平成27(ワ)10532 専用実施権設定登録抹消登録等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年8月29日 大阪地方裁判所
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本件は、原告株式会社ピカパワーが被告株式会社キャスティングインに対し、特許権に基づく専用実施権の設定登録の抹消及び金銭の支払いを求めた事案である。原告は、契約不履行や契約期間の満了を理由に専用実施権の抹消を請求し、さらに実施料の支払いを求めた。主要な争点は、契約の履行状況と契約解除の正当性であり、裁判所は原告の請求を棄却し、契約解除が認められないと判断した。判決の結論として、原告の請求はすべて棄却され、訴訟費用は原告の負担とされた。

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判決文本文32,944 文字)

- 1 -平成29年8月29日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第10532号専用実施権設定登録抹消登録等請求事件口頭弁論終結日平成29年6月20日判決 原告株式会社ピカパワー 同訴訟代理人弁護士永田貴久同訴訟復代理人弁護士赤松俊治同補佐人弁理士谷 昌樹 被告株式会社キャスティングイン 同訴訟代理人弁護士藤田謹也同小林 豊同鵜澤亜紀子同補佐人弁理士小林正治同小林正英主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告に対し,別紙特許権目録記載の特許権について,平成23年8月25日特許庁受付第006790号をもってした専用実施権の設定登録(乙区順位第1番)の抹消登録手続をせよ。 - 2 - 2 被告は,原告に対し,4042万5000円を支払え。 第2 事案の概要本件は,後記本件特許権に係る特許発明の専用実施権を被告に設定していた原告が,被告に対し,下記の請求をした事案である。 記① 専用実施権設定登録の抹消登録請求(選択的請求)a 専用実施権設定契約の債務不履行に基づく契約解除を理由とする専用実施権設定登録の抹消登録請求b 専用実施権設定契約の期間満了を理由とする専用実施権設定登録の抹消登録請求② 専用実施権設定契約に基づく 権設定契約の債務不履行に基づく契約解除を理由とする専用実施権設定登録の抹消登録請求b 専用実施権設定契約の期間満了を理由とする専用実施権設定登録の抹消登録請求② 専用実施権設定契約に基づく平成26年12月から平成27年3月までの間の実施料1470万円の支払請求及び専用実施権設定契約解除後の同年4月から同年10月までの間の不当利得に基づく実施料相当額2572万5000円の返還請求 1 判断の前提となる事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 当事者ア原告は,抗菌性能持続製品の開発・販売を行う株式会社であり,後記本件特許権の特許権者である。なお,本件特許の発明者は原告の代表者である。 イ被告は,歯科技工等を営む株式会社であり,本件特許権の専用実施権者として設定登録されている者である。 ウ株式会社ピカッシュ(以下「ピカッシュ」という。)は,平成25年8月に設立され,その後,後記本件機械の製造販売等を行っている株式会社である(乙56)。 なお被告及びピカッシュは,株式会社キャスティングアイを含め,いずれも被告代表者の家族が事実上全株式を所有し,被告代表者がその代表取締役を務めて経営- 3 -に当たっている株式会社である。いずれも被告代表者が最初に設立した株式会社愛歯を分社化して設立した株会社であるが,実態としての分社化は不完全であり,そのため各社の法人格が異なることを明確にされない扱いもされている(乙56,被告代表者)。 (2) 原告の特許権原告は,下記特許に係る特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」,特許に係る発明を「本件特許発明」,その公報を「本件特許公報」という。)を有している。 記番号特許第4324639号出願日 (以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」,特許に係る発明を「本件特許発明」,その公報を「本件特許公報」という。)を有している。 記番号特許第4324639号出願日平成20年1月16日登録年月日平成21年6月12日発明の名称マイクロ波照射による銀イオン定着化物および銀イオン定着化方法および銀イオン定着化物の製造方法特許請求の範囲【請求項1】 ターゲット物体を銀水溶液中に浸漬した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着化方法。 【請求項2】 ターゲット物体に対して銀水溶液をスプレー塗布した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着化方法。 【請求項3】 あらかじめプラズマイオンコーティングを施したターゲット物体を銀水溶液中に浸漬した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着化方法。 【請求項4】 あらかじめプラズマイオンコーティングを施したターゲット物体に対して銀水溶液をスプレー塗布した状態においてマイクロ波照射により前記ター- 4 -ゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着化方法。 【請求項5】 ターゲット物体を銀水溶液中に浸漬した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着物の生産方法。 【請求項6】 ターゲット物体に対して銀水溶液をスプレー塗布した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着物の生産方法。 【請求項7】 あらかじめプラズマイオンコーティングを 銀水溶液をスプレー塗布した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着物の生産方法。 【請求項7】 あらかじめプラズマイオンコーティングを施したターゲット物体を銀水溶液中に浸漬した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン物の生産方法。 【請求項8】 あらかじめプラズマイオンコーティングを施したターゲット物体に対して銀水溶液中をスプレー塗布した状態においてマイクロ波照射により前記ターゲット物体に銀イオンを定着させることを特徴とする銀イオン定着物の生産方法。 (3) 専用実施権設定に至る経緯ア原告と被告は,平成22年5月7日,本件特許等につき,被告を実施権者とする通常実施権設定契約を締結した(甲3,以下「甲3契約」という。)。 同契約においては,契約金は1000万円,契約期間は1年ごとの更新を予定とする5年間,許諾対象となる商品・役務分野を「歯科補綴物その他歯科技工加工物および歯科材料の開発販売」とし,第三者に対する再実施許諾権は被告に与えられていなかった。また,実施料については,下記のとおり定められていた。 記第4条(契約金,実施料・使用料) 2 本契約で与えられる実施権の実施料,使用権の使用料は,本加工を施した製品の販売売上金額および本加工の加工依頼に対する加工売上金額および歯科材料の販売金額に3%を掛けた額とする。なお,最低補償額は,本契約締結後2年- 5 -間は年額0円とし,3年目以降は甲乙協議の上別途定めることとする。 イその後,被告から専用実施権設定の申し入れがなされ,原告及び被告は,平成23年3月18日頃,「特許権実施・ノウハウ使用・商標権使用許諾契約書」と題する契約書を取り交わし,本件特許権の とする。 イその後,被告から専用実施権設定の申し入れがなされ,原告及び被告は,平成23年3月18日頃,「特許権実施・ノウハウ使用・商標権使用許諾契約書」と題する契約書を取り交わし,本件特許権の専用実施権設定契約を含む契約をした(甲4。以下「甲4契約」といい,同契約書を「甲4契約書」という。)。 同契約書には,原告を甲,被告を乙として,下記条項がある(なお,下記に掲げた第1条2項,第17条,第18条は,上記アの独占的通常実施権設定契約の約定と同じである。)。 記第1条(目的,定義) 2 本契約に出てくる以下の用語の意味は以下のとおりする。 ① 「本加工」とは,甲の代表者P1が発明・開発した抗菌加工である。 ② 「本加工施用物」とは,本加工を施したプラスチック,ゴム,金属などの対象物をいう。 ③ 「販売売上金額」とは,本加工を施した製品を販売して売り上げた売上金額をいう。 ④ 「加工売上金額」とは,依頼者が保有する物品を預かって本加工を施す役務にて売り上げた売上金額をいう。 ⑤ 「本加工に関する秘密情報」とは,本加工に関する加工方法,技術情報,ノウハウ,および,本加工に付随して甲から乙に開示された情報であって既に公知である情報を除くすべての情報をいう。 第2条(本契約が対象とする知的財産権) 1 甲は乙に対して許諾する実施権,使用権の対象となる知的財産権は以下に定める通りとする。 特許権(以下「本特許権」という)の表示略- 6 -商標権(以下「本商標権」という)の表示略ノウハウ(以下「本ノウハウ」という)の表示甲が乙に別途提示した本特許権を実施するための本加工に対するノウハウ 2 甲は,乙に対して本特許権に対する専用実施権(以下「本特許専用実施権」という)を設 ウハウ(以下「本ノウハウ」という)の表示甲が乙に別途提示した本特許権を実施するための本加工に対するノウハウ 2 甲は,乙に対して本特許権に対する専用実施権(以下「本特許専用実施権」という)を設定する。 