本件は、和泉市の住民らが、王子財産区の財産である土地の売買契約が違法であるとして、被告和泉市長に対し、所有権移転登記の抹消や土地の占有回復、文化財としての管理を求めた訴訟である。主要な争点は、住民訴訟に関する法令の適用、原告適格、請求の競合、文化財の管理に関する違法確認の可否、及び本件売買契約の違法性であった。裁判所は、住民訴訟の規定は財産区にも適用されるとし、財産区外の住民にも原告適格が認められると判断したが、文化財としての管理怠慢に関する請求は不適法とし、売買契約の違法性についても原告の主張を退けた。最終的に、控訴人らの請求は棄却され、原判決の一部が変更された。
○ 主文一控訴人A、同B、同C、同D及び同Eの控訴をいずれも棄却する。 二原判決中別紙死亡当事者目録記載の四名(一審原告F、同G、控訴人H及び同I)の請求に関する部分を取り消す。 本件訴訟のうち右四名の請求に関する部分は、同人らの死亡によりそれぞれ終了した。 三原判決中第一、二項の九名を除くその余の控訴人らの請求にかかる部分を、次のとおり変更する。 l 右控訴人らの被控訴人和泉市長Jに対する、原判決別紙物件目録(一)、(二)記載の土地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないことの違法確認を求める各訴えを却下する。 2 右控訴人らのその余の各請求をいずれも棄却する。 四訴訟費用は第一、二審とも、第二項の四名を除くその余の控訴人らの負担とする。 ○ 事実及び理由第一当事者の求めた裁判一控訴人(原告)ら(但し、別紙死亡当事者目録記載の四名を除く。以下、同じ) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人和泉市長J(以下「被告和泉市長」という。)の次のような和泉市王子財産区(以下「王子財産区」という。)財産の管理を怠る事実は、違法であることを確認する。 (一) 原判決別紙物件目録(一)、(二)記載の土地(以下「本件土地」という。)について大阪法務局泉出張所昭和六一年四月一四日受付第七八四一号でなされた、王子財産区より被控訴人K(以下「被告K」という。)への所有権移転登記(以下「本件所有権移転登記」という。)の抹消登記を得るための措置をとらないこと。 (二) 本件土地についての占有を被告Kから回復するための措置をとらないこと。 (三) 本件土地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないこと。 3 被告Kは、王子財産区に対し、本件土地についてなされた本件所有権移転登記の抹消登記手続をし、本件土地を引き渡せ。 4 訴訟費用は第一、二審 地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないこと。 3 被告Kは、王子財産区に対し、本件土地についてなされた本件所有権移転登記の抹消登記手続をし、本件土地を引き渡せ。 4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人(被告)らの負担とする。 二被控訴人(被告)ら 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人(原告)らの負担とする。 第二当事者の主張、当事者間に争いのない前提事実及び争点一当事者の主張当事者の主張は、次のとおり原判決を訂正等するほかは、原判決の事実中「第二当事者の主張」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 【原判決の訂正等】 1 一二頁五行目冒頭から八行目末尾までを次のとおりに改める。 「1原告らはいずれも和泉市の住民であり、そのうち原告A、同B、同C、同D、同Eは王子財産区の住民である(以下、右原告五名を「財産区住民原告ら」という。)が、それ以外の原告らは同財産区の住民ではない(以下、右原告らを「財産区外原告ら」という。)。」 2 三九頁三行目の「同条六項四号、」を削除する。 3 四〇頁一行目と二行目との間に次のとおり加え、二行目冒頭の「5」を「6」に改める。 「5原告らは、和泉市監査委員らに対し、昭和六二年二月二七日、本件売買契約は前記3の理由により違法、無効であるとして、法二四二条一項に基づいて監査を求め、損害を填補するために必要な措置を講ずるべきことを請求したが、和泉市監査委員らは、同年四月二五日、原告ら請求人に対し、右監査請求は理由がないとしてこれを棄却する旨の通知をした。」 4 五三頁八行目の「たいする」を「対する」に改める。 5 七一頁一一行目と末行の間に「7請求原因5の事実は認める。」を加える。 二当事者間に争いのない前提事実当事者間に争いのない前提事実は、次のとおり原判決を訂正等するほかは、原 「対する」に改める。 5 七一頁一一行目と末行の間に「7請求原因5の事実は認める。」を加える。 二当事者間に争いのない前提事実当事者間に争いのない前提事実は、次のとおり原判決を訂正等するほかは、原判決の理由中「第一当事者間に争いのない前提事実」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 【原判決の訂正等】 1 七二頁五行目冒頭から八行目末尾までを、前記一の【原判決の訂正等】1のとおりに改める。 2 七三頁五行目と六行目の間に次のとおり加え、六行目冒頭の「4」を「5」に改める。 「4原告らは、和泉市監査委員らに対し、昭和六二年二月二七日、本件売買契約は、請求原因3の理由により違法、無効であるとして、法二四二条一項に基づいて監査を求め、損害を填補するために必要な措置を講ずるべきことを請求したが、和泉市監査委員らは、同年四月二五日、原告ら請求人に対し、右監査請求は理由がないとしてこれを棄却する旨の通知をした。」三争点本件は、王子財産区の管理にあたってきた被告和泉市長(但し、本件売買契約当時の市長は、L〔前市長〕である。以下同じ)が同財産区財産である本件土地(ため池とその堤)を被告Kに売り渡す旨の本件売買契約を締結し、その履行として売買代金の支払を受けて本件所有権移転登記を了し、本件土地を引き渡したところ、和泉市の住民(一部は同財産区の住民)である原告らが、本件売買契約が手続法上ないし実体法上の違法により無効であると主張して、被告和泉市長に対して法(地方自治法)二四二条の二第一項三号に基づき、本件所有権移転登記の抹消登記を得るための措置をとらないこと、被告Kから本件土地の占有を回復する措置をとらないこと、本件土地を文化財として管理保存する手続をとらないことの管理を怠る事実の違法確認を求めるとともに、被告Kに対して同項四号に基づき、本件 ないこと、被告Kから本件土地の占有を回復する措置をとらないこと、本件土地を文化財として管理保存する手続をとらないことの管理を怠る事実の違法確認を求めるとともに、被告Kに対して同項四号に基づき、本件所有権移転登記の抹消登記手続及び本件土地の王子財産区への引渡しを求めた事件であり、主たる争点は、次のとおりである。 1 本案前の主張について(一) 住民訴訟に関する法二四二条の二の規定は、財産区についても適用ないし準用されるか(争点1)。 (二) 右(一)が肯定される場合、当該財産区の住民に限らず当該財産区のある市町村の住民も原告適格を有するか(争点2)。 (三) 法二四二条の二第一項三号の請求に係る訴えと同項四号の請求に係る訴えとが競合しても、三号請求の訴えに訴えの利益があるか(争点3)。 (四) 文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求は、住民訴訟の対象となり得ないか(争点4)。 2 本案について(一) 本件売買契約は、左記の理由による手続法上の違法により無効か(争点5)。 (1) 財産区住民の同意の欠如(2) 大阪府知事の認可の無効(1) 認可申請書添付書類についての瑕疵(2) M一人の意思による売却、処分理由の不存在等(3) 随意契約の制限に関する法令違反(1) 令(地方自治法施行令)一六七条の二第一項二号非該当(2) 同項五号非該当(3) 被告Kから黒鳥土地を買収するためになされた価格釣り合わせによる不当に低い代金額での売買(二) 本件売買契約は、被告和泉市長の法二条三項一四号、文化財保護法二ないし四条、九八条等違反による実体法上の違法により無効か(争点6)。 第三当裁判所の判断一判断の概要 1 当裁判所は、(一)住民訴訟に関する法二四二条の二の規定は、財産区についても適用される(争点1)、(二)右の場合、財 る実体法上の違法により無効か(争点6)。 第三当裁判所の判断一判断の概要 1 当裁判所は、(一)住民訴訟に関する法二四二条の二の規定は、財産区についても適用される(争点1)、(二)右の場合、財産区の住民に限らず当該財産区のある市町村の住民も原告適格を有する(争点2)、(三)法二四二条の二第一項三号の請求に係る訴えと同項四号の請求に係る訴えとが競合しても、三号請求の訴えに訴えの利益がある(争点3)、(四)文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求は、住民訴訟の対象となり得ない(争点4)、(五)本件売買契約は、原告らが主張する手続法上の違法により無効であるとはいえない(争点5)、(六)また、原告らが主張する実体法上の違法によっても無効であるとはいえない(争点6)、従って、原告らの被告和泉市長に対する本件土地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないことの違法確認を求める各訴えは、いずれも不適法であるからこれらを却下し、その余の請求は、いずれも理由がないからこれらを棄却すべきであると判断する。 2 そうすると、原判決中、これと同旨の財産区住民原告らの請求に関する部分についての原審の判断は是認できるが、財産区外原告らの請求に関し、財産区についての住民訴訟の原告適格を有するのは当該財産区の住民に限られるとし、財産区外原告らの各訴えを不適法として却下した部分については、これを変更し、被告和泉市長に対する本件土地を文化財として適切に管理保存する手続をとらないことの違法確認を求める各訴えを却下し、その余の各請求はこれを棄却すべきである(なお、右棄却部分は、いずれも原審において訴えを却下された部分であるが、原審の審理経過に照らすと、実質的に右各請求の実体判断に必要な審理は既に原審において尽くされていると認められるので、右のとおり判 お、右棄却部分は、いずれも原審において訴えを却下された部分であるが、原審の審理経過に照らすと、実質的に右各請求の実体判断に必要な審理は既に原審において尽くされていると認められるので、右のとおり判断をすることにした。)。 3 また、記録によれば、原告Fは昭和六三年八月二三日、同Gは平成三年一一月一日、同Hは平成六年九月一一日、同Iは平成八年二月五日にそれぞれ死亡していることが明らかである。しかるところ、住民訴訟を提起する権利は、適正な地方行政運営を保障する具体的手段として法(地方自治法二四二条の二)によって与えられた公法上の権利であり、一身専属的なものであって、原告が死亡した場合においては、その訴訟を承継する理由はなく、当然に終了するものと解されるので、原判決中、右四名の請求に関する部分は、取り消されるべきである。 4 右1、2の判断に至る過程は、後記二、三のとおり付加、訂正等するほかは、原判決の理由中「第二本案前の主張について」及び「第三本案について」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 二本案前の主張について 1 財産区についての住民訴訟の適用ないし準用(争点1)原判決七四頁四行目冒頭から七七頁一一行目末尾までを次のとおりに改める。 「財産区制度の発端は、明治二二年の市町村制施行の際、旧来から存した旧『村』有財産等に関する関係者の権利を保護するため、本来、新市町村に帰属させるべき財産に特別に法人格を与えたことに始まり、その趣旨が地方自治法にも引き継がれて今日の財産区制度になっているものと認められる(甲第五五号証の一ないし三)。 このような沿革を有する財産区は、市町村及び特別区のうちの一定範囲の地域及びその地域の住民を構成要素とする特別地方公共団体であって(法一条の二第三項)、独立の法人格を有する(法二条一項)とされているが のような沿革を有する財産区は、市町村及び特別区のうちの一定範囲の地域及びその地域の住民を構成要素とする特別地方公共団体であって(法一条の二第三項)、独立の法人格を有する(法二条一項)とされているが、その権能は、所有する財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止に限られており、原則として固有の機関を有していない。すなわち、財産区の財産等について、『その財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止については、この法律中地方公共団体の財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止に関する規定による。』(二九四条一項)とされているものの、その機関に関しては、条例により財産区の議会又は総会を設けて議決にあたらせ(法二九五条)、あるいは条例により同意機関として財産区管理会を置くことができる(法二九六条の二、同条の三)とされている以外、特別の規定はない。そうすると、右議会又は総会が設けられたとき以外の財産区の意思決定機関は市町村等の議会ということになると解される(法九六条一項六号、七号)。 また、財産区の執行機関については、これを明記した特別の規定は何ら存しないが、その事務処理に関する規定をみてみると、市町村等の長は、財産区の財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止で重要なものについては、財産区管理会の同意を得なければならず(法二九六条の三第一項)、財産区の財産又は公の施設の管理に関する事務の全部又は一部を財産区管理会又は財産区管理委員に委任することができるとされ(同条の三第二項)、都道府県知事は、財産区の事務の処理について市町村等の長に報告等を求めることができるとされており(法二九六条の六)、これらのことからすると、法は市町村等の長が財産区の事務の処理に当たることを予定しているものと解することができる。 以上にみてきた財産区の沿革と財産区に関する各規定及び財産区がそれ 法二九六条の六)、これらのことからすると、法は市町村等の長が財産区の事務の処理に当たることを予定しているものと解することができる。 以上にみてきた財産区の沿革と財産区に関する各規定及び財産区がそれなりの法人格を有する特別地方公共団体であることを考慮すると、法二九四条一項が前示のように規定しているのは、財産区の所在する市町村等にその事務を委任する趣旨であると解することができ、財産区の所在する市町村等は、財産区の事務を団体委任事務として処理するものと解する(法二条二項)のが相当である。 そうだとすると、財産区についても法二四二条及び同条の二が適用されるといわなければならず、この点に関する被告らの主張は採用できない。」 2 財産区についての住民訴訟の原告適格(争点2)原判決七八頁一行目冒頭から八〇頁六行目末尾までを次のとおりに改める。 「右のとおり、財産区についても法二四二条及び同条の二が適用されるとすると、財産区の住民のみならず、当該財産区の所在する地方公共団体の住民にも財産区についての住民訴訟の原告適格を認められるというべきであり、この点に関する被告らの主張も採用できない。」 3 法二四二条の二第一項四号請求と競合する同項三号請求の訴えの利益(争点3)同一の事項について四号請求を行うときには三号請求が訴えの利益を欠き不適法になると解するのは相当ではなく、本件各三号請求の訴えは適法である。その理由は、原判決(八〇頁八行目から八三頁一行目まで)に示されているとおりである。 4 文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求の適法性(争点4)右違法確認請求は、住民訴訟の対象たり得ず不適法であるから、原告らの右請求に係る訴えはいずれも不適法として却下されるべきである。その理由は、原判決(八三頁三行目から八四頁一行目まで)に示されているとお 違法確認請求は、住民訴訟の対象たり得ず不適法であるから、原告らの右請求に係る訴えはいずれも不適法として却下されるべきである。その理由は、原判決(八三頁三行目から八四頁一行目まで)に示されているとおりである。 三本案について 1 本件売買契約の手続法上の違法による無効(争点5)(一) 財産区住民の同意の欠如財産区住民の同意の欠如を理由として本件売買契約が無効であるとする原告らの主張は採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等し、原告らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決(八四頁五行目から八七頁六行目まで)に示されているとおりである。 【原判決の訂正等】八四頁七行目の「法二九四条一項」の次に「、九六条、一四八条、一四九条六号、七号」を加える。 【原告らの当審における補充主張に対する判断】原告らは、当審において、「和泉市が、従来から、財産区財産の処分に関し財産区財産取扱要綱(本件要綱)を定め、その中で当該財産の処分について財産区住民の同意を得ること等を手続的要件とするとともに、本件要綱に従い、財産区住民の同意のある場合にのみ財産区財産の処分を認めて大阪府知事への認可申請を行うという取扱いをしてきたのは、特別地方公共団体の一つである財産区の財産管理者たる被告和泉市長自身が、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨すなわち、その地方の公共事務はなによりもその地方の住民の意思に基づいて行われるべきであるとの憲法の要請(憲法九二条)及び地方自治法の趣旨を受けて、自らその裁量権に制約を課し、制限的に処分権を行使してきたことを意味するものである。しかるに、本件において、従来の本件要綱に従った取扱いを無視して財産区住民の同意がないのに財産区財産の処分を認めるのは、裁量権の濫用ないしその範囲を逸脱するもの 使してきたことを意味するものである。しかるに、本件において、従来の本件要綱に従った取扱いを無視して財産区住民の同意がないのに財産区財産の処分を認めるのは、裁量権の濫用ないしその範囲を逸脱するものであり、違法となる。」としたうえ、「(1)和泉市においては、従来、町会総会の決議があれば財産区住民の同意があったとみなし得るという考えを前提に、住民総会(町会総会)の議事録を財産区財産の処分申請書に添付することを要求する本件要綱を定め、それにそった運用をしてきたという経過があり、(2)王子財産区を構成する宮本町会及び王子町会の実情からみて、町会総会が十分開催可能であったにもかかわらず、(3)本件土地の処分の可否を議題として町会総会を開催する旨の通知を町会の構成員に対してなした上での町会総会は開催されておらず、一部の役員が出席した会合で出席者らが勝手にその会合を総会扱いすることにして総会と称することにしており、(4)その後の経過からみて、もしきちんと議題を通知して町会総会が開催されていれば、総会としては本件土地の処分について同意しなかった可能性は十二分にあり、(5)しかも、管理者たる被告和泉市長(担当者)は、このことを十分知悉しながら大阪府知事に対する認可申請に及んだという事情がある。このような事情のもとでは、被告和泉市長が財産区住民の同意を得ることなく本件売買契約を締結し、本件土地を処分した行為は、地方自治の本旨及び財産区制度の趣旨を没却するものであり、管理権の濫用ないし逸脱として違法無効になると解すべきである」旨主張する。 しかしながら、財産区財産の処分にあたり財産区住民の同意を得ることは地方自治法上その要件とされていないこと、及び本件要綱の性質が、あくまでも和泉市内部での財産区財産の処分を行う場合の取扱いの要領を定めたものにすぎないことは原 処分にあたり財産区住民の同意を得ることは地方自治法上その要件とされていないこと、及び本件要綱の性質が、あくまでも和泉市内部での財産区財産の処分を行う場合の取扱いの要領を定めたものにすぎないことは原判決に示されているとおりであり、そうである以上、これまでの内部的な取扱いの要領との関係からすると、原告らが指摘する問題があることは否定し得ないとしても、右のような本件要綱の性質や対外的な関係(処分行為の相手方となった者の立場)をも考慮に入れるとすると、右のことから直ちに本件売買契約を無効であるというのは相当でなく、やはり、原告らの右主張も採用できないといわざるを得ない。 (二) 大阪府知事の認可の無効(1) 認可申請書添付書類についての瑕疵右認可申請書添付書類についての瑕疵を理由として大阪府知事の認可が無効であるとする原告らの主張は採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等し、原告らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決(八七頁九行目から九八頁一行目まで)に示されているとおりである。 【原判決の訂正等】九 〇頁四行目の「甲一〇、一一、」の次に「一二の三、一二の六ないし八」、四行目から五行目にかけての「一二の一五」の次に「、一二の二四、乙一の七、一の四五」をそれぞれ加え、八行目の「本件土地に隣接する」を「本件土地の近くに所在する」、九三頁八行目の「それら者」を「それらの者」にそれぞれ改める。 【原告らの当審における補充主張に対する判断】原告らは、当審において「本件要綱では、財産区財産の処分については、処分しようとする者が当該財産に係る公用を廃止させて諸権利諸問題を消滅させた上、(1)財産区代表者(町会長)の処分申請書、(2)財産区関係者(町会役員)の同意書、(3)実行組合長(農協支部の代表者)の同意書、(4)財産区 該財産に係る公用を廃止させて諸権利諸問題を消滅させた上、(1)財産区代表者(町会長)の処分申請書、(2)財産区関係者(町会役員)の同意書、(3)実行組合長(農協支部の代表者)の同意書、(4)財産区代表者(町会長)の確約書、(5)水利権放棄書、(6)財産区住民総会(町会総会)議事録を提出して、被告和泉市長に申請しなければならないとされている。これは、(3)の実行組合長の同意書と(5)の水利権放棄書の提出によって、当該財産に係る権利関係を既に消滅させていることを担保し、(2)の財産区関係者の同意書と(5)の財産区住民総会議事録の提出によって、当該財産区住民の同意を得ていることを担保しようとしたものである。しかるところ、本件では、(3)(王子実行組合長の同意書)及び(5)(水利権放棄書)は作成権限のない者が作成したもの、(2)(宮本町会の部落役員同意書)は別の目的で作成されたものを流用したもの、(5)(宮本町会総会議事録及び王子町会総会議事録)は開催の事実のない住民総会(町会総会)を開催したと記載したものであり、(1)、(4)以外の書類にはいずれも重大な瑕疵があり、これに基づく大阪府知事に対する認可申請を容認したのでは、本件要綱の趣旨、ひいては地方自治の精神及び財産区制度の趣旨を完全に否定することになる」旨主張する。 しかしながら、前示のとおり、財産区財産の処分にあたり財産区住民の同意を得ることは地方自治法上その要件とされていないこと、また、法二九六条の五第二項による知事の認可は、財産区設置の趣旨、財産区住民の福祉増進等一切の事情を総合考慮してなされるものであり、本件における大阪府知事の認可も、原告らが指摘する同意書等の存在のみを理由に認可されたものとは解せられないので、原告らの右主張は採用できない。 (2) M一人の意思による売却、処分理 れるものであり、本件における大阪府知事の認可も、原告らが指摘する同意書等の存在のみを理由に認可されたものとは解せられないので、原告らの右主張は採用できない。 (2) M一人の意思による売却、処分理由の不存在等この点に関する原告らの主張は採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等するほかは、原判決(九八頁四行目から一〇一頁八行目まで)に示されているとおりである。 【原判決の訂正等】一〇 〇頁六行目の「七の二、」の次に「一〇、」、一〇一頁六行目末尾に「また、被告和泉市長ないし和泉市の担当者が知事の認可を騙取する意図をもって認可申請を行ったと認めるに足りる証拠はない。」をそれぞれ加え、八行目の「原告等の主張は失当である。」を「原告らの主張は理由がない。」に改める。 (三) 随意契約の制限に関する法令違反原告らは、本件売買契約は令一六七条の二第一項二号、五号に該当するとして随意契約の方法でなされたが、実際には右いずれの場合にも該当せず、被告Kから黒鳥土地を買収するためになされた価格釣り合わせによる不当に低い代金額での売買であるから、本件売買契約は無効であると主張するが、右主張は、いずれも採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等し、原告らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決(一〇一頁一〇行目から一二一頁一行目まで)に示されているとおりである。 【原判決の訂正等】一〇 三頁末行の「乙一の二」及び一〇五頁一行目から二行目にかけての「証人M」の前に、それぞれ「甲一八ないし二〇、」を加え、一〇六頁四行目末尾に「なお、原告らは、本件土地につき、本件売買価格の坪当たり一四万円より高い坪当たり一七万円で買いたいという希望者が他に存在したと主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。」を加え、一〇七頁五行目の「維持管 告らは、本件土地につき、本件売買価格の坪当たり一四万円より高い坪当たり一七万円で買いたいという希望者が他に存在したと主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。」を加え、一〇七頁五行目の「維持管」を「維持管理」に改め、一一五頁一〇行目末尾に「右代金額は、株式会社補償評価研究所の鑑定評価に基づいて決定された。」、一一七頁七行目の「判決」の次に「・民集四一巻四号六八七頁参照」をそれぞれ加え、一二一頁一行目の「失当である。」を「理由がない。」に改める。 【原告らの当審における補充主張に対する判断】(1) 原告らの当審における補充主張法二三四条一項が「売買、賃借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし、二項が「前項の・・・、随意契約・・・は、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。」としている趣旨は、一般競争入札の方法が、機会均等の理念に最も適合して公正であり、かつ、地方公共団体にとっての価格の有利性を確保し得ること、随意契約には、契約の相手方が固定化し、契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあること等にあり、かかる観点からすると、令一六七条の二第一項二号の「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当する場合としては、(1)不動産の買入れ又は借入れに関する契約のように、当該契約の目的物の性質から契約の相手方がおのずから特定の者に限定されてしまう場合、(2)契約の締結を秘密にすることが当該契約の目的を達成する上で必要とされる場合、(3)不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当でなく、当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者と 、(3)不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当でなく、当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合が挙げられる(最高裁判所昭和五七年(行ツ)第七四号昭和六二年三月二〇日第二小法廷判決)。これを本件売買契約についてみるに、不動産の購入と違って売却であるから、契約の相手方がおのずから特定の者に限定されるわけではなく、(1)には該当しない。本件売買契約の目的は、被告らの主張によっても本件土地(ため池とその堤)の維持管理から免れることと、王子財産区内の他のため池、水路等の維持管理に必要な費用の取得とにあったというのであるから、契約の締結を秘密にする必要はなく、(2)にも該当しない。本件売買契約の条件とされた一〇年間の現状有姿での保存と転売禁止の義務は、単に買主に対して不作為を求めるものにすぎず、悪臭の除去や防護柵の設置等の維持管理も、管理行為としては初歩的かつ簡易なもので、契約において特に定めずとも、ため池の保有者である限り当然に負担する基本的な責務にすぎないから、結局、本件土地の管理には、特段の資力、信用、技術、経験等を必要とするものではなく、(3)にも該当しない。 また、令一六七条の二第一項五号の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」についていえば、右にいう「有利な価格」は、契約担当者の合理的な判断が含まれていなければ具体的には決定できないものではあるが、前記同項二号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に とき」についていえば、右にいう「有利な価格」は、契約担当者の合理的な判断が含まれていなければ具体的には決定できないものではあるが、前記同項二号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当するか否かの判断と比較すれば、その判断ははるかに容易であり、また、客観性を持たせることができる判断であり、その意味で契約担当者の裁量の幅は比較的狭く限定されている。そして、その具体的方法として鑑定の制度が存在する。しかも、単に「有利な価格」ではなく「著しく」有利な価格でなければならないとされていることからすると、「少々の価格的有利さ」や「多少又は普通程度の価格的有利さ」であれば、それは一般競争入札に付した場合にも当然予想できることであるから随意契約に付することは認められない。これを本件売買価格についてみるに、右価格は、本件売買契約に近接した時点で新たな鑑定評価をすることなく、契約担当者において単純に昭和五八年一二月時点の本件土地の鑑定評価額に経時的な修正率一〇パーセント分を上乗せし、これに更に一〇パーセント上乗せするという方法で算定したものにすぎず、右の程度でもって競争人札の原則の例外としての随意契約の方法によることが許される程の「時価に比して著しく有利な価格」とはいえない。 (2) 右補充主張に対する判断一般競争入札を原則とし随意契約を例外とした法二三四条一項、二項の趣旨は原告ら主張のとおりであり、右趣旨からすると、令一六七条の二第一項は、随意契約の方法により得る場合を一号から七号まで列挙しているが、これらの事由は限定列挙と解すべきものである。従って、列挙された事由のいずれにも該当しない場合に随意契約の方法によって契約が締結された場合には、違法というべきことになる。ところで、同項二号は「・・・・・・その他の契約でその性質又は目的が競争入 従って、列挙された事由のいずれにも該当しない場合に随意契約の方法によって契約が締結された場合には、違法というべきことになる。ところで、同項二号は「・・・・・・その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」と定めているが、そこに例示されているもののほか、どのような契約がこれに該当するのかは必ずしも明らかではない。しかし、以下にみるように会計法等の規定に照らしてみると、右にいう「競争入札に適しないもの」という概念にもある程度の幅があることが明らかである。すなわち、会計法並びに予算決算及び会計令(以下「予決令」という。)の規定をみてみると、会計法二九条の三第一項によると、売買等の契約を締結する場合においては、競争に付することを基本としているが、同第四項において「契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。」とし、同五項において「契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、・・・随意契約によることができる。」と規定したうえ、予決令九九条においては、随意契約によることができる場合を一号から二五号まで類型的に列挙している。これらの定めから明らかなように、会計法は、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」等、競争原理を導入することが不可能又は著しく困難なものについては、随意契約によるものとしたが、契約の締結に当たって競争原理の導入が可能な場合であっても、競争に付する必要が乏しいものや当該契約の性質や目的に照らして競争に付することか必ずしも適当でないものもあり得ることを認め、それらを予決令において類型化して列挙し、これに該当するときは随意契約により得ることを 必要が乏しいものや当該契約の性質や目的に照らして競争に付することか必ずしも適当でないものもあり得ることを認め、それらを予決令において類型化して列挙し、これに該当するときは随意契約により得ることを明らかにしているものと解される。そして、令(地方自治法施行令)一六七条の二第一項二号所定の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」との要件は、会計法二九条の三第四項の「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」とは明らかに異なり、これよりも広く、契約の締結に当たって競争原理の導入が不可能又は著しく困難と認められる場合のみならず、競争原理の導入が可能な場合にも、なお競争入札に適しないとされるものがあり得ることを前提にしているものと解される。そうだとすれば、令一六七条の二第一項第二号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するか否かは、ある程度幅のある判断であり、普通地方公共団体の契約担当者が契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案し、個々具体的な契約毎に、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考慮して、その合理的な裁量に基づいて判断すべきものと解するのが相当であり(最高裁判所昭和五七年(行ツ)第七四号昭和六二年三月二〇日第二小法廷判決・民集四一巻二号一八九頁参照)、右契約担当者の判断が明らかに不合理であると認められる場合にはじめてこれを違法とすることができるものというべきである。 また、令一六七条の二第一項五号所定の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」についても、多かれ少なかれ判断の幅の生じ得る要件の定め方がされており、法文上はこれに該当するか否かの判断に契約担当者の裁量を認める余地が十分 利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」についても、多かれ少なかれ判断の幅の生じ得る要件の定め方がされており、法文上はこれに該当するか否かの判断に契約担当者の裁量を認める余地が十分にあるから、同号の規定により随意契約の方法によることができる場合に該当するか否かについても、個々具体的な契約毎に、適正な時価の判定に基づく普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定すべきものと解するのが相当であり、右契約担当者の判断が明らかに不合理であると認められる場合にはじめてこれを違法とすることができるものというべきである。 そして、これを本件についてみるに、本件売買契約に関し原審において認定された事実によれば、原判決にも示されているとおり本件売買契約が令一六七条の二第一項二号、五号に該当するとの被告和泉市長の判断が明らかに不合理であるとまではいえないから、原告らの前記補充主張を考慮しても、この点に関する原告らの主張は採用できない。 2 本件売買契約の実体法上の違法による無効(争点6)原判決一二一頁三行目冒頭から一二二頁六行目末尾までを次のとおりに改める。 「(一)原告らは、住民訴訟の対象が地方公共団体の執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限られるとしても、右行為が違法となるのは、単にそれ自体が直接財務会計法令や財務会計原理に違反する場合だけでなく、右行為がそれを統制する別の原理に違反して許されない場合や、右行為の前提となる非財務行為が法令に違反して許されない場合の財務会計上の行為も、また、違法となる余地があることを前提として、前示の原審における主張に加えて、当審において次のとおり主張する。 本件各訴えのうち、被告和泉市長に対して本件所有権移転登記の抹消登記を得るための措置をとらないこと、被告Kから本件土地の 前提として、前示の原審における主張に加えて、当審において次のとおり主張する。 本件各訴えのうち、被告和泉市長に対して本件所有権移転登記の抹消登記を得るための措置をとらないこと、被告Kから本件土地の占有を回復する措置をとらないことの管理を怠る事実の違法確認を求める訴え、及び被告Kに対して本件所有権移転登記の抹消登記手続及び本件土地の王子財産区への引渡しを求める訴えのように、売買契約の無効を前提に当該売買契約の履行に基づく違法状態の解消を求める住民訴訟において、売買契約を無効に至らしめる違法理由として主張し得る行為は、当該売買契約に関する財務会計行為に限られることはあり得す、当該契約に関する実体法上の違法理由のすべてに及ぶことは明らかである。 和泉市は、普通地方公共団体として、「建造物、絵画、芸能、史跡、名勝その他の文化財を保護し、又は管理する」事務を処理する(法二条二項、三項一四号)から、被告和泉市長は、普通地方公共団体である和泉市の長として、和泉市内に存在する文化財を保護し、又は管理する事務を管理し、これを執行する権限を有している(法一四八条一項)。他方、王子財産区は、特別地方公共団体として、財産区財産等の管理及び処分又は廃止に関する権能を有し、被告和泉市長は、同財産区の管理者として右事務を管理、執行する権限を有している(法二九四条一項、一四八条、一四九条六号、七号)。 しかるところ、文化財保護法三条は「・・・地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。」と、四条二項は「文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であるこ あることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。」と、四条二項は「文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。」と規定しているが、右にいう「文化財」とは同法二条で定義された「文化財」であり、指定を受けた文化財に限定されるものではない。そして、未指定の文化財であっても、それがわが国にとって歴史上、学術上価値の高いもので、広く国民がその価値を認め、その保存が強く求められている場合、当該文化財を所有しているのが地方公共団体自身であり、従って、関係者の所有権その他の財産権に対する配慮を必要とせず、当該文化財を保存することが容易であり、かつ、当該地方公共団体以外に当該文化財の保存をする者が予定されていない等の特段の事情が存するときは、当該文化財の所有者である地方公共団体は、文化財保護行政を行う者として、未指定の文化財であるとの理由で放置することは許されず、指定されるまでの間、文化財保護法の趣旨に従って適切に当該文化財を保存すべき法律上の義務が生ずるのであって、かかる義務を怠るときは違法となる。 本件についてこれをみるに、本件土地(ため池とその堤・「鏡池」)は、未だ文化財保護法六九条に基づく指定を受けていないが、同条にいう「史跡」として指定されるべき「旧宅、園池、井泉、樹石及び特に由緒のある地域の類」に該当する「重要な記念物」である。