平成21(わ)3275 虚偽有印公文書作成,同行使被告事件

裁判年月日・裁判所
平成22年9月10日 大阪地方裁判所
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本件は、被告人が厚生労働省の職務において、心身障害者団体に対する公的証明書の発行に関与したとされる事件である。争点は、被告人が共謀の下で不正に証明書を発行したか否かであり、裁判所は証拠の信用性や供述の整合性を詳細に検討した。特に、被告人と共犯者の関与が証明書の発行にどのように影響したかが焦点となった。最終的に、裁判所は被告人に対する共謀の認定を否定し、無罪判決を下した。これは、証拠が被告人の有罪を裏付けるに足るものではなく、供述の不自然さや矛盾が多く見られたためである。

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判決文本文125,930 文字)

判決目次 主文 理由 第1本件公訴事実の要旨及び争点 本件公訴事実の要旨及び争点本件の核心及び全体像について 第2証拠上認定できる事実 被告人及び共犯者とされている人物の経歴等(1)被告人(2)B(3)C(4)D 厚労省の組織,役職,配席等について(1)厚労省の組織,分掌事務(2)関係者の役職(3)企画課及び社会参加推進室の配席等 心身障害者用低料第三種郵便物制度について 厚労省内部における証明書の発行手続,発行実績(1)発行手続(2)公的証明書の発行実績 J協会について 「aの会」設立とCの関与 2月中旬から2月20日ころの状況等 2月下旬(2月25日)のC,F,Lの状況等 2月下旬のCの厚労省訪問について 2月中旬から2月20日ころの状況等 2月下旬(2月25日)のC,F,Lの状況等 2月下旬のCの厚労省訪問について 「aの会」とj協会との交渉等 4月上旬から中旬の状況 4月下旬から5月下旬の状況 「b」の第三種郵便物の承認など 6月上旬ころの本件公的証明書の作成等 6月1日から10日までのC及び被告人の手帳の記載等 本件公的証明書の行使及びその後の事情 平成18年ころの「aの会」の内紛及び「a’の会」への名称変更等 障害者自立支援法の法案作成経緯 本件捜査及び公判の経緯,状況 第3争点に対する判断 総論 (1)当事者の主張及び判断の要点 (2)検討の単位について (3)検討の手法について 場面①について(CのFに対する口添え依頼,FからLへの電話の有無,Lの被告人に対する指示,その後,Cが厚労省を訪れた際の状況及びその内容) (1)当事者の主張等 ア検察官の主張等 イ弁護人の主張等 (2)検討 況及びその内容)(1)当事者の主張等ア検察官の主張等 イ弁護人の主張等 (2)検討アCの公判供述中,検察官主張を裏付ける部分の信用性について(ア)客観的証拠との関係a.Cの手帳の記載について(a)記載内容の解釈について (b)記載の評価について b.Cの手帳とFの手帳,ゴルフ場からの照会結果 - 3 -c.Jの名刺の記載について d.小括 (イ)供述内容の合理性a.本来であれば公的証明書の発行要件を満たさないこととの整合性 b.Fに事前の了解を得る必要性の点について (ウ)供述態度,その他についてa.Cが,Fが否定していることを知りつつFの関与を供述していることについてb.証言の変遷と検察官への迎合 c.供述の具体性,迫真性(エ)小括イCの公判供述中,検察官主張に反する部分(Cが2月下旬ころ厚労省を訪問した際に,まず訪れた相手など)について(ア)Cの手帳の記載との関係(イ)Cが,被告人の名刺を所持していなかったこととの関係 (ウ)Nの検察官調書,公判供述との関係(エ)M,Hの検察官調書との関係 Cが,被告人の名刺を所持していなかったこととの関係 (ウ)Nの検察官調書,公判供述との関係 (エ)M,Hの検察官調書との関係 (オ)小括 ウLの検察官調書の信用性について (ア)客観的証拠との関係 (イ)供述内容の合理性 a.FとLの関係について b.LがFから電話を受け,被告人にこれを話したことは不自然,不合理ではないこと c.国会答弁との関係 d.被告人に対する指示内容について (ウ)他の供述証拠との符合性 (エ)供述の自主性について a.供述内容が他の関係者の供述が得られていない事実を内容とすることについて b.検察官における誘導の可能性について c.利害関係,検察官への迎合の可能性について (オ)小括 エDの検察官調書の信用性について (ア)客観的状況との整合性等 a.「aの会」の実態 b.Jの名刺の記載 c.小括 (イ)弁護人の主張について (ウ)小括 小括 弁護人の主張について 小括 M及びNの検察官調書並びにNの公判供述の信用性について Fの公判供述の信用性について 客観的証拠との関係 記憶減退の可能性 記憶に基づいて率直に供述することが困難であるとの主張について 平成18年11月のCとのやりとりに関する供述との関係 小括 Jの公判供述について 総合的検討 結論 証拠上認められる事実 単体では,証拠上認定するに至らない事実 場面②について(Cの厚労省訪問から5月中旬までの「aの会」の案件に対する厚労省内での対応状況) 当事者の主張等 検察官の主張等 弁護人の主張等 検討 Cの訪問直後の被告人の大変な案件発言について 協会紹介の状況について HからNへの書類提出指示,3月中旬から下旬ころのやりとりについて NからBへの引継ぎについて Hの4月上旬ころのBに対する指示について の書類提出指示,3月中旬から下旬ころのやりとりについて エNからBへの引継ぎについて オHの4月上旬ころのBに対する指示についてカ証明書交付願の取得時期について(ア)関係者の供述等(イ)検討(ウ) 結論 キ4月中のDとBの面談についてク5月中旬ころのH,B,被告人の「aの会」の件についてのやりとりについて 結論 ア証拠上認められる事実 イ単体では,証拠上認定するに至らない事実 場面③について(5月中の「aの会」側の行動) 争点 - 6 - (2)前提となる事実認定ア関係する供述等(ア)Dの検察官調書及び公判供述 (イ)Cの公判供述 イ検討(ア)総論 (イ)要請等①について (ウ)要請等②について (エ)小括 (3)前提事実からの推認の可否と結論 場面④について(争点9ないし11を中心。本件公的証明書の作成・交付状況など) (1)当事者 (3)前提事実からの推認の可否と結論 場面④について(争点9ないし11を中心。本件公的証明書の作成・交付状況など)(1)当事者の主張等ア検察官の主張等 イ弁護人の主張等 (2)検討アC,B各供述の信用性について(ア)客観的証拠である公的証明書のデータとの関係 (イ)証拠上認められる本件公的証明書が6月10日に郵政公社に提出されていることとの関係 (ウ)C自身及び被告人にとって不利益な供述であるとの主張について (エ)「aの会」から資料の提出がなく,正式の決裁もなされないまま発行されたこととの関係(Bの単独犯行は不合理か) (オ)Bが独断で公的証明書を作成し,Dに交付したことと符合する事情の存在について- 7 -a.本件公的証明書の作成状況との符合性 b.BがDと厚労省以外の場所で会うということは,Bが独断で公的証明書を作成し,Dに交付するということと符合すること c.q株式会社問題との関係 d.BとDの関係 (カ)C供述の信用性に関するその余の点についてa.あいさつの必要性 b.供述経過,供述態度等について (キ)B供述の不自然,不合理性について (ク)利害関係 (ケ)小括 (キ)B供述の不自然,不合理性について (ク)利害関係 (ケ)小括 イDの検察官調書及び公判供述の信用性について ウLの検察官調書の信用性について エM,Hの検察官調書の信用性について オ被告人の公判供述の信用性について カその他 結論 ア証拠上認められる事実 148イ単体では,証拠上認定するに至らない事実 供述の総合的検討 (1)各供述の信用性についての場面全体からの検討 アLの検察官調書 イCの公判供述 ウDの検察官調書,公判供述 エNの検察官調書,公判供述 オH,Mの検察官調書 (2)各供述全体からの検討 検察官の主張事実の認定とこれを踏まえた共謀の認定 (1)検察官主張事実の中核の認定 (2)共謀の認定について 第4 結論 主文 被告人は無罪。 共謀の認定について 第4 結論 - 9 -主文 被告人は無罪。 理由 第1本件公訴事実の要旨及び争点 本件公訴事実の要旨及び争点本件起訴状公訴事実(前文及び第2。なお,第1については,Bのみが起訴され,被告人は起訴されていない。)の要旨は,「被告人は,厚生労働省(以下,「厚労省」という。)社会・援護局障害保健福祉部企画課(以下,「企画課」という。)長として,心身障害者団体の申請に基づき,内国郵便約款により,同団体が,心身障害者団体用低料第三種郵便物に関する郵便料金の割引を受けることができる同約款料金表に規定する心身障害者団体であることなどを認定する同課長作成名義の証明書(以下,「公的証明書」などという。)の発行の職務に従事していたが,同証明書の発行に関し,その起案を担当するなどの職務に従事していた同課社会参加推進室社会参加係長B,自称福祉事業支援組織「aの会」の会長であったC及び「aの会」の発起人Dと共謀の上,行使の目的で,ほしいままに,真実は,「aの会」は心身障害者団体としての実体がなく,内国郵便約款料金表に規定する心身障害者団体ではなく,同会の発行する定期刊行物「b」は心身障害者の福祉の増進を図ることを目的とせず,郵便料金を不正に免れることを目的としたものであり,かつ,被告人が平成16年5月28日に「aの会」に対して上記証明書を発行した事実もないのに,「aの会」が同約款料金表に規定する心身障害者団体で,「b」が心身障害者の福祉の増進を図ることを目的とするものであり,被告人が同日に「aの会」に対して上記証明書を発行したかのように装うため,被告人が,その職務に関し,同年6 規定する心身障害者団体で,「b」が心身障害者の福祉の増進を図ることを目的とするものであり,被告人が同日に「aの会」に対して上記証明書を発行したかのように装うため,被告人が,その職務に関し,同年6月上旬ころ,企画課において,Bをして,パーソナルコンピューター等を使用させて,あて先を「aの会」,証明内容を「上記団体は,国内郵便約款料金表に規定する心身障害者団体であり,当該団体の発行する『b』は心- 10 -身障害者の福祉の増進を図ることを目的としているものであると認めます。」,作成日付を「平成16年5月28日」,同課における文書番号をその作成日付に対応した「障企発第0528001号」,作成名義人を「厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長」とそれぞれ記載した書面を作成・印刷させた上,同課長名下に「厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長之印」と刻した角印を押捺させ,もって,厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長作成名義の内容虚偽の有印公文書1通(以下,「本件公的証明書」ともいう。)を作成した上,Dらが,同年6月10日ころ,東京都中央区●○丁目△番□号所在のc郵便局郵便窓口課申請事務センターにおいて,同センター総務主任Eに対し,上記証明書の内容が真実であるかのように装って提出して行使した。」というものであり,検察官は,被告人に虚偽有印公文書作成,同行使罪が成立すると主張する。 これに対し,弁護人は,被告人に,虚偽有印公文書作成,同行使の共謀はなく,Bに,本件の証明書を作成させたこともなく,被告人は無罪であると主張する。 したがって,本件の争点は,本件公訴事実について,被告人に,虚偽有印公文書作成,同行使についての共謀が認められるか否かである。 本件の核心及び全体像について関係証拠によれば,本件公訴事実中,「aの会」は心 ,本件の争点は,本件公訴事実について,被告人に,虚偽有印公文書作成,同行使についての共謀が認められるか否かである。 本件の核心及び全体像について関係証拠によれば,本件公訴事実中,「aの会」は心身障害者団体としての実体がなく,内国郵便約款料金表に規定する心身障害者団体ではなく,定期刊行物「b」は心身障害者の福祉の増進を図ることを目的とせず,郵便料金を不正に免れることを目的としたものであったこと,被告人が平成16年5月28日に「aの会」に対して公的証明書を発行した事実はないこと,Bは,6月上旬ころ,本件公的証明書を作成したこと,その後,Dらが,これをc郵便局において,提出して行使したことは,争いがなく,証拠上も明らかに認められる。 検察官は,本件の核心及び全体像として,次のとおり主張する。 - 11 -Bは,独断で,内容が虚偽の本件公的証明書の作成,交付という違法行為を行う理由も必要性もない。本件は,有力国会議員であるFからBの上司が依頼を受けるなどし,組織的な対応が必要な「議員案件」であったから,公的証明書の発行名義人で決裁権者である被告人に指示されて作成し,被告人に渡し,被告人から「aの会」側に交付されたものである。 これに対し,弁護人は,次のとおり主張する。 被告人は,虚偽の内容の証明書発行について,B,C,Dらと共謀したこともないし,Bに作成を指示したこともない。そもそも,被告人は,Bがそのような書類を作っていたという事実自体を全く知らなかった。Bは,被告人と関わりなく本件犯行に及んだものである。 そこで,以下,まず,証拠によって認められる事実を検討した上で,争点について検討する。 - 12 -第2証拠上認定できる事実以下の事実は,当事者間にも概ね争いがなく,関係証拠【省略】から認定することができる。 なお,証拠について,原 る事実を検討した上で,争点について検討する。 - 12 -第2証拠上認定できる事実以下の事実は,当事者間にも概ね争いがなく,関係証拠【省略】から認定することができる。 なお,証拠について,原本,謄本,写しの区別はしない。 (以下において,具体的な本件当時の事実は基本的に平成16年中のことであり,これについては,原則として年度の記載を省略する。なお,人物については,原則として姓のみを記する。) 被告人及び共犯者とされている人物の経歴等(1)被告人被告人(以下,被告人の氏名または姓を「A」と表記することがある。)は,昭和52年,国家公務員上級職試験に合格し,昭和53年に,当時の労働省にいわゆるキャリア官僚として入省した。その後,地方局勤務や他省庁への出向等も経験しつつ,労働省でキャリアを積み,労働省の複数の管理職のポストを勤めた。平成13年,労働省と厚生省が合併し,厚生労働省となった後,厚労省内では,旧労働省系のポストと旧厚生省系のポストの人事交流が行われていた。その一環として,被告人は,平成14年8月から平成15年8月まで,旧厚生省系のポストである社会・援護局福祉基盤課長を,平成15年8月から平成17年10月まで,同じく旧厚生省系のポストである同局障害保健福祉部企画課長を務めた。その後,平成17年10月に大臣官房政策評価審議官,平成18年9月に大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭担当),平成20年7月に雇用均等・児童家庭局長に就任し,本件逮捕(平成21年6月14日)当時は,厚労省雇用均等・児童家庭局長という立場にあった。 (2)BBは,国家公務員採用2種試験に合格し,厚生省に入省した。平成16年3月31日までは旧労働省系のポストに就いていたが,同年4月1日から平- 13 -成18年3月31日まで,旧厚生省系のポストであ Bは,国家公務員採用2種試験に合格し,厚生省に入省した。平成16年3月31日までは旧労働省系のポストに就いていたが,同年4月1日から平- 13 -成18年3月31日まで,旧厚生省系のポストである社会参加推進室社会参加係長を務め,同年4月1日,老健局総務課に異動となった。 なお,社会参加推進室内の上司は,室長であるGのほか,同室長補佐のK1,Hがいたが,Hは総括補佐であり,K1が直属の上司に当たった。 (3)CC(昭和10年生)は,昭和57年ころ,その当時及び本件当時衆議院議員であったFの私設秘書として採用され,それから昭和59年12月ころまでの間,Fの私設秘書として勤務した。Cは,同年,Fが衆議院議員選挙に落選した際に私設秘書をやめたが,その後も,Fの弟で参議院議員であったIの秘書を12年間にわたり勤め,Fとも交流があり,Cは,Fの下をたびたび訪れるなどして,頼み事をしたり,Fの選挙運動を手伝うなどしていた。 また,本件後である平成16年11月ころ,FがCの会社の設立パーティーにCの要請で出席することもあった。 Fは,昭和44年,衆議院議員に初当選し,衆議院議員を11期務め,その後,平成19年7月以降,参議院議員になった。平成16年当時は,衆議院議員であった。衆議院議員としての選挙区は,兵庫○区であり,参議院では,全国比例区で出ていた。委員会は,外交,防衛,安全保障,国土交通,建設,運輸等の分野で主に活動をした。国会対策委員長,選挙対策委員長も務め,何回か閣僚も務めた。 Fは,平成11年から平成17年までの間,d党の筆頭副代表も務める有力な国会議員であったが,厚生労働関係の委員会等に所属したことはなかった。 Cは,平成15年ころから平成16年ころは,eという身体障害者施設の障害者に仕事を依頼するスポンサーを探して,仕事を紹介する会 な国会議員であったが,厚生労働関係の委員会等に所属したことはなかった。 Cは,平成15年ころから平成16年ころは,eという身体障害者施設の障害者に仕事を依頼するスポンサーを探して,仕事を紹介する会社に勤務(月給20万円)していた。勤務時間は,平日の午前9時から午後7時ころまでであった。なお,eの会社は,fビルという地下鉄g駅前にあるビルに- 14 -入居しており,厚労省へは,歩いて五,六分の距離にあった。 (4)DD(昭和15年生)は,昭和40年にh社に入社し,その後,約8年間新聞記者を務めた。Jとは,h社の同期入社の同僚であった。その後,同社の雑誌の発行部門を担当し,雑誌の発行に関して第三種郵便物制度を利用することがあり,利用に際しては,郵便局から,第三種郵便物の規則等が記載された「第三種郵便物のしおり」を受け取り,Dもその内容を認識していた。 Dは,平成10年ころ,友人から,国会議員の秘書等を長く勤めていたことがあり,政官界を始め広い人脈を持っているなどと言われて,Cを紹介され,交際をするようになった。Dは,Cからも,Fと親しく,太いパイプがあるなどと聞いたことなどから,Cと交友関係を続けていた。 厚労省の組織,役職,配席等について(1) 厚労省の組織,分掌事務ア平成16年当時,厚労省は,大臣等を除いて,社会保険庁や中央労働委員会といった外局と厚労省本省とに分かれており,厚労省本省には,大臣官房,労働基準局,雇用均等・児童家庭局,社会・援護局等,多数の部局があり,それぞれの分掌事務を担当していた。 社会・援護局は,社会福祉の各分野に共通する基盤制度の企画・運営,生活保護制度の企画・運営,ホームレス対策,消費生活協同組合に対する指導など,社会福祉の推進のための施策を行うことを担当する局であり,そのさらに内部部局である障 分野に共通する基盤制度の企画・運営,生活保護制度の企画・運営,ホームレス対策,消費生活協同組合に対する指導など,社会福祉の推進のための施策を行うことを担当する局であり,そのさらに内部部局である障害保健福祉部は,障害者の自立と社会参加の促進や障害者に関する福祉サービスに関する施策を企画,運営すること等を担当する部であった。 イ障害保健福祉部(職員数120名程度)は,さらに企画課(56名),障害福祉課(32名),精神保健福祉課(30名)の3つの課に分かれており,そのうち,企画課は,「筆頭課」として,部全体の政策の企画立案,- 15 -各課の政策の調整,予算全体の取りまとめ等部全体の取りまとめを行うことを担当していた。 ウ企画課の中には,企画課本課の他に,社会参加推進室,国立施設管理室,監査指導室の3つの室があり,本課と社会参加推進室の分掌事務は,次のとおり定められていた。 企画課本課───「都道府県・市町村障害者計画,社会福祉法人等に関する認可,特別児童扶養手当等の支給,心身障害者扶養共済制度の助長,身体障害者手帳及び身体障害の障害程度の認定,障害者に係る調査研究の総括,専門職員の研修に関すること」社会参加推進室─「障害者に社会参加を図るための各種事業の実施,障害者への情報提供及び情報の利用,障害者の保健福祉に関する国際協力,障害者スポーツ,補装具・福祉機器,身体障害者補助犬等に関すること」(2)関係者の役職平成16年当時の本件の関係者の役職は次のとおりである。 L 障害保健福祉部長被告人障害保健福祉部企画課長M 企画課長補佐(総括補佐)K2 企画課長補佐(政策調整委員)K3 企画課社会参加推進室長(3月31日まで)G 企画課社会参加推進室長(4月1日以 長M 企画課長補佐(総括補佐)K2 企画課長補佐(政策調整委員)K3 企画課社会参加推進室長(3月31日まで)G 企画課社会参加推進室長(4月1日以降)H 企画課社会参加推進室長補佐K1 社会参加推進室長補佐N 社会参加推進室社会参加係長(3月31日まで)B 社会参加推進室社会参加係長(4月1日以降)- 16 -(3)企画課及び社会参加推進室の配席等ア平成16年4月当時の企画課及び社会参加推進室の公式の配席は別紙1【省略】のとおりであった。 イ平成16年当時,厚労省の企画課(本課)の執務室と社会参加推進室の執務室との間には壁はなく,両室の間は,キャビネットが並べられ,それによって仕切られていた。廊下側の壁とキャビネットの間には人が通れるだけのスペースが空けられていたが,そこから窓までは,キャビネットは隙間なく並べられていた。 ウ被告人の企画課の着席位置とMの着席位置の距離は,およそ250センチメートルであった。 エ企画課の被告人の机の前には,キャビネット及びついたてが置かれていた。 心身障害者用低料第三種郵便物制度について(1)郵便法の規定及び内国郵便約款などによれば,郵便物は,その類型に応じて,第一種ないし第四種等に区分されており,そのうち,第三種郵便物とは,毎年4回以上号を追って定期に発行するものであること,1回の発行部数が500部以上であること,1回の発行部数に占める発売部数が80パーセント以上であること等の要件を満たした上,郵政公社(平成19年10月に郵便事業株式会社が発足したが,本件当時は,郵政公社であった。)から承認を得たものをいう。 通常の定形外郵便物の料金は1通120円であるところ,第三種郵便物の場合, 上,郵政公社(平成19年10月に郵便事業株式会社が発足したが,本件当時は,郵政公社であった。)から承認を得たものをいう。 通常の定形外郵便物の料金は1通120円であるところ,第三種郵便物の場合,1通60円となる。 (2)さらに,第三種郵便物の中には,低料の郵便料金の適用を受けることができるもの(低料第三種郵便物)がある。これは,①毎月3回以上発行する新聞紙1部若しくは1日分を内容とするもので,発行人若しくは売りさばき人から差し出されるもの又は心身障害者を主たる構成員とする団体(「心身- 17 -障害者団体」という。)が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行する定期刊行物を内容とするもので,発行人から差し出されるものであること,②外部(郵便物の外部の意味とみられる。)に差出人たる発行人又は売りさばき人の資格及び氏名を記載したものであること,③①の発行人又は売りさばき人が郵政公社が別に定めるところにより,差出事業所の承認を受けたものであることを条件としていた。 以上のとおり,低料第三種郵便物の中には,(1)毎月3回以上発行する新聞紙1部又は1日分を内容とするもので,発行人又は売りさばき人から差し出されるもの(一般低料第三種郵便物)と,(2)心身障害者団体の発行する定期刊行物を内容とするもので発行人から差し出されるもの(心身障害者用低料第三種郵便物)の2種類がある(なお,以下,心身障害者用低料第三種郵便物を,単に「低料第三種郵便物」ということがある。)。そして,50グラムまでの重量のものについて,(1)は1通40円,(2)は1通8円(毎月3回以上発行する新聞紙を内容とするもの。)又は15円(それ以外のもの)の料金が適用される。 そして,心身障害者用低料第三種郵便物の適用を受けようとする者は,刊行物の発行所所在地の配達を管轄する郵政 3回以上発行する新聞紙を内容とするもの。)又は15円(それ以外のもの)の料金が適用される。 そして,心身障害者用低料第三種郵便物の適用を受けようとする者は,刊行物の発行所所在地の配達を管轄する郵政公社の支社に対し,自らが心身障害者団体であること及びその刊行物が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行されるものであることを証明することができる資料を提出する必要がある。そのような資料としては,(a)会則や規則等当該団体への加入資格又はその構成員が明らかになるもの及び(b)当該団体が心身障害者団体であり,その団体の発行する刊行物が心身障害者の福祉を図ることを目的としているものであることの公共機関(厚労省,都道府県,政令指定都市又は福祉事業所)の証明を提出することとされている。 そして,平成16年当時は,上記制度の適用については,第三種郵便物の承認請求手続の条項内に規定されており,第三種郵便物の承認請求をする発- 18 -行人が,上記のような資料を提出することとされていた(甲10-4,添付資料2の内国郵便約款新旧対照表の末尾参照)。 なお,他局(定期刊行物提出郵便局以外の郵便局)で,心身障害者用低料第三種郵便物として差し出す場合には,第三種郵便物認可刊行物が,内国郵便約款料金表に規定する心身障害者団体が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行されるものであることを証明する旨の当該支社発行の証明書が必要とされていた。そして,支社発行の証明書を発行するためには,証明書発行願と共に,上記団体について公的証明書を提出する必要があった。 他方,発行人が定期刊行物提出郵便局で差し出す場合は,上記のように第三種郵便物承認請求の手続内で低料の料金適用を求める際に公的証明書等が発行人から提出されることから,差出事業所の承認は不要(したがって,支社発行の証 刊行物提出郵便局で差し出す場合は,上記のように第三種郵便物承認請求の手続内で低料の料金適用を求める際に公的証明書等が発行人から提出されることから,差出事業所の承認は不要(したがって,支社発行の証明書も不要)とされていた。 厚労省内部における証明書の発行手続,発行実績(1)発行手続厚労省が,公的証明書を発行する際には,当該団体の主たる構成員が心身障害者であること及び当該団体の発行する定期刊行物が,心身障害者の福祉を図ることを目的としていることを,申請団体から提出された当該団体の会則,規約等のほか,過去2回程度の刊行物に基づき,客観的に判断することとされていた。もっとも,提出書面に基づく書面審査が行われるのみであり,団体の活動についての実地調査などは行われてはいなかった。 平成16年当時,厚労省内の公的証明書の発行を担当する部署は,企画課とされていた。申請した団体の性格に応じて,企画課社会参加推進室の各係が担当者となり,その担当者が,申請の受付及び原議の起案を行った上,社会参加推進室調整係長,同室長補佐,同室長,企画課総務係長,同課総括補佐,企画課長などの決裁を受けることとされていた。全ての決裁を受け終わり,担当者に原議が返還されると,担当者は,文書を発出するための発番号- 19 -を管理する事務補佐員の下に原議を持参し,発番号を取得する(「起案用紙」の発議印欄に発番号を記載してもらう。)。その後,担当者は,その発番号を記載した証明書の用紙に企画課長印と契印を押捺した上,申請者に交付していた。 (2)公的証明書の発行実績被告人が,企画課長となった平成15年8月から,平成16年6月当時までに,正規の手続で発行された公的証明書は,平成15年11月18日付けの「i」に対するもののみである。 同会に対する発行の件では,同年8月に,同 画課長となった平成15年8月から,平成16年6月当時までに,正規の手続で発行された公的証明書は,平成15年11月18日付けの「i」に対するもののみである。 同会に対する発行の件では,同年8月に,同会からNに対し,公的証明書の発行についての申請がなされ,規約,刊行物,役員名簿,会員名簿が提出された。Nは,これらを検討し,同会に対し,同会の発行する刊行物の1回の発行部数が500部に満たないことを指摘した。しかし,同会は,公的証明書発行について厚労省に申請する前に,既に後述するj協会に加盟しており,同年8月時点で,j協会作成の,同会のj協会への加盟を承認し,同会の発行する刊行物について,証明書を発行することをお願いする旨の内容の証明書交付願の交付を受けていた。そこで,発行部数が500部に満たないことはj協会に加盟することで要件を満たすことから,同会は,同年8月26日ころ,証明書交付願をNに提出した(上記証明書交付願は,その後,10月28日の日付が入れられたものとみられる。)。 証明書交付願が出され,Nが発行の原議の起案を行った上,K4社会参加推進室調整係長,K1,H,K3,K5企画課総務係長,Mと順次決裁をし,最終的に,同年11月18日に被告人が決裁をした。決裁の際には,Nから,被告人に対し,決裁書類の内容の説明がなされた。 その後,上記公的証明書は,iの担当者の自宅に,普通郵便で郵送された。 j協会について特定非営利活動法人j協会(以下,「j協会」という。)は,昭和41年に- 20 -「j'協会」との名称で発足し,その後名称変更がなされた団体で,平成11年12月には特定非営利活動法人となっていた。j協会は,加盟団体を個別にみた場合は,前記低料第三種郵便物の要件のうち,発行回数や部数の要件を充たさない場合であっても,加盟団体の刊行物を で,平成11年12月には特定非営利活動法人となっていた。j協会は,加盟団体を個別にみた場合は,前記低料第三種郵便物の要件のうち,発行回数や部数の要件を充たさない場合であっても,加盟団体の刊行物を,まとめてj協会を発行所とするなどして,低料第三種郵便物制度を利用できるとの合意を,昭和46年当時の郵政省との間で獲得した団体であった。 j協会に加盟するための要件として,明確な規定は存在してはいなかったものの,低料第三種郵便物制度の適用を受けられるようにするというj協会の目的からして,発行回数や部数以外の低料第三種郵便物制度の適用要件を具備する定期刊行物を発行する団体であることが事実上の要件とされており(ただし,j協会加盟のしおりには,発売部数が8割以上であることという「あまねく発売」の要件があるがこれを備えている団体は殆どない,実際は会費などを集めて刊行物を配布している場合でも発売していると解釈されている旨記載されている。),加盟申込書には,その要件の判断資料として,厚労省における審査資料と同様の資料(会則,会員名簿,発行された刊行物など)を添付することとされていた。 加盟申込みをした団体が,j協会への加盟が認められた場合には,当該団体についてj協会への加盟を承認した旨及び当該団体に公的証明書を発行していただきたい旨を記載した,j協会から行政当局にあてた「証明書交付願」が,j協会から当該団体に送付される。その後,当該団体が,その「証明書交付願」とj協会に提出した添付書類と同様の資料を厚労省等の行政当局に持参して,証明書の交付申請をした上,改めて行政当局の審査を受けて,当該団体が自ら公的証明書の交付を受けることとされていた。 「aの会」設立とCの関与(1)Dは,平成14年ころから年金収入が中心であったところ,広告収入を得ようと低料第 政当局の審査を受けて,当該団体が自ら公的証明書の交付を受けることとされていた。 「aの会」設立とCの関与(1)Dは,平成14年ころから年金収入が中心であったところ,広告収入を得ようと低料第三種郵便物制度を利用できる団体(「aの会」)を作ること- 21 -を考えた。Cは,平成15年秋ころ,Dから,「aの会」への参加を持ちかけられ,これを了承し,D,有限会社kを経営し,広告業を営むO,通信販売業を営むQ,及び,Dがかつて勤務していた新聞社の同僚で,文筆業を営み,kの会長と称していたJらとともに,「aの会」を設立した。そして,Dらは,Fやその実弟のIの秘書をしていた経歴を持つCに「aの会」の会長となるよう要請し,Cもこれに応じ,Cが同会会長となった。Dは,「aの会」で,中心的な活動をしていたものの,特段役職にはつかなかった。OとQは,「aの会」の広告主を探したり,その折衝を行うことになった。Jは,「b」に掲載する原稿を作成することになった。「aの会」の事務所は,東京都中央区●町○-△-□▲マンション○号室の有限会社k事務所内におかれた。同ビル内には,Jの事務所もあった。 (2)「aの会」について,設立準備委員会が開かれていないにもかかわらず,設立準備委員会が開かれた旨の文書が作成されていた。「aの会」には,Dら数名を除いて,実質的な構成員は存在していなかった。 (3)Cは,平成15年秋ころ,D,Jらによって作成された「aの会」規約及び名簿を見せられた。その名簿には,個人会員として,Cの妻の名前が,C及び妻の承諾なく載せられていた上,会員や準会員として他の団体の名称や協力者として障害者活動と関連のない者の名前が記載されていた。 その名簿の,[支援企業,団体,個人事務所]欄には,「衆議院議員F事務所」の記載があったが,C,Dらが, や準会員として他の団体の名称や協力者として障害者活動と関連のない者の名前が記載されていた。 その名簿の,[支援企業,団体,個人事務所]欄には,「衆議院議員F事務所」の記載があったが,C,Dらが,FやF事務所の承諾を得たことはなかった。 (4)Cは,平成15年12月ころ,Dから,「『b』にダイレクトメールを同封すれば,1通8円でダイレクトメールを郵送できる制度がある。それを使ってダイレクトメールを送れば,その報酬として『aの会』も収入が得られるだろう。障害者団体の許認可は厚労省の所管である。」旨の説明を受け,協力を求められた。 - 22 - 2月中旬から2月20日ころの状況等(1)Dは,低料第三種郵便物制度を利用するのに必要な公的証明書を得る為の手続を知ろうと,厚労省の代表番号に電話し,公的証明書の担当部署を尋ね,企画課法令担当のK6に電話を回してもらい,同人と話をした。その際,Dは,K6に,自分たちの団体である「aの会」の会長はFの秘書の経歴を有するCであり,Fにも応援してもらっていることなどを話した。そして,K6から,担当が企画課社会参加推進室のNであることなどを教えられた。 Dは,その旨を自己のノートに記載した。 (2)Cは,2月中旬ころ,Dから,「厚労省から障害者団体としての認可を受ける必要がある。」旨の説明を受けた上,本件公的証明書の発行について,厚労省の担当者に発行の依頼に行くこと等についての要請を受けた。 その際,Cは,Dから,厚労省の担当部署が,「厚労省社会・援護局障害保健福祉部社会参加推進室推進係N氏」である旨告げられ,それをCが本件当時使用していた手帳(以下,「Cの手帳」という。)の2月23日から始まる週のページの右下のメモ欄に赤のボールペンで記載した。同記載の下に,赤のボールペンで,「○○○○-△△△ られ,それをCが本件当時使用していた手帳(以下,「Cの手帳」という。)の2月23日から始まる週のページの右下のメモ欄に赤のボールペンで記載した。同記載の下に,赤のボールペンで,「○○○○-△△△△(代)」との記載がある。さらに,同メモ欄には,当該記載の下に,青のボールペンで,当該記載から矢印が引かれた上,「○F」,「EX」,「□□□□」,「16時」,「〒」,「c」との記載がなされている。なお,企画課及び社会参加推進室の厚労省内での階数は○階であり,社会参加推進室社会参加係の内線番号は□□□□である。 (3)Cの手帳の2月19日の欄に,「kへTelしてJ氏と会うこと。」,「15:30G4丁目kJ社長」という記載がある(Cは,当該記載について,同日にJと打ち合わせをした際の記載である旨供述している。)。 (4)D及びJは,2月20日,日本郵政公社c郵便局に対し,定期刊行物「b」の発行人をJとし,同公社l支社長あての「aの会」についての第三種郵便- 23 -物承認請求書を提出し,DとJで申請料として20万円(月3回以上の発行をする場合の金額である。)を支払った。 請求書には,「発行人J」,「発行の定日10日,20日,30日」,「1回当たりの発行部数2250部」,「1回当たりの発行部数に占める発売部数2239部」,「発行所の名称及び所在地『aの会』販売元(有)k」,「定期刊行物提出郵便局(発行都度見本を提出する局)c郵便局」などの記載があり,資料として,料金徴収を証明する銀行通帳コピー,申し込み受付票,購読者名簿,発行所団体の規約などが添付されていた。 