本件は、すし店を経営する原告が、平成6年及び平成7年分の所得税および消費税に関する更正及び過少申告加算税の賦課決定の一部取消しを求めた事案である。原告は、課税標準額や納付すべき税額が過大であると主張し、異議申し立てを経て、裁決を受けた。主要な争点は、原告の申告内容に対する更正の適法性及び過少申告加算税の賦課の妥当性であった。裁判所は、原告の主張を一部認め、過去の異議決定及び裁決に基づき、特定の課税標準額及び納付税額を取り消す一方で、その他の請求は棄却した。結論として、原告の請求の一部が認められたが、残りは認められなかった。
- 1 -主文 被告が平成9年3月7日付けで原告に対してした,原告の平成6年の課税期間の消費税に係る更正(ただし,異議決定及び裁決による一部取消し後の金額)のうち課税標準額4888万8000円及び納付すべき税額58万6600円を超える部分,平成6年の課税期間の消費税に係る過少申告加算税賦課決定のうち3万円を超える部分,平成7年分の所得税に係る更正(ただし,異議決定及び裁決による一部取消し後の金額)のうち総所得金額1283万9018円及び納付すべき税額189万1000円を超える部分並びに平成7年分の所得税に係る過少申告加算税賦課決定のうち18万6500円を超える部分を取り消す。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを40分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告が平成9年3月7日付けでした下記各処分(いずれも異議決定及び裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 記 原告の平成6年分の所得税に係る更正のうち総所得金額587万0946円,納付すべき税額46万4000円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定 原告の平成7年分の所得税に係る更正のうち総所得金額609万2572円,納付すべき税額47万2800円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定 原告の平成6年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税に係る更正のうち課税標準額4122万5000円,納付すべき税額27万7900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定 原告の平成7年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税に係- 2 -る更正のうち課税標準額4316万6000円,納付すべき税額34万0900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定第2事案の概要本件 日から同年12月31日までの課税期間の消費税に係- 2 -る更正のうち課税標準額4316万6000円,納付すべき税額34万0900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定第2事案の概要本件は,すし店を経営する原告が,平成6年分及び平成7年分の各所得税に係る更正,平成6年及び平成7年の各課税期間の消費税に係る更正並びに対応する各過少申告加算税の賦課決定の一部取消しを請求している事案である。 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)当事者原告は,東京都大田区α××番9号所在の店舗(以下「本件店舗」という。)において,「P1」の屋号ですし店を営んでいた者である。 (2)所得税の確定申告原告は,平成6年分及び平成7年分(以下「本件各係争年分」ともいう。)の各所得税について以下のとおり確定申告書に記載して,法定申告期限までに納税の申告をした。 ア平成6年分所得税について総所得金額587万0946円課税総所得金額440万0000円納付すべき税額46万4000円イ平成7年分所得税について総所得金額609万2572円課税総所得金額426万4000円納付すべき税額47万2800円(3)消費税の確定申告原告は,平成6年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成6年課税期間」という)及び平成7年1月1日から同年12月31日- 3 -までの課税期間(以下「平成7年課税期間」といい,平成6年課税期間と併せて,「本件各課税期間」ともいう。)の消費税について,以下のとおり確定申告書に記載して,いずれも法定申告期限までに申告した。 ア平成6年課税期間について課税標準額4122万5000円納付すべき税額27万7900円イ平成7年課税期間について課税 とおり確定申告書に記載して,いずれも法定申告期限までに申告した。 ア平成6年課税期間について課税標準額4122万5000円納付すべき税額27万7900円イ平成7年課税期間について課税標準額4316万6000円納付すべき税額34万0900円(4)更正及び賦課決定被告は,平成9年3月7日付けで,以下のとおり,本件各係争年分の所得税に係る更正(以下「本件所得税各更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下,本件所得税各更正と併せて「本件所得税各更正等」という。)をすると共に,本件各課税期間の消費税に係る更正(以下「本件消費税各更正」という。)及び過少申告加算税の賦課決定(以下,本件消費税各更正と併せて,「本件消費税各更正等」という。)をした(以下,これらの処分を総称して,「本件各課税処分」という。)。 ア所得税の更正等(ア)平成6年分所得税についてa更正総所得金額1686万4558円課税総所得金額1539万4000円納付すべき税額340万6000円b賦課決定過少申告加算税の額41万6000円(イ)平成7年分所得税について- 4 -a更正総所得金額1812万5339円課税総所得金額1629万6000円納付すべき税額360万8800円b賦課決定過少申告加算税の額44万4500円イ消費税の更正等(ア)平成6年課税期間a更正課税標準額1億1387万8000円納付すべき税額136万6500円b賦課決定過少申告加算税の額13万7000円(イ)平成7年課税期間a更正課税標準額9968万8000円納付すべき税額119万6200円b賦課決定過少申告加算税の額10万2500円(5)異議決定原告は,平成9年5月6日,本件各課税処分について異 a更正課税標準額9968万8000円納付すべき税額119万6200円b賦課決定過少申告加算税の額10万2500円(5)異議決定原告は,平成9年5月6日,本件各課税処分について異議申立てをし,これに対し,被告は,同年8月4日付けで,以下のとおり認定し,本件各課税処分を一部取り消す旨の異議決定(以下「本件異議決定」という。)をした。 ア所得税についての異議決定(ア)平成6年分の所得税について総所得金額1140万9819円- 5 -課税総所得金額993万9000円納付すべき税額166万5300円過少申告加算税の額15万5000円(イ)平成7年分の所得税について総所得金額1385万9588円課税総所得金額1203万1000円納付すべき税額232万9300円過少申告加算税の額25万2500円イ消費税についての異議決定(ア)平成6年課税期間課税標準額6438万9000円納付すべき税額77万2600円過少申告加算税の額4万9000円(イ)平成7年課税期間課税標準額8222万5000円納付すべき税額98万6700円過少申告加算税の額7万1000円(6)審査請求に対する裁決原告は,平成9年9月3日,本件異議決定について審査請求をし,国税不服審判所長は,平成11年4月27日付けで,以下のとおり認定し,本件各課税処分を一部取り消す旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし,原告は,同月29日本件裁決書謄本を受領した。 ア所得税についての裁決(ア)平成6年分の所得税総所得金額882万3584円課税総所得金額729万3000円- 6 -納付すべき税額103万0300円過少申告加算税5万9000円(イ)平成7年分の所得税総所得金額1298万1124円課 882万3584円課税総所得金額729万3000円- 6 -納付すべき税額103万0300円過少申告加算税5万9000円(イ)平成7年分の所得税総所得金額1298万1124円課税総所得金額1071万2000円納付すべき税額193万3600円過少申告加算税19万4000円イ消費税についての裁決(ア)平成6年の課税期間について課税標準額5088万9000円納付すべき税額61万0600円過少申告加算税3万3000円(イ)平成7年の課税期間について課税標準額6898万3000円納付すべき税額82万7700円過少申告加算税4万8000円 被告の主張に係る本件各課税処分の計算及び根拠被告が本訴において主張する,本件各係争年分の所得税に係る原告の総所得金額及び納付すべき税額並びに本件各課税期間の消費税に係る原告の課税標準額及び納付すべき税額は,以下のとおりであり,各金額は,本件各課税処分における当該各金額(ただし,異議決定及び裁決による一部取消し後の金額)を上回っている。 (1)平成6年分の所得税ア総所得金額1260万1738円原告には事業所得以外の所得がないため,原告の営むすし店に係る平成6年分の事業所得の金額である。 - 7 -以下の(ア)の売上金額から(イ)の特前所得金額(売上金額から売上原価の額及び必要経費の額を控除して算定した青色申告特典控除前の所得金額をいう。以下同じ。)を算出し,上記特前所得金額から以下の(ウ)の事業専従者控除額を差し引いたものである。 (ア)売上金額6440万0470円原告の平成6年分の米の仕入数量3180キログラムに,原告の事業所が所在する大田区及び大田区に隣接する行政区(世田谷区,目黒区,品川区)内ですし店を営む個人事業者のうち,所得税の申 40万0470円原告の平成6年分の米の仕入数量3180キログラムに,原告の事業所が所在する大田区及び大田区に隣接する行政区(世田谷区,目黒区,品川区)内ですし店を営む個人事業者のうち,所得税の申告を青色申告によっている者で,かつ,原告と事業規模の類似する者(以下「類似同業者」という。)の同年分の米1キログラム当たりの平均売上金額(少数点第3位以下四捨五入,以下同じ)2万0251.72円を乗じた(小数点以下四捨五入,以下同じ)ものである。 (イ)特前所得金額1340万1738円前記(ア)の売上金額6440万0470円に,類似同業者の平成6年分の売上金額に占める特前所得金額の割合の平均値(以下「平均特前所得率」という。ただし,小数点第5位以下四捨五入,以下同じ。)20.81パーセントを乗じた(小数点以下四捨五入,以下同じ)ものである。 (ウ)事業専従者控除額80万0000円原告の妻P2に係る所得税法57条3項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の事業専従者控除額イ所得から差し引かれる金額の合計額153万0505円本件裁決において認容された平成6年分の所得から差し引かれる金額の合計額ウ課税総所得金額1107万1000円上記アの金額から上記イの金額を差し引いた(国税通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた。)ものである。 - 8 -エ課税総所得金額に対する税額252万8400円上記ウの課税総所得金額に所得税法89条1項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の税率を乗じたものである。 オ特別減税額50万5680円平成6年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づき,上記エの課税総所得金額に対する税額に100分の20の割合を乗じたものである。 カ納付すべき税額 る。 オ特別減税額50万5680円平成6年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づき,上記エの課税総所得金額に対する税額に100分の20の割合を乗じたものである。 カ納付すべき税額202万2700円上記エの金額から上記オの金額を差し引いた(国税通則法119条1項に基づき100円未満の端数を切り捨てた。)ものである。 (2)平成6年分の所得税に係る過少申告加算税5万9000円上記金額は,平成6年分に係る本件所得税更正(ただし,裁決により一部取消後の金額)により原告が新たに納付すべきこととなった税額56万円に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額5万6000円に,同条2項の規定に基づき,上記新たに納付すべきこととなった税額56万円のうち50万円を超える部分に相当する金額6万円に対して100分の5の割合を乗じて算出した金額3000円を加算したものである。 (3)平成7年分の所得税ア総所得金額1500万2641円原告には事業所得以外の所得がないため,原告の営むすし店に係る平成7年分の事業所得の金額である。 下記(ア)の売上金額から(イ)の特前所得金額を算出し,(ウ)の事業専従者控除額を差し引いた。 (ア)売上金額8318万1128円原告の平成7年分の米の仕入数量4140キログラムに,類似同業者- 9 -の同年分の米1キログラム当たりの平均売上金額2万0092.06円を乗じた。 (イ)特前所得金額1586万2641円前記(ア)の売上金額8318万1128円に,類似同業者の平成7年分の平均特前所得率19.07パーセントを乗じた。 (ウ)事業専従者控除額86万0000円原告の妻P2に係る所得税法57条3項所定の事業専従者控除額イ所得から差し引かれる金額の合計額 分の平均特前所得率19.07パーセントを乗じた。 (ウ)事業専従者控除額86万0000円原告の妻P2に係る所得税法57条3項所定の事業専従者控除額イ所得から差し引かれる金額の合計額226万8385円本件裁決において認容された平成7年分の所得から差し引かれる金額の合計額ウ課税総所得金額1273万4000円上記アの金額からイの金額を差し引いた(国税通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた。)。 エ課税総所得金額に対する税額259万0200円上記ウの課税総所得金額に所得税法89条1項所定の税率を乗じた。 オ特別減税額5万0000円平成7年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づき,上記ウの課税総所得金額に対する税額に100分の15の割合を乗じた金額(最高限度額5万円)である。 カ納付すべき税額254万0200円上記エの金額からオの金額を差し引いた。 (4)平成7年分の所得税に係る過少申告加算税19万4000円上記金額は,平成7年分に係る本件所得税更正(ただし,裁決により一部取消後の金額)により原告が新たに納付すべきこととなった税額146万円に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額14万6000円に,同条2項の規定に基づき,上記新たに納付す- 10 -べきこととなった税額146万円のうち50万円を超える部分に相当する金額96万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に対して100分の5の割合を乗じて算出した金額4万8000円を加算した金額である。 (5)平成6年課税期間の消費税ア課税標準額6252万4000円上記金額は,原告の平成6年課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額(消費税法28条1項),すな 0円を加算した金額である。 (5)平成6年課税期間の消費税ア課税標準額6252万4000円上記金額は,原告の平成6年課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額(消費税法28条1項),すなわち,原告の事業所得に係る売上金額(総収入金額)6440万0470円に103分の100を乗じた金額である(国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた金額。)。 イ課税標準額に対する消費税額187万5720円上記金額は,上記アの課税標準額6252万4000円に消費税法29条(平成6年法律第109号による改正前のもの。以下同じ。)所定の税率100分の3を乗じたものである。 ウ仕入れに係る消費税額の控除額112万5432円上記金額は,消費税法37条1項(平成6年法律第109号による改正前のもの。以下同じ。)の規定(いわゆる簡易課税制度)により,上記イの消費税額187万5720円に100分の60(原告の営む業種(すし店)は,消費税法施行令57条5項4号(平成8年法律第86号による改正前のもの。以下同じ。)に規定する第4種事業に該当する)を乗じた金額である。 エ納付すべき税額75万0200円上記金額は上記イの金額から上記ウの金額を差し引いた金額である(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額)。 - 11 -(6)平成6年課税期間の消費税に係る過少申告加算税3万3000円上記金額は,平成6年課税期間に係る消費税更正(ただし,裁決による一部取消し後の金額)により原告が新たに納付すべきこととなった税額33万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 (7)平成7年課税期 った税額33万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 (7)平成7年課税期間の消費税ア課税標準額8075万8000円上記金額は,原告の平成7年課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額(消費税法28条1項),すなわち,原告の事業所得に係る売上金額(総収入金額)8318万1128円に103分の100を乗じた金額である(国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた金額)。 イ課税標準額に対する消費税額242万2740円上記金額は,上記アの課税標準額8075万8000円に消費税法29条所定の税率100分の3を乗じたものである。 ウ仕入れに係る消費税額の控除額145万3644円上記金額は,消費税法37条1項の規定(いわゆる簡易課税制度)により,上記イの消費税額242万2740円に100分の60(原告の営む業種(すし店)は,消費税法施行令57条5項4号(平成8年法律第86号による改正前のもの)に規定する第4種事業に該当する。)を乗じた金額である。 エ納付すべき税額96万9000円上記金額は上記イの金額から上記ウの金額を差し引いた金額である(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額)。 - 12 -(8)平成7年課税期間の消費税に係る過少申告加算税4万8000円上記金額は,平成7年課税期間に係る消費税更正(ただし,裁決による一部取消し後の金額)により原告が新たに納付すべきこととなった税額48万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 に納付すべきこととなった税額48万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 争点(争点に関する当事者の主張の詳細は,別紙1記載のとおり。)