平成12(行ウ)2 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年2月8日 甲府地方裁判所 住民訴訟
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本件は、山梨県中巨摩郡玉穂町の住民が、町長による公共工事の入札における予定価格の漏えいと談合を理由に、町に対して損害賠償を求めた事案である。原告らは、談合がなければ適正な競争価格で契約が締結されていたと主張し、地方自治法に基づく損害賠償請求権を行使するための住民監査請求が不適法であるとする被告の主張に対して、請求を一次的、二次的、三次的に構成した。主要な争点は、住民監査請求の適法性と、談合の事実の有無であった。裁判所は、原告の一次的請求を認め、被告に対して金1億4152万8000円の支払いを命じたが、その他の請求は棄却した。判決は、被告の行為が不法行為に該当し、原告らに損害が生じたことを認めた。

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判決文本文21,686 文字)

主文 1 被告は,玉穂町に対し,金1億4152万8000円及びこれに対する平成14年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 一次的請求被告は,玉穂町に対し,金2億9607万7386円及びこれに対する平成14年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 二次的請求被告は,玉穂町に対し,金1754万1636円及びこれに対する平成14年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 三次的請求被告は,玉穂町に対し,金1538万3934円及びこれに対する平成14年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨(1) 本件は,山梨県中巨摩郡玉穂町(以下「玉穂町」という。)の住民である原告らが,玉穂町が締結した別紙工事一覧表(省略)記載の各公共工事(以下「本件各工事」という。)についての各請負契約(以下「本件各契約」という。)に関し,本件各契約は,当時の玉穂町長であった被告が直接的又は間接的に漏えいした予定価格(本件各契約の場合,予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって入札をした者が落札者となる。)を基にして行われた入札者間の談合の結果,不当に高額な請負代金によって締結されたものであり,玉穂町は,被告による予定価格の漏えい行為により,談合がなければ自由競争によって形成されたであろう請負代金額(以下「適正な競争価格」という。)と実際の請負代金額との差額相当額の損害を被った旨主張して,地方自治法(ただし,平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「改正前法」という。)242条の2第1項 以下「適正な競争価格」という。)と実際の請負代金額との差額相当額の損害を被った旨主張して,地方自治法(ただし,平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「改正前法」という。)242条の2第1項4号により,玉穂町に代位して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,下記(3)のとおり,玉穂町の被った損害の賠償を求めている事案である(下記(3)の各附帯請求は,不法行為の後の日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金請求である。)。 (2) これに対し,被告は,本件各工事の一部について原告らの主張するような予定価格の漏えい及び談合が行われたことは認めるものの,原告らの本件訴えに先立つ住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)は,地方自治法(以下「法」という。)242条2項所定の期間(以下,法242条2項を「期間制限規定」という。)が経過した後なされており,本件訴えは,適法な住民監査請求を経ておらず不適法である,また,この点をおくとしても,本件各工事のすべてにおいて原告らの主張するような予定価格の漏えい及び談合が行われた事実はないと主張している。 (3) 原告らは,被告らの監査請求に関する上記主張等に対応して,その請求を次のとおり,一次的請求,二次的請求及び三次的請求と構成している。 ア一次的請求原告らは,玉穂町は被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,その行使を怠っているところ,「怠る事実」に係る住民監査請求には期間制限規定が適用されない旨主張して,一次的請求として,改正前法242条の2第1項4号に基づき,怠る事実に係る相手方である被告に対し,本件各工事のうち明らかに談合が成立しなかったとされる都市整備課発注分№48ないし50を除いた工事について,適正な競争価格と実際の契約金額の差額相当額 基づき,怠る事実に係る相手方である被告に対し,本件各工事のうち明らかに談合が成立しなかったとされる都市整備課発注分№48ないし50を除いた工事について,適正な競争価格と実際の契約金額の差額相当額の支払を求めている。 イ二次的請求原告らは,仮に,本件訴えに期間制限規定が適用されるか,又は,一次的請求が「怠る事実」を主張するのに対して本件監査請求が「財務会計上の行為」の違法をいうことから,本件監査請求と一次的請求の間に同一性が認められず,一次的請求に係る訴えが適法な住民監査請求を経ているとはいえないとしても,最終の支払から1年以内に本件監査請求が行われた別紙予備的請求対象工事一覧表(省略)記載の各工事については,その工事に係る支出全体が違法な財務会計行為となり,この範囲で期間制限規定を充足している旨主張して,二次的請求として,改正前法242条の2第1項4号に基づき,同一覧表(省略)記載の各工事につき,適正な競争価格と実際の契約金額の差額相当額の支払を求めている。 ウ三次的請求更に,原告らは,仮に,期間制限規定の適用が最終の支払日を基準にするのではなく,各支払日を基準とするとしても,別紙予備的請求対象工事一覧表(省略)記載の各工事のうち,本件監査請求から1年以内になされた各支出については期間制限規定を充足している旨主張して,三次的請求として,改正前法242条の2第1項4号に基づき,前記各支出につき,適正な競争価格と実際の契約金額の差額相当額の支払を求めている。