平成28(行コ)21 輸送施設使用停止命令及び運賃の変更命令差止請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成28年6月17日 大阪高等裁判所 その他
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本件は、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法に基づく運賃設定の適法性を巡る訴訟である。被控訴人は、運賃設定届出及び運賃変更届出が公定幅運賃の範囲外であるとして、近畿運輸局長からの使用停止処分及び運賃変更命令の差止めを求めた。主要な争点は、運賃変更命令の適法性及び控訴人の裁量権の行使の適切性であり、裁判所は、運賃設定が公定幅運賃内である必要があることを確認し、控訴人の主張を認めた。判決は、原判決を変更し、運賃変更命令の差止めを認めないとし、被控訴人のその他の請求を却下した。訴訟費用は控訴人が負担することとなった。

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判決文本文8,735 文字)

平成28年6月17日判決言渡平成28年(行コ)第21号輸送施設使用停止命令及び運賃の変更命令差止請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成26年(行ウ)第105号) 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 近畿運輸局長は,被控訴人に対し,被控訴人が平成26年3月31日にした一般乗用旅客自動車運送事業の運賃設定届出及び同年6月3日にした同運賃変更届出について,「一般乗用旅客自動車運送事業の公定幅運賃の範囲の指定について」(平成26年2月28日付け近運自二公定第64号)により公表された公定幅運賃内にないことを理由として,特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法16条の4第3項に基づき,運賃を変更すべきことを命じてはならない。 3 被控訴人のその余の請求に係る訴えをいずれも却下する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを4分し,その1を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 本案前の答弁上記取消しに係る部分につき,被控訴人の訴えをいずれも却下する。 (3) 本案の答弁上記取消しに係る部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。 (4) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨等(1) 本件は,特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関す 棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨等(1) 本件は,特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(以下「特措法」という。)の準特定地域(供給過剰のおそれのある地域)に指定された大阪市域交通圏において一般乗用旅客自動車運送事業を営む被控訴人が,平成26年3月31日及び同年6月3日に,特措法16条1項の規定により指定された運賃(以下「公定幅運賃」という。)の範囲外の運賃設定届出及び運賃変更届出をしたことにより,近畿運輸局長から,同法17条の3第1項に基づく輸送施設使用停止処分(以下「使用停止処分」という。)及び同法16条の4第3項に基づく運賃の変更命令(以下「運賃変更命令」という。)を受けるおそれがあり,さらに,運賃変更命令に違反したことを理由として,同法17条の3第1項に基づく使用停止処分及び一般乗用旅客自動車運送事業許可取消処分(以下「事業許可取消処分」といい,使用停止処分及び運賃変更命令と併せて「本件各処分」という。)を受けるおそれがあると主張し,控訴人に対し,行政事件訴訟法37条の4に基づき,本件各処分の差止めを求める事案である。 (2) 原審は,本件訴えのうち,運賃の設定違反を理由とする使用停止処分の差止めを求める部分を却下し,運賃変更命令の差止請求並びに運賃変更命令違反を理由とする使用停止処分及び事業許可取消処分の差止請求をいずれも認容した。 (3) 控訴人は,控訴を提起し,原判決のうち控訴人敗訴部分の取消しを求めた上,同取消しに係る部分につき,主位的に被控訴人の訴え却下を求め,予備的に被控訴人の請求棄却を求めた。 (4) 被控訴人は,当審において,本件各処分の差止請求が下記アの公示を前提 た上,同取消しに係る部分につき,主位的に被控訴人の訴え却下を求め,予備的に被控訴人の請求棄却を求めた。 (4) 被控訴人は,当審において,本件各処分の差止請求が下記アの公示を前提とするものであることを明確にする趣旨で,請求の趣旨を次のとおり特定した。 ア運賃の設定違反を理由とする使用停止処分の差止請求近畿運輸局長は,被控訴人に対し,被控訴人が平成26年3月31日にした一般乗用旅客自動車運送事業の運賃設定届出及び同年6月3日にした同運賃変更届出について,「一般乗用旅客自動車運送事業の公定幅運賃の範囲の指定について」(平成26年2月28日付け近運自二公定第64号)により公表された公定幅運賃内にないことを理由として,特措法17条の3第1項に基づき,輸送施設の使用の停止を命じてはならない。 イ運賃変更命令の差止請求近畿運輸局長は,被控訴人に対し,上記公定幅運賃内にないことを理由として,特措法16条の4第3項に基づき,運賃を変更すべきことを命じてはならない。 ウ運賃変更命令違反を理由とする使用停止処分及び事業許可取消処分の差止請求近畿運輸局長は,被控訴人に対し,特措法16条の4第3項に基づく運賃変更命令(上記公定幅運賃の範囲にないことを理由とするもの)に違反したことを理由として,同法17条の3第1項に基づき,輸送施設の使用の停止を命じ,又は一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取り消してはならない。 2 関係法令等の概要及び前提となる事実は,原判決「事実及び理由」中の「第 2 事案の概要」欄の1及び2(原判決3頁17行目から9頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及び当事者の主張は,次のとおり当審における当事者の補充主張を加え 「第 2 事案の概要」欄の1及び2(原判決3頁17行目から9頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及び当事者の主張は,次のとおり当審における当事者の補充主張を加えるほか,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」欄の3(原判決9 頁25行目から23頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 控訴人の補充主張ア本件訴訟の適法性について差止めの訴えの訴訟要件である重大な損害及び補充性の要件については,処分がされた場合にこれに対する取消訴訟等を提起することではおよそ実効的な救済を図ることができないかとの観点から検討すべきである。争訟の対象となる不利益処分が累次的にされることが予想されるとしても,処分によって生じる損害の内容,性質,程度等は個別の処分ごとに異なる上,処分がされる段階に応じて実効的な救済を図る必要性や緊急性の程度も異なるから,行政処分が行われていない段階で,司法権がその処分を抑制する必要性も異なる。本件において,1回目の運賃変更命令,その命令違反(初違反)を理由とする使用停止処分,2回目の運賃変更命令及びその命令違反(再違反)を理由とする事業許可取消処分は,それぞれ別個の処分であり,1回目の運賃変更命令以外は,運賃変更命令に違反して初めて処分をなし得るものである上,当該処分ごとに生じる損害の内容,性質,程度等を考慮して,差止めの要件が充足されるかどうかを個別に検討すべきであるから,これらの処分を一連の処分と解することはできない。 イ近畿運輸局長による裁量権の逸脱濫用について公定幅運賃の範囲を具体化するに当たっては,行政庁の専門技術的な知識経験や公益上の配慮に基づいて,特措法16条2項の各要件に該当するかどう イ近畿運輸局長による裁量権の逸脱濫用について公定幅運賃の範囲を具体化するに当たっては,行政庁の専門技術的な知識経験や公益上の配慮に基づいて,特措法16条2項の各要件に該当するかどうかを判断する必要があり,このような判断は,一般乗用旅客自動車運送に関する行政に通暁し,専門技術的な知識経験を有する国土交通大臣等によってよりよくなし得るから,国土交通大臣等は,広範な裁量権を有している。