3 甲は,乙に対して本ノウハウに対する使用権(以下「本ノウハウ使用権」という)を設定する。 4 甲は,乙に対して本商標権に対する通常使用権(以下「本商標通常使用権」という)を設定する。 5 第2項の本特許専用実施権,第3項の本ノウハウ使用権および第4項の本商標通常使用権の許諾範囲は,地域としては全世界とし,期間としては本特許権および本商標権の有効期間までとし,内容としては本特許権が適用されうるすべての製品・商品類を対象とする。 6 甲は,乙が本特許権専用実施権の設定登録手続をなすことを約し,本契約締結と同時に手続きに必要な書類を交付する。本特許専用実施権の設定登録手続に必要な費用は乙の負担とする。 7 本特許専用実施権,本商標通常使用権および本ノウハウ使用権の対価は次の通りとする。 契約金:金1500万円実施許諾料・使用許諾料:乙が出荷する製品又はサービスのうち,本発明,本加工および本商標にかかる製品の販売価格のうち,本発明,本加工および本商標を施す前の通常価格と施した後の価額の差額の3% 8 甲は,乙が第三者に対してサブライセンスを設定することを許容する。サブライセンスの許容条件は以下の各号とする。 一号甲の紹介なく乙がサブライセンス契約をまとめた案件につき,乙が第- 7 -三者にサブライセンスを設定する場合,以下の額を乙から甲へ支払う。 ・契約金として,当該サブライセンス設定により乙が第三者から受け取る契約金の25%・実施許諾料・使用許諾料として,当該サブライセンス設定により乙が第三者から受け取る 下の額を乙から甲へ支払う。 ・契約金として,当該サブライセンス設定により乙が第三者から受け取る契約金の25%・実施許諾料・使用許諾料として,当該サブライセンス設定により乙が第三者から受け取る実施許諾料・使用許諾料の25%二号甲の紹介により乙がサブライセンス契約をまとめた案件につき,乙が第三者にサブライセンスを設定する場合,以下の額を乙から甲へ支払う。 ・契約金として,当該サブライセンス設定により乙が第三者から受け取る契約金の40%・実施許諾料・使用許諾料として,当該サブライセンス設定により乙が第三者から受け取る実施許諾料・使用許諾料の40%第3条(甲による実施および使用)甲は,本特許権,本ノウハウ使用権および本商標権を,無条件・無償で実施し,使用することができる。 第4条(支払い条件および時期) 2 前条第7項に掲げる実施許諾料については,毎月末日締めで翌々月末支払いとし,甲が別途指定する銀行口座に振り込んで支払う。振込に要する手数料は乙の負担とする。 第5条(乙の義務)乙は,本特許権の実施,本ノウハウ使用権および本商標権の使用に努め,製品の販売,加工サービスを提供する義務を負う。本契約締結日より5年以内に製品の販売,加工サービスの提供の目途が立たない場合,乙は本契約に基づく本特許権専用実施権,本ノウハウ使用権,本商標通常実施権を放棄する。 第6条(監査および報告) 1 乙は,本加工の営業,加工,販売等に関する事業記録を保存するとともに,- 8 -事業記録の報告書を本契約締結日から起算した各年が満了する時期に合わせて甲に提出する。 2 前項の事業記録の報告書には以下の事項を含むものとする。 ① 各月ごとの本加工を施した製品・物品の数量② 各月ごとの本加工を施した製品の販売売上金 時期に合わせて甲に提出する。 2 前項の事業記録の報告書には以下の事項を含むものとする。 ① 各月ごとの本加工を施した製品・物品の数量② 各月ごとの本加工を施した製品の販売売上金額,本加工委託の加工売上金額③ 各月ごとの歯科材料の販売数量と金額④ 事業展開方法と失敗および成功事例 3 甲は,乙に対し,いつでも事業記録の詳細の閲覧を求めることができる。 第9条(秘密保持) 1 甲及び乙は,本契約に関して知り得た相手方の営業上又は技術上の秘密を他に漏洩してはならず,また,秘密保持のため複製の禁止その他必要な処置を講じなければならない。ただし,以下のものは除かれる。 ① 提供されたとき既に公知であったもの② 提供されたのち,乙の責によらないで公知になったもの③ 提供されたのち,甲の秘密情報と関係なく独自に入手したことを立証できるもの④ 正当な権利を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく入手したことを立証できるもの第10条(契約解除) 1 甲又は乙は,相手方が本契約の各条項又は個別契約に違反した場合に,相当の期間をおいて催告したにもかかわらず是正されないときは,本契約の全部又は一部を解除することができる。 2 甲又は乙は,相手方が次の各号のいずれかに該当したときは,催告その他の手続を要することなく,直ちに本契約を解除することができる。 ⑤ 相手方に対する背信行為があったとき- 9 -第17条(契約期間) 1 本契約は,本契約締結日より5年間効力を有する。 2 契約期間満了日の1ヶ月前までに,甲乙のいずれからも書面による終了の申し出がない場合は,本契約と同一の条件でさらに1年間更新するものとし,以後同様とする。 第18条(協議解決)本契約に定めのない事項又は解釈に疑義を生じ でに,甲乙のいずれからも書面による終了の申し出がない場合は,本契約と同一の条件でさらに1年間更新するものとし,以後同様とする。 第18条(協議解決)本契約に定めのない事項又は解釈に疑義を生じた事項については,甲乙誠意をもって協議の上解決する。 ウその後原告と被告は,甲4契約で合意された専用実施権の設定登録をするため,平成23年7月27日付けで,専用実施権の範囲を,地域を日本全国,期間を特許権満了まで,内容を特許発明の全範囲とする「専用実施権設定契約書」(甲5。 以下「甲5契約」といい,同契約書を「甲5契約書」ということがある。)を共同して作成した。 原告は,同日頃,甲5契約書を特許庁に提出し,被告を専用実施権者,地域を日本全国,期間を特許権満了まで,内容を特許発明の全範囲とする本件特許権の専用実施権の登録を了した(以下「本件専用実施権」という。)。 (4) 本件専用実施権設定後の事業ア被告は,歯科医院から義歯を預かって本件特許発明の実施をする抗菌加工事業を行っていたが,平成24年には,歯科医院から自ら抗菌処理をするための機械の要望が出るようになったことから,本件特許発明を実施するための専用機械の開発に着手し,その後改造を重ねて平成26年1月頃,その専用機械(以下,開発段階の物を含め「本件機械」といい,そのうち完成段階のものを特に「3号機」という。)を完成させた。3号機は,温度設定機能,マイクロ波照射時間の制御機能,義歯にマイクロ波を効果的に照射するための工夫がなされた,本件特許発明の実施にのみ用いられる機械であるが,被告は,その完成までに,少なくとも約1300万円を支出した(乙55)。 - 10 -イ被告又はピカッシュは,当初,本件機械を歯科医院にレンタルしており,そのレンタルの契約数は30件となった。 ウその 完成までに,少なくとも約1300万円を支出した(乙55)。 - 10 -イ被告又はピカッシュは,当初,本件機械を歯科医院にレンタルしており,そのレンタルの契約数は30件となった。 ウその後,ピカッシュは,平成26年12月から,3号機を歯科医院に販売するとともに,本件機械に使用する専用液として抗菌科研株式会社が製造販売している銀水溶液(商品名「ルナシルバー」。以下,ピカッシュ販売に係るこの銀水溶液を「本件液」という。)を,本件機械を用いて本件特許発明を実施する歯科医院に販売し始めた。 本件液は,本件特許発明による課題の解決に不可欠なものであり,またピカッシュは,歯科医院が本件液を本件特許発明の実施に用いることを知りながら販売しているが,本件液は,市販の銀水溶液を利用してピカッシュにおいて希釈等するなどした後,専用の容器に詰めかえて販売しているものにすぎない(被告代表者)。 エ本件機械をレンタルし,あるいは購入した歯科医院では,本件機械を使用し,また購入した本件液を用いて本件特許発明の実施である義歯に対する抗菌加工をしている。 (5) 被告による実施料の支払ア被告又はピカッシュ自らがする,本件特許発明の直接実施である抗菌加工についての実施料は,甲4契約に従って計算した金額が,当初は被告から,その後,キャスティングアイからとなり,ピカッシュ設立後は,一部被告であるときもあるが,主にピカッシュから,原告に対して支払われており,現在も同様に支払われている。 イ被告による本件機械のレンタルについては,平成25年7月頃,被告代表者から原告代表者に対して契約書の原案が示され,原告からは,被告に対して事業展開について意見が述べられるなど,本件機械が開発され歯科医院にレンタルされていることは適宜の形で原告に報告され(乙8の35, から原告代表者に対して契約書の原案が示され,原告からは,被告に対して事業展開について意見が述べられるなど,本件機械が開発され歯科医院にレンタルされていることは適宜の形で原告に報告され(乙8の35,36),さらに平成25年4月,5月には,レンタル契約の成約数,レンタル料金が報告され,原告からは事業展開について意見が述べられるなどしていた(乙8の44ないし50)。しかし,- 11 -この間,被告代表者においては,本件機械のレンタルに伴って実施料の支払義務が発生するとの認識はなく,また原告代表者においても,そのことを問題にすることは全くなかった。 ウピカッシュが歯科医院向けに本件機械と本件液を販売していることは,平成27年2月17日,歯科業界の業界紙に記事として掲載された(甲7)。 エ被告は,本件機械及び本件液の製造販売等についての実施料の支払を原告に対して全くしていなかったが,原告による催告を受け,平成27年4月3日,甲4契約書2条7項の規定を参照して,平成26年12月分の本件機械及び本件液の売上高の粗利の3%の金額である21万8548円を支払った。 