しかし,有償購読を裏付ける銀行への入金などは,Dらが仮装したものであった。 なお,同日付けで提出された「定期刊行物の発行部数及び発売状況」と題する書面には,上記同様に「a 約などが添付されていた。 しかし,有償購読を裏付ける銀行への入金などは,Dらが仮装したものであった。 なお,同日付けで提出された「定期刊行物の発行部数及び発売状況」と題する書面には,上記同様に「aの会」発行人としてJの署名がある。 (5)その後,上記第三種郵便物承認請求は,l支社で審査がなされた。「aの会」は,「b」を発行する度に,見本をc郵便局に提出し,同局からl支社あるいは,調査センターに送られて,審査が行われた。 2月下旬(2月25日)のC,F,Lの状況等2月25日の関係者の動静に関する事実,証拠は次のとおりである。 (1)Cの手帳の2月25日の欄に「13:00F─kJ氏」との記載がある。また,同日欄には,「16:00厚労省援局障保福部企課社会参加推進室N係長」との記載がある。いずれの記載にも,それらの記載を消すように赤線が引かれている(Cは,公判で,当該赤線について,スケジュールを消化した場合に引くものと供述している。)。 (2)Fは,2月25日,午前7時57分ころから午後1時05分ころまでの間,千葉県成田市のゴルフ場mゴルフクラブ(同クラブのパンフレットには,東京(■)から成田インターチェンジまで67キロメートル,同所からゴルフ場まで4.5キロメートルであり,自動車で約50分と記載されている。)- 24 -で,妻であるR1,衆議院議員であったR2,知人のR3と共に,ゴルフをプレーし,プレー後に飲食して,午後2時ころ,同ゴルフクラブから退出した。 (3)2月25日午後2時から午後4時48分まで行われた衆議院文部科学委員会の議事録には,出席議員として,Fのゴルフの同行者とされるR2の名前が記載されている(この点,Fは,「委員会の議事録には,通常,出欠にかかわらず,属している委員の名前を出席委員として全部記載する。遅 の議事録には,出席議員として,Fのゴルフの同行者とされるR2の名前が記載されている(この点,Fは,「委員会の議事録には,通常,出欠にかかわらず,属している委員の名前を出席委員として全部記載する。遅刻の場合にも,出席委員として名前が記載され,遅刻についても明記されない。」旨供述しており,その内容自体を不自然とみるべき資料はない。)。 (4)Lは,2月25日,衆議院予算委員会の午前中の会議(議題は,平成16年度一般会計予算,特別会計予算,政府関係機関予算であった。開会時間は午前9時から午後零時6分までであった。)に政府参考人として出席し,nに関する答弁を行った。 2月下旬のCの厚労省訪問について(1)Cは,2月下旬ころ,厚労省を訪れた。 (2)Cは,その際,Nと面談し,F事務所の者であると名乗った。そして,Nと名刺交換をした上,Nから,公的証明書の発行手続や審査に必要な書類,資料等についての説明を受けた。さらに,Nが,Cに,「aの会」はどのような活動をしていこうとしているのか聞いたのに対し,Cは,「aの会」について説明したが,Cの説明はあいまいなものにとどまった。そこで,Nは,Cに対し,「aの会」の活動実態が分かるような資料を提出するように求めた。 なお,平成21年に検察庁の捜索で,Cの自宅から大量の名刺が発見され,その中にNの名刺はあったが,被告人の名刺はなかった。 「aの会」とj協会との交渉等(1)Cは,厚労省を訪問した後,その際にNから言われたことをDに伝えた。 - 25 -(2)Jは,2月26日にj協会に電話した。その後,D及びJは,2月下旬ころ,定期刊行物「b」第1号,「aの会」規約,名簿等を持ってj協会の事務所を訪ね,j協会の事務局長であったSと面談し,j協会に「aの会」を加盟させてもらえるよう申し入れた。 ,D及びJは,2月下旬ころ,定期刊行物「b」第1号,「aの会」規約,名簿等を持ってj協会の事務所を訪ね,j協会の事務局長であったSと面談し,j協会に「aの会」を加盟させてもらえるよう申し入れた。 (3)その際,Jは,Sに対し,有限会社k取締役会長名義の自己の名刺を渡した。なお,Sが保管していた当該名刺には,「F-(又は一)tel→N係長」と手書きで記載されている。 (4)Sは,D及びJに対し,j協会に加入し,低料第三種郵便物制度を利用できる団体は障害者が主たる構成員である必要があることや,営利目的や売名目的で同制度を利用することはできないことを告げた。 (5)(4)のような指摘を受けたD及びJは,3月12日ころ,j協会に対し,Sから上記指摘を受け,その指摘後,障害を持った人の中から主要メンバーとして名前を連ねてもらえる人物の承諾を受け,「aの会」の名簿を作り直した旨を記載した書面及び作り直した名簿を送付した。 (6)SとNは,3月下旬ころ,電話で連絡を取った。その際,Sは,Nに対し,「aの会」の活動実態が分からない旨及び国会議員の紹介ということ自体も怪しい旨話した上,j協会はj協会で審査する旨告げた。 (7)Cは,3月29日ころ,Dから電話で連絡を受け,その際,Cの手帳の3月29日の欄に「8円〒NG」と赤字で記載した。 (8)Sは,「aの会」に対し,「b」が営利目的や売名目的のものであると認められたときは,j協会からの発行を拒絶されても異議はない旨を記載した念書の提出を要求し,それに応じて,3月29日ころ,「aの会」からj協会に対し,その旨記載された念書が提出された。 4月上旬から中旬の状況(1)Bは,4月1日付けで社会参加推進室社会参加係長となり,同日,Nから業務の引継ぎを受けた。 - 26 -その引継ぎの際,Nが その旨記載された念書が提出された。 4月上旬から中旬の状況(1)Bは,4月1日付けで社会参加推進室社会参加係長となり,同日,Nから業務の引継ぎを受けた。 - 26 -その引継ぎの際,Nが使用した事務引継書は,A4の用紙10枚(本体部分6枚,懸案事項,対処方針案及びタイムスケジュール4枚)の分量があり,本体部分は,[所管事務について]と[各論]に分かれ,各論は,1.予算要求関係,2.予算執行関係,3.所管の補助事業について,4.身体障害者補助犬について,5.その他に分かれていた。前記引継書には,本件公的証明書又は「aの会」の案件に関する記載はなかった。 (2)4月8日,「aの会」からj協会に対し,加盟申込書が提出された。同書面には会員数18名,発行回数年24回,発行予定概要毎月1日,15日などの記載がある。 その後,同月14日ころ,j協会から「aの会」に対し,j協会から行政当局にあてた,「aの会」をj協会に加盟することを認め,公的証明書の発行を求める旨の記載がある証明書交付願が送付された。その送付の際に同封した「aの会」あての書面には,「この証明書交付願に,最近発行した刊行物,会則,会員名簿を添付して,証明書の交付を関係行政機関の窓口に申請します。」との記載がある。なお,Sは,「aの会」に対する不信感をぬぐい去ることができなかったことから,この書面に,手書きで,「念書に記載された内容を十分守って運営されんことを要請します。」と記載した。 「aの会」から,Bに対し,当該証明書交付願が,何らかの方法で渡された(その時期は,4月中旬ころか,6月中旬以降か,争いがある。)。 (3)4月19日ころ,「aの会」から,c郵便局に対し,前記4月14日付け証明書交付願の写しと「aの会」あての書面の写しが添付された,「j協会から4月14日付けで 6月中旬以降か,争いがある。)。 (3)4月19日ころ,「aの会」から,c郵便局に対し,前記4月14日付け証明書交付願の写しと「aの会」あての書面の写しが添付された,「j協会から4月14日付けでj協会の認定書が送られ,4月20日にCが厚労省に証明書の交付願いを申請することになった。厚労省より証明書が交付され次第,持参,報告する。」との内容の,4月19日付けの文書が送付された。この文書は,Dが手書きで作成したものをJがパソコンで作成したものであった。 - 27 -(4)なお,4月中に,Dは,j協会の事務員から,「aの会」は「b」を月3回発行することから,j協会に加盟しなくともよいことを知らされた。 4月下旬から5月下旬の状況(1)Dの知人が経営するo専門学校と「aの会」との間には,同学校の広告を「b」に掲載し,広告料を支払うという話があり,同校側は,入学式の写真を使った広告を考えているので,遅くとも6月末までには,郵送してほしいとOらに伝えていた。そして,5月24日付けで,k名義で同校に対し「6/4発送DM制作・発送費一式」として,合計137万9611円(発送部数約2万2000部)の請求書が発行された。 (2)Cの手帳の5月11日の欄に「12:00~13:00Mr.Ningyocho(厚労省→直接〒でOKのように)」との記載があり,その記載から矢印が引かれ,矢印の先に「『b』10.20.30発行」との記載がある。 (3)5月17日,衆議院決算行政監視委員会第三分科会において,p委員会がq株式会社を設立した上,r協会発行の機関誌に,qと関係のない広告を掲載し,それを低料第三種郵便物制度を利用して送付することにより広告料収入を得て資金集めをしていることが問題であると指摘する週刊誌の記事に関して議論となり,Lが政府参考人とし ,qと関係のない広告を掲載し,それを低料第三種郵便物制度を利用して送付することにより広告料収入を得て資金集めをしていることが問題であると指摘する週刊誌の記事に関して議論となり,Lが政府参考人として答弁をした。その中で,Lは,d党議員から,低料第三種郵便物制度の悪用につながるなどと追及され,Lは,議員の指摘に従って指導していきたいなどと答えた。被告人も,当該週刊誌の記事が掲載された当時,その記事を見ていた。また,被告人は,Lの答弁について,その答弁内容についての資料には目を通していた。 なお,被告人は,企画課長在任当時,仕事上の出来事やメモなどをA5版のノートにその都度記載していた。被告人は,ノートに記載した事柄のうち,重要なものを「業務日誌」として,パソコンの文書ファイルに打ち込んでいた(以下,当該文書ファイルを「被告人の業務日誌」という。)。被告人の業務日誌の「5月19日(水)」の欄に,「T先生」,「q株式会社は問題。 - 28 -幹部は全員更迭だ。」との記載がある。 そして,この関係で,6月2日付けで,企画課長名義で,「q株式会社との関係の整理について」という文書が,課内の決裁を経て,発番号が付されて出されている。 (4)Bは,「aの会」からの公的証明書発行の催促があったことから,5月中旬ころ,「『aの会』に係る低料第三種郵便物の許可申請手続きについては,近日中に滞りなく進めることとなっております。」とのB名義の書面と「aの会」に係る証明書の発行についての決裁手続が途中まで進んでいるように装った起案日が平成16年4月26日付けの内容虚偽の書面(以前適式になされていた稟議書面の写しを利用し,社会参加推進室の室長,補佐の印影写しのあるもの。)を作成した上,これらを「aの会」にファクシミリ送信した。この作成,送信について,Bは,他の の書面(以前適式になされていた稟議書面の写しを利用し,社会参加推進室の室長,補佐の印影写しのあるもの。)を作成した上,これらを「aの会」にファクシミリ送信した。この作成,送信について,Bは,他の厚労省職員に相談しなかった。 (5)この関係で,B方から発見されたフロッピーディスクの中に,データの作成日時が5月18日12時43分23秒(24時間表示と認められる。以下のデータも同様。)である文書ファイル(「通知案」と題するもの)内に,①発番号と,日付の欄のうち日にちの欄が空欄となっている以外は,本件公的証明書と同内容のデータ,②「『aの会』に係る低料第三種郵便物の許可申請手続きについては,近日中に滞りなく進めることとなっております。」との内容のB名義の文書のデータ(いずれも一太郎)が保存されている。 (6)Dらは,これらの書面のファクシミリの印字部分を映らないようにコピーするなどした上,5月中旬ころ,そのコピーをj協会に郵送して,電話で厚労省との折衝の進捗状況を報告した。 (7)5月下旬ころ,Jは,「b」の紙面に関するQの発言に怒り,「b」の編集活動から手を引くことを決意した(ただし,Jは第三種郵便物承認請求者であったことから,後記6月4日の第三種郵便物承認書の受け取りは行った。)。 - 29 - 「b」の第三種郵便物の承認など(1)5月31日付けで,「aの会」の発行する「b」を第三種郵便物として承認する旨の承認書が発行され,日本郵政公社l支社長U名義の同承認書が6月4日(金曜)にc郵便局において,「b」の第三種郵便物の承認請求者でかつ発行人とされていたJに対し交付された。 (2)その後の6月5日ころ(ただし,同日は土曜日であり,7日(月曜)の可能性もある。),Oは,c郵便局で,売りさばき人証明書などを添付して,心身障害者用 つ発行人とされていたJに対し交付された。 (2)その後の6月5日ころ(ただし,同日は土曜日であり,7日(月曜)の可能性もある。),Oは,c郵便局で,売りさばき人証明書などを添付して,心身障害者用低料第三種郵便物として,「b」を差し出したい旨の請求をなした。 (3)他方,6月7日付けで,c郵便局に,「b」の発行人をJからCに変更する旨記載されたl支社長あての第三種郵便物の発行人の変更承認請求書が提出された。同書面には,旧発行人としてJ,新発行人としてC名義の署名押印があった。そのころc郵便局に提出された「発行人の変更承認について」と題する書面には,代表者のCが発行人に就く旨の記載があり,連絡先担当者としてOの名前等が記載されていた。 (4)(2)の請求に基づきc郵便局郵便窓口課の担当者Eは,受け取った書類を基に起案して課長に提出した。しかし,6月8日ころ,課長から,Eに,c郵便局で差し出す場合には心身障害者用低料第三種郵便物としての差出請求は不要であること,売りさばき人証明が添付されていたが,心身障害者団体差出しのものは売りさばき人が差出人となることはあり得ないという指摘がなされ,起案文書を差し戻された。そこで,Eは調べ直したところ,c郵便局で差し出す場合には心身障害者用低料第三種郵便物としての差出請求は不要であり,他局(定期刊行物提出郵便局以外の郵便局)で,心身障害者用低料第三種郵便物として差し出す場合には,第三種郵便物認可(本来は「承認」)刊行物が,内国郵便約款料金表に規定する心身障害者団体が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行されるものであることを証明す- 30 -る旨の当該支社発行の証明書が必要とされていること,支社発行の証明書を発行するためには,証明書発行願と共に,公的証明書を提出する必要があることを認識した。 されるものであることを証明す- 30 -る旨の当該支社発行の証明書が必要とされていること,支社発行の証明書を発行するためには,証明書発行願と共に,公的証明書を提出する必要があることを認識した。 そこで,Eは,日本郵政公社l支社に問い合わせたところ,同支社では,「b」については,第三種郵便物としての請求があっただけで,心身障害者団体が発行する第三種郵便物としての請求としては把握されていないとの回答を受けた。このため,Eは,「aの会」に対し,「b」の差出請求の際に提出された書類に,支社が発行する「aの会」が心身障害者団体であることを証明する書類がないので,心身障害者団体用の低料第三種郵便物としての承認は出せない,支社が発行する証明書を手に入れるためには,「aの会」が心身障害者団体であることを公的に証明する厚労省の証明書の原本の提出が必要であることを伝えた。 6月上旬ころの本件公的証明書の作成等(1)Bは,6月上旬ころまでに,本件公的証明書(甲9。ただし,×印及び「解散,廃刊」との記入前のもの。)を作成した。 本件公的証明書に関して,「aの会」から,厚労省に対して,審査に必要な資料は提出されておらず,Bが作成する際,本件公的証明書の発行に関して,決裁の原議が起案され,実際に前記決裁権者の各決裁が行われたという事実も,その後本件公的証明書の発番号が取得された事実もなかった。 (2)B方から発見されたフロッピーディスクの中に,本件公的証明書と全く同一の内容の文書データ(一太郎。「コピー~通知案」と題するファイル)が保存されており,そのデータの作成日時は,6月1日1時14分32秒で,データ更新日時は同日1時20分6秒である。 6月1日から10日までのC及び被告人の手帳の記載等(1)Cの手帳に,Cが,厚労省に赴き,被告人から本件 の作成日時は,6月1日1時14分32秒で,データ更新日時は同日1時20分6秒である。 6月1日から10日までのC及び被告人の手帳の記載等(1)Cの手帳に,Cが,厚労省に赴き,被告人から本件公的証明書を渡されたことについての記載はない。 - 31 -(2)Cの手帳の6月1日から6月10日の期間(6月5日(土),6月6日(日)を除く。)には,次のような記載がある(判読不明の部分は「〇〇」などと記載する。)。 【省略】(3)被告人が平成16年当時使用していた手帳(以下,「被告人の手帳」という。)に「aの会」又はFとの関連を示すような記載はない。 (4)被告人の手帳の6月1日から6月10日の期間(6月5日(土),6月6日(日)を除く。)には,次のような記載がある。 【省略】(5)被告人の業務日誌の平成16年2月から6月までの記載に,本件と関連するとみられる記載はない。 本件公的証明書の行使及びその後の事情(1)6月10日,Oは,l支社長あての「aの会」が心身障害者団体であり,「b」が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行されるものであることを証明する旨の証明書(必要枚数2部)を発行していただきたい旨の「aの会」名義の証明書発行願をc郵便局に提出した。証明書発行願には,本件公的証明書とj協会発行の証明書交付願が添付資料として付けられていた。 その後,同局の担当者は,これらを日本郵政公社l支社へ回付した。 (2)日本郵政公社l支社長U名義で,6月21日付けの「aの会」あての,定期刊行物「b」が,内国郵便約款料金表第4表第1の2に規定する団体が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行されるものであることを証明するとの証明書が発行され,「a」の関係者は,同月24日ころ,c郵便局の担当者を通じて,同証明書2部の交付を受け に規定する団体が心身障害者の福祉を図ることを目的として発行されるものであることを証明するとの証明書が発行され,「a」の関係者は,同月24日ころ,c郵便局の担当者を通じて,同証明書2部の交付を受けた。 (3)Oは,o専門学校の広告が掲載された「b」を内容とする郵便物約2万2000部を郵便局から心身障害者用低料第三種郵便物として郵送した。 同校からkの口座に,6月14日に61万7814円,6月30日に55- 32 -万1797円の合計116万9611円が振り込まれたが,Oは,これを,上記印刷費,郵送料のほか,kの運営費等に支出し,C,Dに直接利益が分配されることはなかった。 平成18年ころの「aの会」の内紛及び「a’の会」への名称変更等(1)C及び平成17年秋ころから「aの会」に関与するようになったVと,Dらとの間で,平成18年に対立が起こり,Dらは「aの会」の活動から離脱した。 (2)平成18年6月7日,「aの会」C名義の,「b」の発行所を「aの会」から,「a’の会」に変更する旨の変更届,「b」の題号を「b'」に変更する旨の請求書が,c郵便局に提出された。そして,日本郵政公社l支社長W名義で,「b」の題号の変更を承認する旨の同年9月22日付けの承認書が発行された。 (3)「b」の定期刊行物提出局をc郵便局からv郵便局に変更する旨の,「aの会」会長C名義の,平成18年11月2日付け第三種郵便物定期刊行物の提出局変更届が,c郵便局に提出された。 (4)平成18年6月から7月ころ,Dから,厚労省に,「aの会」の解散届等が送付され,それを見た当時の企画課担当者が調査したところ,「aの会」に関する決裁文書等が見当たらなかった。そこで,担当者は,Bに対し,「『aの会』という団体を覚えていますか。平成16年にこの団体に対して企画課長 を見た当時の企画課担当者が調査したところ,「aの会」に関する決裁文書等が見当たらなかった。そこで,担当者は,Bに対し,「『aの会』という団体を覚えていますか。平成16年にこの団体に対して企画課長名の公的証明が出されているようなんですけど,その決裁文書が見当たらないんです。B係長の時代にこの団体に対して公的証明を出されていると思うんですけど。」と尋ねたところ,Bは,「決裁文書はあるはずだけどな。 どこかに紛れ込んでるかもしれないから,もう一度探してみてよ。」と答えた。 (5)Dは,前記の解散届等を送付するに際して,「aの会」の事務所に保管されていた本件公的証明書(甲9)に,手書きで×印及び「解散,廃刊」と- 33 -記入した。 (6)Bは,平成19年3月ころ及び平成20年3月ころに,正規の決裁を経ることなく,(厚生労働)大臣印を用いて,同大臣作成名義の補助金関係の公文書を偽造した。 障害者自立支援法の法案作成経緯平成15年4月,支援費制度が施行されたが,予算不足が問題となり,平成16年4月30日,厚労省から,障害者団体等に対して,支援費制度の問題点を指摘し,制度の抜本的な見直しの必要性について提案がなされた。その後,同年8月ころには,制度改革に関する具体的な案が審議会にかけられるようになったが,結局その案の議論も進まなかったことから,根本から議論をやり直すことになり,10月に自立支援法につながる制度設計図である「グランドデザイン」がとりまとめられた。その後,「グランドデザイン」を基に法案が設計され,平成17年2月に障害者自立支援法案が国会に提出された。 本件捜査及び公判の経緯,状況(本項の事実認定においては,証人P1,P2,P3,P4,P5,P6の公判供述,非供述証拠として取り調べたNの検察官調書(甲15,16,18, が国会に提出された。 本件捜査及び公判の経緯,状況(本項の事実認定においては,証人P1,P2,P3,P4,P5,P6の公判供述,非供述証拠として取り調べたNの検察官調書(甲15,16,18,99,弁31),Jの検察官調書(甲29),Bの検察官調書(甲38ないし47,100ないし106,弁34),Dの検察官調書(甲52,77ないし82,128),Cの検察官調書(甲53ないし59,83ないし91,129),Lの検察官調書(甲92ないし98,弁32),Hの検察官調書(甲107,108,弁29),Mの検察官調書(甲109,110,弁30),Gの検察官調書(弁33)も証拠として使用する。)(1)平成21年(以下,本項では,「平成21年」の記載を省略する。)2月26日,検察官は,C方を捜索し,名刺等在中の紙袋1袋が発見・差し押さえられ,その中に,「衆議院F事務所」と手書きの記載のあるCの名刺などがあった。 - 34 -(2)4月16日,Cが,別件の郵便法違反の事実で逮捕され,以後検察官の取調べを受けた。なお,検察官は,Cを逮捕する時点で,検察庁から厚労省に問い合わせをして,本件公的証明書に関して,厚労省に申請事実もなく,発番号もないと認識していた。 (3)4月17日,郵便事業株式会社w支店Eから,定期刊行物「b」の承認請求調書等と題する書面等が任意提出された。その際提出された書面の中に,平成16年3月2日付けの「aの会」のc郵便局あての文書(「本会会長が,厚労省に赴き,社会参加推進室長と面談した。j協会を紹介されj協会を尋ねた。」などの記載があるもの。),同年4月19日付けの「aの会」の同局あての文書(「弊会の趣旨につき,厚労省企画課長にご説明させていただいた折,j協会の審査を受けるよう行政指導があった。明日(4月20日),代表 載があるもの。),同年4月19日付けの「aの会」の同局あての文書(「弊会の趣旨につき,厚労省企画課長にご説明させていただいた折,j協会の審査を受けるよう行政指導があった。明日(4月20日),代表のCが厚労省に証明書の交付願を申請する運びとなった。」との記載のあるもの。),同年4月14日付けのj協会名義の書面,同日付け証明書交付願,日本郵政公社l支社長U名義の,同年5月31日付けの刊行物「b」に対する第三種郵便物の承認書などが含まれていた。 (4)4月18日,Dから,「企画課社会参加推進室社会参加係長B」の名刺が任意提出された。 (5)4月19日,本件公的証明書の件について,Cに対する初めての取調べがなされた。その時点で,既に,Cの手帳は,検察庁において保管されていた。 同日,本件公的証明書に関する調書が作成された。 なお,P2は,前記のとおり,Cを逮捕する前から,本件公的証明書に関して,厚労省に申請事実もなく,発番号もないと認識していたことから,Cらが公的証明書を偽造したのではないかとの疑いを持っており,4月19日の取調べにおいて,Cに対し,公的証明書を偽造したのではないかと追及していた。これに対し,Cは,偽造を否定していた。 - 35 -(6)4月21日付けCの検察官調書(甲83)には,要旨,以下の記載がある。 「私は,FやIの名前を出したり,私が,その両名の秘書を務めていたことを言ったりして,企画課長に働きかけ,正規の申請手続を経ずして,公的証明書を発行してもらった。私は,2月25日の午後4時ころ,Dから言われ,『aの会』についての公的証明を取得するため,厚労省の担当課である企画課社会参加推進室社会参加係を訪ね,同係長Nから,申請手続などについて説明を受けた。」(7)4月30日,j協会のSに対する事情聴取が行われ,その際 公的証明を取得するため,厚労省の担当課である企画課社会参加推進室社会参加係を訪ね,同係長Nから,申請手続などについて説明を受けた。」(7)4月30日,j協会のSに対する事情聴取が行われ,その際,同人から,前記のJの名刺,前記の稟議書等(の写し)などが入った,加盟希望団体記録と題する書面等在中のクリアフォルダ1冊(平成21年領第2439号符第1212号)が任意提出された。 その中には,「’04.2.26J氏よりtel」,「3.26厚労省N氏よりtel3/29SよりN氏にtel」との記載のある加盟希望団体記録,2004年3月29日付けの「aの会」のj協会あての念書,平成16年4月26日付けの起案用紙(稟議書〔の写し〕)があった。 (8)5月14日,Dの取調べが開始された。 (9)5月22日付けのCの検察官調書(甲85)には,「被告人に案内されて,部長室でLに会い,あいさつをし,公的証明の発付について便宜を図ってもらうようお願いした。」旨の記載がある。 (10)5月26日,B,Dが,虚偽の稟議書等に関する虚偽有印公文書作成,同行使の被疑事実で逮捕された。同日以降,B,N,Mに対する取調べがなされた。 (11)5月26日付けのNの検察官調書(甲13)には,「2月下旬ころ,Mから,被告人のところに降りてきた話として,Cが,公的証明書をうちに出して欲しいと言ってきている旨を告げられ,来所した場合の対応を指示され- 36 -た。その後の2月下旬ころ,Mから呼ばれ,H,K3とともに,企画課本課に行き,そこで被告人,MとともにCとあいさつをした。」旨の記載があり,同日付けのMの検察官調書(甲109)には,「私は,被告人から,F事務所の問い合わせがあり,Cが低料第三種郵便物を使いたいと考えており,F事務所から公的証明書の発行を頼まれてい 。」旨の記載があり,同日付けのMの検察官調書(甲109)には,「私は,被告人から,F事務所の問い合わせがあり,Cが低料第三種郵便物を使いたいと考えており,F事務所から公的証明書の発行を頼まれている旨告げられ,Cが来所した場合に担当者を紹介することなどを指示された。私は,K3,H,Nなどにその旨を伝えた。その数日後の2月下旬ころ,K3,H,Nを企画課に呼び,Cを紹介した。」旨の記載がある。なお,同日付けのBの検察官調書には,「私は,内容虚偽の公的証明書を,私がねつ造した。」旨の記載がある。 (12)5月26日,Bの自宅の捜索が行われ,前記フロッピーディスク,本件公的証明書のコピー等が発見され,差し押えられた。 (13)5月27日,厚労省に対する捜索が行われた。 (14)5月28日,Lの自宅,勤め先の捜索がなされた。 (15)5月29日,Lに対する取調べが行われた。同日付けLの検察官調書(甲92)には,「2月下旬,障害保健福祉部長として初めて答弁した前後ころ,執務中にFから電話があり,Cに対し公的証明書を発行してもらいたい旨,Cが厚労省を訪れた場合の協力を頼まれた。その後,被告人に,Fの話を伝え,対応を指示した。」旨の記載がある。 (16)5月30日付けのLの検察官調書には,「2月下旬ころ,被告人に案内されてきたCと部長室であいさつした。6月上旬ころ,被告人から,『aの会』に対して,公的証明書を発行することになった旨の報告を受けた。私は,『F代議士には僕からお伝えしておくから。』などと答えた。私は,確か議員会館のFの事務所に電話を入れて,『aの会』に対して,公的証明書を発行することになったことなどを伝えた。」旨の記載がある。 (17)5月31日付けのBの検察官調書には,「私は,被告人の指示で,本件公的証明書を作成し,それを,その後 aの会』に対して,公的証明書を発行することになったことなどを伝えた。」旨の記載がある。 (17)5月31日付けのBの検察官調書には,「私は,被告人の指示で,本件公的証明書を作成し,それを,その後,被告人が,『aの会』関係者に手渡- 37 -した。」旨の記載がある。 (18)6月3日付けのCの検察官調書(甲86)には,「私は,JとともにFの下を訪れ,Fに,公的証明に関し,厚労省への口利きをお願いした。平成16年当時使用していた私の手帳の2月25日の欄の『13:00F,kJ氏』の記載がこのときの記載である。」旨の記載がある。 (19)6月14日,被告人,C,B,Dが,本件被疑事実で逮捕された。 (20)7月4日,被告人,C,B,Dが,本件で起訴された。この時点までにおいて,後記争点1ないし12について,それぞれの場面でこれを肯定する内容の,C,B,D,L,M,H,Nの検察官調書が作成されていた。 (21)9月11日,Fに対する検察官の事情聴取が行われ,供述調書が作成された(Fは,公判で,「私は,事情聴取の際,2004年(平成16年)の1年分の手帳6冊を持参した。検察官は,それをぺらぺらと見ていたが,具体的に2月25日についての議論はしなかった。」旨供述する。)。 (22)平成22年1月27日,第1回公判が開かれ,第2回公判以降,別紙2【省略】のとおり証人尋問が行われた。 なお,Fの証人尋問(第11回公判)は,同年3月4日に行われたが,それまでに,D,C,L,N,J,B,Mの証人尋問は終了していた。Fは,自己の手帳を基に2月25日のゴルフの事実について供述した。 - 38 -第3争点に対する判断 総論(1)当事者の主張及び判断の要点本件において,公判前整理手続で,争いのある主要な具体的事実は以下のとおりであると整理された 事実について供述した。 - 38 -第3争点に対する判断 総論(1)当事者の主張及び判断の要点本件において,公判前整理手続で,争いのある主要な具体的事実は以下のとおりであると整理された。 平成16年2月下旬ころ,Cは,有力国会議員(F)に対し,「aの会」に対する公的証明書発行への口添えを依頼したのか。 2月下旬ころ,同有力国会議員は,Lに電話し,公的証明書を発行することを要請したのか。 2月下旬ころ,2項の電話を受けたLは,障害保健福祉部長室において,被告人に対し,「aの会」に対する公的証明書の発行に向けた便宜を図るよう指示したのか(指示があったとして,それはいかなる内容・意味であったのか。)。 Cが,2月下旬ころ,被告人と面談し,「aの会」に対する公的証明書の発行に向けた便宜供与を要請したのか(要請があったとして,それはいかなる内容・意味であったのか。)。 被告人は,N・HがCと面談した後,Nらに対し,心身障害者団体としての実体に疑念がある「aの会」に対し,公的証明書を発行することを指示したのか。 5月中旬ころ,Hは,被告人に,「aの会」について,公的証明書の発行申請の書類や規約,名簿等の審査資料がきちんと提出されていない旨報告したのか。被告人は,この際,Hに対し,「aの会」に対する公的証明書の発行手続を進めるように指示したのか。 5月中旬ころ,Cは,被告人に対し,日本郵政公社に「b」を承認しても大丈夫である旨を電話で伝えることを要請したのか。それに応じて,被告人は,日本郵政公社の「ユー(以下,Uの姓と同音のものを,- 39 -「ユー」と表記する。)」に対し,電話でその旨を伝えたのか。 6月上旬ころ,Cは,被告人に対し,日付を遡らせて「aの会」に対する公的証明書を発行するよう要請したのか。被 音のものを,- 39 -「ユー」と表記する。)」に対し,電話でその旨を伝えたのか。 6月上旬ころ,Cは,被告人に対し,日付を遡らせて「aの会」に対する公的証明書を発行するよう要請したのか。被告人は,これを了承したのか。 6月上旬ころ,Bは,被告人に対し,「aの会」からは発行申請や審査資料の提出がないため,形式的な決裁すらできないことや,日付を遡らせるのであれば発行番号の問題も生じることを伝えた上で指示を仰いだのか。これに対し,被告人は,Bに対し,決裁のないまま本件証明書を発行することを指示したか。 被告人は,Lに対し,「aの会」に対して,公的証明書を発行することになった旨の報告をしたのか。 被告人は,「aの会」に対して本件公的証明書ができたことを伝えたのか。6月上旬ころ,Bは,本件公的証明書を被告人に渡したのか。それを受け取った被告人は,それをCに交付したのか。 6月中旬ころ,Bは,被告人に対し,後付けで「aの会」から審査資料を取り寄せて決裁の形を整える必要はないか尋ねたのか。この時,被告人は,Bに対し,その必要はない旨告げたのか。 被告人は,本件は,「aの会」の実態がいかなるものであれ,「aの会」に対し,公的証明書を発行することが決まっている「議員案件」であるという動機を有していたのか。 各争点について,検察官は,その事実があった旨主張し,弁護人は,そのような事実はない旨主張する(なお,争点7,8,12については,公判前整理手続から冒頭陳述までは検察官から主張がなされていたが,論告において言及はなされていない)。 そこで,以下,上記争点を中心に検討する。 (2)検討の単位について- 40 -弁護人は,本件においては,公判前整理手続において,実体面における13の主要な争点と,共犯者,関係者の供述の信 )。 そこで,以下,上記争点を中心に検討する。 (2)検討の単位について- 40 -弁護人は,本件においては,公判前整理手続において,実体面における13の主要な争点と,共犯者,関係者の供述の信用性が争点とされ,それが確定されたことから,検察官及び弁護人の意見も,これらの争点に沿って行われるべきである旨主張し,弁護人の意見も,基本的には実体面における争点を個別に検討し,時系列的に前の事実についての検討を後の事実に影響させるという手法をとっている。 確かに,公判前整理手続は,争点を中心とした充実した公判審理を,計画的に行うことを目的としてなされるものであり,公判審理は,公判前整理手続において整理された争点を中心になされるべきである。 しかし,それは必ずしも,争点とされた事実の有無を,その事実ごとに個別に検討しなければならないことを意味するものではない。 本件における争点事実は,個々に独立したものではなく,相互に関連しているものである。例えば,本件の出発点ともいうべきCがFに厚労省への口添えを依頼したのかという事実(争点1)は,これに接近するFからLへの要請(争点2),Lから被告人への指示(争点3)という事実のみならず,時間的には相当隔たっている6月上旬ころ,被告人が本件公的証明書をCに交付したのか(争点11)という事実にも深く関連しているとみられる。すなわち,被告人が本件公的証明書をCに交付したという事実が認定されるのであれば,被告人が正規の決裁を経ずに本件公的証明書が発行された事実を認識していたことになり,そのような行為がなされたのは「aの会」側からの強い要請が前提となっていたもので,被告人がそのような要請に応じるのは,有力国会議員であるFの口添えの存在が前提となるというものである。 その意味で,個別の争点のみを時系列に沿って個別的に 」側からの強い要請が前提となっていたもので,被告人がそのような要請に応じるのは,有力国会議員であるFの口添えの存在が前提となるというものである。 その意味で,個別の争点のみを時系列に沿って個別的に検討するのみでは,本件においては不十分であり,双方向での総合的な検討も必要である。 