(1)本件各課税処分の根拠となる推計課税の必要性の有無(2)本件各課税処分の根拠となる推計課税の合理性の有無ア被告の推計方法自体の合理性イ原告の下記推計1(本件各係争年分について。別紙1の第3の1(1))又は推計2(平成7年分について。別紙1の第3の1(2))との比較における合理性①原告の推計1(原告の平成10年分の米の仕入数量及び米1キログラム当たりの売上金額から,平成6年分の売上金額を4268万5140円,平成7年分の売上金額を5557万1220円,類似同業者の所得率12. 60パーセントと計算して,本件各係争年分の事業所得を推計するもの)②原告の推計2(原告の平成7年分の米及び酒類の仕入数量から推定したすし,酒類及びつまみの注文数と,商品の平均単価等を基に,平成7年分の売上金額を5510万8420円と計算するもの)(3)原告の実額反証(平成7年分の事業所得に係る経費を実額により計算し,原告の同年分の事業所得を557万0238円と計算するもの。)の成否(平成7年分について)第3争点に対する判断 争点(1)(推計の必要性の有無)について(1)証拠(乙12の1及び12の2,13,証人P3,原告本人(後記認定に- 13 -反する部分を除く。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告は,原告について,昭和61年から昭和63年の所得税の調査の後,申告額が低調であった上,原告から提出された平成5年分ないし平成7年分の所得税の確定申告書 によれば,以下の事実が認められる。 ア被告は,原告について,昭和61年から昭和63年の所得税の調査の後,申告額が低調であった上,原告から提出された平成5年分ないし平成7年分の所得税の確定申告書の所得金額欄に,事業所得に係る所得金額が記載されているだけで,総収入金額及び必要経費の額の記載がなく,所得税法120条4項所定の当該年中の総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類の添付もなかったことから,平成5年分ないし平成7年分に係る申告所得金額が適正であるか否かについて調査をする必要があると判断した。 そこで,被告所部係官P3(以下「P3係官」という。)に原告の上記各年分に係る所得税の調査を命じると共に,上記各年分に対応する課税期間に係る消費税の調査(以下,併せて「本件調査」という。)を命じた。 イP3係官は,平成8年8月2日午前10時45分ころ,事前連絡をせずに,大田区β××番3号所在の原告の自宅(以下「原告宅」という。)に赴き,ドアベルを鳴らして呼び掛けてみたものの,何ら応答がないことから,引き続き,原告宅から徒歩10分程度の距離にある本件店舗に臨場した。P3係官は,店舗内にいた女性従業員に対し,身分証明書を提示した上で所属及び氏名を名乗り,原告への取り次ぎを依頼したところ,上記女性従業員によれば,原告は原告宅にいるとのことであり,また,店舗内にいた男性従業員が原告宅に電話をかけたところ,原告宅において,原告の所在が確認できたため,同係官は,午前11時15分ころ,再び原告宅に臨場した。 ウP3係官は,原告宅の玄関先において,原告に対し,身分証明書及び質問検査章を提示して所属及び氏名を名乗り,本件調査に伺った旨を告げた。 その上で,本件調査に対する協力と共に,申告の基となった帳簿書類の確認を要請したが,原告は,用事があるため今日は本 分証明書及び質問検査章を提示して所属及び氏名を名乗り,本件調査に伺った旨を告げた。 その上で,本件調査に対する協力と共に,申告の基となった帳簿書類の確認を要請したが,原告は,用事があるため今日は本件調査には応じられず,- 14 -後日,原告から連絡する旨を申し出た。 そこで,P3係官は,原告の営むすし店の事業概況を聴取しようと考え,原告に対し,事業内容について質問したところ,原告は,①営業時間は,午前11時から午後11時30分ころまでで,毎週月曜日が定休日であること,②従業員は,原告本人と原告の妻の他に,職人(男性)が1名,女性が1名の計4名であることなどの説明をしたが,原告の仕入先に関する同係官の質問に対しては,具体的な回答をしなかった。 原告は,調査日時については改めて原告から連絡するということであったため,P3係官は,原告に対し,同月9日午前10時30分を次回の本件調査予定日時として伝え,上記日時及び同係官の連絡先を記載したメモを原告に手渡し,上記日時の都合が悪ければ同係官まで連絡をしてほしい旨告げ,原告宅を辞去した。 エP3係官は,平成8年8月9日午前10時30分,本件調査のために,原告宅を訪ねた際,玄関脇の部屋に通された。 P3係官は,原告に対し,本件調査に伺った旨を告げると共に,同所で待機していた男性1名について,原告とどういう関係の者であるか尋ねたところ,原告は,上記男性は原告の知り合いの者であり,P4民主商工会事務局員のP5であると述べた。 そこで,P3係官は,原告に対し,P5に税理士の資格があるか否かを質問したところ,P5が持っていない旨回答したため,原告に対して,税理士の資格がなく,調査に関係のない第三者の立会いは認められない旨を説明し,P5の退席を要請すると共に,P5を退席させた上で,申告の基となった帳簿書類 が持っていない旨回答したため,原告に対して,税理士の資格がなく,調査に関係のない第三者の立会いは認められない旨を説明し,P5の退席を要請すると共に,P5を退席させた上で,申告の基となった帳簿書類等を提示するよう要請した。 これに対し,原告は,相談相手が欲しいのでP5に来てもらった旨述べ,P3係官の要請に応ぜず,P5も,「税理士法に触れることはない。」,「人格,人権を踏まえて調査が行われるのかを確認する必要がある。」な- 15 -どと発言した。 そこで,P3係官は,原告に対し,本件調査に関係のない第三者の立会いは税務職員に課せられた守秘義務に反するおそれがあること,税理士資格のない者が税務調査に立ち会うことは税理士法に抵触するおそれがあることから,立会人の同席は認められない旨を説明し,再度,P5を退席させるよう求めたが,原告は,「立会人がいなければ,帳簿は見せられない。」,「税務署が,税理士を探してお金を負担してくれればいいけれども,うちみたいな小さなところでは税理士は頼めない。」などと発言し,P5も退席しようとしなかった。 テーブルの上には帳簿らしきものが置いてあったため,P3係官は,繰り返し,原告に対し,P5を退席させた上で帳簿書類等を提示するよう要請したが,結局,原告は,立会人がいなければ,帳簿を提示するつもりはないとして,同係官の要請に応じようとしなかった。 このような状況にあって,P3係官は,これ以上調査の進展は図れないと判断し,この日の本件調査を断念して,次回同月22日に調査に訪問すると話したところ,同月19日ないし22日まで店を休む予定があると言われたため,同月26日午前10時30分に,再度,本件調査に伺うことを原告に告げ,その際は,立会人のいないところで帳簿書類等を提示するよう原告に要請し,午前11時25分ころ,原告 休む予定があると言われたため,同月26日午前10時30分に,再度,本件調査に伺うことを原告に告げ,その際は,立会人のいないところで帳簿書類等を提示するよう原告に要請し,午前11時25分ころ,原告宅を辞去した。 オP3係官は,平成8年8月26日午前10時30分ころ,原告宅に赴いたが,応対した原告は,仕事の予定が入ったため本件調査には応じられない旨を申し述べた。P3係官は,前回の臨場時に約束していた日時ということもあり,時間を割いて本件調査に協力するよう原告に要請したが,原告は,この要請に応じず,P3係官において,なお,原告からの調査協力が得られない限り,独自の調査をせざるを得ない旨を告げて,原告に再考を促したところ,原告から「考えてみたい。」との回答を得た。そこで,- 16 -P3係官は,この日の本件調査を断念することとし,調査日時の調整のため同月29日に電話連絡する旨を原告に告げ,原告宅を辞去した。 カP3係官は,平成8年8月29日及び同月30日に原告宅及び店舗に電話をかけたが,原告は不在であり,原告と連絡を取ることができなかった。 P3係官は,さらに,平成8年9月2日午前11時30分ころ,原告宅に電話をかけたところ,原告が応答した。P3係官は,原告に対し,本件調査に応じられるかどうかを確認したところ,原告は,再度,立会人が同席しないところでの本件調査には応じられない旨回答した。P3係官は,原告に対し,考え直すよう求めたが,原告が翻意しなかったため,このような状況では帳簿書類等の検査ができず,税務署独自の調査を進めざるを得ない旨を原告に告げると共に,原告の気が変わって,調査に関係のない第三者が同席しないところで本件調査に応じられるようになれば,同係官まで連絡してほしい旨を伝えた。 そこで,P3係官は,同日以降,原告からの連絡を待 告げると共に,原告の気が変わって,調査に関係のない第三者が同席しないところで本件調査に応じられるようになれば,同係官まで連絡してほしい旨を伝えた。 そこで,P3係官は,同日以降,原告からの連絡を待つと同時に,原告の取引先等に対して独自の調査を進めることとした。 キP3係官は,平成8年11月15日午前10時ころ,事前連絡をせずに原告宅に赴き,原告と応対し,原告に対し,再度,本件調査に協力するよう要請し,帳簿書類等の提示を要請したが,原告は,「もう,調査しているじゃないか。」と述べ,立会人が同席しないところでの本件調査には応じられない旨の前言を繰り返し,その態度に変化はみられなかった。 そこで,P3係官は,原告の取引先等に対する独自の調査の結果に基づき,推計の方法により,原告の本件各係争年分の売上金額及び所得金額を算定し,さらに,上記推計の方法によって得られた売上金額を基に,原告の本件各課税期間の消費税の課税標準額を算定した。 クP3係官は,上記調査結果を原告に通知すべく,平成9年2月25日午前10時ころ,原告宅に電話をかけたところ,原告が応答したため,P3- 17 -係官は,原告に対し,調査により算出した原告の本件各係争年分の所得金額及び所得税額並びに本件各課税期間の消費税額を伝えると共に,本件調査の結果により所得税及び消費税の修正申告をする意思があるか否かについて,同月26日中に同係官に連絡してほしい旨告げたところ,原告は「相談してみる。」と回答した。 ケ平成9年2月26日午後4時ころ,P6税理士からP3係官宛てに電話があり,同税理士は,応答したP3係官に対し,原告からの依頼により原告に対する調査に関与することとなった旨を述べた。 これに対し,P3係官は,既に調査結果を原告に提示し,修正申告の意思の有無を原告に確認している段階で ,応答したP3係官に対し,原告からの依頼により原告に対する調査に関与することとなった旨を述べた。 これに対し,P3係官は,既に調査結果を原告に提示し,修正申告の意思の有無を原告に確認している段階であることをP6税理士に伝えた。 コP3係官は,平成9年2月27日午前9時30分ころ,P6税理士に電話をかけ,これまでの本件調査の経緯について説明し,原告が修正申告書を提出しないということであれば,更正を考えている旨を伝えた。 これに対し,P6税理士は,原告の申告の中身もわからず,また,今は忙しくて調べ直すことができないため,被告が原告に対し更正を行うのであれば,異議申立てを行い,その段階で具体的に関与していきたい旨を申し述べた。 サ以上の経緯を経て,被告は,平成9年3月7日付けで,原告に対し,推計により算定した所得金額を原告の総所得金額として本件各課税処分をした。 (2)事実認定の補足説明上記(1)の認定に符合する証人P3の供述内容は,具体的で,事実経過として特に不自然,不合理なところは見当たらず,同人が税務署職員として推計課税が必要となる可能性を念頭に調査を行っていたと考えられることも考え併せると,同人の記憶の正確性は相当程度高いというべきであり,その供述に照らすと,原告本人の尋問結果及び陳述書(甲35)の記載中,上記(1)の- 18 -認定に反する部分は採用できない。 なお,原告は,P3係官から平成8年8月9日以降,平成9年2月25日までの間に何ら連絡がなかったと述べる(原告本人127以降)が,本件裁決書(甲12)よれば,原告は,国税不服審判所において,「抜き打ち的に調査担当職員が臨宅した」「第1回目の調査」,その後の「民主商工会の事務局員が同席していることを理由に調査担当職員が調査を放棄して帰った」「第2回目の調査」に続いて,更 判所において,「抜き打ち的に調査担当職員が臨宅した」「第1回目の調査」,その後の「民主商工会の事務局員が同席していることを理由に調査担当職員が調査を放棄して帰った」「第2回目の調査」に続いて,更に「第3回目の調査」があり,「第2回目の調査と同様の状況である」旨主張しており,「第1回目の調査」が平成8年8月2日の調査,「第2回目の調査」が同月9日の調査に当たり,「第3回目の調査」とは,同月26日以降の調査を指すものとみるのが合理的であること,原告がP6税理士に調査の立会いを含む関与を依頼した時期が平成8年12月であり(原告本人21,139,267,271及び272),P3係官から何ら接触がないとすれば,その時期に税理士の関与を依頼することは考え難いことなどに照らすと,原告の上記供述は採用できない。 (3)そして,原告本人が述べるところによっても,P3係官が,原告らに対して,再三,調査に対する協力を要請し,帳簿書類等の提示を求めたのに対し,原告において,「P5」の立会いなしに調査に応じないという姿勢を変えず,帳簿書類の提示に応じなかったことは優に認められるから(原告本人241ないし243及び251),課税庁において,原告の事業所得の金額及び消費税の課税標準額を実額で把握することが困難であったということができる。 また,税務調査の範囲,程度,時期,場所等,その方法について実定法上特段の定めのない実施の細目については,税務調査の必要があり,かつ,これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限界にとどまる限り,権限ある税務職員の合理的な裁量にゆだねられているものであり(最高裁判所昭和47年7月10日決定・刑集27巻7号1205頁),税務調査に当たって,第三者の立会いを拒否し得るかどうかも,税務職員の合理的裁- 19 -量にゆだね にゆだねられているものであり(最高裁判所昭和47年7月10日決定・刑集27巻7号1205頁),税務調査に当たって,第三者の立会いを拒否し得るかどうかも,税務職員の合理的裁- 19 -量にゆだねられているものと解されるところ,前記(1)で認定した事実経過に照らせば,P3係官が原告及びP5に対し,守秘義務の観点から,P5の退席を求め,この求めに応じれば,帳簿書類を調査をする旨申し出たのに対し,原告及びP5において,これには応じなかったものであって,その要請の程度や対応からみて,P3係官のこの点に関する対応は合理的な裁量の範囲内のものということができる。 (4)そうすると,本件各課税処分につき,推計の必要性は認められる。 争点(2)ア(被告の推計方法自体の合理性)について(1)所得税法156条は,課税庁が,納税者の非協力等により,その所得金額を直接資料によって把握することができない場合に,やむを得ず,各種の間接的な資料によって推計した金額をもって,真実の所得金額に近似するものと認定して課税すること(推計課税)を認めるものである。このような推計課税の方法として,事業所得を,類似同業者の所得率や経費率等を基に推計し,認定することは,類似同業者の抽出基準が,事業の種類,規模等の類似性に照らして合理性があり,その抽出過程に恣意が介在しておらず,所得率や経費率等の算定の正確性が担保されている限り,一応合理的なものとみることができる。そして,上記推計課税が認められる趣旨に照らせば,類似同業者の平均値により推計課税を行う場合,業種,業態,事業所の近接性,事業規模等の基本的な要因において類似同業者の抽出が合理的なものである限り,類似同業者間に通常存在する程度の個別的な営業諸条件の差異は,それが推計を不合理ならしめる程度に顕著なものでない限り,平 ,事業規模等の基本的な要因において類似同業者の抽出が合理的なものである限り,類似同業者間に通常存在する程度の個別的な営業諸条件の差異は,それが推計を不合理ならしめる程度に顕著なものでない限り,平均値を算出する過程で捨象されるものとして,斟酌することを要せず,そのような顕著な差異については,推計課税の合理性を争う原告において立証することを要するものと解するのが相当である。 そこで,上記解釈に照らして,本件における類似同業者の抽出基準及び抽出方法について検討する。 - 20 -(2)原告の事業の種類,規模及び内容前記前提事実並びに証拠(甲15の1ないし15の3,35,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,昭和51年ころから,大田区α××番9号所在の本件店舗において,建物を賃借して「P1」の屋号ですし店を営んでいた。 イ原告は,のれん分けにより本件店舗を個人で開業するに至ったもので,本件店舗は,いわゆるチェーン店ではなく,回転ずしや持ち帰り専門のすし店でもなかった。営業時間は,午前11時30分から午後11時30分ころまで,毎週月曜日が定休日で,すし(「並」・「上」・「特上」の1人前その他各種)だけでなく,酒類や刺身その他のつまみも販売していた。 ウ本件店舗の従業員は,原告の妻,職人(男性)が2名,女性1名から成り,本件店舗内には,カウンターを含め,座席が20席程度存在した。 エ原告のすし店の事業規模を,米の仕入数量でみると,平成6年分3180キログラム,平成7年分4140キログラムであった(弁論の全趣旨)。 オ原告は,もともとは青色申告業者であったが昭和50年代にも税務調査を受け,青色申告の承認を取り消されている(ただし,その後,平成10年分の所得税の申告に際しては,青色申告の承認を受けている。)。 オ原告は,もともとは青色申告業者であったが昭和50年代にも税務調査を受け,青色申告の承認を取り消されている(ただし,その後,平成10年分の所得税の申告に際しては,青色申告の承認を受けている。)。 カなお,本件店舗前の道路については平成6年当時から拡幅工事が進められ,その結果,原告は,平成12年4月に店舗を付近に移設するに至っている。 (3)被告の推計ア東京国税局長は,平成11年11月30日付け「税務訴訟に関する資料の作成及び報告について(通達)」により,大田区,世田谷区,目黒区,品川区を管轄する,大森税務署,雪谷税務署,蒲田税務署,世田谷税務署,北沢税務署,玉川税務署,目黒税務署,品川税務署,荏原税務署の各税務署長に対し,下記の抽出基準を示した上,同基準に合致する対象者につい- 21 -て,対象年分を平成6年分及び平成7年分として,平成12年1月14日までに,所定の様式により,売上金額,米の仕入数量,米1キログラム当たりの売上金額,経費等の額,特前所得金額及び特前所得率を記載した「個人すし店業者の課税事績報告書」を作成の上,報告することを求めた(乙2の1ないし9)。 記原告が納税地及び事業所を有する大田区及びその隣接区である世田谷区,目黒区,品川区内に所得税の納税地及び事業所を有し,かつ,本件各係争年分ごとに,次のaないしfの基準のすべてに該当する者を抽出する。 aすし店を営む事業所得者(ただし,いわゆる回転すし店又は持ち帰り専門すし店を営む者を除く。)