オ原告は,平成27年4月9日,被告に対して甲4契約解除の意思表示をし,その後,新たな契約締結をすることを前提に被告との協議を続けていたが,同月24日,被告に対し,「平成26年12月~平成27年2月までの液・機械の売上高は41,413,950円であり,これは本発明の実施品その物であるため,この3%がライセンス料相当額となります。そこで,41,413,950円の3%である1,242,419円がライセンス料相当額であり貴社からすでに送金されている1,177,539円との差額である64,880円の不足分を早急にお支払いください。また,平成27年3月分についても売り上げを明らかにし,その3 がライセンス料相当額であり貴社からすでに送金されている1,177,539円との差額である64,880円の不足分を早急にお支払いください。また,平成27年3月分についても売り上げを明らかにし,その3%の支払いを求めます。上記金員の支払い確認後,当方から新たな契約案を提示いたします。」との書面(乙41)をファックスで送付した。 被告は,上記書面の送付を受けた後,原告指摘に係る不足分の支払を済ませた上,以後,現在に至るまで,本件機械及び本件液の売上高の3%を暫定的な実施料として原告に支払い続けている(乙40の1,2,乙41,乙42及び乙43の各1,2,乙44,乙48,乙49)。 ただし,本件機械をレンタルした場合についての実施料については,本件訴訟提起前に問題にされたことはなく,被告からの支払がされていない(甲19,乙44)。 第3 争点に関する当事者の主張- 12 - 1 争点1(本件専用実施権の期間経過による消滅)(原告の主張)(1) 甲4契約書2条5項には,本件専用実施権の「期間としては本特許権…の有効期間まで」と記載されているが,甲4契約書17条1項に,「本契約は,本契約締結日より5年間効力を有する。」と記載されており,本件専用実施権の期間は5年間と解釈されるべきである。 本件専用実施権の期間について,甲4契約書2条5項において異なる定め方をしたのは,甲4契約は,同契約書17条2項の自動更新条項によって更新され継続する可能性があるので,専用実施権について同様の定めをすると,契約更新の都度,効力発生の為に設定登録を要することになるという問題が生じる。そこで,本件専用実施権の期間が継続する可能性を考慮して,甲4契約書2条5項のとおり本件専用実施権の「期間としては本特許権…の有効期間まで」としたものである。 また甲4契約締 るという問題が生じる。そこで,本件専用実施権の期間が継続する可能性を考慮して,甲4契約書2条5項のとおり本件専用実施権の「期間としては本特許権…の有効期間まで」としたものである。 また甲4契約締結当時の合意内容としては,甲4契約の期間が5年であり,これが更新されない場合は,甲4契約が消滅する結果,本件専用実施権は当然に消滅することが予定されていたのであり,このことは甲4契約書において契約終了後の効果が残存するという条項がないことからも明らかである。 (2) また甲5契約書は,甲4契約締結後4か月ほど後に,特許庁への専用実施権の設定登録のために作成されたものであるが,これはあくまで特許庁への登録のためにのみ作成されたものであり,本件専用実施権の期間についての合意は,あくまで甲4契約書作成時の合意に従うものである。すなわち,甲5契約書で示されている内容は,単なる届出のためのものであって,本体契約たる甲4契約の内容を変更するものではない。 (3) 以上のように,甲4契約の有効期間は5年間であり,本件専用実施権の期間も5年間である。そして原告は平成27年11月2日に被告に送達された本件訴状によって,甲4契約書17条2項に従い,甲4契約の終了の申し出を行っていることから,甲4契約は平成28年3月18日をもって終了し,その結果,本件専用実- 13 -施権も消滅する。 (4) 被告は,甲4契約が継続的契約関係であるから,更新拒絶をするためには,相当の理由が必要である旨主張するが,被告には原告に対する背信行為に当たる事実があるから,その主張によっても更新拒絶は許され,甲4契約は期間満了により終了し本件専用実施権は消滅している。 (被告の主張)(1) 本件専用実施権の設定期間は,5年ではなく,本件特許権の有効期間である。 ア甲4契約書 も更新拒絶は許され,甲4契約は期間満了により終了し本件専用実施権は消滅している。 (被告の主張)(1) 本件専用実施権の設定期間は,5年ではなく,本件特許権の有効期間である。 ア甲4契約書2条5項は「第2項の本特許専用実施権…の許諾範囲は,…期間としては本特許権および本商標権の有効期間まで」と明記され,さらには甲5契約書に専用実施権の許諾の期間として「特許権満了まで」と明記されており,しかもそれら契約書のいずれにも原告代表者により押印がなされているのであるから,当然に,原告が本件専用実施権の期間を本件特許権の有効期間までとすることを合意していると考えるべきである。 イ被告は,甲3契約に当たり原告に対して契約金として1000万円を支払っているが(4条1項),その契約の有効期間がまだ4年も残存している段階で,これを甲4契約書に改め,さらに1500万円という高額な契約金を追加して支払っているが(甲4契約書2条7項),これは本件専用実施権の期間が本件特許権の有効期間までと長期にわたるからである。 ウ甲4契約書5条には,甲3契約にはない「乙(被告)の義務」条項が付け加えられているが,同条項の後段には,「本契約締結日より5年以内に製品の販売,加工サービスの提供の目途が立たない場合,乙は本契約に基づく本特許専用実施権,本ノウハウ使用権,本商標通常実施権を放棄する。」と明記されている。しかし,もしも本件専用実施権の期間が5年であれば,被告において契約締結日から5年以内に製品の販売,加工サービスの提供の目途が立たない場合には,原告は甲4契約を更新せずに期間満了をもって終了すれば足りるから,あえて当該条項を設ける必要はない。しかるに,当該条項を入れたのは,専用実施権の期間が本件特許権の有- 14 -効期間という長期間に及ぶので,5年以内に せずに期間満了をもって終了すれば足りるから,あえて当該条項を設ける必要はない。しかるに,当該条項を入れたのは,専用実施権の期間が本件特許権の有- 14 -効期間という長期間に及ぶので,5年以内にサービスの提供の目途が立たない場合,その後も長期にわたり実施料が原告に支払われないという事態を避けるべく,原告の希望により,甲4契約書で新たに追加したものと考えるのが合理的である。 (2) 以上のとおり,甲4契約書及び甲5契約書に用いられた文言からして,本件専用実施権の期間が5年ではなく,本件特許権の有効期間であることは明らかである。 そして,甲4契約書第17条1項の「本契約は,本契約締結日より5年間効力を有する。」との条項は,本件専用実施権の期間以外のライセンス料等の条件について5年を目途に見直すために残した条項と解するのが合理的である。 (3)アなお,原告は,甲4契約書17条2項に従って契約終了の申し出をするが,本件専用実施権の期間は,本件特許権の有効期間であるから,契約更新の問題は発生しない。すなわち,本件専用実施権の期間については,甲4契約書17条2項の適用はない。 イまた,本件専用実施権の期間についても甲4契約書17条2項の適用を受けると解したとしても,原告と被告間の甲4契約が継続的契約関係であることからして,契約の内容,目的,当事者の属性,契約締結に至った経緯,契約締結後の取引の実情,更新拒絶に至った原告の意図,契約終了によって受ける被告の不利益その他の事情に照らして,被告において契約が更新されるものと期待することに合理的な理由があり,継続的契約を終了させることに相当な理由がないときは,原告の甲4契約の更新拒絶は,認められないというべきである。 2 争点2-1(実施料不払を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消 あり,継続的契約を終了させることに相当な理由がないときは,原告の甲4契約の更新拒絶は,認められないというべきである。 2 争点2-1(実施料不払を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消滅)(原告の主張)(1) 実施料の算定根拠についてア被告がピカッシュと一体となってする本件機械及び本件液の販売についての実施料は,甲4契約書2条8項1号を適用して算定される。 - 15 -すなわち,甲4契約書2条7項には,被告による直接的な加工については,その加工により生じた付加価値分の3%を原告に支払う旨を定めており,それ以外の本件機械及び本件液の販売を含む広い態様で被告が得る利益(被告が直接加工したことによらず,被告が得る利益はサブライセンスによるものといえる。)については,同条8項で,その利益の25%を原告に支払う旨を定めている(なお,原告の紹介によるサブライセンスについては40%である。)。 原告と被告が本件機械及び本件液の販売を含む幅広い実施態様を想定して合意したことは,甲4契約書2条5項において,実施権の対象を「本特許権が適用されうるすべての製品・商品類を対象とする」とし,同条7項において「乙が出荷する製品又はサービスのうち」という包括的な文言を使用していることから明らかである。 そして上記趣旨は,甲4契約締結時の合意内容を明確にした「特許権等の実施許諾等に関する契約書(案)」(乙30)においても,7条5項において,「乙が本項第三者から徴収するその物の1個当たりの販売価格」を基準とし,同条6項において,実施料の対象として「歯科用人体補綴物への加工及びその他の物の製造・販売及び加工」として,機械の販売を含む幅広い実施態様について実施料の支払を受けることを想定した内容としていることから明らかである。 