の本件発明と対比するため,乙B1文献には以下の引用発明1が記載されている旨認定した。 「巻き折り又は観音開き折りの三つ折りにされた印刷物であるシート状基材であって,該シート状基材の前記三つ折りされた各面のうち一面には,情報記録 体が打ち抜かれて分離可能に形成され,前記情報記録体が形成されたシート状基材の前記一面と,該一面に折り返されて重なるシート状基材の他の面とが,弱粘着性の粘着剤により剥離可能に疑似接着されてなる,印刷物であるシート状基材。」イ他方,本件発明(特許請求の範囲の請求項1)については,本件訂正により訂正事項1ないし4により変更されているが,この点については以下の諸点を指摘することができる。 (ア) 訂正事項1のうち「広告印刷物」乙B1文献には「なお,シート状基材の各表面には,宣伝広告や各種文言,プリンタ等で打ち出された個人情報等が印字・印刷されていても構わない。」(乙B1文献の段落【0009】)として,上記シート状基材が広告印刷物であることが記載されている。 したがって,訂正事項1のうち「広告印刷物」は,乙B1文献に記載されている。 (イ) 訂正事項3のうち「周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っていること」乙B1文献には,シート状基材に情報記録体を分離可能に形成することについて,「シート状の基材の少なくとも一方の面をシート状基材や樹脂フィルム等の別の被覆材で剥離可能に被覆しておけば,デ ること」乙B1文献には,シート状基材に情報記録体を分離可能に形成することについて,「シート状の基材の少なくとも一方の面をシート状基材や樹脂フィルム等の別の被覆材で剥離可能に被覆しておけば,ディスク等を完全に分離しておいても情報記録体が被覆材に密着しているため不用意に脱落することはない。」(乙B1文献の段落【0007】)と記載されている。 この記載において,「ディスク等を完全に分離しておいても」は,「シート状基材とディスクの形状を複数の小さな繋ぎ部分を残して打ち抜き」(同段落【0006】)に対応するものであり,ディスク等の周 囲に一周にわたって連続した切り込みが入っていることを意味すると解される。 したがって,訂正事項3のうち「周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っていること」は,乙B1文献に記載されている。 (ウ) 訂正事項4のうち「左側面部…と…右側面部…とは重ならないこと」乙B1文献には,「巻き折りやZ折り,観音開き折り等の各種形態」(乙B1文献の段落【0008】)が記載されており,「観音開き折り」とは左の面と右の面が中央の面から両側に開くような三つ折りをいうところ,この場合において左の面と右の面が重ならないことは明らかである。 したがって,訂正事項4のうち「左側面部…と…右側面部…とは重ならないこと」は,乙B1文献に記載されている。 ウ以上によれば,乙B1文献には以下の発明が記載されているということができる(引用発明1'。なお,下線部は引用発明1と異なる部分である。)。 「観音開き折りの三つ折りにされた広告印刷物であるシート状基材であって,該シート状基材の前記三つ折りされた各面のうち一面には,情報記録体が打ち抜かれて完全に分離されて形成され,前記情報記録体が形成されたシー 折りにされた広告印刷物であるシート状基材であって,該シート状基材の前記三つ折りされた各面のうち一面には,情報記録体が打ち抜かれて完全に分離されて形成され,前記情報記録体が形成されたシート状基材の前記一面と,該一面に折り返されて重なるシート状基材の他の面とが,弱粘着性の粘着剤により剥離可能に疑似接着されてなる,広告印刷物であるシート状基材。」(2) 引用発明1'と本件訂正発明の対比次に,これまで論じてきたところも踏まえ,引用発明1'と本件訂正発明とを対比する。 ア構成要件A'について引用発明1'において,観音開き折りのシート状基材は左側面部と中央面部と右側面部とからなるから,引用発明1'は「左側面部と中央面部と右側面部とからなる情報記録体付き広告印刷物」である。 イ構成要件B'について引用発明1'は「中央面部は,所定の箇所に所定の大きさの情報記録体が印刷されている」ものである。 ウ構成要件C'ないしE'について引用発明1'は「左側面部の裏面は,情報記録体の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され」たものであり,「右側面部の裏面は,情報記録体の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され」たものであり,「左側面部の裏面及び右側面部の裏面が,中央面部の裏面及び情報記録体に貼着している」ものである。 