本件売買契約締結当時、かかる価値のある文化財たる本件土地を所有していたのが特別地方公共団体である王子財産区であり、私人の所有権に対する制限を加えることなく本件土地を保存することが可能であり、その管理者(執行機関)であ かかる価値のある文化財たる本件土地を所有していたのが特別地方公共団体である王子財産区であり、私人の所有権に対する制限を加えることなく本件土地を保存することが可能であり、その管理者(執行機関)である被告和泉市長のほかに本件土地の保存を行う適任者は存在しなかったから、被告和泉市長が、本件土地に対する文化財保護行政を行うべき普通地方公共団体である和泉市の長として(地方自治法二条二項、三項一四号、文化財保護法三条)、かつ、本件土地の所有者、すなわち特別地方公共団体である王子財産区財産の管理者として(地方自治法二九四条一項、文化財保護法四条二項)、地方自治法及び文化財保護法に基づき、本件土地を適切に保存すべき法律上の義務を負っていたことは明らかである。 本件売買契約は、被告和泉市長のかかる保存義務に違反してなされたものであるから違法性は重大かつ明白であり、しかも、本件土地の価値、保存を求める声はひろく報道機関等を通じて周知されていた事実に照らすと、かかる違法の存することは被告Kも知っていたから、本件売買契約は無効である。 (二) しかしながら、本件土地を文化財として保護していくかどうかは、原告らもいうとおり、元来、文化財保護行政の問題であり、それを行うべき立場にあるのは普通地方公共団体である和泉市であると解されるところ、原告らは、本件売買契約は、被告和泉市長が普通地方公共団体である和泉市の長及び特別地方公共団体である王子財産区の管理者として負っていた保存義務に反してなされたものであるというが、原告らが指摘する各法条に照らしてみても、被告和泉市長が本件土地につき原告ら主張の法律上の義務を負っていたと認めることはできない。そうだとすれば、文化財として格別の措置のとられていない本件土地についてなされた本件売買契約を、原告らがいうような理由で文化財保存 につき原告ら主張の法律上の義務を負っていたと認めることはできない。そうだとすれば、文化財として格別の措置のとられていない本件土地についてなされた本件売買契約を、原告らがいうような理由で文化財保存義務違反により無効となるとすべき余地はなく、結局、その余の点について判断するまでもなく、前記(一)の原告らの主張は採用できない。 (三) その他、本件土地の売却代金が不当に低額であるといえないことは前示のとおりであるし、その使途が違法であるといえるような事情は何ら認められない。 よって、本件売買契約が実体法上の違法により無効になるとの原告らの主張は理由がない。」四結論以上の次第で、原判決中、財産区住民原告ら(原告A、同B、同C、同D及び同E)の請求に関する部分は相当であるから、同原告らの控訴を棄却し、死亡した原告ら(原告F、同G、同H、同I)及び財産区外原告ら(右九名以外の原告ら)の請求に関する部分はこれを取り消し、変更して、主文第二、三項のとおり判決することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官上野茂竹原俊一長井浩一)別紙死亡当事者目録(省略)参考本控訴審判決において付加、訂正、削除の上、引用された原審判決部分を組み込んだ判決の事実及び理由(注)原審判決が、本控訴審判決により付加、訂正されている部分には傍線を、削除されている部分には(※)を付した。 なお、引用された部分の当事者の表記は、原審判決の表記のままとした。 ○ 事実及び理由第一当事者の求めた裁判一控訴人(原告)ら(但し、別紙死亡当事者目録記載の四名を除く。以下、同じ) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人和泉市長J(以下「被告和泉市長」という。)の次のような和泉市王子財産区(以下「王子財産区 訴人(原告)ら(但し、別紙死亡当事者目録記載の四名を除く。以下、同じ) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人和泉市長J(以下「被告和泉市長」という。)の次のような和泉市王子財産区(以下「王子財産区」という。)財産の管理を怠る事実は、違法であることを確認する。 (一) 原判決別紙物件目録(一)、(二)記載の土地(以下「本件土地」という。)について大阪法務局泉出張所昭和六一年四月一四日受付第七八四一号でなされた、王子財産区より被控訴人K(以下「被告K」という。)への所有権移転登記(以下「本件所有権移転登記」という。)の抹消登記を得るための措置をとらないこと。 (二) 本件土地についての占有を被告Kから回復するための措置をとらないこと。 (三) 本件土地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないこと。 3 被告Kは、王子財産区に対し、本件土地についてなされた本件所有権移転登記の抹消登記手続をし、本件土地を引き渡せ。 4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人(被告)らの負担とする。 二被控訴人(被告)ら 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人(原告)らの負担とする。 第二当事者の主張、当事者間に争いのない前提事実及び争点一当事者の主張当事者の主張は、次のとおり原判決を訂正等するほかは、原判決の事実中「第二当事者の主張」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 〔付加、訂正、削除の上、引用された原審判決部分〕第二当事者の主張(原告ら)一請求原因 1 原告らはいずれも和泉市の住民であり、そのうち原告A、同B、同C、同D、同Eは王子財産区の住民である(以下、右原告五名を「財産区住民原告ら」という。)が、それ以外の原告らは同財産区の住民ではない(以下、右原告らを「財産区外原告ら」という。)。 2 本件土地は、王子財産区財 は王子財産区の住民である(以下、右原告五名を「財産区住民原告ら」という。)が、それ以外の原告らは同財産区の住民ではない(以下、右原告らを「財産区外原告ら」という。)。 2 本件土地は、王子財産区財産であるが、被告和泉市長は、同財産区の管理者として昭和六一年三月三日、被告Kとの間で、本件土地を代金九一五一万八三五〇円で売り渡す旨の契約(以下「本件売買契約」ともいう。)を締結し、その契約の履行として、売買代金の支払を受けて、同年四月一四日本件土地について本件所有権移転登記を了し、その頃本件土地を同人に引き渡した。 3 本件売買契約の違法無効(一) 手続法上の違法による無効(1) 財産区住民の同意の欠如による無効財産区制度は、旧来住民の利用に供されてきた旧町村の財産について、市町村制の実施に伴って行われた町村合併によってこれら旧町村が独立の人格を喪失したのに伴い、これら旧町村の財産に対する住民の利用等を保護するため、これらの財産の管理処分に関する範囲内で旧町村に独立の人格を認めた制度である。このような制度趣旨からすると、財産区財産の処分に関しては、財産区の実情、財産区住民の利益が十分に反映されるような手続が必要となる。このことは、地方自治法(以下条文を摘示するときには「法」という。)二九六条の五第一項の規定の趣旨からも窺われるところである。 このような要請に基づいて、地方自治法は、財産区財産の処分については、地方公共団体の他の財産とは異なり、財産区の議会又は総会の議決(法二九五条、二九六条)ないしは財産区管理会の同意(法二九六条の二ないし四)を手続上の要件とし、また、当該財産区の設置の趣旨を逸脱する虞のある財産区財産の処分については、都道府県知事の認可を手続上の要件としている(法二九六条の五第二項)。これらの手続要件のうち、財産区の議会又 上の要件とし、また、当該財産区の設置の趣旨を逸脱する虞のある財産区財産の処分については、都道府県知事の認可を手続上の要件としている(法二九六条の五第二項)。これらの手続要件のうち、財産区の議会又は総会や財産区管理会は、その設置が任意的なものとされ、それらの機関が設置されていない場合にその議決や同意等に代わる手続要件を直接定める規定はない。しかし、それらの機関の議決や同意等が設けられた規定の趣旨や財産区の制度自体に内在する要請に照らすと、王子財産区のようにそれらの機関が設置されていない場合には、財産区財産の処分を財産区住民の意思を顧慮することなく市町村長の全くの裁量に委ねることとし、財産区住民の利益の保護は都道府県知事の認可権、監査権のみに頼ることとするのが地方自治法の趣旨であると解することはとうていできない。 更に、和泉市では、財産区財産の処分に関し財産区財産取扱要綱(以下「本件要綱」という。)が定められていて、その処分につき(1)当該財産に関する私人の権利関係を消滅させること、(2)当該財産の処分について財産区住民の同意を得ることを手続的要件としているが、これらの要件が財産区住民の利益を保護し処分の適否を財産区住民の意思にかからしめようとする趣旨のものである点において、地方自治法が財産区の議会又は総会、財産区管理会の制度を設けた趣旨と軌を一にすることなどをも勘案した場合、かかる手続的要件、とりわけ財産区住民の同意は、それらの機関が設けられていない王子財産区の場合地方自治法上の要請であり、これに反する財産の処分は、財産区の議会又は総会の議決ないしは財産区管理会の同意が必要な場合にそれらを欠いたのと同様の重大な違法性を帯び、無効になるというべきである。 しかも、和泉市では、従来から本件要綱に従い、財産区住民の同意のある場合にのみ財産区 いしは財産区管理会の同意が必要な場合にそれらを欠いたのと同様の重大な違法性を帯び、無効になるというべきである。 しかも、和泉市では、従来から本件要綱に従い、財産区住民の同意のある場合にのみ財産区財産の処分を認め大阪府知事への認可申請を行うという取扱が定着していたのである。従って、被告和泉市長において、従来の要綱に従った取扱を無視して財産区住民の同意がないのに財産区財産の処分を認めるのは、裁量権の濫用ないしその範囲を逸脱するものであり、違法になると解せられる。かかる意味で、被告和泉市長の裁量権は収縮しているというべきである。 そして、本件の場合、本件土地の処分に関しては、王子財産区を構成する宮本町会及び王子町会ともに町会総会を開いておらず、財産区住民の同意が得られていなかった。従って、本件売買契約は無効である。 (2) 大阪府知事の認可の無効による無効本件土地の処分に関しては、法二九六条の五第二項による大阪府知事の認可が必要であり、同知事は、被告和泉市長の認可申請に対して、昭和六一年三月二七日付けで認可を行っている。しかし、右認可は、次の理由により無効であるから、本件売買契約は無効である。 イ認可申請書添付書類についての瑕疵による無効i 本件要綱によれば、和泉市における財産区財産の処分については、処分をしようとするものが当該財産に係る公用を廃止させて諸権利諸問題を消滅させた上、被告和泉市長に次の書類を提出して申請しなければならないとされる。 (1) 財産区代表者(町会長)の処分申請書(2) 財産区関係者(町会役員)の同意書(3) 実行組合長の同意書(4) 財産区代表者(町会長)の確約書(5) 水利権放棄書(5) 財産区住民総会議事録そして、その上で、被告和泉市長が法定の処分手続をなす旨定められている。即ち、本件要綱によれば、財産 同意書(4) 財産区代表者(町会長)の確約書(5) 水利権放棄書(5) 財産区住民総会議事録そして、その上で、被告和泉市長が法定の処分手続をなす旨定められている。即ち、本件要綱によれば、財産区財産を処分するためには、第一に、当該財産に係る権利関係を消滅させることを要し、それを証する書類として実行組合長の同意書と水利権放棄書の提出を求め、第二に、当該財産の処分について財産区住民の同意を得ることを要し、それを証する書類として財産区関係者(町会役員)の同意書と財産区住民総会議事録の提出を求めている。 ii 本件土地(ため池とその堤)の処分申請に際して被告和泉市長に提出された実行組合長の同意書は、実行組合長M作成名義であるが、同人は本件土地を管理する王子実行組合の組合長ではないのみならず組合員でもなかったから、右同意書は無権限者の作成にかかるものである。従って、右同意書は本件要綱に定められた実行組合長の同意書ではなく、本件土地の処分につき王子実行組合が同意していなかったことは明らかである。 また、水利権放棄書もやはり手洗池管理責任者M作成名義となっているが、同人は王子実行組合の組合員ではなく、本件土地から利水していたものではないから、水利権放棄書を作成する権限を有しないことは明らかである。従って、右放棄書は本件要綱に定められた水利権放棄書でなく、本件土地の処分に際し水利権者が水利権を放棄したことはない。 iii 本件土地の処分については、財産区住民の同意がない。このことは、本件土地の処分申請に際して被告和泉市長に提出された部落役員同意書及び財産区住民総会議事録自体から明らかである。 即ち、本件土地の処分申請に際して被告和泉市長に提出された王子町宮本町会の部落役員同意書は、その作成日付の昭和六一年二月一三日に本件土地の処分に同意する趣旨で作 民総会議事録自体から明らかである。 即ち、本件土地の処分申請に際して被告和泉市長に提出された王子町宮本町会の部落役員同意書は、その作成日付の昭和六一年二月一三日に本件土地の処分に同意する趣旨で作成されたものではなく、昭和五八年六月一日頃、本件土地について、登記簿の表題部の所有者欄に共有地と記載されていたのを王子財産区とする更正登記を行うために法務局に提出する目的で作成されたものである。従って、本件土地の処分につき宮本町会役員の同意は得られていなかった。 また、本件土地の処分申請に際しては王子町宮本町会総会議事録及び王子町会総会議事録が提出されているが、いずれの町会においても、事前に本件土地の処分の可否を議題として町会総会を開催する旨の通知を町会の構成員に対してなした上での町会総会は開かれていない。このことは、右各議事録の上からも、役員らが出席した上で出席者らが勝手にその会合を総会扱いすることを承認して総会と称することにした旨記載されていることからして明らかである。従って、本件土地の処分について同意する町会の決議はなされていない。 iv 本件土地の売却については、被告和泉市長から昭和六一年三月四日付で大阪府知事に対しi記載の書類等を添付して認可申請がなされ、同府知事は同月二七日これを認可している。しかし、右添付書類の多くは、右記載のように作成権限のない者によって作成され、あるいはその内容が真実に反している。このように知事の認可の前提となった認可申請書添付の書類が真実に反し偽造されているときは、知事の認可に重大かつ明白な瑕疵が存するから、認可は無効である。 ロ M一人の意思による売却、処分理由の不存在等による無効本件土地の売却は、専ら宮本町会長M一人の意思に基づくもので、その手続も同人一人の意思により進められ、前記のように本件要綱に定められ である。 ロ M一人の意思による売却、処分理由の不存在等による無効本件土地の売却は、専ら宮本町会長M一人の意思に基づくもので、その手続も同人一人の意思により進められ、前記のように本件要綱に定められた手続が適正に履践されていなかった。また、被告和泉市長に対する本件土地の処分申請及び大阪府知事に対する認可申請において処分理由とされたところは、本件土地についての悪臭の除去、防護柵の設置等の維持管理の必要性及び処分代金を王子財産区内の水路や他のため池等の改修工事に当てるためというものであったが、そのような必要性はなく、処分理由として申請書に記載されたところはすべて虚偽であって、本件土地を処分する正当な目的は何ら存しなかった。被告和泉市長ないし和泉市の担当者はこれらのことを十分に知悉していながら、知事の認可を騙取する意図をもって偽造書類等を添付して認可申請を行った。従って、かかる場合、大阪府知事の認可には重大かつ明白な瑕疵があるというべきであるから、右認可は無効である。 (3) 随意契約の制限に関する法令違反による無効イ本件土地は、随意契約により被告Kに売却されたが、本件売買契約については、次項以下で述べるとおり、随意契約によることができる場合として法令に規定された事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかであり、しかも、契約の相手方である被告Kにおいて随意契約の方法によることが許されないことを知り、又は知り得たから、本件売買契約は法二三四条一、二項に違反し、その効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加えた法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情があるといえ、無効である。 ロ地方自治法施行令一六七条の二第一項二号該当性地方自治法施行令(以下条文を摘示するときには「令」という。)一六七条の二第一項は随意契約によることができる場合 特段の事情があるといえ、無効である。 ロ地方自治法施行令一六七条の二第一項二号該当性地方自治法施行令(以下条文を摘示するときには「令」という。)一六七条の二第一項は随意契約によることができる場合を定めているが、本件売買契約は同項二号の「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に当たらない。 本件売買契約では、本件土地について売却代金完納の日から一〇年間の現状有姿のままでの保存及び転売禁止並びにこれらに違反した場合の買戻しが条件となっているが、このような条件は買主に不作為を要求するものであって、とくに資力、技術、信用等の面で買主の選択を必要とさせるものではなく、また、国の場合に随意契約によりうる場合を列挙した予算決算及び会計令九九条のいずれにも該当しないことに鑑みれば、右条件が付されたからといって競争入札に適しないものとなることはないのは明らかである。 また、被告らは、本件売買が競争入札に適しない理由として、買主が本件土地について悪臭の除去、防護柵の設置等の維持管理をなすことが本件売買契約の条件となっており、これを実行させる必要があったことをも挙げるが、売買契約書にはそのような記載は一切なく、本件売買契約にそのような条件は付されていなかった。たとえ付されていたとしても、ため池の維持管理というのは初歩的かつ簡易な管理行為なのであるから、本件土地の購入能力のある者なら誰にでも履行できることであり、また予算決算及び会計令九九条のいずれにも該当しないことに鑑みれば、右条件も競争入札を不適切たらしめるものではない。そもそも、本件土地については、現状の池のままで永久保存し文化的遺産として適切な管理を行っていくことを目的として本件土地取得のための活動をしていた信太の森のシリブカガシを守る会(以下「信太の森を守る会」という。)から和泉市に対して買取の のままで永久保存し文化的遺産として適切な管理を行っていくことを目的として本件土地取得のための活動をしていた信太の森のシリブカガシを守る会(以下「信太の森を守る会」という。)から和泉市に対して買取の申入れがなされていたのである。このことからしても、右のような条件が競争入札を不適切たらしめるものではないことは明らかである。 ハ令一六七条の二第一項五号該当性本件売買契約は、令一六七条の二第一項五号の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」にも該当しない。 被告らは、本件土地の昭和五八年一二月時点の和泉市財産評価審査委員会の答申による適正価額一平方メートル当たり三万五〇〇〇円に、同月から昭和六一年二月までの期間の大阪府下全般の地価上昇率約一〇パーセントや他の近隣のため池の売買事例、不動産鑑定士による鑑定価格等をも参考にして、本件売買時点までの経時的な修正率を二一パーセントの増加とし、これを掛けて本件売買における売却価格を一平方メートル当たり四万二三五〇円と決定したというが、このような決定方法をとったのかどうかについては大いに疑問がある。和泉市財産評価審査委員会の答申を得るのにさほど期間も手間もかからないのであるから、売却時点で再度諮問し答申を得ればいいはずである。 また、たとえそのような決定方法がとられたとしても、昭和五八年一二月時点の価格が一平方メートル当たり三万五〇〇〇円というのは、昭和五六年七月時点の本件土地に隣接する宮谷池の適正売却価格が一平方メートル当たり五万七四七六円であったことからすると不当に安すぎるし、経時的な修正率の出し方も、大阪府下全般の地価上昇率を基準にするなど、正当な方法によるものとはいえない。更に、被告らの主張する価格決定の方法を前提にするとしても、前記令にいう「時価に比して著し し、経時的な修正率の出し方も、大阪府下全般の地価上昇率を基準にするなど、正当な方法によるものとはいえない。