イ仮に上記主張 歯科用人体補綴物への加工及びその他の物の製造・販売及び加工」として,機械の販売を含む幅広い実施態様について実施料の支払を受けることを想定した内容としていることから明らかである。 イ仮に上記主張が採用できないとしても,被告がピカッシュと一体となってする本件機械及び本件液の販売についての実施料は,甲4契約書2条7項を適用して算定されるべきである。 (2) 実施料支払の対象及び金額等ア歯科医に対する本件機械の販売被告とピカッシュは一体のものとして,本件機械を歯科医院に販売していたのであるから,被告はピカッシュと一体のものとして,本件機械の購入者に対して,本件特許発明について少なくとも黙示の実施許諾,つまりサブライセンスしたといえる。 そして,本件機械は1台70万円であり,この70万円が契約金・実施料として- 16 -被告が第三者から受け取る金員となる。 したがって,本件機械1台当たりで被告が原告に支払うべき実施料は,70万円×25%=17万5000円となる。 イ歯科医院に対する本件液の販売本件液は,特許法101条5号の間接侵害を構成する物であり,また甲4契約書2条1項にいう「ノウハウ」に当たるから,歯科医院への本件液の販売は,歯科医院に対してサブライセンスしたことになる。 被告は,間接侵害品となる本件液を歯科医院に販売し,又ノウハウを使用して売上げを上げているから,甲4契約書2条8項一号,又は2条7項に基づき実施料の支払義務がある。 (3) 原告による解除権の行使ア原告は,平成27年4月1日,被告に対し,本件機械及び本件液の販売を対象とする実施料率についての提案及び実施料の支払を求める通知をした(甲18)が,被告は,同月3日,本件機械の実施料率についての提案は少し時間が欲しい旨,そして本件機械及び本 機械及び本件液の販売を対象とする実施料率についての提案及び実施料の支払を求める通知をした(甲18)が,被告は,同月3日,本件機械の実施料率についての提案は少し時間が欲しい旨,そして本件機械及び本件液についての実施料として粗利の3%相当額を送金する旨の回答をなし,平成26年12月分のみを支払った(甲19)。 しかし,被告の支払った粗利の3%という実施料率は,甲4契約に根拠のない数字であるし,さらに甲4号契約書4条2項により,平成27年4月3日時点では,被告は同年1月分についての支払が必要となるのに,その支払もされていないから,明らかに債務不履行がある。 原告は,同年4月1日の実施料の支払を求める通知をして履行の催告を既に行っていたことから,同月6日付で甲4契約を解除する旨の通知を行い,この通知は同月9日に被告に到達した。 イ被告は,上記(2)アのとおり本件機械の販売につき1台当たり実施料17万5000円の支払義務があるところ,その支払をしていないので,原告は,本件訴状において本件機械の製造販売に対する実施料の算定基準を甲4契約書2条8項1- 17 -号であることを明示して,本件機械の実施料不払の債務不履行による契約解除の意思表示をした(訴状送達の日は平成27年11月2日)。 ウ原告は,被告に対し,さらに原告準備書面1において,本件機械についての予備的な実施料の算定基準を甲4契約書2条7項であることを示唆した上で債務不履行による契約解除の意思表示をした(同準備書面の送付の日は平成28年3月11日)。 エ原告は被告に対し,原告準備書面7において,イと同様の理由で,本件機械1台当たり17万5000円の支払がない場合は,本件機械の実施料不払の債務不履行による契約解除の意思表示をした(同準備書面の送付の日は平成29年1月2 備書面7において,イと同様の理由で,本件機械1台当たり17万5000円の支払がない場合は,本件機械の実施料不払の債務不履行による契約解除の意思表示をした(同準備書面の送付の日は平成29年1月24日)。 (4) 本件専用実施権の消滅以上より,本件専用実施権の設定契約を含む甲4契約は解除されるから,本件専用実施権は消滅する。 (5) 解除権行使の制限について被告は,甲4契約が継続的契約関係であることからして,原告は,被告の重大な契約違反又は被告との契約を継続し難い特段の事情がない限り,原則として解除権を行使することができないと主張するが,原告が解除事由としているのは,実施料不払による債務不履行という重大な契約違反事由であり,甲4契約が継続的契約であることによる解除権行使の制限は受けない。 (被告の主張)(1) 本件機械の販売についてア本件機械は本件特許発明の実施に必要な機械であるところ,被告が,本件機械を歯科医院へ販売し使用させることによって被告が利益を得る行為は,歯科医院に黙示の実施許諾,つまりサブライセンスにより本件特許発明を実施させることになり,抽象的には実施料の支払義務が生じ得る。 ただ,被告が歯科医院から得ているのは,あくまでも本件機械の販売代金であっ- 18 -て,甲4契約書が定めているサブライセンス設定の契約金ではないし,実施料として受け取っているわけでもないから,甲4契約書に定められた条項から,本件機械に関して被告が原告に対して支払うべき,具体的な実施料支払義務を導くことはできない。 イ本件特許発明の実施に関する被告の権限の根拠となる甲4契約は,その締結当時,本件機械を製造販売することを前提としておらず,そのために本件機械を製造販売する場合の実施料について何ら定めていない。本件機械を製造販売す 実施に関する被告の権限の根拠となる甲4契約は,その締結当時,本件機械を製造販売することを前提としておらず,そのために本件機械を製造販売する場合の実施料について何ら定めていない。本件機械を製造販売する場合の具体的な実施料については,甲4契約を締結した当時の実施料の定め方及び考え方を基礎として,その後の事情,すなわち本件機械の開発経緯,被告が本件機械の開発に投じた費用や時間等を斟酌して,新たに定めるのが相当である。 ウしたがって,本件機械の製造販売についての実施料が,甲4契約に定められていることを前提に,その不払を債務不履行としてなした原告の甲4契約解除の意思表示はいずれも無効である。 (2) 本件液の販売についてア本件特許公報には,本件特許発明の実施例として「銀イオン水溶液としては,抗菌化研株式会社のルナシルバー(登録商標)を用いた。」(【0025】)ことが記載されており,本件特許発明の実施において銀水溶液を使用することは,本件特許発明の実施の一形態にすぎないことが公知とされている。そして被告が使用している本件液は,国内において広く一般に流通している汎用品の上記ルナシルバーであるから,本件特許発明の実施のために上記液を販売することは,本件特許発明の間接侵害に当たる行為とはならず,また甲4契約書2条1項の「本ノウハウ」に該当しない。 イしたがって,本件液の販売について,被告には実施料の支払義務は生じないから,その不払を理由とする解除は認められない。 (3) 被告の実施料の暫定的支払本件機械に関する具体的な実施料支払義務は,前記のとおり,甲4契約から導か- 19 -れるものではないが,少なくとも被告は,平成26年12月分から現在まで,本件機械及び本件液の売上高の3%を,暫定的ではあっても実施料として支払っているから,債 とおり,甲4契約から導か- 19 -れるものではないが,少なくとも被告は,平成26年12月分から現在まで,本件機械及び本件液の売上高の3%を,暫定的ではあっても実施料として支払っているから,債務不履行はなく解除は認められない。 なお仮に平成26年12月分及び平成27年1月分の支払について遅滞が生じていたとしても,被告は催告から1か月以内に履行していることからして,甲4契約が継続的契約である以上信頼関係の破壊には至っておらず,解除は認められない。 (4) 解除権行使の制限甲4契約は長期間に及ぶ継続的契約関係であり,被告は既に相当額の人的物的投資をし,被告は取引の継続に合理的な期待を有している。そして,そのような中,甲4契約を解除することは被告の経営に深刻な打撃となるから,被告の重大な契約違反又は被告との契約を継続し難い特段の事情がない限り,原告は,原則として解除権を行使することができないというべきである。 3 争点2-2(被告の秘密保持義務違反を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消滅)(原告の主張)(1) 銀水溶液の成分の開示被告は,当初,原告から銀水溶液を購入していたが,現在は他の業者から購入して,ピカッシュにおいて本件液として販売している。被告は,他の業者から銀水溶液を購入するに際して,銀水溶液の成分を当該他の業者に開示しており,甲4契約書9条1項に定める秘密保持義務に違反している。 (2) データ及びSEM写真の提供原告は,被告及びその関連会社にのみ開示するため,銀水溶液の安全性試験のデータや,SEM写真を提供したが,被告は原告に何ら了解も取らず,これらの情報を大学教授等に提供し,自らの製品の宣伝用論文に使用させた。これは甲4契約書9条1項に定める秘密保持義務に違反する行為である。 (3) M写真を提供したが,被告は原告に何ら了解も取らず,これらの情報を大学教授等に提供し,自らの製品の宣伝用論文に使用させた。これは甲4契約書9条1項に定める秘密保持義務に違反する行為である。 (3) 解除権の行使- 20 -原告は,被告に対し,原告準備書面7において,上記秘密保持義務違反に基づく甲4契約解除の意思表示をした(同準備書面の送付の日は平成29年1月24日)。 なお,原告の解除権行使の制限については,上記2(原告の主張)(5)のとおりである。 (4) 本件専用実施権の消滅以上より,本件専用実施権の設定契約を含む甲4契約は解除されるから,本件専用実施権は消滅する。 (被告の主張)(1) 銀水溶液の成分の開示について本件特許発明の実施のため使用する銀イオン水溶液は,本件特許公報に,「銀イオン水溶液としては,抗菌化研株式会社のルナシルバー(登録商標)を用いた。」