b所得税の申告を青色申告によっている者のうち青色事業専従者が1名の者c地代家賃及び給料賃金の支払がある者d本件各係争年分ごとの米の仕入数量が,それぞれ次の範囲内である者(a)平成6年分については,1590キログラム以上6360キログラム以下(b)平成 c地代家賃及び給料賃金の支払がある者d本件各係争年分ごとの米の仕入数量が,それぞれ次の範囲内である者(a)平成6年分については,1590キログラム以上6360キログラム以下(b)平成7年分については,2070キログラム以上8280キログラム以下e年を通じて上記aの事業を継続している者f次の(a)又は(b)のいずれにも該当しない者(a)災害等により経営状態が異常であると認められる者(b)更正又は決定処分がされている者のうち,次の①又は②に該当する者- 22 -①当該処分について国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間を経過していない者②当該処分に対して不服申立てがされ,又は訴えが提起されて現在審理中である者イ上記各税務署長は,本件各係争年分ごとに,上記アのaないしc,e及びfの要件に該当する者すべてに対し,文書により個別に照会し,回答があった者のうち,米の仕入数量が上記dの範囲内にある者として,別紙2及び3記載の業者をそれぞれ平成6年分及び平成7年分に対応する類似同業者として抽出し,東京国税局長に対し,上記所定の様式の報告書(乙3ないし11(各肢番号を含む。))をもって回答した。これを受けて,被告は,別紙2及び3記載の業者を上記のとおり類似同業者として抽出した。 (4)被告の推計方法自体の合理性の検討ア類似同業者の抽出基準について上記(3)によれば,被告の推計における類似同業者の抽出基準は,業種をすし店営業,立地条件を,本件店舗が存在する大田区とその周辺の3区内に所在するものとし,事業の形態及び規模については,個人事業で,青色事業専従者1名,地代家賃と給料賃金を支払う形態で,回転すし又は持ち帰り専門の形態を除き,米の仕入れ数量を本件各係争年分に係る原告の米の仕入数量( し,事業の形態及び規模については,個人事業で,青色事業専従者1名,地代家賃と給料賃金を支払う形態で,回転すし又は持ち帰り専門の形態を除き,米の仕入れ数量を本件各係争年分に係る原告の米の仕入数量(前記(2)エ)の2分の1以上2倍以内の範囲とした上,前記(3)アfのように特殊な事情のある場合を除いたものであって,原告の事業の種類,規模及び内容(前記(2))に対応しており,すし店における売上げが,主要な商品であるすしの販売量に比例し,すしの販売量は米の仕入数量に比例するのが通常と考えられることにかんがみると,同業者の抽出基準として合理性を有するということができる。そして,抽出した類似同業者の米の仕入れ数量や,所得率の数値の正確性については,類似同業者が,青色申告業者であり,推計の基礎とした年分の所得税について係争のない- 23 -ことを要件としていることから,担保されているということができる。 イ類似同業者の抽出方法について(ア)原告は,大田区,品川区,目黒区及び世田谷区内に存在したすし店の数に比較し,被告が抽出した類似同業者の数は余りに僅少であること,各税務署長に提出される青色申告決算書には米の仕入数量を記載する欄が存在せず,同申告書から類似同業者を抽出することは不可能であること,本件各課税処分時に抽出された類似同業者のうち特前所得率が低い者が被告の本訴において抽出した類似同業者から除かれていることなどから,被告の類似同業者の抽出には恣意が介在しており,被告の推計課税には合理性がない旨主張する。 (イ)しかしながら,類似同業者の抽出方法は,前記(3)のとおり,いわゆる通達・回答方式による機械的な作業によるものであることに加え,平成6年分に係る類似同業者の抽出件数(13件)と平成7年分のそれ(5件)との差が大きいことをも考え併せ は,前記(3)のとおり,いわゆる通達・回答方式による機械的な作業によるものであることに加え,平成6年分に係る類似同業者の抽出件数(13件)と平成7年分のそれ(5件)との差が大きいことをも考え併せると,本訴に当たり被告により抽出された業者の件数が上記のとおりであり,本件各課税処分時に類似同業者として抽出されていた1業者が含まれていないとしても,課税庁において,同業者の抽出の過程で,同業者を恣意的に選別するなど,推計課税に対する信用性を疑わしめるような行為をしたものとは認め難い。 ウ原告によるその他の主張の検討(ア)本件各課税処分の理由の存否についてa原告は,本件各課税処分が,原告の米の仕入先(P7米店)から米の数量の回答を得る前に行われており,その処分当時,基礎とした取扱数量の根拠が不明で,推計の基礎を欠いていたから,処分として不存在あるいは無効というべきである旨主張する。 bしかしながら,本件訴訟においては,本件各課税処分の違法性の有- 24 -無に関し,原告の総所得金額及び納付すべき税額が,本件各課税処分における総所得金額及び納付すべきものとされた税額を上回るかどうかが問題となり,この点に関し,本訴における課税庁の主張の当否が審理,判断の対象となるのであって,このような課税庁の主張は,本件各課税処分当時において課税庁が理由としたところに拘束されるものではないから,原告の上記主張は,それのみでは,本件各課税処分の違法事由としては失当といわざるを得ない。 (イ)異議決定における売上金額との開差についてa原告は,本件各課税処分が,その基礎とした売上金額について,本件異議決定との開差が著しく大きいことを被告の推計方法自体の合理性を否定する根拠として主張する。 bしかしながら,上記開差は,本件裁決において,被告が本件異議 が,その基礎とした売上金額について,本件異議決定との開差が著しく大きいことを被告の推計方法自体の合理性を否定する根拠として主張する。 bしかしながら,上記開差は,本件裁決において,被告が本件異議決定に際して行った再調査の結果,本件各課税処分時に米の仕入数量を誤って計算したことによるものであることが判明しており(甲12),このような開差が生じたことについて,本件各課税処分時における被告の計算にいささか杜撰かつ軽率な面があったとの批判は免れないとしても,上記開差の存在から,直ちに本訴において被告の主張する推計が基礎を欠くものということはできない。 (ウ)総収入等の開差についてaなお,甲38(P6税理士の意見陳述書)には,被告の推計において抽出された類似同業者間でみても,総収入の開差が著しく大きいこと(平成6年分についてみると,総収入2268万1960円から8385万9247円までと3.7倍近い開差があり,必要経費の額も,1672万5106円から6852万1985円までと4倍以上の開差があり,米1キログラム当たりの売上金額も,1万2108円から2万2097円と2倍近い開差がある。)から,同業者としての類似- 25 -性を欠く旨の記載がある。 bしかし,前記アのとおり,これらの業者が業種,業態等の主要な点において類似していることに加え,これらの業者の事業規模が,本件各係争年分の米の仕入数量でみると,原告の米の仕入数量の2分の1以上2倍以内の範囲内にあること(前記(3))に照らせば,上記類似同業者間の数値の開差の存在の事実をもってしても,これが類似同業者間に通常存在する程度の個別的な営業諸条件の差異の範囲を超え,被告の推計を不合理ならしめる程度に顕著なものであるということはできない。 (エ)価格設定についてa原告は,本件店 これが類似同業者間に通常存在する程度の個別的な営業諸条件の差異の範囲を超え,被告の推計を不合理ならしめる程度に顕著なものであるということはできない。 (エ)価格設定についてa原告は,本件店舗におけるすしの価格は,並・上につき500円又は700円であり,一般のすし店では並が800ないし1000円,上が1300円ないし2000円であることに比べると,回転すし並みの低価格であり,一般的なすし店を類似同業者とすることは合理性に欠けている旨主張する。 bしかし,すし店の経営に係る事業所得を判断するに当たり,価格も業態の同一性を判断するための一事情となり得るものではあるが,本件において,ネタ等の原材料の仕入価格や種類,品質,商品の量,すしのうち,「並」・「上」・「特上」その他の商品の売上構成(なお,原告が本件店舗におけるメニューとして提出した甲15の1ないし3によれば,「特上」の価格は,ランチタイム1000円,その余の営業時間が1100円とされており,また,好みに応じた内容のすしの注文も可能であったことが推認される。),すしと,刺身等のつまみ,酒類等の売上構成比(本件店舗は,夜11時30分まで営業しており,酒,肴の売上比率も相当程度に上るとみられる。),人件費の比率・程度等が明らかにされていないことにかんがみると,本件店舗におけ- 26 -るすしの価格と原告が自ら選んだ他のすし店のメニューに表示されたすしの価格に前記のとおりの相違があるとしても,それが,類似同業者間に通常存在する程度の個別的な営業諸条件の差異の範囲を超え,被告の推計を不合理ならしめる程度に顕著なものであるということはできない。 cなお,国税不服審判所長が本件裁決を行うに当たって検討した資料である「平成6年分同規模同業者率算定表(返戻後)」及び「平成7年分同規模 理ならしめる程度に顕著なものであるということはできない。 cなお,国税不服審判所長が本件裁決を行うに当たって検討した資料である「平成6年分同規模同業者率算定表(返戻後)」及び「平成7年分同規模同業者率算定表(返戻後)」(甲37の1及び2)には,「価格設定」の欄が設けられ,同欄に「相違」と記載された業者が類似同業者から除かれていることが認められる。しかし,本件裁決の理由中において,「業態が異なる。」と判断されていること,「価格設定」の欄に特に記載がないものでも,業態が異なるとされているものがあることからすると,本件裁決が価格設定のみを要素として業態の同一性を判断しているとみることはできず,価格設定の相違する業者が業態を異にすると認められる場合を除いたとみるのが合理的である(ちなみに,審査請求において,原告は,自己のすし店の価格設定が極めて低価格であることを主張していたが,本件裁決は,価格設定が相違する業者を含む一部業者(下記(オ)a)を除いた残りの同業者については,類似同業者として推計の合理性を認め,その限度で計算した平均の特前所得率を基に算出した事業所得の金額の限度で,本件各課税処分を適法としている。)。 (オ)本件裁決の内容と本訴における被告の類似同業者の抽出方法及び抽出件数についてa本件裁決は,その理由中において,「当審判所が原処分庁の選定した類似同業者についてその適否を審査したところ,当該同業者は,いずれも大森税務署又はその近隣署の管内に事業所を有し,請求人と同- 27 -業種の者であり,かつ,その年分の米の仕入数量が請求人のそれの0. 5倍以上2倍以下であるなど事業規模の類似する事業を営む青色申告者(平成6年分12件,平成7年分6件)であることが認められるが,その業態が請求人と異なり,類似同業者として相当でない者 人のそれの0. 5倍以上2倍以下であるなど事業規模の類似する事業を営む青色申告者(平成6年分12件,平成7年分6件)であることが認められるが,その業態が請求人と異なり,類似同業者として相当でない者が平成6年分に7件,平成7年分に4件認められた。」とし,「これらの者を除いたところで再計算した米の仕入れ1キログラム当たりの平均売上金額は,平成6年分1万6483.03円及び平成7年分1万7162.56円となる。」と判断している(甲12)。 b原告は,上記裁決の内容に加え,本件各課税処分に際し類似同業者として選定された者のうち,平成6年分は11件,平成7年分は5件が,被告が本訴において類似同業者として主張する者と共通し,被告が本訴において新たに類似同業者として抽出した者は,平成6年分の2件にとどまることから,本訴において被告が類似同業者として主張する業者について,平成6年分(13件)については,うち7件が,平成7年分(5件)については,うち3件が,本件裁決において,類似同業者として不適切な業者とされたことになり,類似同業者の所得率の平均値により原告の事業所得を推計するには,あまりにも抽出件数が少なく,不合理である旨主張する。 c乙3ないし11(各肢番号を含む。)によれば,本訴に当たり,東京国税局長宛てに各税務署長からされた,類似同業者の調査に関する回答の状況(別紙2及び3の同業者の税務署管内ごとの内訳)は,下記のとおりであったことが認められ,これと甲13,14(P6税理士作成のメモ),37の2及び3(本件裁決に際して資料として検討された同業者率算定表)並びに弁論の全趣旨によれば,原告の上記主張にあるとおり,本訴において被告が類似同業者として主張する業者について,平成6年分(13件)のうち7件,平成7年分(5件)の- 28 -うち3 率算定表)並びに弁論の全趣旨によれば,原告の上記主張にあるとおり,本訴において被告が類似同業者として主張する業者について,平成6年分(13件)のうち7件,平成7年分(5件)の- 28 -うち3件が,本件裁決において,同業者としての類似性を否定されたものと認められる。 記(なお,○印を付した業者は,本件裁決により類似性が肯定された者,×印を付した業者は,本件裁決により類似性が否定された者。△印を付した業者は,被告が本訴において新たに抽出した者である。)平成6年分について(該当13件)・大森,雪谷,世田谷,北沢,玉川の各税務署管内該当なし・蒲田税務署管内○業者A(=別紙2のA)※甲14(平成6年分)のBに相当売上金額3729万3600円米の仕入数量3080キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万2108.31円経費等の額2991万3915円特前所得金額737万9685円特前所得率19.79パーセント○業者B(=別紙2のB)※甲14(平成6年分)のAに相当売上金額8385万9247円米の仕入数量3795キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万2097.30円経費等の額6852万1985円特前所得金額1533万7262円特前所得率18.29パーセント×業者C(=別紙2のC)※甲14(平成6年分)のCに相当売上金額6100万7846円- 29 -米の仕入数量2760キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万2104.29円経費等の額5244万7377円特前所得金額856万0469円特前所得率14.03パーセント○業者D(=別紙2のD)※甲14(平成6年分)のDに相当売上金額2268万1960円米の仕入数量1665キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万3622.80円経費等の額1672 セント○業者D(=別紙2のD)※甲14(平成6年分)のDに相当売上金額2268万1960円米の仕入数量1665キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万3622.80円経費等の額1672万5108円特前所得金額595万6852円特前所得率26.26パーセント・目黒税務署管内×業者A(=別紙2のE)※甲14(平成6年分)のKに相当売上金額7215万2913円米の仕入数量2460キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万9330.45円経費等の額6268万3297円特前所得金額946万9616円特前所得率13.12パーセント△業者B(=別紙2のF)※被告が本訴に当たり新たに提出売上金額2101万1800円米の仕入数量2270キログラム米1キログラム当たりの売上金額9256.30円経費等の額1672万3156円特前所得金額428万8644円- 30 -特前所得率20.41パーセント×業者C(=別紙2のG)※甲14(平成6年分)のLに相当売上金額3632万2250円米の仕入数量1620キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万2421.14円経費等の額2860万6569円特前所得金額771万5681円特前所得率21.24パーセント・品川税務署管内×業者A(=別紙2のH)※甲14(平成6年分)のFに相当売上金額3583万7150円米の仕入数量1800キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万9909.53円経費等の額2549万8469円特前所得金額1033万8681円特前所得率28.85パーセント×業者B(=別紙2のI)※甲14(平成6年分)のGに相当売上金額5224万2541円米の仕入数量1792キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万9153.20円経費等の額4479万7 ト×業者B(=別紙2のI)※甲14(平成6年分)のGに相当売上金額5224万2541円米の仕入数量1792キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万9153.20円経費等の額4479万7114円特前所得金額744万5427円特前所得率14.25パーセント×業者C(=別紙2のJ)※甲14(平成6年分)のEに相当売上金額5498万2590円米の仕入数量2016キログラム- 31 -米1キログラム当たりの売上金額2万7273.11円経費等の額4814万2128円特前所得金額684万0462円特前所得率12.44パーセント△業者D(=別紙2のK)※被告が本訴に当たり新たに抽出売上金額3377万7305円米の仕入数量1590キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万1243.59円経費等の額2218万2747円特前所得金額1159万4558円特前所得率34.33パーセント×業者E(=別紙2のL)※甲14(平成6年分)のHに相当売上金額2873万3300円米の仕入数量1590キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万8071.26円経費等の額2151万0727円特前所得金額722万2573円特前所得率25.14パーセント・荏原税務署管内○業者A(=別紙2のM)※甲14(平成6年分)のIに相当売上金額3503万0300円米の仕入数量2100キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万6681.10円経費等の額2717万1289円特前所得金額785万9011円特前所得率22.43パーセント- 32 -平成7年分について(該当5件)・雪谷,世田谷,北沢,玉川,品川,荏原の各税務署管内該当なし。 ・大森税務署管内×業者A(=別紙3のA)※甲14(平成7年分)のAに相当売上金額3506万4950 成7年分について(該当5件)・雪谷,世田谷,北沢,玉川,品川,荏原の各税務署管内該当なし。 ・大森税務署管内×業者A(=別紙3のA)※甲14(平成7年分)のAに相当売上金額3506万4950円米の仕入数量2140キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万6385.49円経費等の額2623万3052円特前所得金額883万1898円特前所得率25.19パーセント・蒲田税務署管内○業者A(=別紙3のB)※甲14(平成7年分)のCに相当(ただし,本件裁決及び甲14には,特前所得金額を754万2699円,特前所得率を20.97パーセントと記載されている。)