平成25(ワ)15928 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年5月31日 東京地方裁判所
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本件は、原告出水商事株式会社が、元従業員である被告A及びBに対し、営業秘密である顧客名簿を不正に取得・使用したとして損害賠償を求めた事案である。原告は、被告Aらが原告在職中に被告会社を設立し、原告の取引先に対して虚偽の情報を流布し、営業活動を行ったことを主張した。主要な争点は、被告Aらの行為が不法行為及び債務不履行に該当するか、また、被告会社が使用者責任を負うかどうかであった。裁判所は、被告Aらの行為が原告に対する共同不法行為に該当し、被告Aに対して295万8798円の支払いを命じ、その他の請求を却下した。判決の結論として、原告の一部請求が認められ、被告Aに対する損害賠償が認められたものの、被告会社及びBに対する請求は棄却された。

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判決文本文46,084 文字)

平成28年5月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第15928号損害賠償請求事件口頭弁論の終結の日平成28年3月8日判決 原告出水商事株式会社同訴訟代理人弁護士小 山 信二郎同岡田 隆同李 哲芝 被告株式会社VIVIT(以下「被告会社」という。)被告 A(以下「被告A」という。)被告 B(以下「被告B」という。)上記3名訴訟代理人弁護士貝塚慶一 主文 1 原告の訴えのうち,被告A及び同Bに対する別紙却下請求目録記載の各請求に係る訴えを却下する。 2 被告Aは,原告に対し,295万8798円及びこれに対する平成25年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告Aに対するその余の請求並びに被告会社及び被告Bに対する請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告に生じた費用の20分の19,被 告Aに生じた費用の10分の9,並びに被告会社及び被告Bに生じた費用を原告の負担とし,原告及び被告Aに生じたその余の費用を被告Aの負担とする。 5 この判決は,第2項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,原告に対し,連帯して,2000万円及びこれに対する平成25年7月2日(被告らに対する最終の訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告A及び同B(以下,同被告ら両名を併せて「被告Aら」という。)は,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿の内容を用いて,顧客に の訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告A及び同B(以下,同被告ら両名を併せて「被告Aら」という。)は,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿の内容を用いて,顧客に対して,面会を求め,電話をし,郵便物を送付し又は電子メールを送信する等して,酒類に関する契約の締結,締結の勧誘又はその他営業行為等をしてはならない。 3 被告Aらは,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿に記載する内容が記録されたコンピューター内の記録媒体又はPCカード,CD-ROM,DVD-ROM並びにフロッピーディスク等の電磁的記録媒体を廃棄し,原告に対し,同記録媒体及び同電磁的記録媒体からの印刷物を引き渡せ。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告が,①原告の元従業員である被告Aらが,原告在職中に,被告会社を設立し,原告の取引先である海外のワイン生産者らに対し,原告を中傷した上で被告会社として取引を希望する旨のメールを送ったり,原告における後任者に虚偽の引継ぎをしたりするなどし,原告退職後に,被告会社において,原告と取引関係のあった海外のワイン生産者らからワインを購入した,②被告Aらが,原告の営業秘密たる別紙営業秘密目録記載の顧客名簿(コンピュータ ー内の記録媒体又はその他の電磁的記録媒体に保存された電磁的データ及びこれを出力した印刷物を含む。以下「本件顧客名簿」という。)を不正に取得・使用し,又は被告会社に開示して,本件顧客名簿に記載された顧客に対し,被告会社として営業活動を行い,被告会社も,被告Aらによる本件顧客名簿の不正開示を知ってこれを取得・使用したなどと主張して,被告らに対し,次の各請求をする事案である。 (1) 原告は,被告Aらに対し,被告Aらによる上記一連の行為が原告に対する共同不法行為,債務不履行(原告と を知ってこれを取得・使用したなどと主張して,被告らに対し,次の各請求をする事案である。 (1) 原告は,被告Aらに対し,被告Aらによる上記一連の行為が原告に対する共同不法行為,債務不履行(原告との雇用契約の継続中は雇用契約違反,同雇用契約の終了後は競業禁止合意違反)に該当し,また,被告Aらによる本件顧客名簿の取得,使用又は被告会社に対する開示が不正競争防止法2条1項4号及び7号の不正競争に該当するとして,民法709条,415条又は不正競争防止法4条に基づき,損害賠償金の一部である2000万円及びこれに対する不法行為及び不正競争行為の後でありかつ被告らに対する最終の訴状送達日の翌日である平成25年7月2日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。(上記第1の1)(2) 原告は,被告会社に対し,被告会社が被告Aらの上記一連の不法行為について使用者責任を負い,また,被告会社による本件顧客名簿の取得及び使用が不正競争防止法2条1項5号及び8号の不正競争に該当するとして,民法715条又は不正競争防止法4条に基づき,被告Aらと同額の金員の連帯支払を求める。(上記第1の1)(3) 原告は,被告Aらに対し,不正競争防止法3条1項に基づき,本件顧客名簿を用いた本件顧客名簿記載の顧客に対する営業行為の差止めを求める。 (上記第1の2)(4) 原告は,被告Aらに対し,不正競争防止法3条2項に基づき,本件顧客名簿が記録されたコンピューター内の記録媒体及びその他の電磁的記録媒体の廃棄並びにこれらの記録媒体及び電磁的記録媒体からの印刷物の引渡 しを求める。(上記第1の3) 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 当事者原告は,酒類,食料品,清涼飲 渡 しを求める。(上記第1の3) 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 当事者原告は,酒類,食料品,清涼飲料の輸出入・販売等を目的とする株式会社(昭和47年10月設立,資本金5000万円)であり,被告会社は,酒類の輸出入,卸売及び小売業等を目的とする株式会社(平成24年9月設立,資本金800万円)である。 被告Aは,平成10年ころから平成24年9月まで,同Bは,平成14年ころから平成24年10月まで,それぞれ原告の従業員であった者であり,被告Aは,被告会社の設立時から,その代表取締役を務めている。 (弁論の全趣旨)(2) 被告会社の設立以前の原告の仕入・販売状況などア原告は,平成22年に,ワイン生産者であるE(以下「E」という。)からワインを購入するようになり,同年及び平成23年の2年間,いずれもイン・ファイン,コンフィダンス及びヴァンソブルの3銘柄を購入した。 イ原告は,平成16年ころ以降,ワイン生産者であるF(以下「F」という。)からワインを購入するようになり,平成23年ころからはその購入を予約するようになった。Fのワインは非常に人気が高く,また,Fは小規模なワイン生産者であったため,原告が購入することのできるワインは,年間300本から480本程度であった。 ウ原告は,平成23年,ワイン生産者であるG(以下「G」という。)から,シャトー・サミオン赤,イレルギー赤及びイレルギー白という3銘柄のワインを購入した。このうち,イレルギー赤の生産量は年間1200本であり,原告は,平成23年まで継続的に毎年その半分程度を購入していた。 エ原告は,平成22年11月ころから,ワイン生産者であるH(以下「H」 という。)から,ワイン 産量は年間1200本であり,原告は,平成23年まで継続的に毎年その半分程度を購入していた。 エ原告は,平成22年11月ころから,ワイン生産者であるH(以下「H」 という。)から,ワインを購入するようになり,平成23年も継続して同社からワインを購入した。Hのワインは人気があったことから,原告は,平成23年秋ころ,Hに対し,平成24年におけるワインの購入を予約した。 オ原告は,平成22年及び23年に,ワイン生産者であるI(以下「I」という。)から,ワインを年に2回ずつ購入し,平成24年にも1回,Iからワインを購入した。 カ原告は,平成21年又は平成22年ころから,Mという仲買人(ネゴシャン)から,ワイン生産者であるJ(以下「J」という。)のワインを購入するようになった。また,原告は,Nという仲買人から,ワイン生産者であるK(以下「K」という。)のワインを購入し,Oという仲買人から,平成23年までに2回,ワイン生産者であるL(以下「L」という。)のワインを購入した。 (3) 被告Aらの原告での執務状況等被告Aは,C(以下「C」という。)と共に,被告会社の貿易部の担当者として,海外のワイン生産者からのワイン購入(仕入れ)業務に従事し,前記(2)のワイン生産者8社(E,F,G,H,I,J,K及びL。以下「本件生産者ら」といい,本件生産者らの生産に係るワインを「本件各ワイン」という。)からのワインの購入については,被告Aが平成24年9月に原告を退職するまで,被告Aが一人で担当していた。また,被告Bは,被告会社の営業部において,国内の顧客に対する営業活動に従事していた。 (甲25,証人D,被告A,被告B)(4) 被告会社の設立及び被告Aらの退職等ア被告Aは,原告在職中の平成24年9月3日に被告会社を設立し,同社の代 の顧客に対する営業活動に従事していた。 (甲25,証人D,被告A,被告B)(4) 被告会社の設立及び被告Aらの退職等ア被告Aは,原告在職中の平成24年9月3日に被告会社を設立し,同社の代表取締役に就任した。被告会社の設立に当たっては,資本金800万円のうち,被告Aが500万円を,被告Bが300万円を,それぞれ出資した。(被告A,被告B,弁論の全趣旨) イ被告Aは,平成24年9月15日,原告を自己都合退職した。被告Aは,原告の代表取締役に対し,退職理由について,父親の介護のため実家に戻る必要があり,また,自らの健康上の理由から原告での仕事を継続することができないためである旨の説明をした。被告Aは,被告会社の設立後,被告会社の代表者として,被告会社におけるワイン生産者らからの購入等の業務に従事している。 被告Bは,同年10月15日に原告を自己都合退職して被告会社に就職し,被告会社の営業部長として勤務し,被告会社の国内の顧客に対するワインの販売等の業務に従事している。 (甲3,被告A,被告B)(5) 原告の就業規則の定め原告の就業規則(以下「原告就業規則」という。)には,次の各規定がおかれている。(甲4(枝番を含む。以下,特に断らない限り同様))ア 32条服務心得従業員は,常に次の事項を守り服務に精励しなければならない。 4号会社の業務上の機密および会社の不利益となる事項を他に洩らさないこと。 イ 46条競業およびスカウトの禁止1項従業員は退職後3年間当社の定款に定める目的と同一または類似の業務を営む会社を自ら設立し,またはその会社の役員として勤務することはできない。 3 争点(1) 差止め,廃棄及び引渡しを求める請求(前記第1の2,3)が特定されているといえるか(本案前の争点) 営む会社を自ら設立し,またはその会社の役員として勤務することはできない。 3 争点(1) 差止め,廃棄及び引渡しを求める請求(前記第1の2,3)が特定されているといえるか(本案前の争点)(2) 不法行為の成否ア被告Aらの一連の行為につき,原告に対する共同不法行為が成立するか (争点1)イ被告Aらの一連の行為につき,被告会社が使用者責任を負うか(争点2)(3) 債務不履行の成否被告Aらの一連の行為につき,原告に対する債務不履行が成立するか(争点3)(4) 不正競争の成否ア本件顧客名簿の営業秘密該当性(争点4)イ被告Aらが本件顧客名簿を不正に取得し,使用し,又は開示したか(争点5)ウ被告会社が,被告Aらによる本件顧客名簿の不正取得行為又は不正開示行為を知りながらこれを取得し,又は使用したか(争点6)(5) 損害額(争点7) 4 争点に関する当事者の主張(1) 本案前の争点[原告の主張]前記第1の2及び3の各請求に係る本件顧客名簿の内容はいずれも明確であるから,これらの各請求は特定されており,これらに係る訴えは適法である。 [被告らの主張]上記第1の2の請求は,使用の禁止を求める本件顧客名簿の内容と接触の禁止を求める顧客の範囲が不明確であり特定していない。また,上記第1の3の請求は,記録媒体の廃棄及び印刷物の引渡しを求める「記録」の対象となる本件顧客名簿の内容が,不明確であり特定していない。したがって,前記第1の2及び3の各請求に係る訴えは,不適法な訴えとして却下されるべきである。 (2) 争点1(被告Aらの一連の行為につき,原告に対する共同不法行為が成 立するか)について[原告の主張]ア不法行為又は債務不履行を構成する被告Aらの一連の行為の詳細は である。 (2) 争点1(被告Aらの一連の行為につき,原告に対する共同不法行為が成 立するか)について[原告の主張]ア不法行為又は債務不履行を構成する被告Aらの一連の行為の詳細は,次のとおりである。 (ア) 原告が購入するはずだったワインの横取り被告Aらは,原告が本件生産者らから購入して日本で販売する予定であった本件各ワインを,原告に代わって被告会社が販売することができるよう,原告在職中から画策し,①被告Aにおいて,原告在職中に,本件生産者らに対し,原告の信用を低下させる虚偽の内容のメールを送信した上,原告の社内に向けては,本件生産者らからのワインの購入時期等に関する虚偽の内容の社内メールを送信するなどし,②原告を退職する際,被告Aらにおいて,本件生産者らとの過去の取引に関する書類を生産者ごとに綴ったファイル(シッパーファイル)を持ち出した上,被告Aにおいて,本件生産者らの事情でワインの生産が遅れているなどという虚偽の引継書を作成したり,本件生産者らと行った取引に関するメールを含む記録を削除したりするなどし,これらの行為により,原告が本件生産者らからワインを購入できない状態を作出した。その上で,③原告が,被告Aの虚偽の引継書に従って本件生産者らからの連絡を待っている間に,被告Aにおいて,被告会社として本件生産者らと連絡を取って,本来であれば原告が購入するはずであったワインを横取りして購入した(以下,原告の主張する上記①~③の一連の行為を「本件横奪行為」という。)(イ) 本件顧客名簿の持出し及びこれに基づく原告の顧客に対する営業被告Aらは,本件顧客名簿を原告に無断で持ち出した上,原告を退職した後,被告会社として,本件顧客名簿に記載された顧客に対して営業行為を行った。 (以下,原告の主張するこの一連の行為 客に対する営業被告Aらは,本件顧客名簿を原告に無断で持ち出した上,原告を退職した後,被告会社として,本件顧客名簿に記載された顧客に対して営業行為を行った。 (以下,原告の主張するこの一連の行為を「本件営業行為」 という。)イ原告の事業は,海外のワイン生産者からワインを購入するという輸入行程(購入行程)と購入したワインを日本国内の顧客に販売する営業行程とに大きく分けられるが,日本国内の顧客は,ワインの生産者,銘柄及び稀少性等を重要な判断要素として,原告からワインを購入するのであるから,上記輸入行程が重要かつ独立した事業であることは明らかである。また,原告において海外のワイン生産者らに対してワインの発注をするに当たっては,通常,在庫確認に半月から1か月程度,発注書の郵送からワインの到着までに2,3か月程度をそれぞれ要するため,各生産者に対して1年に1度又は2度程度しかワインの発注を行うことができない。このとおり,行程に要する期間という観点からも,上記輸入行程が,原告の事業において重要な意味を持つことは明らかである。 さらに,原告がワインを購入している海外のワイン生産者らは,主に原告が新規開拓した小規模な農家で,原告との信頼関係に基づき,原告を通じてのみ日本にワインの出荷を行ってきたが,被告会社との取引開始後は原告に対するワインの出荷を拒絶するワイン生産者が実際に複数現れているから,上記輸入行程に対する競業等の妨害行為は,上記営業行程に対する妨害行為ともなる。 ウ以上のとおり,原告の事業において上記輸入行程は極めて重要な意味を持つ独立した事業行為であるところ,被告Aらは,原告在職中において,本件横奪行為により原告の上記輸入行程を侵害したのであり,同加害行為の違法性は強い。また,被告Aらは,本件横奪行為により,従前原 を持つ独立した事業行為であるところ,被告Aらは,原告在職中において,本件横奪行為により原告の上記輸入行程を侵害したのであり,同加害行為の違法性は強い。また,被告Aらは,本件横奪行為により,従前原告が取引をしていた海外の生産者からワインを購入し,これにより原告がこれらのワインを販売することができなくする反面,本件営業行為によって,被告会社としてこれらのワインを販売しているのであり,被告Aらによる原告の上記営業行程に対する同加害行為が,原告に対する共同不法行為とな ることもまた明らかである。 エ被告Aらは,原告の元従業員であり,本件横奪行為及び本件営業行為という一連の加害行為によって,原告の利益を侵害することを当然に認識していた。また,被告Aは,平成24年の春ころ以降,原告からの独立を企図していたことに加え,原告が購入する予定であったワインを被告会社として購入し,販売するために虚偽の引継書の作成や虚偽の社内メールの送信を行う等の確信犯的行為を行っている。したがって,被告Aらには,上記加害行為についての故意も認められる。 [被告Aらの主張]ア原告が主張する本件横奪行為及び本件営業行為について(ア) 本件横奪行為について被告Aが本件生産者らからワインを購入すべく,本件生産者らと直接又は間接に取引の交渉をした上で被告会社としてワインを購入したことは事実である。しかしながら,被告Aが,被告会社として,原告において購入予約をしていたワインを購入したのは,Gのワインについてのみであるし,この行為も含めて,被告Aの行為は全て自由競争の範囲内の行為であって,不法行為には当たらない。 また,原告は,被告Aらが原告を退職する際に原告からシッパーファイルを持ち出したと主張するが,そのような事実はない。被告会社にとって原告のシッ 争の範囲内の行為であって,不法行為には当たらない。 また,原告は,被告Aらが原告を退職する際に原告からシッパーファイルを持ち出したと主張するが,そのような事実はない。被告会社にとって原告のシッパーファイルは不要であり,これを持ち出す理由がない。 さらに,原告は,被告Aが原告を退職する際に本件生産者らと行った取引に関するメール等を削除したとも主張するが,被告Aは,原告に在籍中,本件生産者らを含む約50のワイン生産者等との間で日常的にメールのやり取りをし,1日に40通ほどのメールを送受信していた。被告Aは,原告のサーバー管理担当者から,メールを保存するとサーバーの記憶容量が減ると言われていた上,メールの内容も事務的なものがほと んどで保存しておく必要がなかったことから,定期的にメールを削除していたのであって,特に不当な意図はない。加えて,原告は,被告Aが海外のワイン生産者らに虚偽の内容のメールを送信して原告に対する信頼を低下させたとも主張するが,原告が送信したメールの内容はいずれも真実であり,原告に対する信頼を低下させるようなものではなかった。 また,被告Bは,本件横奪行為を一切行っていない。 (イ) 本件営業行為について原告は,被告Aらが本件顧客名簿を持ち出し,これを利用して原告の顧客に対して営業活動を行ったと主張する。しかしながら,被告Aらが本件顧客名簿を持ち出した事実はなく,これを利用した事実もないし,被告会社は,原告の顧客以外の多数のワイン販売業者に対しても広く営業活動を行っているのであって,原告の顧客は被告会社の顧客のごく一部にすぎない。このように,被告会社は,原告の顧客を含む多くの顧客に対して営業行為を行ったにすぎず,自由競争の範囲内の適法な行為である。 イ被告Aに不法行為が成立しないこと上記ア(ア ごく一部にすぎない。このように,被告会社は,原告の顧客を含む多くの顧客に対して営業行為を行ったにすぎず,自由競争の範囲内の適法な行為である。 イ被告Aに不法行為が成立しないこと上記ア(ア)のとおり,被告Aが,①本件生産者らと直接又は間接に取引の交渉をし,被告会社として本件各ワインを購入したこと,②原告がGに購入予約をしていたワインを,被告会社として購入したことは,いずれも事実である。 しかしながら,原告には,平成24年のワインの購入について,Eからの購入予定はなく,Iとは何らの約束も取り交わしていない。また,FやGが原告との取引を中止したのは飽くまでFやGの判断によるもので,被告Aの上記各行為に起因するものではない。さらに,原告は,平成25年以降の本件各ワインの購入について,本件生産者らや仲買人らとの間で何らの契約も取り交わしておらず,将来の取引継続は単なる期待にすぎない から,被侵害利益となり得る具体的な利益がない。このように,被告Aの上記行為は,いずれも自由競争の範囲内の行為であるか,あるいは,原告の利益を侵害するものではないから,原告に対する不法行為に当たらない。 また,原告が主張する本件営業行為については,被告Aらが本件顧客名簿を持ち出した事実はないし,被告Bが,被告会社の営業活動に当たって本件顧客名簿を用いたこともないから,やはり原告に対する不法行為には当たらない。 ウ被告Bに不法行為が成立しないこと上記ア(ア)のとおり,被告Aは,原告がGに対して購入予約をしていたワインを購入するという限度で本件横奪行為の一部を行ったが,これは,被告Aが独断で行ったことであり,被告Bは関与していない。 また,本件営業行為について,被告Bは,原告退職後,原告の顧客を含む国内のワインの小売店等に対し,被告会社とし 為の一部を行ったが,これは,被告Aが独断で行ったことであり,被告Bは関与していない。 また,本件営業行為について,被告Bは,原告退職後,原告の顧客を含む国内のワインの小売店等に対し,被告会社として営業活動を行ってワインを販売したにすぎず,同営業活動に当たって本件顧客名簿を用いたことがないのはもちろん,被告Bにおいて本件顧客名簿を持ち出した事実自体も存在しない。したがって,被告Bの上記営業活動は,自由競争の範囲内の適法な行為である。 よって,被告Bについて,原告に対する不法行為は成立しない。 (3) 争点2(被告Aらの一連の行為につき,被告会社が使用者責任を負うか)について[原告の主張]上記(2)の[原告の主張]のとおり,被告Aらによる本件横奪行為及び本件営業行為は原告に対する共同不法行為に当たるし,同共同不法行為は,被告会社においてワインを販売することを目的とし,実際にも被告会社は本件横奪行為によって購入したワインを販売していたのであるから,明らかに被告会社の事業の範囲及び被告Aらの職務の範囲に属すると認められる。したが って,被告会社は,被告Aらの上記共同不法行為につき使用者責任を負う。 [被告会社の主張]否認ないし争う。 被告会社が本件横奪行為等に関与した事実はない。 (4) 争点3(被告Aらの一連の行為につき,原告に対する債務不履行が成立するか)について[原告の主張]ア雇用契約違反従業員は,雇用契約の期間中,付随義務である忠実義務・誠実義務の一環として,または信義則上,競業避止義務を負う。被告Aらは,原告在職中,原告に対してこうした競業避止義務を負っていたにもかかわらず,同義務に違反して,本件横奪行為及び本件営業行為という競業行為を行った。 なお,被告Aらは,本件横奪行為及び本件営業行為 らは,原告在職中,原告に対してこうした競業避止義務を負っていたにもかかわらず,同義務に違反して,本件横奪行為及び本件営業行為という競業行為を行った。 なお,被告Aらは,本件横奪行為及び本件営業行為という一連の行為のうち,ワインを原告から横取りするという重要部分を原告在職中に行ったのであるから,被告Aらによる競業行為は,原告在職中に行われたと評価できる。 また,被告Aらは,原告在職中の平成24年9月3日付けで,原告と競業する被告会社を設立しているところ,その設立に当たり,被告Aが500万円,被告Bが300万円を出資している。 したがって,被告Aらによる上記の行為は,いずれも原告との雇用契約に違反する。 イ競業禁止合意違反原告就業規則46条は,退職後3年間,原告の競業会社を設立すること,競業会社の役員に就任すること及び他の従業員に対してスカウトを行うことを禁止している(以下「本件競業禁止規定」という。)。そして,被告Aらは,原告との雇用契約の締結によって,同規定のとおり競業を行わない ことを合意しているから,原告退職後も原告に対して競業避止義務を負っている。なお,原告は,原告就業規則を従業員の閲覧に供し,周知させていたし,本件競業禁止規定は,退職後3年間という短い期間に限り,原告と同一又は類似の業務を営む会社を自ら設立すること及び同社の役員になることという原告にとって特に不利益が大きい行為について限定して禁止するものであるから,合理的な範囲を超えて原告を退職した従業員の職業選択の自由を不当に制限するものとはいえない。 しかるに,被告Aらは,原告退職後,本件横奪行為及び本件営業行為を行ったのであるから,本件競業禁止規定の定める退職後の競業避止義務に違反することは明らかである。また,被告Aは,被告会社の代表者に就任 かるに,被告Aらは,原告退職後,本件横奪行為及び本件営業行為を行ったのであるから,本件競業禁止規定の定める退職後の競業避止義務に違反することは明らかである。また,被告Aは,被告会社の代表者に就任しており,この点においても,退職後の競業避止義務に違反する。 [被告Aらの主張]ア雇用契約違反以下のとおり,被告Aらの行為は,在職中の競業行為ではないし,原告が本件生産者らからワインを購入することについて,被侵害利益となり得る具体的な利益はないから,雇用契約違反の債務不履行は存しない。 (ア) Eについて上記(2)[被告Aらの主張]イのとおり,原告が平成24年中にEからワインを購入する予定はなかった。 (イ) Fについて被告Aは,原告を退職する直前にFに連絡したにすぎないから,被告Aの行為は,退職後の競業行為と評価すべきであるし,原告との取引を中止したのは飽くまでFの判断によるものである。 (ウ) Gについて被告Aの行為によって原告が平成24年度中にGからワインを購入することが不可能になったわけではない。 (エ) Hについて被告Aは,原告を退職する直前にHに連絡したにすぎないから,被告Aの行為は,退職後の競業行為と評価すべきである。また,原告との取引を中止したのは,飽くまでHの判断によるものである。 (オ) Iについて被告Aは,原告を退職する直前にIに連絡したにすぎないから,被告Aの行為は,退職後の競業行為と評価すべきであるし,原告は,平成24年度中にIからワインを購入する権利を有していない。また,原告との取引を中止したのは,飽くまでIの判断によるものである。 (カ) Jについて被告AがJのワインを購入するために仲買人に連絡をしたのは,原告を退職する前日であるから,被告Aの行為は,退職後の競業行 取引を中止したのは,飽くまでIの判断によるものである。 (カ) Jについて被告AがJのワインを購入するために仲買人に連絡をしたのは,原告を退職する前日であるから,被告Aの行為は,退職後の競業行為というべきであるし,また,仲買人の元には,Jのワインの在庫が十分にあり,被告会社がJのワインを購入しても,原告はJのワインを購入することができた。したがって,原告には,被侵害利益となり得る具体的な利益がない。 (キ) Kについて被告AがKのワインを購入するために仲買人に連絡をしたのは,原告を退職した後の平成24年10月4日であり,被告Aに在職中の競業避止義務違反はない。 (ク) Lについて被告AがLのワインを購入するために仲買人に連絡をしたのは,原告を退職した後の平成24年10月1日であり,被告Aに在職中の競業避止義務違反はない。 イ競業禁止合意違反原告就業規則は,労働基準法106条1項に反して従業員に周知されて いなかったから,就業規則としての効力が認められない。また,本件競業禁止規定は,競業についての場所的な限定がない上,対象となる職種も極めて広範であるなど,制限の程度が極めて強力である反面,被告Aらは制限の代償たる経済的な給付を一切受けていないから,本件競業禁止規定は,被告Aらの職業選択の自由を不当に制限するものとして,公序良俗に反し無効である。 したがって,被告Aらには退職後の競業避止義務はなく,退職後の競業について競業禁止合意違反となる余地はない。 5 争点4(本件顧客名簿の営業秘密該当性)について[原告の主張]本件顧客名簿は,次のとおり,不正競争防止法上の営業秘密に当たる。 ア有用性本件顧客名簿には,顧客の連絡先や担当者名等に加え,当該顧客への商品の販売履歴(商品名・数量・金額等)も 告の主張]本件顧客名簿は,次のとおり,不正競争防止法上の営業秘密に当たる。 ア有用性本件顧客名簿には,顧客の連絡先や担当者名等に加え,当該顧客への商品の販売履歴(商品名・数量・金額等)も含まれており,原告は本件顧客名簿に基づいて営業活動を行っているのであるから,本件顧客名簿には当然に有用性がある。 イ秘密管理性①本件顧客名簿を使用するためのシステムは,外部のパソコンからは起動できず,原告に備え付けられたパソコンから起動する必要がある。そして,②同システムへのログイン時には,原告から従業員に対して個別に配布された専用のID及びパスワードを入力する必要がある。さらに,③本件システムにログインした従業員が閲覧又は印刷することができる本件顧客名簿の範囲は,従業員ごとに異なる設定がされ,とりわけ「請求先マスタ」画面については,原告従業員のうち,営業担当者による閲覧及び印刷ができないように設定されている。 このように,原告は,本件顧客名簿の財産的価値に鑑みてこれを厳格に 管理しており,本件顧客名簿に接する従業員も,本件顧客名簿が秘密に管理されていることを容易に認識することができる。 したがって,本件顧客名簿には,秘密管理性がある。 ウ非公知性本件顧客名簿は,長年の営業活動の中で原告が独自に蓄積してきた公然と知られていない情報であるから,本件顧客名簿に非公知性があることは明らかである。 [被告らの主張]本件顧客名簿は,次のとおり,不正競争防止法上の営業秘密には当たらない。 ア有用性がないこと原告の顧客の名称,住所や電話番号等の連絡先は,顧客のウェブサイト等で容易に確認することができるし,顧客への商品の販売履歴についても,顧客のウェブサイト等を見れば,当該顧客がどのような商品を取り扱っているのか, 称,住所や電話番号等の連絡先は,顧客のウェブサイト等で容易に確認することができるし,顧客への商品の販売履歴についても,顧客のウェブサイト等を見れば,当該顧客がどのような商品を取り扱っているのか,つまり,どのような商品を購入しているのかが容易に分かる。 したがって,本件顧客名簿に特段の有用性はない。 イ秘密管理性がないこと原告の本社事務所内の営業事務担当者の座席がある場所に設置されていた棚の上には,過去1~2年分の納品書(顧客の名称,住所・電話番号等の連絡先,購入商品等が記載されたもの)を顧客名ごとに整理したファイルが置かれていた。また,同じく営業事務担当者の座席がある場所に設置されていたロッカーの中には,顧客の注文書(顧客の名称,住所・電話番号等の連絡先,担当者名,注文する商品等が記載されたもの)を送付された日ごとにまとめたファイルが,施錠されない状態で保管されていた。このように,本件顧客名簿の重要部分を構成する顧客の名称, 住所・電話番号等の連絡先,担当者名,購入商品などの情報は,原告の本社事務所の従業員であれば,誰でも自由に閲覧できる状態にあったから,本件顧客名簿へのアクセスが制限されていたとはいえない。 さらに,原告の本社事務所内で稼働していた従業員が,パソコンから原告のシステム内の本件顧客名簿を閲覧する場合,パスワードを入力する形式となっていたが,「納品先マスタ」画面と「請求先マスタ」画面は,原告の本社事務所内の全従業員が閲覧できる状態にあった。加えて,上記のとおり,原告の本社事務所内には,納品書や注文書をまとめたファイルが,誰でも自由に閲覧可能な状態で置かれており,本件顧客名簿にアクセスする者が,これを秘密であると認識することは困難な状況にあった。 よって,本件顧客名簿が秘密として管理されていたと めたファイルが,誰でも自由に閲覧可能な状態で置かれており,本件顧客名簿にアクセスする者が,これを秘密であると認識することは困難な状況にあった。 よって,本件顧客名簿が秘密として管理されていたとはいえない。 ウ非公知性がないこと本件顧客名簿の中核を構成するワインの小売店やレストラン等の顧客の名称,その所在地,電話番号,ファックス番号,メールアドレス等は,インターネット上の検索サイトなどを利用することにより,極めて容易に入手することができ,顧客のウェブサイト等でも容易に確認することができる。また,顧客への商品の販売履歴についても,上記アのとおり,顧客のウェブサイト等を見れば,当該顧客がどのような商品を取り扱っているのか,つまり,どのような商品を購入しているのかが容易に分かる。 したがって,本件顧客名簿に,非公知性はない。 (6) 争点5(被告Aらが本件顧客名簿を不正に取得し,使用し,又は開示したか)について[原告の主張]ア被告Aらは,原告に無断で,本件顧客名簿を原告のシステム上から不正 に取得した上,不正に使用し,又は被告会社に開示し,あるいは,原告から示された本件顧客名簿を,不正の利益を得る目的等により使用し,又は被告会社に開示した。 イ被告Aらは,本件顧客名簿等を持ち出していないとか検索サイト等を利用して顧客の連絡先等を入手したなどと主張するが,被告Aらが,面識のない原告の顧客に対し,被告会社として営業を行ったこと,被告Aらが主張するような方法で顧客の連絡先(担当者名を含む。)を入手することは不可能であること等に照らせば,被告Aらが原告から本件顧客名簿を持ち出したことは明らかである。 [被告Aらの主張]ア被告Aらが本件顧客名簿を持ち出した事実はないから,被告Aらによる本件顧客名簿の不正取得 こと等に照らせば,被告Aらが原告から本件顧客名簿を持ち出したことは明らかである。 [被告Aらの主張]ア被告Aらが本件顧客名簿を持ち出した事実はないから,被告Aらによる本件顧客名簿の不正取得や不正使用等はあり得ない。被告Aらが本件顧客名簿を持ち出していないことは,被告会社が行った次の営業活動の内容からも明らかである。 (ア) 被告会社は,営業開始後,挨拶状の一斉送付をしていない。 (イ) 被告Bは,被告会社の営業開始後,まず,取引対象になりそうな国内の有力なワインの小売店を選定し,営業用のダイレクトメールを郵送した。その後,当該小売店に電話連絡をして,被告会社を設立したことを伝え,営業用のメールを送ってもよいかどうかを問い合わせ,承諾を得られた小売店に対し,営業用のメールを送信した。 ダイレクトメールを送付する小売店の選定は,ワイン関連の検索サイト,ショッピングポータルサイトのワインショップ一覧及びワインの専門雑誌に載っていた小売店のリストを利用して行い,各小売店の住所や連絡先電話番号は,上記の検索サイト等を利用してたどり着いた各小売店の詳細ページや,ワイン専門雑誌の小売店リストの記載を利用して入手した。また,営業用メールを送付する際に必要となる各小売店のメー ルアドレスは,電話連絡した際,先方から教えてもらったり,各小売店の詳細ページやホームページ等に表示されているメールアドレスに送ってよいかどうかを確認したりすることによって,入手した。 (ウ) また,被告Bは,被告会社で購入する予定のワインの銘柄と,「ワインショップ」や「酒屋」という言葉をキーワードにして,検索エンジンの「グーグル」を利用して検索し,当該ワインを取り扱っている小売店を見つけ出し,そこにダイレクトメールを郵送するという方法を採った。 送付先の小 」や「酒屋」という言葉をキーワードにして,検索エンジンの「グーグル」を利用して検索し,当該ワインを取り扱っている小売店を見つけ出し,そこにダイレクトメールを郵送するという方法を採った。 送付先の小売店の住所や連絡先電話番号は,検索結果に基づいて小売店の個別のホームページを閲覧して入手し,メールアドレスは,上記(イ)と同じ方法で入手した。 (エ) 被告Bは営業活動の過程で,本件顧客名簿を一切利用していない。 被告Bが営業活動のために連絡した国内の小売店等の数は,現在までに約380店舗に及んでいるが,このうち被告Bが原告に在職しているときに関わりのあった小売店等は,50店舗程度にすぎない。この事実からも,被告Aらが本件顧客名簿を持ち出したことがなく,被告会社の営業活動にもこれを使用していないことが明らかである。 イ原告は,被告Aらが本件顧客名簿を持ち出したと主張し,その根拠として,被告Bが,面識がない原告の顧客の担当者宛に,事前の連絡もなく,いきなりメールで連絡をしたなどと主張するが,そのような事実はなく,原告の上記主張は,明らかに事実に反している。 また,原告は,被告Aらが受注書のデータを持ち出したことを根拠に,被告Aらが退職時に本件顧客名簿を持ち出したとも主張するが,被告Aらが受注書のデータを持ち出した証拠として原告が提出する甲31の営業用文書の電磁データ(ワードファイル)は,被告Aらが退職した時より2年以上も前に,被告Aが自宅で書類作成作業を行う目的で,自宅にメール送信したものであって,被告Aらが退職時に持ち出したものではないから, 原告の主張には理由がない。このことは,受注書の元データが原告の社内で最後に印刷されたのが,被告Aらの退職より2年以上前であることからも明らかである。 ⑺ 争点6(被告会社が,被告Aら 原告の主張には理由がない。このことは,受注書の元データが原告の社内で最後に印刷されたのが,被告Aらの退職より2年以上前であることからも明らかである。 ⑺ 争点6(被告会社が,被告Aらによる本件顧客名簿の不正取得行為又は不正開示行為を知りながらこれを取得し,又は使用したか)について[原告の主張]被告会社は,被告Aらが本件顧客名簿を不正に取得したことを知りながら,被告Aらから本件顧客名簿を取得した上で使用し,又は被告Aらによる本件顧客名簿の開示が不正開示行為であることを知りながら,被告Aらから本件顧客名簿を取得し,又は使用した。 [被告会社の主張]否認する。 被告会社は,原告が主張するような不正取得や不正使用に及んでいない。 ⑻ 争点7(損害額)について[原告の主張]原告は,被告Aらの本件横奪行為及び本件営業行為並びに被告らの不正競争行為等によって,以下の損害を被った。 ア平成24年の売上が減少したことによる損害被告Aらの本件横奪行為により,原告は平成24年に本件生産者らからワインを購入して販売することができなくなり,これによって本来得ることができたはずの売上が得られなくなったため,次のとおり合計535万5606円の損害をこうむった。 (ア) E 42万0720円被告Aは,原告在職中の平成24年6月,Eに対し,原告の名義で,コンフィダンス2009(240本)及びヴァンソブル2010(360本)の購入を予約していたが,被告らは,被告会社としてこれらのワ インを購入し,顧客に販売した。その結果,原告は,平成24年において,Eからこれらのワインを購入することができなくなった。なお,被告らは,原告が平成24年にコンフィダンス2010を購入したことを理由に,原告がコンフィダンス2009を購入 原告は,平成24年において,Eからこれらのワインを購入することができなくなった。なお,被告らは,原告が平成24年にコンフィダンス2010を購入したことを理由に,原告がコンフィダンス2009を購入できなかったことによる損害を被っていないと主張するが,このような主張には理由がない。 コンフィダンス2009の一本当たりの粗利益は763円,ヴァンソブル2010の一本当たりの粗利益は660円(ヴァンソブル2009と同額で算出)であるから,原告は,平成24年分の売上損害として,少なくとも次の①②の合計額である42万0720円の損害を被った。 ① コンフィダンス2009 763円×240本=18万3120円② ヴァンソブル2010 660円×360本=23万7600円(イ) F 58万0638円被告Aは,原告在職中の平成24年6月,Fに対し,原告の名義で,サヴニエール‟ランクロ”2010(420本),サヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトル(6本)を予約していたが,被告らは,被告会社としてこれらのワインを購入し,顧客に販売した(甲7の1)。