平成1(行ウ)57 選手の登録消除に係る審査請求に関する裁決処分の取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成元年9月25日 東京地方裁判所 警察関係
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本件は、原告が被告に対してモーターボート選手の登録消除処分の取消しを求めた事案である。原告は、被告が昭和63年2月8日に原告の登録を消除したことが違法であると主張し、登録規則19条5号に該当しないと反論した。主要な争点は、原告が3年間モーターボート競走に出場していなかった理由が自己の意思によるものか、または外的要因によるものかである。裁判所は、原告が出場できなかったのは被告の出場停止処分によるものであり、登録消除の理由としては不適切であると判断したが、登録規則19条5号の規定が適法であるとし、原告の請求を棄却した。結論として、原告の請求は棄却され、訴訟費用は原告の負担とされた。

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判決文本文5,816 文字)

○ 主文一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 被告が、昭和六三年二月八日、原告に対してした選手の登録消除処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁主文同旨第二当事者の主張一請求原因 1 被告は、昭和四二年四月六日、モーターボート競走法二六条の委任に基づいて定められたボート、モーター、選手、審判員及び検査員登録規則(昭和二六年八月二八日運輸省令第七七号。以下「登録規則」という。)一一条以下の規定に基づき、原告について、モーターボート競走に出場する選手の登録をした。 2 被告は、昭和六三年二月八日、登録規則一九条五号の規定に該当するとして、原告の選手の登録を消除し(以下「本件処分」という。)、そのころ原告にこれを通知した。 3 しかし、原告は登録規則一九条五号の規定には該当せず、本件処分は違法であるからその取消しを求める。 二請求原因に対する認否請求原因1、2の事実は認め、3は争う。 三被告の主張 1 原告は、昭和六〇年二月八日から昭和六三年二月七日までの三年間引き続きモーターボート競走に出場しなかつた。 2 登録規則一九条五号は、「三年以上引き続き競走に出場しなかつたとき」は、被告は当該選手の登録を消除しなければならないと規定している。 3 右1の事由は右2の規定に該当するので、本件処分は適法である。 四被告の主張に対する認否被告の主張1、2の事実は認め、同3は争う。 五原告の反論 1 本件処分に至る経緯(一) 原告は、昭和六〇年二月八日、戸田競艇場で開催されていたボートレース関東地区選手権において、原告が使用していたモーターボートのエンジンのオイルシールに切り傷があることが発見されたため、同日の出場を停止された上 和六〇年二月八日、戸田競艇場で開催されていたボートレース関東地区選手権において、原告が使用していたモーターボートのエンジンのオイルシールに切り傷があることが発見されたため、同日の出場を停止された上、戸田モーターボート競走制裁審議会により同月九日から一年間戸田競艇場への出場を停止された。これに対し、原告は、同月一一日、戸田競艇組合の管理者に対して異議の申立てをしたところ、同申立てに対する裁定により、同審議会において再度審理することになつたが、同審議会は、同月二四日、再び同様の出場停止処分をした。 (二) モーターボート選手は、被告の監督下におかれ(モーターボート競走法六条、二二条二項)、被告は競走の公正かつ安全な実施を確保するため必要があると認めるときは、選手の出場停止の処分をすることができる(同法一六条)ところ、被告は、昭和六〇年三月一八日、原告に対し、右(一)のオイルシールの切り傷について整備規程違反を理由に五か月間の出場停止処分をしたが、モーターボート選手は全て被告に登録し、被告の出場のあつせんにより施行者との間で出場契約を締結してモーターボート競走に出場することになつており(同法二二条二項一号、二号、被告の、選手出場あつせん規程(昭和三四年二月二七日認可船監第三六号)四条、五条)、被告の出場停止処分を受けた選手は出場停止期間中、出場のあつせんを受けられない(同規程七条二号)ので、原告は、右の出場停止期間中、全国いずれのモーターボート競走場にも出場することができなかつた。 (三) 右(一)、(二)を受けて、社団法人日本モーターボート選手会は、同選手会の、会員数適正化に関する規程二条一項一号、四条に基づき、昭和六〇年七月一〇日、原告に対し退会勧告をし、次いで同選手会の定款三〇条二号、三一条に基づき、同年九月一八日、原告を除名したところ 同選手会の、会員数適正化に関する規程二条一項一号、四条に基づき、昭和六〇年七月一〇日、原告に対し退会勧告をし、次いで同選手会の定款三〇条二号、三一条に基づき、同年九月一八日、原告を除名したところ、同選手会の会員でないと事故等によるけがや死亡の場合に同選手会の共済規程に基づく各種給付が受けられず、施行者がその責任を負うことになるので、原告は右(二)の出場停止期間経過後も各施行者からあつせんを拒否されていた。 (四) 結局、原告は、右(一)のオイルシールの切り傷が発見された昭和六〇年二月八日以降モーターボート競走に出場できないでいたところ、被告はそれを理由に本件処分をしたものである。 2 本件処分の違法(一) 右1のオイルシールの切り傷は戸田競艇場所属の整備員の重大な過失によるものであり、原告には何ら落度はなかつた。そこで、原告は、被告及び埼玉モーターボート競走会に対し損害賠償を求めて訴えを提起し、当裁判所昭和六〇年(ワ)第九二二〇号、昭和六一年(ワ)第三四六四号損害賠償請求事件として現在も係属中である。 (二) 登録規則一九条五号の「出場しなかつたとき」というのは病気等あるいは自己の意思による不出場という意味に限定して解釈すべきである。 すなわち、登録規則一九条五号は、三年間も実戦から離れた者が再びモーターボート競走に出場することは危険であるということにとどまらず、三年間も出場しようとしなかつた者は登録を消除されても仕方がないということも考慮された制裁的なものであり、法の基本原理である自己責任の原則からも、自己に責任がない場合には消除されるべきではない。沿革上も、昭和三七年一〇月八日運輸省令第五七号による改正前の登録規則(以下「旧規則」という。)三六条一項五号には「自己の都合で」という主観的要件が入つていたのであり、改正後の登録規則もそ ではない。沿革上も、昭和三七年一〇月八日運輸省令第五七号による改正前の登録規則(以下「旧規則」という。)三六条一項五号には「自己の都合で」という主観的要件が入つていたのであり、改正後の登録規則もそれを当然の前提としたものと解すべきである。さらに、登録規則一九条は同条五号に該当する場合の登録の取消しを必要的なものとしているところ、登録規則二〇条は選手登録票の変造や競走に関し不正行為をしたときでさえ裁量的に登録の消除をすることができるとしているにすぎないのであるから、それとの均衡上も一九条五号の「出場しなかつたとき」というのは自己の意思による場合に限定して解釈すべきである。 しかるところ、右1及び2の(一)に述べたとおり、原告は、病気等あるいは自己の意思により出場しなかつたではなく、出場したくとも出場できなかつたのであり、出場できなくなるに至つた事由について訴訟で争うことまでしているのであるから、登録規則一九条五号に該当せず、原告に対する登録消除処分はできないと解すべきである。 (三) また、原告がモーターボート競走に出場できなかつたのは被告の処置によるものであるから、そのような被告が出場しなかつたことを理由に本件処分をすることは権利の濫用である。 六原告の反論に対する被告の認否 1 原告の反論1(本件処分に至る経緯)の事実は認める。 2 同2(本件処分の違法)のうち、原告が埼玉モーターボート競走会に対し主張の訴訟を提起し、出場できなくなるに至つた事由について争つていることは認め、その余の主張は争う。 登録規則一九条五号は、モーターボート競走が高速度で水面上を競走するという本質的に重大な事故を招来する危険性を秘めた競技であることから、常に実戦感覚を身に付けた選手によつて行われることを要求することによつて競走の安全と公正を図るために設けられた で水面上を競走するという本質的に重大な事故を招来する危険性を秘めた競技であることから、常に実戦感覚を身に付けた選手によつて行われることを要求することによつて競走の安全と公正を図るために設けられたものであり、単に三年間引き続き競走に出場していないという客観的事実自体が選手の実戦感覚に疑いを持たせるものであるとして登録を消除することにし、選手に改めて資格検定試験を受けさせることにしたもの(登録規則一一条三項二号)であつて、「出場しなかつたとき」というのは出場しなかつた理由は問わないものであるから、原告の主張は失当である。 このことは、(一)登録規則一九条五号には原告主張のように限定的に解すべき文言はないこと、(二)沿革上、旧規則には、登録規則一九条五号に相当する規定はなく、旧規則三六条一項五号によつて自己の都合による一定の不出場が裁量的登録消除事由とされていたにとどまつていたところ、改正により同号が削除されると同時に自己の都合によるという要件を削つた上で、三年以上の不出場を新たに必要的登録消除事由として規定したのが登録規則一九条五号であること、(三)登録規則一九条の登録消除処分は必要的なものとされており、しかも裁量的登録消除を定めた登録規則二〇条とは異なり資格審査会の審査を経ることを要しないとされているが、これは、登録規則一九条各号の要件が評価的要素を含まず、機械的に判断すべきものであるからと解されること、(四)登録規則一一条三項一号は、資格検定試験に合格した日から選手の登録を受けないで三年を経過したときは再度資格検定試験に合格しなければ選手の登録の申請ができないと定めていることなどに照らし、明らかである。