エ構成要件F'について引用発明1'は「中央面部の情報記録体の周囲に一周にわたって連続した切り込みが入っている」ものである。 オ構成要件G'及びH'について引用発明1'は「左側面部の裏面と右側面部(3)の表面とは重ならない」ものであり,「左側面部の表面と右側面部の裏面とは重ならない」ものである。 カ構成 。 オ構成要件G'及びH'について引用発明1'は「左側面部の裏面と右側面部(3)の表面とは重ならない」ものであり,「左側面部の表面と右側面部の裏面とは重ならない」ものである。 カ構成要件I'について引用発明1'は「情報記録体付き広告印刷物」である。 (3) 「レスポンス用葉書」について上記(2)によれば,乙B1文献に記載された引用発明1'は「レスポンス用葉書」の部分を除いて本件訂正発明の構成要件A'ないしI'の全てを備えて いるものの,乙B1文献には「情報記録体」の具体例として「レスポンス用葉書」を含むものとは明記されていない。すなわち,本件訂正発明と引用発明1'とは,本件訂正発明では分離して使用するものが「レスポンス用葉書」であるのに対し,乙B1文献では「情報記録体」である点で,形式的に相違している。 しかし,以下に述べるとおり,乙B1文献には「情報記録体」の具体例として「レスポンス用葉書」が記載されているに等しいというべきである。 ア乙B1文献に係る特許の特許出願日(平成12年10月11日)より前の平成5年8月24日に頒布された刊行物である乙B32文献と,同じく特許出願日より前の平成6年3月15日に頒布された刊行物である乙B33文献には,次のとおり,「葉書」ないし「返信用葉書」が,情報を記録する媒体として使用される「情報記録体」として記載されている(参照の便宜上,下線を付した。)。 ・「本考案は,情報を記録した基材の記録面同士を剥離可能に一時接着するのに適した感熱接着複合シートに関し,特に,主として親展葉書として使用でき,受信して開いた後,返信用葉書として使用するのに適した感熱接着複合シート及びそれを用いた情報記録体に関する。」(乙B32文献の段落【0001】)・「本考案の第2の目 して親展葉書として使用でき,受信して開いた後,返信用葉書として使用するのに適した感熱接着複合シート及びそれを用いた情報記録体に関する。」(乙B32文献の段落【0001】)・「本考案の第2の目的は,返信用葉書として使用することができる親展葉書に適した情報記録体を提供することにある。」(同段落【0007】)・「情報記録体とは,葉書やダイレクトメール等の通信手段を意味する。」(乙B33文献の段落【0010】)イそこで乙B1文献をみるに,乙B1文献では,「シート状の基材に形成される情報記録体としてはCD(コンパクトディスク),LD(光ディスク),DVD(デジタルビデオディスク),ICカード,各種プリ ペイドカード,カード類等が形成可能である。」(乙B1文献の段落【0011】)として,情報記録体の具体例の一つとして「カード類」が挙げられている。 また,一般に,「カード」には「①厚紙を小形方形に切ったもの。紙票。②カルタ。トランプ。③プリペイドカード,クレジットカードなどの総称。」(広辞苑第6版450頁)など種々の意味があるところ,乙B1文献に係る特許の特許出願日前に頒布された刊行物の中には,「カード類」の例示として「葉書」を摘示するものが複数存在する(乙B34ないし乙B39)。 そうすると,「情報記録体」は葉書を含む概念であり,その具体例たる「カード類」も葉書を含む概念であるから,「葉書」及びその一種である「レスポンス用葉書」(乙B39の「懸賞応募カード(ハガキ)」はレスポンス用葉書である。)は乙B1文献に記載されているに等しいということができる。 ウこの点に関して原告は,①乙B1文献には,分離して使用する「情報記録体」の例示として,CD,LD,DVD,ICカード等が例示されているにすぎず,これをレスポ いるに等しいということができる。 ウこの点に関して原告は,①乙B1文献には,分離して使用する「情報記録体」の例示として,CD,LD,DVD,ICカード等が例示されているにすぎず,これをレスポンス用葉書とすることについては何ら記載がない(乙B1文献の【0011】等),②乙B1文献の段落【0004】及び【0012】等の記載によれば,印刷物全体(シート状基材)を葉書の大きさにして郵送することが想定されているものであり,その一部として形成される分離して使用する「情報記録体」を葉書とする余地はない,③情報記録体は,あくまでシート状基材の情報記録体をシート状基材の受領者の手元に留め置かれるものであり,レスポンスを想定されていない,④乙B1文献の「情報記録体」の具体例はCD,LD,DVD,ICカード等であり,いずれもそれ自体高い価値を有するもので,受領者はこれを手元に留め置くことが想定されているのに対し て,本件訂正発明の「レスポンス用葉書」は,単なる広告の類いの印刷物であり,何ら注意を払うことなく廃棄されるのが通常である,などと主張する。 