本件において,近畿運輸局長は,タクシー事業が供給過剰のおそれがある状態にあり,この供給過剰のおそれのある状態が,運転者の労 働条件の悪化,それに伴う輸送の安全の悪化を招来し得ること(乙32ないし36),以前の自動認可運賃の制度趣旨と公定幅運賃制度の趣旨は一致しているので,自動認可運賃の定め方と公定幅運賃の定め方が同様のものとなることには合理性があること,タクシーは公共交通機関であり,その事業運営は継続的かつ安定的になされる必要があること等を考慮し,自動認可運賃の幅を公定幅運賃の範囲と定めたものであり,そのことは合理的である。なお,運賃値下げ競争を引き起こす可能性のある下限割れ運賃を排除するために公定幅運賃制度が導入された経緯からすれば,公定幅運賃の範囲を指定するに当たり,下限割れ運賃で営業していたタクシー事業者の運賃や経営実態等を個別具体的に考慮する必要はない。よって,近畿運輸局長による裁量権の逸脱濫用はない。 (2) 被控訴人の補充主張ア本件訴訟の適法性について本件において,1回目の運賃変更命令,その命令違反(初違反)を理由とする使用停止処分,2回目の運賃変更命令及びその命令違反(再違反)を理由とする事業許可取消処分は,それぞれ別個の処分であるとしても,被控訴人が公定幅運賃外の運賃届出をしていること,被 違反)を理由とする使用停止処分,2回目の運賃変更命令及びその命令違反(再違反)を理由とする事業許可取消処分は,それぞれ別個の処分であるとしても,被控訴人が公定幅運賃外の運賃届出をしていること,被控訴人は,自動認可運賃制度の下では適法に下限割れ運賃でタクシー事業を営んでおり,公定幅運賃内の運賃届出を行う可能性はほとんどないこと,近畿運輸局長が被控訴人の違反状態を是正するための処分の法的要件が充足されているにもかかわらず,当該処分をすることなく放置することは考え難いこと等からすれば,これらの処分は一連の処分と解すべきであり,差止めの訴えの訴訟要件である重大な損害及び補充性の要件についても,一体として検討すべきである。 イ近畿運輸局長による裁量権の逸脱濫用について公定幅運賃の範囲を具体化するに当たり,国土交通大臣等に裁量権があ ることは争わないが,公定幅運賃制度は,タクシー事業の営業形態を決める上で中核的な要素である運賃の設定自体を直接規制するものであり,タクシー事業者の営業の自由を相当程度制約するものであるから,その裁量権は広範なものではない。控訴人において,近畿運輸局長が自動認可運賃の幅を公定幅運賃の範囲と定めたことに合理性がある根拠として挙げる前記各事情のうち,タクシー事業が供給過剰のおそれがある状態が,運転者の労働条件の悪化,それに伴う輸送の安全の悪化を招来し得ることについては具体的な根拠がない。公定幅運賃制度の趣旨は,タクシー運転者の労働条件を改善し,もって輸送の安全を図ることにあるところ,車両台数が減少しても経営状態が悪化していること(乙32)からすれば,公定幅運賃制度に合理性はない。自動認可運賃の幅は特措法の趣旨に沿う適正な運賃幅とはいえないし,公定幅運賃制度導入時における自動認可運賃が標準 少しても経営状態が悪化していること(乙32)からすれば,公定幅運賃制度に合理性はない。自動認可運賃の幅は特措法の趣旨に沿う適正な運賃幅とはいえないし,公定幅運賃制度導入時における自動認可運賃が標準的なタクシー事業者の適正運賃といえるかどうかは疑問である。公定幅運賃の範囲を指定するに当たり,下限割れ運賃で営業していたタクシー事業者の運賃や経営実態等を個別具体的に考慮すべきとの原判決に誤りはない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,当審における審理の対象となる運賃変更命令違反を理由とする使用停止処分及び事業許可取消処分の差止めを求める部分はいずれも不適法であり,運賃変更命令の差止請求は理由があると判断する。その理由は,原判決を次のとおり改め,後記2のとおり当審における控訴人の補充主張イに対する判断を加えるほか,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」欄の1及び2(原判決23頁17行目から36頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決25頁25行目の「いずれも」から26頁2行目末尾までを「要件及び効果を異にする別個の処分であるが,上記のとおり,被控訴人が公定幅運賃外の運賃届出をしていること,被控訴人は,自動認可運賃制度の下では 適法に下限割れ運賃でタクシー事業を営んでおり,公定幅運賃内の運賃届出を行う可能性はほとんどないこと,他方,近畿運輸局長が被控訴人の違反状態を是正するための処分の法的要件が充足されているにもかかわらず,当該処分をすることなく放置することは考え難いこと等からすれば,本件各処分が累次的にされることが想定される。」