平成13(ワ)4280 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年3月24日 名古屋地方裁判所
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本件は、原告が被告Aが運転する市バスに乗車中に急停車により転倒し、頚椎損傷を負った交通事故に関する損害賠償請求事件である。原告は、被告らに対し、1億1779万4894円及びその後の利息を請求したが、被告らは請求を棄却するよう主張した。主要な争点は、被告Aの運転における注意義務の違反及び被告市の責任であり、裁判所は被告Aの過失を認め、被告市にも責任があると判断した。結果として、裁判所は原告に7440万4390円の支払いを命じ、その他の請求を棄却した。訴訟費用は原告と被告らで分担することとなった。

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判決文本文24,078 文字)

主文 1 被告らは,連帯して,原告に対し,金7440万4390円及びこれに対する平成11年7月21日以降完済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求める裁判 1 請求の趣旨(1) 被告らは,連帯して原告に対し,金1億1779万4894円及びこれに対する平成11年7月21日以降完済まで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 当事者被告Aは,被告名古屋市交通局(以下,「被告市」という。)に市バス運転手として勤務して,定期バスの運転をなしている公務員である。 原告は,昭和15年8月19日生まれの男性であり,後記(2)の事故時に被告Aの運転する市バス(以下「被告車」という。)に乗客として乗車していた。原告の年齢は事故時は58歳,症状固定時60歳である。 (2) 原告は,次の交通事故(以下「本件事故」という。)により受傷した。 ア発生日時平成11年7月21日午後9時25分ころイ発生場所名古屋市a区b町c番d先路上(名古屋環状線)ウ被告車事業用大型乗用自動車(名古屋22か6135の市バス)エ同運転者被告Aオ被害者原告カ事故態様被告Aが運転する被告車が,上記道路を,時速約30キロメートルでe方面からf方面に向かって進行中,急停車した衝撃により,被告車に乗車中の原告が,車内床に転倒し,運転席左後ろにあるパイ カ事故態様被告Aが運転する被告車が,上記道路を,時速約30キロメートルでe方面からf方面に向かって進行中,急停車した衝撃により,被告車に乗車中の原告が,車内床に転倒し,運転席左後ろにあるパイプに頭部を強くぶつけ,頚椎損傷の傷害を負った。 (3) 被告らの責任ア被告Aは,前車の動静を注視し進路の安全を確認しつつ進行すべき業務上の注意義務があり,また定期バスである被告車を運転中だったのであるから,急ブレーキを必要とすることのないよう,またブレーキを必要とする場合にも衝撃を与え乗客に危険を生ずることのないようにできるだけ注意して運転すべき業務上の義務があるのにこれを怠り,左に自車を寄せることに気を奪われ,前車の動静を注視しないで進行した過失により,同車が進路前方で停止しようとかけたブレーキランプを発見するのが遅れ,同車との衝突を避けるため急ブレーキをかけたため,被告車に乗車していた原告に対し,急激かつ強い衝撃を与え,被告車内床に原告を転倒させ,転倒したまま被告車運転席のところまで滑らせ,運転席左後ろにあるパイプに頭部を強く衝突させた。 イ被告Aは被告車を運転し本件事故を発生させた者,被告市は被告車の所有者かつ被告Aの使用者であり,被告Aに被告車を運転させて自己のために運行の用に供していた上,その際に,被告市の被用者の被告Aが本件事故を発生させたものであるから,被告Aは,民法709条及び自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条により,被告市は民法715条1項及び自賠法3条により,本件事故によって原告に生じた損害を賠償する責任がある。 (4) 受傷及び治療経過原告は,本件事故により頚椎損傷の傷害を負い,本件事故直後に名古屋市内の医療法人吉田病院(以下「吉田病院」という。)に搬送されて治療を受け,翌22日から平成12年 がある。 (4) 受傷及び治療経過原告は,本件事故により頚椎損傷の傷害を負い,本件事故直後に名古屋市内の医療法人吉田病院(以下「吉田病院」という。)に搬送されて治療を受け,翌22日から平成12年6月15日までの331日間,藤田保健衛生大学病院(以下「藤田病院」という。)脳外科に,同日から同年9月1日までの78日間,同院リハビリテーション科に,同1日から同年11月26日までの87日間,藤田保健衛生大学七栗サナトリウム(以下「七栗サナトリウム」という。)に,翌27日から平成13年1月31日までの66日間,名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院(以下「市リハビリセンター」という。)にそれぞれ入院して治療を受けた。 原告は,平成13年1月31日に市リハビリセンターを退院した後,同年2月12日まで医療法人珪山会鵜飼病院(以下「鵜飼病院」という。)に入院するまで自宅で待機して同日から同年4月2日までの49日間鵜飼病院に入院し,同年4月2日から同年6月1日まで入院当日を除外して60日間服部病院に入院し,同年6月1日から同年9月12日まで入院当日を除外して103日間善常会リハビリテーション病院に入院して,同年9月12日から平成14年3月9日まで入院当日を除外して178日間B病院に入院してそれぞれリハビリテーション治療を受け,平成14年3月20日以降は現在までB病院に毎日通院して,リハビリテーション治療を継続して受けている。 (5) 症状固定日及び後遺障害原告は,平成13年1月31日に市リハビリセンターにおいて症状固定と診断され,同年6月14日,神経系統の機能又は精神に著しい傷害を残し,常に介護を要するものとして自賠法施行令(平成13年12月21日付政令第419号による改正前のもの。)2条別表1級3号の認定を受けた。原告は,日常生活上全介 神経系統の機能又は精神に著しい傷害を残し,常に介護を要するものとして自賠法施行令(平成13年12月21日付政令第419号による改正前のもの。)2条別表1級3号の認定を受けた。原告は,日常生活上全介助を要する状況となり,頚部以下の感覚が麻痺しており,わずかに介助により起立姿勢をとった上なら歩行器歩行のみが可能であるが実用的な歩行は不可能,高度の排尿困難もあり今後も合併症による増悪がありうると診断されている。 (6) 損害ア治療費等 1070万7366円原告は,本件事故により頚椎損傷の傷害を負った。この傷害の治療のため,前記1(4)治療経過記載の病院において治療を受けそれぞれ,以下のとおり治療費等を支払い,又は支払が必要となる。 (ア) 治療費a 吉田病院 1万1936円b 藤田病院 342万3850円c 七栗サナトリウム 49万9560円d 市リハビリセンター 5万6940円e 鵜飼病院 14万8260円f 「FES(機能的電気刺激)手術」についての費用ないしは,今後の医療の進歩による治療費として650万円(イ) 文書料等a 藤田病院について,自賠責認定のため提出したレントゲン(写)の費用の6万1110円と送金手数料の210円b 市リハビリセンターについて,自賠責認定のため提出した診断書の文書料5500円イ付添看護費 3407万0822円(ア) 症状固定までの入院期間中の付添費用は1日当たり6500円が相当である。 (イ) 将来の付添看護費として,1日当たり6500円が相当であり,これに60歳の平均余命20.99年に相当するライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して将来必要となる付添看護費を求めると3041万7 付添看護費として,1日当たり6500円が相当であり,これに60歳の平均余命20.99年に相当するライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して将来必要となる付添看護費を求めると3041万7822円である。 計算式(ア)6,500×562=3,653,000(イ)6,500×365×12.821=30,417,822(ア)+(イ)=34,070,822ウ入院雑費 608万4954円(ア) 症状固定時までの入院雑費上記入院期間中の入院雑費は1日当たり1800円が相当である。 (イ) 将来の入院雑費(ただし,エの将来通院費と選択的に主張)原告は,現在一時的な退院をしているものの,後遺障害診断書に「症状固定,合併症による増悪がありうる」と記載されているとおり,現在も高度な排尿困難もあり,いつまた入院,治療が必要となるかも知れない状況であり,将来の入院を少なくとも10年と予想しその間の入院雑費として1日1800円が必要であり,これに10年に相当するライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して将来必要となる通院費を求めると507万3354円になる。 計算式(ア)1,800×562=1,011,600(イ)1,800×365×7.722=5,073,354(ア)+(イ)=6,084,954エ将来通院費 600万0228円原告は今後の通院にあたっては,タクシーで往復することとなり,片道900円かかり,週に5日通院しており,1年は52週間である。これにイ(イ)と同様にライプニッツ方式で通院費を求めると上記金額になる。 計算式 900×2×5×52×12.821=6,000,228オ付添者交通費 にイ(イ)と同様にライプニッツ方式で通院費を求めると上記金額になる。 計算式 900×2×5×52×12.821=6,000,228オ付添者交通費 65万5043円原告の症状固定までの入院期間562日の付添者の交通費として上記金額を要した。 カ症状固定後の入院雑費及び付添者交通費 93万3670円将来の入院に係る損害の主張が認められない場合,予備的に,これまでの1年2か月の症状固定後の入院雑費及び付添者等の交通費合計93万3670円を損害として主張する。 キ住宅改造費 379万円又は221万5783円原告は前記(5)記載のとおりの後遺障害を負ったものであり,日常介助が必要であるが,原告の居住していた改造の自由のない公団住宅では,原告本人も介護する家族も不自由・不便であった。特に風呂場が狭く,戸も閉められず,湯船にも入れず,原告にとって苦痛は大であった。 そこで,①現在通院しているB病院に無理なく通院できる距離にあること②車イスでの日常生活で不便のないことであること③原告本人も介護者もできるだけ負担のないこと④現在入院中の原告の母を引き取って介護することのできる体制をとれることなどを考え,マンション(以下「本件マンション」という。)を購入した。 その結果,当初必要としていた改装工事の殆どは必要なくなった。 本件マンションの購入にかかった費用は,購入代金3713万円(消費税込),売買印紙代7500円,固定資産税2万5100円,修繕積立一時金27万5600円,管理一時金1万円,登記費用21万5358円及び修理代金27万3483円(修理済の7万8750円と修理見積の19万4733円の合計額)の合計金3793万7041円である。 立一時金27万5600円,管理一時金1万円,登記費用21万5358円及び修理代金27万3483円(修理済の7万8750円と修理見積の19万4733円の合計額)の合計金3793万7041円である。これ以外に,不動産取得税が評価額の100分の4かかり,今後も固定資産税,修繕積立金,管理費等の支払が必要となる。 このような本件マンション購入等の代金は,マンションの価値が後々も残ることを考えれば,すべてが損害とまではいうことができないとしても,本来であれば必要としない本件マンションを改造費用をかける代替手段として取得したものであり,少なくとも3793万7041円のうち1割に相当する379万円,あるいは,改造費用相当額221万5783円が損害と評価されるべきである。 ク装具その他 77万8478円ケ将来の装具購入費用 242万4500円原告は,日常生活上全介助を要する状況となり,頚部以下の感覚が麻痺しており,わずかに介助により起立姿勢をとった上なら歩行器歩行のみが可能であるが実用的な歩行は不可能,高度の排尿困難もあり今後も合併症による増悪がありうると診断されている。このような原告の症状からすれば,室内用車イス,歩行補助杖,歩行器が今後も必要となるが,これらの耐用年数はいずれも4年であり,平均余命20.99年の間に少なくとも5回の買い替えが必要となる。また,上記原告の症状からは,原告には,屋外用車イスも必要であり,屋外用車イスについては耐用年数が5年であるから少なくとも4回の買い替えが必要となる。 計算式 (109,500+8,600+38,000)×5=780,500411,000×4=1,644,000780,500+1,644,000=2,424 が必要となる。 計算式 (109,500+8,600+38,000)×5=780,500411,000×4=1,644,000780,500+1,644,000=2,424,500コその他 66万2140円原告は,ケと同様の理由から,パソコン(25万円,今後の買い換え2回),体位変換器(1万8000円,今後の買い換え2回),入浴補助用具(27万円,今後の買い換え6回),ベッドサイドの柵(3万9000円,今後の買い換え6回),携帯電話(7140円,今後の買い換え4回)及び特殊尿機(7万8000円,今後の買い換え4回)を現在必要としており,購入予定である。 サ休業損害 823万4732円原告の本件事故前年の給与は年収539万3170円であったので,これを基に本件事故翌日から症状固定日までの561日分を請求する。 計算式 5,393,170÷365×561=8,289,228シ逸失利益 4479万5670円原告の後遺障害は自賠法施行令2条別表1級3号に該当し,労働能力の全部を失った。原告の本件事故前年度の年収はサで主張したとおりであり,60歳の就労可能年数に対応するライプニッツ係数8.306を乗じて計算すると上記金額となる。 