平成16(わ)183 贈収賄被告

裁判年月日・裁判所
平成16年11月4日 甲府地方裁判所
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本件は、山梨県北巨摩郡の公共工事を巡る贈収賄事件であり、被告人A(町総務課長)、B(町議会議長)、C(工務所代表)が関与した。Aは、BとCから賄賂を受け取り、入札においてD工務所を優遇する取り計らいを行った。主要な争点は、Aの職務に対する賄賂の受領が公共の信頼を侵害するかどうかであり、裁判所は、Aの行為が公共工事の公正な競争を著しく阻害したと認定した。判決では、AとBに懲役1年6月、Cに懲役1年を言い渡し、執行猶予を付与した。また、Aから100万円の追徴を命じた。これにより、贈収賄の厳しさと公務員の職務の廉潔性が強調された。

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判決文本文4,857 文字)

出席検察官佐藤方生同弁護人私選弁護人細田浩〔被告人A〕私選弁護人小澤義彦(主任),堀内茂夫〔被告人B〕私選弁護人八巻力也(主任),小澤義彦,八巻紀臣〔被告人C〕 主文 被告人A及び被告人Bをそれぞれ懲役1年6月に,被告人Cを懲役1年に各処する。 被告Bに対し,未決勾留日数中20日をその刑に算入する。 被告人らに対し,この裁判が確定した日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 被告人Aから金100万円を追徴する。 理由 【認定事実】(贈賄側被告人らの身分関係)被告人Cは,土木,建築工事の請負等を業とする有限会社D工務所(平成14年4月1日,D株式会社に組織変更)の代表取締役として同社の業務全般を統轄掌理していたもの,被告人Bは,同Cの実父である。 (犯罪事実)Ⅰ a町関係被告人Aは,平成10年4月1日から平成15年3月31日までの間,山梨県北巨摩郡a町総務課長として,町長の命を受け,同町発注にかかる土木,建築工事等について,指名業者の選定,入札の執行及び工事請負契約の締結等の職務に従事していたものであるが,第1 被告人Aは,同町が発注する土木,建築工事等に関し,指名競争入札における入札参加業者を選定するための指名選考委員会において前記D工務所を推し,入札に先立って被告人Bに設計価格を教示するなど有利かつ便宜な取り計らいを得たことに対する謝礼及び将来も同様の取り計らいを得たい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら, 1 平成13年9月ころ,同町bc番地d前記B方において,被告人B及び同Cの両名から,仕立券付き紳士服地1 謝礼及び将来も同様の取り計らいを得たい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら, 1 平成13年9月ころ,同町bc番地d前記B方において,被告人B及び同Cの両名から,仕立券付き紳士服地1着分(販売価格20万円)の供与を受け, 2 平成13年7月下旬ころ,同町ef番地のga町役場第1会議室において,被告人Bから,現金30万円の供与を受け, 3 平成13年12月中旬ころ,同番地所在のa町役場議員控室において,被告人Bから,現金20万円の供与を受け, 4 平成14年7月下旬ころ,同番地所在のa町役場第1会議室において,被告人Bから,現金10万円の供与を受け, 5 平成14年12月中旬ころ,同番地所在のa町役場議員控室において,被告人Bから,現金20万円の供与を受け,もって自己の職務に関して賄賂を収受し,第2 被告人Aに対し,前記第1冒頭記載の趣旨のもとに, 1 被告人B及び同Cは,共謀の上,前記第1の1記載の日時場所において,仕立券付き紳士服地1着分(販売価格20万円)を供与し, 2 被告人Bは,前記第1の2記載の日時場所において,現金30万円を供与し, 3 被告人Bは,前記第1の3記載の日時場所において,現金20万円を供与し, 4 被告人Bは,前記第1の4記載の日時場所において,現金10万円を供与し, 5 被告人Bは,前記第1の5記載の日時場所において,現金20万円を供与し,もって被告人Aの職務に関して賄賂を供与した。 Ⅱ h村関係Eは,平成3年4月30日から平成16年6月16日までの間,山梨県北巨摩郡h村村長として,所属職員を指揮監督し,同村発注にかかる下水道工事等について,指名業者の選定,入札の執行及び工事請負契約の締結等の職務を統轄掌理していたものであるが,第1 被告人B及び同Cは,共謀の上,平成1 て,所属職員を指揮監督し,同村発注にかかる下水道工事等について,指名業者の選定,入札の執行及び工事請負契約の締結等の職務を統轄掌理していたものであるが,第1 被告人B及び同Cは,共謀の上,平成13年8月上旬ころ,同村ij番地E方において,同人に対し,同村が発注する下水道工事等に関し,指名競争入札における入札参加業者に前記D工務所を指名するなど有利かつ便宜な取り計らいを得たい趣旨のもとに,仕立券付き紳士服地1着分(販売価格20万円)を供与し,第2 被告人Bは,平成14年4月中旬ころ,前記E方において,同人に対し,前記Ⅱの第1記載の趣旨のもとに,現金100万円を供与し,もって同人の職務に関して賄賂を供与した。 【法令の適用】 1 被告人Aの判示Ⅰの第1の1ないし5の各所為はいずれも平成15年法律第138号(仲裁法)附則14条により同法による改正前の刑法197条1項前段に該当するところ,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示Ⅰの第1の2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役1年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,同被告人が判示Ⅰの第1の1ないし5の各犯行により収受した賄賂は,いずれも没収することができないので,同法197条の5後段によりその価額合計金100万円を同被告人から追徴することとする。 2 被告人Bの判示Ⅰの第2の1ないし5,判示Ⅱの第1及び同第2の各所為はいずれも刑法198条(前記改正前の刑法197条1項前段。