しかし,上記①については,乙B1文献には情報記録体の具体例の一つとして「カード類」が挙げられており,「カード類」とは葉書を含む概念であって(上記イ),原告の主張はその前提を欠くというべきである。 また,上記②については,乙B1文献の「例えばハガキ大のシート状基材」(乙B1文献の段落【0004】)や「シート状基材は…通常葉書材の範囲内であれば通常葉書として」(同段落【0012】)との記載は単に例示としてシート状基材を通常葉書にした場合にすぎず,シート状基材を通常葉書に限定しているわけではない。すなわち,乙B1文献にいうシート状基材とは,封入や小包にする手間を省き,専用ケース等により に例示としてシート状基材を通常葉書にした場合にすぎず,シート状基材を通常葉書に限定しているわけではない。すなわち,乙B1文献にいうシート状基材とは,封入や小包にする手間を省き,専用ケース等により発生する余分なコストを削減できればよく(同段落【0003】,【0020】),その大きさ・形状等に限定のないものであり,引用発明1'において,シート状基材に通常葉書の大きさの情報記録体を形成することは十分に可能である。このことは,情報記録体の具体例として,通常葉書よりはるかに大きい直径30㎝の「LD(光ディスク)」が挙げられている点(同段落【0011】)からも明らかである。 さらに,上記③については,乙B1文献にはシート状基材の受取人が情報記録体を手元に留め置く旨の記載や示唆はなく,シート状基材の受取人は情報記録体を自由に使用することができるのであって,その使用は受取人の手元に置く使用に限定されるものではない。 そして,上記④については,これも上記③で述べたのと同様に,乙B1文献にはシート状基材の受取人が情報記録体を手元に留め置く旨の記載や示唆はない。そもそも,乙B1文献のシート状基材は,情報記録体 の種類やそれに記録された内容に特徴があるのではなく,情報記録体が容易に分離可能に形成されたことに特徴がある(乙B1文献の段落【0004】)。加えて,本件訂正発明の「レスポンス用葉書」が「廃棄されるのが通常」との原告の主張は,「レスポンス用葉書に対する使用者のアピール力が高く,すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなる」(本件訂正明細書の段落【0012】)という本件訂正発明の効果とにわかに整合しない。 したがって,原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (4) 小括以上によれば,乙B くなる」(本件訂正明細書の段落【0012】)という本件訂正発明の効果とにわかに整合しない。 したがって,原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (4) 小括以上によれば,乙B1文献には引用発明1'が記載されており,このうち「情報記録体」の具体例として「レスポンス用葉書」が記載されているに等しく,引用発明1'は本件訂正発明の構成要件A'ないしI'の全てを備えているから,引用発明1’は本件訂正発明と同一である。なお,この点に関して原告は,引用発明1'と本件訂正発明はさらに相違点があると主張するが(相違点1-1及び1-2),前記2(4)の争点(3)ア(無効理由1)において説示したところに照らし,いずれも採用することができない。 そうすると,本件訂正発明は引用発明1'と同一であって,なお新規性を欠くものであるから,本件訂正に係る原告の再抗弁は,前記(1)で説示した③の要件を充たしていないというほかない。 したがって, 原告の主張する訂正の再抗弁は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 6 結論以上によれば,本件特許には無効理由があり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3により,原告は被告に対して本件特許権を行使することができない。 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないか らこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来未子
▼ クリックして全文を表示