計算式 5,393,170×8.306=44,795,670ス入通院慰謝料 431万円入院18か月 431万円セ後遺障害慰謝料 3000万円ソ弁護士費用 700万円原告は被告に円満な話し合いによる解決を求めたが,被告の都合により訴訟提起を余儀なくさ 3000万円ソ弁護士費用 700万円原告は被告に円満な話し合いによる解決を求めたが,被告の都合により訴訟提起を余儀なくされた。その弁護士費用は日弁連の報酬規定によれば着手金369万円,報酬金738万円となる。少なくとも700万円を支払うとの約束をなしたものである。 タ原告の損害合計は,少なくとも1億5733万2070円を下らない。 (7) よって,原告は,被告らに対し,被告Aに対しては自賠法3条本文及び民法709条に基づき,被告市に対しては自賠法3条本文及び民法715条に基づき,連帯して原告が被った損害額のうち,1億1779万4894円及びこれに対する本件事故の日である平成11年7月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。 2 請求原因に対する被告らの認否(1) 請求原因(1)について,被告Aは,被告市に市バス運転手として勤務して,定期バスの運転をなしている公務員であること,原告が被告Aの運転する市バスの乗客であった事実は認め,その余の事実は不知。 (2) 請求原因(2)アないしカ記載の事実は認める。 (3) 請求原因(3)ア記載の事実のうち,原告の転倒後衝突までの詳細な態様までは不知であるが,その余は認める。同(3)イは認める。同(4)のうち,平成13年1月31日以前の事実は認めるが,その後の事実については不知。 (4) 請求原因(5)について,原告が,上記入院治療経過後,後遺障害1級3号の認定を受けたことは認めるが,後遺障害の認定日については否認する。平成13年1月31日は,後遺障害診断書上の症状固定日であり,後遺障害が認定されたのは同年6月14日である。原告が,日常生活上全介助を要する状況となり,頚部以下の 遺障害の認定日については否認する。平成13年1月31日は,後遺障害診断書上の症状固定日であり,後遺障害が認定されたのは同年6月14日である。原告が,日常生活上全介助を要する状況となり,頚部以下の感覚が麻痺している事実は認め,その余は不知。 (5) 請求原因(5)の症状固定日について以下のとおり反論する。 原告は,遅くとも本件事故による受傷から1年経過時の平成12年7月21日には,症状固定に至っていた。したがって,遅くとも同日を症状固定日として原告の損害を算定すべきである。なお,平成12年1月に原告と被告との間で,「受傷後1年経過時(平成12年7月)に症状固定とする」との合意がなされていた。しかし平成12年7月,原告はこの合意を一方的に破棄した。 (6) 請求原因(6)(損害)についてア治療費吉田病院における4736円,藤田病院における342万3850円及び市リハビリセンターにおける5万6940円は認めるがその他は不知ないし否認する。 被告は,症状固定日を争うものであるが,仮に症状固定日が原告の主張通り平成13年1月31日だったとしても,被告らにそれ以後の治療費の支払義務は無い。 また,平成11年7月から平成12年8月までの療養給付金858万9440円,食事療養金55万9150円,傷病手当金61万8618円,平成12年9月から同13年1月までの療養給付金248万6176円,食事療養金18万7710円,傷病手当金83万6154円,高額療養費金9万6456円,以上合計金1337万3704円を加えるべきである。 さらに,将来の治療費650万円の主張については否認する。原告は,既にFES手術は受けないという判断をして,その旨を被告らに通知している。原告は,FES手術を受けていないにもかかわらず,現在既に症状固定状態にあることを認めているのであ ついては否認する。原告は,既にFES手術は受けないという判断をして,その旨を被告らに通知している。原告は,FES手術を受けていないにもかかわらず,現在既に症状固定状態にあることを認めているのである。このように受ける予定のない手術費を損害として請求するのは不当である。 イ付添看護費不知ウ入院雑費不知エ将来通院費不知オ付添者交通費否認する。付添看護費に含まれる。 カ住宅改造費否認する。原告は中古になったマンションの価値の減少分として購入代金等の1割を請求するが,合理的な理由がなく認められない。また,少なくとも改造費用相当額を支払うべきであるとも主張するが改造の必要が存しなくなったのであるからこれも認められない。 キ装具その他否認する。原告は,装具本体価格全額を損害として請求するようであるが,原告は,身体障害者手帳の所持者であり,市町村から補装具の交付,修理を受けることができ,その費用については,世帯の所得により一部自己負担を伴う場合があるに過ぎない。従って,装具本体価格全額を損害として請求するのは相当でない。 ク将来の装具購入費用不知。その必要性が認められたとしても,損害の計算としては,中間利息控除がされるべきである。 ケ休業損害不知コ逸失利益不知サ入通院慰謝料不知シ後遺障害慰謝料不知ス弁護士費用不知 3 抗弁(1) 損益相殺・損害の填補ア原告は,健康保険より,傷病手当金として金銭の支払を受けている。従って,被告らは,原告が支払を受けた傷病手当金290万2746円を損益相殺として主張する。 また,同 1) 損益相殺・損害の填補ア原告は,健康保険より,傷病手当金として金銭の支払を受けている。従って,被告らは,原告が支払を受けた傷病手当金290万2746円を損益相殺として主張する。 また,同じく原告が健康保険より支払を受けた高額療養費金66万9148円を損益相殺として主張する。 さらに,社会保険事務所から病院に支払われた食事療養金を治療費として加えるべきであり,食事療養金合計101万6970円を損益相殺すべきである。 イ被告らの既払金被告らの原告に対する既払金は,自賠責保険傷害分金120万円,同保険後遺障害1級分金3000万円,被告らの契約している任意保険からの支払額990万円,以上合計4110万円である。 (2) 過失相殺原告は,本件事故当時,被告車がバス停に到着し完全に停止するのを待たずに座席から立ち上がり,その後も中扉付近においてつり革又は手すりを持っていなかったか少なくともしっかりとは持っていなかった。また,原告は本件事故前に飲酒していた。 市バスの乗客は急停車などの衝撃により転倒するなどして受傷しないように,バスが完全に停止するまでの間,空席がある場合は座席に座り,空席がないために立っている場合においてもつり革又は手すりなどの車内の安全設備を利用するなどして自己の安全を守るように努める義務を負うのであって,被告車内にもその旨を表示してあり,車内放送においても常時その旨を流して乗客の注意を喚起している。 しかも原告は,本件事故前に飲酒してその後市バスに乗車したのであるから,飲酒していない場合に比し,急停車などの衝撃により転倒するなどして受傷しないよう特に注意するべきであったのに,この注意を怠り,前記のとおり原告は,本件事故当時,被告車両がバス停に到着して完全に停止するのを待たずに座席から立ち上がり,かつ立ち上がった後 るなどして受傷しないよう特に注意するべきであったのに,この注意を怠り,前記のとおり原告は,本件事故当時,被告車両がバス停に到着して完全に停止するのを待たずに座席から立ち上がり,かつ立ち上がった後もつり革又は手すりを持っていなかったか少なくともしっかりとは持っていなかったことから,急ブレーキの衝撃による転倒を防ぐことが出来ず本件事故が発生したのである。 