その結果,原告は,平成24年において,Fからこれらのワインを購入することができなくなった(甲15,甲26)。 サヴニエール‟ランクロ”2010及びサヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトルの一本当たりの粗利益は,いずれも1363円(サヴニエール‟ランクロ“2009の粗利益と同額で算出)であるから,原告は,被告らの行為により,平成24年分の売上損害として,少なくとも,次の①及び②の合計額である58万0638円の損害を被った。 ① サヴニエール‟ランクロ”2010 1363円×420本=57万2460円② サヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトル 1363円×6 本=8 万0638円の損害を被った。 ① サヴニエール‟ランクロ”2010 1363円×420本=57万2460円② サヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトル 1363円×6 本=8178円(ウ) G 146万9280円被告Aは,原告在職中,Gに対し,原告の名義で,シャトー・サミオン赤2010(480本),イルレギー白2011(480本)及びイルレギー赤2010(480本)の購入を予約していたが,被告Aらは,被告会社としてこれらのワインを購入し,顧客に販売した。その結果,原告は,平成24年において,Gからこれらのワインを購入することができなくなった。 シャトー・サミオン赤2010,イルレギー白2011及びイルレギー赤2010の一本当たりの各粗利益は,順に1373円,880円及び808円(それぞれ,シャトー・サミオン赤2009,イルレギー白2010及びイルレギー赤2009の各粗利益と同額で算出)であるから,原告は,被告らの行為により,平成24年分の売上損害として,少なくとも,次の①~③の合計額である146万9280円の損害を被った。 ① シャトー・サミオン赤2010 1373円×480本=65万9040円② イルレギー白2011 880円×480本=42万2400円③ イルレギー赤2010 808円×480本=38万7840円(エ) H 48万8160円被告Aは,原告在職中の平成23年秋ころ,Hに対し,原告の名義で,クレークソ2010(180本),アミルカル・リフソーレ2011(180本)及びアイ・ツゥ2010(360本)を予約していたが,被告らは,被告会社としてこれらのワインを購入し,顧客に販売した。その結果,原告は,平成24年において,Hからこれらのワインを購入することができなくなった。 10(360本)を予約していたが,被告らは,被告会社としてこれらのワインを購入し,顧客に販売した。その結果,原告は,平成24年において,Hからこれらのワインを購入することができなくなった。 クレークソ2010,アミルカル・リフソーレ2011及びアイ・ツゥ2010の一本当たりの各粗利益は,順に537円,579円及び798円(それぞれ,クレークソ2009,アミルカル・リフソーレ2009,アイ・ツゥ2009の各粗利益と同額で算出)であるから,原告は,被告らの行為により,平成24年分の売上損害として,次のとおり,少なくとも,48万8160円の損害を被った。 ① クレークソ2010 537円×180本=9万6660円② アミルカル・リフソーレ2011 579円×180本=10万4220円③ アイ・ツゥ2010 798円×360本=28万7280円(オ) I 126万2478円原告は,平成23年にはIから年2回ワインを購入し,購入したワインである「キュヴェ・ド・レゼルヴ・ブリュット白」,「エクストラ・ブリュット‟キュヴェ・マリー=カトリーヌ“白」,「ロゼブリュット」及び「ミレジメブリュット白」を販売することにより252万4955円の粗利益を得た。被告らは,本来であれば原告が購入する予定であったこれらのワインを,被告会社として購入し,顧客に販売した。 その結果,原告は,平成24年にIからこれらのワインを1回しか購入することができず,少なくとも,126万2478円(原告が平成23年に得た粗利益の2分の1)の損害を被った。 (カ) J 75万6162円原告は,平成23年において,Jから購入した「シャトー・プティ=ボック赤(サンステノフ)」等を販売することにより,75万6162円の粗利益を得ていたが,被告らは (カ) J 75万6162円原告は,平成23年において,Jから購入した「シャトー・プティ=ボック赤(サンステノフ)」等を販売することにより,75万6162円の粗利益を得ていたが,被告らは,本来であれば原告が購入する予定であった同ワインを,被告会社として購入し,顧客に販売した。 その結果,原告は,平成24年にJから同ワインを購入することがで きず,少なくとも,75万6162円の損害を被った。 (キ) K 19万8648円原告は,平成23年において,Kから購入した「サンテイム赤」を販売することにより,19万8648円の粗利益を得ていたが,被告らは,本来であれば原告が購入する予定であった同ワインを,被告会社として購入し,顧客に販売した。その結果,原告は,平成24年にKから同ワインを購入することができず,少なくとも,19万8648円の損害を被った。 (ク) L 17万9520円原告は,平成23年において,Lから購入した「シャトー・クシー赤(モンターニュ・サンテミリオン)」を販売することにより17万9520円の粗利益を得ているところ,被告らは,本来であれば原告が購入する予定であった同ワインを,被告会社として購入し,顧客に販売した。 その結果,原告は,平成24年にLから同ワインを購入することができず,少なくとも,17万9520円の損害を被った。 イ平成25年以降における売上の減少による損害原告がワインを購入しているのは,いずれも主に原告が自ら開拓した小規模生産者からであり,原告との信頼関係に基づき,原告を通じてのみ日本にワインの出荷を行っている場合が多い。したがって,原告と海外のワイン生産者らとの間には,書面による取引基本契約書等が存在しなくとも,特別な問題が発生しない限りは,将来的にも継続的に原告を通じて 本にワインの出荷を行っている場合が多い。したがって,原告と海外のワイン生産者らとの間には,書面による取引基本契約書等が存在しなくとも,特別な問題が発生しない限りは,将来的にも継続的に原告を通じてのみ日本にワインを出荷する旨の暗黙の合意が存在していた。にもかかわらず,原告は,被告らの行為により,平成25年以降,本件生産者らからワインを購入して販売することができなくなり,そのために,平成25年及び同26年において,次のとおり,合計1019万0844円の売上減少による損害を被った。 (ア) F 133万1906円原告は,平成23年に,Fから購入したワイン(サヴニエール“ランクロ”白)を販売して66万5953円の粗利益を得ており,被告らの行為がなければ,平成25年以降も毎年同額の粗利益を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である133万1906円の損害を被った。 (イ) G 92万2736円原告は,平成25年以降,Gからシャトー・サミオン赤及びイレルギー白については購入することができているものの,最も希少性が高く生産本数が少ないイレルギー赤については,購入できていない。 原告は,平成23年に,Gから購入したイルレギー赤2009を販売して46万1368円の粗利益を得ており,被告らの行為がなければ,平成25年以降も毎年同額の粗利益を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である92万2736円の損害を被った。 なお,被告らは,原告がイレルギー赤の代替品としてイレルギー赤ドメーヌ・ブラナを購入しているから原告に損害は発生していないと主張するが,両ワインはそもそもワイナリーを異にするものであり,代替品となるものではないから失当である。 ー赤の代替品としてイレルギー赤ドメーヌ・ブラナを購入しているから原告に損害は発生していないと主張するが,両ワインはそもそもワイナリーを異にするものであり,代替品となるものではないから失当である。 (ウ) H 61万7632円原告は,平成23年に,Hから購入したワインを販売して30万8816円の粗利益を得ており,被告らの行為がなければ,平成25年以降も毎年同額の粗利益を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である61万7632円の損害を被った。 (エ) I 504万9910円 原告は,上記ア(オ)のとおり,平成23年に,Iから購入したワインを販売して252万4955円の粗利益を得ており,被告らの行為がなければ,平成25年以降も毎年同額の粗利益を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である504万9910円の損害を被った。 (オ) J 151万2324円原告は,上記ア(カ)のとおり,平成23年,Jから購入したワインを販売して75万6162円の粗利益を得ており,被告らの行為がなければ,平成25年以降も毎年同額の粗利益を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である151万2324円の損害を被った。 (カ) K 39万7296円原告は,上記ア(キ)のとおり,平成23年に,Kから購入したワインを販売して19万8648円の粗利益を得ており,被告らの行為がなければ,平成25年以降も毎年同額の粗利益を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である39万7296円の損害を被った。 (キ) L 35万9040円原告は,上記ア(ク)のとおり,平成23 を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である39万7296円の損害を被った。 (キ) L 35万9040円原告は,上記ア(ク)のとおり,平成23年に,Lから購入したワインを販売して17万9520円の粗利益を得ており,被告らの行為がなければ,平成25年以降も毎年同額の粗利益を得られたはずである。したがって,原告は,少なくとも平成25年及び平成26年の2年分である35万9040円の損害を被った。 ウ無形損害原告は,被告Aらが本件横奪行為の一環として海外のワイン生産者らに虚偽の内容のメールを送信したため,海外のワイン生産者らとの関係にお いて,信頼低下等の無形損害を被っており(甲14,甲15,甲18,甲19),その損害額は445万3550円を下らない。 また,原告は,被告Aらの本件横奪行為により,国内の顧客から注文を受けていたワインを購入できなくなったため,同ワインを注文した顧客に謝罪を行った。これにより,原告は,国内の顧客との関係において,信頼低下等の無形損害を被っており,その損害額は1000万円を下らない。 エ以上のとおり,原告は,被告らの行為により,合計1554万6450円の粗利益を上げることができなくなるという財産的損害及び1445万3550円の無形損害を被ったのであって,原告の損害額は,合計3000万円を下らない。そこで,原告は,被告らに対し,同損害額の一部である2000万円(内訳は,売上損害1554万6450円と無形損害の一部である445万3550円)の連帯支払を求める。 [被告らの主張]ア平成24年の売上が減少したことによる損害について(ア) E原告は,平成22年と23年に,いずれもイン・ファイン,コンフィダンス,ヴァンソブルをセットで購入 求める。 [被告らの主張]ア平成24年の売上が減少したことによる損害について(ア) E原告は,平成22年と23年に,いずれもイン・ファイン,コンフィダンス,ヴァンソブルをセットで購入したが,これは,原告がEに対して,イン・ファインの購入を希望したところ,Eから,コンフィダンスとヴァンソブルもセットで購入してほしいと要請されたためである。ところが,平成24年には,原告が取引上重要なワインと考えていたイン・ファインが出荷される予定がなかったため,原告は,平成24年にはEからワインを購入する予定はなかった。したがって,原告に損害は生じていない。また,平成24年は,平成23年と異なり,Eの目玉ワインであるイン・ファインの出荷がなく,イン・ファイン抜きで販売しなければならない状況にあったから,イン・ファインとセットで販売することができた平成23年と同様の売上利益を確保できたと推認することは できない。 これらの点を措くとしても,次のとおり,原告の主張する損害はいずれも認められない。 a コンフィダンス2009原告がコンフィダンス2009を購入できなかったとしても,原告は,その後速やかにEからコンフィダンス2010を別途購入して販売することにより利益を確保している。このように,原告が平成24年にEからコンフィダンスを購入できなかった事実はないから,原告が主張する損害が認められる余地はない。原告の主張は,コンフィダンス2009を購入できなかった以上,その後にコンフィダンス2010を購入・販売して利益を得たにもかかわらず,コンフィダンス2009の購入・販売による逸失利益が残っているというものであるが,原告がワインの販売利益を二重に取得することとなって不当である。 なお,仮に原告に損害が生じているとしても,原告が国内 ンフィダンス2009の購入・販売による逸失利益が残っているというものであるが,原告がワインの販売利益を二重に取得することとなって不当である。 