本件は、相続財産に関する上告事件であり、上告人が遺産分割協議に基づき他の相続人に代償金を交付して不動産を取得したことが争点となった。主要な争点は、相続財産が遺産分割協議によりどのように扱われるか、特に上告人が不動産を相続した際の取得費の計算方法である。裁判所は、相続財産は共同相続人間で遺産分割協議がされるまで全相続人の共有に属し、遺産分割協議が成立するとその効果は相続開始時に遡ると判断した。したがって、上告人が不動産を取得したのは相続によるものであり、売却時の譲渡所得の計算において、代償金や借入金の利息を取得費に算入することはできないとした。結論として、上告は棄却され、上告費用は上告人の負担とされた。
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告人の上告理由について相続財産は、共同相続人間で遺産分割協議がされるまでの間は全相続人の共有に属するが、いったん遺産分割協議がされると遺産分割の効果は相続開始の時にさかのぼりその時点で遺産を取得したことになる。したがって、相続人の一人が遺産分割協議に従い他の相続人に対し代償としての金銭を交付して遺産全部を自己の所有にした場合は、結局、同人が右遺産を相続開始の時に単独相続したことになるのであり、共有の遺産につき他の相続人である共有者からその共有持分の譲渡を受けてこれを取得したことになるものではない。そうすると、本件不動産は、上告人が所得税法六〇条一項一号の「相続」によって取得した財産に該当するというべきである。したがって、上告人がその後にこれを他に売却したときの譲渡所得の計算に当たっては、相続前から引き続き所有していたものとして取得費を考えることになるから、上告人が代償として他の相続人に交付した金銭及びその交付のため銀行から借り入れた借入金の利息相当額を右相続財産の取得費に算入することはできない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、採用することができない。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官大野正男- 1 -裁判官園部逸夫裁判 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官大野正男- 1 -裁判官園部逸夫裁判官可部恒雄裁判官千種秀夫裁判官尾崎行信- 2 -
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