平成18(行ウ)3 大臣配当計画取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月13日 福岡地方裁判所 その他
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本件は、商品取引員であるA株式会社が預託した受託業務保証金に関し、原告が損害賠償請求権を含む払渡請求権の申出を行ったが、主務大臣が損害賠償請求権を除外した配当計画を作成したことに対して、原告がその取消しを求めた事案である。主要な争点は、損害賠償請求権が法97条の3第1項に基づく「委託により生じた債権」に含まれるかどうか、及び訴えの利益が存在するかどうかであった。裁判所は、配当計画が既に実施され、受託業務保証金が全て払渡されたため、原告の利益回復は不可能であるとし、訴えの利益がないと判断した。また、配当計画は行政処分に該当しないとの被告の主張を認め、原告の請求を却下した。最終的に、訴えは却下され、訴訟費用は原告の負担となった。

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判決文本文6,663 文字)

主文 本件訴えを却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求A株式会社がB取引所,C取引所,D取引所,E取引所,F取引所,G取引所,H取引所に預託した受託業務保証金について,農林水産大臣及び経済産業大臣が平成17年2月9日付けで作成した配当計画は,これを取り消す。 第2事案の概要本件は,商品取引員であったA株式会社(以下「A」という。)が平成16年法律第43号による改正前の商品取引所法(以下「法」という。)97条の2第1項に基づいて商品取引所に預託した受託業務保証金につき,原告が,法97条の3第1項,平成17年農林水産省・経済産業省令第3号による廃止前の受託業務保証金規則(以下「規則」という。)4条1項,2項に基づき,商品取引所に対し,Aに対する委託証拠金返還請求権及び損害賠償請求権を内容とする払渡請求権の申出(以下「本件申出」という。)をしたところ,農林水産大臣及び経済産業大臣(以下,両者をあわせて「主務大臣」という。)が,本件申出中損害賠償請求権を除外した上で配当計画(以下「本件配当計画」という。)を作成したことから,原告が,払渡請求権の対象である「委託により生じた債権」(法97条の3第1項)に損害賠償請求権は含まれないことを前提とした本件配当計画は違法であるとして,被告に対し,本件配当計画の取消しを求めた事案である。 前提事実争いのない事実,証拠(甲1,2,5,乙1,乙3の1ないし3,乙4ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1)当事者等 Aは,法126条1項の許可を受けた商品取引員として,B取引所等の商品取引所(以下「各商品取引所」ということがある。)において,商品の売買及び取引の受託等の業務を行っていたものであり,法97条の2第1項に基づき 条1項の許可を受けた商品取引員として,B取引所等の商品取引所(以下「各商品取引所」ということがある。)において,商品の売買及び取引の受託等の業務を行っていたものであり,法97条の2第1項に基づき,各商品取引所に対し,受託業務保証金を預託していた。 他方,原告は,Aに対し,商品先物取引を委託していた者であり,法97条1項に基づき,Aに委託証拠金を預託していた。 (2)受託業務保証金払渡しの大臣配当手続への移行Aは,平成16年1月7日,監督庁により営業停止処分を受けて,各商品取引所において違約(決済の不履行)を生じさせた。これに伴い,同月14日,Aの委託者らによる払渡請求権申出の合計額がAの受託業務保証金の預託額を超過したため,各商品取引所は,規則11条1項に基づき,受託業務保証金の払渡しを停止した。 そして,上記払渡しを停止した日から20営業日を経過する日までに申出合計額が受託業務保証金預託額を下回ることがなかったことから,規則11条3項,12条に基づき,その払渡しは主務大臣作成の配当計画に従って行われることとなり(以下,その配当計画を「大臣配当計画」といい,これによる払渡しの手続及び制度をそれぞれ「大臣配当手続」,「大臣配当制度」という。),同年2月20日,主務大臣は,規則12条に基づき,大臣配当手続移行に関する公告及び申出人等への通知を行った。 (3)原告の本件申出原告は,平成16年1月21日及び同年5月14日,法97条の3第1項,規則4条1項,2項に基づき,各商品取引所に対し,本件申出(金額4586万7510円)をした。法97条の3第1項は,委託者はその「委託により生じた債権」の弁済を受けるために払渡請求ができる旨規定しているところ,本件申出に係る原告の払渡請求権の内訳は,Aからの返還未了分の委託証拠金返還請求権93万628 1項は,委託者はその「委託により生じた債権」の弁済を受けるために払渡請求ができる旨規定しているところ,本件申出に係る原告の払渡請求権の内訳は,Aからの返還未了分の委託証拠金返還請求権93万6285円,Aからの違法な誘導により取引におい て損害を被ったということを理由とする債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権4493万1225円であった。 なお,原告は,同年6月▲日付けの訴状をもって,Aに対し,上記損害賠償請求権の履行を求める訴訟を提起し,同訴訟は現在,佐賀地方裁判所武雄支部に係属中である(Aは同年8月6日破産宣告を受け,上記訴訟事件の現在の被告はA破産管財人である)。 (4)申出についての調査各商品取引所は,原告等各申出人らの申出内容につき調査した上,平成16年11月1日,規則14条に基づき,主務大臣にこれを報告した。そして,同年12月17日,主務大臣は,規則16条に基づき意見聴取会を開き,そこには原告も出席し意見を述べた。 (5)本件配当計画の作成主務大臣は,平成17年2月9日,規則17条1項に基づき,上記調査等を踏まえた上で,本件配当計画を作成し,これを申出人,取引所等へ通知した(甲1)。 本件配当計画においては,本件申出中損害賠償請求権(4493万1225円)は払渡請求権の対象たる「委託により生じた債権」(法97条の3第1項)に含まれないものとして,93万6285円のみを原告の受託業務保証金払渡請求権として認容するとされ,これに基づき,原告への受託業務保証金配当金額は31万9372円とされた。 (6)払渡しの実施各商品取引所は,規則17条2項に基づき,平成17年3月10日以降,原告等申出人らに対する払渡しを実施し,本件配当計画に従った配当は完了した。これにより,A預託に係る各商品取引所の受託業務保証金はすべて 品取引所は,規則17条2項に基づき,平成17年3月10日以降,原告等申出人らに対する払渡しを実施し,本件配当計画に従った配当は完了した。これにより,A預託に係る各商品取引所の受託業務保証金はすべてなくなった。 (7)原告の異議申立及び棄却決定等 原告は,平成17年4月5日,原告の本件申出における損害賠償請求権も払渡請求権に含まれるべきであるとして,主務大臣に対して本件配当計画につき異議の申立てをしたが,同年7月26日,棄却の決定がなされた。 原告は,平成18年1月18日,本件訴えを提起した。 争点 (1)本案前の主張ア訴えの利益(被告の主張)大臣配当制度においては,厳格な債権者平等主義は採用されておらず,迅速性,簡便性が重視されており,払渡しの対象として,その対象性の判定に困難を伴わない委託者の債権のみを予定している。そうすると,商品取引所が大臣配当計画に従って受託業務保証金の払渡しを行い,その残額が零になれば,大臣配当計画から誤って除外された委託者は,もはや商品取引所に対して払渡請求はできないというべきである。そうしてみると,本件では,受託業務保証金の払渡しが完了し残額が零になっている以上,本件配当計画が取り消されても原告の利益の回復を図ることは不可能であるから,訴えの利益はない。 (原告の主張)争う。 イ行政処分性(被告の主張)本件配当計画は,以下の理由により,取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」(行政事件訴訟法3条2項)にあたらない。 すなわち,大臣配当制度は,受託業務保証金の払渡しに関する事項は主務省令で定めるとした法97条の6に基づき(いわゆる法律の委任)規則 によって設けられたもので,その制度において私人の権利を制限し又は義務を課すことは予定されていない。