売上金額3597万4600円米の仕入数量3052キログラム米1キログラム当たりの売上金額1万1787.22円経費等の額2856万9985円特前所得金額740万4615円特前所得率20.58パーセント○業者B(=別紙3のC)※甲14(平成7年分)のBに相当売上金額7707万9592円米の仕入数量3420キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万2537.89円- 33 -経費等の額6322万0718円特前所得金額1385万8874円特前所得率17.98パーセント×業者C(=別紙3のD)※甲14(平成7年分)のDに相当売上金額5744万3504円米の仕入数量2850キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万0155.62円経費等の額4754万4797円特前所得金額989万8707円特前所得率17.23パーセント・目黒税務署管内×業者A(=別紙3のE)※甲14(平成7年分)のFに相当売上金額6451万5106円米の仕入数量2180キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万9594.09円経費等の額5523万5971円特前所得金額927万9 甲14(平成7年分)のFに相当売上金額6451万5106円米の仕入数量2180キログラム米1キログラム当たりの売上金額2万9594.09円経費等の額5523万5971円特前所得金額927万9135円特前所得率14.38パーセントdしかしながら,同業者に対する照会,回答は,対象者の任意の協力の下で行われるもので,回答に応じないことによる制裁も回答に応じたことによる特典も存しない。このことにかんがみれば,類似同業者の抽出基準に合理性があり,課税庁による抽出の過程に恣意が介在していないと認められる以上,抽出された同業者の件数が僅少であるということ(調査の時期や調査の対象となる数値の種類等の事情から,回答をした業者が少なかったという場合を含む。)のみを理由に,直ちに推計の合理性を否定することはできないと考えられる。更に敷え- 34 -んして述べるならば,同業者の数を絞ると,平均値計算の母数は少なくなるが,絞り込んだ結果としてその分精度が高まるともいえる。また,推計課税が,課税庁において納税者から直接資料を入手して実額を認定して課税を行うことができない場合にやむを得ず代替的に行われるものであることからすると,同業者等の調査に際し,社会通念上,回答不能と認められるほど短い回答期限を設けるなどの特段の事情が認められない限り,当該調査方法を不合理ということはできないというべきであるところ,本件全証拠によっても,上記特段の事情を認めることはできないといわざるを得ない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 eもっとも,本件裁決の理由中において,本件各課税処分に際し類似同業者として抽出された者のうち,業態が異なるとして,同業者としての類似性を否定された同業者については,行政部内の不服審査手続において,業態の類似性を否定された以上, いて,本件各課税処分に際し類似同業者として抽出された者のうち,業態が異なるとして,同業者としての類似性を否定された同業者については,行政部内の不服審査手続において,業態の類似性を否定された以上,その否定の根拠が明らかな誤認によるものであるとか,著しく不合理なものであるなどの事情が認められない限り,上記同業者を類似同業者に含めることは相当でなく,上記同業者を除外して推計を行うべきである。そして,本件において上記のような事情を認めるに足りる証拠はない(なお,上記事情については,当該同業者を類似同業者として抽出し,類似同業者に含めて推計の合理性を主張する被告が立証責任を負うものと解するのが相当である。)ので,上記類似性を否定された同業者は除外するのが相当である。 エ以上に検討したところによれば,被告の推計は,本件裁決において類似性を否定された者を同業者とした部分を除いた範囲において,一応合理的なものと認めるのが相当である。 争点(2)イ(原告の推計との比較における合理性の有無)について- 35 -(1)推計課税は,その推計に一応の合理性が認められる場合,当該推計方法によって算出される課税標準等の額が真実の課税標準等の額に合致すると事実上推定されるというべきである。とはいえ,推計課税は,あくまでも所得金額を実額により直接証明できない場合の代替的な課税手段であり,実額との近似性が認められることを要件に認められるのであるから,納税者において,課税庁の推計よりも合理的で実額に近いと認められる推計方法が存することを主張,立証した場合には,当該納税者の推計によって算出される課税標準等の額が真実のそれに合致すると推認するのが相当である。被告は,推計課税に対しては実額による反証のみが認められる旨主張するが,同主張は採用できない。 上記のとお 税者の推計によって算出される課税標準等の額が真実のそれに合致すると推認するのが相当である。被告は,推計課税に対しては実額による反証のみが認められる旨主張するが,同主張は採用できない。 上記のとおり,被告の推計(ただし,前記2(4)エで合理性を認められた範囲)に一応合理性が認められるので,原告の主張する推計1又は2が,被告の推計より合理的と認められるかどうかにつき,以下検討する。 (2)原告の推計1(平成10年の米の仕入数量に基づく推計について(各年分))についてア原告は,平成10年の米の仕入数量が3420キログラムであることを前提として,原告の平成10年分所得税青色申告決算書(甲24。以下「平成10年分決算書」という。)に基づいて平成10年分に係る米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率(12.60パーセント)を算出し,これを基に本件各係争年分の事業所得の金額を推計して主張する。 イしかし,平成10年分に係る原告の米の仕入数量が3420キログラムであることを客観的に裏付ける証拠はない上,平成10年分決算書の「期首商品(製品)棚卸高②」欄が空欄であり,平成10年1月1日当初の在庫商品の有り高が不明である。 ウ原告が上記決算書の作成の基礎としたと主張する甲26(金銭出納帳)の記載についてみても,原告は,仕入れに必要な金銭を,前日の売上金額- 36 -の中から用意しておくと述べながら(原告本人),甲26には,前日現金残高より仕入金額が多い日が散見され,給料賃金(専従者給与を除く。)の金額について,平成10年分決算書の記載(853万5000円)と甲26の記載(865万0775円(「科目」欄が「給料」,「雑給」,「アルバイト」及び「賞与」の合計金額))にも相違がみられる。 エこれらの点に加え,甲26及び平成10年分決算書が,本件 00円)と甲26の記載(865万0775円(「科目」欄が「給料」,「雑給」,「アルバイト」及び「賞与」の合計金額))にも相違がみられる。 エこれらの点に加え,甲26及び平成10年分決算書が,本件各課税処分がされ,課税庁との間で係争を生じた後に作成されたものであることも考慮すると,平成10年分決算書の記載の正確性には疑義があり,その内容を全面的に信用することはできないといわざるを得ない。 オさらに,本件各係争年分及び本件各課税期間である平成6年及び平成7年から決算書が作成された平成10年までの間には,景気の悪化の進行,継続等がみられ(公知の事実),その間の消費動向が同一とは認め難い上,本件店舗における商品単価は,消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の増税に伴い,平成9年4月1日に変更され(甲15の1及び2,弁論の全趣旨),本件店舗前の道路の拡張工事も,平成10年にはかなり進行しており(乙12の1及び2),これらの事情が本件店舗における売上げに影響した可能性があることから,平成6年及び同7年と平成10年との間で特前所得率が同一であるとの前提で所得金額を計算することには問題があるというべきである(なお,原告自身,給料賃金の支払金額につき,平成10年分については853万5000円(平成10年分決算書)と主張しているのに対し,平成7年については1255万7750円と主張している。)。 カそうすると,原告の推計1が,そもそも,被告の推計(ただし,前記2(4)エで合理性を認められた範囲)を上回る合理性を有するとは認められないというべきである。 (3)原告の推計2(米及び酒類の仕入数量に基づく推計(平成7年分))につ- 37 -いてア原告は,平成7年分の売上金額について,すしの売上げについては,同年分の米の仕入れ数量から自 ある。 (3)原告の推計2(米及び酒類の仕入数量に基づく推計(平成7年分))につ- 37 -いてア原告は,平成7年分の売上金額について,すしの売上げについては,同年分の米の仕入れ数量から自家消費分を差し引いた額からすしの注文数を推計し,米1.8キログラムを15人前として,すしの平均単価(980円)及び営業日数を乗じ(2954万0520円),酒類の売上げについては,仕入数量から自家消費分を差し引いた額に各単価を乗じ,つまみの売上げについては,原告の長年の経験から,酒類2本について,つまみ1品が注文され,その平均単価は1000円であるとして算出した金額の合計5455万5460円であると主張する。 イしかしながら,原告の上記主張に係る米及び酒類の自家消費分や1人前の平均単価,つまみの注文量や平均単価については,客観的な裏付けを欠いており(原告が主張する,日々の売上げの記帳の合計額5455万5460円は,原告が本訴において主張する原告の平成7年分の売上金額5446万0970円(甲28,29)とも一致していない。また,つまみ類の注文数については,ビール,日本酒,サワーの酒類の種類を区別することなく,酒類2本当たり1個と推定していることも,必ずしも合理的とはいい難い。),原告の酒類の仕入先が,原告の主張する仕入先のみであることを客観的に裏付ける証拠もない。 ウそうすると,原告の推計2が,そもそも被告の推計(ただし,前記2(4)エで合理性を認められた範囲)を上回る合理性を有するとは認められないというべきである。 争点(3)(実額反証の成否)について(1)原告は,平成7年分事業所得について経費を実額で計算し,税理士が作成した集計表によれば,原告の平成7年分の事業所得の金額は694万5572円となり,個人事業税額,減価償却費,専従者 について(1)原告は,平成7年分事業所得について経費を実額で計算し,税理士が作成した集計表によれば,原告の平成7年分の事業所得の金額は694万5572円となり,個人事業税額,減価償却費,専従者控除額を差し引いた額は,557万0238円となる旨主張する。 - 38 -(2)しかしながら,原告が実額反証として提出した証拠は,車両運搬具の取得に係る資料及び個人事業税に係る滞納金額内訳書以外は,単に各科目の取引金額を1日ごと又は1月ごとに集計したと一方的に主張している「日計表」(甲28)及びこれを基に作成された「集計表」(甲29)のみで,その記載内容も,現金の収支や残高を知ることができるものではなく,原告が上記日計表作成の基礎としたという売上日報並びに仕入れ及び必要経費の領収書等の原始記録は提出されていない。また,原告は,日々継続的に記録された会計帳簿を作成していないことを自認しており(原告本人226ないし230,316,353及び357),日々現金やクレジットカードによる取引が多々行われるのが通常であるすし店の営業による日々の現金等の入出金状況及び残高等を正確に記録した帳簿(現金出納帳等)がないことから,その主張に係る総収入金額の捕捉漏れの有無や,必要経費の現実の支出の有無が,合理的な疑いを容れない程度に立証されたと認めることはできない。 (3)そうすると,原告の上記実額反証は,被告の推計(ただし,前記2(4)エで合理性を認められた範囲)の合理性を覆すに足りるものということはできない。 第4 結論 以上によれば,被告の推計は,本件裁決において類似性を否定された者を同業者とした部分を除いた範囲において,合理的であると認められる。 そこで,上記範囲において,類似同業者の平均値を求めると,以下のとおりとなる。 (1)平成6年分(別紙 おいて類似性を否定された者を同業者とした部分を除いた範囲において,合理的であると認められる。 そこで,上記範囲において,類似同業者の平均値を求めると,以下のとおりとなる。 (1)平成6年分(別紙2のA,B,D,F,K,Mの業者の平均)ア米1キログラム当たりの売上金額1万5834.90円イ特前所得率23.59パーセント(2)平成7年分(別紙3のB,Cの業者の平均)ア米1キログラム当たりの売上金額1万7162.56円(少数点第3- 39 -位以下四捨五入)イ特前所得率19.28パーセント 上記1の類似同業者の平均値を基に,各係争年分の所得税及び消費税並びに所得税,消費税に係る各過少申告加算税の額を計算すると,以下のとおりとなる。 (1)平成6年分の所得税ア総所得金額1107万8740円下記(ア)の売上金額から下記(イ)の特前所得金額を算出し,上記特前所得金額から下記(ウ)の事業専従者控除額を差し引いた。 (ア)売上金額5035万4982円原告の平成6年分の米の仕入数量3180キログラムに,同年分の米1キログラム当たりの平均売上金額を上記1(1)アで算出した1万5834.90円として乗じた(小数点以下四捨五入。以下同じ。)。 (イ)特前所得金額1187万8740円前記(ア)の売上金額5035万4982円に,類似同業者の平成6年分の売上金額に占める特前所得金額の割合の平均値(小数点第5位以下四捨五入)を上記1(1)イで算出した23.59パーセントとして乗じた(小数点以下四捨五入。以下同じ。)。 (ウ)事業専従者控除額80万0000円原告の妻P2に係る所得税法57条3項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の事業専従者控除額イ所得から差し引かれる金額の合計額153万0505円本件 専従者控除額80万0000円原告の妻P2に係る所得税法57条3項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の事業専従者控除額イ所得から差し引かれる金額の合計額153万0505円本件裁決において認容された平成6年分の所得から差し引かれる金額の合計額ウ課税総所得金額954万8000円上記アの金額から上記イの金額を差し引いた(国税通則法118条1項- 40 -の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた。)。 エ課税総所得金額に対する税額196万4400円上記ウの課税総所得金額に所得税法89条1項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の税率を乗じた。 オ特別減税額39万2880円平成6年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づき,上記エの課税総所得金額に対する税額に100分の20の割合を乗じた。 カ納付すべき税額157万1500円上記エの金額から上記オの金額を差し引いた(国税通則法119条1項に基づき100円未満の端数を切り捨てた。)。 (2)平成6年分の所得税に係る過少申告加算税14万0000円上記金額は,上記(1)の計算の結果,原告が新たに納付すべきこととなった税額110万0000円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額11万0000円に,同条2項の規定に基づき,上記新たに納付すべきこととなった税額110万0000円のうち50万円を超える部分に相当する金額60万円に対して100分の5の割合を乗じて算出した金額3万円を加算した金額である。 (3)平成7年分の所得税ア総所得金額1283万9018円下記(ア)の売上金額から(イ)の特前所得金額を算出し,(ウ)の事業専従者控 の割合を乗じて算出した金額3万円を加算した金額である。 (3)平成7年分の所得税ア総所得金額1283万9018円下記(ア)の売上金額から(イ)の特前所得金額を算出し,(ウ)の事業専従者控除額を差し引いた。 (ア)売上金額7105万2998円原告の平成7年分の米の仕入数量4140キログラムに,類似同業者の同年分の米1キログラム当たりの平均売上金額を上記1(2)アで算出した1万7162.56円として乗じた。 - 41 -(イ)特前所得金額1369万9018円前記(ア)の売上金額7105万2998円に,類似同業者の平成7年分の平均特前所得率19.28パーセントを乗じた。 (ウ)事業専従者控除額86万0000円原告の妻P2に係る所得税法57条3項所定の事業専従者控除額イ所得から差し引かれる金額の合計額226万8385円本件裁決において認容された平成7年分の所得から差し引かれる金額の合計額ウ課税総所得金額1057万0000円上記アの金額からイの金額を差し引いた(国税通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた。)。 エ課税総所得金額に対する税額194万1000円上記ウの課税総所得金額に所得税法89条1項所定の税率を乗じた(国税通則法119条1項に基づき100円未満の端数を切り捨てた。)。 オ特別減税額5万0000円平成7年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づき,上記ウの課税総所得金額に対する税額に100分の15の割合を乗じた金額(最高限度額5万円)である。 カ納付すべき税額189万1000円上記エの金額からオの金額を差し引いた。 (4)平成7年分の所得税に係る過少申告加算税18万6500円上記金額は,上記(3)の計算の結果,原告が新たに納付すべきこととなった税額1 9万1000円上記エの金額からオの金額を差し引いた。 (4)平成7年分の所得税に係る過少申告加算税18万6500円上記金額は,上記(3)の計算の結果,原告が新たに納付すべきこととなった税額141万0000円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額14万1000円に,同条2項の規定に基づき,上記新たに納付すべきこととなった税額141万0000円のうち- 42 -50万円を超える部分に相当する金額91万円に対して100分の5の割合を乗じて算出した金額4万5500円を加算した金額である。 (5)平成6年課税期間の消費税ア課税標準額4888万8000円上記金額は,原告の平成6年課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額(消費税法28条1項),すなわち,原告の事業所得に係る売上金額(総収入金額)を上記(1)ア(ア)で計算した5035万4982円として,これに103分の100を乗じた金額である(国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた金額)。 イ課税標準額に対する消費税額146万6640円上記金額は,上記アの課税標準額4888万8000円に消費税法29条所定の税率100分の3を乗じたものである。 ウ仕入れに係る消費税額の控除額87万9984円上記金額は,消費税法37条1項の規定(いわゆる簡易課税制度)により,上記イの消費税額146万6640円に100分の60(原告の営む業種(すし店)は,消費税法施行令57条5項4号(平成8年法律第86号による改正前のもの)に規定する第4種事業に該当する。)を乗じた金額である。 エ納付すべき税額58万6600円上記金額は上記イの金額から上記ウの金額を差し引い 7条5項4号(平成8年法律第86号による改正前のもの)に規定する第4種事業に該当する。)を乗じた金額である。 エ納付すべき税額58万6600円上記金額は上記イの金額から上記ウの金額を差し引いた金額である(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額)。 (6)平成6年課税期間の消費税に係る過少申告加算税3万0000円上記金額は,上記(5)の計算の結果,原告が新たに納付すべきこととなる税額30万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合- 43 -を乗じて算出した金額である。 (7)平成7年課税期間の消費税ア課税標準額6898万3000円上記金額は,原告の平成7年課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額(消費税法28条1項),すなわち,原告の事業所得に係る売上金額(総収入金額)を上記(3)ア(ア)で計算した7105万2998円として,これに103分の100を乗じた金額である(国税通則118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた金額)。 イ課税標準額に対する消費税額206万9490円上記金額は,上記アの課税標準額6898万3000円に消費税法29条所定の税率100分の3を乗じたものである。 ウ仕入れに係る消費税額の控除額124万1694円上記金額は,消費税法37条1項の規定(いわゆる簡易課税制度)により,上記イの消費税額206万9490円に100分の60(原告の営む業種(すし店)は,消費税法施行令57条5項4号(平成8年法律第86号による改正前のもの)に規定する第4種事業に該当する。)を乗じた金額である。 エ納付すべき税額82万7700円上記金額は上記イの金額から上記ウの金額を差し引 57条5項4号(平成8年法律第86号による改正前のもの)に規定する第4種事業に該当する。)を乗じた金額である。 エ納付すべき税額82万7700円上記金額は上記イの金額から上記ウの金額を差し引いた金額である(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額)。 (8)平成7年課税期間の消費税に係る過少申告加算税4万8000円上記金額は,上記(7)の計算の結果,原告が新たに納付すべきこととなる税額48万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の金額を切り捨てた金額)に国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 - 44 -3(1)上記2において計算した平成6年分の所得税に係る総所得金額(1107万8740円),納付すべき税額(157万1500円)及び過少申告加算税の額(14万0000円)は,平成6年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税の賦課決定(ただし,本件異議決定及び本件裁決による取消し後の金額)における総所得金額(882万3584円),納付すべき税額(103万0300円)及び過少申告加算税の額(5万9000円)を上回る一方,平成6年課税期間の消費税に係る課税標準額(4888万8000円),納付すべき税額(58万6600円)及び過少申告加算税の額(3万0000円)は,平成6年課税期間の消費税に係る更正及び過少申告加算税の賦課決定(ただし,本件異議決定及び本件裁決による取消し後の金額)における課税標準額(5088万9000円),納付すべき税額(61万0600円)及び過少申告加算税の額(3万3000円)を下回ることとなる。 (2)また,上記2において計算した平成7年分の所得税に係る総所得金額(1283万9018円),納付すべき税額(189万1000円)及び 及び過少申告加算税の額(3万3000円)を下回ることとなる。 (2)また,上記2において計算した平成7年分の所得税に係る総所得金額(1283万9018円),納付すべき税額(189万1000円)及び過少申告加算税の額(18万6500円)は,平成7年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税の賦課決定(ただし,本件異議決定及び本件裁決による取消し後の金額)における総所得金額(1298万1124円),納付すべき税額(193万3600円)及び過少申告加算税の額(19万4000円)を下回る一方,平成7年課税期間の消費税に係る課税標準額(6898万3000円),納付すべき税額(82万7700円)及び過少申告加算税の額(4万8000円)は,平成7年課税期間の消費税に係る更正及び過少申告加算税の賦課決定(ただし,本件異議決定及び本件裁決による取消し後の金額)における課税標準額,納付すべき税額及び過少申告加算税の額と同額となる。 そうすると,本件各課税処分は,平成6年課税期間の消費税に係る更正(ただし,本件異議決定及び本件裁決による一部取消し後の金額)のうち課税標準- 45 -額4888万8000円及び納付すべき税額58万6600円を超える部分,平成6年課税期間の消費税に係る過少申告加算税賦課決定のうち3万円を超える部分,平成7年分の所得税に係る更正(ただし,本件異議決定及び本件裁決による一部取消し後の金額)のうち総所得金額1283万9018円及び納付すべき税額189万1000円を超える部分並びに平成7年分の所得税に係る過少申告加算税賦課決定のうち18万6500円を超える部分は違法である。 よって,原告の請求は,上記4において違法とされた限度で理由があるが,その余は理由がない。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官大門匡裁判官関口 500円を超える部分は違法である。 よって,原告の請求は,上記4において違法とされた限度で理由があるが,その余は理由がない。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官大門匡裁判官関口剛弘裁判官菊池章- 46 -(別紙1)争点に関する当事者の主張第1争点(1)(推計の必要性の有無)について 被告の主張(1)ア被告は,原告の昭和61年分ないし昭和63年分の所得税に係る調査以後,原告の申告した所得金額が上記調査した額に比較し,いずれも低調であり,かつ,原告から提出された平成5年分ないし平成7年分の所得税の確定申告書の所得金額欄には,事業所得に係る所得金額が記載されているだけで,総収入金額及び必要経費の額の記載がなく,さらに,所得税法120条4項所定の当該年中の総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類の添付もなかったことから,上記平成5年分ないし平成7年分に係る申告所得金額が適正であるか否かについて調査をする必要があると判断し,P3係官に原告の上記各年分に係る所得税の調査を命じ,併せて,上記各年分に対応する課税期間に係る消費税の調査を命じた。 イこれを受けて,P3係官は,平成8年8月2日,同月9日及び同月26日に本件店舗又は自宅に臨場したほか,電話で,原告の所得について調査するため,再三にわたり,帳簿書類の提示等の協力を求めたが,原告において第三者である「P5」の立会いを求めて帳簿提示等に応じなかった。 ウP3係官は,同月29日,30日に電話を掛けたが,通じず,同年9月2日午前11時30分ころ,原告宅に電話し,在宅中の原告に再考を促したものの,原告の意思に変わりはなかったため,第三者のいないところで調査に応じる気になったら連絡するよう話して独自の調査を開始した。 エP3係官は,同年11月15日にも, ,在宅中の原告に再考を促したものの,原告の意思に変わりはなかったため,第三者のいないところで調査に応じる気になったら連絡するよう話して独自の調査を開始した。 エP3係官は,同年11月15日にも,なお原告宅を訪問して調査への協力を要請したが,原告は説得に応じず,外出の予定があり,同日の調査には応じられないと言われたため,原告に再考を促した上で原告宅を辞去し- 47 -た。そして,平成9年2月25日,上記独自の調査結果に基づき各係争年分についての調査結果が出たこと及び原告の各係争年分の所得税及び各課税期間の消費税の税額を伝え,修正申告の意向の有無を同月26日までに連絡するよう打診したところ,原告は「相談してみる。」と回答した。 オしかし,同月26日及び27日に,原告から依頼を受けたというP6税理士から連絡はあったものの,同税理士に対し,修正申告の意向を確認中で,修正申告書を提出しないということであれば,更正を考えている旨伝えたところ,同税理士が,今は忙しくて調査し直すこともできないので,更正を行うのであれば,異議申立てを行い,その段階で関与していきたい旨を述べた。 (2)このように,被告が,原告に対し,再三にわたり,本件店舗又は自宅に臨場し,本件係争各年度の事業所得金額の計算の説明及びその計算の基礎となるべき帳簿書類の提示を求めたのに対し,原告は,調査に関係のない第三者の立会いに固執して,帳簿書類等の提示に応じず,税務調査に協力しなかった。 そのため,被告は,原告の本件各係争年分の事業所得の金額を,実額計算の方法で算定することはできないと判断し,原告の取引先の調査等によって把握した取扱数量等を基に,所得税法156条の規定する推計の方法により,原告の本件各係争年分の売上金額等を算定し,納付すべき税額を算定したものであり,推計の必要 判断し,原告の取引先の調査等によって把握した取扱数量等を基に,所得税法156条の規定する推計の方法により,原告の本件各係争年分の売上金額等を算定し,納付すべき税額を算定したものであり,推計の必要性が認められることは明らかというべきである。 原告の主張(1)アP3係官が平成8年8月2日原告宅を訪問した時間は,数分程度で,原告との間で十分なやりとりはしていない。同月9日の来訪時も,原告が,帳簿はテーブルの上に用意してあり,P5は民主商工会の事務局員で,無関係でなく,その立会いの下であれば,いつでも帳簿を調査してよい旨申し述べ,調査の理由を質問したのに対し,P3係官は,平成5年,6年,- 48 -7年分の所得税及び同期間の消費税の調査であることを告げただけで正面から説明しようとせず,P5が退席することに固執し続けた。P5が,P3係官に対し,民商事務局員の立会いを理由に十数分で帰り,課税処分をしたことについてその処分が無効となった裁判例を引き合いに出し,調査を進めるよう説得したが,P3係官は,この状況では調査はできず,調査が進まない責任は協力しない原告にあると強調し,独自に調査をやる旨話して,午前11時5分少し過ぎころ,原告宅を出たものである。 イまた,平成8年8月26日は月曜日であり,本件店舗は定例の休業日で,原告は本件店舗に行く用事もなく自宅で過ごしていたのであり,P3係官が来訪すれば応対する時間は十分にあったが,P3係官の来訪を受けた事実はない。 ウ平成8年8月29日,30日及び9月2日午前11時ころ,原告がP3係官からの電話連絡を受けたり,本件店舗の従業員から電話を取り次がれた事実はなく,同年11月15日にP3係官が原告宅を訪れ,原告が応対した事実もない。 エP3係官が平成9年2月25日に原告宅に電話をし,原告が応答し を受けたり,本件店舗の従業員から電話を取り次がれた事実はなく,同年11月15日にP3係官が原告宅を訪れ,原告が応対した事実もない。 エP3係官が平成9年2月25日に原告宅に電話をし,原告が応答したこと,同係官が本件調査の結果により原告に所得税,消費税の修正申告をする意思があるかを尋ねたことは認めるが,P3係官から平成8年8月9日以降,平成9年2月25日までの間に何ら連絡がなかった。 オP6税理士の関与の経緯についても,P3係官の側から,更正を行うことで上司の決裁があり,今から同税理士が関与しても間に合わないこと,原告は更正について異議申立てをするであろうからその段階から関与してはどうかと申し出たものである。 (2)以上の経緯から,推計の必要性に関する被告の主張には,真実と反する内容が多く含まれており,推計課税に至る経過において,P3係官は,原告との間で十分なやり取りをせずに本件各課税処分を行ったものであり,推計の- 49 -必要性は認め難い。 第2争点(2)ア(被告の推計自体の合理性)について 被告の主張(1)被告の推計課税の根拠の存在(課税訴訟における審理,判決の対象)ア課税処分取消訴訟における訴訟物は,当該課税処分によって具体的に確定された課税標準等又は税額等が,当該処分時に租税実体法によって客観的に存在した課税標準等又は税額等を総額において上回るか否かを判断するに必要な事項全般に及ぶもの(いわゆる総額主義)というべきであるから,被告課税庁は,当該課税処分に係る課税標準等又は税額等の適法性を立証するために,課税処分時に課税庁が認定した事実に拘束されることなく,訴訟の段階で新たな事実を主張・立証することも当然に許容される(最高裁判所昭和50年6月12日第一小法廷判決・訟務月報21巻7号1547頁ほか)。 イ被告 税庁が認定した事実に拘束されることなく,訴訟の段階で新たな事実を主張・立証することも当然に許容される(最高裁判所昭和50年6月12日第一小法廷判決・訟務月報21巻7号1547頁ほか)。 イ被告は,本件調査において,原告が調査に関係のない第三者の立会いに固執し,調査に協力しなかったため,やむを得ず原告の取引先に対する調査により把握し得た原告の取扱数量を基礎として,原告の本件各係争年分の事業所得の金額及び本件各課税期間の消費税の課税標準額を推計により算出したのである。そして,被告は,異議申立てに係る調査においても,原告から帳簿書類等の提示や申告額を正当とする具体的な理由の説明がなかったため,やむを得ず本件調査及び異議申立てに係る調査により把握し得た事実に基づいて,原告の本件各係争年分の事業所得の金額及び本件各課税期間の消費税の課税標準額を推計により算出し,本件異議決定を行ったものである。 ウこのように,本件異議決定は,本件調査によって把握し得た事実に加え,異議申立てに係る調査によって把握し得た事実を総合した上で,原告の本件各係争年分の事業所得の金額及び本件各課税期間の消費税の課税標準額- 50 -を推計により算出したのであるから,本件各課税処分と本件異議決定における金額とが異なること自体は,何ら異とすべきものではないのであり,本件各課税処分と本件異議決定における金額とが異なるからといって,本件各課税処分が違法となるものでもない。 エまた,課税処分取消訴訟における課税標準等又は税額等の算定の根拠となる個々の事実は,単なる攻撃防御方法にすぎず,被告課税庁は,当該課税処分に係る課税標準等又は税額等の適法性を立証するために,本件各課税処分時又は本件異議決定時に認定した事実に拘束されることはないのであるから,本件各課税処分時において推計 ず,被告課税庁は,当該課税処分に係る課税標準等又は税額等の適法性を立証するために,本件各課税処分時又は本件異議決定時に認定した事実に拘束されることはないのであるから,本件各課税処分時において推計課税の基礎とした取扱数量が明らかにされていないことをもって,本件各課税処分が違法となるものではなく,ましてや,本件各課税処分が不存在となるものでもないことは明らかである。 (2)類似同業者抽出の基準とその合理性ア被告が本訴において主張する,本件各係争年分の原告の事業所得の推計方法は,被告が把握し得た原告の米の仕入数量に類似同業者の米1キログラム当たりの平均売上金額を乗じて原告の売上金額を算出した上で,上記売上金額に類似同業者の平均特前所得率を乗じて原告の特前所得金額を算出し,事業専従者控除額を差し引いた金額を原告の事業所得金額とするものであり,消費税の課税標準額は,上記のとおり算出した各年分の売上金額に103分の100を乗じて算出したものである。 イそして,被告が,上記計算を行うに当たって基礎とした類似同業者の抽出方法は,次のとおりである。 (ア)被告は,原告が納税地及び事業所を有する大田区及びその隣接区である世田谷区,目黒区,品川区内に所得税の納税地及び事業所を有し,かつ,本件各係争年分ごとに,次のaないしfの基準のすべてに該当する者を類似同業者として,別紙2及び3のとおり抽出した。 - 51 -aすし店を営む事業所得者(ただし,いわゆる回転すし店又は持ち帰り専門すし店を営む者を除く。)b所得税の申告を青色申告によっている者のうち青色事業専従者が一名の者c地代家賃及び給料賃金の支払いがある者d本件各係争年分ごとの米の仕入数量が,それぞれ次の範囲内である者(a)平成6年分については,1590キログラム以上6360キロ 事業専従者が一名の者c地代家賃及び給料賃金の支払いがある者d本件各係争年分ごとの米の仕入数量が,それぞれ次の範囲内である者(a)平成6年分については,1590キログラム以上6360キログラム以下(b)平成7年分については,2070キログラム以上8280キログラム以下e年を通じて上記aの事業を継続している者f次の(a)又は(b)のいずれにも該当しない者(a)災害等により経営状態が異常であると認められる者(b)更正又は決定処分がされている者のうち,次の①又は②に該当する者①当該処分について国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間を経過していない者②当該処分に対して不服申立てがされ,又は訴えが提起されて現在審理中である者(イ)被告は,上記抽出に当たり,本件各係争年分ごとにaないしc,e及びfの要件に該当する者すべてに対し,文書により個別に照会し,回答があった者のうち,米の仕入数量が上記dの範囲内にある者を類似同業者として抽出した。 ウ以上のとおり,被告の抽出した類似同業者は,いずれも原告と業種及び事業規模が類似し,事業所所在地も近接する個人事業者であり,災害等に- 52 -より経営状態が異常であると認められる者及び更正等がされている者のうち国税通則法等の規定による不服申立期間等を経過していない者又は当該処分に対して不服申立て中等の者を除いているのであるから,上記抽出基準は,原告の類似同業者を判別する上で合理的な基準というべきである。 エそして,上記抽出基準には,青色申告により所得税の申告を行っている者であることが設定されていることから,類似同業者の収入金額及び必要経費の額の算出根拠となる資料の正確性は担保されている。 オまた,上記類似同業者は,東京国税局長が,大田区,世田 の申告を行っている者であることが設定されていることから,類似同業者の収入金額及び必要経費の額の算出根拠となる資料の正確性は担保されている。 オまた,上記類似同業者は,東京国税局長が,大田区,世田谷区,目黒区,品川区を管轄する大森税務署,雪谷税務署,蒲田税務署,世田谷税務署,北沢税務署,玉川税務署,目黒税務署,品川税務署,荏原税務署の各税務署長に対し,上記抽出基準を示した上で,これに合致する類似同業者の売上金額等について報告を求め,これに対して,各税務署長が回答した報告書により,別表2及び3のとおりの類似同業者が抽出されたのであり,また,類似同業者における米の仕入数量については,「税務訴訟に関する資料の作成及び報告について(通達)」の(注)1に記載されているとおり,同通達の「別紙2」の「照会・回答書」を発送し,その回答書の記載内容に基づいて確認しているのであるから,被告による類似同業者の抽出過程に被告の恣意が介在する余地はない。 カ上記抽出基準により抽出された原告の類似同業者の件数についてみても,平成6年分が13件,平成7年分が5件であるところ,上記各件数は,同業者に通常存在する程度の営業条件等の個別性を捨象し,平均化するに足る件数というべきである。 キしたがって,被告の採用した推計方法は,原告の事業所得の金額を算出する方法として合理的なものである。 (3)原告の営むすし店の価格設定が低価格である旨の主張についてア原告は,原告の営むすし店がいわゆる回転すし店に匹敵する低価格であ- 53 -り,一般的なすし店を類似同業者とすることは,合理性に欠ける旨主張する。 イ同業者率による推計の場合には,業種,業態,事業所の近接性及び事業規模等の基本的な要因において類似同業者の抽出が合理的であれば,類似同業者間に通常存在する程度の個別 合理性に欠ける旨主張する。 イ同業者率による推計の場合には,業種,業態,事業所の近接性及び事業規模等の基本的な要因において類似同業者の抽出が合理的であれば,類似同業者間に通常存在する程度の個別的な営業条件の差異は,複数の類似同業者の平均値を求める過程で捨象し得ると考えられるところ,被告が本訴において抽出した類似同業者の抽出は合理的なものである。 