(【0025】)とあり,被告は,抗菌化研株式会社のルナシルバー(乙45)を,他社を介して購入している。 すなわち,本件特許公報に記載されている以上,本件液については「相手方の営業上又は技術上の秘密」(甲4契約書第9条1項)ではないし,本件液の成分を他社に開示しているものではないため,被告に秘密保持義務違反はない。 (2) データ及びSEM写真の提供について被告が大学教授等に提供した銀水溶液のデータは,当該大学教授に提供するにあたって,当然ながら原告に協力をお願いし,原告の同意の下に提供したもので,被告に秘密保持義務違反はない。 (3) 解除権行使の制限甲4契約が継続的契約関係であり,解除権の行使が制限されることは,上記2(被告の主張)(4)のとおりである。 4 争点2-3(背信行為を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消滅)( 甲4契約が継続的契約関係であり,解除権の行使が制限されることは,上記2(被告の主張)(4)のとおりである。 4 争点2-3(背信行為を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消滅)(原告の主張)- 21 -(1) 背信行為該当事実被告には,甲4契約書10条2項5号に該当する以下のような背信行為に該当する事実がある。 ア本件の経緯における被告の対応について(ア) 原告と被告は,P2弁理士作成の甲3契約及び甲4契約を変更する契約書案(乙30)につき,双方合意のもとで契約書の内容につきP2弁理士より説明を受け,被告代表者においてその作成を約していたのに,これを放置し,原告に対して当該契約書案につき何ら連絡しなかった。 (イ) 原告と被告は,本件訴訟提起に至るまで交渉を行っていたが,原告と被告との信頼関係は,甲4契約締結後徐々に失われ,そのことは,被告も認めるところである。 (ウ) 被告は,本件機械及び本件液を販売等していることを原告に報告せず,原告が販売の事実を業界新聞で知って実施料の支払を求めても,実施料の支払義務がないと争った。 イ被告が本件特許につき虚偽の事実を告知していること(ア) 平成27年6月21日のピカッシュのP3を講師として行われたセミナーのパンフレット(甲58)において,「弊社ではナノ銀粒子を用いた特許技術を開発いたしました。」などとあたかも被告側で本件特許発明を開発したかのような表現を行った。 (イ) 株式会社熊本日日新聞がウェブページ上において配信している平成26年2月5日付けの記事において,株式会社愛歯が「特許を取得している入れ歯の抗菌処理技術「ピカッシュ」の事業も本格展開する。」などと記載され,さらには「韓国でも国際特許を取得しており,海外展開も目指している。」などと記載され いて,株式会社愛歯が「特許を取得している入れ歯の抗菌処理技術「ピカッシュ」の事業も本格展開する。」などと記載され,さらには「韓国でも国際特許を取得しており,海外展開も目指している。」などと記載されており,あたかも被告側で本件特許発明を開発したかのような表現がされている。 (ウ) 被告代表者は,原告代表者に対し,本件特許に関して原告のホームページを停止するよう不当な要求をした。 - 22 -(2) 解除権の行使原告は,被告に対し,原告準備書面2において,上記事由に基づく甲4契約解除の意思表示をした(同準備書面の送付の日は平成28年7月1日)。 なお,原告の解除権行使の制限については,上記2(原告の主張)(5)のとおりである。 (3) 本件専用実施権の消滅以上より,甲4 契約は解除されるから,本件専用実施権は消滅する。 (被告の主張)(1) 背信行為該当事実について以下のとおり被告には,原告主張に係る背信行為に該当する事実はなく,これを理由とする甲4契約解除の意思表示は無効である。 ア本件の経緯における被告の対応について(ア) 原告は,P2弁理士作成の契約書案(乙30)について被告代表者の対応を問題とするが,被告がその内容に合意した事実はない。 (イ) 原告は,被告が本件機械の販売をしていることを,平成27年2月17日付けの業界新聞で初めて知ったと主張するが,被告が本件機械を開発していることを認識していたことは,本件機械のレンタル事業について原告が意見を述べていたことなどから明らかである。 (ウ) 被告は,本件において実施料の支払義務を争っているが,甲4契約書には本件機械に関する実施料について何らの定めもされていない以上,これを争うことは裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとはいえない。 また,被 実施料の支払義務を争っているが,甲4契約書には本件機械に関する実施料について何らの定めもされていない以上,これを争うことは裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとはいえない。 また,被告は支払義務を争いつつも,暫定的に本件機械及び本件液の売上高の3%を実施料として原告名義の口座に振り込んで支払っており,実施料の支払を誠実に履行していることから背信行為はない。 イ被告が本件特許につき虚偽の事実を告知していることについて原告が指摘するセミナーや新聞記事における記載は,原告が被告に対して,専用- 23 -実施権という強い権利を設定したことによるものである。原告は,被告が専用実施権者として,本件特許を使用し普及させることを要望していたのであり,上記セミナーや新聞記事について,原告もこれを承認していたものである。 また以上の理由により,原告のホームページの停止の要求についても,原告はこれに応じて,本件特許に関する部分を削除しており,原告が承諾済みの事柄である。 (2) 解除権行使の制限甲4契約が継続的契約関係であり,解除権の行使が制限されることは,上記2(被告の主張)(4)のとおりである。 5 争点3(実施料又は実施料相当の不当利得の請求)(原告の主張)(1) 被告は,本件機械を1台70万円として,平成26年12月から本件契約の解除前の平成27年3月までに合計84台を販売し,本件契約解除後の同年4月から同年10月までの間に1月当たり21台として147台を歯科医院に販売した。 (2) 被告は,本件特許発明の専用実施品である本件機械を,これを業として使用する歯科医院に販売することで,当該歯科医院に対して,本件特許権のサブライセンスをしたから,被告は本件契約書2条8項1号に基づき本件機械1台当たり,その販売価格の2 る本件機械を,これを業として使用する歯科医院に販売することで,当該歯科医院に対して,本件特許権のサブライセンスをしたから,被告は本件契約書2条8項1号に基づき本件機械1台当たり,その販売価格の25%の実施料を原告に支払義務がある。 (3) 以上によれば,被告が原告に対して支払うべき実施料の額又は実施料相当の額は,以下のとおりである。 ア平成26年12月から平成27年3月までの間70万円×84台×25%=1470万円イ平成27年4月から同年10月までの間70万円×21台(月平均)×7(月)×25%=2572万5000円(4) 以上より,原告は,被告に対し,未払実施料として1470万円,実施料相当額の不当利得として2572万5000円の合計4042万5000円の支払を求める。 - 24 -(被告の主張)原告の主張は争う。甲4契約は終了していないし,被告は,本件機械の販売につき甲4契約書2条7項に基づき,原告に対し,本件機械の売上高に対する3%の実施料の支払を継続している。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件専用実施権の期間経過による消滅)について(1) 原告が,平成23年3月18日,被告との間で取り交わした甲4契約書には,原告を甲,被告を乙として,その2条2項に「甲は,乙に対して本特許権に対する専用実施権(以下「本特許専用実施権」という)を設定する」との記載があり,同5項に「第2項の本特許専用実施権・・・の許諾範囲は,・・・期間としては本特許権・・・の有効期間までとし」との記載がある。 そして,同条6項に「甲は,乙が本特許専用実施権の設定登録手続をなすことを約し」との記載があり,これを受けて原告と被告は,後日,本件専用実施権の設定登録申請をしたと認められるが,同申請書に添付された原告と被告が共同して作成 ,乙が本特許専用実施権の設定登録手続をなすことを約し」との記載があり,これを受けて原告と被告は,後日,本件専用実施権の設定登録申請をしたと認められるが,同申請書に添付された原告と被告が共同して作成した専用実施権設定契約書(甲5)にも,専用実施権の期間は「特許権満了まで」と記載され,そのとおりの本件専用実施権の設定登録がされている。 以上によれば,原告と被告は,本件特許権の専用実施権を設定するに当たり,その期間を「特許権・・の有効期間」又は「特許権満了まで」として,専用実施権の存続期間を特許権満了までとする合意を2回にわたりしたことは明らかであるから,本件専用実施権は,原告と被告との合意により,その期間を本件特許権満了までとして設定されたものと認められるべきである。 (2) これに対して原告は,本件専用実施権の設定契約を含む甲4契約につき,甲4契約書17条1項に「本契約は,本契約締結日より5年間効力を有する。」とあるから,本件専用実施権の期間も5年間と解すべきであるとし,本件専用実施権の期間を特許権満了までと解されるような2条5項の規定が設けられたのは,甲4契約は17条2項により更新が予定されていることから,更新ごとの専用実施権の設- 25 -定登録の手間を省くためであるように主張する。 甲4契約書2条2項,5項に基づき当事者間でされたと解される専用実施権設定の合意は上記(1)のとおりである以上,上記の原告の主張は,結局,甲4契約書に基づいてされたと解される専用実施権設定の合意は通謀してなされた虚偽の表示である趣旨をいうものということになる。 