また,大臣配 関する事項は主務省令で定めるとした法97条の6に基づき(いわゆる法律の委任)規則 によって設けられたもので,その制度において私人の権利を制限し又は義務を課すことは予定されていない。また,大臣配当制度は,委託者の払渡請求権の申出総額が払渡原資たる受託業務保証金の額を超えた場合に,これを主務大臣の関与の下にできる限り公平かつ迅速に分配することを目的とした制度であって,委託者の払渡請求権の内容に実体的変動をもたらすものではない。委託者が大臣配当計画に従った金額の払渡ししか受けられなくなるのは,委託者の払渡請求権の発生原因である,取引所・商品取引員間の第三者(委託者)のためにする消費寄託契約においてその旨定められていることによるのであり,大臣配当計画作成の法的効力によるものではない。 さらに,法及び規則には,大臣配当計画に対する不服申立てを認めた規定はなく,その他大臣配当計画に行政処分性があることをうかがわせる規定もない。 (原告の主張)大臣配当計画は,これに従って商品取引所が現実に受託業務保証金の払渡しを行うという強い効果を持つものであるから,行政処分に準ずるほどの意義があり,行政処分性はある。 (2)本案についての主張(原告の主張)委託者の商品取引員に対する損害賠償請求権は,以下の理由により,法97条の3第1項の「委託により生じた債権」に含まれるから,これを含まれないとした本件配当計画は違法である。 すなわち,同項は「委託により生じた債権」と規定するのみで,その内容や範囲を制限していないから,損害賠償請求権も,委託契約と因果関係を有する限り「委託により生じた債権」に含まれるというべきである。また,受託業務保証金制度は,旧商品取引所法における仲買保証金制度を吸 収拡大させたものであるところ,仲買保証金制度における保護の対象も る限り「委託により生じた債権」に含まれるというべきである。また,受託業務保証金制度は,旧商品取引所法における仲買保証金制度を吸 収拡大させたものであるところ,仲買保証金制度における保護の対象も「委託により生じた債権」という同じ文言で規定されており,その中には損害賠償請求権も含まれていた。さらに,委託者の商品取引員に対する委託証拠金返還請求権と損害賠償請求権とは,必ずしも峻別できないこともある。加えて,受託業務保証金制度創設の際の手本とされた宅地建物取引業法上の営業保証金制度においては,保護の対象である「取引により生じた債権」に損害賠償請求権が含まれると解釈されている。 (被告の主張)損害賠償請求権は,以下の理由により,法97条の3第1項の「委託により生じた債権」には含まれない。 すなわち,受託業務保証金は,委託証拠金,売買差益金等の委託者の財産を保全するためのものであり,損害賠償請求権等まで保護することは想定されていない。受託業務保証金制度は,委託者の委託証拠金等の資産を商品取引員から分離・保管することで委託者保護を図るために創設された制度であり,また,同制度の対象と,法136条の15,法施行規則41条の分離保管制度の対象(委託証拠金等の委託者資産)とは,その範囲が同一であることが前提とされている。さらに,平成16年法律第43号による改正で委託証拠金の直接預託制度が導入されたのに伴い,受託業務保証金制度が廃止されたことは,受託業務保証金制度が損害賠償請求権を保護の対象としていないことが前提となっているといえる。仮に「委託により生じた債権」に損害賠償請求権が含まれるとすれば,他の委託者の権利保護や払渡しの迅速性が損なわれ,受託業務保証金制度の目的を達しえない。 第3争点に対する判断 訴えの利益の有無について⑴商品取引員は 」に損害賠償請求権が含まれるとすれば,他の委託者の権利保護や払渡しの迅速性が損なわれ,受託業務保証金制度の目的を達しえない。 第3争点に対する判断 訴えの利益の有無について⑴商品取引員は,委託者のために商品取引所に受託業務保証金を預託し(法 97条の2第1項),委託者は,商品取引員に対する委託により生じた債権の弁済を受けるため,商品取引員が商品取引所に預託した受託業務保証金について,商品取引所に対し払渡しを請求することができる(法97条の3第1項)。