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)(1) 原告らは,いずれも,本件監査請求(下記(7)ア)が行われた平成11年11月11日よりも前から,玉穂町の住民であった。 (2)ア被告は,昭和54年10月,玉穂町議会議員選挙に当選し,以後 )(1) 原告らは,いずれも,本件監査請求(下記(7)ア)が行われた平成11年11月11日よりも前から,玉穂町の住民であった。 (2)ア被告は,昭和54年10月,玉穂町議会議員選挙に当選し,以後,3期連続して玉穂町議会議員の職にあったが,平成3年4月21日に行われた玉穂町長選挙(以下「平成3年選挙」という。)に立候補し,対立候補であった現職のAを破って当選し,同年5月1日,玉穂町長に就任した(甲24,26)。 イ玉穂町長選挙は,平成3年選挙よりも前から,それまでに通算7期首長を務めたBを支持する勢力(以下「B派」という。)と反Bを標ぼうして昭和62年4月に行われた玉穂町長選挙に立候補し,現職のB町長を破って当選したA前町長を支持する勢力(以下「A派」という。)の間で激しい選挙戦が行われていたところ,被告は,平成3年選挙において,Bが当時既に死亡していたことから,B派からの支援を受けていた(甲24,26,30の1)。 ウ被告は,平成3年5月1日に玉穂町長に就任した後,玉穂町役場の組織改編を行い,公共事業の発注を担当することが多い部門を,従前の建設課及び経済課の2課体制から,建設課,経済課及び都市整備課の3課体制とした(甲24,26,30の1)。 エ被告は,上記組織改編の後である平成3年11月ころ,玉穂町役場の人事異動を行い,総務課,建設課,経済課及び都市整備課の各課長に次の人物をあてた(甲26,30の1)。 (ア) 総務課長 C(留任)(イ) 建設課長 D(建設課土木建設係主査から)(ウ) 経済課長 E(留任)(エ) 都市整備課長 Fオ被告は,上記人事異動の際,D及びFは平成3年選挙の際にB派に属して自分を支持し,C及びEはB派には属していなかったものの,少なくとも中立の立場をとっていたと認識していた(甲26,30の1) Fオ被告は,上記人事異動の際,D及びFは平成3年選挙の際にB派に属して自分を支持し,C及びEはB派には属していなかったものの,少なくとも中立の立場をとっていたと認識していた(甲26,30の1)。 (3)ア被告は,平成7年4月23日に行われた玉穂町長選挙(以下「平成7年選挙」という。)に現職として立候補し,平成3年選挙と同じくB派の支援を受け,対立候補の原告Gを破り,再選を果たした(甲24,26,30の1)。 イ被告は,平成7年選挙の後である平成7年6月,玉穂町役場の人事異動を行い,総務課,建設課,経済課及び都市整備課の各課長に次の人物をあてた(甲26,30の1)。 (ア) 総務課長 C(留任)(イ) 建設課長 H(ウ) 経済課長 E(留任)(エ) 都市整備課長 D(建設課長から)ウ被告は,上記人事異動の際,Hは平成3年選挙の際にはA派に属して被告の対立候補であるA前町長を支持していたが,平成7年選挙の際には中立の立場をとっていたと認識していた(甲26,30の1)。 (4)ア玉穂町内の土木建設業者は,平成3年よりも前から,甲協力会という名称の団体を組織していたが,その会長は,玉穂町長選挙の際に当選した候補者を支援していた土木建設業者から選出されていた。例えば,昭和62年4月の玉穂町長選挙においてBが敗れる前は,B派に属していたI組のIが同会の会長を務めていたが,同選挙においてAが当選した後は,A派に属していたJ建設のJが同会会長を務めていた(甲29の1)。 イ甲協力会の会員は,平成3年選挙において,次のとおり,A前町長を推すA派と被告を推すB派に分かれていた(甲6ないし14(会員の商号等につき),甲26,29の1)。 (ア) B派① K興業② L工務店③ M工業④ N興業⑤ O建設⑥ P組⑦ Q工業(屋号) 派と被告を推すB派に分かれていた(甲6ないし14(会員の商号等につき),甲26,29の1)。 (ア) B派① K興業② L工務店③ M工業④ N興業⑤ O建設⑥ P組⑦ Q工業(屋号)(イ) A派① J建設② I組③ R産業④ S工業(屋号)⑤ T興業⑥ U工業⑦ V工業⑧ W工事ウ平成3年選挙は,上記イのとおり,甲協力会の会員を二分し,また,B派に属するM工業の代表取締役であるMが公職選挙法違反(買収)で逮捕されるほど激しい選挙戦が繰り広げられた。したがって,被告が平成3年選挙に当選した後も,同会会員の間には確執が残り,そのため,同会は,しばらくの間,活動を休止していた。そこで,平成3年選挙で被告を支援した甲協力会の会員は,平成3年11月ころ,甲建会という名称の団体を組織し,Q工業という屋号で土木建設業を営むQが同会の会長に就任した(甲24,29の1)。 エ甲協力会は,平成4年8月,J建設を営むJが脱退したことから活動を再開し,Qが同会の会長に就任した(甲29の1)。 オ甲協力会は,公正取引委員会によって山梨県建設業協会加盟業者らによる組織的談合が指摘されたことを機に,平成6年4月,名称を玉穂町甲協議会(以下「甲協議会」という。)と変更した(甲29の1)。 カ被告は,上記(3)アのとおり,平成7年選挙において再選されたが,平成7年選挙では,ほとんどの玉穂町の土木建設業者が被告を支持・支援した(甲26,29の1)。 キ甲協議会は,平成7年選挙後,役員改選を行い,Qが引き続いて同会会長に選出された(甲29の1)。 平成7年選挙後における甲協議会の役員構成等は,次のとおりである(甲29の1)。 (ア) 会長 Q(Q工業)(イ) 副会長 M(M工業),N(N興業)(ウ) 会計 O(O建設)(エ) )。 平成7年選挙後における甲協議会の役員構成等は,次のとおりである(甲29の1)。 (ア) 会長 Q(Q工業)(イ) 副会長 M(M工業),N(N興業)(ウ) 会計 O(O建設)(エ) 顧問 L(L工務店),I(I組)(オ) 理事 K(K興業),P(P組)(カ) 幹事 U(U工業)(キ) 会員 X(X工業),Y(Y工業),T(T興業),S(S工業)(5)ア玉穂町は,本件各工事について,別紙工事一覧表(省略)入札日欄記載の各日に入札を行い,同一覧表(省略)落札価格欄記載の各金額で入札した業者との間で,入札金額を請負代金として,それぞれ請負契約を締結した(これが本件各契約である。)。 イ玉穂町は,本件各契約に基づき,落札業者に対し,別紙工事一覧表(省略)合計支払額欄記載の金員を支払った(甲17,23,弁論の全趣旨)。 ウ本件各工事に関する入札の落札率(予定価格に占める落札価格の割合)は,別紙工事一覧表(省略)落札率欄記載のとおりである。 (6)ア被告は,平成10年11月30日,偽計競売入札妨害の容疑で逮捕され,更に,平成11年1月5日,収賄の容疑で逮捕された(甲5,24)。 イ被告は,上記逮捕を受けて,平成11年1月22日,玉穂町長の職を辞した(甲5,24,26)。 ウ被告は,平成10年12月20日,玉穂町が平成10年1月21日に実施した次の公共工事に関する入札につき,予定価格を漏えいしたとして,偽計競売入札妨害の罪で起訴された(甲24ないし26)。 (ア) 公共下水道管渠布設工事七工区(別紙本件各工事一覧表(省略)中の都市整備課発注分№55の工事)(イ) 公共下水道管渠布設工事八工区(同№56の工事)(ウ) 玉穂町ふるさとふれあい広場芝生の丘整備工事(同№57の工事)(エ) 玉穂町ふるさとふれあい広場 )中の都市整備課発注分№55の工事)(イ) 公共下水道管渠布設工事八工区(同№56の工事)(ウ) 玉穂町ふるさとふれあい広場芝生の丘整備工事(同№57の工事)(エ) 玉穂町ふるさとふれあい広場園路その他整備工事(同№58の工事)(オ) 玉穂町ふるさとふれあい広場修景池整備工事(同№59の工事)エ甲府地方裁判所は,平成11年7月21日,被告に対し,上記偽計競売入札妨害罪及び平成11年1月25日に追起訴された収賄罪について,懲役2年,執行猶予4年,追徴金100万円を命ずる旨判決し,この判決は,その後,確定した。 (7)ア原告らは,平成11年11月11日,玉穂町監査委員に対し,請求の趣旨として「玉穂町は前玉穂町長である森川百規に対し,同人が玉穂町長在職中に,玉穂町の公共工事の指名業者に玉穂町の公共工事の予定価格を漏えいしたことにより,玉穂町の受けた損害である金2億8166万3330円を玉穂町に対し返還を求める。」と記載した玉穂町職員措置請求書と題する書面(甲1)を提出して,法242条1項に基づく住民監査請求を行い,この住民監査請求は,補正を経た後,平成11年12月8日,受理された(これが本件監査請求である。)(甲1,2)。 イ玉穂町監査委員は,平成12年1月7日,下記のとおり述べて原告らの住民監査請求を棄却し,この通知は,そのころ,原告らに到達した(甲2)。 記請求人の主張のとおり「価格の漏洩」「談合」等があったとしても損害賠償の請求をするためには、対象となる当該行為を他の事項から区別して特定すべく個別的、具体的に適示する事を要し、長期にわたる多数の行為を包括的・網羅的に指示する請求は不適法である。また、全国と玉穂町の公共工事予定価格と落札価格の割合の差3.83パーセント相当額の損害が生じているという、請求人の主張であるが 長期にわたる多数の行為を包括的・網羅的に指示する請求は不適法である。また、全国と玉穂町の公共工事予定価格と落札価格の割合の差3.83パーセント相当額の損害が生じているという、請求人の主張であるが、損害額の立証が出来る程の確証が得られていな(い)ため推定の域を出ないものである。よって、損害賠償をすることは困難と言わざるを得ず、損害賠償を請求しないことをもって、違法不当に財産の管理を怠る事実にあたるとまではいえない。 したがって、玉穂町が森川百規前町長に対し、玉穂町の受けた損害金2億8166万3330円を玉穂町に対し返還するように求める措置を要求するという請求人の主張には理由がないものと判断し、本件請求を棄却する。 (8) 原告らは,平成12年2月3日,本件訴えを提起した。 3 争点(1) 本件訴えは,適法な住民監査請求を経ているといえるか(本案前の争点)。 ア被告の主張本件監査請求は,玉穂町長であった被告の予定価格を漏えいした行為が違法であり,その結果,財務会計上の行為(本件各契約の締結等)が違法となり,玉穂町は被告に対して損害賠償請求権を有するに至ったにもかかわらず,これを行使しないというものである。そして,予定価格の漏えい行為,すなわち,予定価格の秘密保持義務違反行為を財務会計上の行為との関連でとらえた場合,予定価格の秘密保持義務は,財務会計上の行為の準備行為というべきである。そして,財務会計職員が行った財務会計上の行為の準備行為が違法であることに基づいて発生する当該職員に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求については,上記違法が財務会計上の行為の違法を構成する関係にある場合には,財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として法242条2項の規定が適用される(最高裁平成14年10月 民監査請求については,上記違法が財務会計上の行為の違法を構成する関係にある場合には,財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として法242条2項の規定が適用される(最高裁平成14年10月3日判決民集56巻8号1611頁)。そして,本件監査請求は,平成11年11月11日に行われ,本件各契約は,いずれも平成10年10月29日以前に締結されたものである。したがって,本件訴えは,全ての請求について適法な住民監査請求を経ていないから却下すべきである。 イ原告らの主張(ア) 一次的請求a 本件監査請求には,法242条2項の期間制限規定は適用されない。すなわち,本件は,玉穂町長であった被告が本件各工事に関する入札につき予定価格を漏えいしたことによって,玉穂町は被告に対して不法行為による損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,玉穂町がその請求をしないとして,原告らが,改正前法242条の2第1項4号に基づき,玉穂町に代位して,「怠る事実」に係る相手方である被告に対し,損害賠償を求めている事案であり,「怠る事実」に係る監査請求は,条文上,法242条2項の期間制限規定は適用されない。 b 確かに,怠る事実と監査請求期間の関係について,最高裁判所は,昭和62年2月20日,「普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして法242条1項の規定による住民監査請求があった場合に,右監査請求が,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは,当該監査請求については,右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として同条2項の規定を適用す 求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは,当該監査請求については,右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として同条2項の規定を適用すべきものと解するのが相当である。