そして,この場合,時系列的に,先の事実から後の事実への方向の影響のみならず,後の事実から先の事実への方向の影響の検討も必要である。 - 41 -他方,すべての争点を一連のストーリーとしてまとめて総合的に判断するということは混乱を招くことになる。 そこで,本件においては,まず,ある程度,時系列において関連する争点をまとめて暫定的に検討すると共に,その後,他の争点との関係でも総合的に検討することにする。 この場合,前者の検討単位をどのようにするか問題となる。 本件においては,①2月下旬ころの,CのFに対する口添え依頼,それに基づくFからLへの電話での要請,Lの被告人に対する指示の有無及びそれらの内容,その後,Cが厚労省を訪れた際の状況(争点1ないし4),②その後,厚労省において,「aの会」の案件が,F絡みの「議員案件」として組織的に対応していたのか否か(争点5及び6),③5月ころの「aの会」側の行動とこれについての被告人の関与の有無(争点7及び8),④本件公的証明書の作成,交付に至る状況(争点9ないし11),という4つの場面に大別することができる。 争点12,13は,いずれも,上記の問題に関連しており,実質的には,以上を離れて単体で検討するまでのことはないとみられる。 (3)検討の手法について本件において,基本的には,関係者の供述の信用性が問題となる。 各供述の信用性について,検察官,弁護人から,次のような観点からの主張がなされている。 ①供述内容それ自体の具体性 検討の手法について本件において,基本的には,関係者の供述の信用性が問題となる。 各供述の信用性について,検察官,弁護人から,次のような観点からの主張がなされている。 ①供述内容それ自体の具体性,迫真性②供述の変遷の存否③他の関係者との供述の符合性④客観的な証拠との符合⑤証拠上明らかに認められる事実との符合性⑥虚偽供述をなす可能性のある事情の存否(供述内容の不利益性,関係- 42 -者との利害関係等)⑦その他ところで,人間の供述は,認識,記憶,表現の3段階で誤りが入る可能性がある。この誤りは,意図的なもののみならず,思い違い,記憶の混乱,質問の方法その他多様な要因に基づいて生じるといえる。特に,本件においては,平成16年2月から6月ころまでを中心とした出来事について,平成21年になって,捜査が行われ,関係者の取調べがなされたのも同年4月以降のことであり,5年以上前の出来事についてなされた供述の信用性が問題となっている。5年間という時の流れが人間の記憶に与える影響を十分に配慮する必要がある。 また,供述の具体性,迫真性というのも後に作り出すこと自体は不可能ではない。 そこで,以下において,基本的には,まず,時の流れによって変化しないとみられる証拠物など客観的な証拠,証拠上明らかに認められる事実との符合性,合理性という観点を中心にして供述の信用性を検討することにする(ただし,その場合にも,客観的証拠とみられるものや証拠上明らかに認められる事実については,いろいろな見方や評価があり得る点に配慮する必要がある。)。 その検討に続いて,他の関係者との供述の符合性,虚偽供述をなす可能性のある事情の存否,供述内容それ自体の具体性,迫真性,供述の変遷などについて検討する。 - 43 - 場面①について(CのFに対する口添 に続いて,他の関係者との供述の符合性,虚偽供述をなす可能性のある事情の存否,供述内容それ自体の具体性,迫真性,供述の変遷などについて検討する。 - 43 - 場面①について(CのFに対する口添え依頼,FからLへの電話の有無,Lの被告人に対する指示,その後,Cが厚労省を訪れた際の状況及びその内容)(1)当事者の主張等ア検察官の主張等(ア)「aの会」は心身障害者団体としての実体がなく,内国郵便約款料金表に規定する心身障害者団体ではなく,「aの会」の発行する定期刊行物「b」は心身障害者の福祉を図ることを目的としておらず,本来であれば公的証明書の発行を受けられない状況であったこと(証拠上認められる事実)から,Dは,2月下旬ころ,厚労省から公的証明書を得るため,Cに対し,Fに厚労省への口添えを依頼するよう指示するとともに,担当部署が企画課である旨伝えた。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Dの検察官調書(甲48),Cの公判供述がある。 (イ)Cは,2月下旬ころ,Jと一緒に議員会館のFの事務所に行き,Fに対し,厚労省への申請に対するサポートをしていただけたら大変ありがたいと述べ,Fは,Cからの依頼を了承した。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Cの公判供述(Fと面談したのは,手帳に記載のある2月25日午後1時であったと供述する。)がある。 (ウ)Fは,2月下旬ころ,Lに電話を掛け,同人に対し,公的証明書を発行することを要請した。Lはその要請を了承した上,Fに対し,被告人が担当する旨伝えた。その後,Lは,部長室に被告人を呼び,Fからの依頼であること,その依頼をうまく処理することの重要性を告げて,「aの会」に対する公的証明書の発行に向けた便宜を図るよう指示した。被告人は,社会参加推進室にきちんと対応させる旨等 人を呼び,Fからの依頼であること,その依頼をうまく処理することの重要性を告げて,「aの会」に対する公的証明書の発行に向けた便宜を図るよう指示した。被告人は,社会参加推進室にきちんと対応させる旨等を述べて,Lの指示を了承した。 - 44 -この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Lの検察官調書(甲19)がある。 (エ)その後,被告人は,Mに対し,「d党のF先生の事務所から問い合わせがあって,今度F先生の秘書のCさんという人が障害者団体の新聞を郵便料金が安くなる低料第三種郵便を使って発送したいみたいなの。 今度うちにCさんという秘書が来るらしいから担当者を紹介してあげてください。」などと,Cが来庁した場合の対応を指示した。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Mの検察官調書(甲21)がある。 (オ)(エ)の後,Mは,Nに対し,「aの会」の関係者が公的証明書の発行をお願いにくる旨告げた。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としてはNの公判供述,検察官調書(甲13)がある。 (カ)Cは,2月下旬ころ,企画課を訪問し,企画課長席の前で,被告人,M,H,N,K3とあいさつをするなどした。その後,N,Hは,Cに対して,手続の流れなどの説明をした。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としてはM(甲21),N(甲13,14),H(甲22)の検察官調書,Nの公判供述がある。 イ弁護人の主張等弁護人は,Fの供述等を前提とし,Cの手帳に記載のある2月25日午後1時ころには,Fはゴルフ場にいたことが明らかになっており,Cがそのころ議員会館のFの事務所でFと会うことができないことは明白であるとして,また,L,M,J,被告人の公判供述などからも,検察官の主張するいずれの事実も認定できない旨主張している。 (2)検討場面①に関しては, Fの事務所でFと会うことができないことは明白であるとして,また,L,M,J,被告人の公判供述などからも,検察官の主張するいずれの事実も認定できない旨主張している。 (2)検討場面①に関しては,関係する人物は,D,C,F,L,被告人,M,N,- 45 -H,K3,Jであるところ,検察官主張を裏付けるのは,Dの検察官調書,Cの公判供述,Lの検察官調書,Mの検察官調書,Nの公判供述,検察官調書,Hの検察官調書である。そして,その中心となるものは,Cの公判供述,Lの検察官調書であり,その他の事実や供述は,その間接事実ないし補助事実との意味合いの強いものである。これに対し,被告人の捜査,公判供述,F,L,M,H,Jの公判供述は,基本的には検察官主張に反するものである。 そこで,以下,検察官主張を裏付けるCの公判供述,Lの検察官調書と弁護人主張を裏付けるFの公判供述の信用性を中心に,各供述の信用性について検討する。 なお,Cの公判供述は,検察官主張を裏付ける点がある一方,厚労省を訪れた際の訪問順序に関しては,検察官主張に反する部分があるので,分けて検討することとする。 アCの公判供述中,検察官主張を裏付ける部分の信用性について(ア)客観的証拠との関係a.Cの手帳の記載について前記認定事実のとおり,Cの手帳の2月25日の欄に「13:00F─(又は一)kJ氏」との記載がある。 この記載は,Cの前記供述を裏付ける有力な客観的証拠ともみられることから,当該記載の評価について検討する。 (a)記載内容の解釈についてまず,記載の内容自体の意味について考察する。 Cの手帳(甲72)の他のページの記載で「F」と記載されているものには,「一」の文字を5月13日の欄の記載のように比較的長く記載しているものもあれば,6月9日の欄のように比較的短く記載 考察する。 Cの手帳(甲72)の他のページの記載で「F」と記載されているものには,「一」の文字を5月13日の欄の記載のように比較的長く記載しているものもあれば,6月9日の欄のように比較的短く記載しているものもあり,2月25日の欄の記載が,「一」(はじ- 46 -め)であるのか「─」(よこ線)であるのかは,記載の形式のみからは断定することはできない。 しかし,当該記載の「k」の記載の前に,ピリオド様の点があることからすると,当該記載が,「─」(よこ線)ではなく,「一」(はじめ)である可能性は高いこと,Cの手帳には「F」との記載が多数みられること,前記認定事実により,平成16年当時,CとFとの間に一定の親交があったといえることなどを併せ考えると,当該記載がFを指すものである可能性は高いといえる。 (b)記載の評価についてそして,「kJ」の記載が,Jを指すことは明白であり,当該記載はF及びJと同時刻に会うことを示すような体裁であるといえる。加えて,JとFに,それ以前に直接面識があったことを窺わせる証拠は見当たらず,JとFをつなぐ人物はCのみとみられること,この手帳の記載は,C自身の予定を記載したものとみられること,Jを含めた「aの会」関係者が,当時,低料第三種郵便物制度を利用することを意図していたこと,当該記載と同日の欄に「16:00厚労省援局障保福部企課社会参加推進室N係長」との記載があり,Fと面談後に厚労省を訪ねるというのはCらの活動方針と整合していることにも照らすと,当該記載が,公的証明書の件に関して,CがJとともにFと面談をするよう約束した際に記載したものであると考えるのが合理的である。 以上からすると,Cの手帳の前記各記載は,Fに口利き依頼をしたとのCの公判供述を裏付けているものともみられる。 b.Cの手帳とFの手帳 よう約束した際に記載したものであると考えるのが合理的である。 以上からすると,Cの手帳の前記各記載は,Fに口利き依頼をしたとのCの公判供述を裏付けているものともみられる。 b.Cの手帳とFの手帳,ゴルフ場からの照会結果Fの手帳,ゴルフ場からの照会結果によれば,Fは,2月25日,東京の■から高速道路を利用し自動車で50分程度はかかる千葉県- 47 -のゴルフ場で,午前7時57分からゴルフをプレーし,午後2時ころまで当該ゴルフ場にいたのであり,Cの手帳に記載され,Cが面談したと供述する時間帯に,Cが,F事務所を訪ね,Fと面会することは不可能であった(また,Fがゴルフ中又は移動中であったとみられる午後1時より前の午前中などや午後1時以降の午後3時ころより前の可能性もない。)。 したがって,前記Cの手帳の記載は,2月25日午後1時ころに,CとFが実際に面談したことの裏付けにはならない。ただし,Fと面談することを予定していたことを示す当該記載の体裁からすると,Cが,2月25日午後1時ころに,本件公的証明書の件に関して,Fと面談をしようとし,Fと約束をしたことについての裏付けにはなるといえる。 他方,Fの手帳の2月25日欄には,C来訪に関する記載はない。 そこで,そもそも,Cが,F事務所との間でアポイントメントを取ったこと自体がないのではないかも問題となる。 しかし,Fの手帳の同日欄には,ゴルフに関する事項以外に,同日の午後の予定としては,「1500横浜市長神奈川知事」の記載しかなく,それまでの間にFに予定は入っていなかったとみられること,Cは,一時期,Fの秘書であった者であり,その来訪予定全てをFの手帳にわざわざ記載しないということも必ずしも不自然ではないこと(その後にFの用事や予定が入れば,CはFに会えなくともやむを得ないというの ,一時期,Fの秘書であった者であり,その来訪予定全てをFの手帳にわざわざ記載しないということも必ずしも不自然ではないこと(その後にFの用事や予定が入れば,CはFに会えなくともやむを得ないというのも,Cの立場からは,不自然とはいえない。)などに照らすと,Fの手帳に,2月25日のCの来訪について,全く記載がないことはアポイントメント自体がなかったことにつながるものとはみられない。 検察官は,Cの手帳の2月25日の欄の前記の記載は,あくまで予- 48 -定として記載されたものである上,Fが,ゴルフの予定は,2月25日の前日か二,三日前に入れたものであると供述していることからすると,CとFの面談の日時が急きょ他の日時に変更され,Fと面談して厚労省への口添えを依頼したのは別の日時であったとみるのが合理的である,Cは,面談及び口添え依頼の事実から数年が経過しており,日時の点においては記憶があいまいになり,手帳の記載どおりの日時に面談・依頼したと供述してしまい,客観的事実と反するような供述をしているが,それだけでは面談及び依頼の事実の有無自体に関する同人の供述の信用性は否定されない旨主張する。 Cの手帳は,いわゆるスケジュール帳として使用されていたものである上,当該記載の体裁からしても,前記の記載は予定として記載されたものとみられる。したがって,記載された後に予定が変更され,当該記載とは別の日時に面談したということも考えられないではない。 また,Cの公判供述時点において,面談があったとされる時期から,約6年が経過していたこと,CとFは,平成16年前後において,相当回数の接触はあったとみられることに照らすと,実際に面談した日時の点について記憶があいまいになり,予定変更があったにもかかわらず,予定として記載された手帳の記載に合わせて供述がなされ において,相当回数の接触はあったとみられることに照らすと,実際に面談した日時の点について記憶があいまいになり,予定変更があったにもかかわらず,予定として記載された手帳の記載に合わせて供述がなされるということも想定できないではない。 他方,Cの公判供述は,厚労省を訪れる前にFと面談し,口添えを依頼したというものであり,Cが厚労省を訪れた後の時期に予定変更がなされ面談したとは考えられない。そこで,前提として,Cが厚労省を訪ねた日時について検討する。 前記認定事実によれば,Cの手帳の2月25日の欄には「16:0 厚労省援局障保福部企課社会参加推進室N係長」と記載されてお- 49 -り,Cは,公判で,記載された日時に厚労省を訪れたと述べている上,Cが厚労省を訪れたことがきっかけとなり,「aの会」はj協会との交渉を開始したものであること,2月26日にJからj協会のSに電話がなされていることとも時期的に整合していること,同手帳の25日以前の欄に,他に厚労省訪問に関する記載はみられないことに照らすと,Cの前記公判供述は信用でき,Cは,2月25日午後4時に厚労省を訪れたものと認められる。 そこで,続いて,Fとの面談予定が2月25日より前に変更された可能性の有無について客観的証拠との関係から検討する。 Cは2月19日に,Jと会って,Fとの面談予定を立てたと供述しており,その事実を窺わせる一定の記載が,Cの手帳の2月19日の欄にあることからすると,予定変更がなされたとすればそれ以降となる。そして,前述したとおり,2月20日に,D及びJは第三種郵便物の承認請求書を出しており,同月21日,22日は,それぞれ土曜日,日曜日であることを考えると,予定が変更され,面談があった可能性があるのは,23日,24日,25日のうち厚労省を訪れる前の時間のいずれかで 請求書を出しており,同月21日,22日は,それぞれ土曜日,日曜日であることを考えると,予定が変更され,面談があった可能性があるのは,23日,24日,25日のうち厚労省を訪れる前の時間のいずれかであるといえる。 Fの手帳の2月24日の欄には,午前10時30分から午後7時まで,ほぼ間断なく予定の記載が入っており,この日に急きょCと面談をしたという可能性を認定するのは困難とみられる。他方,Cの手帳の2月23日の欄には,「【省略】へtel」,「9:30【省略】」,「11:30【省略】」,「3:304:005:00【省略】」,「18:30【省略】」との記載があるほかは,人物や場所に関する有意な記載はなく,この日に急きょ面談をしたという可能性は一応想定できる。 したがって,予定変更がなされ,2月25日より前にCとFが面談- 50 -した可能性は完全に否定されるとまではいえない。 しかし,Fという多忙な国会議員との面談予定であること,2月25日午後1時の予定については赤線が同予定を消すように引かれていること,予定変更があれば,Cがその旨を記載することは容易であることなどに照らすと,予定変更がなされれば,Cの手帳に,新しい予定の記載がなされるのが自然とみられる。それにもかかわらず,Cの手帳の記載からは,そのような記載の存在は窺われない。 以上によれば,Cの手帳という客観的証拠上は,Cが,Fと面談した事実は存在しなかった疑いがあるといえる。 c.Jの名刺の記載について前記認定事実によれば,Jが,j協会を訪ね,Sに渡し,同人が保管していた有限会社k取締役会長名義の名刺には,「F-(又は一)tel→N係長」と手書きで記載されている。検察官は,当該記載の冒頭部分は,「F-」ではなく,「F一」であり,このような記載は,Fへの口添え依頼があった k取締役会長名義の名刺には,「F-(又は一)tel→N係長」と手書きで記載されている。検察官は,当該記載の冒頭部分は,「F-」ではなく,「F一」であり,このような記載は,Fへの口添え依頼があったことを窺わせる客観的証拠であるとする。そこで,Jの名刺の記載が,Cの公判供述の裏付けとなるのかについて検討する。 まず,記載の意味内容について検討する。当該記載の体裁や,「F」と「tel」とを「-」でつないだのでは意味が通じないとみられること,CとFの関係をDやJも知っていたこと等からすると,当該記載は,「-」ではなく,「一」であると考えるのが合理的である。 そして,関係証拠からも,少なくとも,FがNに対し電話を掛けたとの事実はうかがわれず,Nが,Sとの電話でのやりとりの際に,FがNに電話したかのような事実を告げたとは考えられないこと,当該記載は,Jの名刺に書かれており,Nとのやりとりの際にそれに記載するのは不自然であること等からすると,当該記載は,J・DとSが- 51 -j協会で面談した際に,J又はDに告げられた内容を基にSが記載したものであると考えられる。 したがって,Jの名刺の前記記載は,Fから,厚労省に対して電話をしてもらっていた旨が,D又はJから,Sに対して告げられたことを推認させる。 そして,Dらが,Sに,そのようなことを話すということは,その前提として,実際にCがFに依頼し,Fが厚労省に電話をした事実があったのではないかと考えることもできる。 しかしながら,Cが,実際に,Fに口利き依頼をしていなかったにもかかわらず,Dがその旨をSに話した可能性も否定できない。Dは,CにFへの口利きを依頼する前の時点で,厚労省の公的証明書の担当部署として電話を回してもらった企画課のK6に対して,「aの会」について,Fからも応援してもらっている した可能性も否定できない。Dは,CにFへの口利きを依頼する前の時点で,厚労省の公的証明書の担当部署として電話を回してもらった企画課のK6に対して,「aの会」について,Fからも応援してもらっている団体であるなどと告げていたが,関係証拠上も,その時点でFの名前を使用することについて,同人の了解を取れていたとの事情は認められない。よって,Dは,Fの関与について,虚偽の事実を外部の者に対して述べていたことが認められるのであり,D・Jから,Sに述べられた内容についても,Fに無断で行われた可能性も残る。 したがって,Jの名刺の記載も,Fへの口利き依頼を肯定するCの公判供述の直接の裏付けになるとまではみられない。 d.小括以上によれば,Cの手帳,Jの名刺などの客観的状況からは,Cが,Fと2月25日午後1時に会うアポイントメントを取ったこと,「aの会」は,j協会のSに,Fから厚労省に,電話をしてもらっていたと話したことまでは認められるが,その後,2月25日午後1時の約束を変更し,Cが,Fに実際に会ったことまでを推認せしめるもので- 52 -はなく,むしろ,そのような事実があったことに疑いを生ぜしめるものである。 (イ)供述内容の合理性a.本来であれば公的証明書の発行要件を満たさないこととの整合性前記認定事実及び関係証拠によれば,「aの会」は心身障害者団体としての実体がなく,「aの会」の発行する「b」は心身障害者の福祉の増進を図ることを目的としておらず,本来であれば公的証明書の発行を受けられない状況であったこと,「aの会」の中心メンバーであるDはこれを認識していたことが認められる。このような状況で,公的証明書の発行を得るためには,団体の実体性や目的を仮装するほか,有力国会議員であるFに口添えをしてもらうことにより,厚労省の審査に手心を はこれを認識していたことが認められる。このような状況で,公的証明書の発行を得るためには,団体の実体性や目的を仮装するほか,有力国会議員であるFに口添えをしてもらうことにより,厚労省の審査に手心を加えてもらおうとするということは不自然なことではない。 Cの公判供述は,「aの会」及び「b」が本来であれば公的証明書の発行要件を満たさない状況にあったことと整合するものといえる。 b.Fに事前の了解を得る必要性の点について検察官は,Cが厚労省を訪れた際に,Nに対して,Fの名前を出したことが明らかであるところ,後に厚労省側からF本人あるいは秘書等に話が伝わる可能性を考えれば,かねてよりFと友好的な関係にあり,今後もその関係を維持したいはずのCが,Fに無断でその名前を使うということは不自然であり,Fの了解の下で厚労省でFの名前を出したとみるのが自然であると主張する。 前記認定事実によれば,本件当時,CとFとは一定の親交があり,本件以後も,その関係を維持していたことが認められる。他方,Cは,2月下旬ころに厚労省を訪れNと面談した際,同人に対して,CとFとに一定の関係があることを告げたことが認められる。 - 53 -検察官の主張するとおり,Cにおいて,Fとのその後の関係にも配慮する必要もあることにも鑑みると,Cが厚労省を訪れる前に,急きょ予定を変更してでも,Fと連絡を取って,Fの名前を出すことの了解をとる必要性があるといえる。そして,Fは国会議員であり,Cは,Fの元秘書という当時の両名の関係に照らすと,直接面談して了解を得ることも合理的である。 したがって,Cの公判供述は,CとFの関係といった事情とは整合性があるといえる。 他方,Cが,DからF訪問を依頼される前から,Dらは,勝手に,F事務所を「aの会」名簿の支援団体欄に記載していた。そして,C て,Cの公判供述は,CとFの関係といった事情とは整合性があるといえる。 他方,Cが,DからF訪問を依頼される前から,Dらは,勝手に,F事務所を「aの会」名簿の支援団体欄に記載していた。そして,Cは,その事実を認識していた(また,Dらは,それを2月20日に郵便局に提出するなどしていた。)。 これらに照らすと,Fへの連絡が,Cの厚労省訪問の不可欠の要素とまではみられない。 なお,前述したとおり,Dは,Cに,厚労省訪問を依頼する前に厚労省に電話し,「aの会」は,Fからも応援してもらっている団体であるなどと話している。 (ウ)供述態度,その他についてa.Cが,Fが否定していることを知りつつFの関与を供述していることについて検察官は,Fに対する口添え依頼は,本件公的証明書の発行にとって不可欠な前提事実を認めるもので,C自身及び口添えを否定するFにとって不利な供述であり,Cがこの点についてことさらに虚偽の供述をする理由はないと主張する。 Fは,本件捜査段階から,マスコミ等に対して,Cに依頼され厚労省に口添えをしたことを強く否定しており,平成21年6月21日付- 54 -けの週刊誌にも,「『Fd党副代表』の怒髪天」との見出しで「オレは知らん。なぜオレが厚労省に電話せないかんのや。迷惑千万や。」などという記事が掲載されているのを,CはP2から示され(平成21年6月22日付けのCの検察官調書(甲58)に添付されている。),取調べ中から,これを認識していた。さらに,F自身,弁護人申請証人として,Cの証人尋問より後の期日に公判で証人として尋問されることが予定されている状態であった。そして,一般的にみれば,Cの公判供述は,C及びFにとって不利なものといえる。 このような事情からすると,Cの公判供述には高い信用性が認められるようにもみられる。 しか が予定されている状態であった。そして,一般的にみれば,Cの公判供述は,C及びFにとって不利なものといえる。 このような事情からすると,Cの公判供述には高い信用性が認められるようにもみられる。 しかし,Cの公判供述は,「Fに対し,厚労省に陳情に行く際に,その了解を得る際に,『できればサポートしていただけたらありがたい。』と言った。それに対し,Fが『厚労省に電話をしてやってもいい。』と言った。」という程度のものであり,不正発行の口添えを依頼し,Fがそれを了承したというものではなく,C自身やFにとって著しく不利益なものであるとまではみられない。 他方,Cの取調べ担当検事であったP2は,この点に関するCの取調状況及び供述経過について,「Cは,取調べの当初は,2月25日の欄の『13:00F─(又は「一」)kJ氏』の記載について,IにJを紹介し,Iの名前を使わせてもらって,厚労省側に働きかけるつもりであった旨供述していたが,平成21年6月初めころ,Cに対し,手帳では,Fは,『F』又は『F一』と記載し,Iは,『I』と記載して,明確に区分していると指摘したところ,Cは,取調べ当時,現職の国会議員であるFの名前を出すことに抵抗があり,Iの名前を出してしまったが,本当はFに口添えを依頼したのであり,Iは関与していなかったと供述した。」旨供述している。このように,C- 55 -がFの関与を認める供述をしたのは,前記の記事を見せられる前に,検察官に手帳の記載についての追及がなされた結果であって,Cは,Fの関与について,Fが否定していることを知りつつ,積極的に供述し始めたのではない。 他方,2月下旬ころに厚労省を訪れNと面談した際に,CがFの名前を出したことは認められるのであり,Fとの面談等を否定すれば,Cは,Fに無断でFの名前を厚労省関係者に告げたこ 述し始めたのではない。 他方,2月下旬ころに厚労省を訪れNと面談した際に,CがFの名前を出したことは認められるのであり,Fとの面談等を否定すれば,Cは,Fに無断でFの名前を厚労省関係者に告げたことになることからすると,Cにおいて,Fとの面談等に関する供述を維持する動機がないではない。 以上の事情からすると,Cが,FやCにとって一般的にみれば不利な供述であること,Fが否定していることを知りつつ供述していることも,Cの公判供述の信用性を肯定する方向の事情にはなるが,その程度は必ずしも大きいとまで評価することはできない。 また,前記のとおり,Cの供述は,Cの手帳の2月25日の欄の「13:00F─kJ氏」の記載について追及される中で出てきたもので,Cの公判供述の2月25日午後1時に,Fと会ったということもこれに基づくものである。 しかし,公判でのCの証人尋問後,Fの手帳やゴルフ場の回答書などの客観的資料が提出され,2月25日午後1時に,Cが,Fと面談することは不可能であったことが判明した。 Cの供述は,手帳の記載などの客観的資料如何によって変動する可能性があり,これを離れてC自身にどの程度の記憶が残っていたのか,疑問が残るものである。 b.証言の変遷と検察官への迎合弁護人は,Cは,証人尋問の中において供述を変遷させており,検察官に迎合しようとする点がある旨主張する。 - 56 -そして,関係証拠によれば,Cは,弁護人の反対尋問において,検察官の打ち合わせについて,「しておりません。」と供述した。しかし,検察官の再主尋問において,「我々と打ち合わせをしたことはあったんじゃないんですか。」と質問されると,「ございました。」と述べ,供述を変遷させている。 そして,Cは,上記のように検察官との打ち合わせはしていないと証言した理由について,「 わせをしたことはあったんじゃないんですか。」と質問されると,「ございました。」と述べ,供述を変遷させている。 そして,Cは,上記のように検察官との打ち合わせはしていないと証言した理由について,「打ち合わせをすること自体がいけないものだというふうに,私の中に記憶ございましたので。」と供述している。 この供述によれば,Cは,検察官と,証言前に打ち合わせをした事実を隠そうと,故意に虚偽の供述をしたものともみられる。以上に照らすと,前記弁護人の主張を否定することはできない。 また,C自身,Dに対し,企画課長に要請してきたという「うその報告」をしたと,平成16年当時から虚言を述べていたことを認める証言をしている。 c.供述の具体性,迫真性検察官は,Cの公判供述は,Dから相談を受けてFに口添えを依頼した経緯や状況について具体的かつ迫真的に供述しており,Cの公判供述は信用できると主張する。 確かに,Cの公判供述は,Dから依頼を受けた状況や,Fとのやりとり,Jも同行した理由等について,具体的に供述しており,実際に体験した者であるからこそ,そのような具体的な供述をなすことができていると考えることもできる。 しかし,他方,Cが,Dの依頼で,公的証明書の件について厚労省を訪れたことは事実であるし,当時,CとFとの間には一定の親交があり,他の用件でCとFが面談することもあったとみられることからすると,本件についてFとの面談を体験していなくとも,それらの経- 57 -験に基づいてそれなりに具体的に供述することは可能であって,供述の具体性も,Cの公判供述の信用性を特段に高める事情とまではみられない。 (エ)小括以上によれば,Cの公判供述は,Cの手帳という客観的な証拠により,Fと会う約束をしたことまでは認められるが,Fの手帳やゴルフ場からの回答書によれ 特段に高める事情とまではみられない。 (エ)小括以上によれば,Cの公判供述は,Cの手帳という客観的な証拠により,Fと会う約束をしたことまでは認められるが,Fの手帳やゴルフ場からの回答書によれば,Cの手帳の日時にFと会うことは不可能となる。その後の予定変更についても,客観的証拠上は疑いが残る。 証拠上認められる事実等との整合性の観点からみると,DがCにFに対する厚労省への口利き依頼をして,CがFを訪ねてその旨の依頼をするというのは,当時の状況に照らすと,自然で合理性があるといえるが,CがFを訪ねることが,Cの厚労省訪問の不可欠の前提であったとまではみられない。 Cが,Fが否定していることを知りながら,Fへの口利き依頼を供述していることは信用性を肯定する方向の事情になるが,他方,Cの公判供述には,事実に反している部分もあり,その信用性判断には慎重な考慮が必要とみられる。 以上を総合すると,Cの供述は,信用性を肯定する方向に働く事情がある一方,信用性に疑いを入れる方向に働く事情もあり,これ単体で,完全に信をおくという程度までには達していないといわざるを得ない。 - 58 -イCの公判供述中,検察官主張に反する部分(Cが2月下旬ころ厚労省を訪問した際に,まず訪れた相手など)についてNの公判供述,M,H及びNの検察官調書は,Cが,2月下旬に厚労省を訪問した際に,まず被告人を訪ね,その後,Mから呼ばれ,H,Nは,被告人の席のところに赴き,Cとあいさつをしたというものである。 これに対し,Cは,公判で,次のとおり供述する。 「厚労省で,まず,応接テーブルのようなところで,Nと会ってあいさつした。Nと名刺を交換した。その後,Nに認可を受けるための手続を聞いた。その際,もう一人職員がいた。持参した機関誌『b』も見せたが,これは当日返された。Nか ブルのようなところで,Nと会ってあいさつした。Nと名刺を交換した。その後,Nに認可を受けるための手続を聞いた。その際,もう一人職員がいた。持参した機関誌『b』も見せたが,これは当日返された。Nから,j協会に行き,審査を受けたらどうかと言われた。また,組織とか,会員名簿,活動状況など,いろいろな資料を用意してもらうことになると言われ,持参した紙にメモした。Nから,『課長にごあいさつされるか。』と言われ,被告人の席に行ってあいさつした。 『F事務所のCです。障害者支援団体の件で相談に上がりました。』と言った。それに対し,被告人は,『ああそうですか。』という程度のことを言っていた。私は,手持ちの名刺が1枚しかなく,被告人とは,名刺交換はしなかった。」そこで,この点について検討する。 (ア)Cの手帳の記載との関係前記認定事実及び関係証拠によれば,Cは,Dから,本件公的証明書の担当者が,「N氏」であると告げられており,それをわざわざCの手帳の2月23日から始まる週のメモ欄に記載していること,同メモ欄に,当該記載の下に,青のボールペンで,当該記載から矢印が引かれた上,社会参加係の内線番号や執務室の階数と一致する記載がなされ,16時とも記載されていること,同手帳の2月25日の欄にも「16:0 厚労省援局障保福部企課社会参加推進室N係長」と記載されている- 59 -ことが認められる。 これらの事実によれば,Cが,少なくとも,当該日時に,Nを訪ねるよう予定を立てていたものと認められる。また,手帳に時刻や社会参加係の階数まで記載されていること,DがK6に対し問い合わせをした際に記載したノートにも社会参加推進室の執務室の階数とみられる記載や時刻の記載はなく,Cの手帳に記載された前記の階数や時刻の記載は,Nと連絡を取った際に記載したものである可能 に対し問い合わせをした際に記載したノートにも社会参加推進室の執務室の階数とみられる記載や時刻の記載はなく,Cの手帳に記載された前記の階数や時刻の記載は,Nと連絡を取った際に記載したものである可能性があること等に照らすと,企画課を訪れる前にNと連絡を取り,同日同時刻にNと会うようアポイントメントを取った可能性が高いとみられる。 また,C自身,本件公的証明書の担当者が,被告人である旨伝わっていたとは供述しておらず,Cの手帳の記載にも,被告人を窺わせる記載はみられないことからすると,まずNを訪れたとする供述部分には一定の裏付けもあり,合理的である。 (イ)Cが,被告人の名刺を所持していなかったこととの関係前記認定事実によれば,平成21年にCの自宅から大量の名刺が発見され,その中にNの名刺はあったが,被告人の名刺はなかった。Cが両名の名刺を取得していれば,Nの名刺のみ保存し,Nより立場が上で本件公的証明書の作成権限者である被告人の名刺を廃棄することは考えがたい(また,被告人の名刺のみを他に譲渡するような必要性も窺われない。)から,Cは,2月25日,Nと名刺交換したが,被告人とは名刺交換していなかったことを推認させる。まず被告人の下を訪ねたのであれば,当日,Nと名刺交換をしたCが,被告人と名刺交換をしないことについて,合理的説明がつかない(この点について,Cは,公判で,「N係長とは名刺交換をした。A課長とあいさつをしたのに名刺交換をしなかったのは,私は当時,F先生の秘書ではなく,選挙のときに使ったF事務所,Cという名刺があったので,それを1枚しか持っておらず,- 60 -それをNに渡したからである。」旨供述している。)。 当該事情は,Nの公判供述並びにM,H及びNの検察官調書の内容と整合せず,他方,Cの公判供述の内容とは整合する。 (ウ 持っておらず,- 60 -それをNに渡したからである。」旨供述している。)。 当該事情は,Nの公判供述並びにM,H及びNの検察官調書の内容と整合せず,他方,Cの公判供述の内容とは整合する。 (ウ)Nの検察官調書,公判供述との関係Nは検察官調書のみならず,公判においても,Cとのあいさつの状況については,前記のとおり,検察官調書に沿う供述をなす。 Nは,公判において,「おそらく,被告人は,えん罪ではないかと思う。」と述べており,公判において,被告人に不利な方向で自己の記憶に反する供述をなすべき事情はみられない。 よって,Nは,自己の記憶に従って供述しているものとみられる。 