この受託業務保証金制度は,委託者の委託証拠金等の資産を商品取引員から分離して商品取引所に保管することで委託者保護を図るために創設された制度であり,商品取引員が商品取引所に対し受託業務保証金を委託者のために預託(第三者のための寄託契約。民法537条,657条)することにより,委託者が委託により生じた債権の弁済を受けるため,直接商品取引所に対し受託業務保証金の払渡請求権を取得するものである。そうすると,商品取引所は所定の払渡手続に従って受託業務保証金を委託者に払い渡せば免責され,受託業務保証金の残額が零になれば払渡義務は消滅することになる。 商品取引所の払渡手続をみると,通常の払渡手続(大臣配当計画によらない払渡手続。規則4条ないし9条)では,商品取引所において,その申出内容を審査し,理由の有無を判断した上,順次申出人に払い渡すものとされている一方,申出の総額が受託業務保証金預託額を上回った場合には,大臣配当計画に基づき払渡しを行うものとされている(規則11条ないし18条)。 そして,大臣配当手続に移行した場合,一定期間内に請求権を申し出るべき旨の公告・申出人へ通知等がなされ(規則12条),その期間内に申出があった委託者については,大臣配当計画において,申出時期の先後にかかわらず 配当手続に移行した場合,一定期間内に請求権を申し出るべき旨の公告・申出人へ通知等がなされ(規則12条),その期間内に申出があった委託者については,大臣配当計画において,申出時期の先後にかかわらず,債権額に応じた平等の割合の金額を払い渡すべきものとされる。 大臣配当手続においては,主務大臣が,商品取引所からの報告や申出人への意見聴取の結果を踏まえて申出の内容を審査し,大臣配当計画を作成するものとされている(規則14条ないし17条)が,破産手続と異なり,権利の存在を主張する者による異議等申立て及びその判断手続についての規定はなく(破産法118条1項,125条,126条,200条等参照),手続 に裁判所又はそれに準ずる機関が関与することもない上,作成された配当計画についてその記載どおり権利関係を確定する効力がある旨の規定もない(破産法124条3項参照)。また,大臣配当手続による払渡しは,「受託業務保証金の払渡し」に関しての法律の委任(法97条の6)に基づく規則上の制度にすぎない。 以上にような,受託業務保証金制度の性質,払渡手続の規定等を総合すると,大臣配当手続は,委託者の払渡請求権の申出が受託業務保証金預託額を超える場合,先に申出をした者が利するとの不公平を回避するとともに,厳密,正確な権利関係の確定は商品取引所の能力や時間の点で困難を伴うことなどから,主務大臣の関与の下,可能な限り公平かつ迅速に受託業務保証金の払渡しを行うことを目的として規定されたものと解されるのであって(この手続によって委託者の商品取引員に対する債権の存否・範囲を確定することは制度上予定されていない。),所定の手続に則って大臣配当計画が作成され,これに従って商品取引所により払渡しが行われれば,仮に後に大臣配当計画に誤りがあることが判明したとしても,商品取引所は所定 とは制度上予定されていない。),所定の手続に則って大臣配当計画が作成され,これに従って商品取引所により払渡しが行われれば,仮に後に大臣配当計画に誤りがあることが判明したとしても,商品取引所は所定の手続に従ってその払渡義務を履行している以上,払渡義務を免れるものと解するのが相当である。 そうすると,大臣配当計画に従った払渡しの終了後においては,商品取引所は受託業務保証金の払渡義務を免れるから,委託者に配当計画の取消しを求める訴えの利益は存しないというべきである。 ⑵本件についてみるに,前記第2の1(6)のとおり,本件配当計画に従った払渡しは終了しているのであるから,原告には本件配当計画の取消しを求める訴えの利益はないといわざるを得ない。 結論 よって,その余について検討するまでもなく,本訴は訴えの利益を欠く不適法なものであるから、これを却下することとし,訴訟費用の負担につき民訴法 61条を適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第2民事部裁判長裁判官岸和田羊一裁判官桂木正樹裁判官関川亮介

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