更に、被告らの主張する価格決定の方法を前提にするとしても、前記令にいう「時価に比して著しく有利な価格」とは、およそ競争入札で得られる可能性のある有利な価格よりも更に格段に有利な価格をいうと解すべきところ、本件の決定価格は被告らの主張するところによっても時価よりもせいぜい一割程度高いに過ぎないから、競争入札で得られる可能性のある範囲内であり、「時価に比して著しく有利な価格」とはいえない。現に、本件土地については、本件売買価格の坪当たり一四万円より高い坪当たり一七万円で買いたいという希望者が他に存在していたのである。 ニ黒鳥土地買収のための本件土地の売却和泉市は、同市の公園用地として、被告K所有の和泉市<地名略>及び同町<地名略>の田二筆(以下「黒鳥土地」という。)を買収する必要があったため、昭和六〇年初め頃から交渉を行っていたが、被告Kからは、買収に応じるための条件として、代替地を取得できるようにしてもらいたいとの希望が出された。そして、代替地としていくつかの候補地が上げられたが、価格等の関係で適当なものがなく、昭和六〇年中頃には、同被告が本件土地を代替地として強く希望するようになった。 そこで、和泉市と同被告との間で本件土地についての売買交渉がなされるようになった。同被告は、黒鳥土地と本件土地の価格が釣合いほぼ同額になることや、両方の土地の売買が同じ時期になされることを条件として提示した。そのような流れの中で両方の土地の売買交渉が同時期に平行して進められ、その結果、本件土地についての売買契約が昭和六一年三月三日売買代金九一五一万八三五〇円で成立して、同年四月八日頃代金の支払いがなされた。しかし、同月九日には、実測面積が公簿面積よ 平行して進められ、その結果、本件土地についての売買契約が昭和六一年三月三日売買代金九一五一万八三五〇円で成立して、同年四月八日頃代金の支払いがなされた。しかし、同月九日には、実測面積が公簿面積より少ないことを理由として同被告に対し四二〇万円が返還されているので、実質的には売買代金は八七三一万八三五〇円となった。他方、黒鳥土地についての売買契約は、同年六月一三日売買代金八六七〇万〇八〇〇円で成立した。 以上の経緯からすると、本件土地の売買が随意契約でなされたのは、黒鳥土地を買収するためにどうしても本件土地を代替地として被告Kに売り渡す必要があり、しかもその売買価格を同被告の要望に従って黒鳥土地の売買価格と釣り合った不当に低いものにしなければならなかったからであることは明らかである。このように、本件売買契約は、随意契約によるべからざるものであるのに、専ら被告Kの個人的要望に応じる目的から、売買価格についての鑑定もしないで不当に低い金額で随意契約によってなされたもので、その動機、代金額の決定が不当に歪められたものであるから違法である。また、被告Kもその経緯を十分承知の上で行ったものであるから、本件売買契約は無効である。 (二) 実体法上の違法による無効(1) 本件土地は、日本を代表する美しい森として古くから多くの人々に親しまれてきた信太の森の中心に位置し、「鏡池」として、文楽、歌舞伎に大きな影響を与えた葛の葉物語等において古来より国文学上の題材となっており、その国文学上の価値は極めて高い。また、本件土地は、天武天皇の白凰三年に建立されたと伝えられ多くの文化財と伝統行事を有し歴史的に由緒ある聖神社の一部を構成し、池自体は聖神社における禊の場として、堤は聖神社の参道としてそれぞれ古来より使用されてきたもので、聖神社と切り離すことのできないもので くの文化財と伝統行事を有し歴史的に由緒ある聖神社の一部を構成し、池自体は聖神社における禊の場として、堤は聖神社の参道としてそれぞれ古来より使用されてきたもので、聖神社と切り離すことのできないものである。このように、本件土地は、文化的、歴史的に極めて重要な価値を有している。 更に、本件土地は、古来より緑豊かな自然環境を有する地域であった信太の森の名残を現在に止めている聖神社の境内に位置しているが、ここにはシリブカガシの自生林を中心とする鎮守の森が残っており、このシリブカガシの自生林は、その群生の規模、位置からして極めて学術的価値の高いものである。従って、本件土地は、貴重な自然として残っている聖神社の森と一体となったもので、その自然環境的価値も大きい。 (2) 本件土地は、これを埋め立てて宅地化することを目的としていた被告Kに売却された。しかも、本件土地の売却代金の三分の一は和泉市の一般会計に繰り入れられ、残る三分の二は王子財産区に公共事業のための交付金として交付されたが、このような代金の充当使用は法二九六条の五に反するものであるし、売却代金は極めて低廉である。 (3) 以上のように、本件土地は、文化的、歴史的、自然環境的価値を有するから、管理者である被告和泉市長は、法二条三項一四号、(※)文化財保護法二ないし四条、九八条等に基づいて、国民共有の財産たる文化財として本件土地を保存すべきであるのに、これを怠り、かかる価値のある鏡池の消滅につながる被告Kに対する売却行為に及び、しかもその売却代金は極めて低廉で、その使途も違法であるから、本件売買契約は違法、無効である。 4 しかるに、被告和泉市長は、被告Kから本件所有権移転登記の抹消登記を得て本件土地についての占有を回復するための措置をとろうとしないし、また、本件土地を文化財として適切に管理する 法、無効である。 4 しかるに、被告和泉市長は、被告Kから本件所有権移転登記の抹消登記を得て本件土地についての占有を回復するための措置をとろうとしないし、また、本件土地を文化財として適切に管理する義務をも怠っている。 5 原告らは、和泉市監査委員らに対し、昭和六二年二月二七日、本件売買契約は前記3の理由により違法、無効であるとして、法二四二条一項に基づいて監査を求め、損害を填補するために必要な措置を講ずるべきことを請求したが、和泉市監査委員らは、同年四月二五日、原告ら請求人に対し、右監査請求は理由がないとしてこれを棄却する旨の通知をした。 6 よって、原告らは、被告和泉市長に対して、法二四二条の二第一項三号に基づき前項記載の怠る事実が違法であることの確認を求めるとともに、被告Kに対して、同項四号に基づき王子財産区に代位して、本件所有権移転登記の抹消登記手続き及び本件土地の王子財産区への引渡を求める。 二被告らの本案前の主張に関する主張 1 財産区についての住民訴訟の適用ないし準用財産区の執行機関等の違法な財務会計行為等によって財産区に損害が生ずる場合のありうることは、普通地方公共団体の場合と異ならないから、財産区に関しても、その執行機関等による違法行為を是正して財産的基礎を確保し財産区ひいては財産区のある市町村全体の住民の利益を守る必要性のあることは、普通地方公共団体の場合と何ら変わるところがない。従って、財産区についてもその執行機関等の違法行為につき法二四二条の二の規定による住民訴訟を認めるべきである。このことは、法二九四条一項により、財産区の財産又は公の施設(以下「財産等」ともいう。)の管理及び処分又は廃止(以下「管理等」ともいう。)については地方自治法中地方公共団体の財産等の管理等に関する規定を適用するとされていることからも明ら の財産又は公の施設(以下「財産等」ともいう。)の管理及び処分又は廃止(以下「管理等」ともいう。)については地方自治法中地方公共団体の財産等の管理等に関する規定を適用するとされていることからも明らかである。財産区議会又は総会や財産区管理会(これらは常設の機関ではない。)あるいは知事等他に監督する機関のあることは、住民訴訟による監督を否定する理由にはならない。 2 財産区についての住民訴訟の原告適格財産区の財産等に関し要する費用は、特に要する経費を除いて当該財産区のある市町村が負担するとされているし(法二九四条二項)、財産区の財産等の管理等については、財産区のある市町村の一体性をそこなわないように努めなければならないとされている(法二九六条の五第一項)。のみならず、財産区の財産等から生ずる収益を当該財産区のある市町村の経費の一部に充てることをも地方自治法は認めているのである(法二九六条の五第三項)。このように、財産区の財産等の管理等は、当該財産区の住民のみならず当該財産区のある市町村の住民にも直接的な影響を及ぼしている。そして、財産区について住民訴訟が認められる理由は、前述のとおり財産区の執行機関等による違法行為を是正して財産区の財産的基礎を確保し財産区ひいては財産区のある市町村全体の住民の利益を守る必要性に基づくのであるから、財産区についての住民訴訟の原告適格は、当該財産区の住民に限られるべきではなく、当該財産区のある市町村の住民にも認められると解するのが相当である。また、このように解しても、住民訴訟の範囲をいたずらに拡大することにはならない。 3 法二四二条の二第一項三号請求と同四号請求の競合法二四二条の二第一項は、住民訴訟の形態として一号から四号までの請求を認めているが、同一の違法な財務会計行為に関して右四つの請求のうち複数の請求 。 3 法二四二条の二第一項三号請求と同四号請求の競合法二四二条の二第一項は、住民訴訟の形態として一号から四号までの請求を認めているが、同一の違法な財務会計行為に関して右四つの請求のうち複数の請求形式が成り立つ場合があることは当然予想されるところ、地方自治法はこれらの間の優先順位を定めていないし、複数の請求を行うことを否定する旨の定めもない上、地方公共団体の住民にその執行機関等による違法な財務会計行為に対する是正の機会を与えるという住民訴訟が設けられた制度理由からしても、一つの違法な財務会計行為について複数の請求を認めても何らの不都合もない。従って、同一の違法な財務会計行為について右四つの請求のうち複数の請求形式が成り立つときには、そのいずれを選択するか、またそのうちいくつの請求を行うかは、訴えを提起する住民の意思に委ねられているというべきである。このように解したとしても、住民訴訟の請求形式は右の四つに限られているから、いたずらに被告の範囲が拡張される危険はないし、被告に不当な不利益を与えるわけでもない。また、このように解さないと、複数の請求形式が成り立つときには右四つの請求の間での優劣関係が存することになり、原告住民は訴えを提起する段階でこの優劣関係の判断をせざるをえなくなるが、地方自治法はかかる優劣関係を規定していないし、優劣関係を定める基準も定かでないから、そのような判断を原告住民に強いるのは明らかに不合理である。 (被告ら)一本案前の主張 1 財産区についての住民訴訟の適用ないし準用法二四二条の二の規定は財産区については適用されないから、財産区について同条の規定に基づく住民訴訟を提起することはできない。なぜならば、住民訴訟は、行政事件訴訟法五条のいわゆる民衆訴訟であって、「法律に定める場合において、法律に定める者に限り、 いから、財産区について同条の規定に基づく住民訴訟を提起することはできない。なぜならば、住民訴訟は、行政事件訴訟法五条のいわゆる民衆訴訟であって、「法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる」のであるが(同法四二条)、地方自治法において、特別区(法二八三条)、地方公共団体の組合(法二九二条)、地方開発事業団(法三一四条一項)についてはいずれも法二四二条の二の規定を準用する旨の規定があるにもかかわらず、財産区に関しては法二四二条の二の規定を適用ないし準用する旨の規定は存しない。法二九四条一項の規定は、財産区の財産等の管理等について地方自治法中地方公共団体の財産等の管理等に関する規定をそのまま適用する旨、即ち、原則として財産区には固有の議会、執行機関を置かず、財産区の権能は財産区のある市町村等の議会及び長をそれぞれ財産区の議決機関及び執行機関として行使されることを明らかにしたに止まると解されるから、同項により適用される地方公共団体の財産等の管理等に関する規定に法二四二条の二が含まれていると解することはできない。このように地方自治法が法二四二条の二の規定を財産区に適用ないし準用しなかったのは、その沿革上の理由の他、財産区についてはその権能が財産等の管理等の範囲に限定され課税権能もないから、そのような限られた権能の行使に関しては、知事及び財産区管理会を監督機関とし、法二九六条の三の規定による財産区管理会の同意及び法二九六条の五第二項、令二一八条の二の規定による知事の認可をもって財産区の財産的基礎の確保を図ることによって住民訴訟に代替しうるとの考えによったためである。 2 財産区についての住民訴訟の原告適格財産区について住民訴訟が提起できると解するとしても、その原告適格を有するのは、当該財産区の住民に限られると解すべき 訟に代替しうるとの考えによったためである。 2 財産区についての住民訴訟の原告適格財産区について住民訴訟が提起できると解するとしても、その原告適格を有するのは、当該財産区の住民に限られると解すべきである。なぜならば、特別地方公共団体について法二四二条の二の規定を適用あるいは準用する場合、特別地方公共団体にもその区域及び住民という概念がある以上、同条の「普通地方公共団体の住民」の語句は、当然に「特別地方公共団体の住民」の意味に解されるべきであり、従って、財産区に関しては右の語句は、「財産区の住民」の意味に解することになる。 沿革的にみても、財産区制度は、市町村制の制定に当たって、財産を有する旧村、旧部落等に対して、元来市町村の一部であるにもかかわらずその財産に関して市町村とは別個の権利帰属主体としての地位を承認したものであり、その制度自体財産区財産についての利益の享受者が主として財産区の住民であることを承認したところから発しているといえる。従って、財産区についての住民訴訟の原告適格は、財産区の財産についての利益の主たる享受者である当該財産区の住民について認めれば足り、当該財産区外の財産区のある市町村の住民全体にまでそれを拡張することは、実質的に財産区外からの干渉を許す結果になり、財産区制度を認めた地方自治法の趣旨に反する。更に、法二九六条の五第三項後段が財産区の財産等からの収益の一部を市町村の事務経費に充当するばあいの財産区住民に対する不均一課税、使用料等の不均一徴収を定めていること、法二九四条二項で財産区の財産等に関し特に要する経費が財産区の負担とされていること、法二九六条の五第一項は、財産区と財産区がある市町村との一体性の要請を規定するが、これはあくまで財産区に市町村とは別個の権利帰属主体としての地位を認めてそれを前提とした上でのもの 担とされていること、法二九六条の五第一項は、財産区と財産区がある市町村との一体性の要請を規定するが、これはあくまで財産区に市町村とは別個の権利帰属主体としての地位を認めてそれを前提とした上でのものであること等からも、財産区についての住民訴訟の原告適格が当該財産区の住民に限られることは明らかである。 3 法二四二条の二第一項三号請求と同四号請求の競合同一の事項について法二四二条の二第一項三号請求と同四号請求とが競合する場合には、前者は訴えの利益を欠き不適法となる。なぜならば、四号請求は、地方公共団体の有する実体法上の請求権を住民が相手方に対して直接代位行使するものであり、地方公共団体の執行機関等の違法な財務会計行為の是正手段としては抜本的なものであると考えられるのに対し、三号請求は、怠る事実の違法確認の判決の関係行政庁に対する拘束力(行政事件訴訟法四三条三項、四一条一項、三三条一項)に基づき執行機関等を通じて間接的に地方公共団体の実体法上の権利を行使しようとするものであり、四号請求に対する補完的な手段と解せられる。しかも、四号請求による実体法上の権利の代位行使がなされた場合には、地方公共団体としてはもはや相手方に対して当該代位請求にかかる権利を行使して同一の請求をすることはできないのであるから、四号請求に併合して三号請求を求めてもその実質的な意味はないのである。従って、同一の事項に関して三号請求と四号請求を併合して提起した場合は、三号請求については訴えの利益を欠くことになるから、本件の場合、被告Kに対し王子財産区の実体法上の権利を行使して四号請求を行っている以上、被告和泉市長に対する違法確認を求める三号請求は不適法として却下されるべきである。 4 文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求請求の趣旨1(三)の被告和泉市長に 求を行っている以上、被告和泉市長に対する違法確認を求める三号請求は不適法として却下されるべきである。 4 文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求請求の趣旨1(三)の被告和泉市長に対する本件土地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないことの違法確認を求める訴えは、財務会計行為としての財産の管理行為ではなく、文化財についての管理、保存等いわば文化財保護行政に関する行為の違法確認を求めるものであるから、住民訴訟としては不適法である。のみならず、本件訴訟で被告とされているのはあくまで王子財産区の執行機関としての和泉市長であるが、財産区の行政権能はその財産等の管理等の範囲に限定され、財産区ないし財産区の管理者たる執行機関が右以外の文化財保護行政等一般の地方行政上の権能を有しないことは明白であるから、被告和泉市長には本件土地を文化財として適切に管理、保存すべき行政上の権能もなければ義務もなく、従って、この意味でも被告和泉市長に対する右訴えは不適法である。 二請求原因に対する認否及び主張 1 請求原因1、2の事実は認める。 2 請求原因3(一)(1)の主張は争う。この点についての被告らの主張は次のとおりである。 (一) 法二九四条一項によれば、財産区の議会、総会及び財産区管理会が設置されていない場合、財産区の財産等の管理等の事務は、当該財産区がある市町村の議会及び長をそれぞれ議決機関及び執行機関として行うこととされ、住民の同意を得なければならないことを定めた規定はない。従って、その場合、財産区財産の処分は、その財産に応じて、法九六条一項八号に当たるときには議会の議決を経て、それに当たらないときには議会の議決を経ないで、財産区の管理者である市町村長が行うことができる。なお、和泉市では、法九六条一項八号に基づき、「和泉市議会の 一項八号に当たるときには議会の議決を経て、それに当たらないときには議会の議決を経ないで、財産区の管理者である市町村長が行うことができる。なお、和泉市では、法九六条一項八号に基づき、「和泉市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」(昭和三九年和泉市条例第一四号)が設けられ、同条例三条では、「地方自治法第九六条第一項第八号の規定により議会の議決に付さなければならない財産の取得又は処分は、予定価格二〇、〇〇〇千円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については一件五千平方メートル以上のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いとする。」と定めていて、右条例の規定は当然和泉市の財産区の財産の処分についても適用される。従って、本件土地の処分については、議会の議決を経ないで被告和泉市長においてなすことができるのである。 (二) 地方自治法は、財産区に議会又は総会もしくは財産区管理会が設けられたときには、財産区財産の処分のうち一定の重要なものについては、その議決ないし同意を得なければならない旨規定する(法二九五条、二九六条の三第一項)。しかし、それらの議決ないし同意と原告らの主張する財産区住民の同意とは同じ実質を有するものではなく、それらの機関が設置されていない場合に財産区住民の同意を得なければならない旨を定めた規定や、同意を得るための手続要件、同意の成立要件等を定めた規定は何ら存しないから、財産区の議会又は総会もしくは財産区管理会の制度が定められていることを根拠として、それらの機関が設置されていない場合に財産区財産の処分について財産区住民の同意を要すると解することはできない。 (三) 和泉市において本件要綱が定められたことにより、本来財産区財産の処分に関する法律要件ではない財産区住民の ない場合に財産区財産の処分について財産区住民の同意を要すると解することはできない。 (三) 和泉市において本件要綱が定められたことにより、本来財産区財産の処分に関する法律要件ではない財産区住民の同意が要件となり、それを欠く処分が地法自治法違反に準ずる重大な違法性を帯びるに至ると解することもできない。