なお,仮に原告に損害が生じているとしても,原告が国内の顧客にワインを販売するに際しては日本郵便を利用しているので,送料相当額6000円(12本当たりの送料が300円であるから,計算式は240本/12本×300円)を減額すべきである。 b ヴァンソブル2010原告は,ヴァンソブル2010についての損害を算定するに当たり,平成23年の仕入単価である6.98ユーロで計算しているが,必ずしも前年と同じ金額で購入することができるわけではなく,実際,被告会社の平成24年の仕入単価は7.10ユーロである。したがって,その差額である4412円(計算式は,次のとおり)を,原告主張の損害額から減額すべきである。 計算式:(7.10ユーロ-6.98ユーロ)×360本×102.13円(=被告会社が同ワインを購入した時点での ユーロ円の為替レート)また,原告は日本郵便を利用しているので,上記aと同様,原告主張の損害額からさらに送料相当額9000円(360本/12本×300円)を減額すべきである。 (イ) F原告は,サヴニエール“ランクロ”2010(420本)についての損害額を算定するに当たり,平成23年の仕入単価である10.5ユーロで計算しているが,必ずしも前年と同じ金額で購入することができるわけではなく,実際,被告会社の平成24年の仕入単価は12.5ユーロである。したがって,その差額である10万0279円(計算式は,次のとおり)を,原告主張の損害額から減額すべきである。 計算式:(12.5ユーロ-10.5ユーロ)×420本×119. 38円(=被告会社が同ワインを購入した時点でのユーロ円 279円(計算式は,次のとおり)を,原告主張の損害額から減額すべきである。 計算式:(12.5ユーロ-10.5ユーロ)×420本×119. 38円(=被告会社が同ワインを購入した時点でのユーロ円の為替レート)また,原告は,ワインを発送する際に日本郵便を利用しているので,上記(ア)aと同様,原告主張の損害額からさらに送料相当額1万0650円((420本+6本)/12本×300円)を減額すべきである。 (ウ) Gワイン生産者の中には,同一国で複数の輸入業者と取引をする者もいるから,被告会社がGからワインを購入したことによって,ただちに原告がGからワインを購入することが不可能となったわけではない。したがって,原告に損害はないし,仮に原告が平成24年中にGからワインを購入することができなかったとしても,被告Aの行為との間に因果関係もない。 仮に原告に損害が生じているとしても,原告の損害額の算定には次の2点で疑義がある。 a 原告は,損害額を算定するに当たり,仕入単価をシャトー・サミオン赤については11ユーロ,イレルギー赤については7ユーロ(いずれも平成23年の仕入単価)として計算しているが,必ずしも前年と同じ金額で購入することができるわけではない。実際,被告会社の平成24年の仕入単価は,シャトー・サミオン赤が11.3ユーロ,イレルギー赤が7.5ユーロである。したがって,その差額である4万3038円(計算式は,次のとおり)を,原告主張の損害額から減額すべきである。 計算式:(11.3ユーロ-11ユーロ)×480本+(7.5ユーロ-7ユーロ)×480本×112.08円(=被告会社がこれらの各ワインを購入した時点でのユーロ円の為替レート)b 原告は,ワインを発送する際に日本郵便を利用しているので,上記(ア)aと同 ーロ-7ユーロ)×480本×112.08円(=被告会社がこれらの各ワインを購入した時点でのユーロ円の為替レート)b 原告は,ワインを発送する際に日本郵便を利用しているので,上記(ア)aと同様,原告主張の損害額からさらに送料相当額3万6000円((480本+480本+480本)/12本×300円)を減額すべきである。 (エ) H上記(ア)と同様の理由で,原告が,平成24年において平成23年と同様の利益を得られたとはいえない。 また,原告は日本郵便を利用しているので,上記(ア)aと同様,原告主張の損害額から送料相当額1万8000円(720本/12本×300円)を減額すべきである。 (オ) I原告は,平成24年にIからワインを購入することについて,Iとの間で,何らの契約も取り交わしていない。また,原告は,Iとスポット的に取引をしているにすぎず,何度か取引をしたからといって,今後も Iとの取引を継続できるとは限らないから,原告に損害は生じていない。 (カ) J,K,L原告は,これらのワインを,いずれも仲買人から購入しているところ,仲買人は,ワインの卸売業者であって,取り扱うワインを販売するために多数の輸入業者と取引をする。したがって,被告会社が仲買人から購入したからといって,そのことにより直ちに原告がその仲買人から購入することができなくなるものではない。 加えて,Kのワインについて,原告は「N」という仲買人から購入しているのに対し,被告会社は「P」という全く別の仲買人から購入しているのであって,被告会社がKのワインを購入したことが,原告におけるKのワインの購入に何の影響も及ぼしていないことは明らかである。 イ平成25年以降における売上の減少による損害について(ア) F,G,H,Iについて原告は,平 を購入したことが,原告におけるKのワインの購入に何の影響も及ぼしていないことは明らかである。 イ平成25年以降における売上の減少による損害について(ア) F,G,H,Iについて原告は,平成25年以降のワインの取引について,各ワイン生産者との間で何らの契約も取り交わしておらず,将来の取引継続は単なる期待にすぎない。原告が過去に複数回にわたって特定の生産者からワインを購入していたとしても,販売の好不調にはワインの出来不出来が大きく影響するため,購入者の多くはでき上がったワインの品質を確認してから購入しており,他方,ワイン生産者らも自分たちのワインを大切にしてくれる業者を求めて取引業者を変更することが多々ある。したがって,原告が今後も継続してこれらのワイン生産者らからワインを購入できるかどうかは全く不確実なのであって,原告に損害は発生していない。 なお,Gについて,原告は,イレルギー赤を購入することができなくなったと主張するが,仮にイレルギー赤を購入することができなかったとしても,原告はその代替品として「イレルギー赤ドメーヌ・ブラナ」を購入しており,これによってイレルギー赤を購入することができなか ったことによる損失をてん補している。 (イ) J,K,Lについて原告は,これらのワインをネゴシャンと呼ばれる仲買人から購入しているところ,仲買人を通じて購入する場合,生産者との関係は希薄であり,当該ワインの評判や価格などを考慮して購入の是非を決するので,取引継続への期待は保護に値しない。 前記ア(カ)のとおり,仲買人は,多数の輸入業者等と取引をするので,被告会社が取引を申し入れたからといって,そのことにより原告がその仲買人と取引ができなくなることはないし,特に,Kのワインについては,原告の仕入先である仲買人と被告の仕 輸入業者等と取引をするので,被告会社が取引を申し入れたからといって,そのことにより原告がその仲買人と取引ができなくなることはないし,特に,Kのワインについては,原告の仕入先である仲買人と被告の仕入先である仲買人が別であって,被告会社がKのワインを購入したことは,原告のワインの購入に何ら影響しない。 ウ無形損害について被告らの行為によって原告の信頼が低下した事実はなく,原告に無形損害は生じていない。 原告は,被告Aが原告の取引先であるワイン生産者らに送ったメールを問題とするが,同メールの内容は,被告Aが原告を退職して新たな会社を設立し,新たな会社での取引を希望していることを伝えるもので,原告をひぼう中傷するものではないから,原告に「信頼の低下」と評価するほどの実害が生じることはない。実際,原告は,現在も,甲13のメールの送信先であるワイン生産者(Q)や甲14のメールを送信してきたワイン生産者(R)と取引を継続しているのであって,原告に信頼の低下という実害が発生していないことは明らかである。 また,原告は,Gのワインを納品できなかったことについて国内の顧客に謝罪したため,原告の信頼が低下したとも主張するが,ワインの取引において,予定していたワインがワイン生産者の都合で顧客に納品できなく なることはしばしばあり,納品の約束を一度履行できなかったからといって,信頼の低下と評価するほどの実害が生じることはない。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の争点について原告は,本件顧客名簿が原告の営業秘密であるとしてこれを用いた営業行為等の差止め,本件顧客名簿が記録された記録媒体及び電磁的記録媒体の廃棄並びにこれらの媒体からの印刷物の引渡しを求めるが,本件顧客名簿は,別紙営業秘密目録記載のとおり,「原告業務に使用するコンピュー 等の差止め,本件顧客名簿が記録された記録媒体及び電磁的記録媒体の廃棄並びにこれらの媒体からの印刷物の引渡しを求めるが,本件顧客名簿は,別紙営業秘密目録記載のとおり,「原告業務に使用するコンピューターの記録媒体内に記録された原告作成にかかる顧客名簿(顧客の『納品先コード』,『請求or納品』,『納品先名』,『フリガナ』,『敬称』,『郵便番号』,『都道府県』,『住所』,『ビル・建物名』,『部署名』,『部署名フリガナ』,『電話番号』,『FAX番号』,『役職』,『内線』,『担当者』,『担当者フリガナ』,『メールアドレス』,『備考』等の記入欄があるもの(以上『納品先マスタ』画面,『請求先マスタ』画面等))」というものであって,単に上記のような項目を並べたにすぎず,顧客名やその各項目に係る具体的内容は何ら記載されていないから(なお,甲8の「請求先マスタ」等を見ても,その具体的内容はやはり判然としない。),営業秘密の内容が何ら特定されていないといわざるを得ず,ひいては,差止め・廃棄及び引渡しの対象が具体的に特定されているとは認められない。 したがって,本件顧客名簿を用いた営業行為等の差止め,本件顧客名簿が記録されたコンピューター内の記録媒体及び電磁的記録媒体の廃棄並びにこれらの媒体からの印刷物の引渡しを求める訴え(前記第1の2及び3の各請求に係る訴え)は,不適法として却下すべきである。 2 争点1(被告Aらの一連の行為につき,原告に対する共同不法行為が成立するか)について(1) 証拠等(各項末尾に掲記する。)によれば,次の事実が認められる。 ア原告によるワインの購入予約 被告Aは,原告の業務として,本件生産者らに対し,以下のとおり,原告名でワインの購入予約をした。 (ア) E(平成24年6月ころ)コンフィダンス2009 によるワインの購入予約 被告Aは,原告の業務として,本件生産者らに対し,以下のとおり,原告名でワインの購入予約をした。 (ア) E(平成24年6月ころ)コンフィダンス2009 240本ヴァンソブル2010 360本(イ) F(平成24年6月ころ)サヴニエール“ランクロ”2010 420本サヴニエール“ランクロ”2010 マグナムボトル 6本(ウ) G(平成24年9月12日以前)シャトー・サミオン赤2010 480本イレルギー白2011 480本イレルギー赤2010 480本(エ) H(平成23年秋ころ)クレークソ2010 180本アミルカル・リフレーソ2011 180本アイ・ツゥ2010 360本(乙15~17,21)イ本件生産者ら等に対するメールの送信被告Aは,平成24年9月15日に原告を自己都合退職したところ(前記第2,2(4)イ),同月5日から同年10月4日にかけて,原告の取引先(仕入れ先)である本件生産者らや仲買人らに対し,次のとおり,原告を退社して被告会社を設立したことや今後は被告会社としてワインの購入を継続したいことなどを通知・表明するメールを送信した。 (ア) Eに対するメール(平成24年9月8日送信)「私は出水商事を退職し,自身でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」 「貴ワイナリーと出水商事の取引の始まりの段階から,まずは私は貴方にコンタクトを取り,貴社との取引関係と,日本市場での貴ワイナリーのブランドを発展させてきました。ですから私は私達の関係の進展の全てを把握しています。」「残念ながら出水商事には私の後継者がおりません。このようなわけで,私は貴社のワインをヴィヴィットを通して輸入・販売し続けたいのです。」「以下のワイン の関係の進展の全てを把握しています。」「残念ながら出水商事には私の後継者がおりません。このようなわけで,私は貴社のワインをヴィヴィットを通して輸入・販売し続けたいのです。」「以下のワインを予約したことを覚えています。 2010ヴァンソブル360本及び2010ヴァンソブル“コンフィダンス”240本私はこの予約したワインを引き取り,改めて私の会社ヴィヴィットを通して貴方と取引をしたいのです。」(イ) Fに対するメール(平成24年9月11日送信)「私は出水商事を退職し,自身でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「貴ワイナリーと出水商事の取引の始まりの段階から,まずは私が貴方にコンタクトを取り,そして貴社との取引関係と,日本市場での貴ワイナリーのブランドを発展させてきました。ですから,私は私達の関係の進展の全てを把握しています。」「残念ながら出水商事には私の後継者がおりません。このようなわけで,私は貴社のワインをヴィヴィットを通して輸入・販売し続けたいのです。」「以下のワインを予約したことを覚えています。 2010 サヴニエール“ランクロ” 420本 2010 サヴニエール“ランクロ”マグナムボトル 6本この予約したワインの流通から,改めて私の会社ヴィヴィットを通し て貴方と取引をしたいと思います。」