しかし,Nの公判供述は,前記Cの手帳やNの名刺の所持状況という客観的事情と相反しており,平成16年2月下旬当時から,検察官調書が作成された平成21年5月当時までは5年以上,公判で証言した平成22年2月までは約6年が経過しており,具体的なやりとり等について,記憶が減退している可能性があること(ちなみに,Nは,公判において,「Cの手帳を見ると,Cが,直接私のところに来たのかなという気もしないではない。」とも供述している。)などに照らすと,この点に関するNの公判供述,検察官調書の記載は,信用性が高いものとはいえない。 (エ)M,Hの検察官調書との関係Nの検察官調書のみならず,H,Mの検察官調書にも,同旨の記載がある。 しかし,これらの検察官調書は,前記同様,Cの手帳,Nの名刺の所持状況に照らして,信用性が高いものとはいえない。 (オ)小括以上のとおり,Cが,2月下旬に厚労省を訪れた際に面談した順序,- 61 -相手等に関するNの公判供述並びにM,H及びNの検察官調書の供述は,客観的事実に整合せず,信用性が高いものとはいえない。Cは,まず,Nを訪れたものと認定できる 訪れた際に面談した順序,- 61 -相手等に関するNの公判供述並びにM,H及びNの検察官調書の供述は,客観的事実に整合せず,信用性が高いものとはいえない。Cは,まず,Nを訪れたものと認定できる。 ウLの検察官調書の信用性について(ア)客観的証拠との関係C方から,Nの名刺は発見されたのに,Lと被告人の名刺は発見されなかった。また,Cの手帳には,Nに関する記載はあるのに,被告人に関する記載は存在しない。 a.Lの検察官調書には,Fとの電話でのやりとりについて,「私は,Fに対し,『うちで企画課長を務めているAという者が担当になります。私から,彼女に指示して,担当部署に対応させますので,Cさんには,ひとまず,A課長を訪ねるようお伝えください。』などと答えた。Fは,私に対し,『Cには,そう伝えておくから。』などと言った。」旨の記載がある。 Fからの電話においてそのような会話があったとすれば,F自身又はその秘書等から,Cに対し,担当者が被告人である旨伝えられ,Cはまず被告人を訪れ,あいさつ,名刺交換をするのが自然である。しかし,前記認定のとおり,Cの自宅から,被告人の名刺は発見されなかった。 さらに,Lの検察官調書の記載のような会話があれば,F事務所から,Cに連絡があり,同人が,被告人の名も手帳に記載するのが自然であるのに,前記のとおり,これがないということは,Lの検察官調書に疑いを生ぜしめるものである。 以上によれば,Lの検察官調書におけるFとのやりとりについては,客観的証拠と符合しない点がある。 b.Lの検察官調書には,Fからの電話があり,それに基づいて被告人- 62 -に指示をした後,被告人に連れられたCと部長室であいさつをした旨の記載がある。 他方,Cの自宅等から多量に発見された名刺の中からもLの名刺は発見されていない。 り,それに基づいて被告人- 62 -に指示をした後,被告人に連れられたCと部長室であいさつをした旨の記載がある。 他方,Cの自宅等から多量に発見された名刺の中からもLの名刺は発見されていない。Cは,Nの名刺は保管していたのであるから,それよりはるかに上位のLとあいさつし,名刺を取得していれば,名刺を保管しているのが自然である。Cが,Lの名刺を保管していなかったことは,CがLと面談していないことを推認せしめる(ちなみに,Cは,公判で,Lとはあいさつをしたことはないと供述している。)。 Lの検察官調書の前記記載は,客観的証拠の状況とも整合しない面がある。 これらの点からすると,Lは,Cと面談していない疑いが残り,Lの検察官調書のうち,当該記載部分は,事実と反する疑いがある。 (イ)供述内容の合理性a.FとLの関係についてFがLに電話をしたことに合理性があるか否かを検討する前提として,まず,FとLの関係について検討する。 Lは,Fとの関係について,公判で次のとおり供述する。 「私は,様々な行政分野を経験したが,Fとかかわることが何度かあった。最大のものは阪神淡路大震災の対策の際である。私は,当時,厚生省生活衛生局指導課長で,x屋,ふろ屋,理容店などの産業の振興を図る担当課長であった。神戸の震災では,x屋の被害も大きく,たまたま兵庫県のx業の会長がFの後援者だったので,その方からF先生の話もよく聞いていて,神戸の復興対策のところでFと何度か会って,力添えをいただいた。 私は,■の出身で,おじもおばも神戸市●区とか▲区に住んでおり,夏休みに神戸に来ては神戸の街を散策するなど,神戸に愛着を持って- 63 -いた。Fには愛着があって,個人的にも,Fは非常に好きなタイプの政治家で,親しい先生と考えていた。 震災の関係以外に,Fに直接会って, に来ては神戸の街を散策するなど,神戸に愛着を持って- 63 -いた。Fには愛着があって,個人的にも,Fは非常に好きなタイプの政治家で,親しい先生と考えていた。 震災の関係以外に,Fに直接会って,時間を掛けて話したのは,1度か2度ぐらいだと思う。Fの事務所には,多分何度も顔を出していると思う。私は,国会議員は,与野党問わず,頻繁に訪問し,名刺を置いて帰ることがたくさんあった。しかし,障害保健福祉部長時代には,直接仕事上のかかわりがなかったから,多分顔を出してないと思う。」なお,Fは,公判で次のとおり供述する。 「Lには覚えがない。阪神淡路大震災後,私の出ていた兵庫○区は,最も震災被害の大きかったところだったから,あちこちで救済の手を差し伸べる必要があり,いろいろな役人と,いろいろな会合で会った。 私は,x業界とは,その顧問もしており,大変近い関係にあった。 Xという人間が,長い間,兵庫県x協会の理事長をしていた。 私は,業界を立て直すために,会議に何回か出て,助言をしたり,協力をした。そのときに,役人が5人か10人か後ろへ座っていることがあった。県や神戸市の役人もいれば,中央の役人もいた。Lは,その中の1人ではなかったのかと思う。私は,そのときに,その人物をその他大勢の1人として認識してるだけだが,向こうは私がFという認識があると思う。 大震災直後ころに,x業者の救済のために貸出金利の利率を引き下げるという話があった。それぐらいのことはしてやれよというような話はあったと思う。それはある程度,国も受け入れたと思う。」以上によれば,Lの公判供述とFの公判供述との間には,両者の関係について齟齬があるといえる。 しかし,F供述は,阪神淡路大震災後,x業界を立て直すために,- 64 -会議が何回か開かれ,それにFが何回か出たこと,Fの知人が兵 Fの公判供述との間には,両者の関係について齟齬があるといえる。 しかし,F供述は,阪神淡路大震災後,x業界を立て直すために,- 64 -会議が何回か開かれ,それにFが何回か出たこと,Fの知人が兵庫県x協会の理事長をしていたこと,Fがx業者救済のために貸出金利の利率を引き下げるぐらいのことはしてやれよというような話をし,国もある程度受け入れたことなど,Lの公判供述と符合する点も多い。 Lは,公判で,Fとの関係が実際より親しいという方向で虚偽供述をなすことは考えられず,Lのこの点の供述は信用できる。 そして,Cの依頼を受けたFが,厚労省の担当部署の幹部であるLに電話をすること自体は不自然なことではない。 他方,有力国会議員であるFが,当時,課長レベルであったLについて,LがFに対して思うほど印象深くなかったということは必ずしも不自然ではない。 b.LがFから電話を受け,被告人にこれを話したことは不自然,不合理ではないことLは,公判で,「Fが絡んだ案件であるということが報道されていたところ,私は,当時,国会対策を一手に引き受けており,Fは非常に親しみを感じ,よく知っている先生だったので,当然自分が電話を受けたのだろうと思い,P1検察官に対して,Fから電話を受けたように思うと言った。Fからの電話の内容については,Fから,ある方が障害者団体を作って,郵便割引を受けたいので相談に行くからというような内容を言われたと,P1に言ったと思う。Fからの依頼だということも被告人に伝えたという程度の話はした。」と述べ,捜査段階においても,一応自ら供述したことを認めており,また,現時点での認識についても,Fからの電話での要請との事実については,明確な記憶はないとしつつも,「Fからの入口の電話については記憶にはないというだけで,100パーセント否定する自 認めており,また,現時点での認識についても,Fからの電話での要請との事実については,明確な記憶はないとしつつも,「Fからの入口の電話については記憶にはないというだけで,100パーセント否定する自信はない。」と述べており,その可能性は否定していない。 - 65 -このように,Lの検察官調書のうち,前記の,Fから電話で,Cが公的証明書の関係で厚労省を訪問するので,その際の対応・協力を要請され,それを被告人に伝え対応を指示したとの限度では,被告人,L両名ともその可能性自体は否定していないのであり,過去にLとFに接点があったことについては,Fも否定していないことに鑑みると,その限度では特に不自然,不合理ではないといえる。 c.国会答弁との関係弁護人は,Lの検察官調書(甲19)に,①Fが,Lに対する電話で,「L部長,お久しぶりですねぇ。部長としての初答弁だそうで大変やねぇ。」と切り出したとの記載があるが,誰が政府参考人として答弁に立つかは,答弁の直前に決まるものであり,それを質問者以外の議員が知ることは無いのであるから,事前にFが,初答弁の事実を知ることはできなかったこと,②Fは当日の午前中はゴルフ場にいたし,仮に国会中継を見たとしてもFがLの「初答弁」であることは知るよしもないことなどから,当該供述には合理性が無いと主張する。 Fの手帳には,2月25日欄に「予算集中/年金構造改革」の記載があり,Fは,当日,衆議院予算委員会が開かれることを認識していたものとみられる。そして,2月25日の予算委員会での質疑は,平成13年9月の厚労省の障害保健福祉部長の通知で,そしゃく機能障害の認定に関し,元は医師の診断書と歯科医師の意見書を出すこととされていたのを,歯科医師の意見書と診断書を求めるように変更された件で,当時の障害保健福祉部長の発言,t党 部長の通知で,そしゃく機能障害の認定に関し,元は医師の診断書と歯科医師の意見書を出すこととされていたのを,歯科医師の意見書と診断書を求めるように変更された件で,当時の障害保健福祉部長の発言,t党の国会議員とnとの関係などについて問題にされたもので,Lは,事前に質問通告を受け,平成13年当時の同部長に聞き取り調査の上で答弁をしたものであったこと,質問者がd党の議員であり,Fは当時d党の重職にあったことからすれば,FにおいてLが答弁することを予め知っていた可能- 66 -性がないとはいえない。 しかし,一般的には,質問者でもないFが,事前にLが初答弁であるかどうかまで知る可能性は低く,当該供述には合理性があるとはいえない面がある。また,Lの検察官調書でも,久しぶりに連絡を取ったはずのFがLの国会での答弁経験の有無までを知っていたというのも十分納得できるものとはいえない。「初答弁」との供述部分は信用性が高いものとはみられない。 d.被告人に対する指示内容についてLの検察官調書(甲19)には,被告人に対し,議員案件処理の重要性を告げた上で,公的証明書を発行する方向で処理するよう告げた旨の記載がある。 前記認定事実及び関係証拠上も,当時,障害保健福祉部において,個別の法案を成立させるための動きがなされていたとの事情は窺われない。また,Fから電話を受けたとされる時点で,2月25日の国会答弁が控えていた可能性はあるものの,同日以後も,Lが継続して同様の問題について答弁に立っていた等の事情はみられない。これらの事情に鑑みると,Lにおいて,Fの機嫌をとるため,公的証明書を発行する方向で処理をしなければならないと考える必然性があったとまではいえないことからすると,前記の記載内容は必ずしも合理性のあるものとはいえない。 以上のとおり,被告人に対 とるため,公的証明書を発行する方向で処理をしなければならないと考える必然性があったとまではいえないことからすると,前記の記載内容は必ずしも合理性のあるものとはいえない。 以上のとおり,被告人に対し,議員案件処理の重要性を告げた上で,公的証明書を発行する方向で処理するよう告げた旨の供述部分は,その内容に,合理性があるとはいえない面があることからすると,その点に関するLの検察官調書の供述には信用性に疑問が残る。 (ウ)他の供述証拠との符合性Lの検察官調書の供述(Fから「aの会」の件について連絡があり,- 67 -これを被告人に伝えたとの点)は,C,Nの公判供述,M,H,Nの検察官調書に符合するものである。 なお,ここでは,Cの公判供述の関係で問題となる点について検討する。 Lの検察官調書に記載されているFの発言内容は,Cが公的証明書の関係で厚労省を訪問するので,その際の対応,協力を要請するにとどまるものであり,また,被告人に対し,Cが訪問した際の対応をするように言い,それを被告人が了承したとの部分も,その限度では,「厚労省を訪問するので,その了解とサポートをお願いした。」というCの公判供述の依頼内容とも整合している。 また,Lの検察官調書では,Fから電話のあった時期についても,「2月25日の当日か,せいぜい1日か2日前後ころ」と幅のある供述をしており,前述したとおり,25日の後に,CがFに依頼をしたとは考えられないが,25日以前という部分に関しては,CとFの面談の予定変更があれば,これに符合するともみられる。 (エ)供述の自主性についてa.供述内容が他の関係者の供述が得られていない事実を内容とすることについて関係証拠によれば,Lの供述中,Fからの電話,被告人への指示については,Lが当初供述する時点において,これを直接肯定する a.供述内容が他の関係者の供述が得られていない事実を内容とすることについて関係証拠によれば,Lの供述中,Fからの電話,被告人への指示については,Lが当初供述する時点において,これを直接肯定するF,被告人の供述はなく,Lが初めて認めたものとみられる。 そこで,当時収集されていた他の関係証拠からLの供述を誘導するなどしたことがなかったかが問題となる。 b.検察官における誘導の可能性について弁護人は,Lの検察官調書について,検察官における誘導による作文の可能性を指摘する。 - 68 -確かに,Lに対する初めての取調べが行われた5月29日の時点において,前記のCの手帳,Jの名刺等の証拠が収集されていた上,「aの会」の案件がFの関係する案件であることや,その案件が被告人のところに降りてきたものであることなどを内容とするNの検察官調書,それにほぼ沿った内容のM,Hの検察官調書が作成され,Cの手帳の記載及びこれに関する供述,5月28日には,Lの勤務先,自宅に捜索が入っていたこと(これは,5月26日に,別件の虚偽公文書作成,同行使でBらが逮捕され,同人方に捜索が入り,5月27日に厚労省に捜索に入っていることとの関係からしても,同事実に関する捜索と窺われる。)に照らすと,Lを取り調べる以前の段階で,検察側は,Lがある程度本件に関係しているとの情報を持っていたとみられる。そうすると,日時につき2月25日を中心にして,検察官が,Lが関与したものと考えて取調べをすることは想定できる。 しかし,前述のとおり,Lは,公判廷において,Fから電話があったこと等については,自ら述べたものであることを認める旨の供述をしている。 したがって,検察官において,決めつけるような形での誘導がなされ,検察官が,調書を作文したとまでは認められない。 c.利害関係,検察官 いては,自ら述べたものであることを認める旨の供述をしている。 したがって,検察官において,決めつけるような形での誘導がなされ,検察官が,調書を作文したとまでは認められない。 c.利害関係,検察官への迎合の可能性についてLの検察官調書の供述は,L自身が,本件公的証明書の発行に関して一定の関与があったこと,また,有力国会議員であるF,そして,当時Lの部下であった被告人の関与があったことを認める供述であり,L自身が安易に記憶に反する供述をなすような内容のものではないとみることができる。 また,Lに対する取調べの初日である5月29日の時点で,供述がなされ,供述調書が作成されている。 - 69 -そのような状況下で,L自身が不正発行に関与したことまで認めるような内容とまではいえないとはいえ,全く記憶にないにもかかわらず,一定の関与を肯定する供述をなすとは一般には考えにくい。 このような事情は,Lの検察官調書の信用性を高める事情となりうる。 しかし,Lが,公判廷において,「取調べの初日である5月29日に,自分も逮捕されるかもしれないという危険性を感じた。」旨述べていることや,同日に,公務員であった当時に業者等から商品券などを受け取っていたことを内容とする調書が作成されており,「それが精神的な負担になっていたことは否定できない。」旨述べており,それ自体は不自然,不合理とはいえないことなどに照らすと,Lは,検察官に迎合して供述する可能性は想定できる。 ただし,事業者から,商品券などを受け取っていたことについても,L自身,公判廷において,そのようなことを尋ねられたことが「精神的な負担になったことは否定できませんが,それと,さっき言った記憶をよみがえさせる作業とは論理的に別の話ですから,そちらはそちらで,論理的に,自分が,という話なんで。」と述べて ねられたことが「精神的な負担になったことは否定できませんが,それと,さっき言った記憶をよみがえさせる作業とは論理的に別の話ですから,そちらはそちらで,論理的に,自分が,という話なんで。」と述べている。 この供述によれば,商品券受取りなどに関する点は,Lの前記供述に対して大きな影響を与えたとまではみられない。 (オ)小括Lの検察官調書のうち,Fとの具体的な会話内容(担当が被告人であること,Cに,ひとまず被告人を訪ねるように伝えるなどしたこと)や,被告人に対して公的証明書を発行する方向で処理するよう指示したとの点に関しては,内容は具体的で,Fあるいは被告人との1対1のやりとりで他の関係者の供述が得られていない事実を内容とするものであることなどを考慮しても,前記のとおり,客観的証拠に照らして符合し- 70 -ない点があり,その信用性については疑問が残る。 他方,Lの検察官調書の供述のうち,Fから電話で,Cが公的証明書の関係で厚労省を訪問するので,その際の対応,協力を要請され,それを被告人に伝え対応を指示したとの部分は,内容自体特に不自然な点はみられない上,前記のCの公判供述とも整合しており,検察官の強い誘導等があったともみられず供述したことが認められる。 もっとも,前記のLとFとの関係に関するL自身の認識,Lは,本件当時,障害保健福祉部長として多数の国会議員と会う機会があったとみられること,Fから電話があったとされる時期から,供述調書作成時点までは5年以上経過しており,記憶が減退していた可能性があること,取調べ時点において,Lは,CというFの元秘書が関与した案件であるとの認識はあったとみられることなどからすると,Lが,取調べ時点において,Fの電話に関して,思い込みをなす素地がなかったとはいえない。加えて,前記のとおり,電話に関する供 元秘書が関与した案件であるとの認識はあったとみられることなどからすると,Lが,取調べ時点において,Fの電話に関して,思い込みをなす素地がなかったとはいえない。加えて,前記のとおり,電話に関する供述に,客観的証拠に照らして符合しないとみられる点があることも踏まえると,Lが,自身がFから電話を受けたと思い込んだ可能性もないとはいえない。 なお,この点,検察官は,仮に最初の取調べ(5月29日)の時点で,国会議員が関わっている案件であるとして大きく報道されていたのであれば,「思い込み」や「作った記憶」に基づいて,加熱するマスコミ報道に油を注ぐような軽率な態度に出るはずがないと主張する。 検察官主張のように考えることもできる。 しかし,意図的な虚偽供述でなく,L自身も意識していない「思い込み」であったとするなら,マスコミに対する影響について配慮することなく供述をなすことも想定できるものであり,検察官主張のように断じることはできない。 以上からすると,Lの検察官調書のうち,Fからの電話の有無に関す- 71 -る部分は,それなりに高い信用性を肯定できるものの,直ちに確定的に事実を認定できるほどの信用性を認めることはできない。 - 72 -エDの検察官調書の信用性について(ア)客観的状況との整合性等a.「aの会」の実態前記認定事実のとおり,「aの会」に心身障害者団体としての実体がなかったことは明白であり,また,実質的に「aの会」を主導していたDはそれを認識していたと認められる。 このような状況から,公的証明書を取得する際に,Dら「aの会」において,公的証明書の取得の可能性が高まるように,「aの会」の会長に就任させていたCに依頼して,Fの一定の協力を得ようとすることも,自然な行動といえる。Dの検察官調書の供述のうち,少なくとも,Dが,Cに ,公的証明書の取得の可能性が高まるように,「aの会」の会長に就任させていたCに依頼して,Fの一定の協力を得ようとすることも,自然な行動といえる。Dの検察官調書の供述のうち,少なくとも,Dが,Cに対し,Fからの口添えを依頼するよう要請したとの部分や事後の報告を受けたこと自体に関するDの検察官調書の供述は,当時の「aの会」の状況と整合するものといえる。 b.Jの名刺の記載前述したとおり,Sが所持していたJの名刺の手書きの記載は,J,DとSが面談した際に,J又はDに告げられた内容を基にSが記載したものであると認められる。よって,DやJにおいて,Fから厚労省に何らかの働きかけがなされたとの認識があったと考えられる。 そして,本件で,Dにおいて,そのような認識を有する根拠となりうる事情は,Cへの依頼やその後の報告以外には窺われない。 したがって,Sが所持していたJの名刺の手書きの記載は,Cに対する依頼とCからの報告があったこと自体に関するDの検察官調書の供述の裏付けとなる。 c.小括以上のとおり,Dの検察官調書の供述のうち,Cに対する依頼とCからの報告があったこと自体については,信用性があるといえる。 - 73 -(イ)弁護人の主張について弁護人は,Dの検察官調書は,検察官の威迫や利益誘導によるものであるから信用性がない旨主張する。 当裁判所の平成21年5月26日付け証拠決定で述べたとおり,Dに対する取調べにおいて,威迫や利益誘導があった疑いは残るものであるが,他方,D自身,公判で,検察官調書の記載の方が正しいと述べていることにも鑑みると,少なくとも,客観的裏付けも認められる,前記供述部分に関する信用性判断には大きな影響はないものとみられる。 (ウ)小括以上より,Dの供述は,Cに対する依頼とCからの報告があったこと以外の事実やそれ なくとも,客観的裏付けも認められる,前記供述部分に関する信用性判断には大きな影響はないものとみられる。 (ウ)小括以上より,Dの供述は,Cに対する依頼とCからの報告があったこと以外の事実やそれらの具体的な時期,先後関係については,慎重な考慮を要するものの,その事実の有無自体に関する供述については,信用性を肯定できる事情があるといえる。 オM及びNの検察官調書並びにNの公判供述の信用性について被告人からCが来庁した場合の対応を指示されたとのMの検察官調書,Mから,「aの会」の関係者が来ると告げられたとするNの公判供述及び同人の検察官調書の内容は,前述したとおり,被告人自身,記憶にはないもののその可能性自体は否定しておらず,Mも,検察官調書の内容について,「話としてはそういうこともあり得る。」と述べていることにも鑑みると,その範囲では,その内容自体に,特段不自然な点はないといえる。 また,Nは,前記のとおり,公判において,被告人に不利な虚偽供述をなすべき事情はみられない。そして,Nは,公判で,国会議員関係からの電話の場合は,Mに直接話がくることはないと述べており,Mから降りてきた案件であることを認めること自体,被告人にとって不利な内容であるといえ,その限度では,意図的な虚偽供述の可能性はないといえる。 また,当該内容は,前述した限度で,Lの検察官調書の内容の前段部分- 74 -とも整合しており,相互に信用性を補完し合う関係にあるといえる。 以上からすると,前記の限度では,信用性を肯定できるようにもみられる。 しかし,他方,Nの検察官調書,公判供述,Mの検察官調書の内容のうち,Cの訪問順序に関する供述については,前述したとおり,Cの手帳の記載,Cの名刺の保管状況といった客観的事実と齟齬する面があり,Nの記憶が正確であるか疑いが残る。 供述,Mの検察官調書の内容のうち,Cの訪問順序に関する供述については,前述したとおり,Cの手帳の記載,Cの名刺の保管状況といった客観的事実と齟齬する面があり,Nの記憶が正確であるか疑いが残る。 それらの客観的証拠から,CとNがアポイントメントを取った可能性も高いとみられ,Nが「aの会」の案件を知った経緯についても関連する点であることからすると,その経緯に関するNの記憶の正確性に,疑問を差し挟む余地がある。同様に,Nに「aの会」の案件の話を降ろしたとのMの検察官調書に関しても,疑問が残る。 したがって,前記の限度でも,Nの検察官調書,公判供述,Mの検察官調書から,完全に信をおくことができるとまではいえない。 なお,Mの検察官調書(6月17日付け。甲21)では,被告人がMに述べたことは,次のような内容となっている。 1)「d党のF先生の事務所から問い合わせがあって,」2)「今度F先生の秘書のCさんという人が障害者団体の新聞を郵便料金が安くなる低料第三種郵便を使って発送したいみたいなの。」3)「今度うちにCさんという秘書が来るらしいから担当者を紹介してあげてください。」1)によれば,連絡があったのは,F事務所からとなっており,F本人からとは明言されていない。また,連絡があったのは「問い合わせ」となっており,具体的な要請という表現とはなっていない。 3)によれば,被告人がMに指示したのは,Cに担当者を紹介することとなっており,公的証明書発行に向けて積極的に対応するようなものとは- 75 -なっていない。 この意味で,Lの検察官調書中,Lが被告人に対し,「公的証明書を発行してあげる方向で,うまく処理してくれ。難しい案件だと思うけど,宜しく頼むわ。」などと言ったという部分(Lの検察官調書の後半部分)と必ずしも符合するものではない。 また,Nの し,「公的証明書を発行してあげる方向で,うまく処理してくれ。難しい案件だと思うけど,宜しく頼むわ。」などと言ったという部分(Lの検察官調書の後半部分)と必ずしも符合するものではない。 また,Nの検察官調書,公判供述の内容についてみても,前者が,「Mから,『Cさんという秘書が,うちの役所に来るらしいから,公的証明書の発行に関しての詳しい事務手続きなんかを説明してくれないか。』などと言われた。」,後者が,「Mから,Cが,障害者団体の証明書の発行をお願いにくるというようなことを言われていた。」というものであり,いずれも,公的証明書発行に向けて積極的に対応するものとはなっておらず,積極的対応を示唆するLの検察官調書の後半部分の記載と必ずしも符合するものではない。 カFの公判供述の信用性について(ア)客観的証拠との関係Fの供述のうち,2月25日の午後1時ころにはゴルフをしており,その日時にCと面談した事実はないとの部分については,証拠によって裏付けられているといえる。 そして,前述したとおり,予定変更によりそれ以外の日時にCと面談した可能性については,客観的証拠によって,当然に否定されるとまではいえないが,Cの手帳には,予定変更の事実の記載はなく,疑いを入れる余地があると解される。 (イ)記憶減退の可能性検察官は,日常的に,多数の陳情案件を扱っていたFが,「aの会」の案件についても通常の陳情案件として処理し,記憶が希薄化している可能性があると主張する。 - 76 -有力な国会議員であったFは,当時,多数の陳情案件を扱っていたものと認められる。そして,Cの公判供述及びLの検察官調書の内容を前提にしても,FがLに電話で告げた内容は,不正発行を要求するものではなく,Fが,特に通常の陳情案件と異なる取り扱いをしたものとはみられず,Fにと る。そして,Cの公判供述及びLの検察官調書の内容を前提にしても,FがLに電話で告げた内容は,不正発行を要求するものではなく,Fが,特に通常の陳情案件と異なる取り扱いをしたものとはみられず,Fにとって,本件が特に印象に残るような出来事であったとは認められない。 したがって,証言時点において,Cとの面談やLに対し電話をしたとされる時期から,約6年も経過していたことに鑑みると,Fが,実体験したにもかかわらず,そのような事実の有無に関して,記憶がないということも考えられる。 (ウ)記憶に基づいて率直に供述することが困難であるとの主張についてまた,検察官は,単なる陳情案件として口添えを行ったに過ぎないものであったとしても,問題視されたり批判を浴びたりすることは明らかであり,仮に何らかの心当たりがあったとしても,Fは,自己の記憶についてあるがままに率直に供述することは困難であったと主張する。 「aの会」から資料等の提出が無く,正式な決裁がなされないまま公的証明書が作成されたことが客観的事実として存在していることからすると,検察官の主張するとおり,単なる陳情案件としての対応がなされたに過ぎないとしても,そのこと自体が問題視される可能性はあり,仮に何らかの心当たりがあった場合においても,記憶に基づいて率直に供述することや,その事実の有無の可能性について肯定する供述をすることが困難であるとの状況がないとはいえない。 そのような状況は,Fは,公判廷では,Cと一定の交流があることや,平成18年に「aの会」の話をCとしたことがあることを認めているにも関わらず,以前に,マスコミからの取材に対しては,それらの事実を- 77 -否定する内容の供述をしていたと窺われることにも現れているとみることもできるが,他方,Fは,検察官の取調べにおいてCとの交流を否定 以前に,マスコミからの取材に対しては,それらの事実を- 77 -否定する内容の供述をしていたと窺われることにも現れているとみることもできるが,他方,Fは,検察官の取調べにおいてCとの交流を否定する供述をしたとはみられず,また,マスコミ報道に対し激昂していたことが窺われるのであり,上記の点を過大視することはできない。 (エ)平成18年11月のCとのやりとりに関する供述との関係Fは,「Cから『aの会』のことを初めて聞いたのは,平成18年11月6日のことである。同日,私の仮選挙事務所にCが新聞を持ってきて,特別の郵便制度で非常に安く送れるので,選挙運動に利用したらどうかという旨のことを言われたが断った。その際,団体名は『aの会』と言っていた。その当時,『a’の会』,『b'』という名前は聞いたことがない。」旨供述している。この供述は,Fが,それ以前である平成16年2月下旬ころには,Cから「aの会」のことを聞いていなかったことを裏付けることになる。 この点について検察官は,平成18年11月6日時点においては,団体名は「aの会」から「a’の会」に,刊行物名を「b」から「b'」に変更する手続が取られていたのであって,それぞれ変更後の名称について聞き覚えがないというのは不自然であると主張する。 しかし,前記認定事実のとおり,平成18年11月2日,「b」の定期刊行物提出局をc郵便局からv郵便局に変更する旨の,「aの会」会長C名義の変更届が,c郵便局に提出されており,その届けが提出された後,少なくとも一定期間は,団体名を「aの会」として,刊行物「b」を送付することを団体として予定していたと考えられることからすると,平成18年11月6日にCから「aの会」の名称を聞き,特に変更後の名称について聞いたことがないというFの供述は不自然とはいえない。 他方 することを団体として予定していたと考えられることからすると,平成18年11月6日にCから「aの会」の名称を聞き,特に変更後の名称について聞いたことがないというFの供述は不自然とはいえない。 他方,弁護人は,この点に関連して,Fの証人尋問において,検察官- 78 -が,名称変更の手続後も,「aの会」において変更前の名称を使用していたとの前提事実についての認識を誤った尋問がなされたにもかかわらず,Fは,それにも動揺することがなく,供述を維持していることから,Fの公判供述の信用性は高いと主張する。 弁護人主張のとおり,平成18年11月に,Cが,「b」を持参し,選挙への利用を提案したとの供述部分は,信用性が高いとみられる。 (オ)小括以上からすると,Fの公判供述は,2月25日にCと面談していないという部分は,客観的裏付けがあり,信用性は高いものである。また,他の日時における可能性については,記憶減退の可能性等も想定はできるものの,客観証拠上は,Fの公判供述が虚偽と断じうるような事情はみられない。 キJの公判供述についてJは,公判廷において,CとともにFと面談し,口添えを依頼したとの事実を否定する旨の供述をなしている。 もっとも,前記のとおり,Fとの面談時期について,当初の予定が急きょ変更された可能性があることからすると,Jとともに面談がなされなかった可能性もあるのであり,Jが否定する供述をしていることが,CとFが面談し,口添えを依頼したとの事実を否定する意味は必ずしも大きいとはいえない。 ク総合的検討以上の検討を前提に,場面①に関する供述の信用性について,総合的に検討する。 Cの公判供述中,Dの要請を受けて,Fに口利きを依頼するためにF事務所に2月25日のアポイントメントを取ったことは,信用性が高いものとみられるが,実際に2月2 の信用性について,総合的に検討する。 Cの公判供述中,Dの要請を受けて,Fに口利きを依頼するためにF事務所に2月25日のアポイントメントを取ったことは,信用性が高いものとみられるが,実際に2月25日にFと面談した事実は,客観的証拠に反- 79 -し,信用できない。他方,客観証拠からも,2月25日以前に,Cが,Fと面談した可能性は完全には否定されないものの,これに疑いを生じさせる点もあり,結局,単体で,2月25日以前に面談したとの事実は認定できるものではない。 他方,Cの公判供述のFへの口利き依頼は,Fからの電話があったとのLの検察官調書と符合しており,両供述の信用性の増大につながるといえる。 Lの検察官調書中,Fとの関係に関する供述部分は信用性が認められる。Fから電話で,Cが公的証明書の関係で厚労省を訪問するので,その際の対応,協力を要請され,それを被告人に伝え,対応を指示したとの供述部分についても,信用性はそれなりに高いものといえるが,それと関連してなされた供述に客観的事実と反する点があることなどからすると,L供述単体で直ちに確定的に事実を認定できるほどのものとまではいえない。なお,Fとの具体的な会話内容(担当が被告人であること,ひとまず被告人を訪ねるように伝えるなどしたこと)や,被告人に対して,公的証明書を発行する方向で処理するよう指示したとの点に関しては,信用性が高いものとはいえない。 M,Nの検察官調書,Nの公判供述のうち,被告人からCが来庁した場合の対応を指示されたこと,Mから,「aの会」の関係者が来ると告げられたことに関する供述部分は,信用性を肯定する方向に働く事情もあり,その限度では,Lの検察官調書と信用性を補完し合うものであるともみられるが,他方で,信用性に疑いを入れる事情もあり,その限度でも完全に信をおけるも 供述部分は,信用性を肯定する方向に働く事情もあり,その限度では,Lの検察官調書と信用性を補完し合うものであるともみられるが,他方で,信用性に疑いを入れる事情もあり,その限度でも完全に信をおけるものではない。 それ以上の内容については,必ずしもLの検察官調書と符合するものではなく,M,Nの検察官調書,Nの公判供述がLの検察官調書の信用性を補完する度合いにも限界がある。 - 80 -ところで,本件公的証明書に関して,申請事実,発番号もなく,不正に作成,使用されていたと,捜査機関が認識していれば,Cの手帳の2月25日の欄の「13:00F─(又は「一」)kJ氏」,「16:00厚労省援局障保福部企課社会参加推進室N係長」という同じ日にちに並んだ記載に捜査機関が注目することは自然であるといえる。 そして,前記認定事実によれば,本件の中心的な人物の中で最初に逮捕(4月16日。別件の郵便法違反の被疑事実。)され,取調べを受けたのはCであるところ,C逮捕の時点で,Cの手帳の押収,厚労省への問い合わせがなされており,捜査機関において,前記記載と本件公的証明書が不正に作成,使用されていたことを認識していたことが認められる。 Fの名前を出したりして厚労省へ働きかけた旨や,Fへ口利き依頼をした旨が録取されたCの検察官調書,DからCに対しFへの口利き依頼を要請した旨が録取されたDの検察官調書,FからLへの電話の事実等が録取されたLの検察官調書,「aの会」の案件がLから,被告人,M,Nへと下ろされたことなどが録取されたM,Nの検察官調書といった場面①の検察官主張を根拠づける検察官調書は,全て,捜査機関が前記認識を有した後に供述,作成されたものである。 