従って,本件事故については,原告に少なくとも50パーセントの過失相殺がなされるべきである。 4 反論に対する再反論(症状固定日について)被告は,本件事故による受傷から1年経過時である平成12年7月21日には症状固定に至っていたと主張する。 しかし,原告は,平成12年7月21日から現在に至るまでリハビリテーション治療を継続中であり,リハビリテーションも治療であって,基本的には症状の改善を目指して行われるものである。現実にその間のリハビリテーション治療により原告の症状は改善され,平成12年7月時点ではできなかった動作が現在では可能になっている。そのような事実からすれば,受傷後1年との機械的な判断が誤りであることは明らかである。 以上の通り,症状固定日は,受傷後1年ではなく,それより後の平成13年1月31日である。 なお,受傷後1年経過時に症状固定とするとの合意があったとの被告らの主張は否認する。 5 抗弁に対する認否(1)ア傷病手当金,高額療養費及び食事療養費の支給を損益相殺するとの主張は争う。 イ被告らの既払金について否認する。既払金は,任意保険の保険金704万4688円と自賠責保険の後遺障害分の3000万円である。 (2) 過失相殺の主張について。 争う。 被告らの主張のうち,「原告は,被告車が急ブレーキをかけた時点で既に座席から立ち上がってバス中扉付近に立っていた の後遺障害分の3000万円である。 (2) 過失相殺の主張について。 争う。 被告らの主張のうち,「原告は,被告車が急ブレーキをかけた時点で既に座席から立ち上がってバス中扉付近に立っていた」との主張は否認する。原告は,座席から立ち上がろうとしていたところであった。仮に既に立ち上がっていたと評価されるとしても,中扉付近にまでは行っていない。被告車の出口は,中央左側にあり,原告が座っていた位置の斜め後ろになるが,原告は,降車予定のバス停が近づいてきたので降車準備のために立ち上がったのであり,原告は,出口に向け右足を踏み出し,進行方向に対して背中を向けた時急ブレーキがかかったものである。 バス停に近づくと,降車しようとする客がその準備のため立ち上がったり,扉付近へ移動するのは日常的にバスの車内で見られる光景であり,そのような行為を運転手が止めることもしないのが現状である。従って被告Aは,降車の準備をする者があることを予測し,また老人や小さい子どもなども乗車すること,更に時間帯からいって飲酒した者も乗車している可能性があることを十分配慮して運転すべきであった。 被告車を含めた名古屋市の市バスにおいては,乗客に対し,バス停に到着し完全に停止してから降車のため座席から立ち上がるように呼びかけをしていないし,逆に乗り込んだ客が着席するまで発車を待つという配慮もされておらず,また,走行中に席を立つ乗客に注意する光景も見たことがなく,本件でも被告Aはそのような注意はしていない。 従って,市バスは,立って車内の移動をする乗客がいること(すなわち,瞬間的には手すりやつり革から手が離れる乗客があること)を前提に運行しており,そのような状況を想定し,殊にバス停近くでは運転手は,スピード等に配慮すべきである。 本件では,仮に原告がしっかりとつり革・手す は手すりやつり革から手が離れる乗客があること)を前提に運行しており,そのような状況を想定し,殊にバス停近くでは運転手は,スピード等に配慮すべきである。 本件では,仮に原告がしっかりとつり革・手すりをもっていたとしても,被告Aは座っている乗客でさえ前のめりになって前へぶつかりそうになったほど強い急ブレーキをかけたのであって,原告は,本件事故を防止することはできなかったものである。 被告は,「市バス車内の表示」「車内放送においても常時その旨を流して乗客の注意を喚起している」と主張するが,これはつり革・手すりを持つようにとの注意であり,立ち上がらないようにとのテープによる放送での注意は本件事故後になって導入されたものである。市バスで降車のため立ち上がって,危ないと注意されることはない。従って,乗客に対し,一片のステッカーやテープの放送で注意していることによって原告に過失があることとなったり,過失が増大するとは言えない。原告に過失がある,又は原告の過失割合が増大すると言うためには,乗客が座ってから発進するか又は停車前に立ち上がる者に注意するなどの事故防止に向けた具体的方策が取られていなければならない。 また,バスの乗客に対して,常に手すりやつり革をしっかりと持っているように要求することは,乗客に対し,不可能なことを要求するものである。 本件事故は,被告Aが前方不注視により,座っている者も前につんのめって前の座席にぶつかりそうになったというほどの急ブレーキをかけたことが原因であり,原告はこの急ブレーキの衝撃で転倒して仰向けになったまま車内を滑って運転席の後方まで滑っていってしまったのであり,たまたまその瞬間に原告が手すりを持っていなかったとしても,原告に責任があるとはいえない。 仮に本件事故において,原告に過失があるとしても,その割合は5パーセン 後方まで滑っていってしまったのであり,たまたまその瞬間に原告が手すりを持っていなかったとしても,原告に責任があるとはいえない。 仮に本件事故において,原告に過失があるとしても,その割合は5パーセント程度である。 理由 第1 本件事故の発生,原告の受傷及び被告らの責任請求原因(1)当事者,同(2)本件事故の発生とそれによる原告の受傷,同(3)被告らの責任原因,同(4)のうち,原告の平成13年1月31日までの治療経過と原告の後遺障害等級については当事者間に争いがない。 第2 原告の症状固定日甲第11号証ないし第14号証,第30,31号証,32号証の1ないし3,乙第4号証及び弁論の全趣旨によれば,原告の日常動作について,平成12年1月26日には,肩の上げ下げと肘の屈折の動作ができるようになったものの,両腕及び両下肢は麻痺したままで,歩行不能のほか手首,指は動かないので,ペンを持って字を書いたり,スプーンを握ったり,コップを持って食事をしたりする事はできず(巧緻運動障害),移動,食事等は全く自用できない状態であったこと,平成12年2月8日にはできなかった寝返る,さじで食べる,フォークで食べる及び歯を磨くという動作が,平成13年1月31日には,時間をかければ可能となっていること,平成12年2月8日から平成13年1月31日には手,股の伸展,膝の屈曲・伸展及び足等の可動領域が数値としても改善されていること,事故から1年経過した時点よりも現在のほうが原告の動作につき相当の改善が見られたことが認められ,これによれば平成13年1月31日を症状固定日と認めるのが相当である。 なお,被告らは「平成12年1月に,原告と被告市との間で『受傷後1年経過時(平成12年7月)に症状固定とする』との合意がなされていた。」と主張するけれども,この主張が症状の固定 めるのが相当である。 なお,被告らは「平成12年1月に,原告と被告市との間で『受傷後1年経過時(平成12年7月)に症状固定とする』との合意がなされていた。」