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。 二本件処分の適否について 1 被告の主張1、2の事実 録の申請ができないと定めていることなどに照らし、明らかである。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。 二本件処分の適否について 1 被告の主張1、2の事実及び原告の反論1の事実は当事者間に争いがない。 2 原告が被告及び埼玉モーターボート競走会に対して主張の訴訟を提起し、原告が出場できなくなるに至つた事由に関し争つていることは当事者間に争いがないところ、原告は、登録規則一九条五号の「出場しなかつたとき」というのは、病気等あるいは自己の意思による不出場という意味に限定して解釈すべきであり、病気等あるいは自己の意思によつて出場しなかつたのではなく、出場したくとも出場できず、出場できなくなるに至つた事由について訴訟で争つている原告は同号に該当しない旨主張する。 しかし、登録規則一九条五号には原告主張のように限定的に解すべき文言はないのみならず、旧規則上には登録規則一九条五号に相当する規定はなく、三六条一項五号によつて自己の都合による一定の不出場が裁量的登録消除事由とされていたにとどまつていたのが、改正により同号が削除されるとともに、新たに自己の都合によるという要件を削つた上で、三年以上の不出場を必要的登録消除事由として規定したのが登録規則一九条五号であるという沿革に徴すると、同号の「出場しなかつたとき」というのは客観的な不出場の事実をいい、出場しなかつた理由、原因等は一切問わないものというべきである。 すなわち、登録規則一九条五号は、モーターボート競走が高速度で水面上を競走するという本質的に重大な事故を招来する危険性を秘めた競技であることから、常に実戦感覚を身に付けた選手によつて行われることを要求することによつて競走の安全と公正を確保するために設けられたものであり、単に三年間引き続き競走に出場していな 危険性を秘めた競技であることから、常に実戦感覚を身に付けた選手によつて行われることを要求することによつて競走の安全と公正を確保するために設けられたものであり、単に三年間引き続き競走に出場していないという客観的事実自体が選手の実戦感覚に疑いを持たせるものであるとして当該選手の登録を消除することにし、選手に改めて資格検定試験を受けさせることにしたもの(登録規則一一条三項二号)と解される。 右の解釈は、裁量的登録消除を定めた登録規則二〇条がその事由の認定について資格審査会の審査を経ることを要するとしているのに対し、登録規則一九条についてはそのような規定がないのは、一九条の事由の認定が評価的要素を含まず機械的に行われるべきことを予定したものと解されることや、登録規則一一条三項一号が、資格検定試験に合格した選手が登録を受けないで三年を経過したときは再度資格検定試験に合格しなければ選手の登録の申請ができないと定めていることによつても裏付けられるものである。 したがつて、原告の右主張はその前提を欠くものであつて、失当である。 3 次に、原告は、原告がモーターボート競走に出場できなかつたのは被告の処置によるものであるから、そのような被告が原告に対し、出場しなかつたことを理由に本件処分をすることは権利の濫用である旨主張するが、登録規則一九条五号が、モーターボート競走の安全と公正を確保するために、三年間引き続いて競走に出場していないという客観的な事実自体が選手の実戦感覚に疑いを持たせるものとして、その事実が生ずるに至つた理由、原因等を問うことなく、当該選手の登録を必要的に消除することとしたものであることは、右2のとおりであり、そうであるとすれば、原告が引き続いて三年以上競走に出場していない以上、被告が原告を登録消除処分に付したのは、被告が遵守すべき登録規則 要的に消除することとしたものであることは、右2のとおりであり、そうであるとすれば、原告が引き続いて三年以上競走に出場していない以上、被告が原告を登録消除処分に付したのは、被告が遵守すべき登録規則に従つただけのことであつて、原告が競走に不出場の理由、原因等が仮に原告主張のように被告の責任に帰せられるとしても、単にそのことだけでは右処分自体が権利の濫用に当たるものとすることはできないから、原告の右主張もまた失当である。 4 以上によれば、三年間引き続き競走に出場しなかつた原告に対し登録規則一九条五号に基づいてした本件処分は適法ということができる。 三よつて、本訴請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、 主文のとおり判決する。 (裁判官鈴木康之石原直樹佐藤道明)

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