その意味で,Cの手帳の2月25日の欄の「13:00F─(又は「一」)kJ氏」の記載は,本件捜査の出発点の一つ づける検察官調書は,全て,捜査機関が前記認識を有した後に供述,作成されたものである。 その意味で,Cの手帳の2月25日の欄の「13:00F─(又は「一」)kJ氏」の記載は,本件捜査の出発点の一つとなっているとみられる。 しかし,前述したとおり,当該記載の日時にCとFが面談した可能性はゴルフ場からの回答書等により否定されており,Cの手帳の記載は,Cが,Fと面談した事実を認定せしめる証拠とはならないものである。 このような事情は,場面①の検察官主張を根拠づける検察官調書全体の信用性に直接的あるいは間接的に影響を生ぜしめる事情となる。 他方,Fの供述については,2月25日にCとの面談がないという部分については,信用性が肯定でき,それ以外の日時にもCからの依頼がなか- 81 -ったとの供述部分については,直ちに信用性が排斥されるような事情もみられない。 以上を総合すると,CのFに対する口利き依頼,FのLに対する電話による要請,それに応じたLの被告人に対する指示,それを受けた被告人のMに対する指示については,可能性は認められるものの,他方,前二者を否定するFの供述を排斥するまでには至らず,場面①に関する供述の検討だけで,それらの事実が認定できるとはいえないと解される。 (3) 結論 以上の場面①に限定した証拠の検討の範囲では,次のとおり,認定できる。 ア証拠上認められる事実Dは,2月中旬(または,中旬から下旬ころ),公的証明書発行の関係で,Cに対し,Fに厚労省への口添えを依頼するよう述べ,担当部署が企画課である旨等を伝えた。Cは,これを了承した。 Cは,2月19日にJと打ち合わせをした。また,Cは,同日ころ,2月25日午後1時にJとともに議員会館のFの事務所を訪ねFに面談するというアポイントメントをF事務所と取った。その段階では,Fは,同日午 ,2月19日にJと打ち合わせをした。また,Cは,同日ころ,2月25日午後1時にJとともに議員会館のFの事務所を訪ねFに面談するというアポイントメントをF事務所と取った。その段階では,Fは,同日午後3時以前は特段の日程は入ってなかった。 Fは,その後,千葉のゴルフ場にゴルフに行く予定が入り,Fは,Cと2月25日午後1時に会うことは困難となった。 2月25日午後4時ころ,Cは,厚労省を訪れた。 Cは,厚労省で,はじめに,Nの下を訪ね,その後,被告人に会った(Cとあいさつしたことが,被告人の記憶に残らないことは不自然ではない。)。 Lは,阪神淡路大震災の対策の際,Fを知り,何度かFと会ったことがあり,Fの事務所を訪れたこともあった。 イ単体では,証拠上認定するに至らない事実- 82 -2月25日午後1時に,CがFを訪れる予定は,別期日に変更され,Cは,Fに会い,厚労省への口添えを依頼した。Fは,これに応じた。 Fは,2月26日より前の2月下旬,Lに電話した。Lは,被告人に,Fからの電話と伝え,Cが厚労省へ来ること,その対応をするように言った。その際,Lが被告人に対し,「Fのご機嫌を損ねない形で,公的証明書を発行してあげる方向で,うまく処理してくれ。難しい案件だと思うけど,宜しく頼む。」などと言い,それに対し,被告人は,「心得ています。 うまく処理するよう努めます。」と答えた。 被告人は,Mにこれを伝え,Cが来たら担当者を紹介するように述べた。 Cが厚労省を訪問する前に,Nは,Mから,F事務所のCが,障害者団体の証明書の発行をお願いにくるので事務手続等を説明するようになどと言われていた。 - 83 - 場面②について(Cの厚労省訪問から5月中旬までの「aの会」の案件に対する厚労省内での対応状況)(1)当事者の主張等ア検察官の主張等( 説明するようになどと言われていた。 - 83 - 場面②について(Cの厚労省訪問から5月中旬までの「aの会」の案件に対する厚労省内での対応状況)(1)当事者の主張等ア検察官の主張等(ア)Cが厚労省から帰った後,H及びNが,企画課長席で,被告人に対し,「aの会」について報告をした際,被告人は,H及びNに対し,「ちょっと大変な案件だけど,よろしくお願いします。」などと指示した(以下,「大変な案件発言」ともいう。)。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,H(甲22),N(甲14)の検察官調書がある。 (イ)その後,Nは,「aの会」が障害者団体なのか怪しいと考え,Hと相談の上,「aの会」に対し,j協会を訪れるよう指示した(以下,「j協会紹介」ともいう。)。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Nの公判供述,Hの検察官調書(甲22)がある。 (ウ)D及びJは,Cの厚労省への訪問後の2月下旬ころ,j協会に電話を掛け,さらに,その後,j協会の事務所を訪ね,事務局長のSと面談をした(前記認定事実10(2))。 (エ)Nは,その後,Sから,「aの会」が議員の名前などを出している怪しい団体である旨告げられ,それをK3やHに報告した。そうしたところ,Nは,両名から,「今度きちんとした書類を出させろ。」というようなことを言われた(以下,「書類提出指示」ともいう。)。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Nの公判供述,H(甲22),N(甲13)の検察官調書がある。 (オ)被告人は,3月中旬ころ,Hに対し,「aの会」の案件の進捗状況を確認した。Hは,3月下旬ころ,Nに対し,「aの会」の案件の進捗- 84 -状況を尋ね,Nから,書類等が出ておらず,進捗していない旨告げられた(以下,「3月中旬から下旬ころのやりとり の進捗状況を確認した。Hは,3月下旬ころ,Nに対し,「aの会」の案件の進捗- 84 -状況を尋ね,Nから,書類等が出ておらず,進捗していない旨告げられた(以下,「3月中旬から下旬ころのやりとり」ともいう。)。Hは,その内容を,被告人に報告した上,Nに対し,しっかり後任に引き継ぐよう指示した(以下,「引継指示」ともいう。)。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Hの検察官調書(甲22),Nの公判供述及び検察官調書(甲14)がある。 (カ)Nは,4月1日付けで異動する際,Bに対する社会参加係長の業務の引継ぎの中で,口頭で,「aの会」が公的証明書の発行を依頼してきていること,その案件はFという国会議員がらみの案件であること,「aの会」の実態がよく分からないので慎重に対応する必要があること,「aの会」の公的証明書の発行がまず手を付ける業務であることなどを告げ,「aの会」の案件についても引き継ぎをした(以下,「『aの会』の引継ぎ」ともいう。)。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Nの公判供述,検察官調書(甲13,14)がある。 (キ)Hは,4月上旬ころ,Bに対し,「aの会」に対する公的証明書の発行手続を進めるように指示した。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Hの検察官調書(甲22)がある。 (ク)Dは,4月中旬ころから同月下旬ころまでの間,Bに対し,数回にわたって電話で公的証明書の発行を要請し,面談したい旨申し入れ,同月下旬ころ,厚労省で待ち合わせをした後,厚労省1階の喫茶室で同人と面談した。その際,Bは,Dから,できる限り早く公的証明書を発行して欲しいと催促され,「分かりました。」と返答するとともに,「私は,キャリアじゃないですから,上からの指示を受けて,いろいろ面倒なこともやらされるんですよねぇ から,できる限り早く公的証明書を発行して欲しいと催促され,「分かりました。」と返答するとともに,「私は,キャリアじゃないですから,上からの指示を受けて,いろいろ面倒なこともやらされるんですよねぇ。」などと愚痴をこぼした。 - 85 -この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Dの検察官調書(甲49)及び公判供述がある。 (ケ)Bは,5月中旬ころ,Hから「aの会」の案件の進捗状況を確認された際,「aの会」から,公的証明書の発行申請はおろか,規約や名簿等の審査資料の提出すらされておらず,まともに資料を出せないような実体の疑わしい団体であり,形だけであっても決裁に上げることができない旨答えた。 そこで,Hは,被告人に対し,「aの会」の案件について,公的証明書の発行申請の書類や規約,名簿等の審査資料がきちんと提出されておらず,決裁に上げられるような状態でない旨報告したところ,これを受けた被告人は,Hに対し,「なんとかならないんですか。もう少し調整を進めてください。」などと言った(以下,「調整指示」ともいう。)。 その後,Hは,Bに対し,「何とか書類を整えて手続を進めてくれるか。」などと指示した。 この点の検察官主張を裏付ける供述証拠としては,Hの検察官調書(甲22)がある。 イ弁護人の主張等これに対し,弁護人は,被告人は,HやNに前記のようなことを述べたことはない旨主張し,被告人は,捜査段階から一貫して同旨の供述をする。 そして,Nは,公判では,「Cに対する説明が終わった後,上司などに報告したか否かについては覚えていない。」と供述し,M,Hは,公判で,「aの会」の案件については記憶にない旨供述している。さらに,Bは,公判で,「Nを除く他の厚労省関係者に『aの会』の案件について相談をしたことはないし,誰かから聞かれたことはなく,自分と ,公判で,「aの会」の案件については記憶にない旨供述している。さらに,Bは,公判で,「Nを除く他の厚労省関係者に『aの会』の案件について相談をしたことはないし,誰かから聞かれたことはなく,自分とN以外誰も知らないと思っていた。」旨供述している。 これらの供述状況を踏まえ,弁護人は,検察官の主張するいずれの事実- 86 -についても認定できない旨主張している。 ウそこで,以上の争点について検討する。 なお,前記公的証明書の発行申請の関係で,j協会の証明書交付願が,いつ「aの会」側からBに交付されたのかについても争いがある(4月中旬ころか,6月中旬以降か)ので,この点についても検討する。 (2)検討場面②に関しては,関係する人物は,被告人,N,H,M,K3,B,Dであるところ,検察官主張を裏付ける主な証拠は,Hの検察官調書,Nの検察官調書,公判供述(一部),Dの検察官調書,公判供述である。これに対し,被告人の捜査,公判供述,H,N(一部),M,Bの公判供述は,いずれも検察官主張に反するものである。 そこで,以下,検察官主張を裏付けるNの公判供述(一部),N,Hの検察官調書,Dの検察官調書,公判供述の信用性を中心に,各場面ごとに各供述について検討する。 アCの訪問直後の被告人の大変な案件発言についてN,Hの検察官調書は,これを認め,N,H,被告人の公判供述はこれを否定する。 そこで,この点について検討する。 (ア)N,Hの検察官調書では,当初,Cは,被告人と話をしていて,その後,被告人から,Cを紹介され,その後,N,K3,Hが,Cに手続について説明し,その後,被告人から,大変な案件発言があったというものであるが,その流れ自体,前記認定のとおり,Cの手帳,名刺の保管状況等に符合しない。 (イ)N,Hの検察官調書は,被告人の大変な案 ついて説明し,その後,被告人から,大変な案件発言があったというものであるが,その流れ自体,前記認定のとおり,Cの手帳,名刺の保管状況等に符合しない。 (イ)N,Hの検察官調書は,被告人の大変な案件発言後,HとNが相談の上,j協会の審査を受けるように「aの会」側に伝えたという流れになっているが,この点は,厚労省訪問時にNから言われたとするCの公- 87 -判供述,そのCから報告を受けたとするDの供述と食い違っている。そこで,この点について検討する。 Nは,公判で,j協会に行って相談するように言ったのは,(当初は)「おそらくDに対してと思う。」と供述しているが,2月25日にCが厚労省を訪れ,2月26日には,Jがj協会に電話していることからすると,2月25日のCの厚労省訪問後,翌2月26日までに,Nが,Dに連絡してj協会のことを伝えるというのは想定しがたい。 他方,Nは,「Dではなく,Cだったという可能性はないか。」との質問に対しては,「そういわれれば,そうかもしれないというぐらいの,ちょっとそこは記憶があいまいです。」とも答えており,記憶自体があいまいであることも自認している。 以上からすると,2月25日に,Cが,厚労省でNから,j協会の案内を受けたと認められ,Nは,C来訪当日に,被告人の大変な案件発言よりも前に,Cにj協会を紹介したと認められる。 被告人の大変な案件発言を踏まえて,j協会を「aの会」側に伝えたとするNの公判供述,検察官調書は,この点に反する。 (ウ)Nの検察官調書には,「被告人の大変な案件発言を聞いて,私は,被告人は,議員案件であることから『aの会』に証明書を発行せざるを得ないという結論が決まっていることを意味する,それだからこそ『よろしくお願いします。』と指示してきたものに他ならないと思った。その後,私が,j協会 件であることから『aの会』に証明書を発行せざるを得ないという結論が決まっていることを意味する,それだからこそ『よろしくお願いします。』と指示してきたものに他ならないと思った。その後,私が,j協会のSに連絡し,『aの会』との折衝を依頼するなどした。私としては,『aの会』については,その団体の実態がどのようなものであれ,議員案件として公的証明を発行せざるを得ない案件だと認識していたので,j協会が前さばきをし,j協会名義の証明書交付願を厚労省に出してくれれば,少しでも書類の形が整うだろうと考えた。」との記載があり,Hの検察官調書もほぼ同旨の記載となっている。 - 88 -しかし,被告人からの大変な案件発言によって,H,Nら「aの会」の案件の担当者の間で,当該案件は最終的には公的証明書を発行せざるを得ない「議員案件」であると認識が共有されたとすれば,団体の実態が分からないうえ,国会議員から要請があったに過ぎない状態で,厚労省の所管団体ではなく,真に障害者団体を支援しようとする立場から郵政公社との間でも協定を結んでいる団体であるj協会を訪問させ,そこの審査を受けさせるというのは,外部に上記のような不透明な案件の存在について疑念を抱かせることになる可能性があるものであるから,上記のような案件であることを認識している者がとる行動としては,不自然とみることができる。 (エ)Nは,公判で,H,M,Lら,他の厚労省関係者と異なり,捜査段階で述べたことと同旨の供述もなしており,被告人側の主張と反する点も供述しているが,大変な案件発言の点は否定している。 (オ)以上の諸点に照らすと,大変な案件発言に関するN,Hの検察官調書の内容は,疑いを否定できないものである。 イj協会紹介の状況について(ア)「aの会」は,1通8円の低料第三種郵便物を利用するた )以上の諸点に照らすと,大変な案件発言に関するN,Hの検察官調書の内容は,疑いを否定できないものである。 イj協会紹介の状況について(ア)「aの会」は,1通8円の低料第三種郵便物を利用するために申請を行ったのであり,月3回発行等の要件を満たすとして承認申請が行われ,実際にもそのように「b」を発行することを予定していたので,結果としてみれば,「aの会」がj協会に加盟する必要はなかったといえる。j協会に行くように指示したのは,Nが「aの会」の活動を怪しく思ったことによるものとみることもできる。 (イ)しかし,前記のとおり,Cが,厚労省に赴き,初めにあいさつをしたのは,Nであるとみられる。 また,前記のとおり,2月25日に,Cが,厚労省で,Nから,j協会の案内を受けたと認められ,Nのこの点に関する公判供述はこれに反- 89 -している上,これに関連して,自らの記憶自体があいまいであることも自認している。 Nは,公判廷において,自身がCに対し,公的証明書の発行手続や審査に必要な書類,資料等についての説明をした際に,Cは,活動内容についてもあいまいな説明をしていた旨供述しているところ,Cは名目上の会長であり,「b」の第三種郵便物の承認申請等にも関与していないこと,Cは第三種郵便等を利用したことは無く,少なくとも厚労省訪問時点で,Dらから第三種郵便物又は1通8円の心身障害者用低料第三種郵便物の要件や「b」の発行予定状況等の事情も聞いていたとはみられないことからすると,Cがあいまいな説明をしていたとするNの供述は信用できる。 そうすると,Nは,「b」が,j協会に加盟しなくとも,1通8円の低料第三種郵便物の要件を満たす事情(発行頻度等)を聞いていなかった可能性がある。 また,仮に,Nが,月3回発行等の心身障害者用低料第三種郵便で1通8円 「b」が,j協会に加盟しなくとも,1通8円の低料第三種郵便物の要件を満たす事情(発行頻度等)を聞いていなかった可能性がある。 また,仮に,Nが,月3回発行等の心身障害者用低料第三種郵便で1通8円となる要件を満たすような事情を聞いていたとしても,Cは,第三種郵便物の申請書等の資料も持っていなかったのであるから,Nは,その述べることが正しいかどうかも直ちに判断できなかったものとみられる。Nは,在任中,平成15年のiに対する案件しか公的証明書発行事務を担当したことがなく,その際,同会は,j協会に加盟した上で厚労省への公的証明書の発行を求めてきており,その経験から,Nが,「aの会」がj協会に加盟する必要性についての確証まではないものの,「aの会」及び「b」に相応の要件が備わっているのかどうかを判断してもらうため,まずj協会の審査を受けるように「aの会」に対して指示したとしても不自然な行動とはいえない。したがって,Nがj協会を訪れるように言ったことを,「aの会」に実態があるのか疑わしい- 90 -が,Fからの口添えがあったことから,先延ばしにするためなどの行動と認めるには疑いが残る。 (ウ)以上によれば,Nが,Cに対して,j協会を紹介したのは,団体が怪しいと考えた側面があったとしても,1通8円の心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件充足の観点からの意味も併有していた疑いが残る。 しかし,Nの公判供述では,Cが,厚労省から帰った後に,j協会の話を「aの会」側になしたとなっているが,この点は信用できず,Nは,Cの訪問当日,Cに,j協会の紹介をしたものと認定できる。 なお,Nの検察官調書には,j協会に行くように指示したことについて,「Fから口添えを受けていたような団体で,本当に心身障害者団体としての実体があるのか疑わしく感じられたが,キャリア のと認定できる。 なお,Nの検察官調書には,j協会に行くように指示したことについて,「Fから口添えを受けていたような団体で,本当に心身障害者団体としての実体があるのか疑わしく感じられたが,キャリア官僚でもない私が,無碍に扱い,発行しないという対応を取るわけにもいかず,先延ばしにしようとした。」旨の記載(甲13)や,「私は,『aの会』については,団体の実態がどのようなものであれ,議員案件として公的証明を発行せざるを得ない案件だと認識していたので,j協会が前さばきをし,j協会名義の交付願を厚労省に出してくれれば,少しでも書類の形が整うだろうと考えた。」旨の記載(甲14)がある点は,前記事実に照らすと,更に,強い疑いが残るものである。 ウHからNへの書類提出指示,3月中旬から下旬ころのやりとりについてNの公判供述,検察官調書,Hの検察官調書はこれを認め,Hの公判供述はこれを否定し,被告人も捜査段階からこれを否定する。 Nは,前記のとおり,公判において,被告人に不利な虚偽供述をなすべき事情はみられず,Nの公判供述中,被告人に不利な部分は,Nは,自己の記憶に従って供述しているものとみられる。 前記認定事実のとおり,Nは,Sと3月下旬に電話で連絡を取り,Sは,- 91 -「aの会」の活動に疑いを持っていると述べたことに照らすと,NがHやK3にそのことを話したというのは合理性がある。そして,これに対し,Hらが,「今後,きちんとした書類を出させろ。」というようなことを述べるというのも合理性があるとみることができる。 また,転勤が予定されているNに,上司のHから,後任者に引き継ぐよう言ったというのも,不自然,不合理ではない。 しかし,他方,Dら「aの会」側は,Cの厚労省訪問直後からj協会と接触をしており,j協会へ加盟しようとしていたところ,j協会から から,後任者に引き継ぐよう言ったというのも,不自然,不合理ではない。 しかし,他方,Dら「aの会」側は,Cの厚労省訪問直後からj協会と接触をしており,j協会へ加盟しようとしていたところ,j協会から加盟希望者に渡していたj協会加盟のしおりには,「j協会に加盟申込書や資料(会則,会員名簿,発行された刊行物など)を提出し,j協会が検討し,加盟を認めた場合,j協会から団体に証明書交付願を出し,団体は,この証明書交付願とj協会に提出した資料と同種のものを行政当局に提出して,公的証明書の交付を申請する。」との記載がある。 これによれば,厚労省など行政当局には,j協会からの証明書交付願が出された後に,必要資料を提出することになり,証明書交付願が出されていない段階では,団体の資料を行政当局に提出することは予定されていないことになる。 「aの会」側は,Nに指示され,j協会に赴き,j協会加盟手続を取ろうとしていたのであるから,j協会の上記手続に従って,手続を取ろうとしていたものとみられる。 これを前提にすると,「aの会」側は,j協会承認を得て,証明書交付願の交付を受けてから,これと資料を厚労省に提出することを予定していたとみることができる。 前記認定事実の4月19日付けc郵便局あての「aの会」の書面も,これに符合するものである。 以上によれば,3月下旬に,Hが被告人から「aの会」の進捗状況を確- 92 -認され,Hが,Nに,「aの会」の進捗状況を尋ね,Nが「aの会」から書類等が出ておらず,進捗していないと述べた点は,合理性があるか疑問を否定できない。 なお,Nが,本件以前に経験したiの件では,団体側は,当初から,規約,名簿,刊行物などを提出していたが,これは,団体側は,j協会に前もって加盟していたのに,これをNに伝えずに,公的証明書発行の申請をしてき が,本件以前に経験したiの件では,団体側は,当初から,規約,名簿,刊行物などを提出していたが,これは,団体側は,j協会に前もって加盟していたのに,これをNに伝えずに,公的証明書発行の申請をしてきたという状況にあったものであり,本件のように,厚労省側が,団体に,j協会を紹介したような事例とは異なるものといえる。 Nが,自らj協会を「aの会」に紹介したのに,その加盟承認がなされ,証明書交付願が交付される前に,Nが資料の提出を求めたり,これが提出されないことに不審を持つという点には疑問が残る。 エNからBへの引継ぎについてNの公判供述,検察官調書はこれを認め,Bの公判供述はこれを否定する。 前述したとおり,Nの供述中,被告人に不利な部分は,Nは,自己の記憶に従って供述しているものとみられる。そして,「aの会」の案件をBに引き継いだとの内容は,被告人に不利なものであるといえる上,Nは,捜査段階の当初から,そのような内容を供述している。 もっとも,Nは,平成21年5月27日の取調べにおいて,Bへの引継文書の中に,第三種郵便の件として,「aの会」の案件があることを記載したと供述し,検察官調書にもその旨の記載がなされている(甲14)が,後日,Nは,自宅に,当時の引継書があるのを発見し,これを確認したところ,その記載はなかったことが判明したもので,Nの記憶にも誤りがあったと認められる。 しかし,同検察官調書にも,引継書とは別に,口頭でも「aの会」の件をBに伝えたとの記載があること,「aの会」の件をBに引き継ぐこと自- 93 -体は不自然ではないことに照らすと,少なくとも,口頭で,概括的に,「aの会」の件を引き継いだとする点は信用できるものである。 この点,引継ぎに関して,Bは,公判で,Nから,「aの会」の件について,引継ぎを受けた記憶はない旨供述 すと,少なくとも,口頭で,概括的に,「aの会」の件を引き継いだとする点は信用できるものである。 この点,引継ぎに関して,Bは,公判で,Nから,「aの会」の件について,引継ぎを受けた記憶はない旨供述する。 しかし,引継書類だけでも前記認定事実のとおり,相当大部(A4用紙10枚)のものであり,しかも,Bの新しい職務の中心は予算関係であったこと,4月1日の異動当日で,事情も分からない状態で,口頭で引継ぎを受けたとしても,Bの記憶に残らないということは不自然ではないことなどに照らすと,Bの公判供述の存在は,NからBへの引継ぎの有無の認定を左右するものではない。 なお,Nの供述する「aの会」の引継ぎの具体的内容については,大別すると,①「aの会」の案件はFという国会議員がらみの案件であること,②「aの会」の実態がよく分からないので慎重に対応する必要があること,③「aの会」の公的証明書の発行がまず手を付ける業務であることの3点に分けられるところ,このうち,いずれの内容まで引継ぎの際に述べたかについて,さらに問題となる。 Nは,捜査,公判を通じて,①ないし③のいずれについても供述をなしており,この点からすると,いずれの内容についてもそれなりの信用性が認められるようにもみられる。 この点,前記認定事実のとおり,Cは,厚労省を訪問し,Nと面談した際,Fの名前を出したことは確実であることからすると,「aの会」の引継ぎにおいても,Fという国会議員がらみの案件として引き継ぐのは自然である。また,前記のとおり,「aの会」についてのCのNに対する説明があいまいであったと認められることからすると,②のような内容の引継ぎをすることも十分想定できる。 他方,前記のとおり,Nが,Cに対して,j協会を紹介した動機につい- 94 -ては,1通8円の心身障害者用低料第三種郵 認められることからすると,②のような内容の引継ぎをすることも十分想定できる。 他方,前記のとおり,Nが,Cに対して,j協会を紹介した動機につい- 94 -ては,1通8円の心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件充足の観点からの意味も併有していた疑いが残るのであり,そうであれば,j協会の審査が終了するまでは,Bら厚労省側において,「aの会」の案件について,具体的な措置を講ずることは想定できないことからすると,③の内容は,必ずしも自然とはいえない。 以上より,①,②の内容については信用性は肯定できるが,③については,疑問を入れる余地がある。 オHの4月上旬ころのBに対する指示についてBは,公判で,そのような事実を否定しているところ,前記認定事実によれば,その後の5月中旬ころ,Bは,Hや,室長のGに何ら相談なく,虚偽の稟議書等を作成し,「aの会」にファクシミリ送信していることが認められる。 Hの検察官調書のように,Hが,Bに,前記のような指示をしていたのであれば,Bは,Hらに相談せずに虚偽の稟議書等を作成し,「aの会」に送信する必要はなく,Hの検察官調書の記載は不自然であり,Bの公判供述は排斥できない。 カ証明書交付願の取得時期について(ア)関係者の供述等a. Bの公判供述「私は,j協会の証明書交付願と,『aの会』あての説明文書を自宅に保管していて,押収された。証明書交付願は,4月中旬ごろ,『aの会』が提出してきたものだと思う。『aの会』から私に電話があったのが4月中旬ごろで,その後だと思う。うその稟議書を作る前である。『aの会』のだれからもらったか,郵送できたかどうかは分からない。証明書交付願は,私が『aの会』に出すように言って,出されたものではない。その書類は,Nが作った前例の資料にも入ってたと思う。だから,- 95 - からもらったか,郵送できたかどうかは分からない。証明書交付願は,私が『aの会』に出すように言って,出されたものではない。その書類は,Nが作った前例の資料にも入ってたと思う。だから,- 95 -決裁を後々作るときにそれが必要になるという気持ちはあった。それだけでは,決裁の形にはならないので,何らかの資料をもらわなければいけないと思いつつも,それを実行に移すことはなく,日がたってしまった。j協会の証明書交付願と,『aの会』あての説明文書は,当初,厚労省の自分の机に保管していたが,公的証明書を渡した後に自宅に持ち帰った。決裁を受けないで,独断で公的証明書を出した後も,後付けで決裁の形を作るときに,それが要ると思って保管していた。検察官調書で,私が証明書交付願などについては,公的証明書を発行した後にもらったと書かれているのは,私の勘違いだった。」b.Dの公判(2月2日)供述「公的証明書交付後,2週間とか3週間とか1か月以内に,Bから,j協会に出した書類を送ってくださいという連絡が入った。j協会から出た承認書を送ってほしいという連絡があって,それを送ったような記憶がある。だれかに連絡が入って,それを私に伝えてくるということを聞いた。私が,だれかに指示してBあてに送らせた記憶はある。」なお,Dは,被告人公判での証人尋問後行われた自身の公判では,次のとおり供述する(3月15日。)。 「私は,j協会の承認後の手続は,厚労省とj協会の間で何らかのやり取りがあると考えていたから,承認が出たということを厚労省に伝えた。j協会から,団体として認めるという書面は,私が持っていった記憶はない。ほかの者が届けてるかもしれない。」c.Hの検察官調書(甲22)の記載「5月中旬ころ,Bに対し,『aの会』の案件はどうなっているのかなどと言って進捗状況を確認 面は,私が持っていった記憶はない。ほかの者が届けてるかもしれない。」c.Hの検察官調書(甲22)の記載「5月中旬ころ,Bに対し,『aの会』の案件はどうなっているのかなどと言って進捗状況を確認した。Bは,『“aの会”の方から書類が出ていないので,決裁を上げるのはちょっと難しい状況です。公的証明書の発行申請が提出されていませんし,規約や名簿などの申請- 96 -資料も何も提出されていません。資料の提出をお願いしているのに,きちんと出してこないような団体ですから,このままだと決裁に上げることはできません。』などと言った。」(イ)検討そこで,この点について,検討する。 a.前記認定事実によれば,次の事実が認められる。 4月14日ころ,j協会から「aの会」に対し,証明書交付願及び送付書が送付された。 4月19日ころ,「aの会」から,c郵便局に対し,前記4月14日付け証明書交付願の写しと「aの会」あての書面の写しが添付された,「j協会から4月14日付けでj協会の認定書が送られ,4月20日にCが厚労省に証明書の交付願いを申請することになった。厚労省より証明書が交付され次第,持参,報告する。」との内容の,4月19日付けの文書が送付された。 j協会から行政当局にあてた証明書交付願が,j協会から団体に送付された後,団体が,証明書交付願とj協会に提出した添付書類と同様の資料を厚労省等の行政当局に持参して,証明書の交付申請をした上,改めて行政当局の審査を受けるという運用がなされていた。 Bは,「aの会」からの公的証明書発行の催促があったことから,5月中旬ころ,「『aの会』に係る低料第三種郵便物の許可申請手続きについては,近日中に滞りなく進めることとなっております。」とのB名義の書面と「aの会」に係る証明書の発行についての決裁手続が途中まで進ん 旬ころ,「『aの会』に係る低料第三種郵便物の許可申請手続きについては,近日中に滞りなく進めることとなっております。」とのB名義の書面と「aの会」に係る証明書の発行についての決裁手続が途中まで進んでいるように装った内容虚偽の稟議書(起案年月日が平成16年4月26日となっているもの。)を作成した上,これらを「aの会」にファクシミリ送信した。 b.以上の事実によれば,「aの会」側が,j協会から「aの会」に対- 97 -し,証明書交付願が送付された4月14日以降,j協会の審査を受けるよう指示した厚労省の担当者に証明書交付願を提出するということは自然なことである上,わざわざc郵便局に対し,証明書交付願の写しと「aの会」あての書面の写しが添付された,「j協会から4月14日付けでj協会の認定書が送られ,4月20日にCが厚労省に証明書の交付願いを申請することになった。」との内容の,4月19日付けの文書まで送付しているのであるから,4月20日ころに証明書交付願を担当者のBに渡す可能性が高いものとみられる。 そして,Bが作成し,「aの会」に送った「aの会」に係る証明書の発行についての決裁手続が途中まで進んでいるように装った内容虚偽の書面の起案年月日が4月26日となっていることは,4月20日前後に「aの会」からBに証明書交付願が提出され,「aの会」が公的証明書の交付を正式に申請していることを前提として,厚労省内部の禀議が開始されたように,5月中旬ころに,Bが繕ったとして理解できるものである。 c.以上によれば,これらの事実に符合するBの公判供述は信用性が高いとみられる。これに対し,Dの公判供述は,これらの事実に符合しない上,あいまいであり,信用性が高いものとはいえない。 また,Hの検察官調書の「5月中旬に,BがHに対し,『aの会』から公的証明書の いとみられる。これに対し,Dの公判供述は,これらの事実に符合しない上,あいまいであり,信用性が高いものとはいえない。 また,Hの検察官調書の「5月中旬に,BがHに対し,『aの会』から公的証明書の発行申請が提出されていないと述べた。」との記載も,証明書交付願が公的証明書の発行申請であることからすると,前記認定事実に齟齬し,信用性が高いものとはいえない。なお,Bに提出されたものが証明書交付願の写しであったとすれば,正規の公的証明書の発行申請とみられないのではないかが一応問題となる。しかし,その場合,Bの方で,証明書交付願の原本が必要であると考えたのであれば,『aの会』に原本の提出を要請すれば,『aの会』は原- 98 -本を他に交付する必要はなく,既に写しをBに交付しているのであるから,『aの会』側は,これを拒否する理由は想定できず,これに応じるはずである。よって,この点は,認定を左右するものではない。 d.なお,罪体関係の書証としては証拠請求を却下したが,非供述証拠として取り調べたBの検察官調書(甲103)には,次の記載がある。 「私は,平成16年6月上旬から中旬にかけてのころ,完成させた公的証明書を被告人に預けた後のことだったが,『aの会』関係者に電話連絡を取って,決裁の形作りのため,『aの会』の規約や名簿といったものを私あてに送ってくれるように頼んだ。そういった経緯があって,『aの会』の関係者が送ってきたのが,j協会発行の証明書交付願と送付書だった。」検察官は,同検察官調書の証拠請求書において,供述内容自体も信用できることも特信性主張の柱として主張していたが,当裁判所は,刑事訴訟法321条1項2号の特信性は,供述がなされた外部的な事情を基準として判断すべきものであり,供述内容は,基本的には,外部的事情を推認させる資料としての の柱として主張していたが,当裁判所は,刑事訴訟法321条1項2号の特信性は,供述がなされた外部的な事情を基準として判断すべきものであり,供述内容は,基本的には,外部的事情を推認させる資料としての範囲で考慮することとして,特信性を判断した。 そこで,念のために,内容それ自体の信用性について,補足して検討しておく。 上記Bの検察官調書によれば,公的証明書発行まで,「aの会」側に,これらの資料の提出を要請していなかったはずのBが,発行後になって,これらを要請するというのは不自然であり,また,仮に,発行前からそのような要請があったとするなら,それに応じず,厚労省に書面,資料を提出しなかった「aの会」が,発行後になって,その要請に応じてBに書類を提出するというのも不自然であり,その供述内容自体,信用性が高いものとはいえない。 - 99 -(ウ) 結論 以上によれば,証明書交付願及びj協会の送付書を「aの会」がBに提出したのは,4月20日前後であると認定できる。 キ4月中のDとBの面談についてこの点も争点であるが,この点は,Bが6月上旬にDに公的証明書を交付したのかという問題とも関連するものであり,場面④の中で検討する。 ク5月中旬ころのH,B,被告人の「aの会」の件についてのやりとりについてこの点に関するHの検察官調書の記載内容は,次のとおりである。 「①5月中旬ころ,Bに対し,『aの会』の案件はどうなっているのかなどと言って進捗状況を確認した。Bは,『“aの会”の方から書類が出ていないので,決裁を上げるのはちょっと難しい状況です。