けだし,法242条2項の規定により,当該行為のあつた日又は終わった日から1年を経過した後にされた監査請求は不適法とされ,当該行為の違法是正等の措置を請求することができないものとしているにもかかわらず,監査請求の対象を当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使という怠る事実として構成することにより同項の定める監査請求期間の制限を受けずに当該行為の違法是正等の措置を請求し得るものとすれば,法が同項の規定により監査請求に期間制限を設けた趣旨が没却されるものといわざるを得ないからである。」旨判決した(最高裁昭和62年2月20日判決民集41巻1号122頁,以下「昭和62年判決」という。)。 c しかしながら,怠る事実については監査請求期間の制限がないのが原則であることにかんがみれば,監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該怠る事実を対象としてされた監査請求には,期間制限規定は適用されないというべきである。 そして,本件における怠る事実の対象たる損害賠償請求権は,被告の予定価格の漏えいという不法行為により,入札予定者間で談合が行われ,著しく高額な落札価格となったことによって発生した損害賠償請求権である。そうすると,監査委員は,被告の行った予定価格漏えい行為が不法行為法上違法であるといえるか否か,これによって玉 談合が行われ,著しく高額な落札価格となったことによって発生した損害賠償請求権である。そうすると,監査委員は,被告の行った予定価格漏えい行為が不法行為法上違法であるといえるか否か,これによって玉穂町が被った損害は幾らかを判断すればよいのであるから,昭和62年判決の考え方は適用されず,本件監査請求に期間制限規定は適用されないというべきである。 (イ) 二次的請求仮に,本件訴えに期間制限規定が適用されるか,又は,一次的請求が「怠る事実」を主張するのに対して本件監査請求が「財務会計上の行為」の違法をいうことから,本件監査請求と一次的請求の間に同一性が認められず,一次的請求に係る訴えが適法な住民監査請求を経ているとはいえないとしても,別紙予備的請求対象工事一覧表(省略)記載の各入札は,最終の支出日から1年以内に本件監査請求がなされており,少なくともこれらの入札によって締結された請負契約によって玉穂町が被った損害の賠償を求める請求は,適法な住民監査請求を経ているといえる。 (ウ) 三次的請求仮に,本件監査請求に期間制限規定が適用され,かつ,住民監査請求が最終の支出から1年を経過しない間になされたか否かではなく,各支出日から1年を経過しない間になされる必要があると解されるとしても,別紙予備的請求対象工事一覧表(省略)記載の各入札のうち,№60,61,62,64,65及び66の各入札によって締結された請負契約の第1回目の支払を除く支出は,いずれも1年を経過する前に適法な住民監査請求がなされたといえる。 (2) 被告は,本件各工事に関する入札に先立ち,直接的又は間接的に,各入札予定者に対し,予定価格を漏えいしたか。 ア原告らの主張被告は,本件各工事に関する入札に先立ち,自ら又は公共工事発注担当部門の課長等(例えば,D)を通じて,Q又は ち,直接的又は間接的に,各入札予定者に対し,予定価格を漏えいしたか。 ア原告らの主張被告は,本件各工事に関する入札に先立ち,自ら又は公共工事発注担当部門の課長等(例えば,D)を通じて,Q又は当該入札の指名業者等に対し,本件各工事に関する入札の予定価格を漏えいし,本件各工事に関する入札の指名業者は,被告から漏えいされた予定価格を基に談合し,その結果,入札における適正な競争価格の形成が阻害された。 イ被告の主張(ア) 被告が,偽計競売入札妨害の罪で有罪判決を受けた5つの工事,すなわち,別紙本件各工事一覧表(省略)中の都市整備課発注分№55ないし59の各工事(上記2(6)ウ記載の各工事)について,各入札に先立ち,入札予定価格を漏えいし,この漏えいされた予定価格を基に,入札予定者間で談合が行われた事実は認める。 (イ) 被告が,本件各契約のうち,別紙本件各工事一覧表(省略)の総務課発注分№21,23,29ないし33及び都市整備課発注分№51ないし53,68,73の各工事に関する入札について,予定価格を漏えいした事実は否認する。その理由は,次のとおりである。 a 総務課発注分№21の工事は,山梨県内大手ゼネコンによる工事であり,原告らの主張するような談合が行われるはずがない。 b 被告の予定価格の漏えいは,玉穂町の建設業者であるQに対しておこなわれたものであるところ,総務課発注分№23,29ないし33及び都市整備課発注分№51ないし53,68,73の各工事は,玉穂町の建設業者が関与しない入札であり,Qがこれら玉穂町外の業者に予定価格を漏えいして談合の調整をするとは考えられない。 (ウ) 被告が,本件各工事のうち,上記各工事以外の工事に関する入札について,予定価格を漏えいした事実は知らない。 (3) 玉穂町が,被告による予定価格の漏えい及 談合の調整をするとは考えられない。 (ウ) 被告が,本件各工事のうち,上記各工事以外の工事に関する入札について,予定価格を漏えいした事実は知らない。 (3) 玉穂町が,被告による予定価格の漏えい及び業者の談合行為によって被った損害は幾らか。 ア原告らの主張(ア) 一次的請求a 本件各契約(ただし,明らかに談合が成立しなかったとされる都市整備課発注分№51ないし53を除いたもの。)によって,玉穂町が支出した金額の合計は,78億2772万8940円である。 b 公共工事の予定価格に対する実際の落札価格の比率(落札率)は,全国平均が95.4パーセントであるのに対し,本件各工事は99.23パーセントである。 c 被告による予定価格の漏えい行為がなければ,本件各工事の落札価格は,業者間の適正な競争によって更に低額となり,本件各工事の予定価格に対する実際の落札価格の比率は,少なくとも上記全国平均の95.4パーセント以下であった。 d そうすると,本件各工事の予定価格の合計(消費税相当額込み。 ただし,上記のとおり,都市整備課発注分№48ないし50を除いたもの。)は,78億9481万2950円であるから,被告による予定価格の漏えい行為がなければ,本件各工事に関する入札の落札価格は,少なくとも78億9481万2950円の95.4パーセントに相当する75億3165万1554円以下であったはずである。 