(ウ) Gに対するメール(平成24年9月13日送信)「私は出水商事を退職し,自身で日本でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「貴ワイナリーと出水商事の取引の始まり段階から,まずは私がコンタクトを取り,貴社との取引関係と,日本市場での貴ワイナリーのブランドを発展させてきました。ですから,私は私達の関係の進展の全てを把握しています。」「残念ながら出水商事には私の後継者がおりません タクトを取り,貴社との取引関係と,日本市場での貴ワイナリーのブランドを発展させてきました。ですから,私は私達の関係の進展の全てを把握しています。」「残念ながら出水商事には私の後継者がおりません。このようなわけで,私は貴社のワインをヴィヴィットを通して輸入・販売し続けたいのです。」「以下のワインを予約したことを覚えています。 2010 シャトー・サミオン 480本 2011 エリ・ミナ白 480本 2010 エリ・ミナ赤 480本私はこの予約したワインを引き取り,改めて私の会社ヴィヴィットを通じて貴方と取引をしたいのです。」(エ) Hに対するメール(平成24年9月6日送信)「私は出水商事を退職し,自身で日本でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「出水商事での私達の取引関係の最初から,貴方のワインを発見し,日本で発展させてきたのは私です。」「私は貴方のワインを出水商事ではなく,自身の会社で販売し続けたいのです。なぜなら,出水商事には私の後継者がいないからです。」「以下のワインを予約したことを覚えています。 2010 クレークソ 180本 2011 アミルカル・フィルレーソ 180本 2010 アイ・ツゥ 360本」「これらの予約したワインの出荷を11月にしてくれることと,私の会社と取引をすることを了承して頂けるようにお願い致します。」(オ) Iの知人に対するメール(平成24年9月5日送信)「私は出水商事を退職し,自身で日本でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「フランソワ・ビリオンを見つけ,そして日本市場でのこのブランドを発展させてきたのは私であるからです。」「私はビリオンのシャンパーニュを,出水商事ではなく私自身の会社ヴィヴィットを通して輸入・販売し続けたいので リオンを見つけ,そして日本市場でのこのブランドを発展させてきたのは私であるからです。」「私はビリオンのシャンパーニュを,出水商事ではなく私自身の会社ヴィヴィットを通して輸入・販売し続けたいのです。また,残念ながら出水商事には私の後継者がおりません。」「ですから,I 氏にできるだけ早くコンタクトを取り,状況を説明し,私の会社ヴィヴィットを通して私と取引を続けてくれるようにお願いして頂けますようお願い致します。」(カ) Mに対するメール(平成24年9月14日送信)「私は出水商事を退職し,自身でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「貴社と出水商事との取引の始まりの段階から,まずは私が貴方にコンタクトを取り,そして貴社との取引関係と,日本市場でのプティ・ボックブランドを発展させてきました。ですから私は私達の関係の進展の全てを把握しています。」「残念ながら出水商事には私の後継者がおりません。このようなわけで,私はシャトー・プティ・ボックを私の会社ヴィヴィットを通して輸入・販売し続けたいのです。」「私の会社を通じて私と取引をして頂くことが可能かどうか,またシ ャトー・プティ・ボック2010を提供していただけるかどうか,ご確認頂けますようお願い致します。」(キ) Nに対するメール(平成24年10月4日送信)「私は出水商事を退職し,自身でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「サンテイムの2003か2005,もしくは2009ヴィンテージで提供できる在庫はありますか?もしあれば,価格を教えてください。」(ク) Oに対するメール(平成24年10月1日)「私は出水商事を退職し,自身でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「貴社と取引を続けたいと思いますし,幾つか興味あるワインについて, (ク) Oに対するメール(平成24年10月1日)「私は出水商事を退職し,自身でワインの輸入・販売会社を立ち上げました。」「貴社と取引を続けたいと思いますし,幾つか興味あるワインについて,注文も検討したいと考えております。」「以前と同じ条件で,私と取引をすることが可能かどうかご確認頂けますようお願い致します。また,価格表一覧を送って頂けますようお願い致します。」(乙15~22)ウ社内メールの送信及び引継書の作成等被告Aは,原告がGとの間で購入予約をしていたワインを被告会社において購入するため,Gに対し,「秋に引き取る」とメールで連絡する一方,原告の社内に向けては,平成24年5月1日,「Gにワインの出荷時期を確認したところ,今年の瓶詰は秋以降であり,到着は早くとも年末又は年明けになる」旨のメールを送信した。また,被告Aは,原告を退社するに当たって後任者に対する引継書(甲12及び22)を作成し,Gの事情で出荷時期が遅れているのでGからの連絡を待つようにとの引継ぎをした。 なお,同引継書には,Eにつき「イン・ファインを餌にスタンダード・キュヴェを販売していたので,イン・ファインがないと販売は厳しい」旨 が,Fにつき「蔵元からの連絡が今年はまだ来ていない」旨が,それぞれ記載されている。また,同引継書には,Gにつき「今年の11月ころに蔵元からのオファーが来る」旨の記載と共に,「Cさんのメールに蔵元から連絡が行くように手配済み」である旨の記載もあるが,被告Aは,本件生産者らがCにメールで連絡するように手配したことは一切なかった。 (甲12,16,22,被告A,弁論の全趣旨)エ被告会社による本件生産者らからのワインの購入等被告Aは,原告が購入予約をしていた上記アの各ワインを被告会社が購入することについて, かった。 (甲12,16,22,被告A,弁論の全趣旨)エ被告会社による本件生産者らからのワインの購入等被告Aは,原告が購入予約をしていた上記アの各ワインを被告会社が購入することについて,各ワインの生産者ら(E,F,G,H)から了解を取り付けた上,被告会社においてこれらを全て購入した。 また,被告Aは,上記イ(オ)~(ク)のとおり,平成24年9月5日から同年10月4日にかけて,Iの知人や仲買人(M,N,O)に対し,被告会社としてのワインの購入を申し込み,I,J,K及びLのワインを購入した(なお,Kのワインについては,Nの売値が高かったために発注を見合わせ,後日,Pに対して発注している。)。 (争いのない事実,甲15~22,弁論の全趣旨)オ被告会社が本件生産者らから購入したワインの営業及び販売等被告Bは,被告会社の従業員として,国内の酒店等に対し,被告会社が上記エのとおり本件生産者らから購入したワインを含むワインについて営業活動を行った。(甲6,9,乙34,被告B)(2) 以上を踏まえて,被告A及び被告Bに原告に対する(共同)不法行為が成立するか否かを検討する。 ア被告会社として本件各ワインを購入した行為について(ア) E,F,G及びH被告Aは,上記(1)のとおり,E,F,G及びHに対し,同ワイン生産者らの日本におけるワインの市場開拓を行ったのが被告Aであり,原告 には被告Aの後継者がいないなどと告げるとともに,自らが原告のために購入予約をしていたワインを被告Aが立ち上げた被告会社として購入したいなどと申し込むメールを送信し,同ワイン生産者らの了解を得て,これらのワインを被告会社として購入したことが認められる。加えて,被告Aが,原告在職中に,同ワイン生産者らの出荷時期等に関して,事実と異なる内容 し込むメールを送信し,同ワイン生産者らの了解を得て,これらのワインを被告会社として購入したことが認められる。加えて,被告Aが,原告在職中に,同ワイン生産者らの出荷時期等に関して,事実と異なる内容を記載した社内メールを送信したり,虚偽の内容の引継書を作成したりして,原告が購入予約に係るワインを購入することを妨げる行為に及んだことも勘案すれば,被告Aは,本来は原告において購入するはずであったワインを不当に奪取して被告会社に購入させたものと評価できる。そして,原告は,被告Aの上記行為により,これらのワインを購入することができなくなったのであるから,被告Aの上記行為は原告に対する不法行為に当たるというべきである。 これに対し,被告Aらは,被告Aの上記一連の行為が自由競争の範囲内の行為であるなどと主張するが,上記の経緯に照らして同主張を採用することはできない。 (イ) I原告は,被告Aらが,平成24年に1回,平成25年及び平成26年には2回,本来は原告が購入するはずであったIのワインを横取りして購入したために,原告が,平成24年には同ワインを1回しか購入することができず,また,平成25年及び平成26年には,同ワインを1回も購入することができなかったなどと主張する。 しかしながら,原告は,その主張する平成24年における2度目の購入並びに平成25年及び平成26年における各購入につき,特にIに対して購入予約をしていたような事情もないから,被告Aが被告会社としてIのワインを購入したことによって,原告が原告において本来購入できるはずだった同ワインを購入できなくなったという関係を認めること はできない。したがって,被告Aの上記行為は,原告の利益を侵害するものではなく,原告に対する不法行為には当たらない。 この点,原告は,平成22年及 入できなくなったという関係を認めること はできない。したがって,被告Aの上記行為は,原告の利益を侵害するものではなく,原告に対する不法行為には当たらない。 この点,原告は,平成22年及び23年にIから年2回ワインを購入しているから,被告Aが被告会社としてIのワインを購入しなければ,特別な事情がない限り,原告は平成24年以降も年2回の購入ができたはずであるなどと主張するが,同主張に係る事実を認めるに足る証拠はないし,かえって,原告が,継続的に取引していたワイン生産者らから,突然取引を打ち切られることが過去に何度もあったこと(証人D)に照らすと,原告の主張を採用することはできない。 (ウ) J,K及びL原告は,被告Aらが,本来は原告が購入するはずであったJ,K及びLのワインを横取りして購入したため,原告が,平成24年においてこれらのワインを購入することができず,また,K及びLのワインについては,平成25年及び平成26年にも購入することができなかったなどと主張する。 しかしながら,原告は,これらのワインのいずれについても,特に購入予約をしていたような事情もないから,被告会社がこれらのワインを購入したことによって,原告が購入するはずだったワインを購入できなくなったという関係を認めることはできない。加えて,J,K,Lのワインについては,いずれも卸売業者である仲買人を通じて出荷され,原告も,仲買人を通じて購入しているところ,仲買人は,多数の購入希望者に対して同一価格で販売するのであるから,被告会社がこれらのワインを購入したとしても,そのことによって,原告がこれらのワインを購入できなくなるものではない(現に,原告は,平成26年3月には,Jのワインを購入している(甲26)。)。 したがって,被告Aがこれらのワインを被告会社をし そのことによって,原告がこれらのワインを購入できなくなるものではない(現に,原告は,平成26年3月には,Jのワインを購入している(甲26)。)。 したがって,被告Aがこれらのワインを被告会社をして購入させた行 為は,原告の利益を侵害するものとはいえず,原告に対する不法行為には当たらない。 (エ) 以上によれば,被告Aには,上記(ア)のとおり,被告会社による本件生産者からのワイン購入のうち,原告が購入予約をしていたE,F,G及びHのワインを購入した行為及び同購入に向けられた一連の行為の限度で,原告に対する不法行為が成立すると認められる。 他方,被告Bについては,被告Aの上記行為に関与したことを認める証拠がなく,かえって,本件各ワインの原告における購入予約及び被告会社における購入は,いずれも被告Aが一手に担当していたと認められるから(被告A,被告B),被告Aの上記行為について,被告Bに共同不法行為が成立するとは認めることができない。 イ原告が主張するその他の不法行為について(ア) 原告は,被告Aらの本件横奪行為の内容につき,上記(1)で認定した各行為のほか,①被告Aらが,原告を退職する際,原告から本件生産者らとの取引に係るシッパーファイルを持ち出した,②被告Aが,本件生産者らとの取引に関するメールを削除したなどとも主張する。 しかしながら,まず,上記①について,被告Aらがシッパーファイルを持ち出したことを直接裏付ける証拠は全くない上,被告Aらが明確にこれを否認していること(被告A10頁,被告B4頁など)や,原告がその業務にとって極めて重要であるはずのシッパーファイルがなくなっていたと主張しながら,警察に被害届を出すなどの措置を採っていないこと(証人D33頁)等に照らすと,直ちに原告の主張を採用することはできない。 とって極めて重要であるはずのシッパーファイルがなくなっていたと主張しながら,警察に被害届を出すなどの措置を採っていないこと(証人D33頁)等に照らすと,直ちに原告の主張を採用することはできない。 また,上記②については,本件で提出された全証拠によっても,被告Aに,本件生産者らとの間で送受信したメールを全て保存しておく義務があったとは認められず,被告Aが本件生産者らとのメールの一部を消 去したことが直ちに原告に対する不法行為に当たるということはできない(なお,メール中に明らかに後任者に引き継ぐべき内容が記載されていたのに,その内容を引き継がないまま意図的に同メールを消去したような場合には,原告に対する不法行為を構成する余地もないではないが,甲36によっても消去されたメールの内容及び文面は不明である上,原告もその内容等について何ら具体的な主張・立証をしていない。)