昭和45(ネ)1119 小切手金請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和45年11月18日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      控訴費用は控訴人の負担とする。          事    実  控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し、金四五万円およびこ れに

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判決文本文3,035 文字)

主    文      本件控訴を棄却する。      控訴費用は控訴人の負担とする。          事    実  控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し、金四五万円およびこ れに対する昭和四四年四月二四日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を 支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決ならびに仮 執行の宣言を求め、被控訴代理人は「控訴棄却」の判決を求めた。  第一、 主張 (控訴代理人の陳述)  (一) 控訴人は被控訴人振出の別紙目録記載の小切手一通(以下本件小切手と いう)を現に所持するものであるが、昭和四四年四月一六日、控訴人と被控訴人と の間でこの小切手に関して、次のとおりの和解をした。  (1) 被控訴人は控訴人に対して金五五万円の支払義務あることを認め、即日 金一〇万円、同月二三日金四五万円を支払う。  (2) 被控訴人が右の支払を終えた場合には控訴人は本件小切手を被控訴人に 返還する。  (二) 右約旨に従い被控訴人は金一〇万円を支払つたが残金四五万円の支払を しない。  (三) よつて控訴人は被控訴人に対し金四五万円とこれに対する弁済期の翌日 である昭和四四年四月二四日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による損害 金の支払を求める。  (なお控訴人が原審においてした主たる請求《小切手金請求》は、当審において 被控訴代理人の同意を得て取下げられた。)  (四) 被控訴人の抗弁事実中、控訴人と訴外Aとが賭碁をしその為同訴外人が 控訴人に対し賭金一五〇万円を支払わねばならなくなつたことは認めるが、右訴外 人がその支払に窮し被控訴人に実情を打ちあけて本件小切手を借り受けこれを控訴 人に交付したことは知らない。  和解契約は権利の存在について存する争いをやめるためになされるもので、その 本来的な社会的機能は「この紛争 に窮し被控訴人に実情を打ちあけて本件小切手を借り受けこれを控訴 人に交付したことは知らない。  和解契約は権利の存在について存する争いをやめるためになされるもので、その 本来的な社会的機能は「この紛争の止揚」という目的が達成されてこそ発揮され る。  本件和解契約において被控訴人が控訴人に対して承認した金五五万円(うち金一 〇万円支払済)が本件小切手金の減額によるものであるか、或はまた和解金として 新に創設されたものであるかにかゝわりなく、また本件小切手債権の取得が不法の 契約によるものであつたとしてもこれによつて直ちに本件和解契約を無効とすべき ものではない。これに加えるに被控訴人は本件小切手が不法原因にもとづき控訴人 の取得するところとなるであろうことを承知の上自らこれを振出し、かつその予期 通りの経過を経て紛争が生じたものであることを十分了知して本件和解契約を締結 したものであつて、その間になんらの錯誤も存しないばかりか、紛争終結を意欲し て前記支払義務をあえて承認したものであるから本件和解契約にはなんらの瑕疵も 存せず右契約は有効である。昭和一三年一〇月六日大審院判決の説くところも正に ここにあるのである。  (被控訴人の陳述)  (一) 控訴人主張の請求原因事実はすべてこれを認める。  (二) 抗弁として訴外Aは控訴人と賭碁をし、その為、右訴外人は控訴人に対 し金一五〇万円を支払はねばならなくなり、その支払に窮した訴外人は被控訴人に 実情を打ちあけて本件小切手を借り受けこれを控訴人に交付した。この小切手金支 払について控訴人主張の和解契約がされたものであつて和解契約の前提となつた小 切手金請求は権利の濫用として許されず、これを前提とする和解契約は無効であ る。  民法六九六条は権利の存否につき、後日これに反する確証がでた場合の規定であ つて、本件のように不法の原因 前提となつた小 切手金請求は権利の濫用として許されず、これを前提とする和解契約は無効であ る。  民法六九六条は権利の存否につき、後日これに反する確証がでた場合の規定であ つて、本件のように不法の原因によつて生じた小切手譲渡行為について和解が成立 した場合、右の不法の原因を確証と同様に解し和解を有効と解することは、社会秩 序の維持を目的とする法の精神に反することが明らかで、かゝる解釈は許されな い。  第二、 証拠(省略)          理    由  一、 控訴人が請求原因として主張する事実は当事者間に争がない。  二、 被控訴人は本件和解契約は無効であると主張するので判断する。  <要旨>控訴人と訴外Aが賭碁をした結果、同訴外人が控訴人に対し賭金一五〇万 を支払わねばならなくな</要旨>つたことは当事者間に争いがなく、本件小切手は右 訴外人が賭金支払のため被控訴人にその実情を泣訴して借り受け控訴人に交付した ものであることは、原審証人Aの証言、原審における被控訴人B本人尋問の結果お よび成立に争のない甲第一号証、右本人尋問の結果真正に成立したものと認められ る乙第一号証を総合してこれを認めることができる。そして、右証人の証言および 右本人尋問の結果によると、その後本件小切手金の支払につき、控訴人は本件小切 手が右の経緯によつて振出されたものであることを知りながら、被控訴人と折衝の 結果本件和解契約に及んだものであることが認められる。  以上の事実関係からすると、本件和解契約はたとえ当事者間に争いのある法律関 係を互譲によつて確定する目的にいでたものであつても、これを有効な和解契約と 認めるわけにはいかない。何故ならばもともと公序良俗に違反する無効の債務負担 行為に基づく債務につき、弁済のために小切手が振出され若しくは交付されたから といつて、右債務の反公序良俗性が払 な和解契約と 認めるわけにはいかない。何故ならばもともと公序良俗に違反する無効の債務負担 行為に基づく債務につき、弁済のために小切手が振出され若しくは交付されたから といつて、右債務の反公序良俗性が払拭され有効な債務となり得べきものではな く、また右反公序良俗性の故に無効な債務を弁済するため振出し或は交付された小 切手上の債務につきその弁済の限度方法を定めるにすぎない和解が成立したとして も、(それが確認的にされたものと解すると創設的なものと解するとを問わず、) 右和解は実質的に見て控訴人をして賭博による金銭給付を被控訴人から受けさせる ことを目的としたものにほかならず、この点においてそれ自体公序良俗に違反し無 効であることを免れないといわなければならない。控訴人引用にかかる大審院判例 の見解は当裁判所の採らないところである。それ故、右和解の有効であることを前 提とする控訴人の本訴請求は棄却を免れず、これと結論を同じくする原判決は結局 正当である。  よつて民訴法三八四条に従い本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担について同法第 九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。  (裁判長裁判官 川添利起 裁判官 荒木大任 裁判官 田尾桃二)  別 紙  小切手目録  額   面    金一〇〇万円  振 出 人    被控訴人  振 出 日    昭和四四年三月十三日  支 払 地    東京都渋谷区  支 払 人    第一相互銀行渋谷支店

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