また,推計課税は税務調査において納税者の所得金額を実額によって確認できない場合に,やむを得ず行われるものであって,被告が推計課税を行う際には,被告として把握可能な要件を抽出条件として類似同業者を抽出する以上のことはできないのであるから,原告が,平均値による推計自体を全く不合理ならしめるほど顕著な差異あるいは個別的事情があると主張するのであれば,原告において,それらの事情を具体的に主張し,客観的な証拠によって立証すべきである。 ウ本件において,原告は,原告の営むすし店は,いわゆる回転すし店に匹敵する低価格である旨主張し,これが考慮されるべき個別的事情と主張するもののようである。 しかしながら,原告は,自ら選んだ他のすし店のメニューを引き合いにして,当該メニュー記載の並ずし・上ずしなどの価格と本件店舗の並ずし・上ずしの価格とを単純に比較しているにすぎず,商品の品質,量及び種類等が同一か否かといった肝心な部分について何ら具体的な主張・立証をしていない。そもそも,原告は,他のすし店の経営について知らないのであるから,本件店舗の商品単価が低価格であるとの主張は,せいぜい原告の主観的な認識に基づくものにすぎず,到底採用できないといわざるを得ない。 また,類似同業者の抽出に当たり,商品の価格設定は,店舗の立地,営- 54 -業時間,定休日,客層,客の要望,ネタの品質,各品の売上構成割合,従業員の技 ず,到底採用できないといわざるを得ない。 また,類似同業者の抽出に当たり,商品の価格設定は,店舗の立地,営- 54 -業時間,定休日,客層,客の要望,ネタの品質,各品の売上構成割合,従業員の技術,設備状況,サービス内容及び店の経営方針等と並んで,各店の個別的営業条件の内容をなす一要素ではあるが,米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率は,上記で述べた店舗の立地,経営方針等の様々な要素が複合した結果として得られるものであり,すしの価格のみが決定的な要因となるわけではなく,価格に差異があったとしても,それは業者間に通常存在する程度の営業条件の差異にとどまり,斟酌することを要しない。 したがって,原告の上記主張には理由がない。 エなお,原告は,原告の米の仕入価額は他のすし屋の米の仕入価額と差異はないのであるから,すしの価格が低価格であれば,米1キログラム当たりの売上金額は当然低くなる旨主張する。しかし,そもそも,原告がどのような根拠をもって「原告の米の仕入価額は他のすし屋の米の仕入価額と差異はない」と主張するのか明らかではない上,具体的な米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率は,単に米の仕入値やすしの価格だけで決まるものではなく,その店の営業条件によって異なるものであって,米の仕入値が同じで,すしの価格が低価格であれば米1キログラム当たりの売上金額は当然低くなるとの原告の上記主張は失当である。 原告の主張(1)本件各課税処分時における処分理由(推計の根拠)の不存在推計課税の根拠については,所得税法156条が,「その者の財産若しくは債務の増減の状況,収入若しくは支出の状況又は生産量,販売量その他の取扱量,従業員数その他事業の規模」により事業所得の金額等を推計して,これをすることができると規定している。 被告は,本件各課 くは債務の増減の状況,収入若しくは支出の状況又は生産量,販売量その他の取扱量,従業員数その他事業の規模」により事業所得の金額等を推計して,これをすることができると規定している。 被告は,本件各課税処分の根拠として,原告の取引先に対する調査により把握した原告の取扱数量を基礎として,原告の本件各係争年分の事業所得の- 55 -金額及び本件各課税期間の消費税の課税標準額を推計したものであると主張しているが,いかなる取扱数量であるかを明らかにしていない。被告の行った本件各課税処分に係る所得金額は,本件異議決定におけるそれとの間に異常な開差が存在しており,また,本訴において被告が主張する売上金額とも著しく相違しており(例えば,平成6年分消費税の課税標準額についてみれば,本件各課税処分1億1287万8000円,被告が本訴において主張する課税標準額は6252万4000円である。),このような開差の存在に照らすと,本件各課税処分は,処分時において,所得税法156条の規定に依拠するものでなく,推計課税として不存在又は違法であるから,その余の点について判断するまでもなく,取り消されるべきである。 なお,課税処分は,当該処分段階において,税法の規定する構成要件事実の具体的確認の成果として示されるものであり,その確認の根拠は,処分を行った理由として示されなければならず(国税通則法84条4項,5項,89条2項,90条4項,93条2項,101条1項,111条2項等),税務訴訟における訴訟物は,当該理由によって導かれる処分の違法性にあるというべきところ,被告課税庁は,自らが立証責任を負う処分の理由の存在について具体的に主張,立証していないものである。 (2)推計の合理性の不存在被告の推計は,大田区,品川区,目黒区及び世田谷区内に存在したすし店の数に比較し, 自らが立証責任を負う処分の理由の存在について具体的に主張,立証していないものである。 (2)推計の合理性の不存在被告の推計は,大田区,品川区,目黒区及び世田谷区内に存在したすし店の数に比較し,抽出した類似同業者の数が余りに僅少であること,各税務署長に提出される青色申告決算書には米の仕入数量を記載する欄が存在せず,同申告書から類似同業者を抽出することは不可能であること,本件各課税処分時に抽出された類似同業者のうち特前所得率が低い者が被告の本訴において抽出した類似同業者から除かれていることなどから,被告の類似同業者の抽出には恣意が介在しており,被告の推計には合理性がない。 (ア)抽出過程についての疑問- 56 -被告が行ったとする原告の取引先に対する調査は,原告の販売量その他の取扱い量の調査に該当すると考えられるが,この調査の対象となった原告の取引先(米屋,酒屋,魚類卸商等)はいかなる業者を指すのか不明である。本件各課税処分に対する審査請求の際の審査において,被告は,原告の事業所得の金額を推計するに当たって用いた類似同業者は米の仕入数量が原告のそれの0.5倍以上2倍以下である者として,もっぱら原告の米の仕入量を中心として調査したとし,原告の米の仕入先がP7米店であると特定して原告の仕入量が平成6年分が3180キログラム,平成7年分が4140キログラムであったことを確認している。 しかし,原告の米の仕入先であるP7米店ことP8から,被告が平成6年分及び7年分の原告の米の仕入数量の回答を得たのは平成9年6月24日のことで,被告の原告に対する更正並びに賦課決定は被告がこの回答に接する以前の平成9年3月7日になされており,本件訴訟において被告が主張する推計の基礎となる調査及びその資料も明らかではないことから,本件更正並びに賦課処分決定の 正並びに賦課決定は被告がこの回答に接する以前の平成9年3月7日になされており,本件訴訟において被告が主張する推計の基礎となる調査及びその資料も明らかではないことから,本件更正並びに賦課処分決定の基礎となった推計の合理性には疑問があるといわざるを得ない。 (イ)もともと各税務署に提出される所得税の確定申告書及び青色決算書には月別売上高及び月別仕入高の記載欄はあるが,米の仕入量や仕入金額を記載する欄はない。これを把握するためには確定申告を行った各者に照会し,その回答を得なければならないはずである。被告もこのような照会とそれに対する回答により「類似同業者」を選定したものと思われるが,被告がどのような業態の者を選定の対象にしたのか,照会した者の数は各年度何件であったのか,原告の取引先に対する照会とこの照会との時間的前後関係はどのような関係になるのか,各年の全回答者からどのような基準で「類似同業者」を選定したのか等の点が明らかにされない限り,「類似同業者」を被告が選定した方法には合理性はない。 - 57 -(ウ)抽出過程の恣意性a被告が抽出した類似同業者は,抽出対象とした9税務署管内の類似同業者の抽出数としては余りにも数が少なく,また,各税務署長に提出される青色決算書には米の仕入量や仕入金額を記載する欄が存在せず,同申告書から当然に抽出することは不可能であることから,原告に対する類似同業者の抽出の過程に被告の恣意が介在する余地がある。 b抽出結果の問題点平成6年,平成7年及び平成11年の各当時(当年4月1日より翌年3月31日までの期間),被告が各税務署宛に報告を求めた大田区,品川区,目黒区,世田谷区内に存在したすし店の軒数は下記のとおりである。 記大田区品川区目黒区世田谷区平成6年 平成7年 被告が各税務署宛に報告を求めた大田区,品川区,目黒区,世田谷区内に存在したすし店の軒数は下記のとおりである。 記大田区品川区目黒区世田谷区平成6年 平成7年 平成11年 東京国税局の調査によれば,同局管内の平成12年3月31日までの申告又は更正・決定により納税額のある営業所得者の総数は33万5885人,このうち青色申告者の総数は25万0449人であり,その割合は74.56パーセントであって,この青色申告者総数が営業所得者総数に占める割合は所得額の増加に正比例している。ちなみに原告の平成7年分の申告所得額は609万2572円であり,この所得額の階層での青色申告者の割合は81.30パーセント(6,737÷8,286)となる。 上記4区がそれぞれ東京都内でも有数の住宅地域であることを考えると,それぞれ区内での営業所得者数のうち青色申告者が占める割合は東京国税局管内の上記の平均値より上回ることは十分に考えられ,すし店営業者数のうち青色申告者が占める割合も上記の平均値より上回ると考えて- 58 -大過はないと考えられる。 ところが,被告が本訴において類似同業者を抽出するに当たり行った調査(乙2)の結果によれば,大田区につき平成6年分4件,平成7年分4件(大森税務署につき平成6年分0件,平成7年分1件。雪谷税務署につき平成6年分0件,平成7年分0件。蒲田税務署につき平成6年分4件,平成7年分3件),世田谷区(世田谷税務署,北沢税務署,玉川税務署)につき,各年分とも0件,目黒区(目黒税務署)につき,平成6年分3件,平成7年分1件,品川区につき,平成6年分6件,平成7年分0件(品川税務署につき平成6年分5件,平成7年分0件,荏原税務署につき平成6 ,各年分とも0件,目黒区(目黒税務署)につき,平成6年分3件,平成7年分1件,品川区につき,平成6年分6件,平成7年分0件(品川税務署につき平成6年分5件,平成7年分0件,荏原税務署につき平成6年分1件)となっており,上記すし店の数からすれば,類似同業者に該当する者は相当数存在するはずであり,特に該当0件ということは考え難いことである。 被告が本件各課税処分時に選定した類似同業者のうち,平成6年分の業者J及び平成7年分の業者Eという特前所得割合の低い2名については,それぞれ報告者として選定されていない。乙2の1ないし9及び乙3の1ないし乙11の2によれば被告は平成11年12月2日から平成12年1月12日ないし14日までの間に調査のすべてを終らせたことがうかがわれる。すし店経営者にとっては,年末年始の最も多忙な時期に,当時より4年ないし5年前の米の仕入数量等の調査を税務署から協力依頼されたのである。各税務署にとっても同様に多忙な時期に当たっていたと思われる。このことも踏まえると,各税務署の協力依頼にもかかわらず,対象店舗のほとんどが,それに対応する回答をしなかったか,税務署自体が東京国税局の通達にもかかわらず事実上調査のために動かなかった可能性や,本件各課税処分時の資料だけを基に報告書を作成したり,特前所得割合の低い,その意味では原告にとって有利な結果となる上記J及びEを被告は報告書から除外してしまった可能性が考えられ- 59 -る。 さらに,平成6年分及び平成7年分の「同規模同業者率算定表(返戻後)」及び原告が上記審査請求事件の係属中に調査した資料によれば,平成6年分の類似同業者について,本件各課税処分で抽出された玉川署からの報告例(特前所得率5.01パーセント)は,本件裁決においては類似同業者として相当であると認められたにも 調査した資料によれば,平成6年分の類似同業者について,本件各課税処分で抽出された玉川署からの報告例(特前所得率5.01パーセント)は,本件裁決においては類似同業者として相当であると認められたにもかかわらず,通達による抽出段階では玉川署から報告されていないとして処理され,通達段階では「目黒署B」(特前所得率20.41パーセント),「品川署D」(同34.33パーセント)の2件が新たに抽出されていること,平成7年分の類似同業者について,通達により抽出された類似同業者5件すべてが本件各課税処分段階で抽出された類似同業者と一致しているが,本件各課税処分段階では抽出されていた特前所得率が8.52パーセントである品川署からの1例は,通達段階では報告されていないとして処理されていることが認められ,このように,被告が本訴において主張する,推計課税において,原告の所得率に影響する,特前所得率の低い類似同業者を排除し,特前所得率の高い類似同業者を新たに追加していることからも,本訴に際して被告が行った類似同業者の抽出過程には恣意が介在したことが推認される。 c「個人すし店業者の課税事績報告書」(乙3ないし11(各肢番号を含む。)に関する税務署職員作成の陳述書(乙14の1ないし9,乙15の1ないし9)の成立及び信用性について(a)「個人すし店業者の課税事績報告書」(乙3ないし11(各肢番号を含む。)。以下「本件課税事績報告書」という。)の作成の経緯について記載された乙14の1ないし9の陳述書(以下「乙14の各陳述書」という。)は,作成名義人が相違しているにもかかわらず,主要部分が1字1句すべて同一であるのは不自然で,その内容の信用性に- 60 -は重大な疑問がある。 (b)乙14の各陳述書のうち本件課税事績報告書の作成に関する中心的な内容(第3 かかわらず,主要部分が1字1句すべて同一であるのは不自然で,その内容の信用性に- 60 -は重大な疑問がある。 (b)乙14の各陳述書のうち本件課税事績報告書の作成に関する中心的な内容(第3項部分)によれば,本件課税事績報告書は,各税務署にそれぞれ保管されていることがうかがわれる「業種別名簿」,「確定申告書」,「決算書」,「更正・決定決議書」及び「不服申立て等整理簿」によって作成された旨が記述され,類似同業者を抽出する手法及び過程も共通の内容として記述されており,これらの事実は,陳述書の各作成名義人だけでなく,P9もその訟務専門官という担当職務からそれらを認識していたとみられる。 (c)結局,乙14の各陳述書は,その作成名義人の具体的な記憶に基づかなくても,P9訟務専門官(以下「P9専門官」という。)がその職務上の経験と知識に基づいて作成できる範囲の内容のものであり,各作成名義人は各自に送付された通達及び本件各課税事績報告書等を照合して案文に署名捺印しただけで,その成立も疑問といわざるを得ない。 (d)被告は,乙14の各陳述書の作成の経緯に関する陳述書(乙15の1ないし9。以下「乙15の各陳述書」という。)を提出しており,乙15の各陳述書の要旨は,①作成者らは平成16年10月中旬に東京国税局課税第一部国税訟務官室のP9専門官から上記報告書の作成の経緯について電話で質問され,回答したこと,②その後P9専門官から各自宛に「通達」及び「本件各課税事績報告書」の写し並びにそれぞれの「陳述書(案)」が送られてきたこと,③各作成名義人は送付されて来た資料を照合して「内容に違いがないこと」を確認して,署名,捺印してP9専門官に送付したこと,に集約することができ,字句の同一性はないものの,原告が指摘した乙14の各陳述書の信用性に対する されて来た資料を照合して「内容に違いがないこと」を確認して,署名,捺印してP9専門官に送付したこと,に集約することができ,字句の同一性はないものの,原告が指摘した乙14の各陳述書の信用性に対する疑問を払拭させるようなものではない。 - 61 -(e)乙14の各陳述書(第3項)によれば,「回転すし店又は持ち帰り専門のすし店を営む者を除くこと」及び「米の仕入数量が平成6年分については,1590キログラム以上6360キログラム以下の範囲内にある者,平成7年分については,2070キログラム以上8280キログラム以下の範囲内にある者」を抽出する方法としては,「上記(1)ないし(7)の要件のすべてに該当する者に対して」,「照会・回答書」を発送し,回答書を回収して確認したとのことである。ところで原告及び補佐人の日常的な経験によれば,この「照会・回答書」の送付対象となるような小規模なすし店では,経営者が管理している仕訳帳あるいは総勘定元帳等の帳簿書類には「取引年月日」,「取引相手先」,「勘定科目」,「金額」の記載はあっても,「米の仕入数量」の記載がなく,「仕入補助簿」を作成している者もほとんどないのが通例である。そのようなとき,仕入数量は,米店(仕入先)からの納品書や請求書又は仕入れの通い帳等によって,更には仕入先への問い合わせによって確認するしかないのである。そして,これらの納品書や請求書は日常的に作成されるので量は膨大となり,過年度分のものを手元に保管することはなく,倉庫等に保管しておくのが通常のやり方となっているのである。この発送,回収の作業はすし店の経営者にとっては最も多忙な年末年始の時期に実施され,調査時より4年ないし5年前の米の仕入数量の記載を求めているのである。すし店が米の仕入数量を確認する上記の実態に鑑みれば,調査を実施した すし店の経営者にとっては最も多忙な年末年始の時期に実施され,調査時より4年ないし5年前の米の仕入数量の記載を求めているのである。すし店が米の仕入数量を確認する上記の実態に鑑みれば,調査を実施した各税務署により発送から回収までの期間にそれぞれ相違があったはずである。また,発送数量と回収した数量の間に相違が存在していても不思議ではなく,その発送数と回収数との間の割合は各税務署によって相違があったはずである。 (f)ところが,乙15の各陳述書には,乙14の各陳述書がそれぞれ- 62 -作成者の記憶に基づいて作成された旨が記述されていながら,上記の疑問点については何1つ触れるところがなく,その点で,乙14の各陳述書には作成者各人の記憶に基づいて作成されたことをうかがわせる具体的な事実の記述が欠如しているといっても過言ではない。 d調査資料の不存在各税務署長に提出される青色決算書には米の仕入数量や仕入金額を記載する欄がなく,各税務署内部には,すし店を営む事業所得者の米の仕入数量や仕入金額に関する資料は存在しないから,存在しないものについて各税務署長が東京国税局長に回答することは不可能である。したがって,上級官庁である東京国税局の通達に応じて下級官庁である各税務署が回答したとの一事をもって,この回答が適正に行われたとか,各税務署での抽出の過程には恣意が介在しなかったということはできないはずである。それにもかかわらず,なお,被告が主張を維持するのであれば,各税務署が,青色申告による通常の手続では収集することのできない,すし営業者の米の仕入数量及び仕入金額を,どのようにして調査したのか,その過程と資料を明らかにすべきであり,それらが明らかにされない以上,税務署に存在しない資料に基づいてなされた回答に恣意が介在したことを否定することはでき び仕入金額を,どのようにして調査したのか,その過程と資料を明らかにすべきであり,それらが明らかにされない以上,税務署に存在しない資料に基づいてなされた回答に恣意が介在したことを否定することはできない。 (エ)裁決との関係平成6年分の類似同業者13件のうち11件は被告が本件異議決定までに抽出した類似同業者と同一の者であり,本訴提起後に当たり新たに抽出された類似同業者は2件に過ぎず,平成7年分の類似同業者5件はすべて被告が本件各課税処分時までに抽出した類似同業者と同一の者であるところ,本件裁決は,被告が抽出した類似同業者のうち平成6年分については7件を,平成7年分については4件を,それぞれ類似同業者として相当でない者として判断し,それらの者を推計の基礎から除外している。 - 63 -被告は,裁決が指摘する業態の相違について何ら説明をしないまま現在に至っており,被告が本訴提起後に抽出した類似同業者も,原告の業態とは異なっており,その結果,被告が本訴において抽出した類似同業者について,平成6年分については13件のうち7名,平成7年分については5件中4件が,それぞれ類似同業者として不適当な者として含まれていると断ぜざるを得ないから,被告の推計方法が合理的でないことは明らかである。 (オ)平均値算定に必要な件数の不足通達段階で抽出された平成6年分13件のうち11件が本件各課税処分段階での抽出例と一致しているが,このうち原告の類似同業者として相当であると認められる例は僅かに4件であり,平成7年分については5件のうち2件のみが相当性を有していることとなる。このような類似同業者の件数は,被告の主張する同業者に通常存在する程度の営業条件の個別性を捨象し,平均化するに足る件数には該当しないことは明らかである。 (カ)類似同業者の抽出方法の合理性 となる。このような類似同業者の件数は,被告の主張する同業者に通常存在する程度の営業条件の個別性を捨象し,平均化するに足る件数には該当しないことは明らかである。 (カ)類似同業者の抽出方法の合理性の欠如(価格設定の相違)被告は,類似同業者の抽出について,「すし店を営む事業所得者(ただし,いわゆる回転すし店又は持ち帰り専門すし店を営む者を除く。)」をその基準の一つとして主張しているように,すし店を営む者について,同じすし店であってもいわゆる回転すし店を除くなど,その業態によって所得率が異なることを認めている。原告の営んでいるすし店では,本件各課税処分当時も又現在でも,いわゆる回転すし店に匹敵する低価格ですしを提供してきている。原告店では並すし及び上すし(にぎりすし7個,巻きずし半分又は1本)を,本件各課税処分当時においては500円及び700円で販売し,現在でも600円及び800円の低価格を付けている(甲15の1ないし3)。これはいわゆる回転すし店(一皿2個で100円から120円程度。 とろ,赤貝,甘えびなどのすし種によっては一皿2個で150円から24- 64 -0円程度)と同様の価格である。特上すし1000円についても,そのすし種からすると回転すし店と同程度の価格となる(15の3にある「γすし1500円」のメニューは,本件各課税処分当時はなかった。)。なお,一般的なすし店の価格は,並すしで800円から1000円,上すしで1300円から2000円である。このような一般的なすし店を類似同業者とすることは,合理性に甚だしく欠けており,利益率の低い回転すし店を類似同業者とすることの方がまだ合理性があると言える。 (キ)すしの価格に関する被告の主張の不当性原告の平成6年分及び平成7年分の米の仕入数量については争いがないところであるが,原告の 転すし店を類似同業者とすることの方がまだ合理性があると言える。 (キ)すしの価格に関する被告の主張の不当性原告の平成6年分及び平成7年分の米の仕入数量については争いがないところであるが,原告の米の仕入価額は60キログラム当たり3万1830円ないし3万5880円であり,他のすし屋の米の仕入価額と差違はない。米の仕入値が同じであり,すしの価格が低価格であれば,米1キログラム当たりの売上金額は当然低くなる。 また,被告は,具体的な米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率は,単に米の仕入値やすしの価格だけで決まるものでなく,その店の営業条件によって異なるものであるとも主張するが,そもそも,その店の営業条件とは何を指すのか全く不明である上,本件店舗におけるすしの価格は低価格であると同時に,原告が同店舗で提供している他の飲食物(酒類及びさしみ類)についても低価格であったから,提供している飲食すべてが低価格である以上,米1キログラム当たりの売上金額も当然低くなるのであり,被告の主張は失当である。 第3争点(2)イ(原告による推計との比較における被告による推計の合理性の有無)について 原告の主張(1)原告の推計1(平成10年分の米の仕入数量及び平成10年分の原告の特前所得率に基づく各年分の所得金額の推計)について- 65 -ア原告は,平成10年分以降の所得税の申告につき青色申告によりたい旨の所得税の青色申告承認申請書を平成10年3月16日大森税務署長に提出し,同年12月31日までに,その申請につき承認又は却下の処分がなく,その日においてその承認があったものとみなされた(所得税法143条及び147条)。原告の平成10年分の所得金額及び課税標準額は,日々の売上等の入出金額を記録した現金出納帳を基に青色申告により所得税の申告を行って その承認があったものとみなされた(所得税法143条及び147条)。原告の平成10年分の所得金額及び課税標準額は,日々の売上等の入出金額を記録した現金出納帳を基に青色申告により所得税の申告を行っており,収入金額及び必要経費の額の算出根拠となる資料の正確性は担保されている。 イ原告は,平成10年分の米をすべて「P10」ことP8より仕入れた。 その数量は3420キログラムである(原告の平成10年分の米の仕入数量については,添付資料及び甲25の1ないし58で明らかとなっている。)。原告の同年の売上金額は,青色申告決算書のとおり4590万6663円であるから,原告の平成10年分の米1キログラム当たりの売上金額は1万3423円である。また,原告の平成10年分の特前所得金額は同じく578万5834円であるから特前所得率は12.60パーセント(小数点第3位以下四捨五入,以下同じ。)となる。 ウ原告の平成10年分の確定申告は,青色申告書添付の決算書に基づくものであり,その正確性も担保されている。原告は平成6年及び平成7年度から平成10年まで引き続き同一場所で事業を営んでおり,事業専従者も同じく引き続き一人である。また平成10年分の米の仕入数量は3420キログラムであり,平成6年度の米の仕入数量3180キログラム,平成7年度の米の仕入数量4140キログラムと大きな差はなく,原告の本人の事業形態,事業内容には変化はない。 エしたがって,本人比率による課税標準等の算定が最も合理的な推計方法であり,真実のそれに合致すべきものと推認すべきこととなる。 オ被告の主張について- 66 -(ア)被告は,推計の対象となっている年分は平成6年分及び同7年分の2年分であり,原告が本人比率による推計の基礎とした年分は平成10年分であって,その間には2年間の空白期間 について- 66 -(ア)被告は,推計の対象となっている年分は平成6年分及び同7年分の2年分であり,原告が本人比率による推計の基礎とした年分は平成10年分であって,その間には2年間の空白期間があり,少なくとも設備の劣化や社会情勢の変化による経営状況の変化は避けられないと何らの根拠もなく主張している。原告が所有している店舗設備の大部分は昭和51年開業当時のままである。2年の経過により,原告の経営状況を左右する設備の劣化は存在しない。また平成6年及び同7年から平成10年分の間に原告の米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率に影響を及ぼす社会情勢の大きな変化はみられない。 (イ)本件店舗におけるすし等の単価は,平成9年4月1日に改定されているが,これは平成9年4月1日から消費税3パーセントが消費税等として5パーセントに引き上げられたことによるものである。消費税等の引き上げは本来特前所得率に影響を与えないものである。消費税等の引き上げを超えて販売価格が引き上げられた場合には,米1キログラム当たりの売上金額は高くなるので,平成6年度及び同7年度の米1キログラム当たりの売上金額は原告の従来の主張より低くなることもあり得るが,本件店舗においてそのような事実はない。 (ウ)本件店舗の所在地において道路拡張工事があり,平成10年度には同店舗周辺の道路拡張がかなり進行していたが,当該工事は本件店舗の入口部分には全く影響はなく,店舗の立地条件に著しい影響はなかった。 なお,原告の平成10年分の年間の米の仕入数量は3420キログラムであり,平成6年分の米の年間仕入数量3180キログラム,平成7年分の米の年間仕入数量4140キログラムとのほぼ中程度であり,平成10年度と平成6年度及び平成7年度との間に米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率 米の年間仕入数量3180キログラム,平成7年分の米の年間仕入数量4140キログラムとのほぼ中程度であり,平成10年度と平成6年度及び平成7年度との間に米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率に大きな影響はなかったものである。 カ原告の推計1による所得金額及び納付すべき税額の計算- 67 -(ア)平成6年分の所得税a総所得金額457万8328円この金額は,原告には事業所得以外の所得がないため,原告の営むすし店に係る平成6年分の事業所得の金額である。その算出根拠は,下記(a)の売上金額から(b)の特前所得金額を算出し,この特前所得金額から(c)の事業専従者控除額を差し引いたものである。 (a)売上金額4268万5140円この金額は,原告の平成6年分の米の仕入数量3180キログラムに,原告の平成10年分の米1キログラム当たりの売上金額1万3423円を乗じて算出したものである。 (b)特前所得金額537万8328円この金額は,前記(a)の売上金額4268万5140円に,原告の平成10年分の特前所得率12.60パーセントを乗じて算出した金額である。 (c)事業専従者控除額80万0000円この金額は,原告の妻P2に係る所得税法57条3項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の事業専従者控除額である。 b所得から差し引かれる金額の合計額153万0505円c課税総所得金額304万7000円この金額は,上記aの金額からbの金額を差し引いた金額(国税通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた金額)である。 d課税総所得金額に対する税額30万9400円この金額は,上記cの課税総所得金額に所得税法89条1項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の税率を乗じた金額である。 e 金額)である。 d課税総所得金額に対する税額30万9400円この金額は,上記cの課税総所得金額に所得税法89条1項(平成6年法律第109号による改正前のもの)所定の税率を乗じた金額である。 e特別減税額6万1880円- 68 -この金額は,平成6年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条の規定に基づき,上記cの課税総所得金額に対する税額に100分の20の割合を乗じた金額である。 f納付すべき税額24万7500円この金額は,上記dの金額からeの金額を差し引いた金額(国税通則法119条1項の規定にもとづき100円未満の端数を切り捨てた金額)である。 (イ)平成7年分の所得税a総所得金額614万1974円この金額は,原告には事業所以外の所得がないため,原告の営むすし店に係る平成7年分の事業所得の金額である。その算出根拠は,下記(a)の売上金額から(b)の特前所得金額を算出し,この特前所得金額から(c)の事業専従者控除額を差し引いたものである。 (a)売上金額5557万1220円この金額は,原告の平成7年分の米の仕入数量4140キログラムに,原告の平成10年分の米1キログラム当たりの売上金額1万3423円を乗じて算出したものである。 (b)特前所得金額700万1973円この金額は,前記(a)の売上金額5557万1220円に,原告の平成10年分の特前所得率12.60パーセントを乗じて算出した金額である。 (c)事業専従者控除額86万0000円この金額は,原告の妻P2に係る所得税法57条3項所定の事業専従者控除額である。 b所得から差し引かれる金額の合計額226万8385円c課税総所得金額387万3000円- 69 -この金額は,上記aの金額からbの金額を差し引いた金額(国税通則法118条1項の規 る。 b所得から差し引かれる金額の合計額226万8385円c課税総所得金額387万3000円- 69 -この金額は,上記aの金額からbの金額を差し引いた金額(国税通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた金額)である。 d課税総所得金額に対する税額44万4600円この金額は,上記cの課税総所得金額に所得税法89条1項所定の税率を乗じた金額である。 e特別減税額5万0000円この金額は,平成7年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条の規定に基づき,上記dの課税総所得金額に対する税額に100分の15の割合を乗じた金額(最高限度額5万円)である。 f納付すべき税額39万4600円この金額は,上記dの金額からeの金額を差し引いた金額(国税通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた金額)である。 キ本件所得税各更正の違法性以上の推計によれば,平成6年分の所得税に係る総所得金額は457万8328円,納付すべき税額は24万7500円,平成7年分の所得税に係る総所得金額は614万1974円,納付すべき税額は39万4600円となり,原告の確定申告に係る納付すべき税額は,上記各金額をいずれも超えるから,本件所得税各更正は違法である。 ク原告の推計に基づく消費税の課税標準額及び納付すべき税額等の計算原告が本訴において主張する原告の本件各課税期間の消費税の課税標準額及び納付すべき税額等の計算根拠は,次のとおりである。 (ア)平成6年課税期間a課税標準額4144万1000円この金額は,原告の上記課税期間における課税資産の譲渡等の対価- 70 -の額(消費税法28条1項),すなわち,原告の事業所得に係る売上金額(総収入金額)4268万5140円に103分の100を乗じた金額であ 告の上記課税期間における課税資産の譲渡等の対価- 70 -の額(消費税法28条1項),すなわち,原告の事業所得に係る売上金額(総収入金額)4268万5140円に103分の100を乗じた金額である(国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた金額。以下同じ。)。 b課税標準額に対する消費税額124万3230円この金額は,上記aの課税標準額4144万1000円に,消費税法29条所定の税率100分の3を乗じたものである。 c仕入れに係る消費税額の控除額74万5938円この金額は消費税法37条1項の規定により,上記aの課税標準額に対する消費税額124万3230円に100分の60を乗じた金額である。 d限界控除税額21万2794円この金額は,消費税法40条1項(平成6年法律第109号による改正前のもの。)による限界控除税額である。 e納付すべき税額28万4400円この金額は上記bの金額からc及びdの金額を差し引いた金額である(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額。以下同じ。)。 (イ)平成7年課税期間a課税標準額5395万2000円この金額は,原告の上記課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額,すなわち,原告の事業所得に係る売上金額(総収入金額)5557万1220円に103分の100を乗じた金額である。 b課税標準額に対する消費税額161万8560円この金額は,上記aの課税標準額5395万2000円に,消費税法29条所定の税率100分の3を乗じたものである。 - 71 -c仕入に係る消費税額の控除額97万1136円この金額は,消費税法37条1項の規定により,上記bの課税標準額に対する消費税額161万8560円に100分の60を乗じた金額である。 d 1 -c仕入に係る消費税額の控除額97万1136円この金額は,消費税法37条1項の規定により,上記bの課税標準額に対する消費税額161万8560円に100分の60を乗じた金額である。 d限界控除税額原告の平成7年課税期間における課税売上高が5000万円以上なので適用がない。 e納付すべき税額64万7424円金額は上記bの金額から上記cの金額を差し引いた金額である。 ケ本件消費税各更正等の違法性について以上によれば,原告の本件各課税期間の消費税の課税標準額及び納付すべき税額は,下記のとおりとなり,原告の確定申告に係る納付すべき税額を超えるから,本件消費税各更正等は違法である。 (1)課税標準額平成6年課税期間4144万1000円平成7年課税期間5395万2000円(2)納付すべき税額平成6年課税期間28万4400円平成7年課税期間64万7400円(2)原告の推計2(米及び酒類の仕入数量に基づく推計-平成7年分)についてア原告自身の米及び酒類の仕入数量にもとづく売上金額の推計の合理性(ア)原告の平成7年分の米の仕入数量は4140キログラムであり,酒類の仕入数量は,原告の酒類仕入先である株式会社P11が作成した「得意先別商品別売上一覧表」のとおりである。なお,被告は本件各課税処分当時,担当のP3係官に指示してこのP11に反面調査を行って- 72 -「取引の概況説明」及び「売上状況報告書」を入手している。 (イ)原告の営むすし店の売上金額は,①すしの販売による売上(原告のすし店では出前は一切行っていない。),②酒類販売による売上,③おつまみ(刺身盛り合わせ等)の販売による売上の合計額がそのすべてである。 原告の平成7年分の仕入数量から原告の同年の売上金額を推計すると,下記(ウ)aないしcの合計のと ),②酒類販売による売上,③おつまみ(刺身盛り合わせ等)の販売による売上の合計額がそのすべてである。 原告の平成7年分の仕入数量から原告の同年の売上金額を推計すると,下記(ウ)aないしcの合計のとおり5510万8420円となり,仕入商品のロス等考慮すると,原告が審査請求において主張した日々の売上の記帳の合計額5455万5460円が正確であることが裏付けられる。 (ウ)また,原告のメニューによれば,一人前の単価は平均930円である。そして,本件店舗の年間営業日は平成7年度305日であり,一日当たり104人分のすしを販売したこととなり,本件店舗の席数は21席(ただし,席間が狭く,店が満席となっても17人程度しか座れない。)である。そして1日の顧客の来店は席の数の6倍強となっており,この6回転という回転率は通常のすし店より大幅に多く,回転すし店並みのものとなっている。 aすしの売上金額2954万0520円(計算は下記のとおり。)4,140㎏(米の年間仕入高)-328.32㎏(自家消費分)=3,811.68㎏3,811.68㎏×15/1.8(米1.8㎏で15人前)=31,764人前31,764人前×930円=29,540,520円b酒類の売上金額1255万0400円(下記(a)ないし(d)の合計)(a)ビール11,780本(年間仕入高)-610本(自家消費分)=11,170本11,170本×500円=5,585,000円(b)日本酒年間仕入高1.8リットル瓶525本300ミリリットル瓶1,140本- 73 -525本×15(1本で15人分)=7,875×500円=3,937,500円1,140本×700円=798,000円(c)サワー,焼酎年間仕入高1.8リットル瓶390本390本×15(1本で15人分 5(1本で15人分)=7,875×500円=3,937,500円1,140本×700円=798,000円(c)サワー,焼酎年間仕入高1.8リットル瓶390本390本×15(1本で15人分)=5,850×350円=2,047,500円(d)ジュース類年間仕入高912本912×200円=182,400円cつまみ類の売上1301万7500円(計算は下記のとおり。)