公的証明書の発行申請が提出されていませんし,規約や名簿などの審査資料も何も提出されていません。資料の提出をお願いしているのに,きちんと出してこないような団体ですから,このままだと決裁に上げることはできません。 発行申請が提出されていませんし,規約や名簿などの審査資料も何も提出されていません。資料の提出をお願いしているのに,きちんと出してこないような団体ですから,このままだと決裁に上げることはできません。』などと言った。 ②そこで,私は,Gと二人で課長席に行き,被告人に対し,『“aの会”の公的証明の件は,手続がなかなか進まず,見通しが立ちにくい状況です。こちらから“aの会”に対して資料の提出を要請しているようですが,公的証明書の発行申請書や規約,名簿などといった書類をきちんと提出していないようであり,決裁に上げられる状態ではないようです。』などと説明した。 ③被告人は,私どもに対し,『なんとかならないんですか。もう少し調整を進めてください。』などと指示した。私とGは,Bに対し,『何とか書類を整えて手続を進めてくれるか。』などと指示した。」これに対し,H,B,被告人の公判供述は,これらの点を,いずれも否- 100 -定する。 そこで,Hの検察官調書の供述について検討する。 前記のとおり,証明書交付願及びj協会の送付書を「aの会」がBに提出したのは,4月20日前後であると認定できる。それであれば,「公的証明書の発行申請が提出されていない。」とBが供述するのは,不自然である。 Bが,「aの会」に,資料の提出をお願いしていたというのであれば,「aの会」が規約や名簿などの資料を何も提出してこないというのも,「aの会」とj協会とのやりとりなどに照らして不合理であり,厚労省側から「aの会」に対し,資料等の提出を求めたとはみられない。 5月中旬ころに,そのようなやりとりがBとHの間にあれば,Bが虚偽の禀議書等を「aの会」に送付したの(B名義の文書のデータの作成日時からは,5月18日以降とみられる。)がそれ以後の時期であれば,Bが独断で,そのような行為をす りとりがBとHの間にあれば,Bが虚偽の禀議書等を「aの会」に送付したの(B名義の文書のデータの作成日時からは,5月18日以降とみられる。)がそれ以後の時期であれば,Bが独断で,そのような行為をするのは不自然であり,また,上記Hとのやりとり前に,Bが,稟議書等のファクシミリ送信をなしていたのであれば,Bが,Hらも認知している案件としていたとすれば,それが何ら話題にならないというのも不自然とみることができる。 上記HとBのやりとりが不自然,不合理とすると,これを前提としたHらと被告人のやりとりも不自然,不合理となる。 以上によれば,Hの検察官調書供述は,不自然,不合理な点があり,信用性が高いものとはみられず,これを否定するH,B,被告人の供述を排斥することはできない。 (3) 結論 以上の場面②に限定した証拠の検討の範囲では,次のとおり,認定できる。 ア証拠上認められる事実Nは,C訪問の際に,Cに対して,j協会を訪れるよう話した(Cが帰- 101 -った後,Hと相談して「aの会」に連絡してj協会を紹介したのではない。)。 Nは,Bに対する社会参加係長の業務の引継ぎの際,口頭で,「aの会」が公的証明書の発行を依頼してきている旨を話した(ただし,Bの記憶に残らなかった疑いは否定できない。)。 証明書交付願及びj協会の送付書を「aの会」がBに提出したのは,4月20日前後であった。 イ単体では,証拠上認定するに至らない事実Cが厚労省から帰った後,H及びNが,企画課長席で,被告人に対し,「aの会」について報告をした際,被告人は,H及びNに対し,「ちょっと大変な案件だけど,よろしくお願いします。」などと指示した。 被告人は,3月中旬ころ,Hに対し,「aの会」の案件の進捗状況を確認した。Hは,3月下旬ころ,Nに対し,「aの会」の案件の進捗状況を尋 と大変な案件だけど,よろしくお願いします。」などと指示した。 被告人は,3月中旬ころ,Hに対し,「aの会」の案件の進捗状況を確認した。Hは,3月下旬ころ,Nに対し,「aの会」の案件の進捗状況を尋ね,Nから,書類等が出ておらず,進捗していない旨告げられた。Hは,その内容を,被告人に報告した上,Nに対し,しっかり後任に引き継ぐよう指示した。 Hは,4月上旬ころ,Bに対し,「aの会」に対する公的証明書の発行手続を進めるように指示した。 Bは,5月中旬ころ,Hから「aの会」の案件の進捗状況を確認された際,「aの会」から,公的証明書の発行申請,規約や名簿等の審査資料の提出がなされておらず,まともに資料を出せないような実体の疑わしい団体であり,形だけであっても決裁に上げることができない旨答えた。 Hは,被告人に対し,「aの会」の案件について,公的証明書の発行申請の書類や規約,名簿等の審査資料がきちんと提出されておらず,決裁に上げられるような状態でない旨報告した。 被告人は,Hに対し,『なんとかならないんですか。もう少し調整を進- 102 -めてください。』などと言った。 その後,Hは,Bに対し,『何とか書類を整えて手続を進めてくれるか。」などと指示した。 - 103 - 場面③について(5月中の「aの会」側の行動)(1) 争点 検察官は,公判前整理手続段階及び冒頭陳述で,1)Cは,5月中旬ころ,被告人に対し,日本郵政公社に「b」を低料第三種郵便物として承認しても大丈夫である旨を電話で伝えることを要請し,それに応じて,被告人は,日本郵政公社の「ユー」に対し,電話でその旨を伝えた(争点7),2)6月上旬ころ,Cは,被告人に対し,日付を遡らせて「aの会」に対する公的証明書を発行するよう要請し,被告人は,これを了承した(争点8),との事実を主張して 対し,電話でその旨を伝えた(争点7),2)6月上旬ころ,Cは,被告人に対し,日付を遡らせて「aの会」に対する公的証明書を発行するよう要請し,被告人は,これを了承した(争点8),との事実を主張していた。 この点については,被告人は,平成16年当時の郵政公社のl支社長Uは知らないし,5月中旬,6月上旬にCと会った記憶はないと述べた上,嘘の団体であると知って部下に指示することはないとして,実質的にそれらの事実を否定する供述をし,弁護人も,それらの事実の存在を争っている。 したがって,これらの事実の存否も争点となる。 この点,現段階においては,争点7,8いずれの点についても,それらを直接証明する証拠はない。 そこで,その他の情況証拠や事実から,これらの争点を認定することができるのかについて検討する。 (2)前提となる事実認定ア関係する供述等争点7,8に関連する「aの会」関係者の動きに関する供述としては,以下のものがある。 (ア)Dの検察官調書及び公判供述Dの検察官調書(甲50)には要旨下記の記載があり,Dは,公判で,検察官調書の内容が正しい旨供述している。 1)争点7に関連する供述- 104 -「私は,5月中旬ころに,Bから決裁書類の一部等をFAXしてもらい,それをc郵便局担当者に見せ,公的証明書が近日中には発行されるようだと伝えていた。しかし,その後もBからは何ら連絡がない状態だったので,c郵便局の担当者に,『aの会』に実体がないことを見抜かれてしまうのではないかと不安だった。そこで,私は,5月中旬ころ,Cに電話し,『なかなか厚労省から公的証明書がもらえない。このままでは郵政公社に怪しく思われるかもしれない。企画課長に頼んで,早く公的証明書を発行してもらうようお願いして欲しい。できれば,企画課長にお願いして,近々厚労省から公的 的証明書がもらえない。このままでは郵政公社に怪しく思われるかもしれない。企画課長に頼んで,早く公的証明書を発行してもらうようお願いして欲しい。できれば,企画課長にお願いして,近々厚労省から公的証明書が発行されることを郵政公社に伝えて欲しい。』などと言った。Cは,『それなら,企画課長にでもお願いしてみる。』などと言って引き受けてくれた。その数日後ころの5月中旬ころ,私は,Cから電話で,『一応,企画課長から,郵政公社の方に,一本電話を入れてもらった。』などと言われた。」2)争点8に関連する供述「私は,6月4日に第三種郵便物の承認書の交付を受けてから,Oに頼んで,その数日後,c郵便局で,低料第三種郵便物を使えるという証明書の交付を請求してもらったが,確かその翌日ころに,私は,Oから,『c郵便局の担当者から,もし低料第三種郵便を使えるという証明書の交付を受けたいのであれば,厚労省発行の公的証明書の原本を提出して欲しいと言われた。』などと伝えられた。そこで,私は,公的証明書の発行をBに催促するとともに,Bだけに催促したのではまた先延ばしにされる可能性があったことから上司である被告人にもお願いした方がよいと考え,私は,6月上旬ころ,Cに電話して,『もう1度厚労省に行って,企画課長に,早く証明書を発行してもらえるようにお願いしてもらえないか。三種の- 105 -承認書が5月31日付けで出ているのだが,それよりも早い日付で出してもらいたいから,そのように伝えておいてもらうと助かる。 もう広告主もついているし,早く低料三種の承認をもらわないといけないからよろしく頼む。Bにはこちらからお願いしておくから。』などと言った。すると,Cは,『もう一度,厚労省に行って,早くして欲しいと,企画課長にお願いしてみる。』などと言い,引き受けてくれた。その いからよろしく頼む。Bにはこちらからお願いしておくから。』などと言った。すると,Cは,『もう一度,厚労省に行って,早くして欲しいと,企画課長にお願いしてみる。』などと言い,引き受けてくれた。その後,私は,Bに電話し,作成日付を5月中にして,至急証明書を発行するようお願いした。」(イ)Cの公判供述これらの点に関して,Cは,公判廷において,要旨以下のように供述する。 1)争点7に関連する供述「5月11日,Dから,『厚労省は認可を認めるような方向になりつつあるので,厚労省から,郵政公社に,そういう厚労省の意向を伝えてもらえないだろうか。』と依頼を受けた。私は,厚かましいお願いであるし,Bに一度も会っていないので,一度Bと会い,BからDの意向や事情が好転した状況等を聞いた上でないと動けないと考えて,依頼を受けた二,三日後から一週間後くらいして,アポイントメントを取らずにBを訪ねた。Bは外出していたので会えなかったが,被告人にもあいさつをしておこうと思い,課長席に行ったところ,被告人は電話中であったので,3分程度待ったが,長い電話になりそうだったので,付近にいた人に出直しますということを言って,退出した。 その後,出直して厚労省を訪ねてはいない。私は,Dに,行ってお願いしてきたという嘘の報告をした。」2)争点8に関連する供述「5月20日ころという記憶だが6月に入ってからかもしれない時- 106 -期に,Dから,希望する日付で証明書を発行するようお願いできないだろうかという連絡があった。私は,分かりましたと答えたが,厚かましいお願いだと思い,実際には動かなかった。希望する日付とは,おぼろげだが,実際の発行日よりも前の日付ということだったと思う。その依頼以外にも,早く証明書を発行するよう催促して欲しいという要請も何度かあったが,催促 ,実際には動かなかった。希望する日付とは,おぼろげだが,実際の発行日よりも前の日付ということだったと思う。その依頼以外にも,早く証明書を発行するよう催促して欲しいという要請も何度かあったが,催促したことはなかった。」イ検討(ア)総論以上のとおり,上記のCの公判供述,同Dの検察官調書及びその内容が正しいとするDの公判供述には,争点7に関して,その前提となるDからCに対する要請,それに対するCの了承,CからDに対する事後の報告,争点8に関して,前提となるDからCに対する要請,それに対するCの了承の事実が述べられている。これらの事実は,それが認定できるとするならば,争点7,8を推認しうる事情となりうる。 そこで,①Dが,Cに対し,被告人に,日本郵政公社に,公的証明書が近々発行予定であることを伝えるよう依頼するように要請したのか,その後,Cが,Dに対し,被告人に当該要請をした旨報告したのか(以下,「要請等①」などという。),②Dが,Cに対し,被告人に,5月中の日付で公的証明書を発行するよう依頼するよう要請し,Cがそれを了承したのか(以下,「要請等②」などという。)について検討する。 (イ)要請等①について前述したとおり,Dは,2月中旬(または,中旬から下旬ころ),厚労省から公的証明書取得の関係で,Cに対し,Fに厚労省への口添えを依頼するよう述べ,担当部署が企画課である旨伝えた。Cは,これを了承した。その後,CはF事務所にアポイントメントをとった。その後,Cは厚労省を訪れたことが認められる(場面①)。そして,それらの事- 107 -実が認定できる以上,厚労省を訪れた後,Cが,Fに対し口添えを依頼したとか,その上でCが厚労省を訪れたと,Dに報告したことを内容とするDの検察官調書(甲48)は,少なくともその限度では信用でき,Cから 認定できる以上,厚労省を訪れた後,Cが,Fに対し口添えを依頼したとか,その上でCが厚労省を訪れたと,Dに報告したことを内容とするDの検察官調書(甲48)は,少なくともその限度では信用でき,Cから,Dに,事実であったかどうかは別として,Fから厚労省に対し,口添えがなされた可能性があることは伝わっていたと認められる。 このような状況からすると,Dが,Fから厚労省への口利きの電話がなされたと認識しており,それが,一定の効果を有すると期待していたということ,厚労省側から紹介されたj協会の加盟も既に認められており,その情報も厚労省側に伝わっていたとDは考えていたとみられることなどに照らすと,要請①があったとする供述内容は不自然なものではない。また,要請がなされた以上は,その後の報告もなされるのも自然であるといえる。 なお,Dの検察官調書では,稟議書等がファクシミリ送信されてきた後に,争点7に関する要請をなしたと供述しているところ,前記認定事実のBの「通知案」と題するデータの作成日時が,5月18日12時43分23秒(24時間表示)となっており,争点7に関する要請の裏付けになりうるCの手帳の5月11日の欄の記載との先後関係が矛盾するようにもみられる。もっとも,上記Dの供述調書は,本件当時から供述調書作成まで約5年が経過していることに鑑みると,先後関係等があいまいになることも不自然とはいえないし,Dら「aの会」は,早期に公的証明書を発行することを求めていたとみられることからしても,稟議書等のファクシミリ送信以前に,Dが争点7に関する要請をしていたとしても,特段不合理とはいえない。したがって,これらの点は,要請等①に関する供述の信用性を特段否定する事情ともならない。 以上からすると,要請等①の事実は認定できる。 (ウ)要請等②について- 108 ,特段不合理とはいえない。したがって,これらの点は,要請等①に関する供述の信用性を特段否定する事情ともならない。 以上からすると,要請等①の事実は認定できる。 (ウ)要請等②について- 108 -要請等①についての検討で指摘した事情,状況に照らすと,要請等②に関するCらの供述についても,その内容は不自然とはいえない。加えて,その存在を否定する他の供述等も存在しないことにも鑑みると,CとDの間で,それらの要請,了承がなされたことは認定できる。 ただし,その時期については,Cは,公判で,「5月20日ころの記憶」と述べており,Dも,公判で,「2月20日に申請した第三種郵便物の承認について,5月20日には,駄目であるとか,承認するかの結論が出るだろうというルールがあることは知っていた。5月の中旬から下旬ころ,Cに対し,障害者の申請もしているということを郵政の方にも伝えているので,それが大幅に遅れたりするということは,体裁上もみっともないし,疑いを持たれかねるということもあるので,きちんと期日も考え合わせてやってくださいということは言ったと思う。」と供述しており,争点8に関する要請の時期について5月中であった可能性があるという内容で一致している。その内容は,当時の郵便法23条4項,同法施行規則8条によれば,郵政公社は,第三種郵便物承認申請から,刊行物が毎月発行するものである場合は3か月,毎月3回以上発行するものである場合は2か月以内に承認するか不承認するかの通知をしなければならないことになっていたことや,前記の「通知案」と題するデータ(作成日時が5月18日12時43分23秒。24時間表示。)内に,日付の欄が「平成16年5月日」とされ,発番号欄が空欄となっている以外は,本件公的証明書と同内容のデータが保存されていたこととも合致しており, 5月18日12時43分23秒。24時間表示。)内に,日付の欄が「平成16年5月日」とされ,発番号欄が空欄となっている以外は,本件公的証明書と同内容のデータが保存されていたこととも合致しており,合理的である。 したがって,要請等②の存在自体は認められるものの,その時期は,5月中であった可能性が高い。 (エ)小括以上のとおり,要請等①,②はいずれも認定できる。 - 109 -(3)前提事実からの推認の可否と結論事前の要請及びその要請どおりに依頼してきた旨の事後の報告等がなされていたとすれば,実際にCが,被告人にそれらの依頼をなした可能性も想定できる。 この点について,Cは,公判で,要請等①,②の存在については認めながらも,実際に,被告人に要請した事実はないと供述している(なお,争点7に関しては,Dの要請に応じて,厚労省に赴いたが,被告人が電話中であったため,被告人に要請せずに帰った旨供述している。)。 Cは,3月29日ころ,j協会での審査が難航している状況を伝えられていたとみられることからすると,Cにおいては,Fの事務所の者であるとして厚労省側と接触していることについて,それほど高い効果を期待していたともみられない。また,本件の証拠によると,Cの供述を前提にしても,Cは,2月下旬に,被告人と簡単なあいさつを交わして以降は,Cが厚労省関係者と接触したなど本件に積極的に関与していたとの事情は窺われないのであり,Cが,それらの要請を受けたもののその実行をためらうことは不自然ではない。それらの事情に加えて,本件当時のCのeでの勤務状況,Cの「aの会」の活動に対する関与の状況から,Cは,「aの会」の活動に対してそれほど高い関心を有していなかったとみられることも併せ鑑みると,それらの要請を厚かましいものと思い,了承はしたものの,被告人にはお の会」の活動に対する関与の状況から,Cは,「aの会」の活動に対してそれほど高い関心を有していなかったとみられることも併せ鑑みると,それらの要請を厚かましいものと思い,了承はしたものの,被告人にはお願いすることはなかったとのCの公判供述は,不自然とはいえない。 また,争点7に関して,Dには虚偽の報告をしたという点についても,要請①は,厚労省や郵政公社が何らかの対応をすることが当然に想定されるような内容ではないことからすると,虚偽の報告をしたとしても,それがDに発覚するおそれは高いものではなかったといえる。したがって,虚偽の報告をしたとの点についても,特段不自然とまではいえない。 よって,要請等①,②の存在から当然に,争点7,8の認定に結びつくも- 110 -のではなく,実行をしなかったとするCの前記公判供述,争点7,8の事実を否定する被告人の捜査,公判供述は排斥できない。 争点7,8は,いずれも認定できない。 なお,場面③のうち,争点7に関して,罪体関係の書証としては証拠請求を却下したが,非供述証拠として取り調べたCの検察官調書(甲55)には,次のような記載がある。 「私は,企画課に行き,被告人に対し,『“aの会”の公的証明書に関して,課長から直接郵政公社に電話をしていただいて,“厚労省での審査は通過したので,‘b’を低料第三種郵便物として認可しても大丈夫だ。”と伝えていただけませんかなどと言って,お願いした。被告人は,『一応郵政公社の方には連絡してみますが,相手が応じてくれるかは分かりませんよ。』と言って,私の依頼に応じ,郵政公社のしかるべき立場の人に電話をかけて頼んでくれることになった。このとき,被告人は,私の目の前で,『ユー』という人に電話をし,私からの依頼事項を伝えて頼んでくれた。私は,被告人の電話の会話内容に聞き耳を立てるのも 場の人に電話をかけて頼んでくれることになった。このとき,被告人は,私の目の前で,『ユー』という人に電話をし,私からの依頼事項を伝えて頼んでくれた。私は,被告人の電話の会話内容に聞き耳を立てるのも失礼だと思い,数歩離れたところに立っていたので,私からの依頼事項を伝えて頼んだことまでは分かるが,被告人と『ユー』との具体的な言葉のやり取りまでは分からなかった。被告人は,電話後,『一応,頼んでおきましたが,郵政公社が応じてくれるかどうかは保証できませんよ。』などと言った。」検察官は,同検察官調書の証拠請求書において,供述内容自体,信用できる旨の主張をしていたことから,念のため,前同様に,この点についても検討する(なお,争点8に関する記載もあるが,この点は,実質的には,Cの被告人に対する最終的な公的証明書の作成依頼に当たり,場面④とも密接に関係することから,場面④との関連で検討する。)。 仮に,被告人において,厚労省の外部団体という訳でもない郵政公社のしかるべき立場の「ユー」に電話を掛け,厚労省での審査を通り,近々公的証- 111 -明書が発行される旨を伝えたのであるとすれば,その時点で,公的証明書を発行することになるであろうことは,被告人自身,十分に認識,覚悟していたはずである。そうであるなら,本件公的証明書の最終決裁権者であった被告人としては,資料等の提出の有無にかかわらず,この時点で,決裁手続なしで本件公的証明書を発行すればよいのであって,被告人が,Cからの依頼に応じて,郵政公社の「ユー」に電話をしたという点は,不自然であるとみられる。また,「ユー」に被告人からの依頼事項を伝えて頼んでくれたことは認識できたというのに,Cは,最も関心があるはずの,郵政側との具体的な折衝状況等が全く分からなかったというのも不自然ともみられる。加えて, ,「ユー」に被告人からの依頼事項を伝えて頼んでくれたことは認識できたというのに,Cは,最も関心があるはずの,郵政側との具体的な折衝状況等が全く分からなかったというのも不自然ともみられる。加えて,電話による要請の反応,効果といった,上記の電話があったことを裏付けるような痕跡もみられない。 よって,Cのこの点に関する供述内容自体,信用性が高いものとはみられない。 - 112 - 場面④について(争点9ないし11を中心。本件公的証明書の作成・交付状況など)(1)当事者の主張等ア検察官の主張等検察官は,本件公的証明書は,Bが,被告人の指示に基づいて作成し,それを被告人に手渡し,被告人が,Cに対して交付したものであると主張する。 そして,これを裏付けるものとして,以下の点を挙げる。 (ア)証拠上認められる以下の事実①Bは,5月中旬ころ,虚偽の稟議書等を作成し,それを「aの会」にファクシミリ送信した。 ②本件公的証明書は,「aの会」から,団体規約や名簿,過去の定期刊行物といった資料の提出もなされずに,Bが,6月上旬ころ,作成したものである。 ③本件公的証明書に記載された作成日付が,平成16年5月28日であり,②の作成日時から考えて,日付を遡らせて作成されたものである。 (イ)Cの公判供述「6月上旬の朝,当時勤務していたeの会社に,私が出社する前に電話が入っており,同社のY社長が受けた。その後,再度,『aの会』の関係者からかかってきた電話に私が出て,その電話で,『証明書ができたので,厚労省に至急取りに行って欲しい。』旨言われた。その際に,誰のところに取りに行って欲しいという話は出ていない。私は,その日の午前中に,厚労省に出向いた。私は,厚労省で,Bに会ったことはなかったので,Bと会ってから被告人のところに行くべきかと思い, 際に,誰のところに取りに行って欲しいという話は出ていない。私は,その日の午前中に,厚労省に出向いた。私は,厚労省で,Bに会ったことはなかったので,Bと会ってから被告人のところに行くべきかと思い,社会参加推進室で,『Bさんはいらっしゃいますか。』と聞いたが,Bは席- 113 -を外していた。そこで,私は,その足で,課長席のところに行った。課長席に被告人がおり,私は,『“aの会”ですが,ご連絡をいただきましたので,認可の証明をいただきに参りました。』と言った。そうしたところ,被告人は,『ご苦労様です。』と言って,企画課長のデスク越しに厚労省の封筒の上に,公的証明書を乗せる形で私に手渡した。私は,『大変ありがとうございました。』などとお礼を言って帰った。私は厚労省を出た後,『aの会』の事務所に本件公的証明書を持って行き,Dではない者(OかJ)に渡したと記憶しているが,あるいは地下鉄の駅等で渡したような気もする。渡した後,Dに対し,もらってきたことを報告する電話をしたと思う。」(ウ)以下のDの検察官調書(甲50)の記載及びBから本件公的証明書を取得したことはないとするDの公判供述1)検察官調書の記載「6月4日に第三種郵便物の承認書を受領した数日後,c郵便局から,公的証明書の原本を出してほしいと言われ,私は,Bに5月中の日付で公的証明書を発行してもらうように要請した。その翌日か翌々日ころの6月上旬ころ,厚労省から,▲マンション2階の事務所に電話が入り,私は,確かOから,『厚労省から,証明書を渡すので,企画課長を訪ねて欲しいという連絡があった。』と伝えられた。私は,Cに電話し,厚労省を訪ねて,企画課長から公的証明書を受領してきてもらうように伝えた。その翌日ころ,私は,Oから,公的証明書の原本を見せてもらい,Cが,企画課長から,それ た。』と伝えられた。私は,Cに電話し,厚労省を訪ねて,企画課長から公的証明書を受領してきてもらうように伝えた。その翌日ころ,私は,Oから,公的証明書の原本を見せてもらい,Cが,企画課長から,それを受け取ってきてくれたのだと報告を受けた。」2)公判供述「本件公的証明書を入手した経緯は定かではないが,おそらく厚労省から,kの事務所に電話が入り,そこにいるOか事務の者が知らせ- 114 -を受けたということだと思う。私は,当日又は翌日に,kの事務所に行って,現物を手にした。それは,郵政の第三種郵便承認書が手に入って,三,四日から1週間してからと思う。私は,直ちにカラーコピーをとり,Jのところを訪ねて,認可が下りたことを知らせながら,カラーコピーを渡した。現物は事務所に戻した。本件公的証明書は,郵送されてきたか,Oか,事務員か,Cが取りに行ってきたかのどちらかだと思う。私は,Cに,公的証明書は出たという連絡はしたと思うが,取りに行って欲しいという連絡をした記憶はない。私が,厚労省に行って,Bから,本件公的証明書を受け取ってきたということはない。」(エ)Lの検察官調書(甲19)の記載「6月上旬ころ,部長室で,被告人から,『F代議士から話のあった公的証明書のことなのですが,担当者の方でいろいろ苦労してくれて,“aの会”に対して公的証明書を出すことになりました。秘書のCさんには,私から連絡しておきますので,F代議士の方は,部長からご連絡を宜しくお願いします。』などと伝えられた。私は,被告人に対し,『そうか,よかったね。これがバツだったら大変なことだよねぇ。F代議士には,僕からお伝えしておくから。』などと言った。私は,その直後ころの6月上旬ころ,Fに電話を入れて,F本人に対して,『先生からお話しを受けていた“aの会”のことですが,う なことだよねぇ。F代議士には,僕からお伝えしておくから。』などと言った。私は,その直後ころの6月上旬ころ,Fに電話を入れて,F本人に対して,『先生からお話しを受けていた“aの会”のことですが,うちから公的証明書を発行させていただくことになりました。Cさんには,A課長から連絡させますので,宜しくお伝えください。』などと言った。Fは,『そうか,ありがとう。Cも喜ぶと思うわ。またなんかあったら,よろしく。』などと言った。」(オ)Hの検察官調書(甲22)の記載「私は,6月上旬ころ,Bから,『“aの会”の件は調整がついて,- 115 -終わりましたので。』などといった報告を受けた。私は,この報告をMに伝えるなどした程度で,以後,この件に関わることはなかった。その後,被告人やLら上司から,『aの会』に対して必要書類の提出を求めるようにという指示を受けたことはなかった。」(カ)Mの検察官調書(甲21)の記載「確か6月上旬ころのことだったと思うが,私は,Hから,『F代議士から頼まれていた“aの会”の案件ですが,B係長がA課長なんかと相談して,うまく処理してくれたようで,公的証明書を発行することになりました。』などと報告を受けた。」イ弁護人の主張等これに対し,弁護人は,Bは,被告人の指示を受けることなく単独で本件公的証明書を作成,交付したもので,被告人は,公的証明書を,Bから受け取り,Cに交付した事実はないと主張する。 そして,これを裏付けるものとして次のものがある。 ①Bの公判供述1)「他の厚労省関係者に『aの会』の案件について相談をしたことはないし,誰かから聞かれたことはなく,自分とN以外誰も知らないと思っていた。Nにこの件以外で連絡を取ったことはあったが,『aの会』の案件について聞いたか覚えていない。」2)「当時,初めて担 ことはないし,誰かから聞かれたことはなく,自分とN以外誰も知らないと思っていた。Nにこの件以外で連絡を取ったことはあったが,『aの会』の案件について聞いたか覚えていない。」2)「当時,初めて担当した予算の仕事で頭がいっぱいになり,『aの会』の案件処理は,雑事として,先延ばしにしてしまった。一刻も早くこの雑事を片付けて,予算関係の仕事に入りたかったので,証明書は,稟議とか関係なく,自分が勝手に出してしまえば,話は済むだろうと考えた。相手の追及をかわすための方便として,先送りするために稟議書等を作成しファックスした。『aの会』から,早期に公的証明書を発行するよう要請があったと思う。稟議書等を作る際,私は,- 116 -『aの会』に,書類の提出を求めたことはない。求めなかったことに特に理由はない。その時点では,公的証明書を独断で発行するという決断まではしておらず迷っていたが,正式な決裁を取ろうという気持ちはほぼ無くなっていたかもしれない。稟議書よりは,企画課長の公印が押された公的証明書を勝手に作成することにはためらいが強かった。」3)「稟議書等を送信してから,おそらく5月中旬ころに,『aの会』から,公的証明書がどうなっているのか督促があったと思う。公的証明書を作成する最終的な決断をしたのは,作成を実行に移した6月1日ころであった。その前に,『aの会』から督促があったかもしれない。私は,決裁を経ることもなく,誰にも相談することなく,公的証明書を作成した。公的証明書のデータを作成する作業は,6月1日午前零時から1時ころに,社会参加推進室の自席で作成した。6月1日に最終的な決断をしたというのは,フロッピーのデータが前提であり,記憶としては決断時期は定かではない。データを見ると日付を遡らせているようだが,遡らせて作成した記憶も,『aの 席で作成した。6月1日に最終的な決断をしたというのは,フロッピーのデータが前提であり,記憶としては決断時期は定かではない。データを見ると日付を遡らせているようだが,遡らせて作成した記憶も,『aの会』から日付を遡らせるように言われた記憶もない。日付や発番号はその場で決めたと思う。6月1日の朝8時くらいに出勤し,すぐに公的証明書のデータを印刷し,企画課本課のシールボックスのところで,企画課長の公印を押して,本件公的証明書を作成した。翌朝に実際に作成したのは,データを作成した午前1時ころは,シールボックスがある企画課本課に,国会対応とかで2時とか3時とかまで残っている人がいたからではないかと思う。作成した公的証明書は,クリアファイルに入れて,社会参加推進室の自分の机の引き出しに入れた。」4)「作成した公的証明書は,手元に置いておくのが不安だったので,作成したその日に連絡して,Dと待ち合わせ,Dに渡した。場所は,- 117 -厚労省の隣にある弁護士会館のyという喫茶店である。後ろめたいことをしているので,厚労省の職員もいないということを考え,yがいいと判断した。別の場所で待ち合わせてyに行ったと思う。厚労省の地下1階のs銀行のATMのところで待ち合わせたかどうかは定かではないが,そうかもしれない。私が,公的証明書を渡すと,Dは,自分の名刺と,Cの名刺を出してきた。Cの名刺には,手書きで『衆議院議員F事務所』と書かれていた。このとき初めてFも絡んでいるのかと思った。国会議員の名前を見て,『あっそうだったんだ。』という程度の気持ちだった。Fの名前を見ても,自分の上司に話が通っている,Fから連絡が入るかもしれないなどとは考えなかった。証明書を渡した際,Dから,障害者が参加するイベントのパンフレットを見せられたと思う。」②Lは,その公 前を見ても,自分の上司に話が通っている,Fから連絡が入るかもしれないなどとは考えなかった。証明書を渡した際,Dから,障害者が参加するイベントのパンフレットを見せられたと思う。」②Lは,その公判供述において,場面④に関連する検察官調書の記載内容は明確に否定している。 ③M,Hも,公判で,「aの会」の案件に関する当時の記憶はない旨供述している。 ④被告人は,捜査段階から一貫して,Bに対する発行指示や,Bから本件公的証明書を受け取り,Cに対し,それを交付したとの検察官の主張は明確に否定している。 (2)検討被告人が,公的証明書をBから受け取り,Cに渡したのであれば,Bが公的証明書を作成したのは,被告人の指示によるものであると強く推認されるものである。そこで,場面④の認定においては,本件公的証明書を,被告人が,Cに直接交付したのか否かが重要となる。 この点について,公的証明書は,被告人から直接受け取ったとするCの公判供述と,自身がDに手渡したとするBの公判供述が対立している。 - 118 -したがって,本件公的証明書の交付に関するC及びBの公判供述の信用性が,検討の中心となる。 そこで,以下では,両者を対比しつつ検討する。 アC,B各供述の信用性について(ア)客観的証拠である公的証明書のデータとの関係前記認定事実のとおり,B方から発見されたフロッピーディスクの中に,本件公的証明書と全く同一の内容の文書データ(「コピー~通知案」と題するファイル内)が保存されており,そのデータの作成日時は,平成16年6月1日1時14分32秒(24時間表示)で,データ更新日時は同日1時20分6秒であった。 なお,これとは別の文書データである通知案と題するファイル内には,前記のとおり,本件公的証明書の内容のうち,日付欄に「平成16年5月日」と記載 )で,データ更新日時は同日1時20分6秒であった。 なお,これとは別の文書データである通知案と題するファイル内には,前記のとおり,本件公的証明書の内容のうち,日付欄に「平成16年5月日」と記載され,発番号はないデータとB名義の,「aの会」にファクシミリ送信した文書のデータがあり,このデータの作成日は5月18日であった。 そして,1)6月1日のデータはBが作成したものと認められること,2)関係証拠上,本件公的証明書と同内容のデータは他にみられないこと,3)当該データの文書内容と,本件公的証明書とは全く同一の内容であること,4)Bが,同じ日付と発番号の別のデータを作成して,本件公的証明書を作成する理由は想定できないことからすると,当該データが本件公的証明書の基となったデータであると認められる。 Bは,本件公的証明書の作成状況に関して,前述したとおり,6月1日午前零時から1時ころに,データを社会参加推進室の自席で作成し,翌朝8時ころ,当該データを印刷し,公印を押すなどして,本件公的証明書を作成したと供述している。 Bの作成時刻に関する供述は,上記データという客観的証拠と符合し- 119 -ている。 この点,検察官は,冒頭陳述においては,「6月上旬ころ,社会参加推進室の職員が帰宅した後の深夜の社会参加推進室で,公的証明書の文言の記載のある書面を作成し,翌早朝ころ,同書面に企画課長名の公印を押印し,公的証明書を作成した。」と主張し,文面の作成の翌朝に公印を押して,公的証明書を作成したと主張していたが,論告においては,本件公的証明書は,当該データをそのまま出力して,その当日に作成したものとは断言できないと主張し,6月1日の朝8時に出力したとのBの供述の信用性を争っている。 しかし,Bが6月1日午前1時20分6秒にデータを作成し終えたのに, そのまま出力して,その当日に作成したものとは断言できないと主張し,6月1日の朝8時に出力したとのBの供述の信用性を争っている。 しかし,Bが6月1日午前1時20分6秒にデータを作成し終えたのに,当日の午前8時ころ,本件公的証明書を作成できなかったとか,6月2日以降に作成しなければならないような事情は窺われないし,Bがそのような行動をする合理的な理由もみいだせない。Bは,日時は記憶していないとするものの,上記フロッピーのデータを作成したその日の早朝に本件公的証明書を作成したと明確に述べており,この供述には動揺がない。