しかし,平成22年5月7日に原告と被告は本件特許権について通常実施権許諾契約を締結して,被告から原告に対して契約金として1000万円が支払われている(甲3)のに,それから1年も経たない甲4契 。 しかし,平成22年5月7日に原告と被告は本件特許権について通常実施権許諾契約を締結して,被告から原告に対して契約金として1000万円が支払われている(甲3)のに,それから1年も経たない甲4契約締結時に,甲4契約書2条7項に基づき,さらに被告から原告に対して契約金として1500万円が追加して支払われていること,その当時,本件特許発明は実用化されたとはいえない段階にあって事業の将来見込みが不確実であったことを併せ考えると,甲4契約で被告が得る権利は,甲3契約で得た権利よりも,より長期間存続する強い権利であったと考えるのが自然であり,そのことは,甲4契約により設定された専用実施権は,同契約書2条2項,5項のとおり,期間を特許権有効期間とする権利であったことを裏付けているといえる。 また甲4契約書5条には,先行する甲3契約にはない「乙(被告)の義務」条項が付け加えられ,同条項の後段に,「本契約締結日より5年以内に製品の販売,加工サービスの提供の目途が立たない場合,乙は本契約に基づく本特許専用実施権,本ノウハウ使用権,本商標通常実施権を放棄する。」と記載されているが,この規定からは,本件専用実施権は5年を超えて存続することが当然に予定されているため,被告が事業化しないまま本件専用実施権を保有し続ける事態を避けようとした意図を原告が有していたことがうかがえるところであり,そのことは被告も了解していたと考えられるから,やはり,この点も,甲4契約で被告が得る権利は,同契約書2条2項,5項のとおり,期間を特許権有効期間とする専用実施権であったことを裏付けているといえる。 そのほか,甲4契約書2条2項,5項でなされる専用実施権設定の合意が,原告- 26 -と被告が通謀してした虚偽の表示であることをうかがわせる事実は認められないから,上記趣旨を けているといえる。 そのほか,甲4契約書2条2項,5項でなされる専用実施権設定の合意が,原告- 26 -と被告が通謀してした虚偽の表示であることをうかがわせる事実は認められないから,上記趣旨をいう原告の主張は採用できない。 (3) 以上によれば,原告と被告は,甲4契約書2条2項,5項の記載文言どおりに有効に合意したものと認めるのが相当であり,その合意に沿った本件専用実施権の設定登録もされているから,本件専用実施権の期間は本件特許権の満了時までであると認められる。 そして甲4契約書17条に,上記解釈と相反するような甲4契約の契約期間を5年とする規定があるが,本件専用実施権との関係では,同条項は,期間以外の各種条件についての契約内容を,5年を目途に見直す趣旨で定めた条項であると解するのが相当である。 したがって,仮に甲4契約そのものの更新の有無が問題とされ得るとしても,本件専用実施権そのものは本件特許権満了時まで存続することから,本件専用実施権の設定契約を含む甲4契約が後記検討する原告主張に係る事由により解除された場合は別として,少なくとも甲4契約締結から5年の経過で本件専用実施権が期間経過により消滅したことを前提とする原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 2 争点2-1(実施料不払を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消滅)(1) 原告は,被告は本件機械の製造販売及び本件液の販売をしているが,これについて実施料を支払うべきであるのに支払っていないとして,実施料の算定基準として主位的に甲4契約書2条8項1号,予備的に同2条7項を適用した上で上記行為による実施料の不払の債務不履行を理由に甲4契約を解除した旨主張する。 そこでまず,被告が本件機械の製造販売について実施料を支払うべき義務を負うかに 項1号,予備的に同2条7項を適用した上で上記行為による実施料の不払の債務不履行を理由に甲4契約を解除した旨主張する。 そこでまず,被告が本件機械の製造販売について実施料を支払うべき義務を負うかについてみると,そもそも本件特許は方法の発明に係る特許であるから,物である本件機械の製造販売は,本件特許発明の実施(特許法2条3項2号)に当たらないといえるが,本件機械が本件特許発明の実施にのみ用いる機械であることから,- 27 -その製造販売は特許法101条4号の間接侵害に該当する行為ということができる。 しかし,被告は,内容を本件特許発明の全範囲とする専用実施権者であるから,上記行為も専用実施権の内容に含まれ,本件特許権の侵害にならないというべきであるし,また,本件機械が専用実施権者である被告により製造販売されたものである以上,これを譲り受けた歯科医院が本件機械を業として本件特許発明の実施に使用しても,その行為も,やはり本件特許権の侵害にならないというべきである(知財高裁平成18年1月31日特別部判決参照)。 そうすると,専用実施権者である被告は,本件機械の製造販売をすることによって,自ら本件特許発明を「実施」(特許法2条3項2号)しているわけではないが,このような行為により,上記の態様で本件特許権を利用しているといえるから,この関係において,その利用の対価たる実施料を支払う義務を負っているというべきである。 他方,本件液については,本件機械を用いて本件特許発明を実施する歯科医院に販売されているものであり,本件特許発明による課題の解決に不可欠なものであり,また,その販売形態からして,被告は買い受けた歯科医院が本件液を本件特許発明の実施に用いられることを知りながら販売しているといえるが,本件液は「ルナシルバー」という商標が付されて販売さ ものであり,また,その販売形態からして,被告は買い受けた歯科医院が本件液を本件特許発明の実施に用いられることを知りながら販売しているといえるが,本件液は「ルナシルバー」という商標が付されて販売されている銀水溶液というのであるから,日本国内において広く一般に流通しているものということができる。 そうすると,特許法101条5号括弧書の適用により,本件液の販売は本件特許権の間接侵害にはならないから,これについて被告が実施料を支払うべき義務は負わないというべきである(ただし,仮に同号括弧書きの適用がないとすれば,本件機械についてみたと同様の関係において,被告は実施料を支払う義務を負うことになる。)。 したがって,少なくとも本件機械の製造販売について被告に原告に対する実施料の支払義務があるとする原告の主張は採用できる(なお,原告主張に係る事業を実- 28 -施しているのはピカッシュであるが,被告とピカッシュとの関係,さらには両社を区別することなく当事者間で協議されてきた経緯からすると,本件で問題とされる契約関係においては,ピカッシュの事業を被告の事業とみなして,その債務不履行の問題とすることができるというべきである(争点2-2,争点2-3,争点3についても同じ。したがって,以下では,被告もピカッシュも区別することなく被告と表記する。)。 (2) しかし,以下に検討するとおり,甲4契約において,当該行為に適用されるべき実施料の算定基準は定められていないというべきである。 ア原告は,主位的に,実施料の算定基準として甲4契約書2条8項1号を適用すべきと主張するところ,同条項により本件についてみると,本件機械又は本件液を譲り受けた歯科医院が業としてする抗菌加工,すなわち本件特許発明の実施を専用実施権者である被告からの許諾に基づくものと構成する きと主張するところ,同条項により本件についてみると,本件機械又は本件液を譲り受けた歯科医院が業としてする抗菌加工,すなわち本件特許発明の実施を専用実施権者である被告からの許諾に基づくものと構成するのなら,これが同条項にいう「サブライセンス」に該当しそうである。 しかし,被告が譲受人である歯科医院から受け取る金員は,本件機械という物の売買の対価であって,「サブライセンス設定により」,「受け取る契約金」ではないし,また「実施許諾料・使用許諾料」でもないから,この条項から,本件機械の製造販売を対象とする実施料率を直ちに算出することができるわけではない。 イ原告は,予備的に実施料の算定基準として甲4契約書2条7項を適用すべきと主張するところ,同条項には,確かに「製品の販売価額」を基礎金額にして実施料率を乗じて算定する基準が示されている。 しかし,ここでは単純な「製品の販売価額」を基礎金額とするわけではなく,「本発明,本加工」を「施す前の通常価格と施した後の価額の差額」を基礎金額とするというのであるところ,本件機械は,「本発明,本加工」を施す対象となる物ではなく,施すための手段に用いる物であるから,これに「施す前の通常価格」も「施した後の価額」も想定することはできないといえる。 すなわち,本条項には,被告が「出荷する製品又はサービスのうち」として,そ- 29 -の対象を広く包括的に表現している記載が含まれるが,上記指摘したところによれば,この条項から,本件機械を対象とする実施料をそもそも算出することはできないというほかない。 