本件は、自動車賃貸業者である控訴人が、第三者に賃貸した自動車が被控訴人経営の無人駐車場に放置されたことから、控訴人が自動車の引渡しを求めた事案である。被控訴人は、駐車料金未払を理由に引渡しを拒否し、留置権を主張した。主要な争点は、控訴人の損害及び被控訴人の留置権の成立要件であった。裁判所は、控訴人の損害額を認めつつも、被控訴人の留置権が成立すると判断し、控訴人の請求を棄却した。判決の結論として、控訴人の控訴は棄却され、控訴費用は控訴人の負担とされた。
主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,別紙物件目録記載の自動車を引き渡せ。 (3) 前項の引渡しの強制執行が功を奏しないときは,被控訴人は,控訴人に対し,181万円を支払え。 (4) 被控訴人は,控訴人に対し,32万2500円及び平成12年7月30日から別紙物件目録記載の自動車を控訴人に引渡すまで1日当り8000円の割合による金員を支払え。 (5) 被控訴人の請求を棄却する。 (6) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 (7) 仮執行の宣言 2 被控訴人主文と同旨第2 事実関係本件は,自動車賃貸業者である控訴人が,第三者に自動車を賃貸したところ,第三者がこれを被控訴人経営のパークロックシステムの無人駐車場に放置したため,被控訴人から連絡を受け,控訴人がその引渡を被控訴人に求めたのに対し,被控訴人が第三者に対する駐車料金等請求権を被担保債権とする留置権を主張してこれを拒んだことから,控訴人が被控訴人に対し,自動車の引渡し及び損害賠償等を求め,被控訴人は,上記留置権の確認を求めた事案の控訴審である。 1 争いない事実等(甲1ないし6,甲7,8の各1,2及び弁論の全趣旨)(1) 控訴人は,自動車賃貸を業とする株式会社であり,別紙物件目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)を所有している。 (2) 控訴人は,平成12年5月10日,Aに対し,本件自動車を,賃料を1万6000円,賃貸期間を同日午前11時30分から同月12日午前11時30分までとの約定 車」という。)を所有している。 (2) 控訴人は,平成12年5月10日,Aに対し,本件自動車を,賃料を1万6000円,賃貸期間を同日午前11時30分から同月12日午前11時30分までとの約定で,貸し渡し,その後,控訴人とAは,賃貸期間を同月17日午前1時まで延長した。 (3) Aは,同月17日午前1時が経過しても,控訴人に本件自動車を返還しなかった。 (4) 控訴人は,同年6月16日,被控訴人から,本件自動車が被控訴人経営の名古屋市a区b町内のNPC名古屋椿町パーキング駐車場(以下「椿町駐車場」という。)に駐車してある旨の連絡を受けた。 (5) 同日,控訴人は,被控訴人に対し,本件自動車の引渡しを求めたところ,被控訴人は,本件自動車の駐車料金が未払であり同料金の支払がなければ本件自動車の引渡しはできない旨回答し,控訴人に対し同料金請求権を被担保債権とする留置権を主張した。 2 争点1(控訴人の損害等について)(1) 控訴人の主張ア本件自動車の時価は181万円である。 イ被控訴人が本件自動車を引渡さないことにより,控訴人は,本件自動車の賃料相当の損害を被っている。 平成12年6月当時の控訴人の本件自動車の賃貸料は,賃貸期間4日目から1日につき7500円であり,同年7月30日に改訂した同日以降の賃貸料は,賃貸期間4日目から1日につき8000円である。 したがって,控訴人の損害額は,同年6月17日から同年7月29日まで43日分の32万2500円,同月30日からの1日当り8000円である。 