と主張するけれども,この主張が症状の固定の時期そのものについて合意した趣旨であるならば,症状固定の時期は客観的に定めるべき事柄であって,無意味な主張といわざるを得ない。また,「平成12年7月」に症状固定したものとして賠償すべき損害額を算定する旨合意したとする趣旨であるとしても,そのような合意の成立を認めるに足りる証拠はない。したがって,いずれにしても被告らの上記主張は採用できない。 第3 損害 1 治療費等 420万2326円(1) 吉田病院に支払った4736円,藤田病院に支払った342万3850円及び市リハビリセンターに支払った5万6940円については当事者間に争いがない。 乙第6,12号証の1及び弁論の全趣旨によると,吉田病院に対して上記争いのない4736円も含めて治療費等として合計1万1936円が支払われたことが認められる。 甲第17号証の31の1,2及び甲第19号証の2によれば,原告が,藤田病院に対し支払ったレントゲン(写)の費用の6万1110円と送金手数料の210円,市リハビリセンターに対し支払った診断書の文書料5500円は,自賠責認定の資料として提出するために要した費用であり,これらは損害賠償請求関係費用として必要かつ相当のものと認められる。 (2) また,甲第18号証の1ないし5,甲第20号証の1ないし7によれば,原告は,七栗サナトリウムに対し49万9560円を,鵜飼病院に対し14万8260円をそれぞれ支払ったことが認められるが,甲第20号証の3の代金5040円は紙おむつ代であり,これは治療費ではなく入院雑費とすべきものである ウムに対し49万9560円を,鵜飼病院に対し14万8260円をそれぞれ支払ったことが認められるが,甲第20号証の3の代金5040円は紙おむつ代であり,これは治療費ではなく入院雑費とすべきものであるから,鵜飼病院に支払った14万8260円から5040円を控除した14万3220円を治療費と認めるのが相当である。 そして,甲第12ないし14号証,第20号証の1,4,6,7,第30,31号証及び第32号証の1ないし3並びに弁論の全趣旨によれば,原告は平成13年2月13日から同年4月2日まで鵜飼病院に入院し,同院におけるその間の治療は,症状固定後に行われたものではあるが,この治療は医師の指示によるリハビリテーション治療であり,治療の結果症状が改善するなど一定の効果があったと認められる。そうであれば,前記治療に要した支出は本件事故と相当因果関係を有し,かつ相当であると認められる。(これに対し,鵜飼病院を退院した平成13年4月2日以降の治療費については,具体的な金額の請求がないので判断しない。)(3) 原告は,「FES(機能的電気刺激)手術」の費用ないしは,今後の医療の進歩による治療費を請求するが,将来,原告が前記手術を受ける蓋然性があること及び今後の医療の進歩により原告が新たな治療を受ける蓋然性があることを認めるに足りる証拠はないから,損害としては認められない。 2 症状固定前の付添看護費 336万円上記認定事実並びに甲第6,8,11,12,31号証及び弁論の全趣旨によると,原告は完全介護の病院で入院したことが認められる一方で,原告の受傷は,重傷の頚椎損傷であり,本件事故直後椎弓切除の手術を行ったものの,藤田病院入院中である平成11年10月ころ,「退院見込み未定,治ゆ後の後遺障害有り,四肢完全麻痺」との診断が, 一方で,原告の受傷は,重傷の頚椎損傷であり,本件事故直後椎弓切除の手術を行ったものの,藤田病院入院中である平成11年10月ころ,「退院見込み未定,治ゆ後の後遺障害有り,四肢完全麻痺」との診断が,平成12年2月ころに至っても,「治ゆ後の後遺障害有り,四肢麻痺」との診断がなされていたこと,症状固定時に至ってもその症状は,重度の不全四肢麻痺,実用的な歩行不能,上肢筋力4レベルであるが手指機能全廃,上下肢ともに痙性強く,深部腱反射は著名な亢進のほか,神経因性膀胱が残存していたことから症状固定前の症状はかなりの介護が必要であったことが窺われること,原告の妻は,原告の娘に時には交代してもらいながら本件事故以来,原告の入院中は毎日通院し,退院後は自宅において原告の介護を行ったこと,その間の介護内容は,原告の食事,着替え,排泄,入浴,車イスへの移乗,体位交換等日常生活全般に及び,現在は,週5回のリハビリテーション治療を受けるため通院時の移動等にまで及んでいることが認められ,これらの事実によると,原告が本件事故により入院を開始した平成11年7月22日から症状固定日である平成13年1月31日までの入院期間中,原告の妻ら近親者は少なくとも上記介護内容と同程度の介護を行う必要があったことが認められる。 以上によれば,上記期間(560日間)の付添は本件事故と相当因果関係を有する損害であると認められ,その付添費用は1日当たり6000円が相当である。 計算式 6,000×560=3,360,000 3 将来の付添看護費 2807万7990円前記2で認定した原告の症状及び甲第2,6ないし9,12ないし14,28,30,31号証,第32号証の1ないし3並びに弁論の全趣旨によれば,原告が症状固定後の現在も全介助を必要とする状態にあること 前記2で認定した原告の症状及び甲第2,6ないし9,12ないし14,28,30,31号証,第32号証の1ないし3並びに弁論の全趣旨によれば,原告が症状固定後の現在も全介助を必要とする状態にあること,原告は,平成13年1月31日に市リハビリセンターを退院して以降,原告の妻や娘による看護を受けていたことが認められ,これらの事実を考慮すると,原告は,症状固定後平均余命までは付添看護が必要であると認められ,その付添看護費用は1日当たり6000円と認めるのが相当である。 原告の余命年数については,甲第1,6号証及び第11号証によれば,本件事故時において原告は58歳,症状固定時は満60歳であり,原告の症状固定時である平成12年の簡易生命表によれば60歳の男子平均余命は21年であると認めるのが相当である。 そこで,ライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して将来の付添看護費用の現価を求めると以下のとおり2807万7990円となる。 計算式 6,000×365×12.821=28,077,990 4 入院雑費 72万8000円前記2で認定した原告の症状及び甲第15,16号証,第17号証の1ないし31の2,第18号証の1ないし5,第19号証の1,2,第30,31号証,乙第8号証の1,2,第11号証並びに弁論の全趣旨によれば,原告の前記入院期間中の食事療養費等は1の治療費に含まれていたこと,原告の入院期間は長期であること,他方,原告の症状から紙おむつやその他日用雑貨品等が必要となったことが認められ,これらの事実からすると,原告の入院雑費につき,上記入院期間中1日当たり1300円の範囲で認めるのが相当である。 計算式 1,300×560=728,000 5 症状固定後の入院雑費 らすると,原告の入院雑費につき,上記入院期間中1日当たり1300円の範囲で認めるのが相当である。 