。したがって,上記②についても,原告に対する不法行為に当たるものとはいえない。 (イ) また,原告が主張する本件営業行為については,被告Bが,被告会社として本件各ワインについて国内の酒店等に対する営業活動を行った結果,被告会社から本件各ワインが販売されるに至っていることは認められるが,それ以上に,被告Aらが原告から本件顧客名簿を持ち出したことや被告Bが本件営業活動に当たって本件顧客名簿を使用したことを認めるに足る証拠はない(なお,上記1及び後記5のとおり,そもそも,原告の主張する「本件顧客名簿」の内容自体が不明であり,この点でも原告の主張は失当というほかない。)。 そうすると,被告Bが本件各ワインについて国内の酒店等に営業活動を行ったことは,その結果,本件各ワインが販売されるに至ったことを含めて,正当な自由競争の範囲を逸脱する違法な行為であるとは認められない うすると,被告Bが本件各ワインについて国内の酒店等に営業活動を行ったことは,その結果,本件各ワインが販売されるに至ったことを含めて,正当な自由競争の範囲を逸脱する違法な行為であるとは認められないから,被告Bの行為が原告に対する不法行為に当たるものということはできない。 3 争点2(被告Aらの一連の行為につき,被告会社が使用者責任を負うか)について前記2(2)のとおり,被告Bに原告に対する不法行為は成立しないから,被告会社が被告Bの行為につき使用者責任を負う余地はない。 他方,被告Aについては,原告において購入予約をしていたE,F,G及び Hの各ワインを,被告会社をして購入させた行為及び同購入に向けられた一連の行為(前記2(2)ア(ア))の限度で,原告に対する不法行為が成立する。しかしながら,被告Aの上記一連の行為は,被告会社の設立前後にわたっている上,そもそも被告Aは被告会社の代表取締役であって,「被用者」(民法715条)ではないから,被告Aの行為について被告会社が使用者責任を負う余地はない(なお,具体的な事実関係によっては,被告Aが被告会社の職務を行うについて原告に加えた損害につき,被告会社に使用者責任以外の何らかの責任が生ずることも考えられないではないが,原告はこうした点につき,一切主張・立証しないのであるから(第21回弁論準備手続調書参照),原告の被告会社に対する請求を認める余地はない。)。 4 争点3(被告Aらの一連の行為につき,原告に対する債務不履行が成立するか)について(1) 被告Aについて原告は,被告Aらによる本件横奪行為及び本件営業行為が,原告に対する(共同)不法行為のみならず原告との関係で債務不履行にも当たると主張するところ,上記2(2)のとおり,①原告が主張する本件横奪行為のうち,被告A らによる本件横奪行為及び本件営業行為が,原告に対する(共同)不法行為のみならず原告との関係で債務不履行にも当たると主張するところ,上記2(2)のとおり,①原告が主張する本件横奪行為のうち,被告Aが,原告において購入を予約していたE,F,G及びHの各ワインを被告会社をして購入させた行為及び同購入に向けられた一連の行為について,原告に対する不法行為が成立するものの,②原告が主張するその他の本件横奪行為については,これを認めることができないし,③本件営業行為については,被告Aらにおいて本件顧客名簿を持ち出し,又は,本件顧客名簿を使用した事実をいずれも認めることができないから,本件営業行為は正当な自由競争の範囲内の行為と解される。 したがって,上記②及び③については,いずれも原告に対する債務不履行が成立する余地はない。 他方,上記①の行為については,仮に被告Aに債務不履行が成立するとし ても,後記6(3)のとおり,原告に被告Aの不法行為によって生じる損害を超える損害が生じるとは認めることができないから,被告Aにつき,不法行為に加えて,さらに債務不履行が成立するかを判断する必要はない。 なお,原告は,被告Aが,原告在籍中にもかかわらず,被告会社を設立し,かつ,被告会社に500万円を出資したことについても,雇用契約の付随義務である競業避止義務に違反する旨主張するが,被告Aによる被告会社の設立及び出資それ自体によって原告に損害が生じるとは認められないし,原告も被告会社の設立及び出資によって生じた原告の損害について何ら主張・立証しない。したがって,被告Aによる被告会社の設立及び出資について,原告が被告Aに対し,債務不履行に基づく損害賠償請求権を有するとは認められない。 (2) 被告Bについてア原告は,被告Bが本件横奪行為に関与 って,被告Aによる被告会社の設立及び出資について,原告が被告Aに対し,債務不履行に基づく損害賠償請求権を有するとは認められない。 (2) 被告Bについてア原告は,被告Bが本件横奪行為に関与した旨や,被告Bが原告から持ち出した本件顧客名簿を使用して被告会社の営業活動を行った旨主張するが,かかる事実がいずれも認定できないことは,上記2で判断したとおりである。 イまた,原告は,①被告Bが,原告在籍中にもかかわらず,被告会社の設立に当たって300万円を出資した行為が,雇用契約に基づく付随義務としての競業避止義務に違反し,また,②原告退職後に被告会社の従業員として被告会社の国内顧客向け営業活動に従事した行為が,本件競業禁止規定が定める退職後の競業避止義務に違反するとも主張する。 そこで検討するに,まず,上記①について,従業員が雇用主との雇用契約に基づき信義則上の競業避止義務を負うとしても,競業会社への出資が直ちに同義務に違反するとは考えられず,上記①の行為が直ちに原告との雇用契約に基づく信義則上の競業避止義務の不履行になるとは認めることはできない。仮にこの点を措くとしても,被告Bが被告会社に出資したこ と自体によって原告に損害が生じるとは認められないし,原告も被告Bの出資自体によって生じた損害について何ら主張・立証していない。 また,上記②の主張は,本件競業禁止規定が有効であることが前提となるが,証拠(甲23,24,乙31~34)によれば,原告就業規則が従業員に周知されていたとは認められず,本件競業禁止規定を含む原告就業規則には就業規則としての効力が生じていないというほかないから(最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決・裁判集民事211号1頁参照),上記②の行為が,原告に対する債務不履行に当たると認めることはできな は就業規則としての効力が生じていないというほかないから(最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決・裁判集民事211号1頁参照),上記②の行為が,原告に対する債務不履行に当たると認めることはできない。なお,仮に本件競業禁止規定が有効であるとしても,本件競業禁止規定が禁じるのは,競業会社の「役員として勤務すること」であり,競業会社への就職や同会社の業務への従事それ自体を禁じる規定は見当たらないから,被告Bが被告会社に就職し,従業員として営業活動に従事したことが,本件就業禁止規定の定める競業禁止義務に反するということはできない。 5 争点4ないし6(不正競争の成否)について(1) 原告は,被告Aらが原告の営業秘密である本件顧客名簿を不正に取得し,営業活動に使用し,被告会社に開示したなどと主張するが,そもそも,前記2(2)のとおり,被告Aらが原告から本件顧客名簿を持ち出したことや本件営業活動に当たって本件顧客名簿を使用したことを認めることはできず,その他,被告Aらによる本件顧客名簿の不正取得,使用及び開示を認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は失当である。 (2) なお,原告は,本件顧客名簿が原告の営業秘密に当たると主張する一方,上記1のとおり,本件顧客名簿の具体的内容について何ら主張していないのであるから,本件顧客名簿が営業秘密に当たるとは認められない。 仮にこの点を措くとしても,本件顧客名簿が秘密として管理されていたこと(秘密管理性)に関するとされる客観的証拠は甲8のみしかなく,その内 容を見ても秘密管理性を裏付けるものか判然としない上,原告の本社事務所には,顧客の名称,住所・電話番号等の連絡先,購入商品等が記載された納品書や注文書をまとめたファイルが,施錠等をされることもなく,誰でも自由に閲覧可能な状態で置 のか判然としない上,原告の本社事務所には,顧客の名称,住所・電話番号等の連絡先,購入商品等が記載された納品書や注文書をまとめたファイルが,施錠等をされることもなく,誰でも自由に閲覧可能な状態で置かれていたこと(乙33)も併せ考慮すれば,本件顧客名簿が秘密として管理されていたこと(秘密管理性)も認めるに足りない。 (3) 以上によれば,本件顧客名簿についての不正競争の成立は認められない。 6 争点7(損害額)について前記のとおり,原告の主張する本件横奪行為のうち,被告Aが,原告において購入予約をしていたE,F,G及びHの各ワインを,被告会社として購入した行為及び同購入に向けられた一連の行為(前記2(2)ア(ア))については,原告に対する不法行為が成立すると認められるところ,同不法行為によって原告に生じた損害額は以下のとおりと認められる。 (1) 平成24年の売上減少による損害ア Eについて 42万0720円(ア) コンフィダンス被告Aが,原告において購入を予約していたコンフィダンス2009(240本)を被告会社として購入し,その結果,原告は,平成24年において,Eから同ワインを購入することができなくなったものであるところ,証拠(甲27の1,甲29の1)によれば,原告における同ワインの一本当たりの粗利益は763円(=2160円-1397円)と認められるから,原告の損害額は,18万3120円(計算式は,763円×240本)と認められる。 (イ) ヴァンソブル被告Aが,原告において購入を予約していたヴァンソブル2010(360本)を,被告会社として購入し,その結果,原告は,平成24年に おいて,Eから同ワインを購入することができなくなったものであるところ,後記のとおり,原告における同ワインの一本当たりの粗利 0本)を,被告会社として購入し,その結果,原告は,平成24年に おいて,Eから同ワインを購入することができなくなったものであるところ,後記のとおり,原告における同ワインの一本当たりの粗利益は660円と認められるから,原告の損害額は,23万7600円(計算式は,660円×360本)と認められる。 なお,ヴァンソブル2010について一本当たりの粗利益を直接示す証拠はないが,原告がその直近にEから購入したヴァンソブル2009の一本当たりの粗利益が660円(=1780円-1120円)であり(甲27の2,甲29の1),ヴァンソブル2010の一本当たりの粗利益がこれを上回る又は下回ると認めるに足る的確な証拠はないことに照らすと,ヴァンソブル2010の一本当たりの粗利益もこれと同額の660円とみるのが相当である。 この点,被告らは,ヴァンソブル2010の粗利益を計算するに当たっての仕入原価について,①被告会社における同ワインの仕入単価と同額で,かつ,②被告会社における購入時の為替相場に従って計算すべきである旨主張する。しかしながら,上記①について,Eのような仲買人を通さない取引においては,購入者が異なれば仕入価格も異なると認められるし(乙36),上記②についても,原告が被告会社と同じ為替レートで購入するとは限らない上,被告らの主張する為替変動幅がそれほど大きくないことも考えると,原告は平成24年においても前年並みの粗利益を確保できた蓋然性が高いと認められる。したがって,被告らの主張は,いずれも失当である。 (ウ) 以上に対し,被告らは,①平成24年には,原告が取引上重要なワインと考えていた「イン・ファイン」の出荷予定がなかったため,原告は平成24年において,Eからのワインの購入を予定していなかったのであり,被告Aが,被告会社とし 平成24年には,原告が取引上重要なワインと考えていた「イン・ファイン」の出荷予定がなかったため,原告は平成24年において,Eからのワインの購入を予定していなかったのであり,被告Aが,被告会社としてEのワインを購入したことと平成24年における原告の売上減少との間に因果関係はない,②原告は,平成 24年にコンフィダンス2010を購入しているので,原告には,コンフィダンス2009を購入できなかったことによる損害は発生していない旨主張する。 しかしながら,上記①について,原告は平成24年においてEとの間でコンフィダンス及びヴァンソブルの購入予約をしているのであって,原告にこれらのワインの購入予定があったことは明らかである。さらに,被告Aが送信した上記2(1)イ(ア)のメールに対してEの担当者が返信したメール中に,「確かに出水商事のために確保しています。」,「私は喜んでこの予約をヴィヴィットのために解放し,出水商事との取引を打ち切らせて頂きます。」との記載があること(乙15)に照らせば,被告Aが被告会社としてワインの購入を申し出たために原告の購入予約が取り消されたものと認められる。したがって,被告らの上記①の主張は失当である。 次に,上記②については,原告がコンフィダンス2009を購入できなかったこと自体が原告の損害と認められるところ,原告がコンフィダンス2010を購入したからといって,そのことによってコンフィダンス2009を購入できなかったことによる損害が回復されたことを認めるに足る証拠はない。したがって,被告らの上記②の主張も採用することができない。 イ Fについて 58万0638円被告Aが,原告において購入を予約していたサヴニエール‟ランクロ”2010(420本)及びサヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトル することができない。 