ウよって,控訴人は,被控訴人に対し,所有権に基づき本件自動車の引渡請求をし,同引渡しの強制執行が功を奏しない場合の本件自動車時価相当損害金181万円の代償請求をするとともに,不法行為によ ウよって,控訴人は,被控訴人に対し,所有権に基づき本件自動車の引渡請求をし,同引渡しの強制執行が功を奏しない場合の本件自動車時価相当損害金181万円の代償請求をするとともに,不法行為による損害賠償請求として,平成12年6月17日から同年7月29日までの賃料相当損害金32万2500円及び同月30日から上記引渡しまでの1日当り8000円の割合による同損害金の支払を求める。 (2) 被控訴人の主張ア (1),ア,イについては不知。 イ同ウについては争う。 3 争点2(駐車料金等請求権を被担保債権とする留置権について)(1) 被控訴人の主張ア Aは,平成12年6月13日午後4時,椿町駐車場に本件自動車を駐車させ,下記のとおりの約定で,被控訴人とAの間に,駐車場利用契約が成立した。 利用時間最大48時間(2日を超えて利用できない)料金午前6時から午後12時まで20分当り100円午後12時から午前6時まで30分当り100円支払駐車自動車出庫時イ Aは,同月15日午後4時の最大利用時間を経過しても,本件自動車を引取らないので,上記駐車場利用契約は期間満了で終了した。 ウ被控訴人は,椿町駐車場の駐車料金相当額が嵩むので,同月19日,駐車料金が安い被控訴人経営の中村公園駐車場に,本件自動車をレッカー移動して,現在まで駐車させている。 中村公園駐車場の駐車料金は,午前8時から午後12時まで30分当り100円,午前0時から午前8時まで60分当り100円であり,同年8月25日に改訂された同日以降の駐車料金は,午前8時から午後12時まで60分当り100円,午前0時から午前8時まで120分当り100円である。 エ Aが,被控訴人に対し, 分当り100円であり,同年8月25日に改訂された同日以降の駐車料金は,午前8時から午後12時まで60分当り100円,午前0時から午前8時まで120分当り100円である。 エ Aが,被控訴人に対し,平成13年4月23日までに支払うべき債務は下記のとおり合計79万9400円である。 (ア) 平成12年6月13日午後4時から同月19日午後2時50分までの椿町駐車場駐車料金及び駐車料金相当損害金 3万9200円(イ) レッカー移動代金 1万0500円(ウ) 同月19日午後3時30分から同年8月24日午後12時までの中村公園駐車場駐車料金相当損害金 26万5700円(エ) 同月25日から平成13年4月23日までの同駐車場駐車料金相当損害金 48万4000円オ被控訴人は,平成12年6月13日午後4時ころ,Aが本件自動車を椿町駐車場に駐車させた時から,本件自動車を占有している。 カすなわち,本件椿町駐車場利用契約は,いわゆるパークロックシステムの駐車場であり,利用者が自動車を指定の駐車スペースに駐車させると,センサーが感応し,自動的にロック板が立ち上がり車体が移動できないようになり,利用者が同所に設置されている精算機に表示された駐車料金を投入すると,自動的にロック板が元に戻りロックが解除されるというものである。したがって,被控訴人の支配領域内である特定の場所に置かせた自動車を自由に移動することができないようにしており,たんなる駐車場所の時間貸しではなく,駐車自動車の管理や保管をともなうものであって,被控訴人が本件自動車を占有していることは明らかである。 キ上記エ,(ア)ないし(エ)の請求権は,本件自動車についての駐車場利用 間貸しではなく,駐車自動車の管理や保管をともなうものであって,被控訴人が本件自動車を占有していることは明らかである。 キ上記エ,(ア)ないし(エ)の請求権は,本件自動車についての駐車場利用契約から生じたものであり,被控訴人が占有する本件自動車に関して生じた債権であるから,民法295条の留置権の被担保債権となるものである。 クよって,被控訴人は,民事留置権に基づいて,控訴人に対し,控訴人の本件自動車の引渡しを上記被担保債権の支払を受けるまで拒むとともに,上記留置権を有することの確認を求める。 (2) 控訴人の主張ア (1),アないしエについては不知。 イ同オについては争う。