計算式 1,300×560=728,000 5 症状固定後の入院雑費 5万8800円前記1(2)で認定した鵜飼病院における治療経過及び甲第30,31号証並びに弁論の全趣旨によると,原告は,平成13年4月2日に鵜飼病院を退院し,その後いくつかの病院で治療を受け,現在はB病院に通院して治療を受けていることが認められる。そこで,症状固定後の入院雑費については,甲第20号証の1ないし7及び弁論の全趣旨によれば,鵜飼病院に入院した49日間に入院雑費がかかったことが認められ,次のとおり6万3700円を認めるのが相当であるが,これを超える入院雑費を認めるに足りる証拠はない。また,将来再び入院する蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,将来の入院雑費も認められない。 計算式 1,300×49=63,700 6 将来の通院費 0円原告は,将来の通院については,タクシーで往復することとなると主張するが,そもそも将来の通院が必要である蓋然性,仮に必要であったとしても現在の自宅からB病院に通院するに当たり原告が必要とする交通費について,これを認めるに足りる証拠はない。 7 付添者交通費 0円近親者の付添の交通費は,付添看護費及び入院雑費の中に含まれている。 8 住宅改造費等 379万円前記認定事実及び甲第21,43号証の2,3,4(第21号証と同じ),5,第44ないし51号証並びに弁論の全趣旨によると,原告は遅くとも平成14年2月から,自宅で療養しているが,原告の症状は前記 円前記認定事実及び甲第21,43号証の2,3,4(第21号証と同じ),5,第44ないし51号証並びに弁論の全趣旨によると,原告は遅くとも平成14年2月から,自宅で療養しているが,原告の症状は前記の通り,重度の不全四肢麻痺,実用的な歩行不能,上肢筋力4レベルであるが手指機能全廃,上下肢ともに痙性強く,深部腱反射は著明な亢進のほか,神経因性膀胱が残存して症状固定しており,原告が本件事故時に居住していた住居は,原告の移動に支障があったこと,風呂場が狭く,戸も閉められず,湯船にも入れないという状況であったことから,介護の利便性のみならず原告が安全な在宅療養を受けるために改造若しくは介護に適した新居を購入する必要があったこと,原告の当時の住居は公団住宅で自由に改造することが許されなかったこと,原告は,当初原告の母親の住居を改造しようと考え訴外ニック株式会社名古屋支店に見積りをしてもらったが,同見積りによれば,改装に必要な工事代金は221万5783円であったこと,しかし原告の自宅近くにリハビリに適したB病院があり,原告は,同病院に通院したいという希望があったこと,そこで,原告は,①現在通院しているB病院に無理なく通院できる距離にあること,②車イスでの日常生活で不便のないことであること,③原告にも介護者にもできるだけ負担のないこと,④現在入院中の原告の母親を引き取って介護することのできる体制をとれることなどを考え,平成14年7月9日ころ,訴外三井不動産販売株式会社から本件マンションを原告主張のとおり合計3793万7041円の費用をかけて購入したこと,その結果,当初必要としていた改装工事の殆どは必要なくなったことがそれぞれ認められる。 本件マンションは,原告の主張するとおり,原告の母親の介護の必要性も考慮して購入したこと,本件マンションの価値は資 の結果,当初必要としていた改装工事の殆どは必要なくなったことがそれぞれ認められる。 本件マンションは,原告の主張するとおり,原告の母親の介護の必要性も考慮して購入したこと,本件マンションの価値は資産として後々まで残ることが認められ,新居の工事費用,引越費用等のうち,原告の介護用の住宅にするために要した費用の内訳金額を具体的に認めるに足りる証拠はない。他方,原告は,治療のために通院するとき以外は,本件マンションで介護を受けながら療養する必要がある。しかし,原告が本件事故時に居住していた住宅では充分な介護を受けることはできなかったのであり,原告が充分な介護を受けるためには新しい住居を購入するか現住居を改造するかが必要であったと認められる。 以上によれば,本件マンション購入費用のうち少なくとも約1割に相当する379万円は本件事故と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。 9 装具その他 77万8468円前記認定事実並びに甲第22ないし24号証,第54号証の1,2,第55号証の1,2,第56号証の1,2,乙第6号証,第12号証の3及び弁論の全趣旨によれば,原告は本件事故による後遺障害により,車イス等の補装具が必要であったこと,車イス,歩行補助杖(カナディアン・クラッチ),歩行器,入浴補助用具,特殊便器などの補装具・日常生活用具については補助金が出されており,平成12年12月から平成13年3月までの間に名古屋市千種区社会福祉事務所長が補装具等を販売・修理する業者である訴外ニック株式会社に対して,自己負担額が明記された委託書を発行し,原告は自己負担分37万8313円を訴外ニック株式会社に支払ったこと,またその他の補装具代金として東名ブレースへ支払った額は計40万155円であることが認められる。 これ 記された委託書を発行し,原告は自己負担分37万8313円を訴外ニック株式会社に支払ったこと,またその他の補装具代金として東名ブレースへ支払った額は計40万155円であることが認められる。 これらの補装具について,現在公的補助がなされていることについては,当事者間に争いがない。そして,上記認定によれば,原告は自己負担分のみを本訴において請求していることが認められる。 以上によれば,装具費として上記金額が本件事故と相当因果関係のある損害として認められる。 10 将来の装具購入費用 311万7659円(1) 車イス原告は,原告の使用する車イスについて,現在室内用車イスと屋外用車イスを分けて利用しており,室内用車イスの耐用年数は4年であり,平均余命20.99年の間に少なくとも5回の買い替えが必要となり,屋外用車イスの耐用年数は5年であるから少なくとも4回の買い替えが必要となると主張する。 甲第11,23,25,30,42,57,58号証及び前記で認定した原告の後遺障害の程度に照らせば以下の事実が認められる。まず,手動車イスの耐用年数は4年,電動車イスの耐用年数は5年である。次に,原告主張の室内用車イスは手動,原告主張の屋外用車イスは電動である。また,原告は,本件事故による後遺障害によりその移動には屋内であろうと車イスが必要であり,他方通院にも車イスが必要である。そして,原告は,平成12年10月3日に車イスの代金を支払っている。 以上の事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,症状固定前である平成12年10月3日ころ一度車イス一台の交付を受けたが,通院治療に切り替えた現在は室内用車イスと屋外用車イスの二台を使用していると推認されるので,原告は症状固定時ころに,二台の車イスが必要 である平成12年10月3日ころ一度車イス一台の交付を受けたが,通院治療に切り替えた現在は室内用車イスと屋外用車イスの二台を使用していると推認されるので,原告は症状固定時ころに,二台の車イスが必要となり,その後耐用年数の到来ごとに(すなわち,室内用車イスについては,本件事故日から6,10,14,18,22年後に買い換えが必要となり,屋外用車イスについては,7,12,17,22年後に)買い替えが必要となるものと認めるのが相当である。