本件要綱が定められたのは、被告和泉市長が財産区財産の処分について財産区住民の福祉増進の見地から右住民の意思を十分に反映させるべきことをも考慮したためであるとしても、本来地方自治法上、財産区の議会又は総会もしくは財産区管理会が設置されていない場合の財産区財産の処分については、財産区管理者がその裁量権の範囲内で決定すべきものとされているのであり、財産区住民の同意は要件とはされていない。また、本件要綱でも、財産区財産の処分申請に当たっては財産区住民総会議事録の提出を要請してはいるものの、住民総会の成立要件、議決要件等に関する定めはなく、いかなる場合に住民総会の同意があったといえるかの判断は、それぞれの財産区の実体に応じて被告和泉市長の裁量に委ねられていると解さざるをえないのである。従って、財産区住民総会決議に瑕疵があったとしても、そのことにより本件売買契約が直ちに地方自治法違反に準ずるような重大な違法性を帯び無効になるということはできない。 3 請求原因3(一)(2)の主張は争う。この点についての被告らの主張は次のとおりである。 (一) 大阪府知事に対する認可申請書添付の書類に原告ら主張のような瑕疵があったとしても、このことを理由として知事の認可が無効になるということはできない。本件要綱に定められた実行組合長の同意書及び水利権放棄書に関していえば、本件土地の処分当時現実に本件土地(ため池)の水を利用する者はいなくなっていた。また、王子町宮本町会 なるということはできない。本件要綱に定められた実行組合長の同意書及び水利権放棄書に関していえば、本件土地の処分当時現実に本件土地(ため池)の水を利用する者はいなくなっていた。また、王子町宮本町会の部落役員同意書は、昭和五八年頃本件土地の表題部の更正登記等の嘱託時に提出されたものが流用されたが、右更正登記等は元来本件土地の売却処分を行うことを前提としてなされたのであり、かつ、その後本件認可申請時までに同町会役員の同意が撤回された事実はなかったことから、実質的に本件売買契約について同町会役員の同意は存すると判断されたのである。王子町宮本町会総会議事録及び王子町会総会議事録の瑕疵については、前述のとおりこれが知事の認可が重大な違法性を帯びる原因とはならない。 (二) そもそも、法二九六条の五第二項の知事の認可は自由裁量行為であり、大阪府知事は、右認可申請に対して、財産区住民の福祉の増進の見地から一切の事情を考慮して当該認可の可否を決定するのである。従って、それらの事情の中には財産区住民の意思や財産区内の農業従事者の意思が含まれるとしても、大阪府知事は、それ以外に当該財産区の有する他の財産、処分理由、処分代金とその使途、処分後の財産の状態その他の事項等をも総合的に考慮して本件認可決定をしたものである。以上のような点からすると、本件認可申請書添付の書類に原告ら主張のような瑕疵があったとしても、このことを理由として直ちに知事の認可が違法になると解すべきではない。仮に違法になるとしても、その違法は重大かつ明白なものとはとうていいえないから、知事の認可が無効になるとはいえない。 (三) 原告らは、被告和泉市長ないし和泉市の担当者は、右書類の瑕疵等を知りながら大阪府知事の認可を騙取する意図をもって認可申請を行った旨主張するが、そのような事実はない。 になるとはいえない。 (三) 原告らは、被告和泉市長ないし和泉市の担当者は、右書類の瑕疵等を知りながら大阪府知事の認可を騙取する意図をもって認可申請を行った旨主張するが、そのような事実はない。 4 請求原因3(一)(3)の主張は争う。本件土地の随意契約の方法による売却は、次の理由から有効である。 (一) 令一六七条の二第一項二号該当性本件土地の売却の方針が決定されたのは、過去においては農業用のため池であった本件土地を当時ため池として利用する者がなく、管理も不十分であったために本件土地が相当荒廃し、ため池から発生する悪臭や事故防止のための防護柵の設置等の問題でこの管理を担当する王子財産区の地元住民が苦慮していたため、本件土地を売却し買主による適切な維持管理がなされることを期待するとともに、当該売却代金をもって王子財産区内の他のため池、水路等の維持管理に必要な費用に充てようとしたためである。ところが、本件土地の文化的、歴史的、学術的、自然環境的価値等に基づいてその保存を主張する「信太の森を守る会」の住民等からの本件土地の売却処分及び宅地化に対する反対並びに文化財としての管理、保存の要望が強かったため、被告和泉市長は、本件土地の文化財指定の可否等を調査検討したが、直ちに文化財としての指定を受けることは困難との結論に達した。このため、被告和泉市長は、右売却の要請とこれに反対する要望とを折衷する形で、申請どおり本件土地の売却を決定するとともに、将来事情の変更により本件土地の文化財指定の可能性が生ずる場合を慮って、売買契約において、本件土地を売却代金完納の日から一〇年間現状有姿のまま保存することとその間の転売禁止及びこれに違反した場合の買戻しを条件とすることにしたのである。このように、本件土地の売買は条件付きのものであったうえ、買主は右保存期間内 日から一〇年間現状有姿のまま保存することとその間の転売禁止及びこれに違反した場合の買戻しを条件とすることにしたのである。このように、本件土地の売買は条件付きのものであったうえ、買主は右保存期間内本件土地に関する悪臭の除去や防護柵の設置等の維持管理を余儀なくされるので、買主にとって非常に不利な内容となっており、後記の本件土地の売却価格にも鑑みた場合、本件土地の売却を競争入札に付しても落札の可能性はなかった。このこと、及び、被告和泉市長の指導により買主をして本件土地に関する右のような維持管理を実行せしめる必要性に鑑みると、競争入札によっては目的を達することができないおそれがあったので、本件土地の売買契約は競争入札に適さず、令一六七条の二第一項二号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当した。 (二) 令一六七条の二第一項五号該当性昭和五八年一二月時点の和泉市財産評価審査委員会の答申による本件土地の適正価額は、一平方メートル当たり三万五〇〇〇円であった。このため、被告和泉市長は、本件売買契約の締結に当たって他の近隣のため池の売買事例、不動産鑑定士による鑑定価格、大阪府下全般の土地価格の上昇率(前記答申時から本件土地の売却時点(昭和六一年二月)までのそれは、約一〇パーセントであった。)等を再度調査し、これらを参考にして、前記答申による適正価額に対する本件土地の売却時点までの経時的な修正率を二一パーセントの増加とするのが適正であると判断し、本件土地の売却価格を、一平方メートル当たり三万五〇〇〇円の二一パーセント増しの四万二三五〇円(売買代金額九一五一万八三五〇円)と決定した。不動産鑑定士の意見によっても、右修正率及び修正後の本件土地の売却価格は、一般のため池の売却事例に比してかなり高額であるとの意見であった。 以上のよう 円(売買代金額九一五一万八三五〇円)と決定した。不動産鑑定士の意見によっても、右修正率及び修正後の本件土地の売却価格は、一般のため池の売却事例に比してかなり高額であるとの意見であった。 以上のような本件土地の売却価格の決定経過及び本件土地の利用に関する前記条件による制限等を考慮すれば、右売却価格は時価より著しく高額であるから、本件売買契約は、令一六七条の二第一項五号の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」に該当した。 (三) 最高裁昭和五七年(行ツ)第七四号昭和六二年三月二〇日第二小法廷判決は、令一六七条の二第一項の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に関し、「普通地方公共団体において当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約を締結するという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合」もこれに該当し、右の場合に該当するか否かは、「契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案し、個々具体的な契約ごとに、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきもの」と判示している。右最高裁判例の趣旨からすると、前記(一)、(二)の理由から本件売買契約は令一六七条の二第一項二号及び五号に該当するとした被告和泉市長ないし和泉市の担当者の判断に合理性を欠いた点があるとはいえず、それが合理的な裁量の範囲を逸脱したものとはいえないから、本件売買契約を随意契約の方法によって締結したこ 五号に該当するとした被告和泉市長ないし和泉市の担当者の判断に合理性を欠いた点があるとはいえず、それが合理的な裁量の範囲を逸脱したものとはいえないから、本件売買契約を随意契約の方法によって締結したことに違法はない。 (四) 地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になる(最高裁昭和五六年(行ツ)第一四四号昭和六二年五月一九日第三小法廷判決)。しかし、本件売買契約が令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかであるとか、被告Kが随意契約の方法による本件売買契約の締結が許されないことを知り又は知りえたとされるような事情はないし、その他、本件売買契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情もない。従って、たとえ本件売買契約を随意契約の方法によって締結したことが違法であるとしても、本件売買契約が無効であるとはいえない。 (五) 黒鳥土地買収のための本件土地の売却和泉市による被告K所有の黒鳥土地の買収と本件土地の売買とが相互に関連付けられていたことはないし、両土地の売買価格を釣り合ったものにするために本件土地の売買価格が不当に低額にされたという事実はない。また、そのために本件売買契約が随意契約のみ法によってなされたということもない。 5 請求原因3(二)の主張は争う。 住民訴訟においては、財務会計行為の違法を理由と 不当に低額にされたという事実はない。また、そのために本件売買契約が随意契約のみ法によってなされたということもない。 5 請求原因3(二)の主張は争う。 住民訴訟においては、財務会計行為の違法を理由とすべきものであるところ、原告らの主張する文化財の保存等に関する行為は財務会計行為に属さないから、その点からの違法を理由として主張することはできない。また、そもそも、文化財の保存等に関する事務は、王子財産区の管理者としての被告和泉市長の義務及び権限には属さないから、この点からしても原告らの主張は失当である。 その他、本件売買契約の代金額が不当に低額であることはないし、売却代金は、本件要綱に従い、かつ、大阪府知事に対する認可申請書に記載されたとおり処理されているから、その使途が違法であるともいえない。 6 請求原因4の事実中、被告和泉市長が被告Kから本件所有権移転登記の抹消登記を得て本件土地についての占有を回復するための措置をとろうとしないことは認めるが、その余は争う。 7 請求原因5の事実は認める。 〔引用部分終了〕二当事者間に争いのない前提事実当事者間に争いのない前提事実は、次のとおり原判決を訂正等するほかは、原判決の理由中「第一当事者間に争いのない前提事実」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 〔付加、訂正の上、引用された原審判決部分〕第一当事者間に争いのない前提事実 1 原告らはいずれも和泉市の住民であり、そのうち原告A、同B、同C、同D、同Eは王子財産区の住民である(以下、右原告五名を「財産区住民原告ら」という。)が、それ以外の原告らは同財産区の住民ではない(以下、右原告らを「財産区外原告ら」という。)。 2 本件土地は、王子財産区財産であるが、被告和泉市長は、同財産区の管理者として昭和六一年三月三日、被告Kとの間で、本件土 らは同財産区の住民ではない(以下、右原告らを「財産区外原告ら」という。)。 2 本件土地は、王子財産区財産であるが、被告和泉市長は、同財産区の管理者として昭和六一年三月三日、被告Kとの間で、本件土地を代金九一五一万八三五〇円で売り渡す旨の本件売買契約を締結し、その契約の履行として、売買代金の支払を受けて、同年四月一四日本件土地について本件所有権移転登記を了し、その頃本件土地を同人に引き渡した。 3 被告和泉市長は、被告Kから本件所有権移転登記の抹消登記を得て本件土地についての占有を回復するための措置をとろうとしない。 4 原告らは、和泉市監査委員らに対し、昭和六二年二月二七日、本件売買契約は、請求原因3の理由により違法、無効であるとして、法二四二条一項に基づいて監査を求め、損害を填補するために必要な措置を講ずるべきことを請求したが、和泉市監査委員らは同年四月二五日、原告ら請求人に対し、右監査請求は理由がないとしてこれを棄却する旨の通知をした。 5 原告らは、王子財産区ないし和泉市の住民として、本件売買契約が無効であると主張し、請求の趣旨記載のとおり、被告和泉市長に対して法二四二条の二第一項三号に基づき、本件所有権移転登記の抹消登記を得て被告Kから本件土地についての占有を回復するための措置をとらないこと等の管理を怠る事実の違法確認を求めるとともに、被告Kに対して同項四号に基づき、本件所有権移転登記の抹消登記手続及び本件土地の王子財産区への引渡を求めている。 〔引用部分終了〕三争点本件は、王子財産区の管理にあたってきた被告和泉市長(但し、本件売買契約当時の市長は、L〔前市長〕である。以下同じ)が同財産区財産である本件土地(ため池とその堤)を被告Kに売り渡す旨の本件売買契約を締結し、その履行として売買代金の支払を受けて本件所有権移転登記を 契約当時の市長は、L〔前市長〕である。以下同じ)が同財産区財産である本件土地(ため池とその堤)を被告Kに売り渡す旨の本件売買契約を締結し、その履行として売買代金の支払を受けて本件所有権移転登記を了し、本件土地を引き渡したところ、和泉市の住民(一部は同財産区の住民)である原告らが、本件売買契約が手続法上ないし実体法上の違法により無効であると主張して、被告和泉市長に対して法(地方自治法)二四二条の二第一項三号に基づき、本件所有権移転登記の抹消登記を得るための措置をとらないこと、被告Kから本件土地の占有を回復する措置をとらないこと、本件土地を文化財として管理保存する手続をとらないことの管理を怠る事実の違法確認を求めるとともに、被告Kに対して同項四号に基づき、本件所有権移転登記の抹消登記手続及び本件土地の王子財産区への引渡しを求めた事件であり、主たる争点は、次のとおりである。 1 本案前の主張について(一) 住民訴訟に関する法二四二条の二の規定は、財産区についても適用ないし準用されるか(争点1)。 (二) 右(一)が肯定される場合、当該財産区の住民に限らず当該財産区のある市長村の住民も原告適格を有するか(争点2)。 (三) 法二四二条の二第一項三号の請求に係る訴えと同項四号の請求に係る訴えとが競合しても、三号請求の訴えに訴えの利益があるか(争点3)。 (四) 文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求は、住民訴訟の対象となり得ないか(争点4)。 2 本案について(一) 本件売買契約は、左記の理由による手続法上の違法により無効か(争点5)。 (1) 財産区住民の同意の欠如(2) 大阪府知事の認可の無効(1) 認可申請書添付書類についての瑕疵(2) M一人の意思による売却、処分理由の不存在等(3) 随意契約の制限に関する法令違反 (1) 財産区住民の同意の欠如(2) 大阪府知事の認可の無効(1) 認可申請書添付書類についての瑕疵(2) M一人の意思による売却、処分理由の不存在等(3) 随意契約の制限に関する法令違反(1) 令(地方自治法施行令)一六七条の二第一項二号非該当(2) 同項五号非該当(3) 被告Kから黒鳥土地を買収するためになされた価格釣り合わせによる不当に低い代金額での売買(二) 本件売買契約は、被告和泉市長の法二条三項一四号、文化財保護法二ないし四条、九八条等違反による実体法上の違法により無効か(争点6)。 第三当裁判所の判断一判断の概要 1 当裁判所は、(一)住民訴訟に関する法二四二条の二の規定は、財産区についても適用される(争点1)、(二)右の場合、財産区の住民に限らず当該財産区のある市町村の住民も原告適格を有する(争点2)、(三)法二四二条の二第一項三号の請求に係る訴えと同項四号の請求に係る訴えとが競合しても、三号請求の訴えに訴えの利益がある(争点3)、(四)文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求は、住民訴訟の対象となり得ない(争点4)、(五)本件売買契約は、原告らが主張する手続法上の違法により無効であるとはいえない(争点5)、(六)また、原告らが主張する実体法上の違法によっても無効であるとはいえない(争点6)、従って、原告らの被告和泉市長に対する本件土地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないことの違法確認を求める各訴えは、いずれも不適法であるからこれらを却下し、その余の請求は、いずれも理由がないからこれらを棄却すべきであると判断する。 2 そうすると、原判決中、これと同旨の財産区住民原告らの請求に関する部分についての原審の判断は是認できるが、財産区外原告らの請求に関し、財産区についての住民訴訟の原告 棄却すべきであると判断する。 2 そうすると、原判決中、これと同旨の財産区住民原告らの請求に関する部分についての原審の判断は是認できるが、財産区外原告らの請求に関し、財産区についての住民訴訟の原告適格を有するのは当該財産区の住民に限られるとし、財産区外原告らの各訴えを不適法として却下した部分については、これを変更し、被告和泉市長に対する本件土地を文化財として適切に管理保存する手続をとらないことの違法確認を求める各訴えを却下し、その余の各請求はこれを棄却すべきである(なお、右棄却部分は、いずれも原審において訴えを却下された部分であるが、原審の審理経過に照らすと、実質的に右各請求の実体判断に必要な審理は既に原審において尽くされていると認められるので、右のとおり判断をすることにした。)。 3 また、記録によれば、原告Fは昭和六三年八月二三日、同Gは平成三年一一月一日、同Hは平成六年九月一一日、同Iは平成八年二月五日にそれぞれ死亡していることが明らかである。しかるところ、住民訴訟を提起する権利は、適正な地方行政運営を保障する具体的手段として法(地方自治法二四二条の二)によって与えられた公法上の権利であり、一身専属的なものであって、原告が死亡した場合においては、その訴訟を承継する理由はなく、当然に終了するものと解されるので、原判決中、右四名の請求に関する部分は、取り消されるべきである。 4 右1、2の判断に至る過程は、後記二、三のとおり付加、訂正等するほかは、原判決の理由中「第二本案前の主張について」及び「第三本案について」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 二本案前の主張について 1 財産区についての住民訴訟の適用ないし準用(争点1)〔訂正の上、引用された原審判決部分〕財産区制度の発端は、明治二二年の市町村制施行の際、旧来から存し これを引用する。 二本案前の主張について 1 財産区についての住民訴訟の適用ないし準用(争点1)〔訂正の上、引用された原審判決部分〕財産区制度の発端は、明治二二年の市町村制施行の際、旧来から存した旧『村』有財産等に関する関係者の権利を保護するため、本来、新市町村に帰属させるべき財産に特別に法人格を与えたことに始まり、その趣旨が地方自治法にも引き継がれて今日の財産区制度になっているものと認められる(甲第五五号証の一ないし三)。 このような沿革を有する財産区は、市町村及び特別区のうちの一定範囲の地域及びその地域の住民を構成要素とする特別地方公共団体であって(法一条の二第三項)、独立の法人格を有する(法二条一項)とされているが、その権能は、所有する財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止に限られており、原則として固有の機関を有していない。