なお,被控訴人が,平成12年6月16日から本件自動車の占有をしていることは認めるが,その占有は,同日,控訴人が本件自動車の所有権に基づいて引渡し請求をしたのに対し,控訴人が所有者であることを知りながら,これを拒むことにより被控訴人が占有を取得したものであるから,不法行為によってその占有を始めたものであり,民法295条2項に該当し,留置権は成立しない。 ウ同カについては,椿町駐車場が主張のごときパークロックシステムの駐車場であることは認めるが,その余は争う。 同駐車場利用契約は,自動車の管理や保管をともなうものではなく,パークロックシステム駐車場の駐車場所の賃貸借契約にすぎない。 すなわち,同駐車場は,通常無人であり,パークロックシステムの装置やこれに関連する構造物はあるが,管理人施設のないもので,駐車車両を雨風から防ぐ設備もないこと,利用者との契約内容である駐車場管理規定によれば,被控訴人は,駐車車両の盗難,滅失,損傷等の損害につき責任を負わない,駐車場内に設置された設備,備品等に接触,衝突事故による損害,車両内 もないこと,利用者との契約内容である駐車場管理規定によれば,被控訴人は,駐車車両の盗難,滅失,損傷等の損害につき責任を負わない,駐車場内に設置された設備,備品等に接触,衝突事故による損害,車両内に留置された物品に関する損害等につき,被控訴人は責任を負わないとなっており,被控訴人は,利用者に対し保管責任を全く負わないこと,Aは本件自動車の鍵をかけたままであり,被控訴人に同自動車の保管を委ねていない等のことから,被控訴人は,本件自動車の管理,保管をしていない。 また,駐車場法は,路外駐車場管理者の駐車車両保管義務について,利用者保護のため一定の責任を定めているが,本件のごとき無人のパークロックシステム駐車場は,上記のとおり管理規定で保管責任を負わない旨規定している。これは,駐車場法の対象となる駐車場が,駐車車両を占有することから保管義務を負うことになっているのに対し,本件のごとき駐車場は駐車車両の占有がないことから,同法の対象駐車場ではないものとして扱われているからである。 さらに,パークロックシステムは,駐車者以外の者でも駐車料金を投入しさえすればこれを解除できるもので,駐車車両を管理する装置ではなく,駐車料金を管理する装置にすぎない。 したがって,被控訴人は,上記平成12年6月16日に引渡しを拒むまで,本件自動車の占有をしていない。 エ同キについては争う。 すなわち,民法295条において被担保債権として規定されている「其物ニ関シテ生シタル債権」とは,「その物自体から生じた債権」か「物の返還請求権と同一の法律関係等から生じた債権」であることを要するとされているが,被控訴人の上記エ,(ア)ないし(エ)の請求権は,被控訴人が占有したと主張する本件自動車自体から生じた債権ではなく,本件自動車の返還請求権と同一の法 ら生じた債権」であることを要するとされているが,被控訴人の上記エ,(ア)ないし(エ)の請求権は,被控訴人が占有したと主張する本件自動車自体から生じた債権ではなく,本件自動車の返還請求権と同一の法律関係等から生じた債権ともいえないから,上記請求権を被担保債権とする留置権が成立することはない。 オ同クについては争う。 4 争点3(民法196条1項の費用償還請求権を被担保債権とする留置権について)(1) 被控訴人の主張仮に争点2の留置権が認められない場合ア被控訴人は,本件自動車を上記3,(1)のとおり占有している。 イ同(1),エ,(ア)ないし(エ)の請求権は,被控訴人が本件自動車の保存のために要した費用である。 すなわち,被控訴人が,椿町駐車場において本件自動車を保管し,レッカー移動して中村公園駐車場へ駐車させたのは,本件自動車の保管の継続と利用者の費用負担軽減となり,また,被控訴人が,A以外の者に自動車を駐車させていたら得られた利益を喪失して,本件自動車を保管していたことになるから,上記被控訴人の請求権は,本件自動車の保存のために要した金額であり,民法196条1項の費用償還請求権に該当し,被控訴人は,控訴人に対し,これを被担保債権とする留置権を有する。 ウよって,被控訴人は,控訴人に対し,上記被担保債権の支払を受けるまで本件自動車の引渡しを拒むとともに,上記留置権を有することの確認を求める。 (2) 控訴人の主張ア (1),アについては上記3,(2)のとおり争う。被控訴人は,平成12年6月16日までは,本件自動車を占有していないし,その後の占有も不法行為により始めた占有であるから,上記のとおり留置権は成立しない。 イ (1),イについては争う。被控訴人が主 人は,平成12年6月16日までは,本件自動車を占有していないし,その後の占有も不法行為により始めた占有であるから,上記のとおり留置権は成立しない。 イ (1),イについては争う。被控訴人が主張する費用は,被控訴人が駐車料金及び料金相当損害金を回収する目的から,自己の都合で椿町駐車場の駐車スペースを空けて自己の負担を軽減し,控訴人に対し,本件自動車の引渡しを拒否するための費用にすぎず,本件自動車の保存のために要したものではなく,民法196条1項の費用償還請求権には該当しない。同条の趣旨は,公平上,占有回復者の不当な利得を占有者に返還させることであるところ,被控訴人が本件自動車をレッカー移動して中村公園駐車場へ駐車させなければ,控訴人は,直ちに本件自動車を回収したのであるから,被控訴人が本件自動車の占有を継続していることにつき,控訴人の利得はない。被控訴人が,A以外の者に駐車させて得られるべき利益を喪失した旨の主張も理由がなく,失当である。 ウ (1),ウについては争う。 5 争点4(同時履行の抗弁権の類推適用について)(1) 被控訴人の主張仮に留置権の主張が認められない場合ア被控訴人は,Aに対し,上記駐車場利用契約の債務不履行により,上記3,(1),エ,(ア)ないし(エ)の支払を受けるのと引換えに本件自動車を引渡す旨の同時履行の抗弁権を有している。 イ被控訴人は,本件自動車の所有者である控訴人に対しても,Aに対する同時履行の抗弁権の類推適用により,上記支払を受けるのと引換えに本件自動車を引渡すものとすることができる。 (2) 控訴人の主張ア (1),アについては争う。 イ (1),イについては,同時履行の抗弁権は,契約当事者でない控訴人に対抗できないものであるから,被控訴人の主 ることができる。 (2) 控訴人の主張ア (1),アについては争う。 イ (1),イについては,同時履行の抗弁権は,契約当事者でない控訴人に対抗できないものであるから,被控訴人の主張は失当である。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について甲9,10の1,2及び弁論の全趣旨によれば,上記第2の2,(1),ア,イの各事実が認められ,これに上記第2の1の争いない事実等において認定した事実を加えると,被控訴人の留置権の抗弁が認められない限り,控訴人は,被控訴人に対し,第2の2,(1),ウのとおり所有権に基づく本件自動車の引渡し等の請求権があると認められる。 2 争点2について(1) 甲2,5,6,乙1ないし6及び弁論の全趣旨によれば,上記第2の3,(1),アないしウ記載のとおり,平成12年6月13日午後4時,Aが椿町駐車場に本件自動車を駐車させ,被控訴人とAとの間に,同(1),ア記載の内容で同駐車場利用契約が成立したこと,同月15日午後4時を経過してもAが本件自動車を引取らなかったことから,駐車場の利用最大時間満了により,同駐車場利用契約は終了したこと,本件自動車はそのまま同駐車場に駐車されていたが,同月19日午後2時50分,被控訴人によりレッカー移動され,同日午後3時30分から現在に至るまで,椿町駐車場より駐車料金が低額な,被控訴人経営の中村公園駐車場に駐車させられていること,同駐車場駐車料金は,上記第2の3,(1),ウのとおりであることが,それぞれ認められる。 (2) 以上の事実によれば,椿町駐車場利用契約における被控訴人の義務は,主に本件自動車を駐車スペースに駐車させて,Aに利用させるものであり,Aの義務は,駐車場利用時間に応じた駐車料金を支払い,利用最大時間満了までに本件自動車を同駐車場から出して駐 る被控訴人の義務は,主に本件自動車を駐車スペースに駐車させて,Aに利用させるものであり,Aの義務は,駐車場利用時間に応じた駐車料金を支払い,利用最大時間満了までに本件自動車を同駐車場から出して駐車スペースを空けるものであると解されるところ,被控訴人が契約上の義務を履行しているのに対し,Aは上記のとおりその義務を履行していないことが認められる。 