イ Fについて 58万0638円被告Aが,原告において購入を予約していたサヴニエール‟ランクロ”2010(420本)及びサヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトル(6本)を,被告会社として購入し,その結果,原告は,平成24年において,Fからこれらのワインを購入することができなくなっているところ,後記のとおり,原告におけるこれらのワインの一本当たりの粗利益はいずれも1363円と認められるから,原告の損害額は,58万0638円(計 算式は1363円×(420本+6本))と認められる。 なお,サヴニエール‟ランクロ”2010及びサヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトルについて,いずれも一本当たりの粗利益を直接示す証拠はないが,原告がその直近にFから購入したサヴニエール‟ランクロ“2009の一本当たりの粗利益が1363円(=2860円-1497円)であり(甲27の5,甲29の3),サヴニエール‟ランクロ”2010及びサヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトルの一本当たりの粗利益がこれを上回る又は下回ると認めるに足る的確な証拠はないことに照らすと,これらのワインの一本当たりの粗利益もこれと同額の1363円とみるのが相当である。 この点,被告らは,サヴニエール‟ランクロ”2010及びサヴニエール‟ランクロ”2010マグナムボトルの各粗利益を計算するに当たっての仕入原価について,①被告会社における同ワインの仕入単価と同額で,かつ,②被告会社における購入時の為替相場に従って計算すべきである旨主張する。しかしながら,上記ア(イ)で検討したとおり,被告らの同主張は失当である。 ウ Gについて 146万9280円(ア) 被告Aが,原告において購入を予約していたシャトー・サミオン赤2010( 。しかしながら,上記ア(イ)で検討したとおり,被告らの同主張は失当である。 ウ Gについて 146万9280円(ア) 被告Aが,原告において購入を予約していたシャトー・サミオン赤2010(480本),イルレギー白2011(480本)及びイルレギー赤2010(480本)を,被告会社として購入し,その結果,原告は,平成24年において,Gからこれらのワインを購入することができなくなっているところ,後記のとおり,これらのワインの一本当たりの粗利益は,シャトー・サミオン赤2010について1373円,イルレギー白2011について880円,イルレギー赤2010について808円とそれぞれ認められるから,原告の損害額は,合計146万9280円(計算式は1373円×480本+880円×480本+808円 ×480本)と認められる。 なお,シャトー・サミオン赤2010,イレルギー白2011及びイレルギー赤2010について,いずれも一本当たりの粗利益を直接示す証拠はないが,原告がその直近にGから購入したシャトー・サミオン赤2009,イレルギー白2010及びイレルギー赤2009の一本当たりの粗利益がそれぞれ1373円(=2980円-1607円),880円(=1940円-1060円),808円(=1960円-1152円)であり(甲27の8~10,甲29の6,7),シャトー・サミオン赤2010,イレルギー白2011,イレルギー赤2010の一本当たりの各粗利益が上記各金額を上回る又は下回ると認めるに足る的確な証拠はないことに照らすと,これらのワインの一本当たりの粗利益も,それぞれ上記各金額と同額とみるのが相当である。 この点,被告らは,シャトー・サミオン赤2010,イレルギー白2011及びイレルギー赤2010の各粗利益を計算するに当たっての仕 本当たりの粗利益も,それぞれ上記各金額と同額とみるのが相当である。 この点,被告らは,シャトー・サミオン赤2010,イレルギー白2011及びイレルギー赤2010の各粗利益を計算するに当たっての仕入原価について,①被告会社における同ワインの仕入単価と同額で,かつ,②被告会社における購入時の為替相場に従って計算すべきである旨主張する。しかしながら,上記ア(イ)で検討したとおり,被告らの同主張は失当である。 (イ) なお,被告らは,原告は,平成24年において,イレルギー赤の代替品であるイレルギー赤ドメーヌ・ブラナを購入することによって,イレルギー赤を購入できなかったことによる損失をてん補している旨主張する。 この点,被告らがイレルギー赤の代替品と主張するワインは,イレルギー赤2009ドメーヌ・ブラナ(乙12)であると解されるが,原告が同ワインを購入したからといって,そのことによってイレルギー赤2010を購入できなかったことによる損害が回復されたと認めるに足る 証拠はないから,被告らの上記主張を採用することはできない。 エ Hについて 48万8160円被告Aが,原告において購入を予約していたクレークソ2010(180本),アミルカル・リフソーレ2011(180本)及びアイ・ツゥ2010(360本)を,被告会社として購入し,その結果,原告は,平成24年において,Hからこれらのワインを購入することができなくなっているところ,後記のとおり,これらのワインの一本当たりの粗利益は,クレークソ2010について537円,アミルカル・リフソーレ2011について579円,アイ・ツゥ2010について798円とそれぞれ認められるから,原告の損害額は,合計48万8160円(計算式は537円×180本+579円×180本+798円×360本) レ2011について579円,アイ・ツゥ2010について798円とそれぞれ認められるから,原告の損害額は,合計48万8160円(計算式は537円×180本+579円×180本+798円×360本)と認められる。 なお,クレークソ2010,アミルカル・リフソーレ2011及びアイ・ツゥ2010について,いずれも一本当たりの粗利益を直接示す証拠はないが,原告がその直近にHから購入したクレークソ2009,アミルカル・リフソーレ2009及びアイ・ツゥ2009の一本当たりの粗利益は,それぞれ順に537円(=1640円-1103円),579円(=1820円-1241円),798円(=2270円-1472円)であり(甲27の23,25,27,甲29の17。なお,原価については甲29の17による。),クレークソ2010,アミルカル・リフソーレ2011及びアイ・ツゥ2010の一本当たりの各粗利益が上記各金額を上回る又は下回ると認めるに足る的確な証拠はないことに照らすと,これらのワインの一本当たりの粗利益も,それぞれ上記各金額と同額とみるのが相当である。 この点,被告らは,クレークソ2010,アミルカル・リフソーレ2011及びアイ・ツゥ2010の各粗利益を計算するに当たっての仕入原価についても,Eのヴァンソブルと同様に,①被告会社における同ワインの仕入単価と同額で,かつ,②被告会社における購入時の為替相場に従って 計算すべきである旨主張するものと解される。しかしながら,上記ア(イ)で検討したとおり,被告らの同主張は失当である。 オなお,被告らは,原告の粗利益を算出するに当たっての仕入原価の証拠である原価計算表(甲29の1,3,6,7,17)につき,原告が自ら作成した電子データをプリントアウトしたもので,それだけでは正しい金額であることを確 告の粗利益を算出するに当たっての仕入原価の証拠である原価計算表(甲29の1,3,6,7,17)につき,原告が自ら作成した電子データをプリントアウトしたもので,それだけでは正しい金額であることを確認できないとも主張するが,同原価計算表の体裁等に照らせば,原告において機械的に記入作成されたものであることがうかがわれ,特段その信用性を疑うべき事情は認められない。 また,被告らは,原告がワインを日本国内の顧客に販売するに際して日本郵便を利用しているにもかかわらず,上記原価計算表には顧客にワインを送付する際にかかる送料が含まれておらず,送料相当額を減額すべきである旨主張する。しかしながら,原告においては,送料は原則として顧客が負担し,一件当たりの販売価格が3万円を超える場合のみ原告が負担することとされているところ(被告らも明らかに争わない。),顧客への一件当たりの販売価格が3万円を超えたことを具体的に認めるに足る証拠はないから,被告らの上記主張についても採用することはできない。 (2) その他の損害についてア原告は,上記(1)のほか,平成25年及び平成26年に,原告が本件生産者らから一部のワインを購入できなかったとして,これによる損害も被告Aによる不法行為と相当因果関係を有する損害である旨主張する。 しかしながら,原告は,本件生産者らのいずれとも基本契約その他の継続的購入に関する契約を交わしていたわけではないから,被告Aの行為と平成25年以降において原告がこれらのワインを購入することができなかったこととの間に相当因果関係があると認めることはできない。この点,原告は,ワイン生産者らとの間で,特別な問題が発生しない限りは将来的にも継続的に原告を通じてのみ日本にワインを出荷する旨の暗黙の合意が 存在していた旨主張するが,これを認 きない。この点,原告は,ワイン生産者らとの間で,特別な問題が発生しない限りは将来的にも継続的に原告を通じてのみ日本にワインを出荷する旨の暗黙の合意が 存在していた旨主張するが,これを認めるに足る証拠はないし,かえって,原告においては,何年も継続してワインを購入した後に生産者から急に出荷を断られることも度々あったのであるから(証人D30頁~32頁),むしろそのような合意は存在していなかったものと考えられる。 そうすると,平成25年及び平成26年に原告が本件生産者らから一部のワインを購入できなかったとしても,これを被告Aの不法行為により原告に生じた損害と認めることはできない。 イまた,原告は,被告Aの不法行為により,ワイン生産者らとの関係で信頼低下等の無形損害を被ったと主張するが,前記2(1)イ認定の被告Aのワイン生産者らへの各メールの文言を見ても,特段これによりワイン生産者らとの関係で原告に対する信頼が低下すると評価すべきような内容は含まれていないし,現に,上記各メールを受けたワイン生産者らから原告へのメール(甲14,15,18,19等)の内容を見ても,被告Aのワイン生産者らへの上記各メールによりワイン生産者らとの関係で原告に対する信頼が低下したとは認められず,他に原告に対する信頼の低下等の損害が生じたことを認めるに足る証拠はない。 さらに,原告は,被告Aの不法行為により,Gからワインを購入することができなくなったため,顧客に対して謝罪のファックス(甲17)を送信することを余儀なくされ,これにより同顧客の原告への信頼が低下したとも主張する。しかしながら,同ファックスの文言を見る限り原告への信頼の低下をもたらすほどのものとはいえない上,原告においては,予定していたワインについて年に数銘柄は購入できないものがあり,その際 とも主張する。しかしながら,同ファックスの文言を見る限り原告への信頼の低下をもたらすほどのものとはいえない上,原告においては,予定していたワインについて年に数銘柄は購入できないものがあり,その際には原告が電話等で謝罪することもあったというのであるから(証人D39頁~41頁),上記原告の主張を採用することはできない。 (3) 小括そうすると,被告Aの不法行為により,原告に上記(1)の合計額である29 5万8798円の損害が生じたと認められる(なお,被告Aの債務不履行に基づく原告の損害額を検討しても,不法行為に基づく損害額と何ら変わるものではない。)。 7 結論以上によれば,原告の訴えのうち被告Aらに対する前記第1の2及び3の各請求に係る部分は不適法であるからこれを却下し,前記第1の1の請求のうち,被告Aに対する請求は主文第2項の限度で理由があるからこれを認容し,被告Aに対するその余の請求並びに被告会社及び被告Bに対する請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官廣瀬達人 (別紙)却下請求目録 1 被告A及び同Bは,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿の内容を用いて,顧客に対して,面会を求め,電話をし,郵便物を送付し又は電子メールを送信する等して,酒類に関する契約の締結,締結の勧誘又はその他営業行為等をしてはならない。 2 被告A及び同Bは,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿に記載する内容が記録されたコンピューター内の記録媒体又はPCカード,CD-ROM,DVD-ROM並びにフロッピーディスク等の電磁的記 らない。 2 被告A及び同Bは,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿に記載する内容が記録されたコンピューター内の記録媒体又はPCカード,CD-ROM,DVD-ROM並びにフロッピーディスク等の電磁的記録媒体を廃棄し,原告に対し,同記録媒体及び同電磁的記録媒体からの印刷物を引き渡せ。 (別紙)営業秘密目録 原告業務に使用するコンピューターの記録媒体内に記録された原告作成にかかる顧客名簿(顧客の「納品先コード」,「請求or 納品」,「納品先名」,「フリガナ」,「敬称」,「郵便番号」,「都道府県」,「住所」,「ビル・建物名」,「部署名」,「部署名フリガナ」,「電話番号」,「FAX番号」,「役職」,「内線」,「担当者」,「担当者フリガナ」,「メールアドレス」,「備考」等の記入欄があるもの(以上「納品先マスタ」画面,「請求先マスタ」画面等))

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