判示Ⅰの第2の1及び判示Ⅱの第1につき,さらにそれぞれ刑法60条)に該当するところ,以上の各罪につき所定刑中それぞれ懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条に 示Ⅰの第2の1及び判示Ⅱの第1につき,さらにそれぞれ刑法60条)に該当するところ,以上の各罪につき所定刑中それぞれ懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示Ⅱの第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役1年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中20日をその刑に算入し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 3 被告人Cの判示Ⅰの第2の1及び判示Ⅱの第1の各所為はいずれも刑法60条,198条(前記改正前の刑法197条1項前段)に該当するところ,以上の各罪につき所定刑中それぞれ懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示Ⅱの第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役1年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 【量刑の理由】 1 本件は,a町及びh村が発注する下水道工事等をめぐり,土木,建築工事の請負を業とする有限会社D工務所の代表者であった被告人Cとその実父でa町議会議長の地位にあった被告人Bとが,判示のとおりの趣旨で,a町総務課長であった被告人Aやh村村長であったEに賄賂を贈ったという,贈収賄の事案である。 被告人Aの行為については,公共工事の受注事務の実質的な責任者である総務課長が入札に参加しようとする土建業者から賄賂を贈られていたという事実自体からして,a町の公共工事の受注が公正かつ自由な競争のもとに行われていることに対する社会の信頼を著しく侵害したといわなければならないが,本件については,同被告人において,入札に先だって関係者に設計価格を教示していたとい 工事の受注が公正かつ自由な競争のもとに行われていることに対する社会の信頼を著しく侵害したといわなければならないが,本件については,同被告人において,入札に先だって関係者に設計価格を教示していたという事情も存在していたのであって,職務執行の公正さが現実にも影響を受けていたと見ざるを得ず,町政を担う役場職員の職務の廉潔性とその職務に対する町民の信頼を裏切ったものというほかない。また,被告人B及び被告人Cの行為は,a町及びh村の各公共工事の受注における,公正かつ自由な競争の確保という行政目的を著しく阻害するものであり,私利を図るため2つの地域にまたがり本件を敢行した点でも強い非難に値する。したがって,被告人らの刑事責任は重いものである。 2 被告人Aについては,a町総務課長という幹部職員でありながら,自らを厳しく律しなければならない公務員の立場を忘れて,安易に本件各賄賂を収受したものであり,酌量の余地は乏しい。しかも,本件は,比較的長期間にわたり定期的に反復累行されていたものであり,収受した賄賂の金額も決して少ないとはいえないなど,犯行態様も悪質である。さらに,受け取った服地については仕立てて家族のために使用しており,犯情は芳しくない。 他方,被告人A自らが賄賂を積極的に要求したことはなく,収受はいずれも受動的なものであったこと,収受した現金はほとんど費消されていないこと,本件を契機に,逮捕当時勤務していたa町助役を辞職し,また本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省しており,その妻も今後の監督を約束していること,余罪について贖罪寄付をしていること,これまでに禁錮以上の刑に処せられたことがないこと,その他被告人Aの健康状態や家族の生活状況など,被告人Aにとって酌むべき事情 の妻も今後の監督を約束していること,余罪について贖罪寄付をしていること,これまでに禁錮以上の刑に処せられたことがないこと,その他被告人Aの健康状態や家族の生活状況など,被告人Aにとって酌むべき事情も認められる。 3 被告人Cについては,a町の公共工事が減少傾向にある上,前例に照らし指名業者から外されることを危惧していたなどの背景事情があるにせよ,村長や町役場の幹部職員に賄賂を贈ってまで,自らが役員をしている会社の利益を実現しようとした点で,自己中心的であり,酌量の余地は乏しい。a町議会議長も務めたことのある実父の影響力を利用し,a町とh村という2つの地域にまたがって,それぞれ20万円相当の仕立券付き紳士服地という高価な品物を供与しており,犯行態様も悪質である。 他方,本件を契機に,会社が指名停止処分を受け,また本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,会社役員を辞任していること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省しており,その妻も今後の監督を約束していること,これまでに前科がないこと,その他被告人Cの年齢など,被告人Cにとって酌むべき事情も認められる。 4 被告人Bについては,選挙で自分を応援してくれた土建業者に見返りを与えることのできるような情報を役場から得たいとか,実子である被告人Cが代表者を務める会社を応援したいという思いから,a町とh村という2つの地域にまたがって,確たる犯意に基づく執拗なまでの贈賄を敢行しており,犯行態様は悪質であり,その動機も自己中心的というほかなく,厳しい非難を免れない。 他方,本件を契機に議員を辞職し,また本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省し,その妻も今後の監督を約束していること,約30年以上も前 他方,本件を契機に議員を辞職し,また本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省し,その妻も今後の監督を約束していること,約30年以上も前の古い前科しかないこと,その他被告人Bの年齢など,被告人Bにとって酌むべき事情も認められる。 5 そこで,当裁判所は,被告人らにとって有利,不利な一切の事情を考慮し,主文のとおりの刑を量定した次第である。 (求刑懲役1年6月,100万円追徴〔被告人A〕,懲役1年6月〔被告人B〕,懲役1年〔被告人C〕)平成16年11月4日甲府地方裁判所刑事部裁判長裁判官川島利夫裁判官柴田誠裁判官肥田薫

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