したがって,Aは,被控訴人に対し,平成12年6月13日午後4時から利用時間満了時である同月15日午後4時までの駐車料金及びその後同月19日午後2時50分本件自動車が椿町駐車場よりレッカー移動されるまでの駐車料金相当損害金の合計3万9200円の支払義務がある。また,同駐車場利用契約には,利用時間経過後も駐車料金を支払わずに駐車を続けた場合,被控訴人は,本件自動車をレッカー移動し,適宜の方法でこれを保管することができる旨の暗黙の合意が含まれていると解されるので,Aは,上記不履行により,被控訴人に対し,本件自動車のレッカー移動代金1万0500円及び同月19日午後3時30分から平成13年4月23日までの中村公園駐車場駐車料金相当損害金74万9700円(上記第2の3,(1),エ,(ウ)及び(エ)の合計額)の支払義務があるものと認められる。 (3) 上記(1)掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 椿町駐車場は,いわゆるパークロックシステムの駐車場であり,公道に接した路外駐車場で,平坦な駐車場敷地に車両1台分ずつの駐車スペースが白線や黄色の金属構造物で明確に区分けされ,各駐車スペースは,車両出入口部分を除いた三方を金属構造物や隣接建物の壁面により閉鎖し,駐車車両を出入口部分以外からは移動できないようにするとともに,各駐車スペースの出入口部分には,ロック板が埋め込ま 車スペースは,車両出入口部分を除いた三方を金属構造物や隣接建物の壁面により閉鎖し,駐車車両を出入口部分以外からは移動できないようにするとともに,各駐車スペースの出入口部分には,ロック板が埋め込まれていて,車両が駐車スペースに入り終わると,センサーが働き自動的にロック板が立ち上がって出入口部分を塞ぎ,駐車車両の移動ができないようにするものである。 同駐車場には,被控訴人が管理者であることやパーキング利用案内,その他駐車場管理規定が記載された表示板及び料金集中精算機,端末制御機等が設置されていて,駐車場利用車両の駐車スペースへの駐車,ロック板の立ち上がりによる同スペース内での車両の固定,駐車料金の表示,料金精算機への料金投入による料金の受領及びロック板が元の状態に戻って駐車車両が駐車場から出るまでの,同駐車場の利用を,利用者が上記案内板の指示に従って駐車させ,料金を機械精算することにより,管理人の立会なしで行うことができるものである。そして,管理者である被控訴人は,駐車料金の回収や駐車車両,設置構造物等の確認等のために,従業員等により適宜駐車場の巡回をして利用者の適正な利用を管理していたもので,本件自動車については,その巡回の際に利用時間を経過して駐車していることが発見され,上記のごとく控訴人に連絡されたものである。 (4) 以上の事実によれば,平成12年6月13日午後4時,Aが被控訴人の管理する椿町駐車場に本件自動車を駐車させ,当該駐車スペース出入り口のロック板が立ち上がり,同自動車が同駐車スペース内に固定された時点から,駐車料金の支払がなされるまで,継続的にAやその他の者による同自動車の搬出,移動ができない状態にしたものであると認められるので,その間,本件自動車は,同駐車場の管理者である被控訴人の事実的支配下にある状態となっ がなされるまで,継続的にAやその他の者による同自動車の搬出,移動ができない状態にしたものであると認められるので,その間,本件自動車は,同駐車場の管理者である被控訴人の事実的支配下にある状態となったと解せられ,同状態は,占有の要件である所持といえる。そして,被控訴人は,駐車料金の支払を得るために本件自動車を所持するものであるから,その所持は,自己のためにする意思に基づくものであることが明らかである。 