そこで,その購入費用の現価を,ライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して算定すると以下のとおり159万9905円となる。 計算式(ア)(室内用)109,500×(0.9070+0.7462+0.6139+0.5050+0.4155+0.3418)=386,469.3計算式(イ)(屋外用)411,000×(0.9070+0.7106+0.5568+0.4362+0.3418)=1,213,436.4(ア)+(イ)=1,599,905.7(2) 歩行補助杖甲第24,25号証によると歩行補助杖の代金額は,8858円であること,歩行補助杖の種類はカナディアン・クラッチと呼ばれるものでその耐用年数は4年であり,原告の症状固定時の年齢である60歳の平均余命21年の間に少なくとも5回の買い換えが必要であること,平成13年2月15日に公的補助による交付を受けていることが認められる。 以上によれば,本件事故日から6,10,14,18及び22年後にそれぞれ買い換えが必要となるので,ライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して将来必要となる歩行補助杖の購入費用の現価を求めると以下のとおり2万3229円となる。 計算式 8,858×(0.7462+0.6139+0.5050+0.4155+0.3418 の中間利息を控除して将来必要となる歩行補助杖の購入費用の現価を求めると以下のとおり2万3229円となる。 計算式 8,858×(0.7462+0.6139+0.5050+0.4155+0.3418)=23,229.2192(3) 歩行器甲第24,25号証によると歩行器の代金額は,3万3990円であること,その耐用年数は4年であり,原告の症状固定時の年齢である60歳の平均余命21年の間に少なくとも5回の買い換えが必要であること,上記(2)と同様平成13年2月15日に交付を受けていることが認められる。 以上によれば,本件事故日から6,10,14,18及び22年後にそれぞれ買い換えが必要となるので,ライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して将来必要となる歩行器の購入費用の現価を求めると以下のとおり8万9135円となる。 計算式 33,990×(0.7462+0.6139+0.5050+0.4155+0.3418)=89,135.376(4) その他,原告は現在購入していないもののパソコン(耐用年数10年,買い換え2回),体位変換器(耐用年数10年,買い換え2回),入浴補助用具(耐用年数3年,買い換え6回),ベッドサイドの柵(耐用年数3年,買い換え6回)携帯電話(耐用年数5年,買い換え4回),特殊尿機(耐用年数5年,買い換え4回)も損害として主張する。 前記認定並びに甲41号証の2ないし5及び弁論の全趣旨によると,体位変換器,入浴補助用具,ベッドサイドの棚及び特殊尿機はその必要性が認められ,本件事故と相当因果関係を有する損害であること,(ア)体位変換器の価格は1万8000円でその耐用年数は10年であること,(イ)入浴補助用具の価格は27万円でその耐用年数は3年であること,(ウ)ベッドサイドの棚の価格は3万900 損害であること,(ア)体位変換器の価格は1万8000円でその耐用年数は10年であること,(イ)入浴補助用具の価格は27万円でその耐用年数は3年であること,(ウ)ベッドサイドの棚の価格は3万9000円でその耐用年数は3年であること(エ)特殊尿器の価格は7万8000円でその耐用年数は5年であることが認められるが,パソコン,携帯電話については,その必要性,本件事故との因果関係を認めるに足りる証拠はない。 また,特殊尿機については,前記9で認定した特殊便器とは用途が異なると考えられるが,入浴補助用具については,前記9で認定したとおり既に給付がなされていること,甲第23号証及び弁論の全趣旨によれば平成12年2月19日ころ購入されたと認められることから,買い換え分のみ考慮することとする。以下,それぞれ計算する。なお,原告は症状固定時からの平均余命で買い換え時期を計算しているが,原告の主張並びに前記9及び上記(1)ないし(3)の認定事実によっても,未だ購入されていない用品((ア),(ウ),(エ))については,口頭弁論終結時の年に最初の購入をするものとして,買い換え時期及び買い換えの回数を算出し,ライプニッツ方式により年5分の割合の中間利息を控除して算定することとする。 計算式(ア) 18,000×(0.8227+0.5050)=23,898.6計算式(イ) 270,000×(0.8227+0.7106+0.6139+0.5303+0.4581+0.3957+0.3418)=1,045,737計算式(ウ) 39,000×(0.8227+0.7106+0.6139+0.5303+0.4581+0.3957+0.3418)=151,050.9計算式(エ) 78,000×(0.8227+0.6446+0.5050+0.3957)=184,704(ア)+(イ 9+0.5303+0.4581+0.3957+0.3418)=151,050.9計算式(エ) 78,000×(0.8227+0.6446+0.5050+0.3957)=184,704(ア)+(イ)+(ウ)+(エ)=1,405,390.5 11 休業損害 827万4452円甲26号証及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成9年4月1日から本件事故時まで,Cに勤務し,平成10年の年収は539万3170万円であったこと,原告は,本件事故により,本件事故日から症状固定日に至るまでの560日間休業したこと,平成11年7月22日から同年9月末までの給与は全額支給されたこと,欠勤控除は賞与時又は退職時に行うこと,原告は現在退職していることが認められる。以上によれば,休業した間の給料は支払われていないことになり,本件事故前年度の年収539万3170円に応じた給与分である828万9228円の休業損害が認められる。 計算式 5,393,170÷365×560≒8,274,452 12 逸失利益 4479万7827円原告の基礎となる収入は前記11で認定したとおり539万3170円であり,前記認定のとおり症状固定時が60歳であるので,原告が本件事故に遭遇しなければ,原告は症状固定時から平均余命の半分程度と解される11年間程度就労可能であったというべきであるから,ライプニッツ方式により中間利息を控除すると上記金額になる。 計算式 5,393,170×8.3064=44,797,827.288 13 入院慰謝料 367万円これまでに認定した原告の障害の部位や程度,症状固定までの入院期間18か月のほかにも通院治療を行っている治療経過,本件事故の態様等か 入院慰謝料 367万円これまでに認定した原告の障害の部位や程度,症状固定までの入院期間18か月のほかにも通院治療を行っている治療経過,本件事故の態様等からすると,原告の受傷による入院慰謝料は金367万円が相当である。 