5月18日作成の文書ファイルに,5月の日付の入った公的証明書とほぼ同内容のデータが作成されており,同データ作成時点から5月中の日付で作成することを想定していたとみられ,5月31日の深夜(6月1日午前1時ころは,5月31日の深夜と評価しうる時間帯であるといえる。)はその最終日であり,6月1日に交付すれば,5月中に作成されたとの説明がつくことなどを考えると,本件公的証明書の作成時点に関するBの供述は信用できる。 したがって,前記のとおり,本件公的証明書の基となったデータの作成日時が,6月1日午前1時14分32秒で,データ更新日時は同日午前1時20分6秒であり,厚労省のパソコンの設定日時が,実際の日時と大幅にずれていたとの事情も窺われないことからすると,Bは,6月- 120 -1日午前1時ころから本件公的証明書のデータを作成し,同日の午前8時ころに本件公的証明書を完成させたと認定できる。 そして,本件公的証明書の作成時期が6月1日午前8時ころであり,Dから早期の発行を要求された末,5月31日の深夜から翌6月1日の早朝を使って作成した本件公的証明書について,厚労省側が作成当日に「aの会」に連絡するのが自然で合理的であること,本 8時ころであり,Dから早期の発行を要求された末,5月31日の深夜から翌6月1日の早朝を使って作成した本件公的証明書について,厚労省側が作成当日に「aの会」に連絡するのが自然で合理的であること,本件では6月1日に連絡できない理由や同月2日以降に連絡をしなければならないような事情はうかがわれず,6月2日以降になって交付する可能性は低いとみるのが合理的であること,「aの会」が,Cと連絡がつくまで待っているとは考えがたいことなどに照らすと,厚労省側から,「aの会」側に,公的証明書が交付されたのは,6月1日であると強く推認されるものである。 そして,検察官主張のように,Bが被告人から指示され,公的証明書を作成し,被告人に交付し,被告人から,「aの会」側に渡されるとした場合でも,事情は異ならないものである。 6月1日当日に,Dに,公的証明書を交付したとのB供述は,上記事実に符合するものである。 そこで,被告人から,公的証明書の交付を受けたとのC供述について検討する。 Cの手帳によれば,Cは,6月1日は,午前6時50分東京発の「のぞみ」で,大阪へ行き,当日は,関西に滞在していたと認められ,当日,Cが厚労省へ赴き,公的証明書の交付を受けることは不可能であった。 しかも,被告人の手帳によれば,同日の午前10時前には予定が入っておらず,Bから,被告人が,公的証明書の交付を受けることは可能ではあったとみられるが,他方,午前10時から12時,午後1時15分,午後2時から5時に厚労省以外の場所も含めて予定が入っており,被告- 121 -人が公的証明書を「aの会」側に交付することが可能な時間帯は,相当に狭いものであり,同日,「aの会」の者を呼んで,被告人自身が公的証明書を交付するということ自体,合理性があるかも疑問である。 関係証拠及び前記認定事実を総合すれ に交付することが可能な時間帯は,相当に狭いものであり,同日,「aの会」の者を呼んで,被告人自身が公的証明書を交付するということ自体,合理性があるかも疑問である。 関係証拠及び前記認定事実を総合すれば,公的証明書の交付に関して,厚労省からは,6月1日の比較的早い時間帯に「aの会」の事務所に電話が入った可能性が高いとみられる。 早期発行を要請していた「aの会」側が,厚労省から,公的証明書の発行の連絡を受けた場合,特に,Cでなければ交付を受けられないわけではないから,「aの会」の関係者の誰かが,公的証明書の交付を受けに赴くものとみられる。 以上によれば,C供述は,6月1日に,Cが公的証明書の交付を受けに厚労省に赴くことが不可能という意味で,不合理なものとなる。 (イ)証拠上認められる本件公的証明書が6月10日に郵政公社に提出されていることとの関係a.前記認定事実のとおり,本件公的証明書は,6月10日に「aの会」から,c郵便局に提出されている。 検察官は,Dら「aの会」は,公的証明書を取得できた場合は,速やかに郵便局に提出するのが自然であるが,Bの公判供述のように,本件公的証明書が6月1日に作成され,同日中にBからDに交付されたとすれば,本件公的証明書の提出日が約9日後となり,厚労省からの公的証明書の交付日とc郵便局の提出日がかけ離れてしまい,不自然であると主張する。 前記認定事実及び関係証拠によれば,Dら「aの会」側では,低料第三種郵便物の料金適用を受けようとする場合,郵政公社の支店に対し,第三種郵便物の承認請求をすると共に,「aの会」が心身障害者団体であり,「b」が心身障害者の福祉を図る目的で発行されるもの- 122 -であることを証明するため,厚労省等の公共機関からの公的証明書を提出する必要があることを認識していた。そうであるに 害者団体であり,「b」が心身障害者の福祉を図る目的で発行されるもの- 122 -であることを証明するため,厚労省等の公共機関からの公的証明書を提出する必要があることを認識していた。そうであるにもかかわらず,Oは,6月5日以降,前記の差出請求をしている。 そこで,検察官主張のように,「aの会」側としては,上記差出請求までの間に,本件公的証明書の交付を受けていたのであれば,これをc郵便局に提出するのが自然であり,これを提出しないで,心身障害者用低料第三種郵便物として,刊行物を差し出したい旨の請求をするということは一般的には想定しがたい。 このような請求をしたこと,この請求に対し,同月8日ころにEから本件公的証明書の提出が必要であると明言された後に,本件公的証明書を提出していること自体からみると,差出請求をした時点では本件公的証明書の交付を受けておらず,Eから言われて早急に厚労省から交付を受け提出したと考えるのが自然といえる。 したがって,既に公的証明書の交付を受けていたにもかかわらず,公的証明書の添付が不要と「aの会」が考える事情がないとすると,少なくとも,当該差出請求をした同月5日又は7日ころの時点では,厚労省から,「aの会」に,本件公的証明書の交付がなされていないとみるべきことになる。他方,公的証明書の添付が不要と考える事情があるとすれば,交付された時期について,6月5日又は7日以降に限られないことになる。 b.そこで,「aの会」において,公的証明書の交付を受けていながら,これの添付が不要と考える事情の有無が問題となる。 場面③の検討で認定したとおり,Dは,Cから,「近々厚労省から公的証明書が発行される。」旨の電話を,被告人から郵政公社に入れてもらった,との報告を受けていた。その報告によって,Cを除く「aの会」関係者においては 認定したとおり,Dは,Cから,「近々厚労省から公的証明書が発行される。」旨の電話を,被告人から郵政公社に入れてもらった,との報告を受けていた。その報告によって,Cを除く「aの会」関係者においては,被告人から,郵政公社に,そのような電話- 123 -を入れてもらっていたと思っていた可能性はある。そして,実際に本件公的証明書が厚労省から「aの会」に交付され,厚労省の「認可」を得られたことから,その事実が厚労省から郵政公社に伝わるなどして,公的証明書の原本を添付しなくとも,郵政への申請は足りると考えていた可能性はある(Dの検察官調書(甲50)にも,「私は,既に,5月中旬ころ,Cに頼み,企画課長から,日本郵政公社の幹部に,近々,厚労省から「aの会」に,公的証明書を発行する予定である旨伝えてもらっていたので,低料第三種郵便の承認の申請のため,わざわざ公的証明書の原本の提出まで求められるとは考えていなかった。」旨の記載がある。)。 c.また,前記認定事実によれば,Oは,6月10日に,l支社あての証明書発行願をc郵便局に提出した際,添付資料として,本件公的証明書の他,j協会発行の交付願が付けられていた。この際,添付資料としてj協会発行の交付願が何故提出されたのか必ずしも明らかではないが,同書面は,本来郵政公社等に提出する必要のない書面であるにもかかわらず,前記のとおり6月10日に提出したほか,同書面が交付されたことを郵政公社に報告する前記4月19日付けの書面に資料として写しを添付するなどしていること,上記6月5日又は7日の差出請求において,郵政側から不要と指摘された書類を提出していることなどに照らすと,Dら「aの会」の人間は,何が必要な書類か十分検討せずに郵政側に申請等をなしていた可能性がある。 また,6月10日に,結局交付願を提出してい から不要と指摘された書類を提出していることなどに照らすと,Dら「aの会」の人間は,何が必要な書類か十分検討せずに郵政側に申請等をなしていた可能性がある。 また,6月10日に,結局交付願を提出していることからすると,当時,「aの会」側では,それも申請に必要なものとして添付したものとみられるが,6月5日又は7日ころに,c郵便局に,心身障害者用低料第三種郵便物として,「b」を差し出したい旨の請求をなした際には同書面が付けられていることを窺わせる資料はないことなど- 124 -に照らすと,「aの会」は,自己が保管している文書についても郵政側に提出せず,後になって提出することがあったとみられる。 以上によれば,「aの会」が,6月1日に,公的証明書の交付を受けていたとしても,その添付をしないで,6月5日又は7日に,低料第三種郵便物として,「b」を差し出したい旨の請求をなし,6月8日ころに,郵便局側からの指示を受け,6月10日に,公的証明書を添付して申請をすることも不合理とはいえない。 なお,検察官は,冒頭陳述では,「Dは,被告人から,5月中旬ころに,直接日本郵政公社l支社に連絡をしてもらっていたことから,公的証明書の原本を提出しなくても,低料第三種郵便物として取り扱われるものと考え,6月上旬ころ,c郵便局に対し,差出承認請求をしたところ,同請求に公的証明書が添付されていなかったため,c郵便局の担当者から,公的証明書の原本を提出するように要請された。 そこで,Dが,直接又は間接に厚労省に働きかけ,それを受けて,被告人がBに対して作成指示をし,Bが,本件公的証明書を作成し,被告人が,本件公的証明書をCに交付するに至った。」との事実経過を主張していた。 前記認定事実によれば,6月5日又は7日ころ,「aの会」からc郵便局に対し,心身障害者用低料第三種 的証明書を作成し,被告人が,本件公的証明書をCに交付するに至った。」との事実経過を主張していた。 前記認定事実によれば,6月5日又は7日ころ,「aの会」からc郵便局に対し,心身障害者用低料第三種郵便物として,「b」を差し出したい旨の請求があったこと,これが正規の手続でない請求であったことから,c郵便局から,日本郵政公社l支社に問い合わせたところ,6月8日ころ,l支社は,「b」については,第三種郵便物としての請求があっただけで,心身障害者団体が発行する第三種郵便物としての請求としては把握されていないことから,c郵便局にその旨連絡したこと,そこで,c郵便局担当者は,「aの会」に対し,公的証明書の提出が必要であると伝えたことが認められる。したがって,検- 125 -察官の上記主張を前提にすると,Dが,厚労省に交付するように依頼したのは,早くても6月8日ということになり,実際に交付されるのは同月9日朝以降になるものとみられる。そして,6月10日に本件公的証明書が,「aの会」から,c郵便局に提出されていることからすると,交付された可能性のある日は9日,10日に限定される。 ところが,Cの手帳の同月9日の欄には,「○休」のしるしが赤字で記載されており,この日Cの勤務する会社は休みであったとみられる(Cは,同日,会社は休みであったと供述している。)。「同社に出勤し,電話を受けたことから,厚労省へ公的証明書を取りに行った。」とするCの供述を踏まえると,この日にCが厚労省から交付を受けた可能性は低いものとみられる。また,同月10日についても,被告人の手帳の同日欄には,「8:30【省略】」,「10:00【省略】~11:30」との記載(被告人は,これらの記載について,国会の中か議員会館の中で行われたt党とu党の会議に出席していた記載である旨供述 手帳の同日欄には,「8:30【省略】」,「10:00【省略】~11:30」との記載(被告人は,これらの記載について,国会の中か議員会館の中で行われたt党とu党の会議に出席していた記載である旨供述する。),「14:00~【省略】」,「16:20~【省略】」との記載(被告人は,これらの記載について,自治体の会合の記載である旨供述する。),「(15:20~【省略】)」との記載(被告人は,当該記載について,政務官のところに行ったことの記載である旨供述する。)があり,これらに照らすと,任意の時間に受け取りに来られては被告人が不在の可能性が高く,「aの会」の関係者にはアポイントメントを取って受け取りに来させる必要があるとみられる。しかし,そのような行為もせずに,同日に,Cが厚労省に赴き,被告人が直接交付するということは,不合理とみられる。 以上からすると,上記検察官の主張も,C,被告人の手帳という客観的証拠と符合しないという意味で不合理とみられる。 (ウ)C自身及び被告人にとって不利益な供述であるとの主張について- 126 -a.検察官は,被告人から本件公的証明書を直接受領したというCの公判供述は,本件における最重要事実に関する自己の直接の関与を認めるという意味においてCにとって不利な供述であり,しかも,自身の手帳に何らの記載が無いにも関わらず認めていることからすると,同人の供述は信用できると主張する。 Cの公判供述は,自らが公的証明書を厚労省から直接受領したという自身の直接の関与を認めるものであり,無罪主張しているC自身にとって不利益なものである。 また,手帳その他客観的証拠にも,Cが,被告人から,公的証明書を受け取ったことを裏付けるものはないにもかかわらず,Cは,一貫して,被告人からの交付を認めている。 更に,これまで前科もなく,一般 る。 また,手帳その他客観的証拠にも,Cが,被告人から,公的証明書を受け取ったことを裏付けるものはないにもかかわらず,Cは,一貫して,被告人からの交付を認めている。 更に,これまで前科もなく,一般的な社会生活を送ってきており,特に,被告人に対して,悪意を有しているとはみられないCが,捜査段階から,一貫して,本件への関与を否定し,公的証明書をCに交付したことを強く否定している被告人の面前で,実際には,被告人から交付を受けたのではないにもかかわらず,被告人から交付を受けたとの虚偽供述をなすということは,一般的には想定しがたいともいえる。 以上によれば,この点に関するCの供述は,この観点のみからは,信用性が認められるとみることができる。 他方,Cの手帳によれば,Cは,本件当時,勤務会社の関係も含め,多くの人物と接触し,官公庁や公共団体のみでも,多種多様な人物,組織と接触していることが窺われ,また,本件当時,「aの会」の件は,Dらが中心で,Cは,Dに言われるままに関与しており,さほど大きな関心を有していたとまではみられないことなどに照らすと,本件に関する記憶(特に,手帳などの資料がない部分)は,希薄になっ- 127 -ており,記憶の混乱や,想像が記憶に定着したという可能性も想定できないわけではない。 現に,自己の手帳の2月25日午後1時のFとの面談は,手帳の記載により記憶がよみがえったものとみられるが,日程変更などについての記憶は全く存在しない状況となっていた。 更に,関係証拠によれば,本件公的証明書が,「aの会」からの資料提出や正式の決裁なしで作成,発行されたものであり,それが,厚労省から,何らかの方法で「aの会」側に渡り,「aの会」から郵政公社に提出されていたことは客観的事実として捜査段階から明らかになっていたことが認められる。Cは 作成,発行されたものであり,それが,厚労省から,何らかの方法で「aの会」側に渡り,「aの会」から郵政公社に提出されていたことは客観的事実として捜査段階から明らかになっていたことが認められる。Cは,平成16年当時,「aの会」の会長という立場にあった者であり,厚労省から,「aの会」に渡った経緯の如何を問わず,本件公的証明書が不正に発行,利用されたことについての責任を問われる可能性があったといえ,本件公的証明書の受領に関して自身の関与を認めることが,直ちに,Cの本件に関する罪責を基礎づけるとまではいいがたい。Cは本件以後,この公的証明書を基礎にして郵便法違反に及び,その容疑で逮捕中早い時期からこのような供述をしていたが,郵便法違反での関係では,その責任ないし違法性の意識を低めるような事情ともみることもできるし,本件でもFや被告人に対して不正発行の依頼まではしていないというCの供述状況も踏まえると,決裁なしで公的証明書が発行されていたことの認識を否定するCとしては,作成権者である被告人から受領したことは,公的証明書の違法性の認識を否定する方向にも働きうる事実ともみられないわけではない。 なお,検察官は,不正発行に対する認識を否定するのであれば,本件公的証明書発行の担当者であったBから受領したと供述することでも足りると主張し,これも一理ある主張といえる。 - 128 -しかし,他方,Cは,Bと会ったことはないと供述していることからすると,いったん被告人から受領したと供述したCが,Bから受領したと供述を変更することはし難いともいえる。 b.また,前記のとおり,Cは,検察官とは打ち合わせの上で証言している事実を隠そうと,故意に虚偽の供述をしたものとみられ,その供述態度には,問題がないとはいえない。 c.以上によれば,C自身及び被告人にとっ 前記のとおり,Cは,検察官とは打ち合わせの上で証言している事実を隠そうと,故意に虚偽の供述をしたものとみられ,その供述態度には,問題がないとはいえない。 c.以上によれば,C自身及び被告人にとって不利益な内容を供述しているとみられることは,Cの公判供述の信用性を相当高めるものではあるが,これのみから,完全な信用性を認めるとまでは断じることはできないものである。 (エ)「aの会」から資料の提出がなく,正式の決裁もなされないまま発行されたこととの関係(Bの単独犯行は不合理か)a.前述したように,「aの会」側にj協会を紹介した後,厚労省側から,「aの会」に対して,規約や名簿等の審査資料の提出を求めたとの事情は窺われない。 前記認定事実のとおり,企画課内部における公的証明書発行の際の審査は,書面審査であり,実地調査等は行われていなかったのであるから,書面の提出を受け,それを基に審査を行って決裁をして発行することは困難なものとはいえない。仮に,被告人において,「aの会」に障害者団体としての実体がなくとも,証明書を発行することにしたのであれば,規約や名簿,刊行物などの形式的な書類を提出させた上で,審査の形だけ整えるということが想定される。本件の場合には,「aの会」は,それらの規約,名簿,刊行物を一応整えて所持しており,これをj協会に提出して,承認を得たという状況にあったのだから,それらの資料提出は容易なことであった。 公的証明書の最終決裁権者であった被告人としては,審査資料の提- 129 -出を受け,それに基づいて自ら決裁をして公的証明書を発行してしまえば,少なくとも,審査資料の提出なく,正式な決裁をしないまま発行することに対する非難は回避できることになる。 いかに有力国会議員であるFから話のあった案件としても,いわゆる政策案件ではな してしまえば,少なくとも,審査資料の提出なく,正式な決裁をしないまま発行することに対する非難は回避できることになる。 いかに有力国会議員であるFから話のあった案件としても,いわゆる政策案件ではなく,しかも,Fの政治家としての活動とも直接関連するともみられない,Fの一秘書の行う団体に関する事項について,被告人において,そのような非難を受けるリスクを負ってまで,審査資料の提出を求めることなく,正式な決裁をしないまま公的証明書を発行する必要性があったというには疑問が残る。検察官の主張する事実経過によると,審査資料の提出もなく,正式の決裁もなされないまま発行されたのが自然で合理性があるとはみられない。 これに対し,Bの公判供述のように,最終決裁権者であった被告人からの指示もない状態で,Bが,被告人の指示を受けることなく,独断で本件公的証明書を作成したのであるとすれば,審査資料を整えたとしても,ひとたび「aの会」に対する公的証明書発行の事実が公になれば,正規の決裁を受けていないことが発覚し,審査資料の提出を受けたり,正式の決裁があるように装ったとしても,独断発行したことについて,厚労省内で処分を受け,場合によっては刑事責任を問われることには変わりがないのであるから,Bにとっては審査資料を整える必要性は大きくないことになる(なお,後述するように,Bは,稟議書類を事後的にチェックするシステムはないと考えていたとみられることからすると,正式の決裁を装う必要性自体が高いと考えていたとはみられない。)。Bの公判供述によれば,「aの会」からの資料の提出がなく,正式の決裁もなされないまま発行された理由について,説明は可能である。 したがって,「aの会」からの資料の提出がなく,正式の決裁もな- 130 -されないまま,本件公的証明書が発行されたというこ ,正式の決裁もなされないまま発行された理由について,説明は可能である。 したがって,「aの会」からの資料の提出がなく,正式の決裁もな- 130 -されないまま,本件公的証明書が発行されたということ自体は,Bの公判供述により符合する事情ともいえる。 これに対し,被告人から交付を受けたとのC供述は,被告人のBへの指示を前提とするものであるから,上記の点には符合しないことになる。 b.なお,検察官は,「Bの公判供述によれば,Nからの引継も上司からの指示もなく,しかも,『aの会』に対して不審を抱いてもいなかったというのであれば,『aの会』の案件は,特段の配慮の必要のない通常の審査案件となるはずであり,Bとしては,『aの会』に対して審査資料の提出を要求し,これが提出されなければ公的証明書の発行を拒めば足りるはずである。それにもかかわらず,Bは,審査資料の提出を求めることもなければ,正式の決裁を経ることもなく,誰にも相談しないまま独断で公的証明書を発行したというのであるが,そのような不可解なことをした理由については,合理的な説明をしておらず,その公判供述は,不自然,不合理で信用できない。」旨主張する。 そこで,この点について検討する。 一般人の行動という観点からは,検察官の主張は,相当なものともみられる。 しかし,前記認定事実によれば,Bは,5月中旬ころ,被告人ら上司をはじめ他の者には全く相談せずに,独断で,虚偽の稟議書等を作成し,「aの会」にファクシミリ送信している。 このような行為をなすことも,検察官主張のとおり,ある意味「不可解な行為」であるとともに,「合理的な説明」がなされているともいえない。 検察官主張のように,「aの会」の案件が,企画課内で,議員案件- 131 -として,公的証明書を発行する方向で,組織的に対応することになっ とともに,「合理的な説明」がなされているともいえない。 検察官主張のように,「aの会」の案件が,企画課内で,議員案件- 131 -として,公的証明書を発行する方向で,組織的に対応することになっていたのであれば,Bが,他に全く相談することなく,虚偽の稟議書等を作成する(しかも,iの件の正規の稟議書の写しを利用し,年月日欄や件名欄や一部の印鑑を消却した上で,新たに一部を書き換えるなどそれなりに手間を掛けた方法で。)というのは,不可解であり,かつ,合理的な説明をなし得るものとはいえない。 Bは,自己の性格と行動について,公判で,次のとおり供述する。 「私は,上司に,『aの会』の案件について,相談しようと思わなかった。これは,自分の性格的なものだと思う。何でも一人で抱え込んで,堂々巡りになって,結局,にっちもさっちもいかなくなるというようなことが前にもあった。報告とか連絡とか相談とかは苦手だった。」検察官において,Bが,独断で行ったことを認めている虚偽の稟議書等の件も,このようなBの性格や行動傾向を前提にすると,Bの行動様式としては,理解できるものである。そして,虚偽の公的証明書を独断で発行するというのも,一般人の行動様式を前提にすれば,不自然,不合理とは解されるものの,虚偽の稟議書等を独断で作成するようなBの性格,行動傾向を前提にすると,必ずしも不自然,不合理なものとはいえない。 そして,本件後の平成19年3月ころと平成20年3月ころに,Bが,正規の決裁を経ることなく,大臣印を用いて,大臣作成名義の補助金関係の公文書を偽造したことも,これに符合するものといえる。 これに対し,検察官は,大臣印の無断使用の件は,申請自体はきちんとしたものがあり,時期的に間に合わないという問題があったに過ぎず,結果として補助金の金額を増減させるものではなく 合するものといえる。 これに対し,検察官は,大臣印の無断使用の件は,申請自体はきちんとしたものがあり,時期的に間に合わないという問題があったに過ぎず,結果として補助金の金額を増減させるものではなく実害が少ない案件であったことからすると,比較的心理的抵抗感が小さく,それ- 132 -との比較において,本件は心理的抵抗感がはるかに大きかったと主張する。しかし,Bは,国立zで勤務していた際の経験から,低料第三種郵便制度は,障害者の方が,かさばる点字やテープを安く送れるという制度であると考えていたと供述しており,これ自体は不自然とはいえず,Bは,公的証明書が悪用され,実害が生じるとまでは考えていなかったものと認められることなどからすると,必ずしも,心理的抵抗感が大きかったとはみられない。 また,検察官は,本件公的証明書は企画課長であった被告人の名義で作成されるものであり,Bが資料提出もなく独断で発行することは,Bにとって,後にこれが発覚した場合に厚労省内での責任のみならず刑事責任まで問われかねないリスクのある行為であるが,Bに,そのような行為に及ぶ必要性はないこと,「aの会」の案件は,被告人を含む企画課内で複数の者が了知していた案件であったことからすると,必要な審査資料もなく「aの会」に公的証明書を発行することについて,被告人の指示あるいは了解があり,Bにおいて,被告人からとがめられることなく,また,外部に露見することもないとの確信がなければ実行不可能であると主張する。 しかし,Bは,公判で,「決裁終了後の稟議書と資料綴りは,後で,誰かがチェックするというシステムはなかった。」と供述しており,本件以外の公的証明書の発行に関する稟議書類の保管状況等に照らして,当該供述は不自然なものとはいえず,これに疑いを入れるような証拠は見当たらない。 クするというシステムはなかった。」と供述しており,本件以外の公的証明書の発行に関する稟議書類の保管状況等に照らして,当該供述は不自然なものとはいえず,これに疑いを入れるような証拠は見当たらない。このように,Bは,稟議書類綴りを後にチェックするというシステムはないと考えていたと認められること,実際に,平成18年にDからの解散届を契機に企画課担当者が本件公的証明書に関して調査した際にも,資料の提出や決裁文書が見当たらなかったにもかかわらず,本件公的証明書の不正発行が発覚したとはみら- 133 -れないことからすると,独断で発行するとしても,それが発覚する可能性が高いとはみられず,Bもそのような認識を有していたと認められる。 以上からすると,検察官の上記主張には理由がない。 c.なお,Bは,公判において,稟議書等を作成して,「aの会」あてにファクシミリ送信した理由について,「企画課長の公印が押された公的証明書は重要なものであり,無審査で発行してはいけないという意識が強かったことから,出したくはないが,相手の追及をかわすための方便だった。」,「先送りしようという発想から行ったものである。」旨供述する。 そして,検察官は,Bの公判供述中,上記部分に限っては,審査資料すら提出されていないものの,「aの会」の案件が,「議員案件」であったことから,公的証明書の発行を拒むこともできず,板挟みとなって思い悩む中の苦肉の策として,心理的負担の少ない虚偽の稟議書等を作成,送付したと考えられるということで,自然かつ合理的である旨主張する。 しかし,検察官主張のように,本件が,課内で公的証明書を発行する方向で組織的に対応することになっていたのであれば,Bが,他に相談することなく,虚偽の稟議書等を作成,交付するということ自体に合理性があるとはいえない。 ように,本件が,課内で公的証明書を発行する方向で組織的に対応することになっていたのであれば,Bが,他に相談することなく,虚偽の稟議書等を作成,交付するということ自体に合理性があるとはいえない。 また,検察官は,Bは5月中旬ころ,いったん虚偽の稟議書等を作成してまで公的証明書の発行を先送りしようとしながら,その後,1か月もたたずに本件公的証明書を作成したことからすれば,被告人等の指示があったが故にBが本件公的証明書を作成したとしか考えられず,Bの公判供述は,この点を合理的に説明できない旨主張する。 検察官の主張は,要するに,Bの供述するように,本件公的証明書- 134 -を独断で作成,交付することができたのであれば,稟議書等作成時点で,公的証明書自体を作成したはずであり,わざわざ先延ばしにする必要はなかったのであるし,また,先延ばしにしたはずであるのに,その後,ごく短期間で本件公的証明書の作成に及んでいることからすると,改めて上司の指示等があったとしか考えられないというものである。 確かに,検察官の主張も,これらの事実から推論され得る事実経過の一つとしては成り立ち得ないものではない。 もっとも,前者(先延ばしの必要性)の点に関しては,Bは,「結局,証明書を自分で勝手に出してしまうことになるが,そこに至るまでに,先送りをしようという発想があり,いかにも決裁が途中までなされているよう装い,『aの会』側をなだめ,落ち着かせるために,作成した。稟議書は適当に作ってもいいだろうって思っていた。企画課長の公印がついているものとは区別して考えていた。稟議書を作ったときには,ちゃんと決裁をとれば何とかなるという気持ちも,もしかしたらあったのかもしれない。」旨供述しており,社会参加係長としての他の仕事に追われ,「aの会」の案件への対応が遅れている中 書を作ったときには,ちゃんと決裁をとれば何とかなるという気持ちも,もしかしたらあったのかもしれない。」旨供述しており,社会参加係長としての他の仕事に追われ,「aの会」の案件への対応が遅れている中で,「aの会」からの催促等に対して,公的証明書を独断で作成するか,稟議書等作成後に正式の決裁をとり,公的証明書を発行するかを決めてはいないことから,とりあえず,稟議書等を作成,送信することで対応しようとすることも,当時のBの心理として考えられないものではない。 また,後者(短期間での発行)の点についても,稟議書とともにファクシミリ送信されたB名義の文書は,「『aの会』に係る低料第三種郵便物の許可申請手続きについては,近日中に滞りなく進めることとなっております。」との内容であり,少なくとも長期間先延ばしに- 135 -できるような内容ではない。加えて,稟議書も,決裁ラインのうち,社会参加推進室長の決裁までは終了し,残りは総務係長,企画課長補佐,企画課長の決裁を残すのみの体裁であったことからすると,それらの書面のファクシミリ送信後,それほど長期間手続を遅らせることができるものとは思えない(なお,iに対する公的証明書の決裁書類においては,平成15年11月10日に起案がなされ,同月18日に最終決裁が終了しており,Bは,この点を認識していたとみられる。)。 それらの文書をファクシミリ送信してから,被告人等の指示が無くとも,1か月もたたずに(2週間ほどで)本件公的証明書を作成することは,不自然とまではいえない。 また,前記のように,「通知案」と題するフロッピーのデータ内には,稟議書の通知文書の他,本件公的証明書の発番号は入っていないものの,日付欄に「平成16年5月日」とは入力されているデータがあり,このデータは,被告人の指示とは関係なく,Bが作成 ーのデータ内には,稟議書の通知文書の他,本件公的証明書の発番号は入っていないものの,日付欄に「平成16年5月日」とは入力されているデータがあり,このデータは,被告人の指示とは関係なく,Bが作成していたものと認められ,これによれば,稟議書の通知文書を作成した時点では,被告人の指示等とは関係なく,B自身,5月中には公的証明書を作成する意思であったことが窺われる。 したがって,稟議書等の作成,送信の事実も特にBの供述と矛盾し,その信用性を否定する要素にはならない。 (オ)Bが独断で公的証明書を作成し,Dに交付したことと符合する事情の存在についてa.本件公的証明書の作成状況との符合性前述したとおり,Bは,6月1日午前1時ころに本件公的証明書のデータを入力し,翌朝8時ころ,当該データを印刷した上,公印を押捺するなどして本件公的証明書を作成した。公印の使用は,本件公的証明書の決裁ラインにいる上司らが了解した案件であれば,そのよう- 136 -に人目を避けるような時間帯に行う必要は乏しいといえる。したがって,当該事情は,被告人等の指示はなく,独断で本件公的証明書を作成したとするBの公判供述により整合するものといえる。 この点,検察官は,被告人の指示等があったとはいえ,何らの審査資料もなく,正規の決裁手続を経ずに公的証明書を発行する状況に変わりなかったのであるから,Bとしては,その作成に相当重い心理的な負担があったとみるのが自然であり,しかも,その案件について,企画課の全職員が承知していたわけでもなかったのであるから,Bとしては,事情を知らない他の企画課の職員にまで見られるのは好ましくないと考え,他の職員の目を避けたいという心理から,人目を避けようとすることは,被告人の指示等によって本件公的証明書を作成したことと整合するとも主張する。 他の企画課の職員にまで見られるのは好ましくないと考え,他の職員の目を避けたいという心理から,人目を避けようとすることは,被告人の指示等によって本件公的証明書を作成したことと整合するとも主張する。 しかし,検察官主張事実及び検察官が信用できるとする証拠によれば,「aの会」に公的証明書を発行する方向で処理することは,被告人,M,Hなど,本来の決裁ルートの主要な人物は了解していたというのであること,事情を知らない他の企画課の職員に見られたとしても,その者らが,Bを見とがめるということは基本的には想定されず,仮に,事情を聞かれた場合は,Bは,発行名義人である被告人の決裁があると答えれば足りるはずであること,仮に,正規の決裁手続をとらないで公的証明書を発行することについて,事情を知らない企画課職員に見られることを危惧するのであれば,Bが,被告人に公的証明書を渡すことや,被告人がCを企画課執務室に来訪させ,室内でCに公的証明書を交付するということ自体も,Bあるいは,被告人において,危惧するはずともみられることなどを併せ考えると,前記検察官の主張は,採用できない。 b.BがDと厚労省以外の場所で会うということは,Bが独断で公的証- 137 -明書を作成し,Dに交付するということと符合することDとBが,厚労省の執務室以外の場所で会ったことについては,D,Bの供述とも一致している。 Dは,前記のとおり,Bに,公的証明書を早く交付して欲しいと依頼するために,Bと会った旨供述する。 しかし,そのような用事であれば,それ以前のCの厚労省への訪問状況等に照らすと,厚労省の執務室(社会参加推進室)内で面談すれば足り,執務時間中に,わざわざ,執務室以外の場所で待ち合わせて,喫茶店に行き話をする必要はない。 これに対し,Bが,公判で供述するように,「aの会」 と,厚労省の執務室(社会参加推進室)内で面談すれば足り,執務時間中に,わざわざ,執務室以外の場所で待ち合わせて,喫茶店に行き話をする必要はない。 これに対し,Bが,公判で供述するように,「aの会」の案件が,組織的な対応をしているものとは考えていなかった上,Bが,虚偽の公的証明書を独断で作成し,交付しようとしていたのであれば,執務室以外で待ち合わせ,外部の喫茶店に赴き,そこで交付するというのは,自然で合理的であるといえる。 c.q株式会社問題との関係前記認定事実によれば,5月17日,衆議院決算行政監視委員会第三分科会において,q株式会社を設立したr協会発行の機関誌に,qと関係のない広告を掲載し,低料第三種郵便物制度を利用して送付することにより広告料収入を得て資金集めをしていることは,低料第三種郵便物制度の悪用につながるなどとd党議員に追及され,Lは,政府参考人として,指導していきたいなどと答弁しており,被告人は,Lの答弁内容については目を通していたこと,被告人の業務日誌の「5月19日(水)」の欄に,「T先生」,「q株式会社は問題。幹部は全員更迭だ。」などの記載があり,被告人は,この点について,「t党の障害者問題の責任者であったT先生に呼ばれて,『おまえのところがちゃんと監督しないといけないんだ。』