したがって,被控訴人は,Aが椿町駐車場に本件自動車を駐車させた上記6月13日午後4時以降,本件自動車を占有しているものと認められる。なお,同月16日以降,被控訴人が本件自動車を占有していることは,当事者間に争いがない。 (5) 控訴人は,上記第2の3,(2),ウのとおり,被控訴人の椿町駐車場利用契約は,駐車場所の賃貸借契約であり,駐車自動車の管理や保管をともなうものではないから,被控訴人が同契約に基づき本件自動車を占有したとはいえない旨反論する。しかしながら,控訴人の反論はいずれも失当である。すなわち,ア控訴人は,椿町駐車場が,通常無人で,管理人の施設も駐車車両を雨風から防ぐ施設もないことから,駐車車両の管理や保管をともなうものではないとして,被控訴人の本件自動車の所持の事実を否定する。しかし,駐車場管理者による駐車車両の管理,所持は必ずしも管理人等の人手によらなければ成立しないというものではなく,管理者による駐車車両に対する事実的支配が及ぶ状態が成立することをもって足りるところ,被控訴人の椿町駐車場においては,パークロックシステムにより,駐車車両を被控訴人管理にかかる特定の駐車スペース内に固定して,駐車料金の支払を受けるまで,駐車車両の搬出,移動を不可能にし,これを被控訴人の事実的支配下においたものであるから,そ システムにより,駐車車両を被控訴人管理にかかる特定の駐車スペース内に固定して,駐車料金の支払を受けるまで,駐車車両の搬出,移動を不可能にし,これを被控訴人の事実的支配下においたものであるから,その間,被控訴人がこれを所持するものということができる。 イまた,控訴人は,椿町駐車場で表示板に記載されている上記管理規定が,駐車場内の盗難,滅失,損傷等の損害等について,被控訴人が責任を負わない旨定めているので,被控訴人が駐車場利用者に対して,駐車車両の保管責任を負わないから,同駐車場利用契約は駐車車両の管理や保管をともなわない駐車場所の賃貸借契約にすぎない旨主張する。 しかしながら,乙4ほか上記の証拠によれば,椿町駐車場の表示板に記載されている駐車場管理規定には,被控訴人が駐車車両に留置された貴重品等に関する損害,駐車車両の盗難,滅失,損傷等の損害,駐車場に設置された機械,備品等に接触,衝突事故による損害につき,責任を負わない旨の規定が認められるが,同管理規定は,同駐車場利用契約が駐車車両の管理,保管をともなうものであることを前提として,掲示した個々の場合について損害賠償責任を免除する旨の特約であると解せられ,これらの管理規定は,駐車場管理者側からの提示として表示板に一方的に記載されていることに照らして,被控訴人の駐車車両に対する保管,管理上の責任について,同規定がどこまで有効として認められるか否かは個別に検討すべき問題であると考えられ,これらの管理規定が表示されていることをもって,椿町駐車場利用契約において,被控訴人が何ら駐車車両の管理,保管をともなわないとはいえない。 また,控訴人は,駐車場を規制する法律である駐車場法においては,路外駐車場管理者の駐車車両保管義務について「善良な管理者の注意を怠らなかった 車車両の管理,保管をともなわないとはいえない。 また,控訴人は,駐車場を規制する法律である駐車場法においては,路外駐車場管理者の駐車車両保管義務について「善良な管理者の注意を怠らなかったことを証明する場合を除いては,その自動車の滅失または損傷について損害賠償の責任を免れることはできない」旨定めているが,椿町駐車場のようなパークロックシステムをとる駐車場において,駐車場管理規定で駐車車両等に関する損害を負わない旨定めているのは,同駐車場が駐車車両の占有,保管をともなわないものだからである旨主張する。 しかしながら,同法は,一定規模以上の路外駐車場について,その運営の適正を図るため所要の事項を定めるものであるところ,規模の小さい簡易な路外駐車場においては,その実情に即した管理規定を定めることができないものではない上,椿町駐車場における管理規定が一定の場合の損害について駐車場管理者が責任を負わない旨表示板に記載されている意味,解釈については,上記説示のとおりであって,その損害賠償責任の範囲についての定めは,被控訴人がパークロックシステムにより駐車車両を事実支配下においていたとの認定を左右するものではないというべきである。 