すなわち、財産区の財産等について、『その財産又は公の施設の管理及び処分叉は廃止については、この法律中地方公共団体の財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止に関する規定による。』(二九四条一項)とされているものの、その機関に関しては、条例により財産区の議会又は総会を設けて議決にあたらせ(法二九五条)、あるいは条例により同意機関として財産区管理会を置くことができる(法二九六条の二、同条の三)とされている以外、特別の規定はない。そうすると、右議会又は総会が設けられたとき以外の財産区の意思決定機関は市町村等の議会ということになると解される(法九六条一項六号、七号)。 また、財産区の執行機関については、これを明記した特別の規定は何ら存しないが、その事務処理に関する規定をみてみると、市町村等の長は、財産区の財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止で重要なものについては、財産区管理会の同意を得なければならず(法二九六条の三第一 ら存しないが、その事務処理に関する規定をみてみると、市町村等の長は、財産区の財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止で重要なものについては、財産区管理会の同意を得なければならず(法二九六条の三第一項)、財産区の財産又は公の施設の管理に関する事務の全部又は一部を財産区管理会又は財産区管理委員に委任することができるとされ(同条の三第二項)、都道府県知事は、財産区の事務の処理について市町村等の長に報告等を求めることができるとされており(法二九六条の六)、これらのことからすると、法は市町村等の長が財産区の事務の処理に当たることを予定しているものと解することができる。 以上にみてきた財産区の沿革と財産区に関する各規定及び財産区がそれなりの法人格を有する特別地方公共団体であることを考慮すると、法二九四条一項が前示のように規定しているのは、財産区の所在する市町村等にその事務を委任する趣旨であると解することができ、財産区の所在する市町村等は、財産区の事務を団体委任事務として処理するものと解する(法二条二項)のが相当である。 そうだとすると、財産区についても法二四二条及び同条の二が適用されるといわなければならず、この点に関する被告らの主張は採用できない。 〔引用部分終了〕 2 財産区についての住民訴訟の原告適格(争点2)〔訂正の上、引用された原審判決部分〕右のとおり、財産区についても法二四二条及び同条の二が適用されるとすると、財産区の住民のみならず、当該財産区の所在する地方公共団体の住民にも財産区についての住民訴訟の原告適格を認められるというべきであり、この点に関する被告らの主張も採用できない。 〔引用部分終了〕 3 法二四二条の二第一項四号請求と競合する同項三号請求の訴えの利益(争点3)同一の事項について四号請求を行うときには三号請求が訴えの利益を欠き する被告らの主張も採用できない。 〔引用部分終了〕 3 法二四二条の二第一項四号請求と競合する同項三号請求の訴えの利益(争点3)同一の事項について四号請求を行うときには三号請求が訴えの利益を欠き不適法になると解するのは相当ではなく、本件各三号請求の訴えは適法である。その理由は、原判決(八〇頁八行目から八三頁一行目まで)に示されているとおりである。 〔引用された原審判決部分〕被告らは、同一の事項について法二四二条の二第一項三号請求と同四号請求とが競合する場合には、前者は訴えの利益を欠き不適法になると主張する。しかし、法二四二条の二第一項は、住民訴訟の形態として一号から四号までの請求を認めているが、同一の違法な財務会計行為に関して右四つの請求のうち複数の請求が成り立つ場合があることは当然予想されるところ、地方自治法はこれらの間の優先順位を定めていないし、複数の請求を行うことを許さない旨の定めもない。また、実質的にみても、三号請求は、怠る事実の違法確認の判決の関係行政庁に対する拘束力(行政事件訴訟法四三条三項、四一条一項、三三条一項)に基づき地方公共団体の執行機関等を通じて間接的に地方公共団体の実体法上の権利行使の確保を図ろうとするものであり、四号請求は、地方公共団体の有する実体法上の請求権を住民が違法な行為に係る相手方に対して直接代位行使するものであるが、地方公共団体の執行機関等の違法な財務会計行為を是正しその権利行使の実効性を確保する手段としてどちらが有効適切であるかは個々の事案により異なるのであって、一概に違法な行為に係る相手方を被告とする四号請求により債務名義を得て相手方が履行に応じないときには強制執行を行うという方法が三号請求によるよりも適切、直截であるとはいえず、執行機関等を被告とする三号請求による判決の関係行政庁に対する拘束 四号請求により債務名義を得て相手方が履行に応じないときには強制執行を行うという方法が三号請求によるよりも適切、直截であるとはいえず、執行機関等を被告とする三号請求による判決の関係行政庁に対する拘束力により地方公共団体自身による違法な財務会計行為の是正の実行を待つ方が目的を達するのに適切と思われる場合もあると考えられる。従って、同一の違法な財務会計行為について三号請求と四号請求の二つの請求が成り立つときには、そのうちのいずれかを選択するか、あるいはまた両方の請求を行うかは、訴えを提起する住民の意思に委ねられているというべきであって、四号請求を行うときには三号請求は訴えの利益を欠き不適法になると解するのは相当ではないから、この点に関する被告らの主張は理由がない。 〔引用部分終了〕 4 文化財としての管理、保存に関する怠る事実の違法確認請求の適法性(争点4)右違法確認請求は、住民訴訟の対象たり得ず不適法であるから、原告らの右請求に係る訴えはいずれも不適法として却下されるべきである。その理由は、原判決(八三頁三行目から八四頁一行目まで)に示されているとおりである。 〔引用された原審判決部分〕住民訴訟は、地方公共団体の執行機関又は職員による財務会計上の違法な行為又は怠る事実によって地方公共団体に財務上の損害が生ずるのを防止して財務行政の適正な運営を確保する目的で、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与えたものであるから、請求の対象となるのは財務会計上の行為又は怠る事実に限られるところ、請求の趣旨1(三)の被告和泉市長に対する本件土地を文化財として適切に管理し保存する手続をとらないことの違法確認を求める訴えは、財務会計行為としての財産の管理行為ではなく、文化財についての管理、保存等いわば文化財保護行政に関する行為を怠ることの違法確 財として適切に管理し保存する手続をとらないことの違法確認を求める訴えは、財務会計行為としての財産の管理行為ではなく、文化財についての管理、保存等いわば文化財保護行政に関する行為を怠ることの違法確認を求めるものであるから、住民訴訟としては不適法である。 〔引用部分終了〕三本案について 1 本件売買契約の手続法上の違法による無効(争点5)(一) 財産区住民の同意の欠如財産区住民の同意の欠如を理由として本件売買契約が無効であるとする原告らの主張は採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等し、原告らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決(八四頁五行目から八七頁六行目まで)に示されているとおりである。 〔付加の上、引用された原審判決部分〕地方自治法上、財産区財産等の管理等の事務は、当該財産区がある市町村の議会及び長をそれぞれ議決機関及び執行機関として行うこととされていて(法二九四条一項、九六条、一四八条、一四九条六号、七号)、財産区財産の処分につき財産区住民の同意を得なければならない旨を定めた規定は存しない。 財産区制度は、前記のとおり市町村制の制定に当たって財産を有する旧村や旧部落に対して市町村とは別個の権利帰属主体としての地位を与え、当該財産区住民がその財産につき有していた利益をそのまま確保できるようにすることを意図して設けられたものであり、そのような制度趣旨に鑑みて、地方自治法は、財産区に議会又は総会もしくは財産区管理会が設けられたときには、財産区財産の処分のうち一定の重要なものについてそれらの議決ないし同意を得なければならない旨規定している(法二九五条、二九六条の三第一項)。しかし、それらの議決ないし同意と財産区住民の同意とは実質的に同じものではなく、財産区に議会又は総会もしくは財産区管理会が設置されて ければならない旨規定している(法二九五条、二九六条の三第一項)。しかし、それらの議決ないし同意と財産区住民の同意とは実質的に同じものではなく、財産区に議会又は総会もしくは財産区管理会が設置されていない場合に財産区財産の処分につき財産区住民の同意を得なければならないこと等を定めた規定は一切存しないことに照らすと、財産区の議会又は総会もしくは財産区管理会の制度が定められていることを根拠として、それらが設置されていない場合に財産区財産の処分について財産区住民の同意を要すると解することはとうていできない。 また、和泉市では、財産区財産の処分に関し財産区財産取扱要綱(甲一二の二六、本件要綱)が定められていて、そこでは、財産区財産の処分申請に当たって被告和泉市長に提出すべき書類の一つに財産区住民総会議事録が挙げられているが(四条)、これはあくまで和泉市内部での財産区財産の処分を行う場合の取扱の要領を定めたものに過ぎないから、本件要綱に右規定が定められていることから直ちに、本来地方自治法上の要件とされていない財産区住民の同意が財産区財産の処分のための地方自治法上の要請となり、これに反する財産の処分が重大な違法性を帯びて無効になるということもできない。そして、このことは、たとえ従来から財産区財産の処分手続きが本件要綱に従ってなされてきたという実態があったとしても変わりはない。 従って、その余の点について判断するまでもなく、財産区住民の同意の欠如を理由として本件売買契約が無効であるとする原告らの主張は理由がない。 〔引用部分終了〕【原告らの当審における補充主張に対する判断】原告らは、当審において、「和泉市が、従来から、財産区財産の処分に関し財産区財産取扱要綱(本件要綱)を定め、その中で当該財産の処分について財産区住民の同意を得ること等を手続的要件とす に対する判断】原告らは、当審において、「和泉市が、従来から、財産区財産の処分に関し財産区財産取扱要綱(本件要綱)を定め、その中で当該財産の処分について財産区住民の同意を得ること等を手続的要件とするとともに、本件要綱に従い、財産区住民の同意のある場合にのみ財産区財産の処分を認めて大阪府知事への認可申請を行うという取扱いをしてきたのは、特別地方公共団体の一つである財産区の財産管理者たる被告和泉市長自身が、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨すなわち、その地方の公共事務はなによりもその地方の住民の意思に基づいて行われるべきであるとの憲法の要請(憲法九二条)及び地方自治法の趣旨を受けて、自らその裁量権に制約を課し、制限的に処分権を行使してきたことを意味するものである。しかるに、本件において、従来の本件要綱に従った取扱いを無視して財産区住民の同意がないのに財産区財産の処分を認めるのは、裁量権の濫用ないしその範囲を逸脱するものであり、違法となる。」としたうえ、「(1)和泉市においては、従来、町会総会の決議があれば財産区住民の同意があったとみなし得るという考えを前提に、住民総会(町会総会)の議事録を財産区財産の処分申請書に添付することを要求する本件要綱を定め、それにそった運用をしてきたという経過があり、(2)王子財産区を構成する宮本町会及び王子町会の実情からみて、町会総会が十分開催可能であったにもかかわらず、(3)本件土地の処分の可否を議題として町会総会を開催する旨の通知を町会の構成員に対してなした上での町会総会は開催されておらず、一部の役員が出席した会合で出席者らが勝手にその会合を総会扱いすることにして総会と称することにしており、(4)その後の経過からみて、もしきちんと議題を通知して町会総会が開催されていれば、総会としては本 部の役員が出席した会合で出席者らが勝手にその会合を総会扱いすることにして総会と称することにしており、(4)その後の経過からみて、もしきちんと議題を通知して町会総会が開催されていれば、総会としては本件土地の処分について同意しなかった可能性は十二分にあり、(5)しかも、管理者たる被告和泉市長(担当者)は、このことを十分知悉しながら大阪府知事に対する認可申請に及んだという事情がある。このような事情のもとでは、被告和泉市長が財産区住民の同意を得ることなく本件売買契約を締結し、本件土地を処分した行為は、地方自治の本旨及び財産区制度の趣旨を没却するものであり、管理権の濫用ないし逸脱として違法無効になると解すべきである」旨主張する。 しかしながら、財産区財産の処分にあたり財産区住民の同意を得ることは地方自治法上その要件とされていないこと、及び本件要綱の性質が、あくまでも和泉市内部での財産区財産の処分を行う場合の取扱いの要領を定めたものにすぎないことは原判決に示されているとおりであり、そうである以上、これまでの内部的な取扱いの要領との関係からすると、原告らが指摘する問題があることは否定し得ないとしても、右のような本件要綱の性質や対外的な関係(処分行為の相手方となった者の立場)をも考慮に入れるとすると、右のことから直ちに本件売買契約を無効であるというのは相当でなく、やはり、原告らの右主張も採用できないといわざるを得ない。 (二) 大阪府知事の認可の無効(1) 認可申請書添付書類についての瑕疵右認可申請書添付書類についての瑕疵を理由として大阪府知事の認可が無効であるとする原告らの主張は採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等し、原告らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決(八七頁九行目から九八頁一行目まで)に示されていると あるとする原告らの主張は採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等し、原告らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決(八七頁九行目から九八頁一行目まで)に示されているとおりである。 〔付加、訂正の上、引用された原審判決部分〕(1) 本件要綱に規定された申請書添付書類本件要綱では、和泉市における財産区財産の処分については、処分をしようとするものが当該財産にかかる公用を廃止させて諸権利諸問題を消滅させた上、次の書類を提出して被告和泉市長に申請しなければならないとされている。 (1) 財産区代表者(町会長)の処分申請書(2) 財産区関係者(町会役員)の同意書(3) 実行組合長の同意書(4) 財産区代表者(町会長)の確約書(5) 水利権放棄書(6) 財産区住民総会議事録そして、その上で、被告和泉市長は、それらの書類をも添付して大阪府知事に対して認可申請を行い、法定の処分手続きを進めることになるのである。現に本件においてはそのような手続がなされて、大阪府知事の認可が昭和六一年三月二七日付でなされている(甲一二の二六、乙一の一ないし四七、証人Nの証言(第一回))。 (2) 実行組合長の同意書及び水利権放棄書の瑕疵本件要綱に従い本件土地(ため池とその堤)の処分申請に際して提出された実行組合長の同意書は、実行組合長M作成名義であるが、同人は本件土地を管理する王子実行組合(これは、信太農業協同組合の支部である。)の組合長ではなかった。また、水利権放棄書は、手洗池管理責任者M作成名義となっているが、同人は王子実行組合の組合員ではないし、本件土地から利水していた水利権者でもなかった(甲六の一、六の二、一〇、一一、乙一の二一、一の二三、一の四〇、証人Mの証言)。従って、右各書類は本来権限を有する者の作成にかかるものとはいい難い いし、本件土地から利水していた水利権者でもなかった(甲六の一、六の二、一〇、一一、乙一の二一、一の二三、一の四〇、証人Mの証言)。従って、右各書類は本来権限を有する者の作成にかかるものとはいい難いので、その意味では瑕疵があるものといわざるをえない。 しかしながら、甲一〇、一一、一二の三、一二の六ないし八、一二の一一、一二の一五、一二の二四、乙一の七、一の四五及び証人N(第一回)、同Mの各証言によれば、本件土地の売却当時現実に本件土地の水を利用して農業を営む者は既にいなくなっていたこと、昭和五六年七月一六日頃本件土地の近くに所在する王子財産区財産である宮谷池が売却された際も、実行組合長の同意書及び水利権放棄書に関しては本件土地の売却のときと全く同一の体裁のものが提出されたが、そのことに関してその後何らの問題も起きていないことが認められる。もっとも、手洗池(本件土地)の水掛かりに農地を所有するがMに水利権の放棄を申し入れたこともなく、水利権放棄書に署名したこともない旨記載されたO、P及びQの三名の各作成名義に係る「手洗池の水利権について」と題する書面が証拠として提出されているが(甲四七の一ないし三)、これらの存在のみをもって右認定を覆すことはできない。そうすると、実行組合長の同意書及び水利権放棄書の前記の瑕疵は、実質的には重大な意味をもつものとはいえない。 (3) 財産区役員の同意書の瑕疵本件要綱に従い本件土地の処分申請に際して王子財産区を構成する王子町宮本町会及び王子町会からそれぞれ部落役員同意書が提出されたが、そのうち王子町宮本町会の部落役員同意書(その作成日付は昭和六一年二月一三日となっている。)及びその作成名義人らの各印鑑登録証明書は、いずれも本件売買契約の締結に当たって作成されたものではなく、昭和五八年六月頃、本件土地について登 同意書(その作成日付は昭和六一年二月一三日となっている。)及びその作成名義人らの各印鑑登録証明書は、いずれも本件売買契約の締結に当たって作成されたものではなく、昭和五八年六月頃、本件土地について登記簿の表題部の所有者欄に共有地と記載されていたのを王子財産区とする更正登記及び所有権保存登記を行うために法務局に提出する目的で作成されたものであって、それが本件土地を被告Kに売却する際に流用されたのである(甲七の一、七の二、九の一ないし二四、乙一の一二ないし二〇、証人N(第一回)、同Mの各証言)。従って、その意味では、右部落役員同意書には瑕疵がある。 しかしながら、右各証拠によれば、右更正登記及び所有権保存登記は、当時本件土地を売却する話がかなり具体化していたことを受けて、売却処分を行うための準備としてなされたものであるから、宮本町会の役員らは右部落役員同意書の作成に当たっては当然本件土地の売却に同意してしたこと、及び、その後本件認可申請時までに宮本町会の役員らに変更はなく、かつ、それらの者の同意が撤回された事実もなく役員らは本件土地の売却に同意していたことが認められる。そうすると、本件売買契約の締結に当たって部落役員同意書が流用されたという前記の瑕疵は、実質的には重大な意味をもつものとはいえない。 (4) 財産区住民総会議事録の瑕疵本件土地の処分申請に際しては本件要綱に従い王子町宮本町会総会議事録及び王子町会総会議事録が提出されているが、王子町宮本町会及び王子町会のいずれの町会においても、事前に本件土地の処分の可否を議題として町会総会を開催する旨の通知を町会の構成員に対してなした上での町会総会は開かれておらず、各町会で役員を含む一部の者らが集まってその会合を総会扱いとすることを承認した上で、そこにおいて本件土地の売却に同意するとの決議を行っ 知を町会の構成員に対してなした上での町会総会は開かれておらず、各町会で役員を含む一部の者らが集まってその会合を総会扱いとすることを承認した上で、そこにおいて本件土地の売却に同意するとの決議を行ったに過ぎず、右各総会議事録にもその旨の記載がなされている(甲七の一、七の二、乙一の二五、一の四二、証人Mの証言)。従って、右各総会議事録は、本来の町会総会の議事録とはいえず、その意味で瑕疵があるものといえる。 しかしながら、甲一二の一七、一二の二一、一八及び証人Mの証言によれば、従前より王子財産区財産の処分の際には、町会の役員を含む一部の者らが集まってそれを総会として承認するという本件土地の売却時と同じ取扱がかなり慣例化しており、前記宮谷池の処分時にも同様の手続きがなされたことが認められる。