e よって,玉穂町は,被告による予定価格の漏えい行為によって,少なくとも,上記78億2772万8940円と上記75億3165万1554円の差額である2億9607万7386円の損害を被ったといえる。 (イ) 二次的請求a 仮に,本件訴えに期間制限規定が適用されるか,又は,一次的請求が「怠る事実」を主張するのに対して本件監査請求が「財務会計上の行為」の 7万7386円の損害を被ったといえる。 (イ) 二次的請求a 仮に,本件訴えに期間制限規定が適用されるか,又は,一次的請求が「怠る事実」を主張するのに対して本件監査請求が「財務会計上の行為」の違法をいうことから,本件監査請求と一次的請求の間に同一性が認められず,一次的請求に係る訴えが適法な住民監査請求を経ているとはいえないとしても,少なくとも本件各工事のうち,最終の公金支出行為から1年以内に本件監査請求がなされた別紙予備的請求対象工事一覧表(省略)記載の各工事については,適法な住民監査請求を経ているといえる。 b 上記各工事の予定価格の合計(消費税相当額込み)は,4億5141万6000円であり,上記各工事に対する玉穂町の支出額は,4億4819万2500円である。 c 被告による予定価格の漏えい行為がなければ,本件各工事の落札価格は,業者間の適正な競争によって更に低額となり,本件各工事の予定価格に対する実際の落札価格の比率は,少なくとも上記全国平均の95.4パーセント以下であった。 d そうすると,上記各工事の予定価格の合計(消費税相当額込み)は,4億5141万6000円であるから,被告による予定価格の漏えい行為がなければ,上記各工事に関する入札の落札価格は,少なくとも4億5141万6000円(予定価格の合計額)の95. 4パーセントに相当する4億3065万0864円以下であったはずである。 e よって,玉穂町は,被告による予定価格の漏えい行為によって,少なくとも,上記4億4819万2500円と上記4億3065万0864円の差額である1754万1636円の損害を被ったといえる。 (ウ) 三次的請求a 仮に,本件監査請求に期間制限規定が適用され,かつ,監査請求が最終の支出から1年を経過しない間になされたか否かではなく,各支出日から 4万1636円の損害を被ったといえる。 (ウ) 三次的請求a 仮に,本件監査請求に期間制限規定が適用され,かつ,監査請求が最終の支出から1年を経過しない間になされたか否かではなく,各支出日から1年を経過しない間になされる必要があると解されるとしても,別紙予備的請求対象工事一覧表(省略)記載の各入札のうち,№60,61,62,64,65及び66の各入札によって締結された請負契約の第1回目の支払を除く支出は,いずれも1年を経過する前に適法な住民監査請求を経ているといえる。 b そうすると,玉穂町は,被告に対し,上記(イ)e記載の1754万1636円から,別紙予備的請求対象工事一覧表(省略)記載の各工事のうち,№60,61,62,64,65及び66における第1回目の支払によって発生した損害を控除した額の支払を求めることができる。 c 上記各契約に基づく玉穂町の支出額は,合計4億4819万2500円であり,また,前記各契約の第1回目の支出(各支出日から1年が経過して本件監査請求がなされた支出)の合計金額は,5801万7602円である。そうすると,前記4億4819万2500円から5801万7602円を控除した3億9017万4898円が,三次的請求における損害額算定の根拠となる支出といえる。 d よって,玉穂町は,被告に対し,支出額である3億9017万4898円と3億9286万2646円(予定価格の合計額)の95.4パーセントに相当する3億7479万0964円の差額である1538万3934円の損害を被ったといえる。 イ被告の主張原告らの上記主張事実は争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件訴えは,適法な住民監査請求を経ているといえるか(本案前の争点)。)について(1) 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた監査請 事実は争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件訴えは,適法な住民監査請求を経ているといえるか(本案前の争点)。)について(1) 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた監査請求において,監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該監査請求に法242条2項の規定は適用されないと解すべきである(最高裁平成14年7月2日第三小法廷判決民集56巻6号1049頁参照)。 (2) 本件監査請求の基礎となる事実関係は,被告による予定価格の漏えいにより,入札予定者によって談合が行われ,その結果,不当に高額な請負代金によって本件各契約が締結されたというものであり,この被告の行為が玉穂町に対する不法行為を構成し,損害賠償請求権が発生しているというのであるから,監査委員は,価格漏えい行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かを判断せずとも,玉穂町が被告に対して損害賠償請求できるか否かを判断することができる。被告は,予定価格の漏えい行為は財務会計上の行為の準備行為であると主張するが,本件各工事の入札に当たり予定価格を漏えいすることはおよそ許されない違法行為であるから,これが財務会計上の行為の準備行為にあたるなどということは到底できない。 よって,本件監査請求には,期間制限規定は適用されないと解すべきである。 (3) また,本件監査請求及び一次的請求は,いずれも被告が本件各工事に関する入札に先立って予定価格を漏えいした事実を問題としているのであるから,両者の間には事実の同一性が認められる。 (4) したがって,本件訴えは,適法な住民監査請求を経ているといえる。 件各工事に関する入札に先立って予定価格を漏えいした事実を問題としているのであるから,両者の間には事実の同一性が認められる。 (4) したがって,本件訴えは,適法な住民監査請求を経ているといえる。 2 争点(2)(被告は,本件各工事に関する入札に先立ち,直接的又は間接的に,各入札予定者に対し,予定価格を漏えいしたか。)について(1) 玉穂町における談合の概要上記前提となる事実,証拠(甲24,26,27,28の1・2,甲29の1・2,甲30の1ないし3,甲32,33)及び弁論の全趣旨によると,被告による予定価格の漏えい及びそれに基づく談合の概要について,次の事実を認めることができる。 