と改める。 (2) 原判決26頁11行目の「認められる」の次に「(ただし,運賃変更命令の差止めの請求が認められた場合については,後記のとおりで ,本件各処分が累次的にされることが想定される。」と改める。 (2) 原判決26頁11行目の「認められる」の次に「(ただし,運賃変更命令の差止めの請求が認められた場合については,後記のとおりである。)」を加える。 (3) 原判決27頁23行目から29頁15行目までを次のとおり改める。 「イまず,運賃変更命令についてみるに,運賃変更命令公示及び処分基準公示によれば,タクシー事業者が運賃変更命令を受けると,所定の期間(15日程度)内に公定幅運賃の範囲内の運賃の届出をしない限り,運賃変更命令違反(初違反)として60日車の自動車等の使用停止を内容とする使用停止処分を受け,2回目の運賃変更命令を受けると,所定の期間(15日程度)内に公定幅運賃の範囲内の運賃の届出をしなければ,運賃変更命令違反(再違反)として事業許可取消処分を受けることが予定されており,さらに,運賃変更命令に反する運賃を収受すれば罰金刑に処せられることになる。被控訴人が上記罰金刑の法定刑の上限である100万円の罰金を受けたとしても,そのこと自体が被控訴人の営業に深刻な打撃を与えるものとはいえないが,被控訴人が刑事罰を受けることになれば,単に経済的損害を被るだけなく,社会的信用も損なわれるところ,その社会的信用を回復することは著しく困難というべきである。そして,被控訴人が,運賃変更命令に従わない可能性が高く,控訴人がこれに従わない事業者を放置することは考え難いことは前記のとおりであるから,このような事情の下では,1回目の運賃変更命令がされた後,早ければ2か月程度の間にその命令違反を理由とする使用停止処分及び2回目の運賃変更命令を経て,そ の命令違反を理由とする事業許可取消処分の手続が開始され,それから間もなく事業許可取消処分がされることが予想される。そうする 令違反を理由とする使用停止処分及び2回目の運賃変更命令を経て,そ の命令違反を理由とする事業許可取消処分の手続が開始され,それから間もなく事業許可取消処分がされることが予想される。そうすると,被控訴人が運賃変更命令を受ければ,被控訴人に金銭賠償を認めるだけでは足りない損害が生じることになり,その損害は同処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を求めることなどにより容易に救済を受けることができるとはいえず,処分がされる前に差止めを命ずるのでなければ救済を受けることが困難ということができる。 控訴人は,運賃変更命令と使用停止処分及び事業許可取消処分が別個の処分であることを理由に,運賃変更命令により被控訴人に重大な損害が生ずるか否かの判断に際して,後続する使用停止処分や事業許可取消処分を考慮すべきではないとする趣旨の主張をするが,運賃変更命令に従わない場合,処分基準公示によって使用停止処分や事業許可取消処分が累次的にされることが予定され,本件ではこれら各処分がされる高い蓋然性が認められるのであるから,後続の処分がされることを重大な損害が生ずるか否かの判断に際して考慮できない理由はないというべきである。 よって,運賃変更命令により,被控訴人に重大な損害が生ずるおそれがあると認められる。 ウ次に,運賃変更命令違反を理由とする使用停止処分及び事業許可取消処分についてみるに,運賃変更命令が差し止められれば,それを理由とする使用停止処分及び事業許可取消処分はその前提を欠くことになり,運賃変更命令違反を理由とする使用停止処分及び事業許可取消処分をすることはできないから,運賃変更命令の差止め以外に,これに後続する使用停止処分及び事業許可取消処分を重ねて差し止める必要性はないというべきである。したがって,運賃 用停止処分及び事業許可取消処分をすることはできないから,運賃変更命令の差止め以外に,これに後続する使用停止処分及び事業許可取消処分を重ねて差し止める必要性はないというべきである。したがって,運賃変更命令の差止めの請求が認容される本件では,運賃変更命令違反を理由とする使用停止処分や事業許可取消処分の差止めを求める請求に係る訴えは不適法である。」 (4) 原判決29頁20行目から末行までを次のとおり改める。 「 これを本件についてみると,前記(2)に説示したところによれば,運賃変更命令の取消訴訟を提起し,それに伴い執行停止の申立てをすることなどにより実効的な救済が得られるとは認められないし,上記処分の予防を目的とした事前救済の争訟方法として他に適当な方法があるとは解されないから,本件訴えのうち上記処分の差止めを求める訴えは,補充性の要件を満たすものということができる。」(5) 原判決32頁24行目の「できない。」の次に「この点,被控訴人も,公定幅運賃の範囲を具体化するに当たり,国土交通大臣等に裁量権があること自体は争っていない。」を加える。 2 控訴人の当審における補充主張に対する判断(1) 控訴人は,近畿運輸局長は,タクシー事業が供給過剰のおそれがある状態にあり,この供給過剰のおそれのある状態が,運転者の労働条件の悪化,それに伴う輸送の安全の悪化を招来し得ること(乙32ないし36),以前の自動認可運賃の制度趣旨と公定幅運賃制度の趣旨は一致しているので,自動認可運賃の定め方と公定幅運賃の定め方が同様のものとなることには合理性があること,タクシーは公共交通機関であり,その事業運営は継続的かつ安定的になされる必要があること等を考慮し,自動認可運賃の幅を公定幅運賃の範囲と定めたものであり,そのことは合理的 ることには合理性があること,タクシーは公共交通機関であり,その事業運営は継続的かつ安定的になされる必要があること等を考慮し,自動認可運賃の幅を公定幅運賃の範囲と定めたものであり,そのことは合理的であると主張する。 確かに,控訴人が主張するような事情は認められはするが,特措法は,同法16条2項に定める基準に適合するように公定幅運賃の範囲を定めなければならないとするものであって,同法16条2項が定める基準からすれば,自動認可運賃制度の下で,認可を受けて下限割れ運賃で営業していた事業者の運賃,経営状態,運転手の状況等を考慮外としているものとは解されない。 むしろ,下限割れ運賃は,自動認可運賃制度の下で,厳格化された個別的な審査の中でも,「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた ものであること(あるいはこれを超えないものであること)」,「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがないものであること」という基準を満たすものとして認可されていたのであるから,公定幅運賃の範囲を定めるに際しては,このような下限割れ運賃で営業していた事業者の経営実態を考慮するのは当然のことというべきである。なお,控訴人は,道路運送法9条の3第2項3号の「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがないものであること」という要件が,原価を著しく下回るような運賃を想定した規定であると主張するが,認可された下限割れ運賃は,適正な原価に適正な利潤を加えたものであるとの要件を満たすものとされていたのであるから,控訴人のこの点に関する主張は失当というほかない。 (2) 控訴人は,運賃値下げ競争を引き起こす可能性のある下限割れ運賃を排除するために公定幅運賃制度が導入された経緯からすれば,公定幅 るから,控訴人のこの点に関する主張は失当というほかない。 (2) 控訴人は,運賃値下げ競争を引き起こす可能性のある下限割れ運賃を排除するために公定幅運賃制度が導入された経緯からすれば,公定幅運賃の範囲を指定するに当たり,下限割れ運賃で営業していたタクシー事業者の運賃や経営実態等を個別具体的に考慮する必要はないと主張する。 しかし,この点については上記(1)に説示したとおりである。 3 結論よって,運賃変更命令違反を理由とする使用停止処分及び事業許可取消処分の差止めを求める部分はいずれも不適法であるからこれを却下し,運賃変更命令の差止請求は理由があるからこれを認容すべきである。これと一部結論を異にする原判決は相当でないから,前記第2の1(4)のとおり,被控訴人が当審で請求の趣旨を特定したことを踏まえて,原判決を主文第2及び第3項のとおり変更することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官田川直之 裁判官髙橋善久 裁判官髙橋伸幸

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