ウところで,控訴人は,Aが本件自動車に鍵をかけたままで,被控訴人に同自動車の保管を委ねていない旨主張するが,被控訴人の駐車車両に対する管理の形態は,駐車車両を駐車スペース内に固定して移動できない状態とすることであるから,本件自動車に鍵がかけられていたことは,被控訴人が本件自動車を事実的支配下においたとの上記認定について何ら消長を来すものでない。 エ控訴人は,また,パークロックシステムは,駐車者以外の者でも駐車料金を投入すれば誰でもロック板を解除できるので,駐車車両を管理する装置ではなく,駐 の上記認定について何ら消長を来すものでない。 エ控訴人は,また,パークロックシステムは,駐車者以外の者でも駐車料金を投入すれば誰でもロック板を解除できるので,駐車車両を管理する装置ではなく,駐車料金を徴収,管理する装置にすぎない旨主張する。 しかしながら,パークロックシステムによる駐車場を管理する者は,駐車場利用契約に基づき,駐車場所を提供するのみならず,パークロックシステムにより,駐車料金の徴収,管理を確保するため,その支払を受けるまで,駐車車両を自己の管理下におくものであることは明らかであり,パークロックシステムが駐車料金の徴収,管理を主たる目的としているということは,駐車場管理者が駐車車両に対し事実的支配を及ぼしていることの認定を妨げるものではない(第三者が駐車料金を投入してパークロックシステムを解除し,駐車車両を搬出することができる点についても,駐車場管理者は,その料金の支払を受ければ,駐車者が駐車車両の鍵を交付して駐車車両の返還を受けることを委託した者に対し,駐車車両を返還するということを意味するにすぎないから,駐車場管理者にその間の事実支配がないとはいえない。)。 オ以上の検討のとおりであるから,椿町駐車場利用契約が駐車場所の賃貸借契約にすぎず,被控訴人が同契約に基づいて本件自動車を管理,保管することはない旨の控訴人の反論はいずれも採用できない。 (6) 以上によれば,被控訴人は,本件自動車の占有をともなう椿町駐車場利用契約において,Aの契約不履行による駐車料金等の請求権を有し,Aは駐車料金等の支払をして本件自動車の返還を受ける請求権があるものと認められるところ,被控訴人の請求権とAの請求権とは,同駐車場利用契約に基づき,同一の法律関係から生じた債権であるから,被控訴人の駐車料金等の請求権は本件自動車に関して生 を受ける請求権があるものと認められるところ,被控訴人の請求権とAの請求権とは,同駐車場利用契約に基づき,同一の法律関係から生じた債権であるから,被控訴人の駐車料金等の請求権は本件自動車に関して生じた債権であるということができる。すると,被控訴人は,本件自動車につき,上記駐車料金等の請求権を被担保債権とする留置権を有するものと認められる。 3 したがって,その余の争点3,同4について判断するまでもなく,被控訴人の留置権が認められることにより,被控訴人は,控訴人から被担保債権79万9400円の支払を受けるのと引換えに,控訴人に対し,本件自動車の引渡し及び上記代償金の支払義務があるが,控訴人の損害賠償請求はいずれも理由がない。また,被控訴人は,控訴人に対し,本件自動車について,Aに対する平成12年6月13日から平成13年4月23日までの,駐車場利用代金等請求権79万9400円を被担保債権とする留置権を有することを確認することができる。 第4 結論よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないので,これを棄却することとし,控訴費用の負担について民事訴訟法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官大内捷司裁判官島田周平 裁判官玉越義雄 物件目録掲載省略
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