ア玉穂町の町長選挙では,平成3年選挙よりも前から,激しい選挙戦が行われており,玉穂町長選挙で落選した候補を支持していた土木建設業者等は,いわゆる負け組として,玉穂町の公共工事に関する指名競争入札の指名から事実上排除されてしまうため,玉穂町の土木建設業者等にとっては,自分が支援した候補が玉穂町長に当選するかどうかは,死活問題であった。被告は,平成3年選挙において,現職のA前町長を破って当選したが,この平成3年選挙では,玉穂町の土木建設業者は,被告を支持するB派に属する業者と現職のA町長を支持するA派に属する業者に二分され,被告を支援していた土木建設業者であるM工業のMが公職選挙法違反(買収)で逮捕されるほど激しい選挙戦が行われた。 イ被告は,平成3年選挙に当選した後,それまでの玉穂町長が行っていたように,自分を支援してくれた土木建設業者等に報いるため,玉穂町の公共工事を自分の支援者に受注させるとともに,多くの利益を与えようと考えた。そして,玉穂町では,指名競争入札の場合,従前から入札者に予定価格を漏えいし,それを基に入札者間で談合が行われていたことか 公共工事を自分の支援者に受注させるとともに,多くの利益を与えようと考えた。そして,玉穂町では,指名競争入札の場合,従前から入札者に予定価格を漏えいし,それを基に入札者間で談合が行われていたことから(この背景には,玉穂町内の土木建設業者の積算能力が不足しているという事情もあった。),被告は,玉穂町の公共工事に関する入札について,指名業者に自己を支援してくれた業者を指名し,予定価格を漏えいした上で,入札者間で受注の調整のための談合を行わせることとした。 ウそこで,被告は,平成3年選挙の後,玉穂町役場の人事異動を行い,平成3年選挙で自分を支持していたか,あるいは積極的に対立候補であったA前町長を支持していなかった職員を公共工事の発注の多い総務課,建設課,経済課及び都市整備課の各課長とし,平成3年選挙において自己を支援してくれた土木建設業者に報いる体制を整えた。 エ一方,土木建設業者の側では,平成3年選挙において,被告を支援したいわゆる勝ち組と対立候補であるA前町長を支援した負け組がはっきりしたことから,玉穂町の土木建設業者をその構成員とする甲協力会は,事実上活動を停止した。そこで,平成3年選挙で被告を支援していた土木建設業者は,平成3年11月ころ,甲建会という名称の団体を結成し,Qがその会長に就任した。そして,被告は,自ら又は担当課長等を通じて,Qに対し,玉穂町の公共工事に関する入札の予定価格を漏えいし,Qは,この漏えいされた予定価格を基に,甲建会の会員及び被告から特に指名のあった玉穂町外の業者等との間で入札価格及び落札業者の調整を図り,その結果,指名業者の間で談合が行われた。 オ甲協力会は,平成3年選挙において被告の対立候補であるA前町長を強力に支援していた当時の会長であるJ建設を営むJが脱退し,活動を再開した。一方,被告におい の結果,指名業者の間で談合が行われた。 オ甲協力会は,平成3年選挙において被告の対立候補であるA前町長を強力に支援していた当時の会長であるJ建設を営むJが脱退し,活動を再開した。一方,被告においても,平成7年選挙に向けて支持基盤を固めるため,平成3年選挙におけるいわゆる負け組を自分の支援者に取り込む必要があった。Qは,平成4年8月,甲協力会の会長に就任し,以後,甲協力会の会員を中心に,被告によって直接的又は間接的に漏えいされた予定価格を基にして談合が行われるようになった。 カ被告は,上記の予定価格の漏えい行為等の見返りとして,甲協力会及び甲協議会の会員等から,原則として,平成7年選挙までは請負代金額の約0.5パーセントに相当する金員,平成7年選挙の後は請負代金額の約1パーセントに相当する金員を自己の後援会長等に対して支払わせていた。 (2) 被告を支持・支援する土木建設業者等以上によると,本件各工事に関する入札のうち,どの入札について被告による直接的又は間接的な予定価格の漏えい及びそれを基にした談合が行われたと認めることができるかを検討するためには,どの土木建設業者等が被告を支援していたか,また,被告は,どの土木建設業者等に公共工事を受注させることによって自分の支持基盤を固めようとしていたかが重要であるといえるところ,上記前提となる事実,証拠(甲24,26,27,28の1・2,甲29の1・2,甲30の1ないし3,甲32,33)及び弁論の全趣旨によると,被告を支援していた業者及び被告が自己の支持基盤を固めるために公共工事を受注させる必要があると認識していた業者について,次のとおり指摘することができる。 ア K興業,L工務店,M工業,N興業,O建設,P組及びQ工業は,平成3年選挙の際から,B派に属し,被告を支援していたのであるから があると認識していた業者について,次のとおり指摘することができる。 ア K興業,L工務店,M工業,N興業,O建設,P組及びQ工業は,平成3年選挙の際から,B派に属し,被告を支援していたのであるから,当然,被告は,平成3年選挙後から,その支援に報いるため及び自己の支持基盤を固めるために,玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識していたと認められる。 イ Z及びaは,土木建設業者ではないが,証拠(甲30の2)によると,前記各業者は,平成3年選挙時から被告を支援し,被告もこの支援に報いる必要があると認識し,D等に対して前記各業者に便宜を図るよう指示していたことが認められる。 ウ I組,X工業,W工事,T興業,R産業及びS工業は,平成3年選挙においてA派に属し,被告の対立候補であるA前町長を支援していたことから,平成3年選挙直後においては,被告と対立関係にあったと認められるが,前記各業者にとって玉穂町の公共工事を受注できるか否かは死活問題であること,また,被告にとっても次期玉穂町長選挙に向けて支持基盤を固める必要があったことから,甲協力会が活動を再開した平成4年8月ころから,前記各業者も被告の支持勢力に加わり,また,被告も,これらの業者に玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識するようになったと認めることができる。 エ b建設,c組,d組,e建設,f組及びg建設は,玉穂町外の業者であり,甲協力会及び甲協議会の会員ではないが,玉穂町内には,平成3年選挙当時,舗装工事を行う業者がS工業しか存在しなかったこともあり,被告と密接な関係を保っており,平成3年選挙直後から,被告の直接的又は間接的な予定価格の漏えいによる一連の談合に加わっていたと認めることができる。 オ h開発及びi建設は,玉穂町外の業者であり,甲協力会及び甲協議会の会員ではな 平成3年選挙直後から,被告の直接的又は間接的な予定価格の漏えいによる一連の談合に加わっていたと認めることができる。 