また、本件要綱においては財産区財産の処分申請に当たり被告和泉市長に提出する書類の一つとして財産区住民総会議事録が挙げられてはいるが、それ以外に住民総会の開催や議決のための手続要件等について何ら規定されているわけではないから、本件要綱が予定している町会総会がどの程度厳格な手続を経たどのような内容のものかは必ずしも明らかではない。このような点からすると、本件土地の売却に当たって開かれたという各町会総会は本来の町会総会とはいい難いものではあるが、その点の瑕疵は必ずしも重大なものとまでいうことはできないと考えられる。 (5) 大阪府知事の認可の違法無効被告和泉市長から大阪府知事に対する法二九六条の五第二項の認可申請は、前記の各書類をも添付してなされるのであるが、右認可は、財産区住民の福祉の増進等の見地から合目的的に広範な一切の事情を考慮して知事の自由な裁量に基づいてなされるべき行為であって、地方自治法上認可の可否を決するに当たっての具体的基準は何ら規定されておらず 産区住民の福祉の増進等の見地から合目的的に広範な一切の事情を考慮して知事の自由な裁量に基づいてなされるべき行為であって、地方自治法上認可の可否を決するに当たっての具体的基準は何ら規定されておらず、原告らが主張する前記の各書類上の瑕疵は、和泉市が設けた財産区財産の処分に当たっての内部的な取扱要領に違反するに過ぎない。そして、それらの瑕疵は、いずれも前記のとおり必ずしも重大なものとはいい難いのであるから、それらの瑕疵があったからといって大阪府知事の認可に重大かつ明白な違法がありそれが無効になるということはとうていできない。 従って、認可申請書添付書類の前記の瑕疵を理由として大阪府知事の認可が無効であるとする原告らの主張は理由がない。 〔引用部分終了〕【原告らの当審における補充主張に対する判断】原告らは、当審において「本件要綱では、財産区財産の処分については、処分しようとする者が当該財産に係る公用を廃止させて諸権利諸問題を消滅させた上、(1)財産区代表者(町会長)の処分申請書、(2)財産区関係者(町会役員)の同意書、(3)実行組合長(農協支部の代表者)の同意書、(4)財産区代表者(町会長)の確約書、(5)水利権放棄書、(5)財産区住民総会(町会総会)議事録を提出して、被告和泉市長に申請しなければならないとされている。これは、(3)の実行組合長の同意書と(5)の水利権放棄書の提出によって、当該財産に係る権利関係を既に消滅させていることを担保し、(2)の財産区関係者の同意書と(6)の財産区住民総会議事録の提出によって、当該財産区住民の同意を得ていることを担保しようとしたものである。しかるところ、本件では、(3)(王子実行組合長の同意書)及び(5)(水利権放棄書)は作成権限のない者が作成したもの、(2)(宮本町会の部落役員同意書)は別の目的で作 とを担保しようとしたものである。しかるところ、本件では、(3)(王子実行組合長の同意書)及び(5)(水利権放棄書)は作成権限のない者が作成したもの、(2)(宮本町会の部落役員同意書)は別の目的で作成されたものを流用したもの、(5)(宮本町会総会議事録及び王子町会総会議事録)は開催の事実のない住民総会(町会総会)を開催したと記載したものであり、(1)、(4)以外の書類にはいずれも重大な瑕疵があり、これに基づく大阪府知事に対する認可申請を容認したのでは、本件要綱の趣旨、ひいては地方自治の精神及び財産区制度の趣旨を完全に否定することになる」旨主張する。 しかしながら、前示のとおり、財産区財産の処分にあたり財産区住民の同意を得ることは地方自治法上その要件とされていないこと、また、法二九六条の五第二項による知事の認可は、財産区設置の趣旨、財産区住民の福祉増進等一切の事情を総合考慮してなされるものであり、本件における大阪府知事の認可も、原告らが指摘する同意書等の存在のみを理由に認可されたものとは解せられないので、原告らの右主張は採用できない。 (2) M一人の意思による売却、処分理由の不存在等この点に関する原告らの主張は採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等するほかは、原判決(九八頁四行目から一〇一頁八行目まで)に示されているとおりである。 〔付加、訂正の上、引用された原審判決部分〕甲九の一ないし二四、一八、二〇、二一、乙一の一ないし四七及び証人M、同N(第一回)の各証言によれば、王子財産区の両町会内の役員を含む多くの者らの間でかなり以前より、農業用に利水する者のいなくなった本件土地を売却して代金を町会の諸費用に充てたいという意向が根強くあり、このような意向を汲んで本件土地の売却がなされたことが認められ、本件土地の売却がM一人の意思に 、農業用に利水する者のいなくなった本件土地を売却して代金を町会の諸費用に充てたいという意向が根強くあり、このような意向を汲んで本件土地の売却がなされたことが認められ、本件土地の売却がM一人の意思に基づいて進められたと認めるに足る証拠はない。また、売却の申請に当たり本件要綱に従って提出された書類に瑕疵があったことが知事の認可の無効事由にならないことは前述のとおりである。 更に、乙一の二、一の二四、一の四一及び証人M、同N(第一回)の各証言によれば、本件土地の処分についての大阪府知事に対する認可申請に当たって処分理由とされたところは、本件土地についての悪臭の除去、防護柵の設置等の維持管理の必要性及び処分代金を王子財産区内の水路や他のため池等の改修工事に充てるためというものであったと認められるが、甲七の一、七の二、一二の一ないし二七、一三、一四、三〇、丙四によれば、昭和五六年七月一六日頃王子財産区財産である宮谷池が売却されて、売却代金から王子町宮本町会及び王子町会に合計約一億一〇〇〇万円(王子町会には八九六九万五九五七円)が入金されたこと、本件土地の売却代金から王子町宮本町会には昭和六一年四月八日頃四四七一万二二二五円が入金されたが、それから昭和六三年四月一六日までの間にそこから二八〇万円余りしか支出されていないことが認められ、これらの事実及び甲七の一、七の二、一〇、一一によれば、本件土地が売却された当時前記の処分理由に挙げられたような事情から本件土地を売却しなければならない差し迫った必要性があったとはいい難いといわざるをえない。しかしながら、前記認定のとおり、王子財産区の両町会内の役員を含む多くの者らの間でかなり以前より、農業用に利水する者のいなくなった本件土地を売却して代金を町会の諸費用に充てたいという意向が根強くあって、このような意 認定のとおり、王子財産区の両町会内の役員を含む多くの者らの間でかなり以前より、農業用に利水する者のいなくなった本件土地を売却して代金を町会の諸費用に充てたいという意向が根強くあって、このような意向を汲んで本件土地の売却がなされたのであり、従って、大阪府知事に対する認可申請の際に処分理由とされたところが必ずしもそのまま真実には合致しなかったことをもって、認可を無効とするほどの重大明白な違法事由ということはとうていできない。また、被告和泉市長ないし和泉市の担当者が知事の認可を騙取する意図をもって認可申請を行ったと認めるに足りる証拠はない。 よって、以上のような諸点を理由として大阪府知事の認可が無効であるとする原告らの主張は理由がない。 〔引用部分終了〕(三) 随意契約の制限に関する法令違反原告らは、本件売買契約は令一六七条の二第一項二号、五号に該当するとして随意契約の方法でなされたが、実際には右いずれの場合にも該当せず、被告Kから黒鳥土地を買収するためになされた価格釣り合わせによる不当に低い代金額での売買であるから、本件売買契約は無効であると主張するが、右主張は、いずれも採用できない。その理由は、次のとおり原判決を訂正等し、原告らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決(一〇一頁一〇行目から一二一頁一行目まで)に示されているとおりである。 〔付加、訂正の上、引用された原審判決部分〕(一) 法二三四条一、二項によれば、地方公共団体の契約を随意契約によってなしうるのは、政令で定める場合に該当するときに限るとされ、令一六七条の二第一項で随意契約によることができる場合が定められているが、本件売買契約は、同項二号及び五号に該当するものとして随意契約によってなされたものである(乙一の二、証人Nの証言(第一回))。 (二) 今一六七 項で随意契約によることができる場合が定められているが、本件売買契約は、同項二号及び五号に該当するものとして随意契約によってなされたものである(乙一の二、証人Nの証言(第一回))。 (二) 今一六七条の二第一項二号該当性(1) 被告らが令一六七条の二第一項二号に該当する理由として主張するところは、「信太の森を守る会」の住民等からの本件土地の売却処分及び宅地化に対する反対が強かったため、本件売買契約においては、本件土地を売却代金完納の日から一〇年間現状有姿のまま保存することとその間の転売禁止及びこれに違反した場合の買戻しが条件とされた上、買主は右保存期間内本件土地に関する悪臭の除去や防護柵の設置等の維持管理を余儀なくされるので、買主にとって非常に不利な内容となっており、本件土地の売却価格にも鑑みた場合、本件土地の売却を競争入札に付しても落札の可能性はなかったこと、及び、被告和泉市長の指導により買主をして本件土地に関する右のような維持管理を実行せしめる必要があったことから、競争入札によっては目的を達することができないおそれがあったので、本件売買契約は競争入札に適さず令一六七条の二第一項二号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当したというのである。 (2) 甲一八ないし二〇、乙一の二、一の三、一の四六、証人Nの証言(第一回)及び被告K本人尋問の結果によれば、本件土地の文化的、歴史的、学術的、自然環境的価値等からその保存を主張する「信太の森を守る会」の住民等からの本件土地の売却処分及び宅地化に対する強い反対があったため、本件売買契約においては、本件土地を売却代金完納の日から一〇年間現状有姿のまま保存することとその間の転売禁止及びこれに違反した場合の買戻しが条件とされたこと、また買主に対しては少なくとも右保存期間内ため池で 約においては、本件土地を売却代金完納の日から一〇年間現状有姿のまま保存することとその間の転売禁止及びこれに違反した場合の買戻しが条件とされたこと、また買主に対しては少なくとも右保存期間内ため池である本件土地に関する悪臭の除去や防護柵の設置等の維持管理を行うことが要請されたこと、本件土地の売却価格は、昭和五八年一二月に本件土地を売却しようとした際の和泉市財産評価審査委員会の答申による適正評価額が一平方メートル当たり三万五〇〇〇円(甲一八ないし二〇、証人Mの証言によれば、この時点までには既に本件売買契約に右条件が付されるようになっていたと認められるから、右価格はそれを考慮したものであると考えられる。)であったところ、それから売却時点までの大阪府下全般の土地価格の上昇率が約一〇パーセントであることを考慮して、その期間の経時的な修正率としてはその倍である二一パーセントの増加を見込んで、一平方メートル当たり三万五〇〇〇円の二一パーセント増しの四万二三五〇円と決定されたこと、昭和五八年当時本件土地を売却しようとした際には、前記のような条件がついたため前記の和泉市財産評価審査委員会の答申による評価額での買手はなく、その後も王子財産区では引き続き本件土地を売却したい意向をもって買手を求めていたが、本件売買契約時点まで被告K以外の買手は全くつかなかったこと、以上の事実が認められる。なお、原告らは、本件土地につき、本件売買価格の坪当たり一四万円より高い坪当たり一七万円で買いたいという希望者が他に存在したと主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。 (3) 本件売買契約の前記のような条件は必ずしも買手について特段の資力、信用、技術、経験を要求するものとはいえないし、ため池の維持管理の要請についても同様のことがいえる。従って、このような条件及び要請が直 本件売買契約の前記のような条件は必ずしも買手について特段の資力、信用、技術、経験を要求するものとはいえないし、ため池の維持管理の要請についても同様のことがいえる。従って、このような条件及び要請が直ちに本件売買契約を競争入札に適しないものにするということはできない。しかしながら、前記のような本件土地の売却価格の決定方法及び従前から本件土地の買手がつかなかった経過等をも併せ勘案すると、前記のような条件を付けて本件土地の売却を競争入札に付しても右売却価格(競争入札ではこれが予定価格になったものと考えられる。)での落札の可能性がないとした被告和泉市長の判断にもあながち合理性がないとはいえない。そうすると、買主をして本件土地に関する前記のような維持管理を確実に実行させる必要性があったことをも勘案した場合、本件売買契約は競争入札に適しないから令一六七条の二第一項二号に該当するとまで言い切れるか否かについては疑問があるとしても、そのような判断が合理性を欠き不当であることが明らかであるとまでいうことはできない。 (三) 今一六七条の二第一項五号該当性(1) 本件土地の売却価格は前記のとおり、昭和五八年一二月の和泉市財産評価審査委員会の答申による適正評価額一平方メートル当たり三万五〇〇〇円に、それから売却時点までの大阪府下全般の土地価格の上昇率約一〇パーセントの倍である二一パーセントの増加をその期間の経時的な修正率としてその分を上乗せし、三万五〇〇〇円の二一パーセント増しの四万二三五〇円と決定されたのであるが、被告らは、右決定方法や参考に徴した近隣のため池の売買事例、不動産鑑定士の意見及び本件土地の利用に関する前記条件による制限等に照らすと右売却価格は時価より著しく高額であるから、本件売買契約は、令一六七条の二第一項五号の「時価に比して著しく有利な価 買事例、不動産鑑定士の意見及び本件土地の利用に関する前記条件による制限等に照らすと右売却価格は時価より著しく高額であるから、本件売買契約は、令一六七条の二第一項五号の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」に該当したと主張する。 (2) 原告らは、前記宮谷池の適正売却価格が一平方メートル当たり五万七四七六円であった(甲一二の二三)ことからして和泉市財産評価審査委員会の答申による前記評価額は不当に安すぎると主張するが、甲一二の三、一四及び証人N(第一回)、同Mの各証言によれば、宮谷池の場合は売却当時既に埋め立てられていたし、本件売買契約のように一〇年間転売を一切禁止するといったような条件も付されていなかった(五年間転売は禁止されるが、買主が宅地建物取引業を営み、かつ宅地建物の分譲販売を目的とする場合には、王子財産区が予め承認した初回の個人向所定区画に限り、分譲販売ができることとされている。)と認められるから、宮谷池の価格との単純な比較で右評価額が不当に安いということはできない。 しかしながら、昭和五八年一二月から本件土地の売却時点までの期間の本件土地価格の上昇率は大阪府下全般の土地価格の上昇率と一致するとは限らずそれを上回った可能性があるし、たとえ大阪府下全般の上昇率と同様であったとしても、右売却価格は、単純に昭和五八年一二月時点の前記評価額(これは前記のとおり、本件売買契約に前記条件が付されることを考慮したものであると考えられる。)に経時的な修正率一〇パーセント分を上乗せした金額を一〇パーセント上回るに過ぎないのであるから、これらの点を考慮すると、右の程度でもって競争入札の原則の例外として随意契約をなすことが許されるほどの「時価に比して著しく有利な価格」といえるか否かは疑問である。被告らは、参考に徴 いのであるから、これらの点を考慮すると、右の程度でもって競争入札の原則の例外として随意契約をなすことが許されるほどの「時価に比して著しく有利な価格」といえるか否かは疑問である。被告らは、参考に徴した近隣のため池の売買事例や不動産鑑定士の意見にも照らすと右売却価格は時価より著しく高額であると主張するが、近隣のため池の売買事例や不動産鑑定士の意見なるものの具体的内容は証拠上何ら明らかではないから、このような事情を斟酌する余地はない。 (3) しかし、右のような売却価格の決定方法がそれなりの合理性を有するものであることは明らかであり、前記のとおり従前から本件土地の買手がつかなかった経過等をも併せ勘案すると前記のような条件を付けて本件土地の売却を競争入札に付しても右売却価格での落札の可能性がないという判断にも合理性がないとはいえないのであるから、右売却価格が「時価に比して著しく有利な価格」に当たるとした被告和泉市長の判断にもあながち合理性がないとはいえない。そうすると、本件売買契約は令一六七条の二第一項五号に該当するという判断が合理性を欠き不当であることが明らかであるとまでいうことはできない。 (四) 黒鳥土地買収のための本件土地の売却(1) 原告らは、本件土地の売買が随意契約でなされたのは、黒鳥土地を買収するためにどうしても本件土地を代替地として被告Kに売り渡す必要があり、しかもその売買価格を同被告の要望に従って黒鳥土地の売買価格と釣り合った不当に低いものにしなければならなかったからであり、本件売買契約は、専ら被告Kの個人的要望に応じる目的から、売買価格についての鑑定もしないで不当に低い金額で随意契約によってなされたもので、その動機、代金額の決定が不当に歪められたものであるから違法である旨主張する。 (2) 甲二五、二六、四八の一ないし一二 買価格についての鑑定もしないで不当に低い金額で随意契約によってなされたもので、その動機、代金額の決定が不当に歪められたものであるから違法である旨主張する。 (2) 甲二五、二六、四八の一ないし一二、四九、丙二ないし五、証人R、同N(第二回)、同S、同Tの各証言及び被告K本人尋問の結果によれば、以下の事実が認められる。 和泉市では、同市の公園用地として被告K所有の黒鳥土地を取得する必要があったため、昭和六〇年春頃から買収交渉を行っていたところ、同被告から買収のためには代替地を取得できるようにしてもらいたいとの希望が出された。そこで、代替地としていくつかの候補地があげられたが、価格等の関係で適当なものがなく、昭和六〇年中頃には同被告が本件土地を黒鳥土地の買収の見返りに取得するのに適当な土地として希望するようになった。そこで、和泉市と同被告との間で、黒鳥土地の買収交渉と同時に、他方で本件土地についての売買交渉がなされるようになった。 同被告は、その過程で、黒鳥土地と本件土地の価格が釣合いほぼ同額になることや、両方の土地の売買が同じ時期になされることを希望したが、結果的には、本件土地についての売買契約が、昭和六一年三月三日売買代金九一五一万八三五〇円で成立して、同年四月八日頃代金の支払いがなされた。しかし、同月九日には、実測面積が公簿面積より少ないことを理由として王子財産区から同被告に対し四二〇万円が返還されているので、実質的には売買代金は八七三一万八三五〇円となった。 他方、黒鳥土地についての売買契約は、同年六月一三日売買代金八六七〇万〇八〇〇円で成立した。右代金額は、株式会社補償評価研究所の鑑定評価に基づいて決定された。 (3) 以上の経過からすると、和泉市では、黒鳥土地を買収するための見返りとして本件土地を同被告に売却したいという意向を有し した。右代金額は、株式会社補償評価研究所の鑑定評価に基づいて決定された。 (3) 以上の経過からすると、和泉市では、黒鳥土地を買収するための見返りとして本件土地を同被告に売却したいという意向を有していたであろうことは推認できるものの、本件土地の売却価格が決定された経過は前記(二)に認定したとおりであり、それが黒鳥土地の価格と釣り合わせるため不当に低いものにされたと認められるような証拠はない。従って、本件売買契約は、その内容が不当に歪められたものであるということはできず、また、和泉市が右のような意向を有していたからといって本件売買契約を随意契約の方法によってなしたのが違法であるということはできない。 (五) 地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り私法上無効になるところ(最高裁昭和五六年(行ツ)第一四四号昭和六二年五月一九日第三小法定判決・民集四一巻四号六八七頁参照)、以上に認定したところによれば、本件売買契約は、令一六七条の二第一項二号及び五号に該当するといえるか否かについては疑問があるとしても、それが同項二号及び五号に該当するとした被告和泉市長の判断にもあながち合理性がないとはいえない。