上記bの酒類の総延べ本数はビールが1万1170本,酒が9015本,サワー5850本の計2万6035本であるが,原告の長年の営業経験により酒類2本について「つまみ」1品が注文されており,その単価は平均1000円である。 26,035本×1/2=13,017.5個のつまみ類の販売13,017.5×1,000円=13,017,500円なお,年間来店顧客数は上記aのすしの販売と同程度(3万1764人)であり,10人のうち4人がつまみ類を食したこととなり,昼の食事の売上げを考慮すると,つまみ類を注文する客数として十二分といえる。 イ以上によれば,原告の推計2は,被告の推計より合理性があるから,本件各課税処分のうち,平成7年分に係る処分は,原告の請求のとおり,取り消されるべきである。 被告の主張(1)原告の主張がそれ自体失当であること(推計1,2共通)ア推計課税は,課税標準を実額で把握することが困難な場合,税負担公平の観点から,実額課税の代替的手段として,合理的な推計の方法で課税標- 74 -準を算定することを課税庁に容認した実体法上の制度と解するべきであり,真実の所得を事実上の推定によって認定するものでないから,その推計の結果は,真実の所得と合致している必要はなく,実額近似値で足り,推計方法の合理性も,真実の所得を算定し得る最も合理的なものである必要は の所得を事実上の推定によって認定するものでないから,その推計の結果は,真実の所得と合致している必要はなく,実額近似値で足り,推計方法の合理性も,真実の所得を算定し得る最も合理的なものである必要はなく,実額近似値を求め得る程度の一応の合理性で足りると解される。 イしたがって,他により合理的な推計方法があるとしても,課税庁が採用した推計方法に実額課税の代替手段にふさわしい一応の合理性が認められれば,推計課税は適法というべきであり,それとの推計方法の優劣を争う主張は,主張自体失当と解される。 (2)原告の推計1(平成10年の米の仕入数量に基づく推計について(各年分))についてア原告は,平成10年の米の仕入数量が3420キログラムであることを前提として,原告の平成10年分所得税青色申告決算書(甲24。「平成10年分決算書」)に基づいて,平成10年分の米1キログラム当たりの売上金額及び特前所得率を算出しているところ,同年の原告の米の仕入数量が3420キログラムであることは何ら客観的な証拠で証明されていない。 そもそも,原告10年分「決算書」の「期首商品(製品)棚卸高②」欄は平成10年1月1日当初の在庫商品の有り高を記載すべきところ,同欄は空欄となっている。すし店において,年末に在庫商品であるネタ,米及び酒類等の飲み物を売り切って年初にこれらの商品の在庫がないとは考え難いところであり,この点からだけ見ても,平成10年分決算書は信用性に欠けるものといえる。 さらに,原告は,平成10年分決算書は,甲26「金銭出納帳」に基づき作成している旨主張するところ,給料賃金(専従者給与を除く)について,平成10年分決算書(853万5000円(「給料賃金」欄の金- 75 -額))と甲26(865万0775円(「科目」欄が「給料」,「雑給」,「アルバイト ろ,給料賃金(専従者給与を除く)について,平成10年分決算書(853万5000円(「給料賃金」欄の金- 75 -額))と甲26(865万0775円(「科目」欄が「給料」,「雑給」,「アルバイト」及び「賞与」の合計金額))とでは金額が相違している。 そればかりか,原告は,釣銭5万円を含め店舗内にある金銭を日々原告宅へ持ち帰る旨主張するが(原告本人293及び357),甲26の「差引残高」欄には「11月6日」(3229円)を始め現金残高が5万円を下回る日が散見され,また,仕入れに必要な金銭は,前日の売上金額の中から用意しておくとしながら,甲26の「7月4日」(前日現金残高9万4589円,当日仕入金額21万3664円)をはじめ,前日現金残高より仕入金額が多い日が散見されるなど,甲26及びそれに基づき作成されたとする平成10年分決算書の成り立ち及び記載内容の信ぴょう性には大いに疑問がある。 したがって,売上日報及び領収書等の原始記録により,その内容が真実のものであることが立証されない限り,平成10年分決算書に基づいた原告の推計方法に合理性を認めることはできない。 イまた,前後の年分等の金額を基礎にした推計が合理的であるためには,推計計算をしようとする年分等との間で,営業条件の同一性がなければならないところ,本件各係争年分及び本件各課税期間は,平成6年及び同7年であるから,平成10年を基準とすると3年ないし4年のずれがあり,この間に設備の劣化は当然発生しているし,加えて,この間の消費動向の悪化の度合いは通常以上のものがあったことは周知の事実であるから,その間の営業条件等が同一であることを当然の前提にすることはできない。 実際,原告は,原告の事業に係る給料賃金の支払金額について,平成10年は853万5000円(平成10年分決算書)であるのに対し ,その間の営業条件等が同一であることを当然の前提にすることはできない。 実際,原告は,原告の事業に係る給料賃金の支払金額について,平成10年は853万5000円(平成10年分決算書)であるのに対して,平成7年は1255万7750円(原告準備書面(7))と主張しており,各金額の信ぴょう性への疑問は措くとして,それらの年分の間に相当額の開差があることを原告が自認しているとみることができる。 - 76 -さらに,本件店舗は,平成12年4月に道路拡張工事により移転しているところ,平成10年においては,既にこの道路の拡張工事もかなり進行しており,平成6年及び同7年とは立地条件に変化があったことがうかがわれるほか,本件店舗における商品単価は,平成9年4月1日に変更したとされ,本件各係争年分におけるすし等の単価と,原告が本人比率による推計の基礎とした平成10年分におけるすし等の単価とは異なっているから,商品単価の変更後の年の指標を用いて変更前の年を推計することには合理性がないというべきである。 ウ以上のとおり,本件各係争年分と平成10年分において,原告本人の事業形態,事業内容等には明らかな変化があるのであるから,本件各係争年分の原告の事業所得の金額を算定するに当たって,平成10年分の原告の米の仕入数量等を基礎とする本人比率による推計に合理性はないことは明らかである。 (3)原告の推計2(米及び酒類の仕入数量等に基づく推計(平成7年分))についてア原告の推計2については,①米あるいは酒類の自家消費分や1人前の平均単価など,その計算根拠が明らかではないばかりか,②「原告の長年の営業経験により酒類2本について『つまみ』1品が注文されており,その単価は平均1,000円である。」などと主張するだけで,上記各金額の算定の基となる客観的な証拠に基づい いばかりか,②「原告の長年の営業経験により酒類2本について『つまみ』1品が注文されており,その単価は平均1,000円である。」などと主張するだけで,上記各金額の算定の基となる客観的な証拠に基づいて行われているとは認められない。 イのみならず,原告が主張する,日々の売上の記帳の合計額5455万5460円は,原告が本訴において主張する原告の平成7年分の売上金額5446万0970円とも一致せず,どのような根拠に基づく金額であるのか不明である上,原告には,原告の平成7年分の事業所得の金額等を実額で算定できる会計帳簿等が存しないのであるから,同年分における原告の米及び酒類の仕入先が,原告が主張する仕入先のみであることを客観的に- 77 -裏付ける証拠が存在せず,このように,推計の基礎数値である仕入数量すら,根拠の乏しい原告の一方的な主張にとどまっているのである。 ウしたがって,原告が主張する推計方法に合理性があるとは到底いえないことは明らかである。 第4争点(3)(原告の実額反証の成否-平成7年分)について 原告の主張(1)ア原告の妻P2は,原告が日々店から持ち返る売上日報並びに仕入及び必要経費の領収書に基づいて「所得計算資料,別冊(売上・経費日計表)」(以下「日計表」という。)に毎日の売上と仕入の金額並びに必要経費の金額を記帳してきた。また,月1回自動引落しされる水道光熱費等を通帳と照合し,給与等の支払額も「その他の必要経費」欄にそれぞれその金額を記載していた。現在原告の会計処理及び税務顧問を担当しているP6税理士がこの日計表を集計したものが「平成7年度月次集計表」(以下「集計表」という。)である。 イ原告の平成7年1月1日から同年12月31日までの間の売上の総額は5446万0970円となることから,集計表に基づき,原告の平成 ものが「平成7年度月次集計表」(以下「集計表」という。)である。 イ原告の平成7年1月1日から同年12月31日までの間の売上の総額は5446万0970円となることから,集計表に基づき,原告の平成7年1月1日から同年12月31日までの間に支出した経費の合計額(計算の詳細は下記のとおり。)を差し引くと,P2に係る専従者控除の控除前の原告の所得金額は,694万5572円となる。 記①仕入額(米穀,酒類,魚類,野菜等)24,491,390円②給料12,557,390円③家賃3,288,000円④水道光熱費2,473,637円⑤接待交際費765,688円⑥福利厚生費752,650円- 78 -⑦店舗・車輌修繕費577,356円⑧消耗品費554,195円⑨広告宣伝費360,319円⑩交通費307,620円⑪消費税277,900円⑫クリーニング代214,950円⑬諸会費174,000円⑭おしぼり代144,755円⑮新聞代111,400円⑯茶屋代(築地荷物保管費用)96,000円⑰ガス器具代33,990円⑱生ゴミ処理費用16,480円⑲雑費317,318円①ないし⑲の経費総合計47,515,398円ウ個人事業税額さらに,原告は,平成7年分の個人事業税15万8500円について,それぞれ各納期限(第一期分7万9500円は平成7年8月31日,第二期分7万9000円には平成7年11月30日)に納付をしておらず,さらに同年12月末日においても納付していないことから,平成7年度において租税公課(未払金)として必要経費に算入される。 エ減価償却費また,原告は,平成7年6月にニッサンセドリックを取得し,同年7月から事業の用に供してきたものであり,定額法により算出(計算の詳細は下記のとおり。) 金)として必要経費に算入される。 エ減価償却費また,原告は,平成7年6月にニッサンセドリックを取得し,同年7月から事業の用に供してきたものであり,定額法により算出(計算の詳細は下記のとおり。)したその取得価額35万6757円が必要経費に算入される。 記- 79 -(取得価額の内訳)①車輌本体価格(1A)3,950,000円②メーカーオプション価格(1B)240,000円③特別色価格(1C)30,000円④△①ないし③の合計額に対する値引額(1D)204,773円⑤付属品の価格(1F)38,000円⑥特別仕様価格(1H)68,400円⑦①ないし⑥の合計額に対する消費税額123,648円⑧割賦手数料530,600円合計4,775,875円なお,上記⑧の割賦手数料中には,購入代価に対する割賦期間中に生じる利息相当部分と割賦金回収のための費用等に相当する金額が含まれていると考えられるが,両者が明らかに区分されていない場合にはその利息及び費用等に相当する金額は当該資産の取得価額に算入されること(所得税基本通達37-28)から,⑧の金額が取得価額に算入される。 (減価償却費の計算)減価償却費の額は,上記取得価額477万5875円,償却費の計算の基礎となる金額429万8287円,耐用年数6年として計算した結果,35万6757円となる(4,298,287×0.166×6/12=356,757)。 オ事業所得の額原告の平成7年分の事業所得の金額は,上記イの額から,上記ウの個人事業税額,上記エの減価償却費,P2に係る専従者控除額86万円を差し引くと,557万0315円となる(6,945,572-158,500-356,757-860,000)。 (2)なお,原告のような零細な現金小売り業者においては,手提げ金庫等によ 額86万円を差し引くと,557万0315円となる(6,945,572-158,500-356,757-860,000)。 (2)なお,原告のような零細な現金小売り業者においては,手提げ金庫等によ- 80 -って,毎日の現金の入出金を管理することにより,日々の売上金額を確定・記録し,月に1度,その記録や領収書などを集計・区分して記帳を行い,これを年間集計してその年分の所得金額を算定することにより,適正な納税義務を果たすことができるのであって,「日々継続的に記録された会計帳簿」は必要ではない。 そして,本件各係争年分のうち,平成7年分の事業所得の金額について,原告が日々店から持ち返る売上日報並びに仕入れ及び必要経費の領収書に基づいて記帳したとする日計表,当該日計表を集計した集計表,車両運搬具の取得に係る資料(甲30の1及び2)及び個人事業税に係る滞納金額内訳書により,当該年分の事業所得の金額の実額主張を行い,原告の営業規模等の実態からして,その正確性は十分に担保されている。 もともと,どのような記録に基づき所得金額を算定するかは,各納税者の私的自治の範囲内のことであり,課税庁が関与することではない。被告が主張する「日々継続的に記録された会計帳簿」を必要とされる事業所得者は,所得税法143条に定める青色申告を選択した者に限られ,この者については所得税法148条に定める帳簿書類を備え付け,これに事業所得の金額に係る取引を記録し,かつ当該帳簿類を保存する義務が課せられている。なお,青色申告を選択した者については所得税法57条に規定する事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例や租税特別措置法25条の2に規定する青色申告特別控除などの特典が付与されている。当然事業所得者であれば青色申告を選択したほうが納付すべき所得税額は青色申告を選択しな 親族がある場合の必要経費の特例や租税特別措置法25条の2に規定する青色申告特別控除などの特典が付与されている。当然事業所得者であれば青色申告を選択したほうが納付すべき所得税額は青色申告を選択しない場合より少なくなるのであるが,上記会計帳簿の作成が充分に行えない者については青色申告を選択できないのである。以上述べたように所得税法は青色申告を特例として規定しており,被告が主張するような会計帳簿があることを前提に所得税法の各規定が定められているのではない。原告をはじめとした上記零細な現金小売り業者は,毎日の営業を開始する前に釣銭(原告の場合は5万- 81 -円)を用意し,日常的に使用している手提げ金庫,ざる,篭,引き出し等(以下「金庫等」という。)に収納する。営業中の売上金額及び必要経費もすべてこの金庫等に納めあるいはここから出金する。営業が終了した際,その時点でこの金庫等にある現金を数え,その金額にその日に支出した必要経費の金額(必要経費については,その金庫等に領収書を保管してある。)を加え,当日の営業開始前に収納した釣銭の金額を控除してその日の売上金額を確定し,記録を取っている。この売上金額から必要経費を控除した金額は事業主が自ら預かり,毎月の従業員給与,家賃等の支払にあて,更に自らの生活費も支出しているのである。そして月1度1か月間の売上金額を集計すると共に必要経費を領収書に基づいて科目別に区分し,更に水道光熱費や通信費等のように銀行預金から引き落とされる必要経費の金額を科目別に区分し記帳を行い,上記給与,家賃等についても記帳を行う。これを12か月行い年間の集計を行うと共に,所得税の申告に当たっては減価償却等の計上等を行い上記記録を完成させるのである。被告の主張する「日々継続的に記録された会計帳簿」によらなくてもこの方法によっ れを12か月行い年間の集計を行うと共に,所得税の申告に当たっては減価償却等の計上等を行い上記記録を完成させるのである。被告の主張する「日々継続的に記録された会計帳簿」によらなくてもこの方法によって適正な納税義務をはたすことができるのである。 原告は,安くてうまい大衆的なすし店の経営については訓練を受けてきたが,簿記や会計などを学んだり,携わったりしたことはなく,適正な納税義務を履行するために上記のような記録に基づき毎年の確定申告を行ってきたのである。被告の主張するような会計帳簿をすべての事業者に義務付けることは無理であり,また所得税法も上記で述べたとおりこのことを要求していないのである。 (3)以上より,原告の上記(1)の実額反証によって,被告の推計の合理性は否定されるから,本件各課税処分は取り消されるべきである。 被告の主張(1)実額反証における主張・立証については,推計課税の根拠事実の存否を真- 82 -偽不明なものとする反証に属するものではなく,所得実額の算定のための根拠事実に関する主張(総収入金額及び総必要経費)を本証として証明することのできるものでなければならず,実額反証を主張する納税者は,もともと所得計算の当事者であって,自己に有利な証拠を提出するのは容易であるから,その主張する実額が真実の所得金額に合致することを合理的な疑いをいれない程度にまで立証すべき責任を負うものである。 (2)したがって,原告が主張する実額反証が成立するためには,所得金額の計算に関する個々の取引事実(取引年月日,取引金額及び取引の内容等)を領収書等の原始記録により立証することが必要であるところ,原告が提出した証拠資料は,車両運搬具の取得に係る資料及び個人事業税に係る滞納金額内訳書以外は,単に各科目の取引金額を1日ごと又は1月ごとに集計 収書等の原始記録により立証することが必要であるところ,原告が提出した証拠資料は,車両運搬具の取得に係る資料及び個人事業税に係る滞納金額内訳書以外は,単に各科目の取引金額を1日ごと又は1月ごとに集計したと一方的に主張している日計表だけであり,個々の取引事実を立証する原始記録は全く提出されていない。 原告は,原告が日々店から持ち帰る売上日報並びに仕入れ及び必要経費の領収書に基づいて,日計表に毎日の売上げと仕入れの金額並びに必要経費の金額を記帳してきた旨主張するのであるから,少なくとも日計表に記載する基であるという売上日報及び領収書が証拠資料として提出されなければ,日計表に記載された内容が真実のものであるか否かについて確認できないことは明らかである。 そもそも原告は,日々継続的に記録された会計帳簿を作成していないことを認めており,日々現金による取引が多々行われるのが通常であるすし店の営業による日々の現金の入出金状況及び残高等を正確に記録したいわゆる現金出納帳がないのであるから,原告の事業所得の金額の実額を確認することは,およそ不可能というべきである。原告が証拠として提出した日計表及び集計表には,いずれも現金残高等の記載がないばかりか,そもそもどの取引が現金で行われたものであるのかも全く不明であり,到底信用するに値しな- 83 -い。 以上のとおり,原告は,事業に関して生じる収入及び支出のすべてについて日々継続的に記録された会計帳簿を作成しておらず,原告が主張する総収入金額が捕捉漏れのない原告のすべての収入であること,原告が主張するすべての必要経費が実際に支出されたこと,当該支出が事業収入と対応関係にあること又は事業との関連性を有することのいずれも,合理的な疑いをいれない程度にまで立証していないのであるから,原告の実額反証は認められない 費が実際に支出されたこと,当該支出が事業収入と対応関係にあること又は事業との関連性を有することのいずれも,合理的な疑いをいれない程度にまで立証していないのであるから,原告の実額反証は認められない。
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