本件は、被告人が実母の死体を隠匿し、年金を不正に受給しようとした事件である。被告人は、令和6年10月20日から26日までの間に、93歳の実母の死体を自宅の床下に隠し、同時に生存を装って年金をだまし取ろうとした。主要な争点は、死体遺棄と詐欺の成立要件であり、裁判所は被告人の行為が故人に対する敬虔感情を著しく害し、詐欺の被害も軽視できないと判断した。判決は、被告人に懲役1年6月を言い渡し、未決勾留日数をその刑に算入することとした。被告人は過去に執行猶予付きの判決を受けており、再犯の重さが考慮されたが、反省の態度や生前の介護の様子も評価され、量刑が決定された。
令和7年9月5日宣告令和7年(わ)第138号、第161号死体遺棄、詐欺被告事件 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 令和6年10月20日頃から同月26日頃までの間に、大分市ab 番地c 被告人方において、同居していた実母であるA(当時93歳)の死体を仏間の床下に入れ、同死体にブルーシート2枚を被せた上で、同ブルーシート上にコンクリートブロックを配置するなどして隠匿し、もって死体を遺棄し、第2 前記期間に、前記被告人方において、前記Aが死亡しているのを認めたにもかかわらず、同人が生存しているかのように装い、同人が受給していた老齢基礎年金、老齢年金生活者支援給付金及び遺族厚生年金をだまし取ろうと考え、同居の親族として、老齢基礎年金及び老齢年金生活者支援給付金については前記Aが死亡した日から14日以内に、遺族厚生年金については同人が死亡した日から10日以内に、それぞれ同人が死亡した旨を日本年金機構を介して厚生労働大臣に届け出なければならないのに、あえて届け出ず、かつ、前記Aの死亡の事実を知った日から7日以内に同人が死亡した旨を大分市役所に届け出ず、厚生労働省年金局事業管理課長らに、前記Aが生存しており、同人に対する前記各年金等の受給権があり、その支給義務があるものと誤信させ、よって、令和7年2月14日から同年4月15日までの間、2回にわたり、前記厚生労働省年金局事業管理課長らに、株式会社B銀行に開設された被告人が管理する前記A名義の口座に現金合計53万3851円を振込入金させ、もって人を欺い て財物を交付させた。 (量刑の理由)本件詐欺の被害総額は53万円余と軽視することができ れた被告人が管理する前記A名義の口座に現金合計53万3851円を振込入金させ、もって人を欺い て財物を交付させた。 (量刑の理由)本件詐欺の被害総額は53万円余と軽視することができないし、本件死体遺棄は、判示のとおり相応に手の込んだ態様であるなど、死者に対する敬虔感情を害した程度が大きい。被告人は、異種の犯行によるとはいえ、令和4年7月懲役1年6月(4年間執行猶予付保護観察)の判決を受けていたのに、その猶予の期間内に本件各犯行に及んでいるところ、実母が受給していた年金等に頼って生活をする中で同人が死亡してしまい、死亡の事実を届け出ると年金等の支給が停止され、自分が生活できなくなってしまうことから、実母の死体を隠して年金等をもらい続けることを決意したという利欲的な意思決定は強い非難を免れない。 こうした事情に照らすと、被告人の刑事責任を軽くみることはできないが、本件各犯行を認めて反省の態度を示していること、生前の実母を献身的に介護していた様子もうかがわれることを考慮し、主文の刑を量定した。 (求刑・懲役2年6月)令和7年9月5日大分地方裁判所刑事部 裁判官辛島靖崇
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