また、前記(三)、(四)記載のとおり、本件土地の売却価格の決定方法はそれなりの合理性を有するものであって、それが適正な時価に比して不当に低額であるとはとうていいえず、むしろ「時価に比して著しく有利な価格」と考える 、(四)記載のとおり、本件土地の売却価格の決定方法はそれなりの合理性を有するものであって、それが適正な時価に比して不当に低額であるとはとうていいえず、むしろ「時価に比して著しく有利な価格」と考えるのも合理性がないとはいえないような価格であるし、黒鳥土地の価格と釣り合わせるために本件売買契約の内容が歪められたというような事情も認められないから、本件売買契約が随意契約の方法によってなされたことにより王子財産区ないし和泉市に財政的観点からみて損害が発生した可能性を肯定することは困難である。更に、証人Rの証言及び被告K本人尋問の結果によれば、被告Kは、昭和三五年ころから小幅綿布の生産、販売を業としてきたが、昭和五二年頃からは次男に営業を任せて仕事から身を引き悠々自適の生活を送っていたもので、従前不動産取引や地方公共団体との取引に関わったことはないこと、同被告が本件土地を買い受けることになったのは、先祖から受け継いだ黒鳥土地を買収されるので先祖伝来の不動産を減らしたくないという思いから代替地の取得を希望し、たまたま本件土地が価格等の条件面で釣り合ったことから本件売買契約の締結に至ったというだけのことであって、同被告は、本件売買契約当時信太の森を守る会等の反対運動は既に決着がついて問題はないと思っていたし、売買契約の手続き、価格等契約内容の決定についてはすべて和泉市を信用してこれに任せ、その担当者のいうところに従っていたことが認められ、同被告が本件売買契約を随意契約の方法で行うことに関しては法令上問題があることにつき認識を有していたとか、有することができたといえるような事情は何ら認められない。 そうしてみると、本件売買契約については、令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかであるとか契約の相手方において随意 たといえるような事情は何ら認められない。 そうしてみると、本件売買契約については、令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかであるとか契約の相手方において随意契約の方法による契約の締結が許されないことを知り又は知り得べき場合であったということはできないし、本件売買契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加えて契約の公正及び価格の有利性を図り地方公共団体の財務行政の適正な運営を確保しようとした法令の規定の趣旨を没却する結果になるということもできない。よって、随意契約の制限に関する法令違反を理由として本件売買契約が無効であるとする原告らの主張は理由がない。 〔引用部分終了〕【原告らの当審における補充主張に対する判断】(1) 原告らの当審における補充主張法二三四条一項が「売買、賃借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし、二項が「前項の・・・、随意契約・・・は、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。」としている趣旨は、一般競争入札の方法が、機会均等の理念に最も適合して公正であり、かつ、地方公共団体にとっての価格の有利性を確保し得ること、随意契約には、契約の相手方が固定化し、契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあること等にあり、かかる観点からすると、令一六七条の二第一項二号の「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当する場合としては、(1)不動産の買入れ又は借入れに関する契約のように、当該契約の目的物の性質から契約の相手方がおのずから特定の者に限定されてしまう場合、(2)契約の締結を秘密にすることが当該契約の目的を達成する上で必要とされる場合、(3)不特定多数の者の参加を求 に、当該契約の目的物の性質から契約の相手方がおのずから特定の者に限定されてしまう場合、(2)契約の締結を秘密にすることが当該契約の目的を達成する上で必要とされる場合、(3)不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当でなく、当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達或する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合が挙げられる(最高裁判所昭和五七年(行ツ)第七四号昭和六二年三月二〇日第二小法廷判決)。これを本件売買契約についてみるに、不動産の購入と違って売却であるから、契約の相手方がおのずから特定の者に限定されるわけではなく、(1)には該当しない。本件売買契約の目的は、被告らの主張によっても本件土地(ため池とその堤)の維持管理から免れることと、王子財産区内の他のため池、水路等の維持管理に必要な費用の取得とにあったというのであるから、契約の締結を秘密にする必要はなく、(2)にも該当しない。本件売買契約の条件とされた一〇年間の現状有姿での保存と転売禁止の義務は、単に買主に対して不作為を求めるものにすぎず、悪臭の除去や防護柵の設置等の維持管理も、管理行為としては初歩的かつ簡易なもので、契約において特に定めずとも、ため池の保有者である限り当然に負担する基本的な責務にすぎないから、結局、本件土地の管理には、特段の資力、信用、技術、経験等を必要とするものではなく、(3)にも該当しない。 また、令一六七条の二第一項五号の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」についていえば、右にいう「 技術、経験等を必要とするものではなく、(3)にも該当しない。 また、令一六七条の二第一項五号の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」についていえば、右にいう「有利な価格」は、契約担当者の合理的な判断が含まれていなければ具体的には決定できないものではあるが、前記同項二号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当するか否かの判断と比較すれば、その判断ははるかに容易であり、また、客観性を持たせることができる判断であり、その意味で契約担当者の裁量の幅は比較的狭く限定されている。そして、その具体的方法として鑑定の制度が存在する。しかも、単に「有利な価格」ではなく「著しく」有利な価格でなければならないとされていることからすると、「少々の価格的有利さ」や「多少又は普通程度の価格的有利さ」であれば、それは一般競争入札に付した場合にも当然予想できることであるから随意契約に付することは認められない。これを本件売買価格についてみるに、右価格は、本件売買契約に近接した時点で新たな鑑定評価をすることなく、契約担当者において単純に昭和五八年一二月時点の本件土地の鑑定評価額に経時的な修正率一〇パーセント分を上乗せし、これに更に一〇パーセント上乗せするという方法で算定したものにすぎず、右の程度でもって競争入札の原則の例外としての随意契約の方法によることが許される程の「時価に比して著しく有利な価格」とはいえない。 (2) 右補充主張に対する判断一般競争入札を原則とし随意契約を例外とした法二三四条一項、二項の趣旨は原告ら主張のとおりであり、右趣旨からすると、令一六七条の二第一項は、随意契約の方法により得る場合を一号から七号まで列挙しているが、これらの事由は限定列挙と解すべきものである。従って、列挙された事由のいずれに のとおりであり、右趣旨からすると、令一六七条の二第一項は、随意契約の方法により得る場合を一号から七号まで列挙しているが、これらの事由は限定列挙と解すべきものである。従って、列挙された事由のいずれにも該当しない場合に随意契約の方法によって契約が締結された場合には、違法というべきことになる。ところで、同項二号は「・・・その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」と定めているが、そこに例示されているもののほか、どのような契約がこれに該当するのかは必ずしも明らかではない。しかし、以下にみるように会計法等の規定に照らしてみると、右にいう「競争入札に適しないもの」という概念にもある程度の輻があることが明らかである。すなわち、会計法並びに予算決算及び会計令(以下「予決令」という。)の規定をみてみると、会計法二九条の三第一項によると、売買等の契約を締結する場合においては、競争に付することを基本としているが、同第四項において「契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することか不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。」とし、同五項において「契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、・・・随意契約によることができる。」と規定したうえ、予決令九九条においては、随意契約によることができる場合を一号から二五号まで類型的に列挙している。これらの定めから明らかなように、会計法は、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」等、競争原理を導入することが不可能又は著しく困難なものについては、随意契約によるものとしたが、契約の締結に当たって競争原理の導入が可能な場合であっても、競争に付する必要が乏しいものや当該契約の性質や目 争原理を導入することが不可能又は著しく困難なものについては、随意契約によるものとしたが、契約の締結に当たって競争原理の導入が可能な場合であっても、競争に付する必要が乏しいものや当該契約の性質や目的に照らして競争に付することか必ずしも適当でないものもあり得ることを認め、それらを予決令において類型化して列挙し、これに該当するときは随意契約により得ることを明らかにしているものと解される。そして、令(地方自治法施行令)一六七条の二第一項二号所定の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」との要件は、会計法二九条の三第四項の「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」とは明らかに異なり、これよりも広く、契約の締結に当たって競争原理の導入が不可能又は著しく困難と認められる場合のみならず、競争原理の導入が可能な場合にも、なお競争入札に適しないとされるものがあり得ることを前提にしているものと解される。 そうだとすれば、令一六七条の二第一項第二号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するか否かは、ある程度幅のある判断であり、普通地方公共団体の契約担当者が契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案し、個々具体的な契約毎に、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考慮して、その合理的な裁量に基づいて判断すべきものと解するのが相当であり(最高裁判所昭和五七年(行ツ)第七四号昭和六二年三月二〇日第二小法廷判決・民集四一巻二号一八九頁参照)、右契約担当者の判断が明らかに不合理であると認められる場合にはじめてこれを違法とすることができるものというべきである。 また、令一六七条の二第一項五号所定の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる 断が明らかに不合理であると認められる場合にはじめてこれを違法とすることができるものというべきである。 また、令一六七条の二第一項五号所定の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」についても、多かれ少なかれ判断の幅の生じ得る要件の定め方がされており、法文上はこれに該当するか否かの判断に契約担当者の裁量を認める余地が十分にあるから、同号の規定により随意契約の方法によることができる場合に該当するか否かについても、個々具体的な契約毎に、適正な時価の判定に基づく普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定すべきものと解するのが相当であり、右契約担当者の判断が明らかに不合理であると認められる場合にはじめてこれを違法とすることができるものというべきである。 そして、これを本件についてみるに、本件売買契約に関し原審において認定された事実によれば、原判決にも示されているとおり本件売買契約が令一六七条の二第一項二号、五号に該当するとの被告和泉市長の判断が明らかに不合理であるとまではいえないから、原告らの前記補充主張を考慮しても、この点に関する原告らの主張は採用できない。 2 本件売買契約の実体法上の違法による無効(争点6)〔訂正の上、引用された原審判決部分〕(一) 原告らは、住民訴訟の対象が地方公共団体の執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限られるとしても、右行為が違法となるのは、単にそれ自体が直接財務会計法令や財務会計原理に違反する場合だけでなく、右行為がそれを統制する別の原理に違反して許されない場合や、右行為の前提となる非財務行為が法令に違反して許されない場合の財務会計上の行為も、また、違法となる余地があることを前提として、前示の原審における主張に加えて、当審において次のとおり主張す い場合や、右行為の前提となる非財務行為が法令に違反して許されない場合の財務会計上の行為も、また、違法となる余地があることを前提として、前示の原審における主張に加えて、当審において次のとおり主張する。 本件各訴えのうち、被告和泉市長に対して本件所有権移転登記の抹消登記を得るための措置をとらないこと、被告Kから本件土地の占有を回復する措置をとらないことの管理を怠る事実の違法確認を求める訴え、及び被告Kに対して本件所有権移転登記の抹消登記手続及び本件土地の王子財産区への引渡しを求める訴えのように、売買契約の無効を前提に当該売買契約の履行に基づく違法状態の解消を求める住民訴訟において、売買契約を無効に至らしめる違法理由として主張し得る行為は、当該売買契約に関する財務会計行為に限られることはあり得ず、当該契約に関する実体法上の違法理由のすべてに及ぶことは明らかである。 和泉市は、普通地方公共団体として、「建造物、絵画、芸能、史跡、名勝その他の文化財を保護し、又は管理する」事務を処理する(法二条二項、三項一四号)から、被告和泉市長は、普通地方公共団体である和泉市の長として、和泉市内に存在する文化財を保護し、又は管理する事務を管理し、これを執行する権限を有している(法一四八条一項)。他方、王子財産区は、特別地方公共団体として、財産区財産等の管理及び処分又は廃止に関する権能を有し、被告和泉市長は、同財産区の管理者として右事務を管理、執行する権限を有している(法二九四条一項、一四八条、一四九条六号、七号)。 しかるところ、文化財保護法三条は「・・・地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの 、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。」と、四条二項は「文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。」と規定しているが、右にいう「文化財」とは同法二条で定義された「文化財」であり、指定を受けた文化財に限定されるものではない。そして、未指定の文化財であっても、それがわが国にとって歴史上、学術上価値の高いもので、広く国民がその価値を認め、その保存が強く求められている場合、当該文化財を所有しているのが地方公共団体自身であり、従って、関係者の所有権その他の財産権に対する配慮を必要とせず、当該文化財を保存することが容易であり、かつ、当該地方公共団体以外に当該文化財の保存をする者が予定されていない等の特段の事情が存するときは、当該文化財の所有者である地方公共団体は、文化財保護行政を行う者として、未指定の文化財であるとの理由で放置することは許されず、指定されるまでの間、文化財保護法の趣旨に従って適切に当該文化財を保存すべき法律上の義務が生ずるのであって、かかる義務を怠るときは違法となる。 本件についてこれをみるに、本件土地(ため池とその堤・「鏡池」)は、未だ文化財保護法六九条に基づく指定を受けていないが、同条にいう「史跡」として指定されるべき「旧宅、園池、井泉、樹石及び特に由緒のある地域の類」に該当する「重要な記念物」である。本件売買契約締結当時、かかる価値のある文化財たる本件土地を所有していたのが特別地方公共団体であ 指定されるべき「旧宅、園池、井泉、樹石及び特に由緒のある地域の類」に該当する「重要な記念物」である。本件売買契約締結当時、かかる価値のある文化財たる本件土地を所有していたのが特別地方公共団体である王子財産区であり、私人の所有権に対する制限を加えることなく本件土地を保存することが可能であり、その管理者(執行機関)である被告和泉市長のほかに本件土地の保存を行う適任者は存在しなかったから、被告和泉市長が、本件土地に対する文化財保護行政を行うべき普通地方公共団体である和泉市の長として(地方自治法二条二項、三項一四号、文化財保護法三条)、かつ、本件土地の所有者、すなわち特別地方公共団体である王子財産区財産の管理者として(地方自治法二九四条一項、文化財保護法四条二項)、地方自治法及び文化財保護法に基づき、本件土地を適切に保存すべき法律上の義務を負っていたことは明らかである。本件売買契約は、被告和泉市長のかかる保存義務に違反してなされたものであるから違法性は重大かつ明白であり、しかも、本件土地の価値、保存を求める声はひろく報道機関等を通じて周知されていた事実に照らすと、かかる違法の存することは被告Kも知っていたから、本件売買契約は無効である。 (二) しかしながら、本件土地を文化財として保護していくかどうかは、原告らもいうとおり、元来、文化財保護行政の問題であり、それを行うべき立場にあるのは普通地方公共団体である和泉市であると解されるところ、原告らは、本件売買契約は、被告和泉市長が普通地方公共団体である和泉市の長及び特別地方公共団体である王子財産区の管理者として負っていた保存義務に反してなされたものであるというが、原告らが指摘する各法条に照らしてみても、被告和泉市長が本件土地につき原告ら主張の法律上の義務を負っていたと認めることはできない。そうだ 者として負っていた保存義務に反してなされたものであるというが、原告らが指摘する各法条に照らしてみても、被告和泉市長が本件土地につき原告ら主張の法律上の義務を負っていたと認めることはできない。そうだとすれば、文化財として格別の措置のとられていない本件土地についてなされた本件売買契約を、原告らがいうような理由で文化財保存義務違反により無効となるとすべき余地はなく、結局、その余の点について判断するまでもなく、前記(一)の原告らの主張は採用できない。 (三) その他、本件土地の売却代金が不当に低額であるといえないことは前示のとおりであるし、その使途が違法であるといえるような事情は何ら認められない。 よって、本件売買契約が実体法上の違法により無効になるとの原告らの主張は理由がない。 〔引用部分終了〕四結論以上の次第で、原判決中、財産区住民原告ら(原告A、同B、同C、同D及び同E)の請求に関する部分は相当であるから、同原告らの控訴を棄却し、死亡した原告ら(原告F、同G、同H、同I)及び財産区外原告ら(右九名以外の原告ら)の請求に関する部分はこれを取り消し、変更して、主文第二、三項のとおり判決することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 別紙死亡当事者目録、原判決別紙物件目録(省略)
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