としかられたという- 138 -記述である。」と供述しており,この供述自体は不合理ではなく,6月2日には,q株式会社の関係で,企画課長名で発番号が付された文書まで出されている。 検察官は,Lは,当国会答弁は,違法なことについて執拗に追及を受けたものではなく,それほど大変な答弁ではなかった旨供述していること,被告人も,qがらみの週刊誌の記事を見たことがあるものの,その記事やLの国会答弁を,企画課が所管していた公的証明書の発行業務と結び たものではなく,それほど大変な答弁ではなかった旨供述していること,被告人も,qがらみの週刊誌の記事を見たことがあるものの,その記事やLの国会答弁を,企画課が所管していた公的証明書の発行業務と結びつけて考えたことはなかった旨供述していることからすると,当該問題が,本件公的証明書の発行を思いとどまらせるような契機とはなり得なかったと主張する。 確かに,この問題は,公的証明書発行自体に関する問題ではない。 しかし,低料第三種郵便物制度を悪用するという点では本件と共通している上,被告人の業務日誌には,前記のとおり,国会議員がその問題を指摘していたことを窺わせる記載があること,本件公的証明書が厚労省から「aの会」に渡った時期と近接した時期に,企画課長名で文書が出されていることからすると,被告人は,5月から6月はじめの時期に,「aの会」の案件についての認識があれば,当該問題と「aの会」の案件が全くつながらないとは考えにくい。そして,そのような状況下で,被告人が,障害者団体としての実体自体が疑わしい団体に資料提出も決裁もなしで公的証明書を発行するという更に問題性の大きい行為に及ぶこと自体が不自然とみることができる(なお,これに対し,Bは,公判で,当時,q問題について,認識があった旨の供述はしておらず,Bは,この問題の国会答弁等とは関係がなかったことに照らすと,この供述は不自然とはいえない。同供述を前提とすると,Bは,q株式会社問題を認識しておらず,この問題の存在が,公的証明書不正発行の自制につながるものではない。)。 - 139 -以上によれば,この点は,被告人の指示による発行に対する疑問を生じさせるという意味で,Bの公判供述により整合するものといえる。 d.BとDの関係Dは,「aの会」の公的証明書の案件で中心的に活動していた者であり,し は,被告人の指示による発行に対する疑問を生じさせるという意味で,Bの公判供述により整合するものといえる。 d.BとDの関係Dは,「aの会」の公的証明書の案件で中心的に活動していた者であり,しかも,以前から,BとDは,電話で連絡を取っていた関係であること,Dが,Bに対して,公的証明書の早期の発行を強く要請していたことに照らすと,Bが,Dに,公的証明書を交付するというのは,不自然,不合理でない。 (カ)C供述の信用性に関するその余の点についてa.あいさつの必要性検察官は,Cは,被告人と直接あいさつをしたと述べており,その経緯を踏まえると,Cが,本件公的証明書を受領するのがごく自然な成り行きであると主張している。確かに,被告人と直接あいさつをした経緯から,Cが直接受領するということも,それ自体としては自然なものといえる。しかし,Cが被告人と直接あいさつをしていたとしても,そのこと自体から,Cが被告人から直接受領することが必然的に導かれるものではない。 前述のように,6月1日は,Cが厚労省へ赴き,公的証明書の交付を受けるのは不可能であったとみられるから,C以外の者が,厚労省に取りに行くということを否定せしめるような事情とはみられない。 b.供述経過,供述態度等について検察官は,Cは,記憶があいまいな部分とそうでない部分を峻別して供述していることからも,Cの供述は信用できると主張する。 Cは,受け取った証明書の色や特徴など,当時の状況について相当に具体的に供述する部分がある一方で,「aの会」から電話を受けて- 140 -から,厚労省を訪れるまでの経緯や,公的証明書を取得した後の状況についての供述を変遷させているなどの事情があるほか,6月上旬の自己の手帳の記載を見て,厚労省へ出向いたとは考えられないなどと矛盾した供述を繰り返すな れるまでの経緯や,公的証明書を取得した後の状況についての供述を変遷させているなどの事情があるほか,6月上旬の自己の手帳の記載を見て,厚労省へ出向いたとは考えられないなどと矛盾した供述を繰り返すなどしており(その根拠が,出向いた旨の記載がないことと述べていることからすると,混乱によるものとみられる。),その供述の状況や態度等は良好とはいえないのであって,記憶があいまいな部分とそうでない部分を峻別しているかのように供述していることを,信用性を高める事情として評価することはできない。むしろ,記憶自体が混同している可能性も否定はできない。 (キ)B供述の不自然,不合理性について検察官は,①Bは,「aの会」及び公的証明書の件についてNから引き継ぎを受けたことはなかったとしながら,「aの会」から連絡を受けた際に,Nや上司に相談・問い合わせをしていないと供述していること,②「aの会」について怪しい団体だと思っていなかったにも拘わらず,審査資料を求めなかったと供述していること,③郵便局に提出するものであることを知りながら,発覚することはないと思っていたと供述していること,④日付を遡らせて作成した経緯について供述をなしていないこと,⑤Dに本件公的証明書を交付する際に初めて,Fの名前を聞いたにもかかわらず,それほど驚かず,同人から後日連絡が入るかもしれないと不安に思ったりもしなかったと供述し,しかも,Dに交付した際,Dからパンフレットを見せられた旨供述していること,⑥後付けの決裁等に関する供述について変遷があり,明確な供述をしていないことから,Bの公判供述は,不自然,不合理であると主張する。 しかし,①の点については,場面②における検討で論じたとおり,組織的対応,Bが上司らに相談していたこと等と矛盾する事情がみられるし,Nからの引継においても,B 述は,不自然,不合理であると主張する。 しかし,①の点については,場面②における検討で論じたとおり,組織的対応,Bが上司らに相談していたこと等と矛盾する事情がみられるし,Nからの引継においても,Bが,「aの会」の案件について,十分- 141 -に認識していなかった可能性が残ることからすると,Nに尋ねるなどしていなくとも,特段不自然とはみられない。 ②の点については,前述したとおり,Bの公判供述によれば説明は可能であって,この点が不合理とはいえない(むしろ,被告人の指示による発行という検察官主張と整合しない面が強い。)。 ③の点についてみても,前述したとおり,Bは,本件当時,公的証明書が悪用されることまでは考えていなかったものと認められる。また,交付先である「aの会」において,平成16年当時から,大量のダイレクトメールを送付するなどの方法で悪用されていたとの事情があるにもかかわらず,結局5年近くの間,決裁なしで本件公的証明書が作成されたことは公になっていないという結果を踏まえると,悪用されないと考えて,偽造の事実が発覚しないと安易に考えたとしても,特に不自然というわけではない。 ④の点については,前述したとおり,作成日付が5月18日である文書ファイルに,日付欄に「平成16年5月日」と記載された公的証明書とほぼ同内容のデータが保存されており,そのデータ作成時点から5月中の日付で作成することを想定していたとみられることに加え,Bが本件公的証明書のデータを作成したのは,6月1日の午前1時ころであり,公務所等の作成する文書の作成日と交付日がある程度離れたとしても不自然ではなく,実際に交付が可能となる6月1日からみても,5月28日は4日前(同月29,30日がそれぞれ土曜日,日曜日であり,勤務日では2日前)に過ぎず,作成日として5月28日を設 離れたとしても不自然ではなく,実際に交付が可能となる6月1日からみても,5月28日は4日前(同月29,30日がそれぞれ土曜日,日曜日であり,勤務日では2日前)に過ぎず,作成日として5月28日を設定し,特にそのことについて記憶していなかったとしても不自然ではない。 ⑤の点については,単にFの名前を聞いたというだけでは,Fが本件に関して関与しているかどうかも分からず,仮に関与していた案件であったとしてもその態様は様々であるから,必ずしも,名前を聞いたこと- 142 -から,驚き,厚労省に連絡が入るかもしれないと不安に思わなかったとしても,それ自体不自然とはいえない。また,Dから,パンフレットを示されたという点についても,既に交付する段階に至っていたとしても,「aの会」に実体がないことを認識していたDが,発行担当者であるBに対し,「aの会」の活動について再度アピールするということもあながち不自然な行動とはいえない。 ⑥の点については,後付けの決裁,あるいは,審査資料だけでも事後的に取り繕うかどうかという点に関する供述についても,本件当時から証言時点までの期間の長さやそれに伴う記憶の減退に鑑みると,その当時の心境等について記憶があいまいになることは不自然ではない。 (ク)利害関係検察官は,①被告人の面前であったこと,②厚労省関係者(とりわけ,自身と同じノンキャリア)に配慮せざるを得ない状況にあったことから,Bは,公判廷においては,真実を供述することができない状況にあったと主張する。 以下,この点について検討する。 被告人は,Bの上司であったもので,公判で事実を否認しているのであるから,その面前で,被告人の不利益になることが言いづらいというのは,一般に想定することはできる。しかし,Bは,公判廷において,本件公的証明書,虚偽の稟議書等の作 で,公判で事実を否認しているのであるから,その面前で,被告人の不利益になることが言いづらいというのは,一般に想定することはできる。しかし,Bは,公判廷において,本件公的証明書,虚偽の稟議書等の作成及び大臣印の無断使用について,いずれも認める内容の供述をしており,Bはこれらの事実により,将来において,懲戒処分を受けることを十分認識している。また,被告人は,本件当時,Bの上司であったが,現在Bと特段の関係はなく,Bの人生に直接影響を与えるような立場や状況にあると認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,被告人及び厚労省関係者に配慮しなければならない理- 143 -由は必ずしも高いものとはいえない。 また,厚労省関係者(とりわけノンキャリア)に対する影響という点についてみても,Bの公判供述を前提にしても,厚労省内部における不祥事という点では変わらないのであり,これに対する世間の非難等にそれほど大きな違いがあるということには疑問があり,この点から,真実を供述することができなかった状況にあったとは考えにくい。 更に,捜査供述が上司に指示され,上司が作成名義人の虚偽有印公文書を作成,行使したというものであるのに比し,公判供述は,自ら単独で,上司名義の公文書を偽造,行使するというもので,公判供述の方が,一般に,犯情は悪いとみられるものであり,自己の刑責軽減という観点から,そのような供述をすることも考えがたい。 (ケ)小括以上によれば,C,Bの公判供述については,次のような評価をなすことができる。 Cの公判供述は,6月1日に公的証明書の交付が不可能という意味で,客観的データの存在に反する不合理なものであり,この一事をもってしても,その信用性は相当に低下するといわざるを得ない。 C本人,被告人の利益に反するものであることは,C供述の信用性を相当 う意味で,客観的データの存在に反する不合理なものであり,この一事をもってしても,その信用性は相当に低下するといわざるを得ない。 C本人,被告人の利益に反するものであることは,C供述の信用性を相当に高めるものではあるが,これのみから絶対的な信用性を認めるまでには至らない。 Bの公判供述は,公的証明書のデータという客観的証拠に符合する。 6月10日に公的証明書が郵便局に提出されていることは,6月1日に,Bが「aの会」側に公的証明書を交付したことを否定せしめるものではない。 Bが,被告人の指示を受けず,独断で公的証明書を発行することは,一般人から見ると不自然であるが,稟議書等の独断発行などに照らす- 144 -と,Bの行動傾向からは不自然とはいえない。他方,q株式会社問題が国会においても問題にされ,それを被告人においても認識している中で,団体の実体自体が怪しい団体に資料提出,決裁もなく,公的証明書を発行するという更に問題性の強い行為に被告人が及ぶということは不自然とみられる。 その他,検察官,弁護人が主張する要素は,いずれかの供述の信用性に大きな影響を与えるものではない。 以上に照らすと,Cの公判供述は,Bの公判供述以上に信用性が高いものとはみられない。 イDの検察官調書及び公判供述の信用性についてDは,公判廷で,検察官調書の内容が正しいとも供述している。また,自身が,Bから,本件公的証明書を直接受領したことに関しては,明確に否定しており,その点では,検察官の主張する事実経過と合致する供述をしている。そこで,Dの検察官調書及び公判供述の信用性について検討する。 Dの供述は,前記のとおり,Bと会ったのは,厚労省の執務室以外で1回だけであるというものであるが,これは,公的証明書の交付を受けたのではなく,公的証明書を早く発行するよう要請した ついて検討する。 Dの供述は,前記のとおり,Bと会ったのは,厚労省の執務室以外で1回だけであるというものであるが,これは,公的証明書の交付を受けたのではなく,公的証明書を早く発行するよう要請した際であるというものである。 しかし,この点は,前述のとおり,そのような用件であれば,何故,厚労省の執務室以外で待ち合わせて,喫茶店に赴いて行うのか不自然である。 また,Dは,公判廷において,本件公的証明書が,厚労省から,「aの会」側に渡った経緯について,きわめてあいまいな供述をしている。Cに,公的証明書の発行に関し厚労省等を訪れるよう依頼する他,j協会との交渉を担当するなど,「aの会」の活動及び本件公的証明書の取得に関して,- 145 -「aの会」内部において中心的に活動していたといえるDが,本件公的証明書の取得がなされた経緯について,全く知らないということは考えにくく,Dの供述は不自然とみられる。 以上のとおり,Dの検察官調書の供述及び公判供述は,いずれもその信用性に疑問を入れる事情がみられ,Bの供述を否定せしめるほどの信用性は認められない。 ウLの検察官調書の信用性についてLは,公判で,場面④に関する自身の検察官調書の供述については明確に否定している。 そこで,Lの検察官調書の信用性が問題となる。 2月下旬ころの段階で,Fからの要請が,Lから被告人を通じて担当者に下ろされていたとした場合,最終的に発行される見通しがついた段階で,被告人からLに報告がなされるということは,自然であるといえる。 また,検察官調書に録取された供述内容もそれなりに具体的なものとなっており,その内容は,L自身や被告人にとって不利益な内容であるといえる。 Lの捜査供述は,それ単体としてみると,特に不自然,不合理ではない。 しかし,Lの検察官調書は,被告人が,公的証明 なものとなっており,その内容は,L自身や被告人にとって不利益な内容であるといえる。 Lの捜査供述は,それ単体としてみると,特に不自然,不合理ではない。 しかし,Lの検察官調書は,被告人が,公的証明書を出すことになったので,被告人から,Cに連絡するという内容となっており,これは,C供述と符合するものであるが,前記のとおり,公的証明書のデータ等の客観的証拠に照らして,被告人が,Cに,公的証明書を交付するということは不合理な点がある。 そして,被告人の指示を受けず,独自に公的証明書を作成し,「aの会」側に渡したとのB供述も,それなりの信用性を有しているものであり,L供述は,これに反することになる。 他方,L供述には,B供述を否定せしめるような客観的証拠,事実に基- 146 -づく裏付けは見当たらない。 Lは,本件当時,多くの政治家と接触があり,多くの依頼ごとを引き受けていたこと,Lは,主観的には,Fと親しい関係にあったと考えていたこと,平成16年当時の状況から,Fが公的証明書の関係で厚労省に電話をするとすれば,Lである可能性が高いとLは考えていたとみられること,本件から,捜査が行われた平成21年当時までは,約5年間経過していたことなどの事情に照らすと,Lが,Fから,電話で依頼を受け,その後,電話で回答したものと思い込むということも想定できないものではない。 以上によれば,Lの検察官調書には,B及び被告人の公判供述の信用性を否定せしめるほどの信用性は認められない。 エM,Hの検察官調書の信用性についてM,Hの検察官調書は,Lの検察官調書と同様,それのみをみると不自然,不合理とはいえない。 ただし,Bが,Hに,6月になって,Hの検察官調書のような報告をしたのであるなら,なぜ,虚偽の稟議書等の作成,交付の段階については,Bは,Hに報告をしな れのみをみると不自然,不合理とはいえない。 ただし,Bが,Hに,6月になって,Hの検察官調書のような報告をしたのであるなら,なぜ,虚偽の稟議書等の作成,交付の段階については,Bは,Hに報告をしなかったのかという疑問が残る。 また,前記Lの検察官調書同様,B供述を否定せしめるような客観的証拠,事実に基づく裏付けはない。 HのMに対する報告についても,被告人の隣席のMに対して,Hが,「A課長なんかと相談してうまく処理してくれたようで」などと報告するというのも不自然な点が残る。 以上によれば,M,Hの捜査供述には,Bの公判供述の信用性を否定せしめるほどの信用性は認められない。 オ被告人の公判供述の信用性について被告人の供述は,Bの公判供述に符合するもので,客観的な証拠に照ら- 147 -して,不合理な点はない。 カその他なお,前同様に,当裁判所が,罪体関係の書証としては検察官の証拠請求を却下したが,非供述証拠として取り調べた検察官調書のうち,場面④に関するものの信用性についても,念のため言及しておく。 場面④に関するCの検察官調書(甲55)には,争点8で,検察官が主張する事実(Cの被告人への公的証明書の日付を遡らせた発行依頼と被告人の了承),Bの検察官調書(甲41)には,争点9,11で検察官が主張する事実(被告人からBへの公的証明書の発行指示とBから被告人への交付)に符合する内容の記載がある。 そこで,これらの記載について検討する。 これらの記載内容は,Dの検察官調書(甲50)の記載(6月8日ころのc郵便局からの指示を前提とする要請)を前提にするものであるが,前述したとおり,5月28日付けの本件公的証明書のデータを作成したのは,6月1日の午前1時ころ(5月31日の深夜と評価できる。)と認定できることからすると,6月5日又は7日ころに, るものであるが,前述したとおり,5月28日付けの本件公的証明書のデータを作成したのは,6月1日の午前1時ころ(5月31日の深夜と評価できる。)と認定できることからすると,6月5日又は7日ころに,Eからの指摘を受けたDからの要請で,5月中の日付で本件公的証明書が作成されたという点は,客観的事実に反する。上記の各検察官調書の記載は,当該事情と整合しない不合理なものとみられる。 また,6月8日ころに,Eからの指摘を受けたDからの要請で,早くとも6月9日以降に,5月中の日付で本件公的証明書が作成され被告人からCに対して交付されたという内容自体,前述したとおり,C,被告人の手帳の記載と整合しないものである。 その他,前記認定事実によれば,上記各検察官調書の信用性は高いものとはいえない。 (3) 結論 - 148 -以上の場面④に限定した証拠の検討の範囲では,次のとおり,認定できる。 ア証拠上認められる事実Bは,6月1日午前1時ころ,社会参加推進室の自席において,本件公的証明書のデータを作成し,同日午前8時ころ,当該データを出力・印字し,本件公的証明書を完成させた。 イ単体では,証拠上認定するに至らない事実被告人は,Bに指示して,公的証明書を作成させ,これをBから受け取り,Cに渡した。 被告人は,6月上旬ころ,Lに対し,「aの会」に対し,本件公的証明書を発行することになった旨報告した。 Bは,6月上旬ころ,Hに対し,「『aの会』の件は調整がついて,終わりましたので。」などと報告した。 Hは,6月上旬ころ,Mに対し,「F代議士から頼まれていた『aの会』の案件ですが,B係長がA課長なんかと相談して,うまく処理してくれたようで,公的証明書を発行することになりました。」などと報告した。 - 149 - 供述の総合的検討以上の検討を前提に,場面① の案件ですが,B係長がA課長なんかと相談して,うまく処理してくれたようで,公的証明書を発行することになりました。」などと報告した。 - 149 - 供述の総合的検討以上の検討を前提に,場面①ないし④を総合して,改めて,各供述全体の信用性について検討する。 (1)各供述の信用性についての場面全体からの検討アLの検察官調書Lの検察官調書は,被告人の本件への関与を基礎づける重要な証拠である。 そして,前記認定のとおり,場面①のLの検察官調書の供述のうち,Fから電話で,Cが公的証明書の関係で厚労省を訪問するので,その際の対応,協力を要請され,それを被告人に伝え,対応を指示したとの供述部分については,それ単体では,それなりに高い信用性を肯定できるともみられる。 もっとも,当該供述部分には客観的裏付けがあるわけではないのに対し,場面④に関する供述部分には,公的証明書のデータとCの手帳の記載という客観的証拠と整合するBの公判供述と反する点があることからすると,場面①に関する供述部分が,場面④に関する供述部分も含めた検察官調書全体の信用性を高めるものとはならない。 むしろ,場面④に関する供述部分が,客観的証拠による裏付けのあるBの公判供述に反していることから,Lの検察官調書全体の信用性に疑問を生じさせる点が付加されるものである。 イCの公判供述Cの公判供述は,本件の出発点ともいうべきFへの口利き依頼,そして,到達点ともいうべき被告人からの公的証明書の受領という重要な事実について供述しており,しかも,公判での供述ということで,この信用性評価は重要なものである。 しかし,Cの公判供述のうち,場面①に関する供述部分には,Fの手帳- 150 -とゴルフ場からの回答書,場面④に関する供述部分には,公的証明書のデータとCの手帳という客観的証拠と 要なものである。 しかし,Cの公判供述のうち,場面①に関する供述部分には,Fの手帳- 150 -とゴルフ場からの回答書,場面④に関する供述部分には,公的証明書のデータとCの手帳という客観的証拠と整合しない点があり,互いに信用性を高め合うものとはいえない。 また,場面③に関する供述部分は,被告人に直接要請したことを認める内容ではないことからすると,他の場面に関する供述の信用性を高めるものとはならない。 したがって,Cの公判供述全体を総合的にみても,各場面ごとの個別の検討以上の信用性を認めることはできない。 ウDの検察官調書,公判供述Dは,Cに,厚労省からの公的証明書の取得やFへの口利き依頼を要請した者として本件のきっかけともいえる人物であり,また,Bが,公判で,公的証明書を交付した相手として供述している人物でもあり,これらの点で,その信用性判断は重要な意味を有するとみることもできる。 前記認定のとおり,Dの検察官調書及びその内容が正しいとする公判供述のうち,場面①に関する供述部分(Cに対するFへの口利き依頼要請)には一定の信用性が認められる。しかし,場面①に関するDの検察官調書の供述部分から,必ずしも,必然的に,Cが厚労省から直接に公的証明書の交付を受けることが導かれるものではなく,場面④も含めた供述全体の信用性を特段高めるものとはならない。 むしろ,Dの検察官調書,公判供述のうち,場面④に関する部分は,客観的証拠による裏付けのあるBの公判供述に反しており,Dの検察官調書全体の信用性に疑問を生じさせる点が付加されるものである。 エNの検察官調書,公判供述Nは,Bの前任者で,公的証明書の発行手続担当者であった者として重要な意味を持つ人物であり,特に,その公判供述の信用性評価は,相当な意味を有するとみることもできる。 - 151 - 調書,公判供述Nは,Bの前任者で,公的証明書の発行手続担当者であった者として重要な意味を持つ人物であり,特に,その公判供述の信用性評価は,相当な意味を有するとみることもできる。 - 151 -前記認定のとおり,Nは,Bに対する社会参加係長の業務引き継ぎの際,口頭で,「aの会」が公的証明書の発行を依頼してきている旨を話したことは認められる。この点は,場面①及び②を通じたNの公判供述,検察官調書全体の信用性を高めるものともみられる。 しかし,引き継ぎの具体的内容についてみると,Fという国会議員がらみの案件である旨,「aの会」の実態がよく分からないので慎重に対応する必要がある旨告げたとの点には一定の信用性を肯定できるものの,これらの点は,Cが厚労省訪問の際に,NにFと一定の関係のあることを告げたことや,「aの会」についてのCの説明があいまいであったことからも,Nがそのような引継をなすことも想定できるものであり,それ以外の内容についての供述の信用性を高めるものとはならない。また,引き継ぎ内容のうち,「aの会」に対する公的証明書の発行がまず手を付ける業務であるとBに告げたとの点は認定することができない。 N供述のうち,Cが厚労省を訪問する前に,Nは,Mから,F事務所のCが,障害者団体の証明書の発行をお願いにくるので事務手続等を説明するようになど言われていたとの点については,信用性を肯定する方向に働く事情が認められる一方で,Cの手帳の記載,Cの名刺の所持状況などの客観的証拠との関係から合理的とはいえない面があり,単体で,完全に信をおくとまではいえないことからすると,当該供述部分が,他の場面に関する供述の信用性に与える影響も大きいとはいえない。 以上によれば,N供述の信用性は各場面における個別の検討を超えるものではない。 オH,Mの検察官調書 ことからすると,当該供述部分が,他の場面に関する供述の信用性に与える影響も大きいとはいえない。 以上によれば,N供述の信用性は各場面における個別の検討を超えるものではない。 オH,Mの検察官調書H,Mの検察官調書は,Lの検察官調書,Nの検察官調書,公判供述を補強する意味を持つ。 場面①のうち,被告人からCが来庁した場合の対応を指示されたこと,- 152 -Mが,Nに対し,「aの会」の関係者が来ると告げたことに関する供述部分については,信用性を肯定する方向に働く事情が認められる一方で,Cの名刺の所持状況などの客観的証拠と必ずしも符合しない点があり,単体で事実を認定できるほどの信用性を認めることはできず,他の供述部分の信用性に与える影響は大きいとはいえない。 また,場面②ないし④については,客観的事実から疑問が生ずる点がある。 結局,H,Mの検察官調書は,全体として高度の信用性を有するとみることはできない。 (2)各供述全体からの検討検察官の主張する事実経過は,次のとおりである。 「『aの会』に対する公的証明書発行の案件は,D,C,F,L,被告人,M,N,Bと,順次話が流れた。その後,被告人からBに対する直接の発行指示によって,Bが本件公的証明書を作成し,作成された本件公的証明書が,B,被告人,Cと順次交付された。そして,公的証明書を『aの会』に発行することになった旨が,被告人,L,Fと順次報告がなされた。以上の事実経過の間に,H,Mもそれぞれ関与していた。」そして,Cは,公判でも,「aの会」の案件に関する自己が関与する基本的な話の流れと公的証明書の交付の事実を認め,Nも,公判で,前記の話の流れと自己が関与する検察官主張事実を大筋においては認め,D,L,M,H,Nというそれぞれ立場の異なる者が,検察官調書では検察官主張に符合する 公的証明書の交付の事実を認め,Nも,公判で,前記の話の流れと自己が関与する検察官主張事実を大筋においては認め,D,L,M,H,Nというそれぞれ立場の異なる者が,検察官調書では検察官主張に符合する事実を認めている。 そのような,C,Nの公判供述,D,L,M,H,Nの検察官調書が,「aの会」の案件の話が流れた経緯,公的証明書が交付されていった順序,報告がなされた経緯といった様々な場面で,検察官主張を裏付けていること自体が,相互に信用性を補完し合うとみることができないかが,各供述相互の関- 153 -係も踏まえた総合的検討においては問題となる。 それぞれ立場が異なる者が,それぞれ異なった場面に関して,相互に符合する供述をすることは,それ自体,信用性を高め合うものであるといえる。 そして,それが,それぞれの者にとって有利とはいえない事実であり,かつ,それぞれの供述内容が具体的で迫真性がある場合は,信用性を高め合う度合いはより大きいものであるといい得る。 C,D,L,M,H,Nの公判供述あるいは検察官調書は,その意味で,相互に補完し合い,信用性を高め合うものといえる。 しかし,当初論じたとおり,人間の供述というものが,認識,記憶,表現の3段階で誤りが混入する可能性があり,また,供述内容の具体性,迫真性というものは,後で作り出すことも可能である以上,客観的な証拠による裏付けのない供述については,供述自体の信用性判断は慎重になされるべきであり,各々の供述に,いろいろな評価や見方を踏まえても,客観的証拠,あるいは証拠上明らかに認められる事実に照らして不合理な点がある場合には,いかに供述内容に具体性,迫真性があるようにみえ,各々の供述が符合していても,その信用性は大きく低下するといわざるを得ない。 この観点からみると,検察官主張を裏付けるC,D,L,M, がある場合には,いかに供述内容に具体性,迫真性があるようにみえ,各々の供述が符合していても,その信用性は大きく低下するといわざるを得ない。 この観点からみると,検察官主張を裏付けるC,D,L,M,H,Nの公判供述あるいは検察官調書には,これまでに検討してきたように,フロッピーに保存されたデータや手帳,名刺その他の客観的証拠や証拠上明らかに認められる事実にそれぞれ符合しない点があり,それらの供述がいかに相互に符合しているとしても,信用性を高め合うものとはいえず,全体としてみても,十分な信用性があると認定することはできない。 他方,検察官主張を否定する被告人の捜査,公判供述,B,L,M,Hらの公判供述は,客観的証拠や証拠上明らかに認められる事実に反する点はない。 (3)以上によれば,供述を総合的に検討しても,各供述の信用性については,- 154 -個別の検討による結論と基本的には変わらない。 - 155 - 検察官の主張事実の認定とこれを踏まえた共謀の認定(1)検察官主張事実の中核の認定検察官主張事実の中核は,次のとおりである。 被告人は,「aの会」は心身障害者団体としての実体がなく,定期刊行物「b」は心身障害者の福祉の増進を図ることを目的としないことを認識しながら,正規の手続をとらず,Bに指示して日付を遡らせた虚偽の公的証明書を作成させ,Bからこれを受け取った。そして,被告人は,Cに公的証明書を交付した。 被告人がそのようなことをしたのは,本件がFからLに要請された議員案件で,「aの会」の実態がいかなるものであれ,公的証明書を発行することが企画課内で決まっていた「議員案件」であったところ,「aの会」から日付を遡らせた公的証明書の交付を要請されたからである。 検察官主張の中核となる重要な事実は,1)本件がFからLに要請され,公的 とが企画課内で決まっていた「議員案件」であったところ,「aの会」から日付を遡らせた公的証明書の交付を要請されたからである。 検察官主張の中核となる重要な事実は,1)本件がFからLに要請され,公的証明書を発行することが企画課内で決まっている「議員案件」であったという点,2)被告人がCに公的証明書を交付したという点,の2点である。 前者は,犯行動機の中核,後者は,その動機に基づく最終的な行動となるものであり,両者は密接に関連する。 前記認定のとおり,2)被告人がCに公的証明書を交付したという点は,合理的疑いを入れることなく認定することはできない。 1)本件がFからLに要請され,公的証明書を発行することが企画課内で決まっている「議員案件」であったという点については,以下のとおりである。 Dは,2月下旬ころ,厚労省から公的証明書を得るため,Cに対し,Fに厚労省への口添えを依頼するよう指示したこと,Cは,2月下旬ころ,企画課を訪問したこと,その際,Nは,Cに対し,手続の流れなどの説明をしたことは認められる。 - 156 -しかし,FからLへの電話での口利きについては,Fの手帳の記載とゴルフ場からの回答書という客観的証拠に整合しない面がある上,その認定根拠たるLの検察官調書全体の信用性に疑問を生ぜしめる事情があり,同事実を認定することはできない。 また,被告人において,公的証明書を発行することが決まっている「議員案件」との認識を持つきっかけとされている,Lが,被告人に対して,議員案件処理の重要性を告げた上で,公的証明書を発行する方向で処理するよう告げた旨のLの検察官調書の供述自体も,不自然である(場面①)。 Cが,Fの秘書の経歴を有し,「aの会」側から,「aの会」が,Fから応援してもらっている団体であると厚労省側に伝えられていた事実は認められるが のLの検察官調書の供述自体も,不自然である(場面①)。 Cが,Fの秘書の経歴を有し,「aの会」側から,「aの会」が,Fから応援してもらっている団体であると厚労省側に伝えられていた事実は認められるが,被告人の大変な案件発言,j協会紹介の状況,HからNへの書類提出指示,3月下旬のやりとり,Hの4月上旬ころのBに対する指示,5月中旬ころのH,B,被告人の「aの会」の件についてのやりとりについては,Cの手帳,名刺の保管状況,NがCにj協会に行くよう指示したこと,Bが独断で稟議書等を作成したことといった客観的状況と整合せず,同事実を認定することはできない。 NからBへの引継ぎの存在については認定できる(ただし,Bの記憶には残らなかった疑いは否定できない。)が,その内容のうち,「議員案件」であったことの認定につながり得る「aの会」の公的証明書の発行がまず手を付ける業務であるとBに告げたとの内容は,認定することができない。Fという国会議員がらみの案件である旨,「aの会」の実態がよく分からないので慎重に対応する必要がある旨を告げたとの点は,Cが,厚労省訪問の際にNにFの名前を告げたことなどからもNがそのような引継をなすことも想定できるものであり,企画課内での公的証明書を発行することが決まっている「議員案件」であったとの認定根拠とはなるとはみられない(場面②)。 また,5月中旬ころ,Cの依頼に応じて,被告人が,日本郵政公社の「ユ- 157 -ー」に対し,電話をしたとの事実や,6月上旬ころ,Cは,被告人に対し,日付を遡らせて「aの会」に対する公的証明書を発行するよう要請し,被告人は,これを了承したとの事実も証拠上認めることはできない(場面③)。 以上からすると,「aの会」の案件が,公的証明書を発行することが企画課内で決まっている「議員案件」であったことに よう要請し,被告人は,これを了承したとの事実も証拠上認めることはできない(場面③)。 以上からすると,「aの会」の案件が,公的証明書を発行することが企画課内で決まっている「議員案件」であったことにつながり得る事実はいずれも認定できず,「aの会」の案件が,企画課内においてそのような「議員案件」であったとは認められない。 (2)共謀の認定について以上によれば,検察官主張事実のうち,Lの被告人に対する指示,被告人のM,H,N,Bに対する指示などの被告人と関係者とのやりとりに関する事実はいずれも認定することができない上,本件がFからLに要請され,公的証明書を発行することが企画課内で決まっている「議員案件」であったとの事実も認定できず,被告人において,本件犯行を行う動機があったとの点についても認定できない。 そのような事情に加えて,虚偽の稟議書等をBが独断で作成していることなど,被告人が本件犯行を行うことが不自然であるとみることもできる事実や,被告人の指示なく,Bが独断で本件公的証明書を作成しても不自然ではないことを示す事情もみられることからすると,Bが,被告人の指示により本件公的証明書を作成した事実は認められない。その他,本件証拠及び証拠上認められる事実を総合しても,被告人が,BあるいはC,Dと,虚偽の公的証明書を作成し,「aの会」側に交付するとの共謀があったと認定することはできない。 - 158 -第4 結論 よって,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。 平成22年9月24日大阪地方裁判所第12刑事部裁判長裁判官横田信之 裁判官難波宏 裁判官田郷岡正哲 4日 大阪地方裁判所第12刑事部 裁判長裁判官 横田信之 裁判官 難波宏 裁判官 田郷岡正哲

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