ウ以上のとおり原告主張に係る条項は,物の製造販売を対象として実施料を算定する基準に適用することができないものであるが,そもそも,甲4契約書の上記関連条項が,被告による本件機械のみならず本件液を含め,物の製造販売を 告主張に係る条項は,物の製造販売を対象として実施料を算定する基準に適用することができないものであるが,そもそも,甲4契約書の上記関連条項が,被告による本件機械のみならず本件液を含め,物の製造販売を想定して定められていなかったことは,①甲4契約締結の前段階においては,本件特許発明は家庭用電子レンジでも実施できることを前提に,被告は,歯科医院から義歯を預かって本件特許発明の抗菌加工を施す事業を試行的に行っていたこと(乙56の2),②甲4契約締結後も,被告は,歯科医院から義歯を預かって加工するという同様の事業を行っていたが,歯科医院の方から義歯を数日間預けずに済むよう,加工を歯科医院でできないかとの要望が出されるようになって,被告において本件機械を開発してレンタル,さらに販売へと事業内容が変わっていったこと(被告代表者),③そもそも甲4契約に先行する甲3契約における実施料の定め(上記第2の1(3)ア)は,その規定振りから被告において抗菌加工の実施を予定していただけであることが一層明らかであるが,それから1年内に甲4契約を締結し直すまでの間に,当事者間で本件機械の製造販売が特に協議された事実もないこと,などから裏付けられているといえる。 そして,そもそも本件訴訟の審理においてすら,方法の発明の特許権者との関係において実施許諾を受けた者が間接侵害を構成し得る物を製造販売する行為を,特許法上どのように位置づけるべきかについて当事者の主張が錯綜したくらいであることなどからすると,そもそも原告と被告が,甲4契約締結時に,その当時,当面想定されていないような事業形態を前提にして,しかも,その特許法上の位置付けについて共通認識に立った上で,そのような場合の実施料について合意したとはおよそ認められないということができる。 結局,以上検討してきたところに 事業形態を前提にして,しかも,その特許法上の位置付けについて共通認識に立った上で,そのような場合の実施料について合意したとはおよそ認められないということができる。 結局,以上検討してきたところによると,原告が指摘した甲4契約において合意- 30 -された実施料の定めは,指摘に係る2条7項については,被告において本件特許発明を実施,すなわち抗菌加工をした場合に,その加工による付加価値分(「施す前の通常価格と施した後の価額の差額」)の3%の価額を実施料とする定めと解されるし,2条8項については,その当時,義歯の抗菌加工以外にも本件特許発明を用いた事業が広く展開されることが計画されていたことから(甲33),専用実施権者である被告が本件特許発明を用いた事業をする第三者に本件特許権を実施許諾する場合を典型として,「サブライセンスを設定する」場合の実施料を合意したものと解するのが相当というべきである。 (3) そうすると,原告は,本件訴訟提起前の平成27年4月9日と,本件訴状送達の日(平成27年11月2日),原告準備書面1の送付の日(平成28年3月11日)及び原告準備書面7の送付の日(平成29年1月24日)の4回にわたり実施料不払を債務不履行として甲4契約の解除の意思表示をしているが,いずれの解除も有効とはいえないことになる。 ア平成27年4月9日の甲4契約解除について(ア) 後掲各証拠により認められる,この機会における原告の被告に対する解除に至る経緯は,以下のとおりである。 ① 原告は,平成27年2月18日,被告に対し,甲4契約書6条の規定に基づき事業報告を求めたところ,被告は,同月27日頃,これに対応する事業記録報告書(甲10ないし甲12)を添付して回答した。被告は,同事業記録報告書において,甲4契約「に基づく売上は抗菌処理以外な 基づき事業報告を求めたところ,被告は,同月27日頃,これに対応する事業記録報告書(甲10ないし甲12)を添付して回答した。被告は,同事業記録報告書において,甲4契約「に基づく売上は抗菌処理以外なく」とし,また回答書(甲9)中において,「新製品の開発に伴い,貴社へ支払うべき実施料・使用料の計算方法等について検討しなければならないと考えておりますので,その点についても協議を行う必要があると考えてい」ると回答した。 ② 原告は,同年3月5日頃,被告の上記回答に対し,本件機械及び本件液の販売状況の報告を求めた(甲13)。その後,当事者間で協議の場を設けようとしたが,設けられることなく,原告において,同月25日,本件機械及び本件液の販売- 31 -につき「特許の実施許諾にかかるものですので,本契約第6条の報告事項に含まれるものであり,ご報告のない場合,債務不履行に基づき本契約を解除せざるを得ないことを申し添えます。」と記載した文書をファックスで被告に送付した(甲16)。 ③ 被告は,上記ファックス文書を受け,同月30日,原告に対し,本件機械及び本件液の売上高を記載した「液及び機械販売報告書」をファックスで送付した(甲17)。 ④ 原告は,同年4月1日,被告に対し,本件機械及び本件液の「売上に対する実施料の支払いについても直ちにお願いいたします。12月分は,すでに3か月以上が経過しており,本契約第4条2項に規定する支払い期日から遅れております。 4月3日までの送金がない場合,遺憾ながら債務不履行として契約を解除せざるを得ません」と記載した文書をファックスで送付した(甲18)。 ⑤ 被告は,同月3日,原告に対し,「機械の販売価格が決まらなければ,ライセンス料についても決めることは出来ません。」,「貴社から請求のありました液及び機械に対する平成 クスで送付した(甲18)。 ⑤ 被告は,同月3日,原告に対し,「機械の販売価格が決まらなければ,ライセンス料についても決めることは出来ません。」,「貴社から請求のありました液及び機械に対する平成26年12月分の実施料につきましては,ライセンス料等が正式に決定しておりませんが,さしあたり,平成26年12月分の液及び機械についての弊社の粗利の3%(本契約2条7項の実施許諾料・使用許諾料参照)に相当する218,548円」を支払う旨をファックスで文書を送付して回答し,同額を支払った(甲19)。 ⑥ 原告は,平成27年4月6日,被告に対し,「平成26年12月分から平成27年3月分までの機械・液についての実施料の支払を求め,同年4月3日までに支払がない場合,本契約を解除すると通知」したことを前提に,被告は「さしあたり平成26年12月分のみを支払う」としたことが,甲4契約書4条2項に違反するものであり,上記④のファックスで既に催告していたことから「本書をもって本契約を解除」する旨の意思表示をした。そして,被告が支払ったとする本件機械及び本件液についての平成26年12月分の実施料についても,「粗利の3%」とするもので,甲4契約書2条7項の規定の実施料とは異なり,債務の本旨に従った履- 32 -行とはいえないとした(甲20の1)。 (イ) これによれば,原告の被告に対する催告は,上記(ア)④のとおりであるが,これは甲4契約において実施料の算定基準が定められていないにもかかわらず,全く算定基準も金額も示すことなく漠然と実施料の支払を求めるものである。これでは被告においていくらを支払ってよいか分からず催告としては無効であるというべきであり,また,これを前提とする解除の意思表示も無効というほかないことになる。 また仮に原告の催告の趣旨が,相当額の支払を 被告においていくらを支払ってよいか分からず催告としては無効であるというべきであり,また,これを前提とする解除の意思表示も無効というほかないことになる。 また仮に原告の催告の趣旨が,相当額の支払を催告するものと解するとしても,被告は,原告の上記催告に応じて,解除前に,少なくとも甲4契約書2条7項の規定を参照して計算した実施料を支払っているから(上記(ア)⑤),被告に解除事由となる債務不履行はなく,その点でも解除の意思表示は無効というべきことになる。 なお原告は,原告の上記催告に応じて被告が平成26年12月分のみ支払い,支払期が到来している平成27年1月分を支払わなかったことを債務不履行として解除を主張しているが,原告の催告は,平成26年12月分しか催告していないと解される余地があるものであるし(上記(ア)④),また被告が支払時に「さしあたり」と表現したように,この支払は,当事者間で合意された実施料算定基準がない中で実施料の算定基準を提案する意味も込めてなされたものと解されるから,これをもって,催告に応じない債務不履行があるという批判は当たらないというべきである。 したがって,いずれにせよ,原告が平成27年4月9日にした甲4契約解除の意思表示は無効というべきである。 イ本件訴状送達(平成27年11月2日),原告準備書面1の送付(平成28年3月11日)及び原告準備書面7の送付(平成29年1月24日)による甲4契約解除についてこの機会における原告の被告に対する催告は,原告の主張する実施料算定基準を本件訴訟中において明らかにした上でなされたものであるが,その主張に係る甲4契約書の各規定が本件機械の製造販売についての実施料算定の根拠規定となるものでないことは,上記(2)のとおりである。 - 33 -また原告は,被告が実施料相当額も全く であるが,その主張に係る甲4契約書の各規定が本件機械の製造販売についての実施料算定の根拠規定となるものでないことは,上記(2)のとおりである。 - 33 -また原告は,被告が実施料相当額も全く支払っていないように主張して上記契約解除の意思表示をしているが,被告は,上記アの契約解除の意思表示を受けた後に,原告の支払催告中に示された本件機械の売上高に甲4契約書2条7項の規定を算定基準として適用して計算した金額を,実施料として継続して支払っているから(上記第2の1(5)オ),当事者間で本件機械の製造販売についての実施料の算定基準が確定的に定まっていない現状においては,被告に債務不履行はないというべきである。 (4) したがって,原告が被告による実施料の債務不履行を理由とした甲4契約解除の意思表示は,いずれも無効というべきである。 3 争点2-2(被告の秘密保持義務違反を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消滅)について(1) 原告は,被告が当初,原告から銀水溶液を購入していたのに,現在は他の業者から購入して本件液として販売しており,秘密保持の対象である銀水溶液の成分を他の業者に開示するもので秘密保持義務に違反していると主張する。 