オ h開発及びi建設は,玉穂町外の業者であり,甲協力会及び甲協議会の会員ではないが,平成3年選挙において被告を支援していたことから,被告が,平成3年選挙後から,その支援に報いるため及び自己の支持基盤を固めるために,玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識していたと認めることができる。 カ j建設,k産業,l工業及びm工業所は,玉穂町外の業者であり,甲協力会及び甲協議会の会員ではないが,平成7年選挙において被告を支援したことから,被告が,遅くとも平成7年選挙後から,その支援に報いるため及び自己の支持基盤を固めるために,玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識していたと認めることができる。 キ証拠(甲29の1の18丁)によると,被告が,平成8年3月4日に行われた若宮地区防火貯水槽設置工事(別紙工事一覧表(省略)の総務課発注分№18の工事)に関する入札に先立ち,Qに対し,本件工事の予定価格を告げて,n建設に落札させるよう指示した事実を認めることができるから,n建設は,遅くとも前記入札日までに,被告がその支援に報いるため玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識していた業者であると認めることができる。 ク証拠(甲26の45頁以下)によると,平成9年8月19日に行われた玉穂町生涯学習館機械設備工事(別紙工事一覧表(省略)の総務課発注分№23の工事)に関する入札について,被告の直接的な予定価格の漏えいによって談合が行われ,その結果,o実業が落札したと認めることができる。そうすると,o実業は,前記入札日までに,被告がその支援に報いるため玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識していた業者となった事実を認めることが の結果,o実業が落札したと認めることができる。そうすると,o実業は,前記入札日までに,被告がその支援に報いるため玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識していた業者となった事実を認めることができる。しかしながら,前記入札日より前に,o実業がそのような地位にあった事実を認めるに足りる証拠はない。 ケ以上によると,被告が,その支援に報いるため,また,自己の支持基盤を固めるために,被告による予定価格の漏えい行為に基づく談合に参加させて玉穂町の公共工事を受注させる必要があると認識していた土木建設業者等は,別紙支援業者一覧表(省略)記載のとおりであるということになる(以下,同一覧表(省略)記載の土木建設業者等を「本件支援業者」という。)。 (3) 被告による予定価格の漏えいに基づく談合が行われた工事ア被告が,別紙本件各工事一覧表(省略)中の都市整備課発注分№55ないし59の各工事に関する入札について,各入札に先立ち,予定価格を漏えいし,この漏えいされた予定価格を基に,入札予定者間で談合が行われた事実は,当事者間に争いがない。 イ原告らは,一部の例外を除いて,被告が玉穂町長に就任していた間に行われた入札のほぼ全件に相当する本件各工事に関する入札について,被告による予定価格の漏えいに基づく談合が行われたと主張し,被告は,本件各工事の一部について被告の価格漏えいによる談合が行われたことは認めるものの,本件各工事のすべてにおいて被告の価格漏えいによる談合が行われたことは否認する又は知らないとしている。そこで,以下,本件各工事のうち,どの工事に関する入札において被告による予定価格の漏えいによる談合が行われたと認めることができるかについて検討する必要があるところ,上記前提となる事実,証拠(甲6ないし14,24,26,27,28の1・2,甲2 る入札において被告による予定価格の漏えいによる談合が行われたと認めることができるかについて検討する必要があるところ,上記前提となる事実,証拠(甲6ないし14,24,26,27,28の1・2,甲29の1・2,甲30の1ないし3,甲31ないし33)及び弁論の全趣旨を総合すると,別紙認定一覧表の認定欄に「○」印が付された工事に関する入札については,被告によって直接的又は間接的に漏えいされた予定価格に基づいて入札者間で談合が行われたと認められ,「×」印が付された工事については,これを認めるに足りる証拠がない。 ウ上記認定の理由の要旨は,別紙認定一覧表理由欄に記載のとおりであるが,当裁判所は,被告による予定価格の漏えい行為及びそれに基づく談合について,基本的には,次のとおり判断すべきであると考える。 (ア) 本件支援業者らのみによる入札被告は,平成3年5月1日に玉穂町長に就任した後,自己を支援してくれた土木建設業者等に報いるためには,予定価格を漏えいして受注を調整させる必要があり,また,土木建設業者等に玉穂町の公共工事を受注させることによって,次期選挙への支持基盤を固める必要があると考え,甲建会,甲協力会及び甲協議会の会長であったQに対して予定価格を漏えいし,入札者間の調整(談合)を委ねていたのであるから,本件支援業者のみが指名され,その結果,本件支援業者が落札した入札については,特段の事情がない限り,被告によって直接的又は間接的に漏えいされた予定価格に基づく談合が行われたと認めることができる。 (イ) 下水道管渠布設工事a 証拠(甲29の1)によると,本件各工事のうち,下水道管渠布設工事については,受注した際の利益が大きいことから本件談合業者の間でも競争が激しく,Qが積極的に調整を図っていたことを認めることができるから,本件各工事 )によると,本件各工事のうち,下水道管渠布設工事については,受注した際の利益が大きいことから本件談合業者の間でも競争が激しく,Qが積極的に調整を図っていたことを認めることができるから,本件各工事のうち,公共下水道管渠布設工事については,特段の事情がない限り,被告の価格漏えいによる談合が行われたと認めることができる。 b しかしながら,別紙工事一覧表(省略)の都市整備課発注分№48ないし50記載の各工事については,証拠(甲26,29の1)によると,被告による予定価格の漏えい行為は認められるものの,Qによる調整が失敗し,入札業者間で入札価格の競争(いわゆる「たたき合い」)が行われ,談合が不成立であったと認められる。 (ウ) 教育委員会発注工事教育委員会が発注した工事については,被告が教育委員会の発注する工事の価格を漏えいするために体制を整えたと認められないことなどにかんがみると,被告がこれらの工事の入札価格を漏えいし,それによって談合が行われたと認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。 (エ) 落札率が低い入札原告らの主張するように,被告によって予定価格が漏えいされ,入札業者がその予定価格を知った上で談合したとすると,落札することになった入札者は,できる限り予定価格に近い金額で落札し,より多くの利益を得ようとすると考えられる。そうすると,落札率の低い入札については,被告によって予定価格が漏えいされなかったか,又は,被告による予定価格の漏えいは行われたものの,入札者間で談合が行われなかったと考えるのが合理的である。したがって,落札率が他の工事に関する入札に比べて著しく低い入札については,被告による予定価格の漏えいに基づく入札者間の談合が行われたと認めることはできない。 (4) 上記認定に反する証拠ア被告は,本人尋問におい 他の工事に関する入札に比べて著しく低い入札については,被告による予定価格の漏えいに基づく入札者間の談合が行われたと認めることはできない。 (4) 上記認定に反する証拠ア被告は,本人尋問において,本件各工事の一部について,被告が直接的又は間接的に予定価格を指名業者に漏えいし,その結果,入札者間で談合が行われた事実は認めるが,本件各工事のすべてにおいてそのような談合が行われた事実はない旨供述し,証人Q及び同Dも同旨の証言をし,被告,Q及びpの証人尋問調書の写し(甲34の1・2,甲37の1ないし3,甲38)には,これと同旨であると理解できる記載がある。しかしながら,これらの供述,証言及び記載は,被告が玉穂町長であった際に基本的には上記認定のような予定価格の漏えいとそれに基づく談合が行われていたことを否定するものではなく,また,本件各工事のうちの個別,具体的な工事について被告による予定価格の漏えいとそれに基づく談合が行われたことを否定するものではないから,上記(1)ないし(3)の認定を覆すに足りない。 イまた,被告による予定価格の漏えいの態様について,被告が直接漏えいしたのか,それとも,D等を介して間接的に漏えいしたのかという点について,被告,D及びQの供述等は変遷しているが,被告が直接的に予定価格を漏えいしたにせよ,D等の第三者を介して間接的に漏えいしたにせよ,被告の不法行為責任が成立することには変わりがなく,上記(1)ないし(3)の認定も,これを特定しているわけではないから,この点に関する証拠は,上記(1)ないし(3)の認定を覆す性質のものではない。 ウ他に,上記(1)ないし(3)の認定を覆すに足りる証拠はない。 3 争点(3)(玉穂町が,被告による予定価格の漏えい及び業者の談合行為によって被った損害は幾らか。)について(1 ものではない。 ウ他に,上記(1)ないし(3)の認定を覆すに足りる証拠はない。 3 争点(3)(玉穂町が,被告による予定価格の漏えい及び業者の談合行為によって被った損害は幾らか。)について(1) 上記各談合は,被告から漏えいされた予定価格を基にして,入札前に受注予定者を決め,その者が落札できるように互いに入札価格を調整して,受注予定者に希望通り落札させるというものである。これは,指名業者間での公正な競争を阻害して落札価格が低下することを防ぎ,受注した業者,ひいては談合に加わった業者全部の利益を図るものであるから,玉穂町は,上記各談合によって,談合が行われなかった場合に形成されたであろう公正な競争を前提とする価格(適正な競争価格)と実際の契約金額との差額相当分の損害を被ったと認められる。このことは,本件各工事に関する入札の平均落札率が99.41パーセントであるのに対して,Qによる談合の調整が失敗し,入札者間において入札価格の競争(いわゆる「たたき合い」)が行われた別紙工事一覧表(省略)の都市整備課発注分№48ないし50記載の各工事に関する入札の落札率が80.97パーセント,81.19パーセント及び81.41パーセントと非常に低くなっていることからもうかがえる。 (2) 以上のとおり,本件においては,被告による予定価格の漏えい行為によって玉穂町が損害を被ったことは認められるが,その損害額を正確に認定することができない。しかしながら,被告によって漏えいされた予定価格に基づく談合が行われた各工事それぞれについて,談合が行われなかった場合に形成されたであろう公正な競争を前提とする価格(適正な競争価格)を立証することは,性質上極めて困難であると認められる。そこで,当裁判所は,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法248条に基づき,玉穂町が被った損 れたであろう公正な競争を前提とする価格(適正な競争価格)を立証することは,性質上極めて困難であると認められる。そこで,当裁判所は,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法248条に基づき,玉穂町が被った損害額を次のとおり認定する。すなわち,①本件各工事のうち,談合が認定された工事についての落札率の平均値が99.27パーセントである一方,談合が認定できなかった工事についての落札率の平均値が96.45パーセントであること(別紙落札率分析表参照),②被告が,町長を辞職し,新町長のもとで入札制度の改革が行われた後の玉穂町における平成11年度(10月末現在)の公共工事の平均落札率が94.9パーセントであること(甲15),③建設省入札制度企画指導室が平成10年4月から8月にかけて実施した調査によれば,公共工事の落札率(予定価格に占める落札価格の割合)の全国平均が95.4パーセントであるとされていること(甲4)を総合考慮し,被告によって漏えいされた予定価格に基づいて談合が行われた各契約につき,その合計支払金額の3パーセント(ただし,1000円未満切捨て)に相当する金員が,玉穂町が被告による予定価格の漏えい行為によって被ったと認めるべき相当な損害額であると認める(この損害額は,別紙認定一覧表損害額欄記載のとおりである。)。 4 結論以上によると,原告らの請求は,被告に対し,玉穂町に1億4152万8000円を支払うよう求める限度で理由があるから,この限度で認容し,その余は理由がないから棄却し,仮執行宣言は相当でないから付さないこととして,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一 裁判官倉地康弘 裁判官岩井 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官 新堀亮一 裁判官 倉地康弘 裁判官 岩井一真

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