14 後遺障害慰謝料 2800万円原告の後遺障害の程度,本件事故態様,原告は後遺障害のため,前記判示以外にも,(紙おむつ代等の雑費として)数額としては確実に把握し得ないような医療品等特別の負担が必要となること,原告の在宅看護のため新居の購入及び引越を行うこととなったこと等を考慮すると,その後遺障害慰謝料は上記金額とするのが相当である。 15 損害小計 1億2885万5522円第3 過失相殺 1 甲第3ないし5号証,乙第2号証及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 被告Aは,事業用大型乗用自動車(市バス)を運転し,名古屋環状線上を前車に追従して走行中に,前車の動静を注視しないで進行した過失により,前車が進路前方で停止しようとかけたブレーキランプを発見するのが遅れ,前車との衝突を避けるため急制動の措置を採った結果,原告を含む乗客に急激な衝撃を与えた。 他方原告は,自分の降車する予定のバス停が近づいてきたころ,バスの走行中に,それまで座っていた座席を立ち,片方の手に鞄を,もう片方の手で座席の肘当て部分を持っていたが,本件事故の原因となった急制動時にはつり革や手すりに手をかけていなかったことが認められる。そして,原告は乗車前にビール中ジョッキを2杯程度飲んでいた。 2 市バスの運転手である被告Aには安全運転の義務があるというべきであるが,市バスの運行に際して,バスの運転手は,バスの運行に伴う危険防止のため 原告は乗車前にビール中ジョッキを2杯程度飲んでいた。 2 市バスの運転手である被告Aには安全運転の義務があるというべきであるが,市バスの運行に際して,バスの運転手は,バスの運行に伴う危険防止のため,やむを得ず制動措置等をとることがある。これに対応して乗客にも,バスの発進や走行中の揺れに伴う危険から自らを守る努力が求められるというべきであり,そのような努力をしていたならば,損害の発生を防ぐことができ,又は,損害の拡大を防止できる場合があることは否定できない。 本件事故において原告は,バス停が近づいてきたために降車のため席を立ち,その後安全確保のためつり革や手すりに常に掴まっていたわけではなかったという事実があり,これは過失相殺において原告の過失と評価するのが相当であるけれども,その過失は被告Aの過失と比較したとき,それ程大きいものとは認められない。なお,原告は被告車に乗車前にアルコールを摂取していたが,このことが本件事故に影響を与えたことを認めるに足りる証拠はない。 3 以上によれば,原告の過失割合は1割5分をもって相当と認められる。 第4 損益相殺・損害の填補 1 傷病手当金 290万2746円原告が健康保険から傷病手当金として合計金290万2746円の給付を受けていることは当事者間に争いがない。 そして,この給付は,その性質からみて原告が本訴で主張している損害と同一同質のものを対象としているということができ,その給付により原告の損害を填補しているというべきであるから,その給付額を原告の損害額から控除すべきである。 2 高額療養費 22万4448円原告が健康保険から高額療養費として合計金9万6456円の給付を受けていることは当事者間 ある。 2 高額療養費 22万4448円原告が健康保険から高額療養費として合計金9万6456円の給付を受けていることは当事者間に争いがない。 乙第11号証及び弁論の全趣旨によると,原告は合計66万9148円の高額療養費を受け取っていること,上記争いのない金額の給付は平成13年1月までの保険治療に対応するもので,上記金額を超える給付はそれ以降の治療に対応するものであり,そのうち平成13年4月分までの治療に対応する高額療養費は12万7992円であることが認められる。 そして,高額療養費の性質からみて被保険者の受けた被害を填補するものである点において,損害賠償と同一の事由の関係があり,その給付により損害を填補しているといえるものは,治療費が請求されている期間に対応する高額療養費のみであるというべきであるから,治療費が請求されている本件事故日から平成13年4月分までの給付額を原告の損害額から損益相殺して控除すべきである。 3 食事療養費 0円乙第11号証,第12号証の8及び弁論の全趣旨によれば,原告は健康保険から現物給付として食事療養の支給を受け,これにつき墨田社会保険事務所長から被告に対して求償請求がなされていることが認められるけれども,この給付は,元来対応する治療費が損害として計上され,これにつき同額の填補がされたものとして,過失相殺の処理前に控除されるべきものであるところ,原告はこれに係る治療費を損害として主張・請求していないのであるから,結局,この治療費及び健康保険給付は,本件における損害賠償額の算定上は考慮する必要がないものというべきである。 したがって,食事療養金を治療費として加え,さらにこれにつき損益相殺するべ のであるから,結局,この治療費及び健康保険給付は,本件における損害賠償額の算定上は考慮する必要がないものというべきである。 したがって,食事療養金を治療費として加え,さらにこれにつき損益相殺するべきという被告の主張は採用できない。 4 既払金 3704万4688円(1) 原告に対し,本件事故により,被告らの契約している任意保険から704万4688円が支払われたことは当事者間に争いはない。 (2) 自賠責後遺障害分自賠責保険の後遺障害分として原告が本件事故について3000万円受領していることも当事者間に争いがない。 (3) また,被告は,原告が自賠責保険傷害分金120万円を受領したこと,原告が受領したニッセイ同和損害保険株式会社加入の任意保険金は990万円である旨主張するが,当事者間に争いのない上記(1)及び(2)以外の金員につき原告がこれらの金銭を受領した事実を認めるに足りる証拠はなく,同主張を採用することはできない。 5 過失相殺と損益相殺の先後健康保険法による健康保険給付は,被害者の過失を重視することなく,社会保障の一環として支払われるべきものであることに鑑みれば,過失相殺の負担は保険者等に帰せしめるのが妥当であるから,健康保険法による傷病手当金及び高額療養費の各給付は,過失相殺前にこれを損害から控除すべきである。他方,被告の内払金等その他の既払金は,損害賠償の一般法理により,過失相殺をした後にこれらの金員の控除をすべきものと解するのが相当である。 第5 弁護士費用 458万円第6 結論以上によれば,原告の請求は,上記損害金7440万4390円及びこれに対する本件事故日である平成11年7月21日以降完済まで年5分の割合 458万円第6 結論以上によれば,原告の請求は,上記損害金7440万4390円及びこれに対する本件事故日である平成11年7月21日以降完済まで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので,これを認容し,原告のその余の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第3部裁判長裁判官渡辺修明裁判官城内和昭裁判官宮崎雅子

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