しかし,証拠(被告代表者)によれば,被告は,原告から購入していた当時と同じメーカーの銀水溶液や他のメーカーの銀水溶液を購入して稀釈してピカッシュ専用の容器に詰め替えて本件液として販売しているだけというのであるから,そこで原告から購入していた当時の銀水溶液の成分を他の業者に開示するという機会もなければ必要もない。 なお,原告が被告に販売していた銀水溶液のメーカーとは異なるメーカーの銀水溶液を被告が選択する際,その成分が問題となったことが考えられるが,基準となる原告が販売していた銀水溶液は,本件特 もない。 なお,原告が被告に販売していた銀水溶液のメーカーとは異なるメーカーの銀水溶液を被告が選択する際,その成分が問題となったことが考えられるが,基準となる原告が販売していた銀水溶液は,本件特許公報中の本件特許発明の実施例として「抗菌化研株式会社のルナシルバー」が記載(【0025】)されているから,これは甲4契約書9条1項1号に明らかに該当していて秘密とはいえず,したがって,やはり被告に秘密保持義務違反が問題とされる余地はない。 また被告が銀水溶液を希釈する点についても,稀釈割合を秘密というかどうかは- 34 -ともかく,被告自らが稀釈しているのであるから,ここで他業者に秘密を開示する契機はない。 したがって,本件液に関連して秘密保持義務違反をいう原告主張は採用できない。 (2) また原告は,被告は,原告が提供した銀イオン水溶液の安全性試験のデータや,SEM写真を大学教授等に提供しており,秘密保持義務に違反していると主張し,具体的には,専門誌である補綴臨床の平成27年9月号に掲載されたP4教授の論文に原告が被告に提供した銀イオン水溶液の安全性試験のデータや,SEM写真が掲載されていることを問題とする。 しかし,証拠(乙8の23,25,26,乙46)によれば,平成25年当時,被告のP5がP4教授の質問を原告代表者に取り次ぎ,原告代表者はこれに回答して必要なデータ等も提供していた事実が認められるから,上記掲載論文及びそこで用いられた原告に由来するデータやSEM写真は,すべて原告承諾のもと利用されていたと認められる。 したがって,上記論文掲載に関連して秘密保持義務違反をいう原告主張は採用できない。 (3) 以上によれば,原告主張に係る被告の秘密保持義務違反は認められないから,これを理由とする原告の甲4契約解除の意思表示は無効であ 掲載に関連して秘密保持義務違反をいう原告主張は採用できない。 (3) 以上によれば,原告主張に係る被告の秘密保持義務違反は認められないから,これを理由とする原告の甲4契約解除の意思表示は無効である。 4 争点2-3(背信行為を理由とする甲4契約解除による本件専用実施権の消滅)について(1) 原告は,被告に背信行為があったことを理由に甲4契約書10条2項5号に基づく甲4契約の解除を主張するが,主張に係る事実は,これを総合しても,同号にいう「背信行為」を基礎づけるに足りないものである。 (2)ア本件の経緯における被告の対応について(ア) 原告主張に係るP2弁理士作成の契約書案(乙30)については,そもそもこの契約書案の内容で合意された事実を認めるに足りる証拠はないし,仮にその内容で合意する方向での協議がなされていたとしても,契約書の作成により契約成立- 35 -とする前提で協議されていたと解されるから,被告が最終的にその内容で契約する意思がないと決断したのなら,結局,契約は成立しないのであり,これを放置することが背信行為と非難されるいわれはない。 (イ) 被告が本件機械及び本件液の販売を始めたことを原告に報告しなかった点については,確かに被告がこれを原告に報告しなかっただけでなく,原告が業界紙で同事実を知る前に,これを認識していたことを認めるに足りる証拠もない。 しかし,被告が本件機械を製造し,これをレンタルしていたことは原告も承知していたところであるのに,両当事者とも,そのことで実施料の処理がどのようになるのかを検討した様子はなく,むしろ,そのような問題が生じることを全く考えていなかった様子さえうかがえるから,レンタル事業から販売事業への事業が展開することについて被告から原告に報告しなかったからといって,被告が実施料の支払 ,むしろ,そのような問題が生じることを全く考えていなかった様子さえうかがえるから,レンタル事業から販売事業への事業が展開することについて被告から原告に報告しなかったからといって,被告が実施料の支払を免れるために秘匿していたわけでないことは明らかであって,これを背信行為ということはできないというべきである。 さらに原告は被告の応訴態度も問題にするところ,確かに被告は,本件訴訟において,本件液のみならず本件機械についての実施料の支払義務も争っているが,上記2で検討したとおり,甲4契約において,その場合の実施料の算定基準は定められていなかったのであるから,裁判となった以上,被告が,上記の点から争うことは裁判制度の趣旨に照らし許されるべきである。また被告は,その一方で本件機械のみならず本件液の販売について,上記第2の1(5)オの経緯で,甲4契約書2条7項を算定基準にして算出した実施料を継続して支払っているというのであるから,本件訴訟における被告の応訴態度をもって背信行為ということはできない。 なお,原告は,原告と被告との信頼関係が,甲4契約締結後徐々に失われ,そのことを被告も認めていたことを指摘するが,客観的状況がそうであったとしても,そのことから直ちに被告に背信行為があるということができないことは明らかである。 イ被告が本件特許につき虚偽の事実を告知していることについて- 36 -証拠(甲58,甲59)によれば,上記第3の4(原告の主張)(1)イ(ア),(イ)欄記載の平成27年6月21日開催のセミナーのパンフレット上の記載,あるいは平成26年2月5日のウェブページ上の配信記事中の記載が認められ,これではピカッシュ,愛歯などの被告側の会社が本件特許発明の開発者,あるいは本件特許権を取得した者というように理解され,虚偽の記載がされてい 6年2月5日のウェブページ上の配信記事中の記載が認められ,これではピカッシュ,愛歯などの被告側の会社が本件特許発明の開発者,あるいは本件特許権を取得した者というように理解され,虚偽の記載がされているというべきである。 また証拠(乙8の61,62,被告代表者)によれば,被告代表者が原告代表者に対し,ピカッシュとして事業展開する中で,原告の技術との違いの問い合わせが多くあって困っているとして,原告のホームページの停止を求めたところ,原告において,被告の希望する全体の削除の根拠が理解できないとしてホームページの停止はしないが,「技術面と特許番号」を削除する対応をしたことが認められるが,そもそも原告が主張するように,原告のホームページの停止は,甲4契約の内容になっていないから,この関係で,原告が不信感を抱いたことは否定できない。 しかし,そもそも専用実施権者である被告の事業実績が伸びることは特許権者である原告の利益でもあって,両者の利害は一致しているはずであるから,被告の事業活動に資する誇大な広告をすることや,また事業の支障となる原告の広告等の削除を求めることは,原告の利益に叶いこそすれ,直ちに背信行為となるということはできない(上記回答のメール(乙8の62)においてでも,原告代表者は,「弊社としましては,御社が快適に営業活動が出来,また実績に繋がるように全面的に協力をしてクリアーな対応をしているつもりであります。」と回答をしているところである。)。 そうすると,以上の,パンフレットや配信記事の記載,あるいは根拠のないホームページの停止要求で原告代表者が不快に感じたり,被告に対する不信感を抱いたりする原因になり得たとしても,これをもって,被告の原告に対する背信行為とはいえない。 (3) したがって,以上の事実関係を総合してみても,甲4契約 表者が不快に感じたり,被告に対する不信感を抱いたりする原因になり得たとしても,これをもって,被告の原告に対する背信行為とはいえない。 (3) したがって,以上の事実関係を総合してみても,甲4契約書10条2項5号にいう「背信行為」を基礎づけるに足りないから,同号に基づく原告の甲4契約解- 37 -除の意思表示は無効である。 5 争点3 (実施料又は実施料相当の不当利得の請求)上記2で認定判断したとおり,被告は,本件機械の製造販売につき甲4契約2条8項1号(予備的に同条7項)に基づく実施料の支払義務を負っているものとはいえないから,同条項に基づく支払義務があることを前提とする原告の実施料請求又は不当利得返還請求には理由はない。 そして,少なくとも被告は,上記第2の1(5)オの経緯で甲4契約書2条7項の規定に基づき算出した本件機械のみならず本件液を対象とした実施料を原告に対して継続的に支払っているから,本件機械についての相当額の実施料の支払義務という点で見ても,上記事実関係のもとでは,被告に実施料の未払又は不当利得が生じているとは認められない。 6 以上によれば,原告の被告に対する請求はすべて理由がないことが明らかであるから,原告の請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官野上誠一 - 38 -裁判官大川潤子 - 39 -(別紙)特許権目録 登録番号特許第4324639号発明の名称マイクロ波照射による銀イオン定着化物および銀イオン定着化方法およ 川潤子 - 39 -(別紙)特許権目録 登録番号特許第4324639号発明の名称マイクロ波照射による銀イオン定着化物および銀イオン定着化方法および銀イオン定着化物の製造方法出願年月日平成20年1月16日登録年月日平成21年6月12日

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